(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】補強部材が付設された合成樹脂製構造体
(51)【国際特許分類】
E06B 3/22 20060101AFI20230718BHJP
E06B 1/28 20060101ALI20230718BHJP
E06B 3/96 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
E06B3/22
E06B1/28
E06B3/96 A
(21)【出願番号】P 2019126808
(22)【出願日】2019-07-08
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】300088186
【氏名又は名称】株式会社エクセルシャノン
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】赤岸 由昂
(72)【発明者】
【氏名】澄川 昌大
(72)【発明者】
【氏名】吉村 拓朗
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-159214(JP,A)
【文献】特開2015-224444(JP,A)
【文献】特開2001-082041(JP,A)
【文献】実開平05-032681(JP,U)
【文献】実開昭56-056906(JP,U)
【文献】実公昭41-009880(JP,Y1)
【文献】特開2010-150819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00 - 1/70
E06B 3/04 - 3/46
E06B 3/50 - 3/52
E06B 3/96 - 3/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の熱可塑性合成樹脂から成形され且つ少なくとも主要部の横断面形状は同一である第一の部材と第二の部材とを含み、
該第一の部材の片端と該第二の部材の片端とは相互に溶着されており、
該第一の部材と該第二の部材
とには、23℃で測定した曲げ弾性率が該第一の部材及び該第二の部材の曲げ弾性率よりも高い補強部材が付設されており、横断面において該第一の部
材における該補強部材の配設位置に対応する該第二の部
材の対応位置には該補強部材が付設されていな
く、横断面において該第二の部材における該補強部材の配設位置に対応する該第一の部材の対応位置には該補強部材が付設されていない、
ことを特徴とする構造体。
【請求項2】
該補強部材の軟化点は該第一の部材及び該第二の部材の軟化点よりも高い、請求項1記載の構造体。
【請求項3】
框の上框部材及び下框部材を夫々構成する2個の該第一の部材と該框の片側框部材及び他側框部材を夫々構成する2個の該第二の部材とを含み、該上框部材の両端が夫々該片側框部材及び該他側框部材の上端に溶着されており、該下框部材の両端が夫々該片側框部材及び該
他側框部材の下端に溶着されている、請求項1
又は2記載の構造体。
【請求項4】
該第一の部材においては水平に延在する内側壁及び/又は外側壁の内面に該補強部材が付設されている、請求項
3記載の構造体。
【請求項5】
該第二の部材においては鉛直に延在する室内側壁及び/又は室外側壁の内面に該補強部材が付設されている、請求項
3又は
4記載の構造体。
【請求項6】
窓枠の上枠部材及び下枠部材を夫々構成する2個の該第一の部材と、該窓枠の片側枠部材及び他側枠部材を夫々構成する2個の該第二の部材を含み、該上枠部材の両端が夫々該片側枠部
材及び該他側枠部材の上端に溶着されており、該
下枠部材の両端が夫々該片側枠部材及び該他側枠部材の下端に溶着されている、請求項1
又は2記載の構造体。
【請求項7】
該熱可塑性合成樹脂は塩化ビニル樹脂である、請求項1から
6までのいずれかに記載の構造体。
【請求項8】
該補強部材は金属或いは強化材料含有合成樹脂から形成されている、請求項1から
7までのいずれかに記載の構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一の熱可塑性合成樹脂から成形され且つ主要部の横断面形状は同一である第一の部材と第二部材との夫々の片端が相互に溶着されており、第一の部材と第二の部材とには23℃で測定した曲げ弾性率が第一の部材及び第二の部材の曲げ弾性率よりも高い補強部材が付設されている形態の構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
