(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20230718BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
B41J2/14 303
B41J2/14 605
B41J2/14 607
B41J2/14 609
B41J2/18
(21)【出願番号】P 2019215363
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 研治
(72)【発明者】
【氏名】田村 正典
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-178055(JP,A)
【文献】特開2010-234539(JP,A)
【文献】特開2019-089234(JP,A)
【文献】特開2008-201023(JP,A)
【文献】特開2019-089222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するヘッドチップであって、
所定方向に沿って並んで配置された複数の吐出溝を有するアクチュエータプレートと、
前記複数の吐出溝に個別に連通する複数のノズル孔を有するノズルプレートと、
前記吐出溝内に前記液体を流入させるための第1貫通孔と、前記吐出溝内から前記液体を流出させるための第2貫通孔と、前記吐出溝を覆う壁部と、を有するカバープレートと
を備え、
前記複数のノズル孔は、
前記吐出溝の延在方向に沿った中心位置を基準として、前記吐出溝の延在方向に沿った前記第1貫通孔側にずれて配置された複数の第1ノズル孔と、
前記吐出溝の延在方向に沿った中心位置を基準として、前記吐出溝の延在方向に沿った前記第2貫通孔側にずれて配置された複数の第2ノズル孔と
を含んでおり、
前記第1ノズル孔と連通する前記吐出溝である第1吐出溝においては、前記第1貫通孔と連通する部分における前記液体の流路の断面積である第1断面積が、前記第2貫通孔と連通する部分における前記液体の流路の断面積である第2断面積よりも、小さくなっていると共に、
前記第2ノズル孔と連通する前記吐出溝である第2吐出溝においては、前記第2断面積が前記第1断面積よりも、小さくなっており、
前記第1ノズル孔付近に、前記第1ノズル孔付近における前記液体の流路の断面積である第3断面積を広げる、第1拡張流路部が形成されていると共に、
前記第2ノズル孔付近に、前記第2ノズル孔付近における前記液体の流路の断面積である第4断面積を広げる、第2拡張流路部が形成されており、
前記第1拡張流路部における前記吐出溝の延在方向に沿った中心位置が、前記第1ノズル孔の中心位置である第1中心位置と一致するか、または、前記第1中心位置よりも前記吐出溝の延在方向に沿って前記第1貫通孔側にずれていると共に、
前記第2拡張流路部における前記吐出溝の延在方向に沿った中心位置が、前記第2ノズル孔の中心位置である第2中心位置と一致するか、または、前記第2中心位置よりも前記吐出溝の延在方向に沿って前記第2貫通孔側にずれている
ヘッドチップ。
【請求項2】
前記アクチュエータプレートと前記ノズルプレートとの間に配置されると共に、前記ノズル孔の位置合わせをするための第3貫通孔を前記ノズル孔ごとに有する、位置合わせプレートを更に備え、
前記第1拡張流路部および前記第2拡張流路部がそれぞれ、前記位置合わせプレートにおける前記第3貫通孔を含むようにして構成されている
請求項1に記載のヘッドチップ。
【請求項3】
前記第1拡張流路部および前記第2拡張流路部がそれぞれ、前記ノズルプレートに設けられている
請求項1に記載のヘッドチップ。
【請求項4】
前記第1拡張流路部および前記第2拡張流路部がそれぞれ、前記アクチュエータプレートに設けられている
請求項1に記載のヘッドチップ。
【請求項5】
前記第1拡張流路部における前記第1貫通孔側の端部が、前記壁部における前記第1貫通孔側の端部を基準位置として、前記基準位置よりも前記第2貫通孔側に位置していると共に、
前記第2拡張流路部における前記第2貫通孔側の端部が、前記壁部における前記第2貫通孔側の端部を基準位置として、前記基準位置よりも前記第1貫通孔側に位置している
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のヘッドチップ。
【請求項6】
前記第1拡張流路部における前記第1貫通孔側の端部が、前記壁部における前記第1貫通孔側の端部を基準位置として、前記基準位置よりも前記第1貫通孔側に位置していると共に、
前記第2拡張流路部における前記第2貫通孔側の端部が、前記壁部における前記第2貫通孔側の端部を基準位置として、前記基準位置よりも前記第2貫通孔側に位置している
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のヘッドチップ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のヘッドチップを備えた
液体噴射ヘッド。
【請求項8】
請求項7に記載の液体噴射ヘッドを備えた
液体噴射記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドを備えた液体噴射記録装置が様々な分野に利用されており、液体噴射ヘッドとしては、各種方式のものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。また、このような液体噴射ヘッドには、インク(液体)を噴射するヘッドチップが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなヘッドチップ等では一般に、製造コストを抑えることや、印刷画質を向上させることが求められている。製造コストを抑えつつ印刷画質を向上させることが可能な、ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係るヘッドチップは、所定方向に沿って並んで配置された複数の吐出溝を有するアクチュエータプレートと、複数の吐出溝に個別に連通する複数のノズル孔を有するノズルプレートと、吐出溝内に液体を流入させるための第1貫通孔と、吐出溝内から液体を流出させるための第2貫通孔と、吐出溝を覆う壁部と、を有するカバープレートと、を備えたものである。上記複数のノズル孔は、吐出溝の延在方向に沿った中心位置を基準として、吐出溝の延在方向に沿った第1貫通孔側にずれて配置された複数の第1ノズル孔と、吐出溝の延在方向に沿った中心位置を基準として、吐出溝の延在方向に沿った第2貫通孔側にずれて配置された複数の第2ノズル孔と、を含んでいる。上記第1ノズル孔と連通する吐出溝である第1吐出溝においては、第1貫通孔と連通する部分における液体の流路の断面積である第1断面積が、第2貫通孔と連通する部分における液体の流路の断面積である第2断面積よりも、小さくなっていると共に、上記第2ノズル孔と連通する吐出溝である第2吐出溝においては、上記第2断面積が上記第1断面積よりも、小さくなっている。上記第1ノズル孔付近に、この第1ノズル孔付近における液体の流路の断面積である第3断面積を広げる、第1拡張流路部が形成されていると共に、上記第2ノズル孔付近に、この第2ノズル孔付近における液体の流路の断面積である第4断面積を広げる、第2拡張流路部が形成されている。上記第1拡張流路部における吐出溝の延在方向に沿った中心位置が、上記第1ノズル孔の中心位置である第1中心位置と一致するか、または、この第1中心位置よりも吐出溝の延在方向に沿って第1貫通孔側にずれていると共に、上記第2拡張流路部における吐出溝の延在方向に沿った中心位置が、上記第2ノズル孔の中心位置である第2中心位置と一致するか、または、この第2中心位置よりも吐出溝の延在方向に沿って第2貫通孔側にずれている。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドは、本開示の一実施の形態に係るヘッドチップを備えたものである。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置は、上記本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施の形態に係るヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置によれば、製造コストを抑えつつ、印刷画質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置の概略構成例を表す模式斜視図である。
【
図2】ノズルプレートを取り外した状態における液体噴射ヘッドの構成例を表す模式底面図である。
【
図3】
図2に示したIII-III線に沿った断面構成例を表す模式図である。
【
図4】
図2に示したIV-IV線に沿った断面構成例を表す模式図である。
【
図5】
図3,
図4に示したカバープレートの上面側における液体噴射ヘッドの平面構成例を表す模式図である。
【
図6】
図3,
図4に示したヘッドチップにおける他の断面構成例を表す模式図である。
【
図7】実施の形態等に係るノズル孔および拡張流路部の位置関係の一例を表す模式断面図である。
【
図8】実施の形態等に係るノズル孔および拡張流路部の位置関係の他の例を表す模式断面図である。
【
図9】比較例1に係る液体噴射ヘッドにおいてノズルプレートを取り外した状態の構成例を表す模式底面図である。
【
図10】
図9に示したX-X線に沿った断面構成例を表す模式図である。
【
図11】比較例2に係る液体噴射ヘッドにおける断面構成例を表す模式図である。
【
図12】比較例2に係る液体噴射ヘッドにおける他の断面構成例を表す模式図である。
【
図13】変形例1等に係るノズル孔および拡張流路部の位置関係の一例を表す模式断面図である。
【
図14】変形例1等に係るノズル孔および拡張流路部の位置関係の他の例を表す模式断面図である。
【
図15】比較例3,4および変形例1に係るシミュレーション結果の一例を表す図である。
【
図16】変形例2に係る液体噴射ヘッドにおける断面構成例を表す模式図である。
【
図17】変形例2に係る液体噴射ヘッドにおける他の断面構成例を表す模式図である。
【
図18】変形例3に係る液体噴射ヘッドにおける断面構成例を表す模式図である。
【
図19】変形例3に係る液体噴射ヘッドにおける他の断面構成例を表す模式図である。
【
図20】変形例4に係る液体噴射ヘッドにおける断面構成例を表す模式図である。
【
図21】変形例4に係る液体噴射ヘッドにおける他の断面構成例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(拡張流路部が、位置合わせプレートに設けられている場合の例)
2.変形例
変形例1(拡張流路部の中心位置が、ノズル孔の中心位置と一致する場合の例)
変形例2(拡張流路部の一方の端部が、ポンプ室外まで拡張している場合の例)
変形例3(拡張流路部が、ノズルプレートに設けられている場合の例)
変形例4(拡張流路部が、アクチュエータプレートに設けられている場合の例)
3.その他の変形例
【0011】
<1.実施の形態>
[A.プリンタ1の全体構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ1の概略構成例を、模式的に斜視図にて表したものである。プリンタ1は、後述するインク9を利用して、被記録媒体としての記録紙Pに対して、画像や文字等の記録(印刷)を行うインクジェットプリンタである。なお、この被記録媒体としては、紙には限定されず、例えばセラミックやガラス等の、被記録可能な材質を含むものである。
