(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】手摺装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20230718BHJP
E04F 11/18 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
E04G21/32 C
E04F11/18
E04G21/32 D
(21)【出願番号】P 2019102567
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2018135562
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592097808
【氏名又は名称】小野 辰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】小野 辰雄
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3053816(JP,U)
【文献】特開2018-087450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/24-21/32
E04F 11/00-11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部
材の延長方向に沿って並べて上記被取付部
材に連結される複数の連結
部と、上記各連結
部から起立する手摺支
柱と、上記手摺支
柱間に展張される親
綱とを備える手摺装
置において、
上記手摺支
柱と上記連結
部との間に上記親
綱の展張方向に対して直交する
方向に架設された補強フレー
ムを備え、
上記連結部は、上記手摺支柱の基端に連結されるコ字状の挟持片と、上記挟持片の上面に設けられる外筒とを有し、
上記補強フレームの一端は上記外筒に連結される
ことを特徴とする手摺装
置。
【請求項2】
被取付部材の延長方向に沿って並べて上記被取付部材に連結される複数の連結部と、上記各連結部から起立する手摺支柱と、上記手摺支柱間に展張される親綱とを備える手摺装置において、
上記手摺支柱と上記連結部との間に上記親綱の展張方向に対して直交する方向に架設された補強フレームを備え、
上記補強フレームが、台形状又はC字状の屈曲部と、上記屈曲部の上端と下端とにそれぞれ設けられ上記手摺支柱の外周に沿って延びて上記手摺支柱にそれぞれ固着される先端板部及び下端板部と、上記下端板部の反屈曲部側端から上記手摺支柱に対して離間する方向に傾斜して延びて上記連結部に連結される傾斜板部とを有する金属板で構成される
ことを特徴とする手摺装置。
【請求項3】
被取付部材の延長方向に沿って並べて上記被取付部材に連結される複数の連結部と、上記各連結部から起立する手摺支柱と、上記手摺支柱間に展張される親綱とを備える手摺装置において、
上記手摺支柱と上記連結部との間に上記親綱の展張方向に対して直交する方向に架設された補強フレームを備え、
上記補強フレームが、上記手摺支柱に対して平行に延び一端が上記連結部に連結される板状本体と、上記手摺支柱の外周に沿って延び上記手摺支柱に固着される先端板部とを有する金属板で構成される
ことを特徴とする手摺装置。
【請求項4】
被取付部材の延長方向に沿って並べて上記被取付部材に連結される複数の連結部と、上記各連結部から起立する手摺支柱と、上記手摺支柱間に展張される親綱とを備える手摺装置において、
上記手摺支柱と上記連結部との間に上記親綱の展張方向に対して直交する方向に架設された補強フレームと、
上記手摺支柱の反連結部側に設けられ上記親綱の一端を結合可能な親綱保持部とを備え、
上記親綱保持部が、上記手摺支柱の反連結部側に設けられ上記親綱の展張方向に対して直交する方向から見て左右に並べて配置されて上記親綱の一端を結合可能な一対の孔を有する断面C形の筒体と、上記筒体内にスライド自在に挿入可能であって上記筒体とともに棒材を挟持可能な楔とを有する
ことを特徴とする手摺装置。
【請求項5】
上記補強フレー
ムが金属板からなり、