同一の熱可塑性合成樹脂(例えば塩化ビニル樹脂)から成形され且つ主要部の横断面形状は同一である第一の部材と第二の部材との夫々の片端が相合に溶着された構造体の典型例として、下記特許文献1及び2に開示されている如く、建造部における框或いは窓枠を挙げることができる。框は上框部材及び下框部材を構成する2個の第一の部材と片側框部材及び他側框部材を構成する第二の部材を含み、上框部材の両端が夫々片側框部材及び他側框部材上端に溶着されており、下框部材の両端が夫々片側框部材及び他側框部材の下端に溶着されている。同様に、窓枠は上枠部材及び下枠部材を構成する2個の第一の部材と片側枠部材及び他側枠部材を構成する第二の部材を含み、上枠部材の両端が夫々片側枠部材及び他側枠部材上端に溶着されており、下枠部材の両端が夫々片側枠部材及び他側枠部材の下端に溶着されている。かような構造体においては、補強のために、第一の部材と第二の部材とにこれらの曲げ弾性率よりも高い曲げ弾性率を有する補強部材を付設することも当業者には周知である。補強部材は第一の部材と第二の部材との相互に対応する部位に付設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-71939号公報
【文献】特開2017-166248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、補強部材が付設されている従来の構造体には、次のとおりの解決すべき問題が存在する。補強部材は第一の部材と第二の部材との相互に対応する部位に付設されている故に、第一の部材の片端と第二の部材の片端との溶着が困難乃至煩雑なものになってしまう。更に詳述すると、通常、補強部材はインサート成形或いは共押出成形によって第一の部材及び第二の部材の成形と同時に第一の部材及び第二の部材に付設され、それ故に第一の部材及び第二の部材の全長に渡って補強部材が存在する。第一の部材と第二部材とを適切な温度に加熱して融着せんとする際には、補強部材と第一の部材又は第二の部材との溶着挙動、補強部材同士の溶着挙動、及び該第一の部材と該第二の部材との溶着挙動はそれぞれ異なる故に、様々な工夫が必要であった。
【0005】
例えば、第一の部材及び第二の部材を構成している熱可塑性合成樹脂の軟化点もよりも補強部材の軟化点が高い場合においては、以下の問題が生じることが多い。即ち、補強部材の軟化点が高い故に、第一の部材と第二の部材とを適切な温度に加熱した際、補強部材は未だ軟化(溶着される状態に)されておらず、第一の部材の端部と第二の部材の端部とを幾分押し潰して溶着せんとしても、溶融乃至軟化されていない補強部材によって第一の部材の端部と第二の部材の端部とを押し潰すことが阻害され、かくして第一の部材の片端と第二の部材の片端とを適切に溶着することができない。かかる事態を回避するためには、第一の部材及び第二の部材の各々の溶着すべき端部において、補強部材を研削して第一の部材及び第二の部材の端縁よりも補強部材の端縁を幾分引っ込めるという相当煩雑な前加工を遂行することが必要である。
【0006】
一方、補強部材の軟化点が第一の部材と第二の部材の軟化点よりも低い場合においても、補強部材の曲げ弾性率が第一の部材と第二の部材の曲げ弾性率よりも高い故に、、様々な工夫が必要になる。即ち、第一の部材と第二の部材とを溶着する場合には、補強部材同士の溶着挙動と第一の部材および第二の部材との溶着挙動とが異なるため、必ずしも、第一の部材および第二の部材とを溶着させる際の最適条件が、補強材同士、又は補強部材と第一の部材若しくは第二の部材との溶着条件に適している訳ではない。それ故に、より高い溶着強度を発揮させるためには、上記のように補強部材を研削するなどの工夫が必要になる。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、第一の部材と第二の部材とにはその全長に渡って補強部材が付設されていても、煩雑な前加工を遂行することなく第一の部材の片端と第二の部材の片端とを適切に溶着することができる構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討の結果、横断面において第一の部材における補強部材の配設位置に対応する第二の部材の対応位置には補強部材が付設されていなく、横断面において第二の部材における補強部材の配設位置に対応する第一の部材の対応位置には補強部材が付設されていない構成にする、ことによって上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0009】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する構造体として、
