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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】音響診断装置
(51)【国際特許分類】
   G01H 3/00 20060101AFI20230718BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20230718BHJP
【FI】
G01H3/00 Z
G01M99/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019086283
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2019207224
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2018102340
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 達也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 文章
(72)【発明者】
【氏名】平手 利昌
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-009899(JP,A)
【文献】特開2014-016199(JP,A)
【文献】特開2017-111293(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110111(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00-99/00
G01H 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示可能な表示部と、
撮影対象の画像を電気信号である画像信号に変換する撮影部と、
周囲環境の音を電気信号である音響信号に変換する集音部と、
前記画像信号のデータ、前記音響信号のデータ、および予め撮影した基準画像のデータを記録可能な記憶部と、
前記記憶部に記録された基準画像のデータを読み出し、前記基準画像と、前記撮影部にて現在撮影されている診断用画像とを、撮影対象の物の位置が一致するように比較表示させる画像処理部と、
前記基準画像と前記診断用画像とを表示している際に、利用者の操作に基づいて、前記集音部にて集音された診断用音の前記音響信号のデータを前記記憶部に記録する信号処理部と、
前記診断用音を予め設定された解析条件を用いて解析する信号解析部と、
を備えた、携帯端末である音響診断装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記基準画像と、前記撮影部にて現在撮影されている前記診断用画像との少なくとも一方を透過させて重ねた画像を前記表示部に表示させて比較する、請求項1に記載の音響診断装置。
【請求項3】
前記基準画像と前記診断用画像との少なくとも一方は、前記撮影部にて撮影された画像のエッジ部分を抽出した画像である、請求項1または2記載の音響診断装置。
【請求項4】
前記基準画像と前記診断用画像との少なくとも一方は、前記撮影部にて撮影された画像のエッジ部分を抽出した後、二値化した画像である、請求項1または2記載の音響診断装置。
【請求項5】
前記基準画像と前記診断用画像との類似性を算出する画像情報類似性算出部を更に備えた、請求項1または2記載の音響診断装置。
【請求項6】
前記基準画像と前記診断用画像との類似性を示す指標として相関係数を用いる、請求項5記載の音響診断装置。
【請求項7】
前記基準画像と前記診断用画像との類似性を示す指標として内積を用いる、請求項5記載の音響診断装置。
【請求項8】
前記画像処理部は、前記基準画像と、前記撮影部にて現在撮影されている前記診断用画像とを前記表示部に並べて比較表示させる、請求項1に記載の音響診断装置。
【請求項9】
前記画像処理部は、前記基準画像上および前記診断用画像上にグリッドを表示させる、請求項8記載の音響診断装置。
【請求項10】
前記携帯端末は、前記表示部の画面が配置された一方の面と、前記一方の面と対向した面であって、前記撮影部のカメラレンズが設けられた他方の面と、を備える、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の音響診断装置。
【請求項11】