【0012】
プリンタ1は、
図1に示したように、一対の搬送機構2a,2bと、インクタンク3と、インクジェットヘッド4と、循環流路50と、走査機構6とを備えている。これらの各部材は、所定形状を有する筺体10内に収容されている。なお、本明細書の説明に用いられる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
ここで、プリンタ1は、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応し、インクジェットヘッド4(後述するインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4K)は、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。また、インク9は、本開示における「液体」の一具体例に対応している。
【0014】
搬送機構2a,2bはそれぞれ、
図1に示したように、記録紙Pを搬送方向d(X軸方向)に沿って搬送する機構である。これらの搬送機構2a,2bはそれぞれ、グリッドローラ21、ピンチローラ22および駆動機構(不図示)を有している。この駆動機構は、グリッドローラ21を軸周りに回転させる(Z-X面内で回転させる)機構であり、例えばモータ等によって構成されている。
【0015】
(インクタンク3)
インクタンク3は、インク9を内部に収容するタンクである。このインクタンク3としては、この例では
図1に示したように、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)の4色のインク9を個別に収容する、4種類のタンクが設けられている。すなわち、イエローのインク9を収容するインクタンク3Yと、マゼンダのインク9を収容するインクタンク3Mと、シアンのインク9を収容するインクタンク3Cと、ブラックのインク9を収容するインクタンク3Kとが設けられている。これらのインクタンク3Y,3M,3C,3Kは、筺体10内において、X軸方向に沿って並んで配置されている。
【0016】
なお、インクタンク3Y,3M,3C,3Kはそれぞれ、収容するインク9の色以外については同一の構成であるため、以下ではインクタンク3と総称して説明する。
【0017】
(インクジェットヘッド4)
インクジェットヘッド4は、後述する複数のノズル(ノズル孔H1,H2)から記録紙Pに対して液滴状のインク9を噴射(吐出)して、画像や文字等の記録(印刷)を行うヘッドである。このインクジェットヘッド4としても、この例では
図1に示したように、上記したインクタンク3Y,3M,3C,3Kにそれぞれ収容されている4色のインク9を個別に噴射する、4種類のヘッドが設けられている。すなわち、イエローのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Yと、マゼンダのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Mと、シアンのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Cと、ブラックのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Kとが設けられている。これらのインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Kは、筺体10内において、Y軸方向に沿って並んで配置されている。
【0018】
なお、インクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Kはそれぞれ、利用するインク9の色以外については同一の構成であるため、以下ではインクジェットヘッド4と総称して説明する。また、このインクジェットヘッド4の詳細構成例については、後述する(
図2~
図6)。
【0019】
(循環流路50)
循環流路50は、
図1に示したように、流路50a,50bを有している。流路50aは、インクタンク3から送液ポンプ(不図示)を介して、インクジェットヘッド4へと至る部分の流路である。流路50bは、インクジェットヘッド4から送液ポンプ(不図示)を介して、インクタンク3へと至る部分の流路である。言い換えると、流路50aは、インクタンク3からインクジェットヘッド4へと向かって、インク9が流れる流路である。また、流路50bは、インクジェットヘッド4からインクタンク3へと向かって、インク9が流れる流路である。
【0020】
このようにして本実施の形態では、インクタンク3内とインクジェットヘッド4内との間で、インク9が循環するようになっている。なお、これらの流路50a,50b(インク9の供給チューブ)はそれぞれ、例えば、可撓性を有するフレキシブルホースにより構成されている。
【0021】
(走査機構6)
走査機構6は、記録紙Pの幅方向(Y軸方向)に沿って、インクジェットヘッド4を走査させる機構である。この走査機構6は、
図1に示したように、Y軸方向に沿って延設された一対のガイドレール61a,61bと、これらのガイドレール61a,61bに移動可能に支持されたキャリッジ62と、このキャリッジ62をY軸方向に沿って移動させる駆動機構63と、を有している。
【0022】
駆動機構63は、ガイドレール61a,61bの間に配置された一対のプーリ631a,631bと、これらのプーリ631a,631b間に巻回された無端ベルト632と、プーリ631aを回転駆動させる駆動モータ633と、を有している。また、キャリッジ62上には、前述した4種類のインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Kが、Y軸方向に沿って並んで配置されている。
【0023】
このような走査機構6と前述した搬送機構2a,2bとにより、インクジェットヘッド4と記録紙Pとを相対的に移動させる、移動機構が構成されるようになっている。なお、このような方式の移動機構には限られず、例えば、インクジェットヘッド4を固定しつつ被記録媒体(記録紙P)のみを移動させることで、インクジェットヘッド4と被記録媒体とを相違的に移動させる方式(いわゆる「シングルパス方式」)であってもよい。
【0024】
[B.インクジェットヘッド4の詳細構成]
続いて、
図1に加えて
図2~
図6を参照して、インクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)の詳細構成例について説明する。
【0025】
図2は、ノズルプレート411(後出)を取り外した状態におけるインクジェットヘッド4の構成例を、模式的に底面図(X-Y底面図)で表したものである。
図3は、
図2に示したIII-III線に沿ったインクジェットヘッド4の断面構成例(Y-Z断面構成例)を、模式的に表したものである。同様に、
図4は、
図2に示したIV-IV線に沿ったインクジェットヘッド4の断面構成例(Y-Z断面構成例)を、模式的に表したものである。また、
図5は、
図3,
図4に示したカバープレート413(後出)の上面側におけるインクジェットヘッド4の平面構成例(X-Y平面構成例)を、模式的に表したものである。
図6は、
図3,
図4に示したヘッドチップ41における他の断面構成例(Z-X断面構成例)を、模式的に表したものである。
【0026】
なお、
図3~
図6においては、後述する吐出チャネルC1e,C2eおよび後述するノズル孔H1,H2のうち、後述するノズル列An1に対応して配置された、吐出チャネルC1eおよびノズル孔H1について、便宜上、代表して図示している。つまり、後述するノズル列An2に対応して配置された、吐出チャネルC2eおよびノズル孔H2についても、同様の構成となっているため、図示を省略する。
【0027】
本実施の形態のインクジェットヘッド4は、後述するヘッドチップ41における複数のチャネル(複数のチャネルC1および複数のチャネルC2)の延在方向(Y軸方向)の中央部からインク9を吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのインクジェットヘッドである。また、このインクジェットヘッド4は、前述した循環流路50を用いることで、インクタンク3との間でインク9を循環させて利用する、循環式のインクジェットヘッドである。
【0028】
図3,
図4に示したように、インクジェットヘッド4は、ヘッドチップ41を備えている。また、このインクジェットヘッド4には、図示しない制御機構(ヘッドチップ41の動作を制御する機構)として、回路基板およびフレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuits:FPC)が設けられている。
【0029】
回路基板は、ヘッドチップ41を駆動するための駆動回路(電気回路)を搭載する基板である。フレキシブルプリント基板は、この回路基板上の駆動回路と、ヘッドチップ41における後述する駆動電極Edとの間を、電気的に接続するための基板である。なお、このようなフレキシブルプリント基板には、複数の引き出し電極がプリント配線されるようになっている。
【0030】
ヘッドチップ41は、
図3,
図4,
図6に示したように、インク9をZ軸方向に沿って噴射する部材であり、各種のプレートを用いて構成されている。具体的には
図3,
図4,
図6に示したように、ヘッドチップ41は、ノズルプレート(噴射孔プレート)411、アクチュエータプレート412、カバープレート413および位置合わせプレート415を、主に備えている。これらのノズルプレート411、アクチュエータプレート412、カバープレート413および位置合わせプレート415はそれぞれ、例えば接着剤等を用いて互いに貼り合わされており、Z軸方向に沿ってこの順に積層されている。なお、以下では、Z軸方向に沿ってカバープレート413側を上方と称すると共に、ノズルプレート411側を下方と称して説明する。
【0031】
(ノズルプレート411)
ノズルプレート411は、例えば50μm程度の厚みを有する、ポリイミド等のフィルム材からなり、
図3,
図4,
図6に示したように、アクチュエータプレート412の下面に接着されている。ただし、ノズルプレート411の構成材料は、ポリイミド等の樹脂材料には限られず、例えば金属材料であってもよい。
【0032】
また、
図2に示したように、このノズルプレート411には、X軸方向に沿ってそれぞれ延在する、2列のノズル列(ノズル列An1,An2)が設けられている。これらのノズル列An1,An2同士は、Y軸方向に沿って所定の間隔をおいて配置されている。このように、本実施の形態のインクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)は、2列タイプのインクジェットヘッド(ヘッドチップ)となっている。
【0033】
ノズル列An1は、詳細は後述するが、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて並んで形成された、複数のノズル孔H1を有している。これらのノズル孔H1はそれぞれ、ノズルプレート411をその厚み方向(Z軸方向)に沿って貫通しており、例えば
図3,
図4,
