(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】導光板、及び、それに用いるホログラム記録装置、ホログラム記録方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/32 20060101AFI20230718BHJP
G03H 1/04 20060101ALI20230718BHJP
G03H 1/22 20060101ALI20230718BHJP
G02B 27/02 20060101ALN20230718BHJP
【FI】
G02B5/32
G03H1/04
G03H1/22
G02B27/02 Z
(21)【出願番号】P 2019125130
(22)【出願日】2019-07-04
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】501009849
【氏名又は名称】株式会社日立エルジーデータストレージ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 真由美
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 健
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-038012(JP,A)
【文献】特開2007-093688(JP,A)
【文献】特開2010-102784(JP,A)
【文献】特開2014-203500(JP,A)
【文献】特開2009-145620(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0013103(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/32
G03H 1/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光の一部を回折し、
前記一部以外の光を導光する光回折部を有する導光板
の製造装置であって、
光回折部は、
記録媒体に体積型ホログラムを記録することにより製作され、
レーザ光源と、
該レーザ光源から出射した光ビームの偏光方向を制御する第1の1/2波長板と、
該第1の1/2波長板を経た光ビームに対してS偏光を反射しA光線として出射しP偏光を透過してB光線として出射し2方向に分岐する偏光ビームスプリッタと、
前記A光線を反射する第1のウェッジプリズムミラーと、
前記B光線をS偏光に偏光する第2の1/2波長板と、
該第2の1/2波長板で偏光されたS偏光を反射する第2のウェッジプリズムミラーと、
前記第1のウェッジプリズムミラーで反射された第1の光線と前記第2のウェッジプリズムミラーで反射された第2の光線が交わる位置に前記記録媒体の位置を移動するように、前記記録媒体を保持し前記記録媒体の位置調整を行う一軸ステージを有し、
前記偏光ビームスプリッタと前記記録媒体の互いの中心を結ぶ線に対して、前記第1及び第2のウェッジプリズムミラーは互いに線対称の位置に配置され、
前記第1及び第2のウェッジプリズムミラーの回転により前記記録媒体に照射される前記第1及び第2の光線の角度を変化させて前記記録媒体内に角度多重記録したホログラムを形成し、該ホログラムの角度多重記録により回折する異なる波長に対して回折する光出力のパワー密度が同じであるように前記第1及び第2のウェッジプリズムミラーの回転角度に応じて前記第1及び第2の光線の光束径を変化させることを特徴とする導光板の製造装置。
【請求項2】
入射光の一部を回折し、前記一部以外の光を導光する光回折部を有する導光板の製造方法であって、
光回折部は、記録媒体に体積型ホログラムを記録することにより製作され、
レーザ光源から出射した光ビームの偏光方向を制御しS偏光とP偏光の光を出力し、
前記S偏光と前記P偏光を分岐しそれぞれA光線とB光線として出射し、
前記A光線を第1のウェッジプリズムミラーで反射させ、
前記B光線をS偏光に偏光し、該偏光されたS偏光を第2のウェッジプリズムミラーで反射させ、
前記第1のウェッジプリズムミラーで反射された第1の光線と前記第2のウェッジプリズムミラーで反射された第2の光線が交わる位置に前記記録媒体の位置を移動させ、
前記第1及び第2のウェッジプリズムミラーの回転により前記記録媒体に照射される前記第1及び第2の光線の角度を変化させて前記記録媒体内に角度多重記録したホログラムを形成し、該ホログラムの角度多重記録により回折する異なる波長に対して回折する光出力のパワー密度が同じであるように前記第1及び第2のウェッジプリズムミラーの回転角度に応じて前記第1及び第2の光線の光束径を変化させることを特徴とする導光板の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の導光板の製造方法において、