前記信号処理部は、前記基準画像を前記記憶部に記録するときの利用者による操作に基づいて、前記集音部から得られた所定期間の前記音響信号のデータを前記記憶部に記録する、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の音響診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、音響診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電動機などの回転機器は、運転時間の経過とともに構成部品が劣化する。例えば電動機のロータを支える軸受は、ロータの回転により徐々に劣化し、劣化が進行すると異常振動や異常音を引き起こすことが知られている。従来は、聴感により異常音を検知し、その後に加速度センサによって異常振動を計測、解析することによって電動機の異常部位の診断を行っていた。このとき、人間の聴感で異常音を判定すると基準が一定にならないため、電動機の回転音をマイクロフォンで測定し、所定の指標を算出すれば一定の基準で異常判定を行うことができる。また、加速度センサにより振動を計測すれば、精度良く診断を行うことができるが、電動機に加速度センサを直接取り付ける必要があることから、運転中の電動機の異常を検出する際には安全上のリスクがある。マイクロフォンにより異常音を検知する場合、電動機に対して非接触で音響信号を測定できるため、加速度センサを用いる場合よりも安全面での優位性がある。上記状況を踏まえて、携帯端末のマイクロフォンを利用して機器の状態を診断する装置の提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-16199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、現在の測定データと過去の測定データとを比較することにより、機器の現在の状態を判定することが提案されている。現在の測定データと過去の測定データとの比較を行う為には、同一条件でデータを測定することが必要である。特に、マイクロフォンで回転音を測定する場合、電動機からの距離や角度によって測定される音圧レベルが異なるため、電動機に対して以前と同じ位置で測定しないとデータの信頼性が低下する。また、マイクロフォンと電動機の周囲に配置されている物や周囲に居る人間との位置関係によっても、測定データが変化する可能性があった。
【0005】
本発明の実施形態は上記事情を鑑みて成されたものであって、信頼性の高い診断を行う音響診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態による音響診断装置は、画像を表示可能な表示部と、撮影対象の画像を電気信号である画像信号に変換する撮影部と、周囲環境の音を電気信号である音響信号に変換する集音部と、前記画像信号のデータ、前記音響信号のデータ、および予め撮影した基準画像のデータを記録可能な記憶部と、前記記憶部に記録された基準画像のデータを読み出し、前記基準画像と、前記撮影部にて現在撮影されている診断用画像とを、撮影対象の物の位置が一致するように比較表示させる画像処理部と、前記基準画像と前記診断用画像とを表示している際に、利用者の操作に基づいて、前記集音部にて集音された診断用音の前記音響信号のデータを前記記憶部に記録する信号処理部と、前記診断用音を予め設定された解析条件を用いて解析する信号解析部と、を備えた、携帯端末である
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態の音響診断装置の一構成例を概略的に示すブロック図である。
図2図2は、劣化診断を行う際の、一実施形態の音響診断装置における表示の一例を概略的に示す図である。
図3図3は、劣化診断を行う際の、一実施形態の音響診断装置における表示の他の例を概略的に示す図である。
図4図4は、複数の測定日にて測定されたデータに基づく診断対象機器の過去の兆候パラメータの表示例を示す図である。
図5図5は、診断対象機器を含む画像の画像処理の一例ついて説明するための図である。
図6図6は、第2実施形態の音響診断装置の一構成例を概略的に示すブロック図である。
図7図7は、複数の測定日にて測定されたデータに基づく診断対象機器の兆候パラメータと、画像情報類似性を示す指標としての内積との表示例である。
図8図8は、第3実施形態の音響診断装置にて劣化診断を行う際の、表示の一例を概略的に示す図である。
図9図9は、表示部に基準画像および診断用画像を比較表示する際の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の音響診断装置について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1実施形態の音響診断装置の一構成例を概略的に示すブロック図である。 本実施形態の音響診断装置は、携帯端末1を備える。携帯端末1は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレッド端末などであるが、これらに限定されるものではない。