上記金属板が上記手摺支
柱の軸方向中間部と上記連結
部との間に架設される
ことを特徴とする請求項1
から4のいずれか一項に記載の手摺装
置。
【請求項6】
上記外筒は、上記挟持片の上記上面を貫通するとともに上記挟持片に連結されており、
上記連結部
は、一端が上記外
筒から突出された状態で上記外
筒に保持されるボルト
軸と、上記ボルト
軸に螺合され上記外
筒内を軸方向に移動自在に設けられる内
筒と、上記内
筒の反ボルト軸側端部に連結された皿
部とを有し、
上記補強フレー
ムの一端は上記外
筒に連結される
ことを特徴とする請求項1
又は請求項1に従属する請求項
5に記載の手摺装
置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺装置に関し、特に建築物、構築物の建築、構築現場に設けた鉄骨梁、建築物又は構築物のスラブ、その他の被取付部材に取付けて工事作業の安全を図る手摺装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に高層ビルディングの建築物、橋梁等の構築物の建築、構築工事、改築工事では工事位置に対応して手摺装置が設けられている。
【0003】
この手摺装置は、鉄骨梁のフランジやスラブ等に挟持部材を介して起立した複数の手摺支柱と、これらの手摺支柱に取付けられた水平方向に延びる親綱とからなるものである。
【0004】
例えば、このような、手摺装置としては、特許文献1、特許文献2に開示されているものが開発され、使用されている。
【0005】
これらの特許文献1、2に開示されている手摺装置は、支柱本体と、支柱本体の下端部に設けられて鉄骨梁を挟持する固定部材と、支柱本体の上端部に取り付けられた親綱掛着部と、親綱掛着部にそれぞれ端部を結合した左右に延びる一対の親綱とから構成され、さらに、親綱に命綱をスライド自在に取付け、この命綱を作業者の腰に取付けるようにしたものである。
【0006】
これにより、作業者が鉄骨梁上を歩行し、或いは、鉄骨梁上で作業する際に命綱を介して親綱で作業者が支えられているので作業者が鉄骨梁から地上等に落下するのが防止できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実公平7-38567号公報(
図1~
図3、段落0007参照)
【文献】特開平11-30043号公報(
図2、要約参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のように、特許文献1、2に開示されている手摺装置では作業者の安全を図っている反面、次のような不具合の改善が望まれている。
【0009】
すなわち、作業者が鉄骨梁上から落下した時、作業者の体重で親綱が引っ張られ、その時の張力で支柱本体に左方向又は右方向の曲げモーメントが作用し、この支柱本体の固定部材付近の基端に応力が集中して、支柱本体が基端から折損する恐れがある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、作業者が鉄骨梁やスラブなどの被取付部材上から落下して作業者の体重で親綱から手摺支柱に曲げモーメントが作用しても、手摺支柱の基端へ応力が集中するのを防止して手摺支柱の折損を防止できる手摺装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成させるため、本発明の手摺装置は、被取付部材の延長方向に沿って並べて上記被取付部材に連結される複数の連結部と、上記各連結部から起立する手摺支柱と、上記手摺支柱間に展張される親綱とを備える手摺装置において、上記手摺支柱と上記連結部との間に上記親綱の展張方向に対して直交する方向に架設された補強フレームを備え、連結部は、手摺支柱の基端に連結されるコ字状の挟持片と、挟持片の上面に設けられる外筒とを有し、補強フレームの一端は外筒に連結されることを特徴とするものである。これにより、手摺支柱に曲げモーメントが作用する際に、補強フレームで手摺支柱を支えて、手摺支柱の基端に作用する応力の一部を負担できる。
【0012】