前記S偏光と前記P偏光を分岐する素子と前記記録媒体の互いの中心を結ぶ線に対して、前記第1及び第2のウェッジプリズムミラーは互いに線対称の位置に配置され、
前記記録媒体を挟み込む記録プリズムに前記第1及び第2の光線が垂直に入射するように構成した配置を基準状態として、
前記記録プリズムからの戻り光を用いて、前記S偏光と前記P偏光を分岐する素子と、前記記録媒体と、前記第1及び第2のウェッジプリズムミラーが前記基準状態となるように、それぞれの位置調整を行うことを特徴とする導光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイなどの映像表示装置に用いる導光板に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)などの映像表示装置では、プロジェクタ(映像投影部)から出射された映像光をユーザの目まで伝搬させるための光学系として、導光板が用いられる。ここで、光回折機能を有する体積型ホログラムは、薄型でかつ波長選択性や角度選択性などの特性を有するために、選択的に光を回折させることができ、これをHMDの導光板に採用することで、薄型でかつ広い視野(FoV:field of view)を有する導光板を実現できる。
【0003】
本技術分野における先行技術文献として特許文献1がある。特許文献1では、表面法線に制約される必要がない反射軸を有するスキューミラーと称される光反射装置が開示されている。スキューミラーは、比較的広い入射角の範囲に亘って実質的に一定の反射軸を有するように構成され、ホログラム技術を用いた導光板やその作成方法、導光板製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ミラーを用いてホログラムを記録実施しているが、体積型ホログラムを用いたHMDの導光板には、映像表示装置として色ムラについての課題があり、それについて考慮されていない。
【0006】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、色ムラの少ない体積型ホログラムを用いた導光板、及び、それに用いるホログラム記録装置、ホログラム記録方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記背景技術及び課題に鑑み、その一例を挙げるならば、入射光を回折するホログラムを製作するためのホログラム記録装置であって、レーザ光源と、レーザ光源から出射した光ビームの偏光方向を制御する第1の1/2波長板と、第1の1/2波長板を経た光ビームに対してS偏光を反射しA光線として出射しP偏光を透過してB光線として出射し2方向に分岐する偏光ビームスプリッタと、A光線を反射する第1のウェッジプリズムミラーと、B光線をS偏光に偏光する第2の1/2波長板と、第2の1/2波長板で偏光されたS偏光を反射する第2のウェッジプリズムミラーと、第1のウェッジプリズムミラーで反射された光線と第2のウェッジプリズムミラーで反射された光線が照射される記録媒体を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、再生画像の色ムラを低減することが出来る導光板、及び、それに用いるホログラム記録装置、ホログラム記録方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1の前提となる体積型ホログラムを用いたHMDの導光板の片目側の断面図である。
【
図2】実施例1の前提となる体積型ホログラムの製造方法の概略説明図である。
【
図3】実施例1の前提となる体積型ホログラムを再生する場合の光学配置である。
【
図4】実施例1の前提となる体積型ホログラム記録装置の構成図である。
【
図5】実施例1の前提となる体積型ホログラム記録の処理フロ―図である。
【
図6】実施例1の前提となるミラー角度とミラーの入射光径/出射光径の関係を示す図である。
【
図7】実施例1の前提となるミラーと記録媒体との間隔に対する記録媒体上での光径と記録パワー密度の関係を示す図である。
【
図8】実施例1におけるウェッジプリズムの基本的な原理を説明する図である。
【
図9】実施例1におけるウェッジプリズム搭載の場合と従来のミラーの場合とでのミラーと記録媒体との間隔に対する記録媒体上での光径及び記録パワー密度の違いを示す図である。
【