【0009】
携帯端末1は、制御部11と、記憶部12と、撮影部13と、集音部14と、表示部15と、外部と通信可能に構成された通信部(図示せず)と、を備えている。記憶部12、撮影部13、集音部14、表示部15、および、通信部は、バス通信線を介して制御部11と通信可能に接続している。
【0010】
記憶部12は、制御部11によって実行されるプログラムと、撮影部13および集音部14で取得されたデータと、制御部11にて処理された後のデータと、機器のパラメータ(軸受では軸受パス周波数、ギアボックスでは噛み合い周波数、ポンプでは羽根切り周波数など)と、を保存することができる。なお、携帯端末1は、データを一時的に保存可能であるメモリ(図示せず)を更に備えていてもよい。
【0011】
撮影部13は、画像(静止画および動画)を撮影可能なカメラを備えている。撮影部13は、例えば、表示部15の画面が設けられた携帯端末1の一方の面に対向した他方の面に設けられたカメラレンズを備え、このカメラレンズを介して撮像した撮影対象の画像を電気信号である画像信号に変換し、制御部11および記憶部12へ供給可能である。
【0012】
集音部14は、携帯端末1の周囲環境の音による空気振動を電気信号である音響信号に変換する機能を有するマイクロフォンを少なくとも1つ備えている。マイクロフォンは、例えば、携帯端末1の筐体に設けられた孔(図示せず)の近傍に配置され、周囲環境の音に基づく音響信号を、制御部11へ供給可能である。
【0013】
表示部15は、例えば撮影部13により撮影された画像や、集音部14により取得した音響信号に基づく音の波形画像等の各種画像を表示可能である。また、表示部15は、制御部11にて画像処理された画像、文字、操作ボタンなどを表示することが可能である。また、表示部15は、撮影部13で撮影された画像をリアルタイムで表示可能であり、カメラのファインダー機能も兼ねている。ユーザは、表示部15に表示される画像にて携帯端末1の位置や角度を調整して、撮影する画像の調整をすることができる。
なお、表示部15は、タッチパネル機能を備えていてもよく、この場合には、ユーザは表示部15に指やペンなどで接触することにより、各種操作を行うことが可能である。
【0014】
制御部11は、携帯端末1に含まれる複数の構成の動作を制御する。制御部11は、例えば、CPU(central processing unit)やMPU(micro processing unit)などのプロセッサを少なくとも1つ備えている。制御部11は、記憶部12に記憶されたプログラムを読み出して実行し、後述する各種動作をソフトウエアにより実現するように構成され得る。
【0015】
制御部11は、信号処理部111と、信号解析部112と、診断部113と、画像処理部114と、を備えている。
信号処理部111は、撮影部13にて撮影された画像を電気信号に変換した画像信号と、集音部14にて集音された音を電気信号に変換した音響信号とを受信し、デジタルデータに変換して、記憶部12に電子ファイルとして保存する。
【0016】
信号解析部112は、携帯端末1のメモリ上にあるデジタルデータ、あるいは、記憶部12に保存されているデジタルデータを、予め設定された解析条件を用いて、所定の解析方法に基づいて解析する。信号解析部112は、たとえば機器の状態を表す兆候パラメータの算出や、高速フーリエ変換による周波数スペクトルの算出などの解析を行うことができる。
【0017】
例えば、信号解析部112は、予め設定された特定周波数の信号の判断レベルと診断対象である音響信号とを比較する。さらに、信号解析部112は、機械固有のパラメータ(軸受では軸受パス周波数、ギアボックスでは噛み合い周波数、ポンプでは羽根切り周波数など)のレベルから異常の有無を判断することができる。
【0018】
診断部113は、信号解析部112が算出した解析結果に基づいて、所定の判定基準にしたがって機器の状態を診断する。なお、信号解析部112での解析結果に基づいて、利用者が劣化の診断を行うことが可能な場合には、診断部113は省略しても構わない。
【0019】
画像処理部114は、記憶部12に保存されている画像信号のデータや、メモリに一次保存されている画像信号のデータを用いて所定の画像処理を行った後、表示可能な画像信号として表示部15へ出力可能である。このとき、画像処理部114は、記憶部12に記録された画像のデータを読み出し、利用者が複数の画像を比較可能となるように表示させる(比較表示させる)ことができる。
【0020】