同一の熱可塑性合成樹脂から成形され且つ少なくとも主要部の横断面形状は同一である第一の部材と第二の部材とを含み、
該第一の部材の片端と該第二の部材の片端とは相互に溶着されており、
該第一の部材と該第二の部材とには、23℃で測定した曲げ弾性率が該第一の部材及び該第二の部材の曲げ弾性率よりも高い補強部材が付設されており、横断面において該第一の部材における該補強部材の配設位置に対応する該第二の部材の対応位置には該補強部材が付設されていなく、横断面において該第二の部材における該補強部材の配設位置に対応する該第一の部材の対応位置には該補強部材が付設されていない、
ことを特徴とする構造体が提供される。
【0010】
該補強部材の軟化点が該第一の部材及び該第二の部材の軟化点より高い場合に、本発明の構造体は特に有効である。好適形態においては、框の上框部材及び下框部材を夫々構成する2個の該第一の部材と該框の片側框部材及び他側框部材を夫々構成する2個の該第二の部材とを含み、該上框部材の両端が夫々該片側框部材及び該他側框部材の上端に溶着されており、該下框部材の両端が夫々該片側框部材及び該他側框部材の下端に溶着されている。そして、かかる好適形態においては、該第一の部材においては水平に延在する内側壁及び/又は外側壁の内面に該補強部材が付設されているのが望ましく、該第二の部材においては鉛直に延在する室内側壁及び/又は室外側壁の内面に該補強部材が付設されているのが望ましい。他の実施形態においては、窓枠の上枠部材及び下枠部材を夫々構成する2個の該第一の部材と、該窓枠の片側枠部材及び他側枠部材を夫々構成する2個の該第二の部材を含み、該上枠部材の両端が夫々該片側枠部材及び該他側枠部材の上端に溶着されており、該下枠部材の両端が夫々該片側枠部材及び該他側枠部材の下端に溶着されている。該熱可塑性合成樹脂は塩化ビニル樹脂であるのが好都合であり、該補強部材は金属或いは強化材料含有合成樹脂から形成されているのが好都合である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の構造体においては、横断面において第一の部材における補強部材の配設位置に対応する第二の部材の対応位置には補強部材が付設されていなく、横断面において第二の部材における補強部材の配設位置に対応する第一の部材の対応位置には補強部材が付設されていない故に、第一の部材の片端と第二の部材の片端とを溶着する際には第一の部材に付設された補強部材の端部は第二の部材の中空部位内に局部的に進入し、第二の部材に付設された補強部材の端部は第一の部材の中空部位内に局部的に進入し、それ故に第一の部材の片端部と第二の部材の片端部とを幾分押し潰すことが阻害されることがなく、従って第一の部材及び第二の部材の溶着すべき端部において付設された補強部材を研削して第一の部材及び第二の部材の端縁よりも補強部材の端縁を幾分引っ込めるという相当煩雑な前加工を遂行する必要なくして、第一の部材の片端と第二の部材の片端とを適切に溶着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に従って構成された構造体である框を窓枠と共に図示する、室内側から見た正面図。
【
図2】
図1に図示する框における上框部材及び下框部材を示す横断面図(垂直断面図)。
【
図3】
図1に図示する框における片側框部材部及び他側框部材を示す横断面図(水平断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、第一の部材と第二部材との夫々の片端が相互に溶着されており、第一の部材と第二の部材とには、23℃で測定した曲げ弾性率が、第一の部材及び第二の部材の曲げ弾性率よりも高い補強部材が付設されていることが前提要件である。補強部材の曲げ弾性率は、特に制限されるものではないが、第一の部材と第二の部材の曲げ弾性率よりも、1倍を超え100倍以下となることが好ましく、更には、1.5倍を超え85倍以下となることが好ましい。また、第一の部材と第二の部材の曲げ弾性率の絶対値も特に制限されるものではないが、2000乃至5000MPaであることが好ましい。曲げ弾性率は、JIS K7171に従って測定できる。
