(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】コネクタ用トレイおよびコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/73 20110101AFI20230718BHJP
【FI】
H01R12/73
(21)【出願番号】P 2019081533
(22)【出願日】2019-04-23
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】中村 智裕
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207399192(CN,U)
【文献】特開2016-134359(JP,A)
【文献】特開2000-207498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続対象物を収容した状態で挿入方向に向かってコネクタ本体に挿入されるコネクタ用トレイであって、
前記接続対象物を収容するトレイ本体と、
前記挿入方向に沿って変位可能に前記トレイ本体に接続されるトレイ外装部と、
前記トレイ本体と前記トレイ外装部との間に直列に配置され、且つ、前記トレイ外装部を前記挿入方向において前記トレイ本体から遠ざかった位置である第1位置と前記トレイ本体に近接した位置である第2位置との間で変位させるプッシュプッシュ機構と
を備え
、
前記プッシュプッシュ機構は、
前記トレイ外装部に接続されたカム機構と、
前記挿入方向において前記カム機構と並列に配置され且つ前記トレイ本体に対して前記トレイ外装部を前記挿入方向に押し出す押し出し機構とを有し、
前記押し出し機構は、前記挿入方向に直交する幅方向において前記カム機構の両側に配置される2本のスプリングを有し、
前記トレイ本体は、前記カム機構の前記幅方向における両側に位置し且つ前記挿入方向に沿って延びる一対のガイド部を有し、
前記トレイ外装部は、前記ガイド部に接触する被ガイド部を有し、
前記一対のガイド部は、前記被ガイド部が接触するガイド底面と、前記2本のスプリングを収容するための一対のスプリング収容溝を有し、
前記一対のスプリング収容溝は、前記挿入方向および前記幅方向に直交する高さ方向において前記ガイド底面よりも低い位置に形成されるスプリング収容溝底面を有するコネクタ用トレイ。
【請求項2】
前記カム機構は、前記トレイ本体に形成されたカム溝と、前記カム溝に一端部が挿入され且つ他端部が前記トレイ外装部に連結されたカムフォロワを有し、
前記カムフォロワの前記他端部は、前記トレイ外装部に回転可能に連結され、前記カムフォロワの前記一端部は、前記カム溝に沿って移動する請求項
1に記載のコネクタ用トレイ。
【請求項3】
前記トレイ外装部が前記トレイ本体に対して前記挿入方向に変位する際に、前記被ガイド部が前記ガイド部により案内される請求項1
または2に記載のコネクタ用トレイ。
【請求項4】
前記トレイ本体は、カード形状の前記接続対象物を収容する請求項1~
3のいずれか一項に記載のコネクタ用トレイ。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のコネクタ用トレイが、前記コネクタ本体に挿入されることを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、接続対象物を収容した状態でコネクタ本体に挿入されるコネクタ用トレイおよびコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、SIM(Subscriber Identity Module)カード等のカード形状の接続対象物が知られている。このような接続対象物用のコネクタとして、例えば、特許文献1のコネクタが開発されている。特許文献1のコネクタは、