画像処理部114は、例えば、表示部15に複数の画像を並べて比較表示するように画像信号を生成可能であり、複数の画像を重ねて表示部15に比較表示するように画像信号を生成可能であり、比較表示させる画像と文字や操作ボタンなどの画像とを組み合わせて表示部15に表示するように画像信号を生成可能である。例えば、画像処理部114は、撮影部13により撮影された複数の画像の一つを透過させるように処理し、他の画像上に重ねて表示させる画像信号を生成可能である。
【0021】
次に、携帯端末1を用いて診断対象機器が動作している際の劣化診断手順について説明する。ここでは、診断対象機器が電動機である場合を一例として説明する。
図2は、劣化診断を行う際の、一実施形態の音響診断装置における表示の一例を概略的に示す図である。
【0022】
最初に、利用者は、携帯端末1にて診断対象機器の周囲の音を測定すると同時に、音を測定したときの携帯端末1の位置にて画像を撮影する。このときに測定する音と撮影した画像は、後に、診断対象機器を診断する際に測定される周囲の音および撮影される画像と比較される基準音および基準画像となる。
【0023】
利用者は、測定を開始する際に、例えば表示部15のタッチパネルを操作して、所定のアプリケーションを起動する。
【0024】
所定のアプリケーションが起動されると、制御部11は、撮影部13および集音部14により画像信号および音響信号のデータの取得を開始するとともに、撮影部13が撮影した画像と集音部14が集音した音の波形画像SD1とを、表示部15に表示させる。これにより、利用者は、診断対象機器が動作しているときの周囲環境の音を視覚的に確認するとともに、撮影部13および集音部14を用いた診断が可能な状態であることを確認することができる。
【0025】
なお、この時点では、取得したデータは記憶部12に保存されなくてもよく、例えば携帯端末1のメモリに画像情報および音響情報が一時的に記録されてもよい。また、集音した音の波形画像SD1の表示は必須ではなく、省略しても構わない。
【0026】
続いて、利用者は、撮影部13および集音部14を用いた診断が可能な状態であることを確認できたら、撮影部13により撮影された画像のデータを記憶部12に保存するとともに、集音部14により集音した周囲の音のデータを記憶部12に保存するよう操作を行う。この操作は、表示部15のタッチパネルを用いて行われてもよく、携帯端末1に設けられた操作ボタン2を用いて行われてもよい。画像処理部114は、「保存」ボタンや、操作ボタン2を押して保存を開始することを利用者に促す文字などを表示部15に表示しても構わない。
【0027】
利用者がデータを保存する操作を行うと、信号処理部111は、集音部14により所定時間集音された音の電気信号(音響信号)のデータと、撮影部13により撮影された画像(例えば静止画像)の電気信号(画像信号)のデータとを測定日時により紐づけて記憶部12に保存する。すなわち、本実施形態では、信号処理部111は、利用者の共通の操作に基づいて、基準画像を記憶部12に記録するとともに、集音部14により得られた所定期間の基準音を記憶部12に記録する。
【0028】
なお、記憶部12に保存される画像(静止画像)が撮影される日時は、例えば、集音部14により集音された周囲の音が記録される期間に含まれていてもよい。また、画像を撮影する際にカメラのシャッタ音が発せられる場合には、シャッタ音が含まれないように、画像を撮影するタイミングとずらして周囲の音の音響信号のデータを記録してもよい。記憶部12には、画像が撮影された日時により音響信号のデータと画像信号のデータとを紐づけて保存してもよく、周囲の音の集音を開始した日時や、集音を終了した日時にて音響信号と画像信号とを紐づけて保存してもよい。
【0029】
以上のように、診断対象機器の周囲の音と画像とに測定日時を付すことにより、撮影された画像と集音された音とのデータを紐づけて記憶部12に保存し、周囲の音を測定したときの携帯端末1の位置を保存することができる。
【0030】
信号解析部112は、記憶部12に保存された音響信号のデータを所定の解析方法、たとえば機器の状態を表す兆候パラメータの算出や、高速フーリエ変換による周波数スペクトルの算出などの解析を行う。信号解析部112は、解析結果と、診断対象機器および測定日時等とを紐づけて、記憶部12へ記録する。
【0031】
続いて、利用者は、異なる日時にて同一の診断対象機器の周囲の音を再度測定し、劣化の診断を行う。
図3は、劣化診断を行う際の、一実施形態の音響診断装置における表示の他の例を概略的に示す図である。
【0032】
利用者は、診断を開始する際に、例えば表示部15のタッチパネルを操作して、所定のアプリケーションを起動する。
所定のアプリケーションが起動されると、制御部11は、撮影部13および集音部14によりデータの取得を開始するとともに、画像処理部114は、撮影部13が撮影した画像と集音部14が集音した音の波形画像SD2とを表示部15に表示させる画像信号を生成して表示部15へ出力する。