【0014】
第一の部材と第二の部材とは、同一の熱可塑性樹脂から形成されている。そして、補強部材の曲げ弾性率は、補強部材としての役割を果たすため、第一の部材及び第二の部材の曲げ弾性よりも高くなければならない。但し、補強部材の材質は、特に制限されるものではない。例えば、補強部材の材質は、第一の部材及び第二の部材と同じ材質であってもよいし、第一の部材及び第二の部材よりも軟化点が低い材質であってもよいし、第一の部材及び第二の部材よりも軟化点が高い材質であってもよい。同じ材質である場合には、第一の部材及び第二の部材よりも延伸倍率の高い熱可塑性樹脂から補強部材を形成することができる。以上のような材質の中でも、本発明の構造体においては、補強部材の材質は、第一の部材及び第二の部材よりも軟化点が高い材質であってもよい。軟化点はビカット軟化点を指す。これも制限されるものではないが、第一の部材及び第二の部材の軟化点は、80乃至120℃のものが好ましい。ビカット軟化点はJIS K7206に従い測定できる。
【0015】
以下、本発明に従って構成された構造体の典型例を図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0016】
図1には引違い窓2が図示されている。この引違い窓2は横長長方形状の窓枠4とこの窓枠4に横方向に移動自在に収納された2個の框6a及び6bから構成されている。
【0017】
それ自体は周知の形態でよい窓枠4は、上枠部材8、下枠部材10、片側(左側)枠部材12及び他側(右側)枠部材14を含んでいる。当業者には周知の如く、塩化ビニル樹脂の如き適宜の熱可塑性合成樹を押出成形することによって所要横断面形状を有する枠部材を形成し、そしてかかる枠部材を適宜に切断することによって、上枠部材8、下枠部材10、片側枠部材12及び他側枠部材14を形成することができる。上枠部材8、下枠部材10、片側枠部材12及び他側枠部材14は同一の断面形状を有する。上枠部材8の両端は上方に向かって外方に45度の傾斜角度で傾斜し、下枠部材10の両端は下方に向かって外方に45度の傾斜角度で傾斜している。片側枠部材12の上端及び他側枠部材14の上端は上方に向かって外方に45度の傾斜角度で傾斜し、片側枠部材12の下端及び他側枠部材14の下端は下方に向かって外方に45度の傾斜角度で傾斜している。上枠部材8の両端は夫々片側枠部材12の上端及び他側枠部材14の上端に溶着され、下枠部材10の両端は夫々片側枠部材12の下端及び他側枠部材14の下端に溶着され、かくして窓枠4が構成されている。
【0018】
本発明に従って構成された構造体である框6aは、上框部材16a、下框部材18a、片側框部材20a及び他側框部材22a(
図3)を含んでいる。同様に、本発明に従って構成された構造体である框6bも、上框部材16b、下框部材18b、片側框部材20b及び他側框部材22bを含んでいる。框6aの片側框部材20aの内面中間部には引手24aが配設され、框6bの他側框部材22bの内面中間部にも引手24bが配設されている。そしてまた、框6aの他側框部材22aには鍵機構26の片半部が配設され、框6bの片側框部材20bには鍵機構26の他半部が装着されている。引手24a及び24bの配設並びに鍵機構26の片半部及び他半部の配設を除いて、框6aと框6bとは実質上同一である。
【0019】
図2には框6aの上框部材16a及び下框部材18aが図示されており、
図3には框6aの片側框部材20a及び他側框部材22aが図示されている。
図2及び
図3を参照することによって明確に理解されるとおり、上框部材16a、下框部材18a、片側框部材20a及び他側框部材22aの横断面形状は実質上同一である。上框部材16a、下框部材18a、片側框部材20a及び他側框部材22aの横断面形状自体は周知の形状でよく、図示の実施形態においては、上框部材16a、下框部材18a、片側框部材20a及び他側框部材22aは室内側壁28、室外側壁30、内側壁32及び外側壁34を含んでいる。
図1を参照することによって理解されるとおり、上框部材16aの両端は上方に向かって外方に45度の傾斜角度で傾斜し、下框部材18aの両端は下方に向かって外方に45度の傾斜角度で傾斜している。片側框部材20aの上端及び他側框部材20aの上端は上方に向かって外方に45度の傾斜角度で傾斜し、片側框部材20aの下端及び他側框部材22aの下端は下方に向かって外方に45度の傾斜角度で傾斜している。上框部材16aの両端は夫々片側框部材20aの上端及び他側框部材22aの上端に溶着され、下框部材16aの両端は夫々片側框部材20aの下端及び他側框部材22aの下端に溶着され、かくして框6aが構成されている。