図24に示すように、板状の接続対象物を保持するカードホルダ1と、カードホルダ1が挿入されることによりカードホルダ1に保持された接続対象物に接続されるコネクタ本体2を有している。コネクタ本体2は、カードホルダ1がコネクタ本体2に挿入された状態において、挿入方向に対してカードホルダ1と並列に配置された、いわゆるプッシュプッシュ機構3を内蔵している。プッシュプッシュ機構3は、カードホルダ1がコネクタ本体2に挿入されている状態で、ユーザの指4等によりカードホルダ1がコネクタ本体2にさらに押し込まれることにより、カードホルダ1をコネクタ本体2から押し出す。また、コネクタ本体2は、例えば、電子機器の筐体5の内部に配置されており、カードホルダ1は、プッシュプッシュ機構3に押し出されることにより、筐体5の外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のコネクタにおいては、特許文献1にも記載されているように、何らかの原因によりカードホルダ1とコネクタ本体2との間の接触力が、プッシュプッシュ機構3がカードホルダ1を押し出す力を超えてしまうと、カードホルダ1が筐体5の外部に排出されない場合があった。また、
図24に示すように、カードホルダ1には凹部6が形成されており、カードホルダ1が筐体5の外部に排出されない場合には、図示しないピン状のツールを凹部6に引掛けて、ピン状のツールにより、カードホルダ1をコネクタ本体2から強制的に引き抜く必要があった。
【0005】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、コネクタ本体から接続対象物を円滑に取り出すことができるコネクタ用トレイおよびコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るコネクタ用トレイは、接続対象物を収容した状態で挿入方向に向かってコネクタ本体に挿入されるコネクタ用トレイであって、接続対象物を収容するトレイ本体と、挿入方向に沿って変位可能にトレイ本体に接続されるトレイ外装部と、トレイ本体とトレイ外装部との間に直列に配置され、且つ、トレイ外装部を挿入方向においてトレイ本体から遠ざかった位置である第1位置とトレイ本体に近接した位置である第2位置との間で変位させるプッシュプッシュ機構とを備えることを特徴とする。
プッシュプッシュ機構は、トレイ外装部をトレイ本体に対して変位させるため、トレイ本体がコネクタ本体に挿入された場合であっても、トレイ本体とコネクタ本体との間の接触力の影響を受けることなくトレイ外装部を変位させることができる。
【0007】
プッシュプッシュ機構は、トレイ外装部に接続されたカム機構と、挿入方向においてカム機構と並列に配置され且つトレイ本体に対してトレイ外装部を挿入方向に押し出す押し出し機構とを有することが好ましい。カム機構と押し出し機構とが並列に配置されているので、挿入方向におけるコネクタ用トレイの寸法を小さくできる。
押し出し機構は、挿入方向に直交する方向においてカム機構の両側に配置される2本のスプリングを有することができる。2本のスプリングによってトレイ外装部の2点を押すことにより、バランスよく押し出すことができる。
カム機構は、トレイ本体に形成されたカム溝と、カム溝に一端部が挿入され且つ他端部がトレイ外装部に連結されたカムフォロワを有し、カムフォロワの他端部は、トレイ外装部に回転可能に連結され、カムフォロワの一端部は、カム溝に沿って移動することができる。
【0008】
トレイ本体は、挿入方向に沿って延びるガイド部を有し、トレイ外装部は、ガイド部に接触する被ガイド部を有し、トレイ外装部がトレイ本体に対して挿入方向に変位する際に、被ガイド部がガイド部により案内されることができる。
また、トレイ本体は、カード形状の接続対象物を収容することができる。
【0009】