図10】実施例1におけるウェッジプリズムを搭載した体積型ホログラムの記録装置の構成図である。
【
図11】実施例1におけるウェッジプリズムに対する光線の伝播の様子を説明する図である。
【
図12A】実施例1における出射光の出射角度が記憶媒体の中心軸に対して角度+φから-φの間の場合のウェッジプリズムに対する光線の伝播の様子を説明する図である。
【
図12B】実施例1における出射光の出射角度が記憶媒体の中心軸に対して角度+φの場合のウェッジプリズムに対する光線の伝播の様子を説明する図である。
【
図12C】実施例1における出射光の出射角度が記憶媒体の中心軸に対して角度-φの場合のウェッジプリズムに対する光線の伝播の様子を説明する図である。
【
図13】実施例2における体積型ホログラムの記録装置の構成図である。
【
図14】実施例2における、PBSまたはウェッジプリズムまたは記録プリズムと記録媒体の位置・角度調整方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、本実施例の前提となる、体積型ホログラム(以降、スキューミラー、または、単にホログラムと省略する場合あり)を用いたHMDの導光板について説明する。ここで、体積型ホログラムとは、3次元的に(体積的に)屈折率分布が形成されている回折光学素子である。
【0012】
図1は、体積型ホログラムを用いたHMDの導光板の片目側の断面図である。
図1において、図示しない映像投影部から出射した光線群は、入射カプラー201を介して導光板200に入射する。入射カプラー201は、導光板に入射した光線群の方向を、導光板200内を全反射によって伝搬できる方向に変換する。導光板200内に入射した光線群は、全反射を繰り返すことで伝搬され、出射カプラー203に入射する。出射カプラー203は、ミラーのように一部光が回折し、そのほかの光を導光する特性の光回折部を有し、多数の出射光線群310が面内で複製されて出射しユーザの目に届けられる。
【0013】
入射カプラー201はプリズムにより構成されており、出射カプラー203を構成する体積型ホログラムは反射型ホログラムで構成している。以下、この体積型ホログラムの製造方法について示す。
【0014】
図2は、体積型ホログラムの製造方法の概略説明図である。体積型ホログラムは、感光性材料であるフォトポリマー等の記録媒体510にレーザ光等の可干渉性(コヒーレンス)の高い光源から出射される記録光A520A、記録光B520Bによって作られる干渉縞をホログラムとして記録することにより製作できる。ここで、
図2に示すようにx軸、y軸と、紙面垂直方向にz軸を定義する。記録光A520A,記録光B520Bは、ともにy軸からθw(記録角度)だけx軸に対して線対称に傾いた平行光である。これにより、干渉縞面は、x-z面に平行に形成される。また、記録媒体をx軸からθgだけ傾かせる。干渉縞面が導光板における反射面(スキューミラー面)となるため、θgは反射面の記録媒体面からの傾きとなる。また、記録媒体510の表面反射による記録時の光利用効率低下および記録媒体での屈折の影響を避けるため記録プリズム500を用いている。記録媒体は記録プリズムに挟み込みこまれた状態となっている。
【0015】
矢印530に示すように、z軸を回転中心として記録光A520A、記録光B520Bをミラーで回転させ記録光同士のなす角度を変えて多重記録を行う。ここで、x軸に対して常に記録光が線対称になるようにすることで、干渉縞面を常にx-z面と平行にすることができる。これにより、干渉縞面(反射面)を記録媒体面からθgだけ傾いたまま固定して、干渉縞ピッチの異なるホログラムを多重記録することができる。
【0016】
図3は、上記の方法で多重記録した体積型ホログラムを、再生する場合の光学配置を示している。ここで、「再生」とは、ホログラムに入射光を照射して光を回折させることを意味し、今後この意味で用いる。
【0017】
体積型ホログラムにy軸方向からθp(再生角度)だけ傾いた再生光線550を入射する(媒体に対する入射角度は、θin=θp+θgとなる、なお、570は記録媒体510の入射面における法線である。)と、Bragg選択性を満たす場合は、回折光560がy軸からθdだけ傾いた角度で出射する。再生光線が、RGB光に対応する広い波長範囲と、FoVに対応する広い角度範囲を有している場合に、体積ホログラムが回折することができれば、体積型ホログラムは導光板の出射カプラーとして用いることができる。
【0018】
図4は、体積型ホログラム記録装置の構成図である。ホログラムは記録媒体(フォトポリマー)に2方向から光を照射し、光を干渉させホログラムを記録する。導光板で画像を再生するため、広範囲の波長に対応したホログラムを記録する必要がある。上記に対応したホログラムの作成は、ミラー角度を変化させ多重記録することで対応出来る。