また、補強フレームが金属板からなり、上記金属板が上記手摺支柱の軸方向中間部と上記連結部との間に架設されるようにしてもよい。この構成によると、手摺支柱に曲げモーメントが作用する場合に、補強フレームによって手摺支柱の基端に作用する応力の一部を負担する効果の向上のメリットと、手摺装置の重量の増加や材料費の増大のデメリットのバランスが取れた手摺装置となる。
【0013】
また、本発明の他の手摺装置は、被取付部材の延長方向に沿って並べて被取付部材に連結される複数の連結部と、各連結部から起立する手摺支柱と、手摺支柱間に展張される親綱とを備える手摺装置において、手摺支柱と連結部との間に親綱の展張方向に対して直交する方向に架設された補強フレームを備え、補強フレームが、台形状又はC字状の屈曲部と、屈曲部の上端と下端とにそれぞれ設けられ手摺支柱の外周に沿って延びて手摺支柱にそれぞれ固着される先端板部及び下端板部と、下端板部の反屈曲部側端から手摺支柱に対して離間する方向に傾斜して延びて連結部に連結される傾斜板部とを有する金属板で構成される。この構成によると、手摺支柱に曲げモーメントが作用する際に、補強フレームで手摺支柱を支えて、手摺支柱の基端に作用する応力の一部を負担できる。さらに、この構成によると、補強フレームが手摺支柱の基端に作用する応力の一部を負担する補強部材としてだけでなく、取手としても機能するため、手摺装置の取付作業性が向上する。
【0014】
また、本発明のさらに他の手摺装置は、被取付部材の延長方向に沿って並べて被取付部材に連結される複数の連結部と、各連結部から起立する手摺支柱と、手摺支柱間に展張される親綱とを備える手摺装置において、手摺支柱と連結部との間に親綱の展張方向に対して直交する方向に架設された補強フレームを備え、補強フレームが、手摺支柱に対して平行に延び一端が連結部に連結される板状本体と、手摺支柱の外周に沿って延び手摺支柱に固着される先端板部とを有する金属板で構成される。この構成によると、手摺支柱に曲げモーメントが作用する際に、補強フレームで手摺支柱を支えて、手摺支柱の基端に作用する応力の一部を負担できる。さらに、この構成によると、板状本体が連結部に直接連結されるため、補強フレームの簡素化を図ることができる。
【0015】
また、本発明の手摺装置では、上記外筒は、上記挟持片の上記上面を貫通するとともに上記挟持片に連結されており、上記連結部は、一端が上記外筒から突出された状態で上記外筒に保持されるボルト軸と、上記ボルト軸に螺合され上記外筒内を軸方向に移動自在に設けられる内筒と、上記内筒の反ボルト軸側端部に連結された皿部とを有し、上記補強フレームの一端は上記外筒に連結されるようにしてもよい。この構成によると、連結部が外筒と内筒からなる二重管となっているため、外筒と内筒の断面形状を真円以外の形状にすれば、外筒によって内筒を回り止めできるとともに、連結部の補強フレームと連結される箇所の剛性が高めることができる。
【0016】
また、本発明の別の手摺装置は、被取付部材の延長方向に沿って並べて被取付部材に連結される複数の連結部と、各連結部から起立する手摺支柱と、手摺支柱間に展張される親綱とを備える手摺装置において、手摺支柱と連結部との間に親綱の展張方向に対して直交する方向に架設された補強フレームと、手摺支柱の反連結部側に設けられ上記親綱の一端を結合可能な親綱保持部とを備え、上記親綱保持部が、上記手摺支柱の反連結部側に設けられ上記親綱の展張方向に対して直交する方向から見て左右に並べて配置されて上記親綱の一端を結合可能な一対の孔を有する断面C形の筒体と、上記筒体内にスライド自在に挿入可能であって上記筒体とともに棒材を挟持可能な楔とを有している。この構成によると、手摺支柱に曲げモーメントが作用する際に、補強フレームで手摺支柱を支えて、手摺支柱の基端に作用する応力の一部を負担できる。さらに、この構成によると、隣り合う手摺支柱間に、親綱と棒材を選択的に架け渡すことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業者が鉄骨梁やスラブ上から落下して作業者の体重で親綱から手摺支柱に左方向又は右方向の曲げモーメントが作用しても、補強フレームで手摺支柱を支えて、手摺支柱の基端に作用する応力の一部を負担できる。