この発明に係るコネクタは、上記のコネクタ用トレイがコネクタ本体に挿入されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、接続対象物を収容するトレイ本体と、挿入方向に沿って変位可能にトレイ本体に接続されるトレイ外装部と、トレイ本体とトレイ外装部との間に直列に配置され、且つ、トレイ外装部を挿入方向においてトレイ本体から遠ざかった位置である第1位置とトレイ本体に近接した位置である第2位置との間で変位させるプッシュプッシュ機構とを備えるため、コネクタ本体から接続対象物を円滑に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の実施の形態に係るコネクタ用トレイの斜視図である。
【
図2】実施の形態に係るコネクタ用トレイの分解図である。
【
図3】実施の形態におけるトレイ本体の斜視図である。
【
図4】実施の形態におけるトレイ本体側接続部の拡大斜視図である。
【
図5】実施の形態におけるトレイ本体の正面図である。
【
図6】実施の形態におけるトレイ本体の平面図である。
【
図7】実施の形態におけるトレイ本体に形成されたカム溝の拡大図である。
【
図8】実施の形態におけるトレイ外装部の斜視図である。
【
図9】実施の形態におけるトレイ外装部の背面図である。
【
図10】実施の形態におけるトレイ外装部の底面図である。
【
図11】実施の形態におけるカムフォロワの斜視図である。
【
図12】実施の形態における接続カバーの斜視図である。
【
図13】接続カバーが省略された状態の実施の形態に係るコネクタ用トレイの斜視図である。
【
図15】実施の形態に係るコネクタ用トレイの要部拡大斜視図である。
【
図17】実施の形態においてトレイ外装部が第1位置に配置された状態からトレイ本体に向かって押し込まれた状態を示す図である。
【
図18】実施の形態においてトレイ外装部が第2位置に配置されている状態を示す図である。
【
図19】実施の形態においてトレイ外装部が第2位置に配置された状態からトレイ本体に向かってさらに押し込まれた状態を示す図である。
【
図20】実施の形態に係るコネクタ用トレイを有するコネクタを示す図である。
【
図21】実施の形態においてトレイ本体が筐体内に挿入され且つトレイ外装部が第2位置に配置されている状態を示す図である。
【
図22】実施の形態においてトレイ本体が筐体内に挿入され且つトレイ外装部が第2位置に配置された状態からトレイ本体に向かって押し込まれた状態を示す図である。
【
図23】実施の形態においてトレイ本体が筐体内に挿入され且つトレイ外装部が筐体から排出された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に、実施の形態に係るコネクタ用トレイ10を示す。コネクタ用トレイ10は、SIM(Subscriber Identity Module)カード等の図示しないカード形状の接続対象物を収容した状態で挿入方向に向かって図示しないコネクタ本体に挿入されるものである。コネクタ用トレイ10は、接続対象物を収容するトレイ本体11と、挿入方向に沿って変位可能にトレイ本体11に接続されるトレイ外装部12と、トレイ本体11およびトレイ外装部12に連結され且つトレイ本体11とトレイ外装部12とが互いに接続されている状態を維持する接続カバー13とを備えている。
ここで、便宜上、コネクタ用トレイ10の挿入方向をY方向として、トレイ本体11からトレイ外装部12に向かう方向を+Y方向、Y方向に直交するコネクタ用トレイ10の幅方向をX方向、X方向およびY方向に直交するコネクタ用トレイ10の高さ方向をZ方向と呼ぶこととする。
【0013】
トレイ本体11とトレイ外装部12との間には、プッシュプッシュ機構Pが直列に配置されている。このプッシュプッシュ機構Pにより、トレイ外装部12は、Y方向においてトレイ本体11から遠ざかった位置である第1位置と、トレイ本体11に近接した位置である第2位置との間で変位する。
【0014】
図2に、コネクタ用トレイ10の分解図を示す。コネクタ用トレイ10は、
図1に示すトレイ本体11、トレイ外装部12および接続カバー13の他、トレイ本体11とトレイ外装部12に接続される棒状のカムフォロワ14と、カムフォロワ14のX方向の両側においてトレイ本体11上に配置される2本のスプリング15を有している。トレイ本体11、トレイ外装部12、カムフォロワ14および2本のスプリング15を互いに組み合わせると共に、トレイ本体11とトレイ外装部12に接続カバー13を連結させることにより、