【0019】
光学部品の位置関係としては、偏光ビームスプリッタ(PBS)405と記録媒体510は同一線上に位置し、2つのミラー400A、400Bは他の同一線上に位置し、偏光ビームスプリッタ(PBS)405、記録媒体510、2つのミラー400A、400Bで左右と上下対称のひし形を形成する。
【0020】
記録の角度は、
図4上の2つのミラー400A、400Bを同時に対称な方向(例えばミラー400Aが時計回りであればミラー400Bは反時計回り等)に動かし変化させる。光の流れを、
図5に示すフロ―図を基に
図4を参照しながら説明する。
【0021】
図5において、まず、ステップ10で、レーザ光源401から光ビームが出射し、ステップ11で、図示しないシャッタに入射する。そして、ステップ12で、シャッタが開いている時に通過した光ビームは、1/2波長板(HWP)402によってp偏光とs偏光の光量比が所望の比になるように偏光方向が制御された後、ステップ13で、ビームエキスパンダ403により媒体面上での記録に必要な大きさに拡大され平行光とされる。そして、ステップ14で、折り返しミラー404で折り返され、ステップ15で、偏光ビームスプリッタ(PBS)405で、干渉光を作成するため2方向に分岐される。
【0022】
偏光ビームスプリッタ(PBS)405にて反射した光ビームはS偏光でA光線420A、透過した光ビームはP偏光でB光線420Bになり、ステップ16で、B光線420Bは、1/2波長板(HWP)406を透過してP偏光をS偏光に偏光して、ステップ17で、ミラー400Bで反射される。一方、偏光ビームスプリッタ(PBS)405にて反射したA光線420Aは、ステップ18で、ミラー400Aで反射される。そして、ステップ19で、ミラー400A、400Bで反射されたそれぞれの光ビームは記録プリズム500に照射される。そして、ステップ20で、それぞれの光ビームは記録媒体510へ照射され、2光線が記録媒体510内で干渉して干渉縞(光の強度分布)を形成し、この干渉縞によって記録媒体(フォトポリマー)が感光し、ホログラムが形成される。なお、408は、記録プリズム500や記録媒体510を保持し、位置調整を行う一軸ステージである。
【0023】
ここで、ホログラムは、ミラーで反射した(ミラー出射)光が記録媒体に照射し記録されるので、ホログラムの大きさはミラー出射光の大きさ(光径)に依存する。
【0024】
図6は、ミラー角度とミラーの入射光径/出射光径の関係を示す図である。
図6に示すように、ミラー400の入射光径をDとすると出射光径もDとなり、これはミラー角度を変えても一定である。そのため、
図7に示すように、ミラー400と記録媒体510との間隔が近い場合(a)と遠い場合(c)とその中間の場合(b)においては、ミラー出射光の記録媒体上での光径は記録角度に依存し変化する。すなわち、(e)に示すように、ミラー400と記録媒体510との間隔が近い場合(a)は記録媒体上での光径は狭くなり、ミラー400と記録媒体510との間隔が中間の場合(b)は記録媒体上での光径は中であり、ミラー400と記録媒体510との間隔が遠い場合(c)は記録媒体上での光径は広くなる。また、記録媒体上の記録光の強度分布(記録パワー密度)も(d)(e)に示すように変化する。このように、ミラー角度が変化すると、ホログラムを記録する光のパワー密度が各記録で不均一になる。光が導光板内を導光しホログラムにより回折されて再生画像となるが、ホログラムの多重記録角度により導光出来る波長が異なる。角度が近い側で青色(B)、中間で緑(G)、遠い側で赤(R)に相当する波長を回折させることができる。3色を重ねると白色を実現できるが、記録密度が不均一になると、一部の波長(色)の回折効率が低下し、目で見たときに色合いがずれるなど再生画像に色ムラが生じる。
【0025】
ここで、色ムラとは、画面全体の色の不均一性を表す指標であり、目で見たときの部分的な色あいのずれ(所望の色と異なる色が部分的に表示されてしまうこと)である。色ムラは各点の色度を用い判断できる。例えば、白色を表示させたい場合、白色はR(赤)G(緑)B(青)を組み合わせ実現する。色度図上で白は白色点と呼ばれx座標,y座標ともにおよそ0.33である。白色点からx,yがずれている部分が画面上にあると色ムラとして視認される。
【0026】
また、レーザ光を有効に使用出来ていないため、露光時間が増加しノイズの影響を受けやすくなってしまうという課題もある。
【0027】
このように、体積型ホログラムを用いたHMDの導光板には、映像表示装置として色ムラについての課題がある。