図6に示したように、後述するアクチュエータプレート412における吐出チャネルC1e内に個別に連通している。また、ノズル孔H1におけるX軸方向に沿った形成ピッチは、吐出チャネルC1eにおけるX軸方向に沿った形成ピッチと同一(同一ピッチ)となっている。このようなノズル列An1内のノズル孔H1からは、詳細は後述するが、吐出チャネルC1e内から供給されるインク9が吐出(噴射)されるようになっている。
【0034】
ノズル列An2も同様に、詳細は後述するが、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて並んで形成された、複数のノズル孔H2を有している。これらのノズル孔H2もそれぞれ、ノズルプレート411をその厚み方向に沿って貫通しており、後述するアクチュエータプレート412における吐出チャネルC2e内に個別に連通している。また、ノズル孔H2におけるX軸方向に沿った形成ピッチは、吐出チャネルC2eにおけるX軸方向に沿った形成ピッチと同一となっている。このようなノズル列An2内のノズル孔H2からも、詳細は後述するが、吐出チャネルC2e内から供給されるインク9が吐出されるようになっている。
【0035】
また、
図2に示したように、ノズル列An1における各ノズル孔H1と、ノズル列An2における各ノズル孔H2とは、X軸方向に沿って互い違いとなるように配置されている。したがって、本実施の形態のインクジェットヘッド4では、ノズル列An1におけるノズル孔H1と、ノズル列An2におけるノズル孔H2とが、千鳥状に配置(千鳥配置)されている。なお、このようなノズル孔H1,H2はそれぞれ、下方に向かうに従って漸次縮径するテーパ状の貫通孔となっている(
図3,
図4,
図6参照)。
【0036】
ここで、本実施の形態のノズルプレート411では、
図2に示したように、ノズル列An1における複数のノズル孔H1のうち、X軸方向に沿って隣接するノズル孔H1同士が、吐出チャネルC1eの延在方向(Y軸方向)に沿って、互いにずれて配置されている。つまり、このノズル列An1における複数のノズル孔H1全体が、X軸方向に沿って千鳥配置されている。具体的には、
図2に示したように、ノズル列An1における複数のノズル孔H1が、X軸方向に沿って延在するノズル列An11に属する複数のノズル孔H11と、X軸方向に沿って延在するノズル列An12に属する複数のノズル孔H12と、を含むようになっている。また、各ノズル孔H11は、吐出チャネルC1eの延在方向(Y軸方向)に沿った中心位置を基準として、Y軸方向の正側(後述する第1供給スリットSin1側)に、ずれて配置されている。一方、各ノズル孔H12は、吐出チャネルC1eの延在方向に沿った中心位置を基準として、Y軸方向の負側(後述する第1排出スリットSout1側)に、ずれて配置されている。
【0037】
同様にして、このノズルプレート411では、
図2に示したように、ノズル列An2における複数のノズル孔H2のうち、X軸方向に沿って隣接するノズル孔H2同士が、吐出チャネルC2eの延在方向(Y軸方向)に沿って、互いにずれて配置されている。つまり、このノズル列An2における複数のノズル孔H2全体が、X軸方向に沿って千鳥配置されている。具体的には、
図2に示したように、ノズル列An2における複数のノズル孔H2が、X軸方向に沿って延在するノズル列An21に属する複数のノズル孔H21と、X軸方向に沿って延在するノズル列An22に属する複数のノズル孔H22と、を含むようになっている。また、各ノズル孔H21は、吐出チャネルC2eの延在方向(Y軸方向)に沿った中心位置を基準として、Y軸方向の負側(後述する第2供給スリット側)に、ずれて配置されている。一方、各ノズル孔H22は、吐出チャネルC2eの延在方向に沿った中心位置を基準として、Y軸方向の正側(後述する第2排出スリット側)に、ずれて配置されている。
【0038】
ここで、上記したノズル孔H11,H21はそれぞれ、本開示における「第1ノズル孔」の一具体例に対応している。また、ノズル孔H12,H22はそれぞれ、本開示における「第2ノズル孔」の一具体例に対応している。なお、このようなノズル孔H1(H11,H12),H2(H21,H22)の配置構成の詳細については、後述する。
【0039】
(アクチュエータプレート412)
アクチュエータプレート412は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料により構成されたプレートである。このアクチュエータプレート412は、
図3,
図4,
図6に示したように、分極方向が互いに異なる2つの圧電基板を、厚み方向(Z軸方向)に沿って積層して構成されている(いわゆる、シェブロンタイプ)。ただし、アクチュエータプレート412の構成としては、このシェブロンタイプには限られない。すなわち、例えば、分極方向が厚み方向(Z軸方向)に沿って一方向に設定されている1つ(単一)の圧電基板によって、アクチュエータプレート412を構成するようにしてもよい(いわゆる、カンチレバータイプ)。
【0040】
また、
図2に示したように、アクチュエータプレート412には、X軸方向に沿ってそれぞれ延在する、2列のチャネル列(チャネル列421,422)が設けられている。これらのチャネル列421,422同士は、Y軸方向に沿って所定の間隔をおいて配置されている。
【0041】
このようなアクチュエータプレート412では、
図2に示したように、X軸方向に沿った中央部(チャネル列421,422の形成領域)に、インク9の吐出領域(噴射領域)が設けられている。一方、アクチュエータプレート412において、X軸方向に沿った両端部(チャネル列421,422の非形成領域)には、インク9の非吐出領域(非噴射領域)が設けられている。この非吐出領域は、上記した吐出領域に対して、X軸方向に沿った外側に位置している。なお、アクチュエータプレート412におけるY軸方向に沿った両端部はそれぞれ、
図2に示したように、尾部420を構成している。
【0042】
上記したチャネル列421は、
図2に示したように、複数のチャネルC1を有している。これらのチャネルC1は、
図2に示したように、アクチュエータプレート412内において、Y軸方向に沿って延在している。また、これらのチャネルC1は、
図2に示したように、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて互いに平行となるよう、並んで配置されている。各チャネルC1は、圧電体(アクチュエータプレート412)からなる駆動壁Wdによってそれぞれ画成されており、Z-X断面の断面視にて、凹状の溝部となっている。
【0043】
チャネル列422も同様に、
図2に示したように、Y軸方向に沿って延在する複数のチャネルC2を有している。これらのチャネルC2は、
図2に示したように、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて互いに平行となるよう、並んで配置されている。各チャネルC2もまた、上記した駆動壁Wdによってそれぞれ画成されており、Z-X断面の断面視にて、凹状の溝部となっている。
【0044】
ここで、
図2~
図6に示したように、チャネルC1には、インク9を吐出させるための吐出チャネルC1e(吐出溝)と、インク9を吐出させないダミーチャネルC1d(非吐出溝)とが存在している。各吐出チャネルC1eは、ノズルプレート411におけるノズル孔H1と連通している一方(
図3,
図4,
図6参照)、各ダミーチャネルC1dはノズル孔H1には連通しておらず、ノズルプレート411の上面によって下方から覆われている。
【0045】
複数の吐出チャネルC1eは、それらの少なくとも一部が所定方向(X軸方向)に沿って互いに重なるようにして並設されており、特に
図2の例では、複数の吐出チャネルC1e全体が、X軸方向に沿って互いに重なるようにして配置されている。これにより
図2に示したように、複数の吐出チャネルC1e全体が、X軸方向に沿って1列に配置されるようになっている。同様にして、複数のダミーチャネルC1dは、X軸方向に沿って並設されており、
図2の例では、複数のダミーチャネルC1d全体が、X軸方向に沿って1列に配置されている。また、このチャネル列421では、このような吐出チャネルC1eとダミーチャネルC1dとが、X軸方向に沿って交互に配置されている(
図2参照)。
【0046】
また、
図2~
図4に示したように、チャネルC2には、インク9を吐出させるための吐出チャネルC2e(吐出溝)と、インク9を吐出させないダミーチャネルC2d(非吐出溝)とが存在している。各吐出チャネルC2eは、ノズルプレート411におけるノズル孔H2と連通している一方、各ダミーチャネルC2dはノズル孔H2には連通しておらず、ノズルプレート411の上面によって下方から覆われている(
図3,
図4参照)。
【0047】
複数の吐出チャネルC2eは、それらの少なくとも一部が所定方向(X軸方向)に沿って互いに重なるようにして並設されており、特に
図2の例では、複数の吐出チャネルC2e全体が、X軸方向に沿って互いに重なるようにして配置されている。これにより
図2に示したように、複数の吐出チャネルC2e全体が、X軸方向に沿って1列に配置されるようになっている。同様にして、複数のダミーチャネルC2dは、X軸方向に沿って並設されており、
図2の例では、複数のダミーチャネルC2d全体が、X軸方向に沿って1列に配置されている。また、このチャネル列422では、このような吐出チャネルC2eとダミーチャネルC2dとが、X軸方向に沿って交互に配置されている(
図2参照)。
【0048】
なお、このような吐出チャネルC1e,C2eはそれぞれ、本開示における「吐出溝」の一具体例に対応している。また、X軸方向は、本開示における「所定方向」の一具体例に対応しており、Y軸方向は、本開示における「吐出溝の延在方向」の一具体例に対応している。
【0049】
ここで、
図2~
図4に示したように、チャネル列421における吐出チャネルC1eと、チャネル列422におけるダミーチャネルC2dとは、これらの吐出チャネルC1eおよびダミーチャネルC2dの延在方向(Y軸方向)に沿って、一直線上に配置されている。また、
図2に示したように、チャネル列421におけるダミーチャネルC1dと、チャネル列422における吐出チャネルC2eとは、これらのダミーチャネルC1dおよび吐出チャネルC2eの延在方向(Y軸方向)に沿って、一直線上に配置されている。
【0050】
また、例えば
図4に示したように、各吐出チャネルC1eは、カバープレート413側(上方)からノズルプレート411側(下方)へ向けて各吐出チャネルC1eの断面積が徐々に小さくなる、円弧状の側面を有している。同様に、各吐出チャネルC2eは、カバープレート413側からノズルプレート411側へ向けて各吐出チャネルC2eの断面積が徐々に小さくなる、円弧状の側面を有している。なお、このような吐出チャネルC1e,C2eにおける円弧状の側面はそれぞれ、例えば、ダイサーによる切削加工によって形成されるようになっている。
【0051】
なお、
図3,
図4に示した吐出チャネルC1e付近(および吐出チャネルC2e付近)の詳細構成については、後述する。
【0052】
また、
図3,
図4,
図6に示したように、前述した駆動壁WdにおいてX軸方向に沿って対向する内側面にはそれぞれ、Y軸方向に沿って延在する、駆動電極Edが設けられている。この駆動電極Edには、吐出チャネルC1e,C2eに面する内側面に設けられた共通電極(コモン電極)Edcと、ダミーチャネルC1d,C2dに面する内側面に設けられた個別電極(アクティブ電極)Edaと、が存在している。なお、このような駆動電極Ed(共通電極Edcおよび個別電極Eda)は、駆動壁Wdの内側面上において、深さ方向(Z軸方向)の全体に亘って形成されている(