【0020】
図2及び
図3を参照して説明を続けると、本発明に従って構成された構造体を構成する框6aにおいては、上框部材16a及び下框部材18a(第一の部材を構成する)と片側框部材20a及び他側框部材22a(第二の部材を構成する)
とには補強部材が付設されている。そして、上框部材16a及び下框部材18a又は片側框部材20a及び他側框部材22aにおいて補強部材が付設されている位置に対応する、片側框部材20a及び他側框部材22a又は上框部材16a及び下框部材22aの対応位置には補強部材が付設されていないことが重要である。図示の実施形態においては、上框部材16a及び下框部材18aには、2個の補強部材36及び38が付設されており、補強部材36は実質上水平に延在する内側壁32の内面に付設された細長板状片であり、補強部材38は実質上水平に延在する外側壁34の内面に付設された細長板状片であり、補強部材36及び38は実質上水平に延在している。一般的に、上框部材16a及び下框部材18aにおいては、実質上水平に延在する内側壁32及び外側壁34の内面に補強部材36及びb38を付設することが望まれる。一方、片側框部材20a及び他側框部材22aにも2個の補強部材40及び42が付設されているが、補強部材40は実質上鉛直に延在している室内側壁28の内面に付設された細長板状片であり、補強部材42は実質上鉛直に延在している室外側壁30の内面に付設された細長板状片であり、補強部材40及び42は実質上鉛直に延在している。一般的に、片側框部材20a及び外側框部材22aにおいては、実質上鉛直に延在する室内側壁28及び室外側壁30の内面に補強部材40及び42を付設することが望まれる。
【0021】
補強部材36、38、40及び42は、強化材料含有合成樹脂、即ち例えばガラス繊維又は鉄粒子の如き金属粒子でよい強化材料を含有するポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、結晶性のポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の如き比較的高強度の合成樹脂、或いは鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金等の薄板の如き金属薄板から構成することができる。かような補強部材36、38、40及び42の軟化点は、塩化ビニル樹脂の如き適宜の熱可塑性合成樹脂から成形されている上框部材16a、下框部材18a、片側框部材20a及び他側框部材22aの軟化点よりも相当高い。本発明の構造体は、補強部材の軟化点が第一の部材と第二の部材の軟化点よりも高い場合に、特に効果を発揮する。但し、上述したとおり、この組み合わせに限定されるものではない。
【0022】
補強部材36、38、40及び42が強化材料含有合成樹脂から構成されている場合には、上框部材16a及び下框部材18aと共に補強部材36及び38を共押出することによって、そしてまた片側框部材20a及び他側框部材22aと共に補強部材40及び42を共押出することによって、夫々、上框部材16a及び下框部材18aの成形と同時に補強部材36及び38を一体に付設し、片側框部材20a及び他側框部材22aの成形と同時に補強部材40及び42を一体に付設することができる。補強部材36、38、40及び42が金属薄板から構成されている場合には、上框部材16a及び下框部材18aを押出成形する際に補強部材36及び38をインサートすることによって、そしてまた片側框部材20a及び他側框部材22aを押出成形する際に補強部材40及び42をインサートすることによって、夫々、上框部材16a及び下框部材18aの成形と同時に補強部材36及び38を一体に付設し、片側框部材20a及び他側框部材22aの成形と同時に補強部材40及び42を一体に付設することができる。補強部材36及び38は上框部材16a及び18aの全長に渡って延在し、同様に補強部材40及び42は片側框部材20a及び他側框部材22aの全長に渡って延在しているのが好都合である。
【0023】