【0028】
そこで、本実施例では、色ムラの少ない体積型ホログラムを用いた導光板を実現する。以下、本実施例について説明する。
【0029】
本実施例では、媒体記録時の光束径を最適化するために、出射角と出射光の光径を変化させることが可能な光学素子を用いる。この光学素子として、反射膜(ミラー)を有し、傾斜した光学面をもつウェッジプリズムミラー(以下、ウェッジプリズムと称する)を用いる。
【0030】
図8は、本実施例におけるウェッジプリズムの基本的な原理を説明する図である。ウェッジプリズムでは、入射角αiや入射位置に応じて、レンズの厚みが変化するため、破線で示される入射光のウェッジプリズムへの入射角αiが小さいとき(a)と大きいとき(b)では出射角αoと出射光の光径が変化する。このように、ウェッジプリズムミラーの内面反射を利用することで、光線の入射角度に応じて、出射光束径を変化させることが出来る。(c)は、ミラー角度とミラーの入射光径/出射光径の関係を示す図である。
図8(c)に示すように、ミラーの入射光径Dとするとミラー角度に応じて出射光径はD‘、やD’‘となり、ミラー角度に依存する。
【0031】
よって、ミラー角度に応じて任意の出射光径にすることで、記録媒体上での光径をおよそ一定とできる。
【0032】
図9は、本実施例におけるウェッジプリズムを搭載した場合と、従来のミラーの場合とでの、ミラーと記録媒体との間隔に対する記録媒体上での光径及び記録パワー密度の違いを示した図である。
図9の示すように、従来のミラーの場合はミラーと記録媒体との間隔に応じて記録媒体上での光径は変化していたが、ウェッジプリズムを搭載したミラーの場合は、およそ一定とできる。
【0033】
また、ミラーを用いた場合、記録光の記録媒体上でのパワー密度は角度に依存し変化するが、ウェッジプリズムを用い、記録角度に応じて、ウェッジプリズムの出射光を変化させることで、角度に依存せずほぼ同じパワー密度で体積ホログラムを記録することが出来る。また、不要な光が減少するため光利用効率を向上させることが可能となる。さらに、記録媒体上での光束径をほぼ一定にすることができるため、再生波長による回折効率のムラを低減することができ、色ムラを低減することができる。
【0034】
図10は、本実施例における、ウェッジプリズムを搭載した体積型ホログラムの記録装置の構成図である。
図10において、
図4と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図10において、ウェッジプリズム450A、450Bを同時に対称な方向に動かし変化させることで、記録媒体510内で干渉して干渉縞を形成し、この干渉縞によって記録媒体(フォトポリマー)が感光し、ホログラムが形成される。
【0035】
ここで、ウェッジプリズムは入射と出射の角度関係が変化するため、記録媒体上での2光束が重なりホログラムが形成される位置が、ミラーの場合の位置と異なる。このため、ミラーからウェッジプリズムに載せ変える場合は、2光束が重なる位置をステージ上で再調整する必要がある。この調整は装置組み立て時に一度のみ実施すればよい。
【0036】
また、ウェッジプリズムを搭載した体積型ホログラムの製造装置の設計上の注意点として、ウェッジプリズムの表面反射光について考慮する必要がある。
【0037】
図11は、ウェッジプリズムに対する光線の伝播の様子を示したものである。ここで、光線は光束の中心を示したものである。
図11において、光束207がウェッジプリズム450に入射角度θinで入射すると(ここで、305はウェッジプリズム450の入射面における法線である。)、光束はウェッジプリズム450を、屈折、内面反射して、記録媒体照射有効径304内を通り記録媒体内に伝播する。ここで、ウェッジプリズム450の表面反射光303は、反射の法則から、反射角θout=θinで反射する。この表面反射光303は、
図11のように、記録媒体照射有効径304内を通り記録媒体内に伝播すると迷光となり、ホログラムの記録/再生に影響を及ぼす。
【0038】
ここで、θstrは、表面反射光303と記憶媒体の中心軸306のなす角度であり、φは、記憶媒体の中心軸306と記憶媒体の端面を通る光線301または302とのなす角度である。記録角度を変化させることで角度多重記録を行うが、この記録角度の変化範囲は記録媒体照射有効径304であり、記憶媒体の中心軸306に対して角度±φ(φ>0)である。
【0039】
この表面反射光303は、Anti-reflection coating(ARコート)やAnti-reflection structure(ARS)と呼ばれる技術で低減可能であるが、反射光を完全になくすことは困難であり、また素子の価格が高価になってしまう。