図1に示すように、コネクタ用トレイ10が組み立てられる。
【0015】
図3に示すように、トレイ本体11は、Y方向に沿った一対の長辺を有する概ね長方形の形状を有しており、-Y方向側に位置し且つ図示しない接続対象物を収容するための接続対象物収容部21と、+Y方向側に位置し且つトレイ外装部12に接続されるトレイ本体側接続部31を有している。
接続対象物収容部21は、Z方向から見たときに、Y方向に沿った一対の長辺を有する概ね長方形の形状を有している。また、接続対象物収容部21に、+Z方向に対して開口し且つ接続対象物が収容される収容凹部22が形成されている。収容凹部22は、Y方向に沿った一対の長辺を有する概ね長方形の形状を有しており、その底部23に、Y方向に沿った一対の長辺を有する概ね長方形の開口部24が形成されている。図示しないが、例えば、カード形状の接続対象物の接続端子を-Z方向に向けて接続対象物を収容凹部22に収容することにより、接続対象物の接続端子を収容凹部22の開口部24から-Z方向に露出させて、開口部24を通して接続対象物の接続端子と図示しないコネクタ本体とを接続することができる。
【0016】
トレイ本体側接続部31は、Z方向から見たときに、X方向に沿って一対の長辺を有する概ね長方形の形状を有している。また、トレイ本体側接続部31には、トレイ本体側接続部31のX方向の中央部に位置するカム溝32と、カム溝32のX方向の両側に位置し且つY方向に沿って延びる一対のガイド部33が形成されている。
また、トレイ本体側接続部31のX方向の両側部に、それぞれ、接続カバー13を取り付けるための接続カバー取付凹部35が形成されている。
【0017】
図4に示すように、一対のガイド部33は、-Y方向端部が閉じられているが+Y方向および+Z方向に向かって開放されており、YZ平面に対して互いに対称な形状を有している。一対のガイド部33は、XY平面に沿って延びる平坦なガイド底面33Aと、トレイ本体側接続部31のX方向の内側に位置し且つ+Z方向に突出しながらY方向に沿って延びる内側ガイド壁33Bと、トレイ本体側接続部31のX方向の外側に位置し且つ+Z方向に突出しながらY方向に沿って延びる外側ガイド壁33Cを有している。さらに、一対のガイド部33は、それぞれ、外側ガイド壁33Cよりもトレイ本体側接続部31のX方向の外側に、Y方向に沿って延び且つスプリング15を収容するためのスプリング収容溝33Dを有している。スプリング収容溝33Dの底部には、XY平面に沿って延びる平坦なスプリング収容溝底面B1が形成されている。また、
図5に示すように、スプリング収容溝33Dのスプリング収容溝底面B1は、スプリング収容溝33Dに安定してスプリング15を収容するためにガイド底面33Aよりも低い位置すなわちガイド底面33Aよりも-Z方向側に位置するように形成されている。
【0018】
図6に示すように、カム溝32は、トレイ本体側接続部31のX方向の中央部に形成され、カムフォロワ14の-Y方向端部が挿入されるものである。
図7に示すように、カム溝32は、閉じられたいわゆるハート型の形状を有しており、カム溝32の+Y方向端部に相当する位置G1と、カム溝32の-Y方向端部に相当する位置G2と、位置G2よりも-X方向側に位置し且つY方向において位置G1と位置G2の間に配置された位置G3と、位置G3よりも-X方向側に位置し且つ位置G2と共にカム溝32の-Y方向端部に相当する位置G4とを有している。
また、+Z方向側からカム溝32を見たときに、図示しないカムフォロワ14の-Y方向端部がカム溝32に沿って右回りにのみ移動し、左回りには移動しないように、カム溝32に複数の段差が形成されている。
【0019】
図8に示すように、トレイ外装部12は、X方向に沿って延びる板状の把持部41と、把持部41から-Y方向に突出し且つ図示しないトレイ本体11に接続されるトレイ外装部側接続部42を有している。