図3,
図4参照)。
【0053】
同一の吐出チャネルC1e(または吐出チャネルC2e)内で対向する一対の共通電極Edc同士は、図示しない共通端子(共通配線)において互いに電気的に接続されている。また、同一のダミーチャネルC1d(またはダミーチャネルC2d)内で対向する一対の個別電極Eda同士は、互いに電気的に分離されている。一方、吐出チャネルC1e(または吐出チャネルC2e)を介して対向する一対の個別電極Eda同士は、図示しない個別端子(個別配線)において、互いに電気的に接続されている。
【0054】
ここで、前述した尾部420(アクチュエータプレート412におけるY軸方向に沿った端部付近)においては、駆動電極Edと前述した回路基板との間を電気的に接続するための、前述したフレキシブルプリント基板が実装されている。このフレキシブルプリント基板に形成された配線パターン(不図示)は、上記した共通配線および個別配線に対して電気的に接続されている。これにより、フレキシブルプリント基板を介して、上記した回路基板上の駆動回路から各駆動電極Edに対して、駆動電圧が印加されるようになっている。
【0055】
また、アクチュエータプレート412における尾部420では、各ダミーチャネルC1d,C2dにおいて、それらの延在方向(Y軸方向)に沿った端部が、以下のような構成となっている。
【0056】
すなわち、まず、各ダミーチャネルC1d,C2dでは、それらの延在方向に沿った一方側は、ノズルプレート411側へ向けて各ダミーチャネルC1d,C2dの断面積が徐々に小さくなる、円弧状の側面になっている(
図3,
図4参照)。なお、このようなダミーチャネルC1d,C2dにおける円弧状の側面もそれぞれ、前述した吐出チャネルC1e,C2eにおける円弧状の側面と同様に、例えば、ダイサーによる切削加工によって形成されるようになっている。これに対して、各ダミーチャネルC1d,C2dにおいて、それらの延在方向に沿った他方側(尾部420側)は、アクチュエータプレート412におけるY軸方向に沿った端部に至るまで、開口している(
図3,
図4中の破線で示した符号P2参照)。また、例えば
図3,
図4に示したように、各ダミーチャネルC1d,C2d内におけるX軸方向に沿った両側面に対向配置された各個別電極Edaもまた、アクチュエータプレート412におけるY軸方向に沿った端部に至るまで、延在するようになっている。
【0057】
(カバープレート413)
カバープレート413は、
図3~
図6に示したように、アクチュエータプレート412における各チャネルC1,C2(各チャネル列421,422)を閉塞するように配置されている。具体的には、このカバープレート413は、アクチュエータプレート412の上面に接着されており、板状構造となっている。
【0058】
カバープレート413には、
図3~
図5に示したように、一対の入口側共通流路Rin1,Rin2と、一対の出口側共通流路Rout1,Rout2と、壁部W1,W2とが、それぞれ形成されている。
【0059】
壁部W1は、吐出チャネルC1eおよびダミーチャネルC1dの上方を覆うように配置されており、壁部W2は、吐出チャネルC2eおよびダミーチャネルC2dの上方を覆うように配置されている(
図3,
図4参照)。
【0060】
入口側共通流路Rin1,Rin2および出口側共通流路Rout1,Rout2はそれぞれ、例えば
図5に示したように、X軸方向に沿って延在していると共に、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて互いに平行となるよう、並んで配置されている。このうち、入口側共通流路Rin1および出口側共通流路Rout1はそれぞれ、アクチュエータプレート412におけるチャネル列421(複数のチャネルC1)に対応する領域に、形成されている(
図3~
図5参照)。一方、入口側共通流路Rin2および出口側共通流路Rout2はそれぞれ、アクチュエータプレート412におけるチャネル列422(複数のチャネルC2)に対応する領域に、形成されている(
図3,
図4参照)。
【0061】
入口側共通流路Rin1は、各チャネルC1におけるY軸方向に沿った内側の端部付近に形成されており、凹状の溝部となっている(
図3~
図5参照)。この入口側共通流路Rin1において、各吐出チャネルC1eに対応する領域には、カバープレート413をその厚み方向(Z軸方向)に沿って貫通する、第1供給スリットSin1が形成されている(
図3~
図5参照)。同様に、入口側共通流路Rin2は、各チャネルC2におけるY軸方向に沿った内側の端部付近に形成されており、凹状の溝部となっている(
図3,
図4参照)。この入口側共通流路Rin2において、各吐出チャネルC2eに対応する領域にも、カバープレート413をその厚み方向に沿って貫通する、第2供給スリット(不図示)が形成されている。
【0062】
なお、これらの第1供給スリットSin1および第2供給スリットはそれぞれ、本開示における「第1貫通孔」の一具体例に対応している。
【0063】
出口側共通流路Rout1は、各チャネルC1におけるY軸方向に沿った外側の端部付近に形成されており、凹状の溝部となっている(
図3~
図5参照)。この出口側共通流路Rout1において、各吐出チャネルC1eに対応する領域には、カバープレート413をその厚み方向に沿って貫通する、第1排出スリットSout1が形成されている(
図3~
図5参照)。同様に、出口側共通流路Rout2は、各チャネルC2におけるY軸方向に沿った外側の端部付近に形成されており、凹状の溝部となっている(
図3,
図4参照)。この出口側共通流路Rout2において、各吐出チャネルC2eに対応する領域にも、カバープレート413をその厚み方向に沿って貫通する、第2排出スリット(不図示)が形成されている。
【0064】
なお、これらの第1排出スリットSout1および第2排出スリットはそれぞれ、本開示における「第2貫通孔」の一具体例に対応している。
【0065】
ここで、例えば
図5に示したように、このような吐出チャネルC1eごとの第1供給スリットSin1と第1排出スリットSout1とによって、第1スリット対Sp1が構成されている。この第1スリット対Sp1では、吐出チャネルC1eの延在方向(Y軸方向)に沿って、第1供給スリットSin1と第1排出スリットSout1とが、並んで配置されている。同様に、吐出チャネルC2eごとの第2供給スリットと第2排出スリットとによって、第2スリット対(不図示)が構成されている。この第2スリット対では、吐出チャネルC2eの延在方向(Y軸方向)に沿って、第2供給スリットと第2排出スリットとが、並んで配置されている。
【0066】
このようにして、入口側共通流路Rin1および出口側共通流路Rout1はそれぞれ、第1供給スリットSin1および第1排出スリットSout1を介して、各吐出チャネルC1eに連通するようになっている(
図3~
図5参照)。すなわち、入口側共通流路Rin1は、上記した第1スリット対Sp1ごとの第1供給スリットSin1の各々と連通している共通流路であり、出口側共通流路Rout1は、第1スリット対Sp1ごとの第1排出スリットSout1の各々と連通している共通流路となっている(
図5参照)。そして、第1供給スリットSin1および第1排出スリットSout1はそれぞれ、吐出チャネルC1eとの間でインク9が流れる貫通孔となっている。詳細には、
図3,
図4中の破線の矢印で示したように、第1供給スリットSin1は、吐出チャネルC1e内にインク9を流入させるための貫通孔であり、第1排出スリットSout1は、吐出チャネルC1e内からインク9を流出させるための貫通孔となっている。一方、各ダミーチャネルC1dには、入口側共通流路Rin1および出口側共通流路Rout1はいずれも、連通していない。具体的には、各ダミーチャネルC1dは、これらの入口側共通流路Rin1および出口側共通流路Rout1における底部によって、閉塞されるようになっている。
【0067】
同様に、入口側共通流路Rin2および出口側共通流路Rout2はそれぞれ、第2供給スリットおよび第2排出スリットを介して、各吐出チャネルC2eに連通するようになっている。すなわち、入口側共通流路Rin2は、上記した第2スリット対ごとの第2供給スリットの各々と連通している共通流路であり、出口側共通流路Rout2は、第2スリット対ごとの第2排出スリットの各々と連通している共通流路となっている。そして、第2供給スリットおよび第2排出スリットはそれぞれ、吐出チャネルC2eとの間でインク9が流れる貫通孔となっている。詳細には、第2供給スリットは、吐出チャネルC2e内にインク9を流入させるための貫通孔であり、第2排出スリットは、吐出チャネルC2e内からインク9を流出させるための貫通孔となっている。一方、各ダミーチャネルC2dには、入口側共通流路Rin2および出口側共通流路Rout2はいずれも、連通していない(
図3,
図4参照)。具体的には、各ダミーチャネルC2dは、これらの入口側共通流路Rin2および出口側共通流路Rout2における底部によって、閉塞されるようになっている(
図3,
図4参照)。
【0068】
(位置合わせプレート415)
位置合わせプレート415は、
図3,
図4,
図6に示したように、アクチュエータプレート412とノズルプレート411との間に配置されている。この位置合わせプレート415は、ヘッドチップ41の製造の際に各ノズル孔H1,H2の位置合わせをするための複数の開口部H31,H32を、ノズル孔H1(H11,H12),H2(H21,H22)ごとに有している。具体的には、ノズル孔H11,H21ごとに、開口部H31が配置されると共に、ノズル孔H21,H22ごとに、開口部H32が配置されるようになっている(
図3,
図4,
図6参照)。
【0069】
これらの開口部H31,H32はそれぞれ、ノズル孔H11,H12,H21,H22と吐出チャネルC1e1,C1e2との間を連通しており、X-Y平面上において略矩形状の開口部となっている。各開口部H31,H32におけるY軸方向の長さ(開口長)は、各ノズル孔H11,H12,H21,H22におけるY軸方向の長さよりも、大きくなっている(
図3,
図4参照)。また、各開口部H31,H32におけるX軸方向の長さは、各ノズル孔H11,H12,H21,H22におけるX軸方向の長さ、および、各吐出チャネルC1e,C2eにおけるX軸方向の長さよりも、大きくなっている(
図6参照)。つまり、例えば
図6に示したように、このような開口部H31,H32によって、ノズル孔H1,H2における少量の位置ずれ(X-Y平面内での位置ずれ)を許容し、そのような位置ずれを防止するようになっている。このような位置合わせプレート415が設けられていることで、ヘッドチップ41の製造の際に、アクチュエータプレート412とノズルプレート411との間の位置合わせが、容易となっている。
【0070】
なお、このような開口部H31,H32はそれぞれ、本開示における「第3貫通孔」の一具体例に対応している。
【0071】
ここで、本実施の形態のヘッドチップ41では、このような位置合わせプレート415における開口部H31,H32を含むようにして、以下のような拡張流路部431,432がそれぞれ、形成されるようになっている。
【0072】
拡張流路部431は、ノズル孔H11,H21付近に形成されており、詳細は後述するが、これらのノズル孔H11,H21付近におけるインク9の流路の断面積(流路断面積Sf3)を、広げる流路となっている(例えば