【0018】
その結果、手摺支柱の基端に応力が集中するのが防止され、手摺支柱が若干湾曲したとしても基端から折損するのが防止できる。
【0019】
従って、作業者の落下距離を短くでき、作業者に対する衝撃を少なくし、より作業者の安全性を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る手摺装置の一部切欠き斜視図である。
【
図2】(A)は手摺装置の正面図である。(B)は手摺装置の側面図である。
【
図3】他の実施の形態に係る手摺装置の一部切り欠き側面図である。
【
図4】さらに他の実施の形態に係る手摺装置の一部切欠き側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0022】
図1~
図2は本発明の一実施の形態に係る手摺装置を示し、
図3、
図4はそれぞれ本発明の他の実施の形態に係る手摺装置を示している。
【0023】
各実施の形態に係る手摺装置Aは、
図1に示すように、建築物の建築工事現場や、構築物の構築工事現場に設けられている既設の鉄骨梁5のフランジ6などの被取付部材に取付けられ、このフランジ6を足場として使用している時このフランジ6から作業者が歩行中又は作業中に落下するのを防止するものである。
【0024】
本実施の形態に係る手摺装置Aは、鉄骨梁5の延長方向に沿って複数の手摺支柱1が並べて配置されており、隣り合う手摺支柱1同士に親綱4を架け渡すことで、親綱4が鉄骨梁5の延長方向に沿って展張されて、作業者の手摺や命綱の取付場所として親綱4が機能する。
【0025】
更に、この手摺装置Aは工事個所が横方向に長い場合、言い換えれば、鉄骨梁5や、スラブが長い場合は一本の長い親綱や手摺材を設けるのは困難であることから、複数の手摺支柱1を鉄骨梁5に取付けて隣り合う各手摺支柱1に親綱4を架け渡すことで、工事個所に対応させるようにしているものである。
【0026】
以下各実施の形態に係る手摺装置Aについて説明する。
図1、
図2に示す実施の形態に係る手摺装置Aの基本構造は、被取付部材としての鉄骨梁5の延長方向に沿って並べて鉄骨梁5に連結される複数の連結部2と、各連結部2から起立する手摺支柱1と、手摺支柱1の反連結部側である図中上端に設けられ親綱4の一端を結合可能な親綱保持部3と、手摺支柱1,1間に展張される親綱4とを備える。そして、隣り合う親綱保持部3,3間に架け渡された親綱4の展張方向に対して直交する方向から見て手摺支柱1の被取付部材側である正面側と連結部2との間に補強フレーム7が架設されている。
【0027】
手摺支柱1は、
図1に示すように、鉄骨梁5から外方側に向けて斜めに起立している。これにより、鉄骨梁5上のスペースを大きく確保できるため、鉄骨梁5のフランジ6上を作業者が歩行しやすくなっている。但し、手摺支柱1は鉄骨梁5に対して垂直に起立していても使用可能である。
【0028】
連結部2は、
図2に示すように、手摺支柱1の基端である図中下端に連結されるコ字状の挟持片12と、挟持片12の手摺支柱側面を貫通するとともに挟持片12に連結される外筒15と、一端が外筒15から突出された状態で外筒15に回転自在に保持されるボルト軸13と、ボルト軸13に螺合され外筒15内を軸方向に移動自在に設けられる内筒16と、内筒16の反ボルト軸側端部である図中下端に連結された皿部14とを備える。なお、図示しないが、内筒16には、回り止めがなされており、ボルト軸13を回転させても内筒16は回転しないようになっている。回り止めの手段は特に限定されず、例えば、外筒15と内筒16をそれぞれ断面四角状にして内筒16の回り止めをしてもよい。また、ボルト軸13のねじ切り部分は、外筒15で覆われているため、雨や砂埃等から保護されて、ねじ切り部分の錆びや砂詰まりが防止される。
【0029】
そして、皿部14と挟持片12の間に鉄骨梁5のフランジ6を配置した状態で、ボルト軸13を一方方向に回転させると、内筒16が下方向へ移動する。すると、
図2に示すように、内筒16の下端に設けられた皿部14と挟持片12とでフランジ6が挟持されるので、連結部2を鉄骨梁5に固定でき、連結部2を介して手摺支柱1を鉄骨梁5に連結できる。