トレイ外装部側接続部42は、把持部41のX方向の中央部に位置し且つ図示しないカムフォロワ14の+Y方向端部が連結されるカムフォロワ連結部43と、カムフォロワ連結部43のX方向の両側に位置し且つ図示しないトレイ本体側接続部31の一対のガイド部33に接触する一対の被ガイド部44を有している。
【0020】
カムフォロワ連結部43に、カムフォロワ連結部43をZ方向に貫くカムフォロワ挿入孔43Aが形成されている。
一対の被ガイド部44の+Z方向を向いた上部に、Y方向に沿って延び且つ図示しない接続カバー13を取り付けるための接続カバー取付溝44Aが形成されている。また、
図9に示すように、一対の被ガイド部44には、トレイ外装部側接続部42のX方向の内側に位置し且つ-Z方向に向かって突出する被ガイド内側凸部44Bと、トレイ外装部側接続部42のX方向の外側に位置し且つ-Z方向に向かって突出する被ガイド外側凸部44Cと、被ガイド内側凸部44Bと被ガイド外側凸部44Cとの間に位置する被ガイド凹部44Dが形成されている。被ガイド外側凸部44CのZ方向の高さ寸法は、被ガイド内側凸部のZ方向の高さ寸法よりも大きい。また、
図10に示すように、被ガイド内側凸部44B、被ガイド外側凸部44Cおよび被ガイド凹部44Dは、いずれもY方向に沿って延びている。
【0021】
図11に示すように、カムフォロワ14は、Y方向に沿って延びる細長い円柱形状の部材であり、カムフォロワ14の一端部すなわち-Y方向端部に、-Z方向に屈曲する第1屈曲部14Aが形成され、カムフォロワ14の他端部すなわち+Y方向端部に、-Z方向に屈曲する第2屈曲部14Bが形成されている。
【0022】
図12に示すように、接続カバー13は、XY平面に沿って延びる接続カバー上壁51と、接続カバー上壁51に連結し且つYZ平面に沿って延びる一対の接続カバー側壁52と、一対の接続カバー側壁52に連結され且つ接続カバー上壁51よりも-Z方向側に位置し、XY平面に沿って延びる接続カバー下壁53により形成され、+Y方向および-Y方向に向かって開口する筒形状を有している。接続カバー上壁51のX方向の中央部には、接続カバー上壁51の+Y方向端部から-Y方向に向かって延び且つ-Z方向に傾斜する上壁板バネ部51Aが形成されている。また、接続カバー上壁51の+Y方向端部に、-Z方向に屈曲した一対の上壁屈曲部51Bが形成されている。また、一対の接続カバー側壁52に、それぞれ、接続カバー側壁52の-Y方向端部から+Y方向に向かって延び且つ接続カバー13のX方向の内側に傾斜する側壁板バネ部52Aが形成されている。
【0023】
ここで、
図13に、接続カバー13を省略したコネクタ用トレイ10の斜視図を示す。コネクタ用トレイ10において、トレイ本体11とトレイ外装部12とが互いに接続されており、トレイ本体11のトレイ本体側接続部31に形成された一対のガイド部33とトレイ外装部12のトレイ外装部側接続部42に形成された一対の被ガイド部44とが互いに接触している。
【0024】
ここで、図示しないが、ガイド部33のガイド底面33Aに被ガイド部44の被ガイド内側凸部44Bの-Z方向端部が接触し、被ガイド内側凸部44Bが、ガイド部33の内側ガイド壁33Bと外側ガイド壁33Cの間に配置されている。また、ガイド部33の外側ガイド壁33Cが被ガイド部44の被ガイド凹部44Dに収容され、被ガイド部44の被ガイド外側凸部44Cがガイド部33のスプリング収容溝33Dに収容されている。
このようにして、トレイ本体11の一対のガイド部33とトレイ外装部12の一対の被ガイド部44とが互いに接触しているため、トレイ外装部12は、トレイ本体11に対して、Y方向に変位可能であるが、X方向の変位が制限される。
【0025】
また、