図3参照)。同様に、拡張流路部432は、ノズル孔H12,H22付近に形成されており、詳細は後述するが、これらのノズル孔H12,H22付近におけるインク9の流路の断面積(流路断面積Sf4)を、広げる流路となっている(例えば
図4参照)。
【0073】
なお、このような拡張流路部431は、本開示における「第1拡張流路部」の一具体例に対応している。同様に、拡張流路部432は、本開示における「第2拡張流路部」の一具体例に対応している。また、上記した流路断面積Sf3は、本開示における「第3断面積」の一具体例に対応している。同様に、上記した流路断面積Sf4は、本開示における「第4断面積」の一具体例に対応している。
【0074】
[C.吐出チャネルC1e,C2e付近の詳細構成]
次に、
図2~
図5を参照して、吐出チャネルC1e,C2e付近における、ノズル孔H1,H2およびカバープレート413の詳細構成について、説明する。
【0075】
まず、本実施の形態のヘッドチップ41では、前述したように、複数のノズル孔H1が、2種類のノズル孔H11,H12を含んでいると共に、複数のノズル孔H2も、2種類のノズル孔H21,H22を含んでいる(
図2参照)。
【0076】
ここで、各ノズル孔H11の中心位置Pn11は、吐出チャネルC1eの延在方向(Y軸方向)に沿った中心位置Pc1(=壁部W1のY軸方向に沿った中心位置)を基準として、Y軸方向の正側(第1供給スリットSin1側)に、ずれて配置されている(
図3,
図5参照)。同様に、各ノズル孔H21の中心位置は、吐出チャネルC2eの延在方向(Y軸方向)に沿った中心位置(=壁部W2のY軸方向に沿った中心位置)を基準として、Y軸方向の負側(第2供給スリット側)に、ずれて配置されている(
図2参照)。
【0077】
一方、各ノズル孔H12の中心位置Pn12は、吐出チャネルC1eの延在方向に沿った中心位置Pc1を基準として、Y軸方向の負側(第1排出スリットSout1側)に、ずれて配置されている(
図4,
図5参照)。同様に、各ノズル孔H22の中心位置は、吐出チャネルC2eの延在方向(Y軸方向)に沿った中心位置を基準として、Y軸方向の正側(第2排出スリット側)に、ずれて配置されている(
図2参照)。
【0078】
したがって、各ノズル孔H11と連通する吐出チャネルC1e(C1e1)においては、第1供給スリットSin1と連通する部分におけるインク9の流路の断面積(第1入口側流路断面積Sfin1)が、第1排出スリットSout1と連通する部分におけるインク9の流路の断面積(第1出口側流路断面積Sfout1)よりも、小さくなっている(Sfin1<Sfout1:
図3参照)。同様に、各ノズル孔H21と連通する吐出チャネルC2eにおいては、第2供給スリットと連通する部分におけるインク9の流路の断面積(第2入口側流路断面積)が、第2排出スリットと連通する部分におけるインク9の流路の断面積(第2出口側流路断面積)よりも、小さくなっている(Sfin2<Sfout2)。
【0079】
一方、各ノズル孔H12と連通する吐出チャネルC1e(C1e2)においては、逆に、上記した第1出口側流路断面積Sfout1が、上記した第1入口側流路断面積Sfin1よりも、小さくなっている(Sfout1<Sfin1:
図4参照)。同様に、各ノズル孔H22と連通する吐出チャネルC2eにおいても、逆に、上記した第2出口側流路断面積Sfout2が、上記した第2入口側流路断面積Sfin2よりも、小さくなっている(Sfout2<Sfin2)。
【0080】
なお、上記した吐出チャネルC1e1、および、ノズル孔H21と連通する吐出チャネルC2eはそれぞれ、本開示における「第1吐出溝」の一具体例に対応している。同様に、上記した吐出チャネルC1e2、および、ノズル孔H22と連通する吐出チャネルC2eはそれぞれ、本開示における「第2吐出溝」の一具体例に対応している。また、上記した第1入口側流路断面積Sfin1および第2入口側流路断面積はそれぞれ、本開示における「第1断面積」の一具体例に対応している。同様に、上記した第1出口側流路断面積Sfout1および第2出口側流路断面積はそれぞれ、本開示における「第2断面積」の一具体例に対応している。また、上記したノズル孔H11の中心位置Pn11、および、ノズル孔H21の中心位置はそれぞれ、本開示における「第1中心位置」の一具体例に対応している。同様に、上記したノズル孔H12の中心位置Pn12、および、ノズル孔H22の中心位置はそれぞれ、本開示における「第2中心位置」の一具体例に対応している。
【0081】
また、このヘッドチップ41では、前述した第1スリット対Sp1における第1供給スリットSin1と第1排出スリットSout1との間の距離に対応する、吐出チャネルC1eの延在方向(Y軸方向)の長さ(第1ポンプ長Lw1:
図3,
図4参照)が、全ての第1スリット対Sp1において同一になっている(
図5参照)。同様に、前述した第2スリット対における第2供給スリットと第2排出スリットとの間の距離に対応する、吐出チャネルC2eの延在方向(Y軸方向)の長さ(第2ポンプ長)も、全ての第2スリット対において同一になっている。
【0082】
そして、このヘッドチップ41では、第1供給スリットSin1におけるY軸方向の長さ(第1供給スリット長Lin1)と、第1排出スリットSout1におけるY軸方向の長さ(第1排出スリット長Lout1)との間の大小関係が、X軸方向に沿って隣接する第1スリット対Sp1同士で、交互に入れ替わっている(
図5参照)。すなわち、例えば、ある第1スリット対Sp1において、(Lin1>Lout1)という大小関係である場合、その第1スリット対Sp1の両隣に位置する第1スリット対Sp1ではそれぞれ、逆に、(Lin1<Lout1)という大小関係になっている。また、例えば、ある第1スリット対Sp1において、(Lin1<Lout1)という大小関係である場合、その第1スリット対Sp1の両隣に位置する第1スリット対Sp1ではそれぞれ、逆に、(Lin1>Lout1)という大小関係になっている。
【0083】
同様に、第2供給スリットにおけるY軸方向の長さ(第2供給スリット長)と、第2排出スリットにおけるY軸方向の長さ(第2排出スリット長)との間の大小関係も、X軸方向に沿って隣接する第2スリット対同士で、上記したようにして、交互に入れ替わっている。
【0084】
更に、このヘッドチップ41では、入口側共通流路Rin1におけるY軸方向の長さ(第1入口側流路幅Win1)が、この入口側共通流路Rin1の延在方向(X軸方向)に沿って、一定となっている(
図5参照)。また、出口側共通流路Rout1におけるY軸方向の長さ(第1出口側流路幅Wout1)も、この出口側共通流路Rout1の延在方向(X軸方向)に沿って、一定となっている(
図5参照)。
【0085】
同様に、入口側共通流路Rin2におけるY軸方向の長さ(第2入口側流路幅)も、この入口側共通流路Rin2の延在方向(X軸方向)に沿って、一定となっている。また、出口側共通流路Rout2におけるY軸方向の長さ(第2出口側流路幅)も、この出口側共通流路Rout2の延在方向(X軸方向)に沿って、一定となっている。
【0086】
[D.拡張流路部431,432の詳細構成]
次に、
図3,
図4に加えて
図7,
図8を参照して、前述した拡張流路部431,432の詳細構成について、説明する。
図7,
図8はそれぞれ、本実施の形態等に係るノズル孔H1,H2および拡張流路部の位置関係の一例を、模式的に断面図(Y-Z断面図)で表したものである。具体的には、
図7(A)は、
図3中におけるVII付近の断面構成を拡大して示したものであり、
図7(B)は、後述する比較例3に係るインクジェットヘッド304(ヘッドチップ300)における断面構成を、
図7(A)と対比して示したものである。また、
図8(A)は、
図4中におけるVIII付近の断面構成を拡大して示したものであり、
図8(B)は、後述する比較例4に係るインクジェットヘッド404(ヘッドチップ400)における断面構成を、
図8(A)と対比して示したものである。
【0087】
まず、本実施の形態のヘッドチップ41では、これらの拡張流路部431,432(開口部H31,H32)におけるY軸方向に沿った両端部はそれぞれ、壁部W1(または壁部W2)におけるY軸方向に沿った両端部よりも内側(いわゆるポンプ室内)に、位置している(
図3,
図4参照)。
【0088】
具体的には、
図3に示したように、拡張流路部431における第1供給スリットSin1側の端部が、壁部W1における第1供給スリットSin1側の端部を基準位置として、その基準位置よりも第1排出スリットSout1側に配置されている。また、拡張流路部431における第1排出スリットSout1側の端部も、壁部W1における第1排出スリットSout1側の端部を基準位置として、その基準位置よりも第1供給スリットSin1側に配置されている。同様に、拡張流路部431における前述した第2供給スリット側の端部が、壁部W2における第2供給スリット側の端部を基準位置として、その基準位置よりも前述した第2排出スリット側に配置されている。また、拡張流路部431における第2排出スリット側の端部も、壁部W2における第2排出スリット側の端部を基準位置として、その基準位置よりも第2供給スリット側に配置されている。
【0089】
一方、
図4に示したように、拡張流路部432における第1排出スリットSout1側の端部が、壁部W1における第1排出スリットSout1側の端部を基準位置として、その基準位置よりも第1供給スリットSin1側に配置されている。また、拡張流路部432における第1供給スリットSin1側の端部も、壁部W1における第1供給スリットSin1側の端部を基準位置として、その基準位置よりも第1排出スリットSout1側に配置されている。同様に、拡張流路部432における第2排出スリット側の端部が、壁部W2における第2排出スリット側の端部を基準位置として、その基準位置よりも第2供給スリット側に配置されている。また、拡張流路部432における第2供給スリット側の端部も、壁部W2における第2供給スリット側の端部を基準位置として、その基準位置よりも第2排出スリット側に配置されている。
【0090】
また、
図7(A)に示したように、本実施の形態のヘッドチップ41では、拡張流路部431におけるY軸方向に沿った中心位置Ph31が、ノズル孔H11の中心位置Pn11よりも、Y軸方向に沿って、第1供給スリットSin1側にずれている。同様に、このヘッドチップ41では、拡張流路部431におけるY軸方向に沿った中心位置Ph31が、ノズル孔H21の中心位置よりも、Y軸方向に沿って、第2供給スリット側にずれている。
【0091】
なお、これに対して、
図7(B)に示した比較例3のヘッドチップ300では、拡張流路部301におけるY軸方向に沿った中心位置Ph31が、ノズル孔H11の中心位置Pn11よりも、Y軸方向に沿って、逆に、第1排出スリットSout1側にずれている。同様に、この比較例3のヘッドチップ300では、拡張流路部301におけるY軸方向に沿った中心位置Ph31が、ノズル孔H21の中心位置よりも、Y軸方向に沿って、逆に、第2排出スリット側にずれている。
【0092】
一方、
図8(A)に示したように、本実施の形態のヘッドチップ41では、拡張流路部432におけるY軸方向に沿った中心位置Ph32が、ノズル孔H12の中心位置Pn12よりも、Y軸方向に沿って、第1排出スリットSout1側にずれている。同様に、このヘッドチップ41では、拡張流路部432におけるY軸方向に沿った中心位置Ph32が、ノズル孔H22の中心位置よりも、Y軸方向に沿って、第2排出スリット側にずれている。