【0030】
なお、本実施の形態に係る連結部2の構成は、一例であって、手摺支柱1を鉄骨梁5に連結できれば特に限定されない。
【0031】
また、親綱保持部3は、
図1、
図2に示すように、手摺支柱1の上端に設けられた断面C形の筒体8を備え、筒体8には左右に並べて配置される一対の孔9,9が形成されている。筒体8の底壁は傾斜しており、筒体8内に楔Kを挿入できるようになっている。
【0032】
また、親綱4は、両端部にそれぞれカラビナ11を備えている。そして、親綱4を親綱保持部3に結合する手順としては、まず、各孔9にリング10を取り付ける。次にリング10にカラビナ11を介して親綱4の一端を結合する。最後に隣り合う手摺支柱1に設けられた親綱保持部3に取付けたリング10にカラビナ11を介して親綱4の他端を結合する。これにより、隣り合う手摺支柱1,1間に親綱4が架け渡されて展張される。なお、筒体8は断面C形ではなく単なる断面矩形の筒とされてもよいが、本実施の形態のように、断面C形とされていると、孔9に親綱4を結合する作業が容易となる。
【0033】
また、本実施の形態に係る親綱保持部3は、親綱4に代えて、金属製の棒材を保持することもできる。具体的には、隣り合う手摺支柱1,1に設けられた各筒体8,8に棒材を挿入して架け渡してから、楔Kを筒体8の底壁と棒材との間に圧入することで、棒材を親綱保持部3に固定できる。
【0034】
このように、本実施の形態に係る親綱保持部3では、楔Kが常設されているため、親綱4と金属製の棒材を選択的に取り付けることができる。ただし、親綱4だけを取付ける場合は、楔Kは無くてもよい。
【0035】
次に、補強フレーム7について詳細に説明する。本実施の形態に係る補強フレーム7は、金属板からなり、金属板を手摺支柱1の被取付部材側となる正面側の軸方向中間部と連結部2との間に架設させている。ここでいう、軸方向中間部とは、手摺支柱1の軸方向中間位置の近傍も含み、手摺支柱1の中央のみには限定されない。
【0036】
具体的には、補強フレーム7は、
図2に示すように、台形状の屈曲部7Aと、屈曲部7Aの上端と下端とにそれぞれ設けられ手摺支柱1の外周に沿って延びる先端板部7B及び下端板部7Cと、下端板部7Cの反屈曲部側端から手摺支柱1に対して離間する方向に傾斜して延びる傾斜板部7Dとから構成され、先端板部7Bと下端板部7Cをそれぞれ手摺支柱1の正面側に固着し、傾斜板部7Dの反下端板部側端部は外筒15の上端に連結されている。
【0037】
なお、屈曲部7AはC字状に成形されてもよく、この屈曲部7Aは手摺支柱1を運搬する際の取手としても利用できる。
【0038】
ここで、親綱4には公知のように、リング等を介して命綱がスライド自在に取付けられ、この命綱の他端は取付け具を介して作業者の腰などに取付けられ、鉄骨梁5上を歩行する作業者が鉄骨梁5から足を踏み外しても手摺支柱1と親綱4とで作業者を支えて作業者が地上に落下するのを防止している。
【0039】
即ち、何らかの原因で、作業者が誤って鉄骨梁5から落下した場合でも、親綱4で作業者が吊り下げられるだけで地上までは落下しない。
【0040】
この時、作業者の体重が親綱4に作用して親綱4を通じて引張力が手摺支柱1の上端に作用し、手摺支柱1における連結部2に連結している基端に左方向又は右方向の曲げモーメントが作用する。
【0041】
ところが、本実施の形態に係る手摺装置Aでは、手摺支柱1の正面側と連結部2との間に補強フレーム7が架設されており、手摺支柱1自体以外にも、補強フレーム7によって支えられるので、このような曲げモーメントが作用しても手摺支柱1が基端で折損することが防止される。
【0042】
加えて、本例の補強フレーム7のような板状の部材は正面側から作用する荷重に対してよりも側面側から作用する荷重に対する剛性の方が高いため、本例のように、手摺支柱1の被取付部材側となる正面側に補強フレーム7を設けると、補強フレーム7を含んだ手摺支柱1全体の横方向の剛性を効果的に向上できる。
【0043】
したがって、本実施の形態に係る手摺装置Aでは、手摺支柱1の基端に作用する応力を小さくでき、手摺支柱1が基端で折損してしまうのをより確実に防止できる。
【0044】