【0040】
この課題を解決するために、本実施例では
図12A、12B、12Cのような構成とする。ここで、
図12Aは、出射光(207)の出射角度が記憶媒体の中心軸306に対して角度+φから-φの間の場合、
図12Bは、+φの場合、
図12Cは、-φの場合を示している。すなわち、すべての記録角度範囲において、
θstr > φ …(数1)
の条件を満たすようにする。
【0041】
これにより、ウェッジプリズムの表面反射光303は、すべての記録角度において記録媒体外に伝播しウェッジプリズムの表面反射光303が迷光としてホログラムの記録/再生に影響を及ぼす問題を低減でき、かつ、記録光の記録媒体上光束径を補正することができる。
【0042】
また、このとき迷光は、
図12A、12B、12Cのように入射光側に伝播する構成と、
図11のように出射光側に伝播する構成が考えられるが、本実施例では入射光側に伝播する構成としている。すなわち、
θx - θout > φ …(数2)
の関係を満たすようにしている。ここで、θxは、ウェッジプリズム入射面の法線と記録媒体の中心軸とのなす角度である。
【0043】
また、数2は、反射の法則θin=θoutから、
θx - θin > φ …(数3)
とあらわす事もできる。
【0044】
また、ウェッジプリズムの頂角の求め方として、入射と出射角度の和が所望の記録角度範囲の時、所望の記録角度範囲の必要光束径の変化を計算し、その必要光束径の変化範囲と同等となる頂角をウェッジプリズムの頂角とする。記録角度範囲は、ウェッジプリズムの表面反射などを考慮し任意に設定することが出来る。例えば、
図10の導光板製造装置では、PBS405、記録媒体510、2つのウェッジプリズム450A、450Bで左右と上下対称のひし形を形成している。例えば2光束が交わる角度が90度をウェッジプリズム入射角度と出射角度の和を基準とし、記録角度範囲を±αdegとすると、頂角を変化させ計算した記録角度範囲(90±αdeg)の時の必要光束径と、上記計算した所望の記録角度範囲の必要光束径の変化が最も一致する頂角をウェッジプリズムの頂角とする。
【0045】
また、記録順番の色への影響も考慮する必要がある。すなわち、ホログラムの多重記録数M#は記録に従い順次消費されていくので、はじめに記録した色の影響を受けやすい。ここで、一方向に連続して記録した場合、同色を連続して記録を行い、複数記録した後に、別の色を連続して記録するといった順序での記録が考えられる。この場合、はじめに同一色で多重記録数M#が消費され、他の色での記録時には多重記録数が不足する可能性がある。このため、同一の色を連続して記録せずに、RGBの各色を繰り返し順番に記録し、各色の多重記録数を平均的に消費させ、意図しないホログラムの影響を低減させる。記録の順番を変更することで、再生色の出方が異なり再生光を所望の色に近づけられる。
【0046】
また、露光時間についても考慮する必要がある。すなわち、記録媒体への記録中にノイズの影響を受けた場合、意図しないホログラムが形成されてしまい、再生性能が悪化するなど、品質への影響が大きい。このため、露光時間を短くすることで、ノイズ影響を低減することが出来る。
【0047】
以上のように、本実施例によれば、再生画像の色ムラを低減することが出来る導光板、及び、それに用いるホログラム記録装置、ホログラム記録方法を提供できる。また、角度に依存せず所望のパワー密度で記録媒体にホログラムを記録することが可能となり、再生画像の色ムラを低減することが出来る。また、光を有効に利用することが可能となり、露光時間が短縮しノイズに強くなるなどの利点がある。
【実施例2】
【0048】
図13は、本実施例における、体積型ホログラム記録装置の構成図である。
図13において、
図10と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図13において、
図10と異なる点は、PBS405、記録媒体510及び記録プリズム500、2つのウェッジプリズム450A、450Bの位置関係が、左右と上下対称の正方形を形成している点である。
【0049】
図13において、記録プリズム500の入射面にA光線420AとB光線420Bが垂直に入射する状態を基準状態とする。この状態で、PBS405または記録プリズム500またはウェッジプリズム450A、450Bの位置・角度調整を実施する。
【0050】
以下、調整方法について説明する。
【0051】