【0093】
なお、これに対して、
図8(B)に示した比較例4のヘッドチップ400では、拡張流路部402におけるY軸方向に沿った中心位置Ph32が、ノズル孔H12の中心位置Pn12よりも、Y軸方向に沿って、逆に、第1供給スリットSin1側にずれている。同様に、この比較例4のヘッドチップ400では、拡張流路部402におけるY軸方向に沿った中心位置Ph32が、ノズル孔H22の中心位置よりも、Y軸方向に沿って、逆に、第2供給スリット側にずれている。
【0094】
[動作および作用・効果]
(A.プリンタ1の基本動作)
このプリンタ1では、以下のようにして、記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作(印刷動作)が行われる。なお、初期状態として、
図1に示した4種類のインクタンク3(3Y,3M,3C,3K)にはそれぞれ、対応する色(4色)のインク9が十分に封入されているものとする。また、インクタンク3内のインク9は、循環流路50を介してインクジェットヘッド4内に充填された状態となっている。
【0095】
このような初期状態において、プリンタ1を作動させると、搬送機構2a,2bにおけるグリッドローラ21がそれぞれ回転することで、グリッドローラ21とピンチローラ22との間に、記録紙Pが搬送方向d(X軸方向)に沿って搬送される。また、このような搬送動作と同時に、駆動機構63における駆動モータ633が、プーリ631a,631bをそれぞれ回転させることで、無端ベルト632を動作させる。これにより、キャリッジ62がガイドレール61a,61bにガイドされながら、記録紙Pの幅方向(Y軸方向)に沿って往復移動する。そしてこの際に、各インクジェットヘッド4(4Y,4M,4C,4K)によって、4色のインク9を記録紙Pに適宜吐出させることで、この記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作がなされる。
【0096】
(B.インクジェットヘッド4における詳細動作)
続いて、インクジェットヘッド4における詳細動作(インク9の噴射動作)について説明する。すなわち、このインクジェットヘッド4(サイドシュートタイプ)では、以下のようにして、せん断(シェア)モードを用いたインク9の噴射動作が行われる。
【0097】
まず、上記したキャリッジ62(
図1参照)の往復移動が開始されると、前述した回路基板上の駆動回路は、前述したフレキシブルプリント基板を介して、インクジェットヘッド4内の駆動電極Ed(共通電極Edcおよび個別電極Eda)に対し、駆動電圧を印加する。具体的には、この駆動回路は、吐出チャネルC1e,C2eを画成する一対の駆動壁Wdに配置された各駆動電極Edに対し、駆動電圧を印加する。これにより、これら一対の駆動壁Wdがそれぞれ、その吐出チャネルC1e,C2eに隣接するダミーチャネルC1d,C2d側へ、突出するように変形する。
【0098】
ここで、アクチュエータプレート412の構成が、前述したシェブロンタイプになっていることから、上記した駆動回路によって駆動電圧を印加することで、駆動壁Wdにおける深さ方向の中間位置を中心として、駆動壁WdがV字状に屈曲変形することになる。そして、このような駆動壁Wdの屈曲変形により、吐出チャネルC1e,C2eがあたかも膨らむように変形する。
【0099】
ちなみに、アクチュエータプレート412の構成が、このようなシェブロンタイプではなく、前述したカンチレバータイプである場合には、以下のようにして、駆動壁WdがV字状に屈曲変形する。すなわち、このカンチレバータイプの場合、駆動電極Edが深さ方向の上半分まで斜め蒸着によって取り付けられることになるため、この駆動電極Edが形成されている部分のみに駆動力が及ぶことによって、駆動壁Wdが(駆動電極Edの深さ方向端部において)屈曲変形する。その結果、この場合においても、駆動壁WdがV字状に屈曲変形するため、吐出チャネルC1e,C2eがあたかも膨らむように変形することになる。
【0100】
このように、一対の駆動壁Wdでの圧電厚み滑り効果による屈曲変形によって、吐出チャネルC1e,C2eの容積が増大する。そして、吐出チャネルC1e,C2eの容積が増大することにより、入口側共通流路Rin1,Rin2内に貯留されたインク9が、吐出チャネルC1e,C2e内へ誘導されることになる。
【0101】
次いで、このようにして吐出チャネルC1e,C2e内へ誘導されたインク9は、圧力波となって吐出チャネルC1e,C2eの内部に伝播する。そして、ノズルプレート411のノズル孔H1,H2にこの圧力波が到達したタイミング(またはその近傍のタイミング)で、駆動電極Edに印加される駆動電圧が、0(ゼロ)Vとなる。これにより、上記した屈曲変形の状態から駆動壁Wdが復元する結果、一旦増大した吐出チャネルC1e,C2eの容積が、再び元に戻ることになる。
【0102】
このようにして、吐出チャネルC1e,C2eの容積が元に戻る過程で、吐出チャネルC1e,C2e内部の圧力が増加し、吐出チャネルC1e,C2e内のインク9が加圧される。その結果、液滴状のインク9が、ノズル孔H1,H2を通って外部へと(記録紙Pへ向けて)吐出される(
図3,
図4,
図6参照)。このようにしてインクジェットヘッド4におけるインク9の噴射動作(吐出動作)がなされ、その結果、記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作が行われる。
【0103】
(C.インク9の循環動作)
続いて、
図1,
図3,
図4を参照して、循環流路50を介したインク9の循環動作について、詳細に説明する。
【0104】
このプリンタ1では、前述した送液ポンプによって、インクタンク3内から流路50a内へと、インク9が送液される。また、流路50b内を流れるインク9が、前述した送液ポンプによって、インクタンク3内へと送液される。
【0105】
この際に、インクジェットヘッド4内では、インクタンク3内から流路50aを介して流れるインク9が、入口側共通流路Rin1,Rin2へと流入する。これらの入口側共通流路Rin1,Rin2へと供給されたインク9は、第1供給スリットSin1または第2供給スリットを介して、アクチュエータプレート412における各吐出チャネルC1e,C2e内へと供給される(
図3,
図4参照)。
【0106】
また、各吐出チャネルC1e,C2e内のインク9は、第1排出スリットSout1または第2排出スリットを介して、出口側共通流路Rout1,Rout2内へと流入する(
図3,
図4参照)。これらの出口側共通流路Rout1,Rout2へ供給されたインク9は、流路50bへと排出されることで、インクジェットヘッド4内から流出される。そして、流路50bへと排出されたインク9は、インクタンク3内へと戻されることになる。このようにして、循環流路50を介したインク9の循環動作がなされる。
【0107】
ここで、循環式ではないインクジェットヘッドでは、乾燥性の高いインクを使用した場合、ノズル孔の近傍でのインクの乾燥に起因して、インクの局所的な高粘度化や固化が生じる結果、インク不吐出の不良が発生するおそれがある。これに対して、本実施の形態のインクジェットヘッド4(循環式のインクジェットヘッド)では、ノズル孔H1,H2の近傍に常に新鮮なインク9が供給されることから、上記したようなインク不吐出の不良が回避されることになる。
【0108】
(D.作用・効果)
次に、本実施の形態のインクジェットヘッド4における作用および効果について、比較例(比較例1~4)と比較しつつ、詳細に説明する。
【0109】
(D-1.比較例1)
図9は、比較例1に係るインクジェットヘッド104において、この比較例1に係るノズルプレート101(後出)を取り外した状態の構成例を、模式的に底面図(X-Y底面図)で表したものである。
図10は、
図9に示したX-X線に沿った、比較例1に係るインクジェットヘッド104の断面構成例(Y-Z断面構成例)を、模式的に表したものである。
【0110】
図9,
図10に示したように、この比較例1のインクジェットヘッド104(ヘッドチップ100)では、本実施の形態のインクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)とは、各ノズル孔H1,H2の配置構成が、異なっている。
【0111】
具体的には、この比較例1のノズルプレート101では、本実施の形態のノズルプレート411とは異なり、各ノズル列An101,102内のノズル孔H1,H2がそれぞれ、各ノズル列An101,102の延在方向(X軸方向)に沿って、1列に並んで配置されている(
図9参照)。つまり、前述した本実施の形態の場合とは異なり、この比較例1では、各ノズル孔H1の中心位置Pn1が、吐出チャネルC1eの延在方向(Y軸方向)に沿った中心位置Pc1(=壁部W1のY軸方向に沿った中心位置)と、一致するようになっている(
図10参照)。同様に、この比較例1では、各ノズル孔H2の中心位置が、吐出チャネルC2eの延在方向(Y軸方向)に沿った中心位置(=壁部W2のY軸方向に沿った中心位置)と、一致するようになっている
【0112】
このような比較例1では、上記したように、ノズル孔H1,H2がそれぞれ、X軸方向に沿って1列に並んで配置されていることから、例えば印刷画素の高解像度化等に伴い、隣接するノズル孔H1間の距離や、隣接するノズル孔H2間の距離が、小さくなった場合に、例えば以下のようなおそれがある。すなわち、このような場合、同時期に噴射されて被記録媒体(記録紙P等)へ向けて飛翔している液滴間の距離が減少することから、ノズル孔H1,H2から被記録媒体の間にて飛翔中の液滴が、局所的に集中するケースがある。これにより、飛翔した各液滴に及ぼす影響(気流の発生)が増大する結果、被記録媒体上において木目調の濃度むらが発生し、印刷画質が低下してしまうおそれがある。
【0113】
(D-2.比較例2)
図11,
図12はそれぞれ、比較例2に係るインクジェットヘッド204(ヘッドチップ200)の断面構成例(Y-Z断面構成例)を、模式的に表したものである。具体的には、
図11は、この比較例2に係るインクジェットヘッド204において、ノズル孔H11(吐出チャネルC1e1)を含む部分に対応する断面構成例を示しており、本実施の形態の
図3に対応している。また、
図12は、この比較例2に係るインクジェットヘッド204において、ノズル孔H12(吐出チャネルC1e2)を含む部分に対応する断面構成例を示しており、本実施の形態の
図4に対応している。
【0114】
この比較例2のインクジェットヘッド204(ヘッドチップ200)は、本実施の形態のインクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)において、前述した位置合わせプレート415(拡張流路部431,432)を省いた構成に対応している(
図3,
図4参照)。
【0115】
したがって、この比較例2においても本実施の形態と同様にして、上記比較例1とは異なり、以下のようになっている。すなわち、ノズル孔H11の中心位置Pn11が、吐出チャネルC1eの延在方向(Y軸方向)に沿った中心位置Pc1を基準として、第1供給スリットSin1側にずれて配置されていると共に、ノズル孔H12の中心位置Pn12が、上記した中心位置Pc1を基準として、第1排出スリットSout1側にずれて配置されている。同様に、ノズル孔H21の中心位置が、吐出チャネルC2eの延在方向(Y軸方向)に沿った中心位置を基準として、第2供給スリット側にずれて配置されていると共に、ノズル孔H22の中心位置が、吐出チャネルC2eの延在方向に沿った中心位置を基準として、第2排出スリット側にずれて配置されている。