【0033】
例えば、利用者は表示部15のタッチパネルを操作して、記憶部12に記録されたデータの中から、今回診断を行う機器を指定することができる。
診断対象機器が指定されると、画像処理部114は、以前撮影された診断対象機器の基準画像データを記憶部12から読み出し、基準画像P1と現在撮影している画像(診断用画像)P2との少なくともいずれか一方を、アルファ値を所定の値に設定した透過画像とし、基準画像P1と診断用画像P2とを重ねて表示部15に表示させる。
【0034】
例えば、画像処理部114は、撮影部13が現在撮影している診断用画像P2のアルファ値を所定の値に設定して透過させた透過画像として、表示部15にて、記憶部12から読み出した基準画像P1上に診断用画像P2を重ねた画像を表示させる。
【0035】
利用者は、過去の基準画像P1と、撮影部13が現在撮影している診断用画像P2とを比較して、基準画像P1と診断用画像P2とに写された物の位置が一致するように、携帯端末1の位置や角度を調整することにより、基準画像P1を撮影したときの携帯端末1(すなわちマイクロフォン)の位置を診断時に再現することが可能となる。
【0036】
また、基準画像P1と診断用画像P2とには、診断対象機器の周囲に配置されている物も含まれるため、例えば、同じ機種の機器が複数設置されている施設等において、診断対象機器を取り違えることを回避することが可能となる。また、診断対象機器の周囲に配置されている物の位置等の周囲環境の変化による影響を考慮した診断も可能となる。
【0037】
携帯端末1の位置の調整が完了した後、利用者は、例えば表示部15のタッチパネルや操作ボタン2を操作して、集音部14にて集音された音(診断用音)の音響信号のデジタルデータを記憶部12に保存する。このとき記憶部12に保存された音響信号が診断対象となる。
【0038】
なお、診断対象の音響信号を記憶部12に保存するタイミングで、同時に撮影部13にて撮影された画像信号のデジタルデータを記憶部12に保存してもよい。この場合には、信号処理部111は、集音部14により所定時間集音された音響信号と、撮影部13により撮影された画像信号とを測定日時により紐づけて記憶部12に保存する。
【0039】
信号解析部112は、記憶部12に保存された音響信号のデジタルデータを所定の解析方法、たとえば機器の状態を表す兆候パラメータの算出や、高速フーリエ変換による周波数スペクトルの算出などの解析を行う。信号解析部112は、解析結果と、診断対象機器および測定日時等とを紐づけて、記憶部12へ記録する。
【0040】
診断部113は、信号解析部112の解析結果を用いて、所定の診断基準にしたがって機器の状態を診断する。診断部113は、例えば、診断対象機器の兆候パラメータが所定の範囲に含まれているか否かにより機器の状態を判断することができ、過去の兆候パラメータと現在の兆候パラメータとを比較して機器の状態を判断することも可能である。
【0041】
図4は、複数の測定日にて測定された音響信号に基づく診断対象機器の過去の兆候パラメータの表示例を示す図である。
信号解析部112にて解析が終了すると、画像処理部114は、診断対象機器について記憶部12に記憶された過去の兆候パラメータと、今回の兆候パラメータとを読み出して、例えば測定日時に対応した兆候パラメータをプロットした画像を表示部15に表示させることができる。また、画像処理部114は、解析結果と合わせて診断部113での診断結果を表示させてもよい。
利用者は、表示部15に表示された解析結果や診断結果に基づいて、診断対象機器の状態を判断することができる。
【0042】
携帯端末1を用いて動作している機器の動作音により機器の劣化を診断するとき、携帯端末1と機器との距離や角度によって測定される音が異なるため、基準となる音を測定したときの機器と携帯端末1との位置関係を再現する必要がある。
【0043】
本実施形態の音響診断装置では、上記のように表示部15に表示された画像の位置合わせを行うことにより、過去に診断対象機器の周囲の音を測定したときの携帯端末1の位置を再現することが可能となる。
【0044】
また、携帯端末1にて測定される音は、機器が設置されている環境の影響を受けるため、比較する過去の音を測定したときの機器の周囲に配置されている物と携帯端末1との位置関係を再現することにより、より信頼性の高い診断を行うことが可能となる。
また、本実施形態では、音を測定するときの利用者の位置ではなく、携帯端末1の位置を再現することができるため、基準となる音を測定したときと診断を行うときとで携帯端末1の利用者が異なる場合であっても、利用者の体格などに依存せずに正確な位置合わせを行うことが可能である。
【0045】