図14に示すように、カムフォロワ14の+Y方向端部に形成された第2屈曲部14Bが、トレイ外装部12のカムフォロワ連結部43に形成されたカムフォロワ挿入孔43Aに挿入され、カムフォロワ14の-Y方向端部に形成された第1屈曲部14Aが、トレイ本体11のトレイ本体側接続部31に形成されたカム溝32に挿入されている。ここで、カムフォロワ挿入孔43Aは円形状を有しており、カムフォロワ14の第2屈曲部14Bも円柱形状を有しているため、カムフォロワ14は、XY平面内で回転可能にトレイ外装部12と連結されている。そのため、例えば、トレイ外装部12がY方向に沿って変位した場合に、カムフォロワ14の第1屈曲部14Aは、カムフォロワ14の第2屈曲部14Bを中心として、円軌道を描きながらカム溝32に沿って移動することができる。
【0026】
また、2本のスプリング15は、それぞれ、いわゆる自然長を有する状態よりも縮められた状態でトレイ本体11の一対のスプリング収容溝33Dに収容される。このとき、2本のスプリング15の+Y方向端部は、トレイ外装部12の被ガイド外側凸部44Cの-Y方向端部に接触する。そのため、スプリング15は、トレイ外装部12に対し、+Y方向に向かって弾性力を加えている。
【0027】
ここで、
図1に示すように、実施の形態に係るコネクタ用トレイ10には、接続カバー13が取り付けられているが、この接続カバー13により、トレイ本体11に対するトレイ外装部12のZ方向における変位が制限される。そのため、トレイ外装部12は、トレイ本体11に対してY方向にのみ変位することが可能である。
【0028】
また、
図15に示すように、接続カバー13の一対の上壁屈曲部51BのY方向における幅は、トレイ外装部12のトレイ外装部側接続部42に形成された一対の接続カバー取付溝44AのY方向長さよりも狭く、一対の上壁屈曲部51Bは、一対の接続カバー取付溝44Aに挿入されている。ここで、トレイ外装部12は、トレイ本体11に対してY方向に沿って変位することができるが、一対の上壁屈曲部51Bが一対の接続カバー取付溝44Aに挿入されていることにより、トレイ外装部12は、上壁屈曲部51Bが接続カバー取付溝44Aの-Y方向端部に接触する位置と接続カバー取付溝44Aの+Y方向端部に接触する位置の間の範囲に、Y方向の変位が制限される。
【0029】
また、接続カバー13の一対の側壁板バネ部52Aは、トレイ本体11のトレイ本体側接続部31に形成された接続カバー取付凹部35に挿入されている。これにより、トレイ本体11に対して接続カバー13の位置が固定される。
図15において、接続カバー13の上壁板バネ部51Aとカムフォロワ14を通るようにYZ平面に沿ってコネクタ用トレイ10を切断したA-A線断面図を
図16に示す。接続カバー13の接続カバー上壁51に形成された上壁板バネ部51Aは、カムフォロワ14と接触し、カムフォロワ14の-Y方向端部に形成された第1屈曲部14Aに対して-Z方向に弾性力を加えている。そのため、カムフォロワ14の第1屈曲部14Aは、+Z方向に浮き上がることなく、カム溝32に沿って移動することができる。
【0030】
ここで、
図14に示すように、カム溝32とカムフォロワ14により、いわゆるカム機構が形成され、2本のスプリング15により、トレイ外装部12をトレイ本体11からY方向に沿って押し出す押し出し機構が形成されている。トレイ本体11とトレイ外装部12の間に配置されたプッシュプッシュ機構Pは、カム機構と押し出し機構を有しており、トレイ外装部12を、Y方向においてトレイ本体11から遠ざかった位置である第1位置と、トレイ本体11に近接した位置である第2位置との間で変位させることができる。以下では、プッシュプッシュ機構Pに起因する実施の形態に係るコネクタ用トレイ10の動作について説明する。
【0031】
まず、
図14に示すように、トレイ外装部12がトレイ本体11から遠ざかった位置である第1位置に配置され、カムフォロワ14の-Y方向端部に形成された第1屈曲部14Aがカム溝32の位置G1に配置されているとする。このとき、トレイ外装部12が2本のスプリング15により+Y方向に向かって押されており、図示しない接続カバー13の上壁屈曲部51Bの-Y方向端部がトレイ外装部12の接続カバー取付溝44Aの-Y方向端部と突き当たるため、トレイ外装部12が第1位置に配置された状態が維持される。
【0032】