【0116】
これにより比較例2では、隣接するノズル孔H1間の距離(および隣接するノズル孔H2間の距離)が、ノズル孔H1,H2がそれぞれX軸方向に沿って1列に並んで配置されている場合(上記比較例1)と比べ、大きくなる。このため、同時期に噴射されて被記録媒体(記録紙P等)へ向けて飛翔している液滴間の距離が増加することから、ノズル孔H1,H2から被記録媒体の間にて飛翔中の液滴が局所的に集中することを、緩和させることができる。これにより比較例2では、飛翔した各液滴に及ぼす影響(気流の発生)が抑えられる結果、比較例1と比べ、上記したような被記録媒体上での木目調の濃度むらの発生が、抑えられることになる。
【0117】
ところが、この比較例2では、前述した本実施の形態と同様に、各ノズル孔H11と連通する吐出チャネルC1e1および各ノズル孔H12と連通する吐出チャネルC1e2において、インク9の流路断面積が、以下のようになっている(
図11,
図12参照)。
【0118】
すなわち、吐出チャネルC1e1において、第1入口側流路断面積Sfin1が第1出口側流路断面積Sfout1よりも小さくなっていると共に、吐出チャネルC1e2において、第1出口側流路断面積Sfout1が第1入口側流路断面積Sfin1よりも小さくなっている。なお、各ノズル孔H21と連通する吐出チャネルC2eおよび各ノズル孔H22と連通する吐出チャネルC2eにおいても、インク9の流路断面積が、同様の大小関係となっている。
【0119】
このようにして比較例2では、吐出チャネルC1e1,C1e2の間で、インク9の流入側(第1供給スリットSin1側)における流路部分の断面積(第1入口側流路断面積Sfin1)が、互いに異なることになる(
図11,
図12参照)。したがって、この比較例2では、これらの吐出チャネルC1e1,C1e2の間で、上記したインク9の流入側からノズル孔H11,H12までの圧力損失も、互いに異なることになる。その結果、この比較例2では、ノズル孔H11,H12付近での定常時の圧力も、吐出チャネルC1e1,C1e2の間で互いに異なることとなり、ヘッドチップ200全体での水頭値マージンが減少することから、インクジェットヘッド204におけるインク9の吐出特性が、低下してしまうおそれがある。
【0120】
具体的には、例えば吐出チャネルC1e1,C1e2のうち、一方では、適切なメニスカスが形成される圧力になっているにも関わらず、他方では、ノズル孔H11またはノズル孔H12付近での圧力が高くなり過ぎてメニスカスが壊れ、インク9が漏れ出してしまうおそれがある。また、逆に、そのような圧力が低くなり過ぎてメニスカスが壊れ、吐出チャネルC1e1または吐出チャネルC1e2に気泡が混入する結果、インク9が不吐出になってしまうおそれがある。
【0121】
なお、このような圧力の差異に起因した、インク9の吐出特性の低下は、各ノズル孔H21と連通する吐出チャネルC2eと各ノズル孔H22と連通する吐出チャネルC2eとの間においても、同様にして生じ得るものである。
【0122】
(D-3.本実施の形態)
これに対して、本実施の形態のインクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)では、まず、上記した比較例2と同様にして、比較例1とは異なり、以下のようになっている。すなわち、ノズル孔H11の中心位置Pn11が、吐出チャネルC1eの延在方向(Y軸方向)に沿った中心位置Pc1を基準として、第1供給スリットSin1側にずれて配置されていると共に、ノズル孔H12の中心位置Pn12が、上記した中心位置Pc1を基準として、第1排出スリットSout1側にずれて配置されている。同様に、ノズル孔H21の中心位置が、吐出チャネルC2eの延在方向(Y軸方向)に沿った中心位置を基準として、第2供給スリット側にずれて配置されていると共に、ノズル孔H22の中心位置が、吐出チャネルC2eの延在方向に沿った中心位置を基準として、第2排出スリット側にずれて配置されている。
【0123】
これにより本実施の形態では、比較例2と同様にして、比較例1と比べ、以下のようになる。すなわち、隣接するノズル孔H1間の距離(および隣接するノズル孔H2間の距離)が、ノズル孔H1,H2がそれぞれX軸方向に沿って1列に並んで配置されている場合(比較例1)と比べ、大きくなる。このため、同時期に噴射されて被記録媒体(記録紙P等)へ向けて飛翔している液滴間の距離が増加することから、ノズル孔H1,H2から被記録媒体の間にて飛翔中の液滴が局所的に集中することを、緩和させることができる。これにより本実施の形態では、飛翔した各液滴に及ぼす影響(気流の発生)が抑えられる結果、比較例1と比べ、前述したような被記録媒体上での木目調の濃度むらの発生が、抑えられる。
【0124】
また、本実施の形態では、比較例2と同様にして、複数の吐出チャネルC1eの全体(および複数の吐出チャネルC2eの全体)が、アクチュエータプレート412内でX軸方向に沿って、1列に配置されている。これにより本実施の形態では、これら複数の吐出チャネルC1e全体(および複数の吐出チャネルC2e全体)で、既存の構造が維持される結果、各吐出チャネルC1e(および各吐出チャネルC2e)の形成が、容易となる。
【0125】
更に、本実施の形態では、比較例2とは異なり、前述した拡張流路部431,432がそれぞれ、ヘッドチップ41に形成されている。具体的には、ノズル孔H11,H21付近に、これらのノズル孔H11,H21付近におけるインク9の流路の断面積(流路断面積Sf3)を広げる、拡張流路部431が形成されている(
図3参照)。また、ノズル孔H12,H22付近に、これらのノズル孔H12,H22付近におけるインク9の流路の断面積(流路断面積Sf4)を広げる、拡張流路部432が形成されている(
図4参照)。
【0126】
そして、本実施の形態では前述したように、拡張流路部431におけるY軸方向に沿った中心位置Ph31が、ノズル孔H11の中心位置Pn11よりも、Y軸方向に沿って、第1供給スリットSin1側にずれている(
図7(A)参照)。同様に、拡張流路部431におけるY軸方向に沿った中心位置Ph31が、ノズル孔H21の中心位置よりも、Y軸方向に沿って、第2供給スリット側にずれている。また、拡張流路部432におけるY軸方向に沿った中心位置Ph32が、ノズル孔H12の中心位置Pn12よりも、Y軸方向に沿って、第1排出スリットSout1側にずれている(
図8(A)参照)。同様に、拡張流路部432におけるY軸方向に沿った中心位置Ph32が、ノズル孔H22の中心位置よりも、Y軸方向に沿って、第2排出スリット側にずれている。
【0127】
このような配置位置の拡張流路部431,432がそれぞれ形成されていることで、本実施の形態では比較例2と比べ、以下のようになる。すなわち、上記したような、吐出チャネルC1e1,C1e2間における、第1入口側流路断面積Sfin1の差が小さくなり、上記したインク9の流入側からノズル孔H11,H12までの圧力損失も、小さくなる。その結果、本実施の形態では比較例2と比べ、吐出チャネルC1e1,C1e2間における、ノズル孔H11,H12付近での定常時の圧力の差も小さくなり、ヘッドチップ41全体での水頭値マージンが増加することから、インクジェットヘッド4におけるインク9の吐出特性が、向上することになる。なお、このような作用は、各ノズル孔H21と連通する吐出チャネルC2eと、各ノズル孔H22と連通する吐出チャネルC2eとの間においても、同様に生じる。
【0128】
ちなみに、これに対して、前述した比較例3,4の場合(
図7(B),
図8(B)参照)では、各拡張流路部301,402の配置位置が、上記した本実施の形態とは異なっていることから、以下のようになる。すなわち、比較例3では、例えば前述したように、拡張流路部301におけるY軸方向に沿った中心位置Ph31が、ノズル孔H11の中心位置Pn11よりも、Y軸方向に沿って、逆に、第1排出スリットSout1側にずれている(
図7(B)参照)。また、比較例4では、例えば前述したように、拡張流路部402におけるY軸方向に沿った中心位置Ph32が、ノズル孔H12の中心位置Pn12よりも、Y軸方向に沿って、逆に、第1供給スリットSin1側にずれている(
図8(B)参照)。したがって、これらの比較例3,4では、例えば、上記した吐出チャネルC1e1,C1e2間における、ノズル孔H11,H12付近での定常時の圧力の差が、逆に増大し、上記した水頭値マージンが更に低下してしまうことから、インク9の吐出特性も、更に低下してしまうおそれがある。
【0129】
以上のことから、本実施の形態では、各吐出チャネルC1e,C2eの形成を容易にしつつ、被記録媒体上での木目調の濃度むらの発生を抑えることができると共に、インク9の吐出特性を向上させることができる。よって、本実施の形態のインクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)では、上記比較例1~4と比べ、ヘッドチップ41の製造コストを抑えつつ、印刷画質を向上させることが可能となる。また、本実施の形態では、高い粘度のインク9(高粘度インク)を吐出することも、可能となる。
【0130】
また、特に本実施の形態では、拡張流路部431,432がそれぞれ、位置合わせプレート415における開口部H31,H32(各ノズル孔H1,H2の位置合わせをするための開口部)を含むようにして構成されていることから、以下のようになる。すなわち、この位置合わせプレート415における既存の開口部H31,H32を用いて、上記した拡張流路部431,432をそれぞれ、簡便かつ精度良く形成することができる。よって、ヘッドチップ41の製造コストを更に抑えつつ、インク9の吐出特性を更に向上させて、印刷画質を更に向上させることが可能となる。
【0131】
更に、本実施の形態では、拡張流路部431,432(開口部H31,H32)におけるY軸方向に沿った両端部がそれぞれ、前述したように、壁部W1(または壁部W2)におけるY軸方向に沿った両端部よりも、内側(ポンプ室内)に位置している(
図3,
図4参照)ことから、以下のようになる。すなわち、例えば吐出チャネルC1e1,C1e2の内部においてそれぞれ、圧力特性の不均一性が低減し、インク9の吐出特性が更に向上する結果、印刷画質を更に向上させることが可能となる。
【0132】
また、本実施の形態では、上記したようにして、複数の吐出チャネルC1e全体(および複数の吐出チャネルC2e全体)で既存の構造を維持しつつ、X軸方向に沿って隣接するノズル孔H1同士(および隣接するノズル孔H2同士)が、Y軸方向に沿って互いにずれて配置されている構造においても、既存の構造と同様にして、以下のようにすることができる。すなわち、前述した第1ポンプ長Lw1および第2ポンプ長をそれぞれ、全ての第1スリット対Sp1および全ての第2スリット対において、同一にする(共通化する)ことができる。これにより本実施の形態では、隣接するノズル孔H1同士(および隣接するノズル孔H2同士)での、吐出特性のばらつきが抑えられる結果、印刷画質を更に向上させることが可能となる。また、本実施の形態では、例えば、第1供給スリットSin1および第2供給スリットと、第1排出スリットSout1および第2排出スリットとをそれぞれ、X軸方向に沿って千鳥配置としたような場合と比べ、以下のようになる。すなわち、まず、このような場合には、複数の吐出チャネルC1e全体(および複数の吐出チャネルC2e全体)も、X軸方向に沿って千鳥配置となる。一方、本実施の形態では、既存の構造と同様にして、複数の吐出チャネルC1e全体(および複数の吐出チャネルC2e全体)を、千鳥配置せずに形成(加工)できることから(