また、
図3は本発明の他の実施の形態に係る手摺装置Aを示している。この実施の形態に係る手摺装置Aの基本構造は上記した
図1、
図2の実施の形態に係る手摺装置Aと同じである。この実施の形態は補強フレーム7の構造のみを変更したものであるため、
図1、
図2の実施の形態と同じ部分の説明は省略する。
【0045】
この補強フレーム7は、手摺支柱1に対して平行に延び一端である下端が外筒15に連結される板状本体7Eと、手摺支柱1の外周に沿って延び手摺支柱1に固着される先端板部7Fとを備えた金属板で構成されている。
【0046】
図3の実施の形態によると、板状本体7Eが連結部2の外筒15に直接連結されているため、
図2の実施の形態に係る補強フレーム7と同様の作用効果を発揮させつつ、
図2の実施の形態に比べて補強フレーム7の簡素化を図ることができる。
【0047】
また、
図4は本発明のさらに他の実施の形態に係る手摺装置Aを示している。この実施の形態に係る手摺装置Aの基本構造は上記した
図1、
図2の実施の形態に係る手摺装置Aと同じである。この実施の形態も補強フレーム7の構造のみを変更したものであるため、
図2の実施の形態と同じ部分の説明は省略する。
【0048】
図4に示す補強フレーム7は、外筒15の上端から手摺支柱1の正面側に水平に架け渡される水平板部7Hで構成されている。
【0049】
これにより、手摺支柱1に左方向又は右方向の曲げモーメントが作用した場合であっても、手摺支柱1の基端に作用する応力を水平板部7Hでも受けることができるので、手摺支柱1の基端に応力が集中するのを防止でき、手摺支柱1の折損を防止できる
したがって、
図4の実施の形態によると、
図2、
図3の実施の形態に係る補強フレーム7と同じ作用効果を発揮させつつ、
図2、
図3の実施の形態よりも補強フレーム7の簡素化を図ることができる。ただし、
図2、
図3の実施の形態では、
図4の実施の形態に比べて、補強フレーム7を長く形成できるため、曲げモーメントが作用した際に手摺支柱1の基端に作用する応力を低減できる。
【0050】
前述したように、本実施の形態に係る手摺装置Aでは、手摺支柱1と連結部2との間に親綱4の展張方向に対して直交する補強フレーム7が架設されている。この構成によると、手摺支柱1に曲げモーメントが作用しても、その曲げモーメントを手摺支柱1自体だけでなく補強フレーム7でも支えて負担できる。したがって、手摺支柱1に曲げモーメントが作用しても、手摺支柱1の基端に応力を集中させずに済み、手摺支柱1が基端から折損するのを防止できる。
【0051】
また、補強フレーム7は、手摺支柱1の親綱4の展張方向に対して直交するように設けられているため、本例のように補強フレーム7を板状にすると、補強フレーム7を含んだ手摺支柱1全体の横方向の剛性を効果的に向上できる。
【0052】
なお、本例では、補強フレーム7は、手摺支柱1の被取付部材側となる正面側に設けられているが、手摺支柱1の反被取付部材側となる背面側に設けられてもよい。
【0053】
また、本実施の形態においては、補強フレーム7が金属板からなり、金属板を手摺支柱1の正面側の軸方向中間部と連結部2との間に架設させている。この構成によると、補強フレーム7を手摺支柱1の軸方向下部と連結部2との間に架設する場合に比べて、補強フレーム7が長く形成されるため、手摺支柱1に曲げモーメントが作用する場合に手摺支柱1の基端に作用する応力をより補強フレーム7で負担できる。加えて、補強フレーム7を手摺支柱1の軸方向上部と連結部2との間に架設した場合、手摺支柱1に曲げモーメントが作用する場合に手摺支柱1の基端に作用する応力の一部を負担する効果は高まるものの手摺支柱1が過剰に長くなるため、手摺装置Aの重量の増加や材料費の増大を招来する。したがって、本例のように補強フレーム7を手摺支柱1の正面側の軸方向中間部と連結部2との間に架設した場合には、手摺支柱1に曲げモーメントが作用する場合に、補強フレーム7によって手摺支柱1の基端に作用する応力の一部を負担する効果の向上のメリットと、手摺装置Aの重量の増加や材料費の増大のデメリットのバランスが取れた手摺装置Aとなる。
【0054】