トレイ外装部12が第1位置に配置されている状態で、ユーザの指等によりトレイ外装部12がトレイ本体11に対して-Y方向に向かって押されると、
図17に示すように、カムフォロワ14の第1屈曲部14Aは、カム溝32に沿って移動する。
【0033】
トレイ外装部12がトレイ本体11に最も近接する位置に至るまで、トレイ外装部12がトレイ本体11に対して-Y方向に向かって押された後、トレイ外装部12を-Y方向に向かって押していたユーザの指等がトレイ外装部12から離れると、2本のスプリング15によりトレイ外装部12が+Y方向に押されることにより、トレイ外装部12がトレイ本体11に対して+Y方向に変位する。
【0034】
ここで、トレイ外装部12がトレイ本体11に最も近接する位置に配置されている状態においては、カムフォロワ14の第1屈曲部14Aはカム溝32の位置G2に位置しているが、ユーザの指等がトレイ外装部12から離れ、トレイ外装部12が+Y方向に変位すると、
図18に示すように、カムフォロワ14の第1屈曲部14Aがカム溝32の位置G3に配置され、トレイ外装部12が第2位置に配置される。このとき、カム溝32の位置G3において、カムフォロワ14の第1屈曲部14Aは、カム溝32の+Y方向側の側壁部に引っかかるため、トレイ外装部12が第2位置に配置された状態が維持される。
【0035】
また、カム溝32には、複数の段差が形成されているため、カムフォロワ14の第1屈曲部14Aは、カム溝32を+Z方向側から見たときに、カム溝32に沿って右回りにのみ移動することができる。そのため、カムフォロワ14の第1屈曲部14Aがカム溝32の位置G2に位置している状態で、ユーザの指等がトレイ外装部12から離れたとしても、カムフォロワ14の第1屈曲部14Aが左回りに移動して先端位置G1に戻ることはなく、位置G3に配置される。
【0036】
トレイ外装部12がトレイ本体11に対して第2位置に配置されている状態において、再び、トレイ外装部12がトレイ本体11に対して-Y方向に向かって押されると、
図19に示すように、カムフォロワ14の第1屈曲部14Aは、位置G3から、カム溝32に沿って位置G4に移動する。この状態において、トレイ外装部12を-Y方向に向かって押すユーザの指等がトレイ外装部12から離れると、トレイ外装部12が2本のスプリング15により+Y方向に向かって押し出される。これにより、
図14に示すように、カムフォロワ14の第1屈曲部14Aがカム溝32の先端位置G1に配置されて、トレイ外装部12が、再び、第1位置に配置される。
【0037】
このようにして、トレイ本体11とトレイ外装部12との間に配置されたプッシュプッシュ機構Pにより、トレイ外装部12は、トレイ本体11から遠ざかった位置である第1位置とトレイ本体11に近接した位置である第2位置との間でY方向に沿って変位する。
【0038】
以上において説明される実施の形態に係るコネクタ用トレイ10は、例えば、図示しないSIM(Subscriber Identity Module)カード等の接続対象物をトレイ本体11に収容した状態で、
図20に示すように、筐体H内の基板Sに実装されたコネクタ本体61に挿入されて使用される。このようなコネクタ用トレイ10とコネクタ本体61により、コネクタCが構成される。コネクタCにおいて、コネクタ用トレイ10が筐体H内に配置されたコネクタ本体61に挿入されることにより、コネクタ用トレイ10に収容された接続対象物の図示しない接続端子とコネクタ本体61の図示しない接続端子とが互いに接触し、接続対象物とコネクタ本体61とが電気的に接続される。
図20に示す例において、筐体Hに、コネクタ用トレイ10が挿入されるトレイ挿入孔HAが形成されており、コネクタ用トレイ10は、トレイ挿入孔HAを通って筐体H内のコネクタ本体61に挿入される。このとき、
図21に示すように、トレイ外装部12は、トレイ本体11に近接した位置である第2位置に配置されており、トレイ外装部12の把持部41の+Y方向側端部は、筐体Hの+Y方向端部に対して、Y方向に概ね同一の位置に配置されている。