上框部材16a及び下框部材18aにおける補強部材36及び38の付設位置と片側框部材20a及び他側框部材22aにおける補強部材40及び42の付設位置は異なる。それ故に、上框部材16a及び下框部材18aは上述したとおりの共押出成形或いはインサート成形によって、所要断面形状を有すると共に補強部材36及び38が付設された框部材を形成し、そしてかかる框部材を適宜に切断することによって形成し、これとは別個に片側框部材20a及び他側框部材22aは上述したとおりの共押出成形或いはインサート成形によって、所要断面形状を有すると共に補強部材40及び42が付設された框部材を形成し、そしてかかる框部材を適宜に切断することによって形成するのが望ましい。
【0024】
上述したとおり、上框部材16aの両端は片側框部材20a及び他側框部材22aの上端に夫々溶着され、下框部材18aの両端は片側框部材20a及び他側框部材22aの下端に溶着されるが、上框部材16a及び下框部材18aにおける補強部材36及び38の付設位置と片側框部材20a及び他側框部材22aにおける補強部材40及び42の付設位置が異なっている故に、上記溶着が阻害されることはない。上框部材16aの両端を片側框部材20a及び他側框部材22aの上端に夫々溶着する際には、上框部材16aの両端部並びに片側框部材20a及び他側框部材22aの上端部の押し潰しに応じて、軟化乃至溶融されていない補強部材36及び38の端部は片側框部材20a及び他側框部材22aの中空部位内に局部的に進入し、補強部材40及び42の端部は上框部材16a及び下框部材18aの中空部位内に局部的に進入する。同様に、下框部材18aの両端を片側框部材20a及び他側框部材22aの下端に溶接する際には、下框部材18aの両端部並びに片側框部材20a及び他側框部材22aの下端部の押し潰しに応じて、軟化乃至溶融されていない補強部材36及び38の端部は片側框部材20a及び他側框部材22aの中空部位内に局部的に進入し、補強部材40及び42の端部は上框部材16a及び下框部材18aの中空部位内に局部的に進入する。
【0025】
図示の実施形態においては、
図2及び
図3に二点鎖線で示す如く、框6aには間隔をおいて配設された2枚のガラス板44及び46が装着されると共に、自由端縁がガラス板46に密接される押縁48が装着される。ガラス板44及46並びに押縁48の装着様式は周知の様式でよいので、これらの詳細な説明は省略する。
【0026】
また、図示の実施形態においては、框6bは、上述した引手24a及び24bの配設並びに鍵機構26の片半部及び他半部の配設を除いて、框6aと実質上同一であるので、框6bについての詳細な説明は省略する。
【0027】
以上添付図面を参照して本発明に従って構成された構造体の好適実施形態(即ち框6a)について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能であることは多言を要しない。
【0029】
また、図示の実施形態においては、框6a及び框6bにおいて補強部材36、38、40及び42を付設しているが、これに加えて或いはこれに代えて、窓枠4において補強部材を付設することもできる。この場合にも、上枠部材8及び下枠部材10における補強部材付設位置に対応する片側枠部材12及び他側枠部材14の対応位置には補強部材が付設されておらず、片側枠部材12及び他側枠部材14における補強部材付設位置に対応する上枠部材8及び下枠部材10の対応位置には補強部材が配設されていないことが重要である。
【0030】
更に付言すれば、框6a及び框6b或いは窓枠4に関して本発明の構造体を説明したが、本発明は、框6a及び框6b或いは窓枠4に限定されるものではなく、熱可塑性合成樹脂から成形され且つ少なくとも主要部の横断面形状が同一である第一の部材と第二の部材を含み、第一の部材の片端と第二の部材の片端とが溶着される形態の任意の構造体に適用することができる。そして、「主要部の横断面形状が同一である」とは、横断面形状の主要部が実質上同一であるが、細部において若干の相異が存在している場合を含むことを意味する。
【符号の説明】
【0031】
2::引違い窓
4:窓枠
6a:框
6b:框
8:上枠部材
10:下枠部材
12:片側枠部材
14:他側枠部材
16a:上框部材
16b:上框部材
18a:下框部材
18b:下框部材
20a:片側框部材
20b:片側框部材
22a:他側框部材
22b:他側框部材
24a:引手
24b:引手
26:錠機構
28:室内側壁
30:室外側壁
32:内側壁
34:外側壁
36:補強部材
38:補強部材
40:補強部材
42:補強部材
44:ガラス板
46:ガラス板
48:押縁