ただし、補強フレーム7は、手摺支柱1の軸方向下部又は上部と連結部2との間に架設されていても、手摺支柱1の基端に作用する応力の一部を負担できる効果は発揮されるため、手摺支柱1の軸方向中間部と連結部2との間に架設される構成には限定されない。
【0055】
また、本実施の形態に係る補強フレーム7の材質は、金属製であれば特に限定されないが、例えば鉄やステンレスなどの靱性に優れる金属であることが好ましい。靱性に優れる金属で補強フレーム7を形成した場合、補強フレーム7は撓んでも折れにくいため、手摺支柱1の基端に作用する応力の一部を負担する効果に優れる。
【0056】
また、
図2に示す本発明の一実施の形態に係る手摺装置Aでは、補強フレーム7が、台形状又はC字状の屈曲部7Aと、屈曲部7Aの上端と下端とにそれぞれ設けられ手摺支柱1の外周に沿って延びて手摺支柱1にそれぞれ固着される先端板部7B及び下端板部7Cと、下端板部7Cの反屈曲部側端から手摺支柱1に対して離間する方向に傾斜して延びて連結部2に連結される傾斜板部7Dとを有する金属板で構成されている。この構成によると、補強フレーム7が手摺支柱1の基端に作用する応力の一部を負担する補強部材としてだけでなく、取手としても機能するため、手摺装置Aの取付作業性が向上する。
【0057】
また、
図3に示す本発明の他の実施の形態に係る手摺装置Aでは、補強フレーム7が、手摺支柱1に対して平行に延び一端が連結部2に連結される板状本体7Eと、手摺支柱1の外周に沿って延び手摺支柱1に固着される先端板部7Fとを有する金属板で構成されている。この構成によると、板状本体7Eが連結部2に直接連結されるため、補強フレーム7の簡素化を図ることができる。
【0058】
また、本実施の形態に係る手摺装置Aは、連結部2が、手摺支柱1の基端に連結されるコ字状の挟持片12と、挟持片12の手摺支柱1側面を貫通するとともに挟持片12に連結される外筒15と、一端が外筒15から突出された状態で外筒15に保持されるボルト軸13と、ボルト軸13に螺合され外筒15内を軸方向に移動自在に設けられる内筒16と、内筒16の反ボルト軸側端部に連結された皿部14とを有し、補強フレーム7の一端は外筒15に連結されている。この構成によると、連結部2の補強フレーム7と連結される箇所が、外筒15と内筒16からなる二重管となっているため、外筒15と内筒16の断面形状を真円以外の形状にすれば、外筒15によって内筒16を回り止めできる。その上、補強フレーム7が、中実に形成されるよりも剛性が高くなる筒状の外筒15に連結されているため、連結部2の補強フレーム7と連結される箇所の剛性を高くできる。さらに、内筒16の外周を外筒15の内周に摺接させれば、内筒16と外筒15とで曲げモーメントを受けるので連結部2の補強フレーム7と連結される箇所の剛性をより高くできる。したがって、本実施の形態に係る手摺装置Aによれば、手摺支柱1に曲げモーメントが作用する際に、補強フレーム7を介して連結部2に応力が作用しても、連結部2は破損しない。
【0059】
また、本実施の形態に係る手摺装置Aは、手摺支柱1の反連結部側に設けられ親綱4の一端を結合可能な親綱保持部3を備え、親綱保持部3が、手摺支柱1の反連結部側に設けられ親綱4の展張方向に対して直交する方向から見て左右に並べて配置されて親綱4の一端を結合可能な一対の孔9,9を有する断面C形の筒体8と、筒体8内にスライド自在に挿入可能であって筒体8とともに棒材を挟持可能な楔Kとを有している。この構成によると、隣り合う手摺支柱1,1間に、親綱4と棒材を選択的に架け渡すことができる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱なく改造、変形及び変更ができるのは当然である。
【符号の説明】
【0061】
1・・・手摺支柱、2・・・連結部、3・・・親綱保持部、4・・・親綱、5・・・鉄骨梁(被取付部材)、7・・・補強フレーム、7A・・・屈曲部、7B・・・先端板部、7C・・・下端板部、7D・・・傾斜板部、7E・・・板状本体、7F・・・先端板部、8・・・筒体、9・・・孔、12・・・挟持片、13・・・ボルト軸、14・・・皿部、15・・・外筒、16・・・内筒、A・・・手摺装置、K・・・楔