すなわち、本実施形態によれば、信頼性の高い診断を行う音響診断装置を提供することができる。
なお、上記の実施形態では、携帯端末1の位置を調整するために、過去に撮影した基準画像P1と現在撮影されている診断用画像P2との少なくとも一方を透過画像として、表示部15に表示していたが、他の画像処理を行っても構わない。
【0046】
例えば、画像処理部114は、基準画像P1と診断用画像P2とを比較表示する際に、基準画像P1又は診断用画像P2の少なくとも一方をエッジ抽出した画像としてもよく、又は、元の画像のエッジ部分を抽出したものを更に二値化処理を行った画像としてもよい。
【0047】
図5は、診断対象機器を含む画像の画像処理の一例ついて説明するための図である。 画像処理部114は、例えば図5に示すように、過去に撮影された基準画像P1のエッジ情報を二値化処理した画像P12を生成する。画像P12は、例えばエッジ以外の部分は透明であってもよく、診断用画像P2と重ねたときにエッジが強調されるように、エッジのラインが太く強調されていてもよく、エッジラインが赤色や黄色など白黒以外の色で表示されるものであってもよい。
【0048】
利用者は、現在撮影されている画像P2にエッジのみの画像P12を重ねた状態の表示部15を見ながら携帯端末1の位置や角度を調整することにより、容易に両者を一致させることが可能となる。
すなわち、利用者は、携帯端末1が過去に音響信号を測定したときの位置を容易に再現することが可能となり、信頼性の高い診断を実現することができる。
【0049】
次に、第2実施形態に係る音響診断装置について図面を参照して詳細に説明する。
図6は、第2実施形態の音響診断装置の一構成例を概略的に示すブロック図である。 本実施形態の音響診断装置は、制御部11が、画像情報類似性算出部115を更に備えている。
【0050】
画像情報類似性算出部115は、例えば、基準画像と診断用画像とのデータを用いて、基準画像と診断用画像との相関関係を算出することにより、画像情報の類似性を算出することができる。
【0051】
相関係数は、例えば、基準画像のデータから得た1次元のベクトルXと、診断用画像のデータから得た1次元のベクトルYとを用いて、以下の式で計算することができる。なお、ベクトルXとベクトルYとは、例えば、2次元の画像に基づくデータを所定の規則に基づいて1次元のデータに変換したものである。
【0052】
ベクトルX =(x1,x2,x3…xn)ベクトルY =(y1,y2,y3…yn
【数1】
上記相関係数は、基準画像と診断用画像とが同一であれば(ベクトルXとベクトルYとが等しければ)1となり、1に近いほど基準画像と診断用画像とが類似していることを示す。
【0053】
また、画像情報類似性算出部115は、例えば、基準画像と診断用画像とのデータを用いて、内積を算出することにより、基準画像と診断用画像との類似性を算出することができる。
内積は、基準画像のデータから得たベクトルX´と診断用画像のデータから得たベクトルY´とを用いて、以下の式で計算することができる。
【0054】
ベクトルX=(x1,x2,x3…xn)ベクトルY=(y1,y2,y3…yn)を正規化して
【数2】
上記内積は、基準画像と診断用画像とが同一であれば(ベクトルXとベクトルYとが等しければ)1となり、1に近いほど基準画像と診断用画像とが類似していることを示す。
【0055】
図7は、複数の測定日にて測定されたデータに基づく診断対象機器の兆候パラメータと、画像情報類似性を示す指標としての内積との表示例である。
図7では測定日Bにおける内積値が低いため、他の測定日と比較して測定位置の再現が不十分であると判断できる。
【0056】
したがって、利用者は、画像情報類似性が低い測定データは、測定位置の再現が不十分であるため、診断対象とするデータからから除くことができる。また、信号解析部112および診断部113は、画像情報類似性が所定の範囲外にある測定データを解析および診断の対象から除外してもよく、今回診断時に撮影した画像の画像情報類似性が低い場合には、今回の測定を最初からやり直すように処理を進めてもよい。
本実施形態の音響診断装置は、上記以外は上述の第1実施形態と同様である。すなわち、本実施形態によれば、信頼性の高い診断を行う音響診断装置を提供することができる。
【0057】
次に、第3実施形態に係る音響診断装置について図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態では、診断対象音を記録する際の音響診断装置の動作が上述の第1実施形態と異なっている。
【0058】
図8は、第3実施形態の音響診断装置にて劣化診断を行う際の、表示の一例を概略的に示す図である。
利用者は、診断を開始する際に、例えば表示部15のタッチパネルを操作して、所定のアプリケーションを起動する。
【0059】