【0039】
このように、トレイ外装部12がトレイ本体11に対して第2位置に配置されている状態で、
図22に示すように、トレイ外装部12の把持部41がユーザの指等により-Y方向に押されると、プッシュプッシュ機構Pにより、トレイ外装部12がトレイ本体11から押し出される。これにより、
図23に示すように、トレイ外装部12がトレイ本体11に対して第1位置に配置される。このとき、トレイ本体11の位置は、筐体Hに挿入された状態のまま変位せず、トレイ外装部12が+Y方向に向かって変位する。これにより、トレイ外装部12の把持部41が筐体Hの外側に押し出される。ユーザは、例えば、筐体Hの外側に位置するトレイ外装部12の把持部41を+Y方向に引っ張ることにより、コネクタ用トレイ10を筐体Hから容易に取り出すことができる。
【0040】
ここで、SIMカード等の接続対象物用のコネクタとして、従来から、
図24に示すようなコネクタが開発されている。
図24に示す従来のコネクタは、図示しない接続対象物を保持するカードホルダ1と、筐体5の内部に配置され且つカードホルダ1が挿入されるコネクタ本体2を有しており、コネクタ本体2には、カードホルダ1がコネクタ本体2に挿入された状態において、挿入方向に対してカードホルダ1と並列に配置されたプッシュプッシュ機構3が内蔵されている。
【0041】
このようなコネクタにおいて、カードホルダ1をコネクタ本体2に向かって押すことで、プッシュプッシュ機構3により、カードホルダ1が筐体5の外部に押し出されるように設計されているが、特許文献1にも記載されているように、何らかの理由により、カードホルダ1とコネクタ本体2との間の接触力が、プッシュプッシュ機構3がカードホルダ1を押し出す力を超えてしまうと、カードホルダ1が筐体5の外部に排出されないことがあった。そのため、例えば、
図24に示すように、カードホルダ1に、ピン状のツールを引掛けるための凹部6が形成され、ピン状のツールにより、カードホルダ1をコネクタ本体2から強制的に引き抜かなければならないことがあった。
【0042】
実施の形態に係るコネクタ用トレイ10においては、トレイ本体11とトレイ外装部12との間に直列に配置されたプッシュプッシュ機構Pにより、トレイ外装部12がトレイ本体11から遠ざかった位置である第1位置とトレイ本体11に近接した位置である第2位置との間をY方向に沿って変位することができるため、コネクタ用トレイ10に収容された図示しない接続対象物およびコネクタ用トレイ10とコネクタ本体61との間の接触力が大きくても、プッシュプッシュ機構Pにより、その接触力に関係なく、トレイ外装部12が筐体Hの外部に円滑に排出される。このため、実施の形態に係るコネクタ用トレイ10によれば、従来のコネクタのように、ピン状のツール等を用いてコネクタ用トレイ10をコネクタ本体61から強制的に引き抜かなければならない事態が未然に防止され、コネクタ本体61から接続対象物を円滑に取り出すことができる。
【符号の説明】
【0043】
1 カードホルダ、2 コネクタ本体、3 プッシュプッシュ機構、4 指、5 筐体5、6 凹部、10 コネクタ用トレイ、11 トレイ本体、12 トレイ外装部、13 接続カバー、14 カムフォロワ、14A 第1屈曲部、14B 第2屈曲部、15 スプリング、21 接続対象物収容部、22 収容凹部、23 底部、24 開口部、31 トレイ本体側接続部、32 カム溝、33 ガイド部、33A ガイド底面、33B 内側ガイド壁、33C 外側ガイド壁、33D スプリング収容溝、35 接続カバー取付凹部、41 把持部、42 トレイ外装部側接続部、43 カムフォロワ連結部、43A カムフォロワ挿入孔、44 被ガイド部、44A 接続カバー取付溝、44B 被ガイド内側凸部、44C 被ガイド外側凸部、51 接続カバー上壁、51A 上壁板バネ部、51B 上壁屈曲部、52 接続カバー側壁、52A 側壁板バネ部、53 接続カバー下壁、61 コネクタ本体、B1 スプリング収容溝底面、C コネクタ、G1,G2,G3,G4 位置、H 筐体、HA トレイ挿入孔。