記録媒体510は記録プリズム500に挟み込みこまれた状態となっている。記録プリズム500はホログラム記録装置上からみた状態で正方形の形となっている。A光線420AとB光線420Bが記録プリズム500に垂直に入射する基準状態にて、記録プリズム500やウェッジプリズム450A、450Bの位置・角度の調整を実施する。ホログラム記録装置では、A光線420AとB光線420Bが記録媒体510上で重なりホログラムを形成するので、A光線420AとB光線420Bの位置がずれてしまうとホログラムの形成されない領域ができてしまう。また、A光線420AとB光線420Bの角度がずれてしまうと形成されるホログラムの角度ずれが生じてしまう。さらに、記録プリズム500の角度がずれていると、所望のホログラムを記録することができない。このため、A光線420A、B光線420B、記録プリズム500の位置・角度調整が必要となる。
【0052】
基準状態でA光線420AとB光線420Bは記録プリズム500の入射面に対し90度で入射する。A光線420AとB光線420Bは記録プリズム500の面に対し垂直で入射するので、表面反射の角度も垂直となる。この場合、A光線420AとB光線420Bの表面反射は、それぞれ来た光路を戻り、PBS405入射光以前の光路では一致する。そのため、基準状態でPBS405よりも手前の光路に絞り410を追加し、絞り位置上でA光線420AとB光線420Bの表面反射光が略一致するように、PBS405またはウェッジプリズム450A、450Bまたは記録プリズム500と記録媒体510の位置・角度を調整する。
【0053】
図14は、本実施例における、PBSまたはウェッジプリズムまたは記録プリズムと記録媒体の位置・角度調整方法の説明図である。
図14において、(a)は、調整前の絞り位置でのA光線420AとB光線420Bの記録プリズム500での表面反射の戻り光を示し、A光線420Aの戻り光430AとB光線420Bの戻り光430Bは図上で左右に位置している。これに対して、(b)は、調整後の戻り光を示し、A光線420AとB光線420Bの戻り光がピンホール(絞り)411の一点で一致している。このように、光線420AとB光線420Bの戻り光がピンホール(絞り)411の一点で一致するようにPBS405またはウェッジプリズム450A、450Bまたは記録プリズム500と記録媒体510の位置・角度を調整すればよい。
【0054】
なお、調整時には、A光線420AとB光線420Bの光束径を絞りによって小さくし、記録媒体にあたらない位置に入射させることで、記録媒体510で不要に露光されることを防いでいる。また、調整にはウェッジプリズム450A、450Bまたは記録プリズム500の下に配置したx軸、y軸、z軸、回転ステージを動かし合わせこむ。
【0055】
このように、本実施例によれば、PBS405、記録媒体510及び記録プリズム500、2つのウェッジプリズム450A、450Bの位置関係が、左右と上下対称の正方形を形成している様に配置し、A光線420AとB光線420Bが記録プリズム500に垂直に入射するように構成することで、戻り光を用いて、PBS405またはウェッジプリズム450A、450Bまたは記録プリズム500及び記録媒体510の位置調整を行うことが出来る。この調整は記録媒体を設置する度に実施する必要がある。
【0056】
なお、上記のように、PBS405、記録媒体510及び記録プリズム500、2つのウェッジプリズム450A、450Bの位置関係が、左右と上下対称の正方形を形成している様に配置して、それぞれの位置・角度を調整する手法は、ウェッジプリズム450A、450Bを、
図4で示した従来のミラー400A、400Bに換えても適用できる。この際には、ウェッジプリズムによる色ムラの低減効果はないものの、位置・角度調整を簡単に実現できるという効果がある。
【0057】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
200:導光板、203:出射カプラー、207光束、301、302:記憶媒体の端面を通る光線、303:表面反射光、304:記録媒体照射有効径、306:記憶媒体の中心軸、310:出射光線群、400、400A、400B:ミラー、401:レーザ光源、402、406:1/2波長板(HWP)、403:ビームエキスパンダ、404:折り返しミラー、405:偏光ビームスプリッタ(PBS)、408:一軸ステージ、410:絞り、411:ピンホール(絞り)、420A:A光線、420B:B光線、430A:A光線420Aの戻り光、430B:B光線420Bの戻り光、450、450A、450B:ウェッジプリズム(ウェッジプリズムミラー)、500:記録プリズム、510:記録媒体、520A:記録光A、520B:記録光B、550:再生光線、560:回折光。