所定のアプリケーションが起動されると、制御部11は、撮影部13および集音部14によりデータの取得を開始するとともに、画像処理部114は、撮影部13が撮影した画像と集音部14が集音した音の波形画像SD2とを表示部15に表示させる画像信号を生成して表示部15へ出力する。
【0060】
例えば、利用者は表示部15のタッチパネルを操作して、記憶部12に記録されたデータの中から、今回診断を行う機器を指定することができる。
診断対象機器が指定されると、画像処理部114は、以前撮影された診断対象機器の基準画像データを記憶部12から読み出し、基準画像P1と現在撮影している画像(診断用画像)P2とを、並べて表示部15に比較表示させる。
【0061】
このとき、診断用画像P2は、基準画像P1を撮影したときとカメラのズームを同じ倍率に設定して撮影されることが望ましく、基準画像P1と診断用画像P2とが表示されるエリアは同じ大きさであることが望ましい。また、基準画像P1と診断用画像P2との間には他の画像が表示されないことが望ましい。
【0062】
利用者は、過去の基準画像P1と、撮影部13が現在撮影している診断用画像P2とを比較して、基準画像P1と診断用画像P2とに写された物の位置が一致するように、携帯端末1の位置や角度を調整することにより、基準画像P1を撮影したときの携帯端末1(すなわちマイクロフォン)の位置を診断時に再現することが可能となる。
【0063】
また、基準画像P1と診断用画像P2とには、診断対象機器の周囲に配置されている物も含まれるため、例えば、同じ機種の機器が複数設置されている施設等において、診断対象機器を取り違えることを回避することが可能となる。また、診断対象機器の周囲に配置されている物の位置等の周囲環境の変化による影響を考慮した診断も可能となる。
【0064】
携帯端末1の位置の調整が完了した後、利用者は、例えば表示部15のタッチパネルや操作ボタン2を操作して、集音部14にて集音された音(診断用音)の音響信号のデジタルデータを記憶部12に保存する。このとき記憶部12に保存された音響信号が診断対象となる。
【0065】
なお、診断対象の音響信号を記憶部12に保存するタイミングで、同時に撮影部13にて撮影された画像信号のデジタルデータを記憶部12に保存してもよい。この場合には、信号処理部111は、集音部14により所定時間集音された音響信号と、撮影部13により撮影された画像信号とを測定日時により紐づけて記憶部12に保存する。
【0066】
信号解析部112は、記憶部12に保存された音響信号のデジタルデータを所定の解析方法、たとえば機器の状態を表す兆候パラメータの算出や、高速フーリエ変換による周波数スペクトルの算出などの解析を行う。信号解析部112は、解析結果と、診断対象機器および測定日時等とを紐づけて、記憶部12へ記録する。
【0067】
診断部113は、信号解析部112の解析結果を用いて、所定の診断基準にしたがって機器の状態を診断する。診断部113は、例えば、診断対象機器の兆候パラメータが所定の範囲に含まれているか否かにより機器の状態を判断することができ、過去の兆候パラメータと現在の兆候パラメータとを比較して機器の状態を判断することも可能である。
本実施形態の音響診断装置は、上記以外は上述の第1実施形態と同様である。すなわち、本実施形態によれば、信頼性の高い診断を行う音響診断装置を提供することができる。
【0068】
図9は、表示部に基準画像および診断用画像を比較表示する際の表示例を示す図である。
なお、上述の複数の実施形態において、画像処理部114は、表示部15に基準画像P1と診断用画像P2とを比較表示する際に、位置合わせのガイドとして、グリッドを表示させてもよい。グリッドは、画像の水平方向に平行なラインA1-A3と、垂直方向に平行なラインB1-B3との少なくとも一方を含んでいる。なお、グリッドに含まれるラインの本数は図9に表示された例に限定されるものではなく、適宜調整されてもよい。
【0069】
例えば基準画像P1と診断用画像P2とが表示部15に並んで比較表示される場合には、利用者は、基準画像P1のグリッドの位置と診断用画像P2のグリッドの位置が合うように携帯端末1の位置を調整することにより、基準画像P1を撮影したときの携帯端末1の位置を再現することができる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1…携帯端末、2…操作ボタン、11…制御部、12…記憶部、13…撮影部、14…集音部、15…表示部、111…信号処理部、112…信号解析部、113…診断部、114…画像処理部、115…画像情報類似性算出部、P1…基準画像、P12…画像、P2…診断用画像。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9