図5参照)、ヘッドチップ41の加工性が良好となる(既存の製造プロセスを維持したまま、加工できるようになる)。これにより本実施の形態では、ヘッドチップ41の製造プロセスの容易化を実現することも、可能となる。
【0133】
更に、本実施の形態では、入口側共通流路Rin1,Rin2における流路幅(第1入口側流路幅Win1および第2入口側流路幅)と、出口側共通流路Rout1,Rout2における流路幅(第1出口側流路幅Wout1および第2出口側流路幅)とがそれぞれ、各共通流路の延在方向(X軸方向)に沿って一定になっていることから、以下のようになる。すなわち、これらの入口側共通流路Rin1,Rin2および出口側共通流路Rout1,Rout2の各構造についても、既存の構造を維持することが可能となる。
【0134】
加えて、本実施の形態では、各ダミーチャネルC1d,C2dにおける延在方向(Y軸方向)に沿った一方側は、前述した側面になっていると共に、この延在方向に沿った他方側は、アクチュエータプレート412のY軸方向に沿った端部に至るまで、開口していることから、以下のようになる。すなわち、上記したように、X軸方向に沿って隣接するノズル孔H1同士(および隣接するノズル孔H2同士)が、Y軸方向に沿って互いにずれて配置されている構造において、ヘッドチップ41全体のサイズ(チップサイズ)を変えることなく、ノズルプレート411内でのノズル孔H1,H2の高密度配置が可能となる。また、各ダミーチャネルC1d,C2dにおける上記した他方側が、上記した端部に至るまで開口していることから、各ダミーチャネルC1d,C2d内に個別に配置される個別電極Edaが、各吐出チャネルC1e,C2d内に配置される共通電極Edcとは別個に(電気的に絶縁した状態で)、形成できるようになる。これらのことから本実施の形態では、ヘッドチップ41におけるチップサイズの小型化を図りつつ、ヘッドチップ41の製造プロセスの容易化を実現することが可能となる。
【0135】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1~4)について説明する。なお、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0136】
[変形例1]
(構成)
図13,
図14はそれぞれ、変形例1等に係るノズル孔H1,H2および拡張流路部の位置関係の一例を、模式的に断面図(Y-Z断面図)で表したものである。具体的には、
図13(A)は、変形例1に係るインクジェットヘッド4a(ヘッドチップ41a)における拡張流路部431a等の断面構成を、示したものである。
図13(B),
図13(C)はそれぞれ、前述した実施の形態の拡張流路部431等、および、比較例3の拡張流路部301等における各断面構成(前述した
図7(A),
図7(B)に示した各断面構成)を、対比して示したものである。また、
図14(A)は、変形例1に係るインクジェットヘッド4a(ヘッドチップ41a)における拡張流路部432a等の断面構成を、示したものである。
図14(B),
図14(C)はそれぞれ、前述した実施の形態の拡張流路部432、および、比較例4の拡張流路部402における各断面構成(前述した
図8(A),
図8(B)に示した各断面構成)を、対比して示したものである。
【0137】
図13(A),
図14(A)に示したように、この変形例1のインクジェットヘッド4aは、実施の形態のインクジェットヘッド4において、ヘッドチップ41の代わりに、ヘッドチップ41aを設けるようにしたものに対応している。なお、このようなインクジェットヘッド4aは、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。
【0138】
このヘッドチップ41aでは、ヘッドチップ41における拡張流路部431,432の代わりにそれぞれ、以下説明する拡張流路部431a,432aが、形成されている(
図13(A),
図14(A)参照)。
【0139】
なお、このような拡張流路部431aは、本開示における「第1拡張流路部」の一具体例に対応している。同様に、拡張流路部432aは、本開示における「第2拡張流路部」の一具体例に対応している。
【0140】
図13(A)に示したように、この拡張流路部431aにおけるY軸方向に沿った中心位置Ph31は、ノズル孔H11の中心位置Pn11と、一致している。同様に、拡張流路部431aにおけるY軸方向に沿った中心位置Ph31は、ノズル孔H21の中心位置と、一致している。
【0141】
また、
図14(A)に示したように、拡張流路部432aにおけるY軸方向に沿った中心位置Ph32は、ノズル孔H12の中心位置Pn12と、一致している。同様に、拡張流路部432aにおけるY軸方向に沿った中心位置Ph32は、ノズル孔H22の中心位置と、一致している。
【0142】
(作用・効果)
このような構成の変形例1のインクジェットヘッド4a(ヘッドチップ41a)においても、基本的には、実施の形態のインクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0143】
具体的には、この変形例1では実施の形態とは異なり、上記したように、拡張流路部431aにおけるY軸方向に沿った中心位置Ph31が、ノズル孔H11の中心位置Pn11およびノズル孔H21の中心位置と、それぞれ一致している。同様に、上記したように、拡張流路部432aにおけるY軸方向に沿った中心位置Ph32が、ノズル孔H12の中心位置Pn12およびノズル孔H22の中心位置と、それぞれ一致している。このような変形例1においても、上記した実施の形態と同様の作用により、ヘッドチップ41a全体での水頭値マージンが増加する結果、インクジェットヘッド4aにおけるインク9の吐出特性が向上する。よって、この変形例1においても実施の形態と同様に、ヘッドチップ41aの製造コストを抑えつつ、印刷画質を向上させることが可能となる。
【0144】
ここで、
図15は、このような変形例1および上記した比較例3,4に係るシミュレーション結果の一例を、それぞれ表したものである。具体的には、
図15(A)は、比較例3,4に係るノズル孔H1,H2付近での圧力のシミュレーション結果を、ノズル孔H11,H21付近での圧力値(変形例3:
図13(C)参照)と、ノズル孔H12,H22付近での圧力値(変形例4:
図14(C)参照)とについて、示している。また、
図15(B)は、変形例1に係るノズル孔H1,H2付近での圧力のシミュレーション結果を、ノズル孔H11,H21付近での圧力値(
図13(A)参照)と、ノズル孔H12,H22付近での圧力値(
図14(A)参照)とについて、示している。なお、これらの
図15(A),
図15(B)中に示した例ではいずれも、差圧=10.0[kPa]の場合について、示している。
【0145】
なお、これらの比較例3,4および変形例1では、ノズル孔H1,H2や拡張流路部301,402における千鳥配置のずらし量は、(+0.25mm,-0.25mm)となっている。
【0146】
このような比較例3,4と変形例1とを比較すると、上記したノズル孔H11,H21付近での圧力値と、ノズル孔H12,H22付近での圧力値との間の圧力差は、比較例3,4ではそれぞれ、以下のようになる。つまり、前述した構成の比較例3,4では、上記した構成の変形例1と比べ、上記した圧力差が、2倍以上に増大していることが分かる。このように、これらの比較例3,4では、前述したように、吐出チャネルC1e1,C1e2間における、ノズル孔H11,H12付近での定常時の圧力差が、変形例1と比べ、逆に増大してしまっていることが分かる。このようにして、このシミュレーション結果からも、比較例3,4では、上記した圧力差の増大に起因して、前述した水頭値マージンが更に低下してしまう結果、インク9の吐出特性が低下してしまうおそれがあると言える。
・比較例3,4 …… 上記圧力差=(5.65-4.34)=1.28[kPa]
・変形例1 …… 上記圧力差=(5.25-4.75)=0.50[kPa]
【0147】
[変形例2]
(構成)
図16,
図17はそれぞれ、変形例2に係るインクジェットヘッド4bの断面構成例(Y-Z断面構成例)を、模式的に表したものである。具体的には、
図16は、この変形例2に係るインクジェットヘッド4bにおいて、ノズル孔H11(吐出チャネルC1e1)を含む部分に対応する断面構成例を示しており、実施の形態の
図3に対応している。また、
図17は、この変形例2に係るインクジェットヘッド4bにおいて、ノズル孔H12(吐出チャネルC1e2)を含む部分に対応する断面構成例を示しており、実施の形態の
図4に対応している。
【0148】
図16,
図17に示したように、この変形例2のインクジェットヘッド4bは、実施の形態のインクジェットヘッド4(
図3,
図4参照)において、ヘッドチップ41の代わりに、ヘッドチップ41bを設けるようにしたものに対応している。なお、このようなインクジェットヘッド4bは、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。
【0149】
このヘッドチップ41bでは、ヘッドチップ41における拡張流路部431,432の代わりにそれぞれ、以下説明する拡張流路部431b,432bが、形成されている(
図16,
図17参照)。
【0150】
なお、このような拡張流路部431bは、本開示における「第1拡張流路部」の一具体例に対応している。同様に、拡張流路部432bは、本開示における「第2拡張流路部」の一具体例に対応している。
【0151】
これらの拡張流路部431b,432bではそれぞれ、拡張流路部431,432とは異なり、拡張流路部431b,432b(開口部H31,H32)におけるY軸方向に沿った一方の端部が、前述したポンプ室の外部まで拡張している。
【0152】
具体的には、
図16に示したように、拡張流路部431bにおける第1供給スリットSin1側の端部が、壁部W1における第1供給スリットSin1側の端部を基準位置として、その基準位置よりも第1供給スリットSin1側に配置されている。同様に、拡張流路部431bにおける前述した第2供給スリット側の端部が、壁部W2における第2供給スリット側の端部を基準位置として、その基準位置よりも第2供給スリット側に配置されている。なお、拡張流路部431bにおける、第1排出スリットSout1側の端部、および、第2排出スリット側の端部については、いずれも、実施の形態で説明した拡張流路部431と同様に、前述したポンプ室内に位置している。
【0153】
また、
図17に示したように、拡張流路部432bにおける第1排出スリットSout1側の端部が、壁部W1における第1排出スリットSout1側の端部を基準位置として、その基準位置よりも第1排出スリットSout1側に配置されている。同様に、拡張流路部432bにおける第2排出スリット側の端部が、壁部W2における第2排出スリット側の端部を基準位置として、その基準位置よりも第2排出スリット側に配置されている。なお、拡張流路部432bにおける、第1供給スリットSin1側の端部、および、第2供給スリット側の端部については、いずれも、実施の形態で説明した拡張流路部432と同様に、前述したポンプ室内に位置している。
【0154】
(作用・効果)
このような構成の変形例2のインクジェットヘッド4b(ヘッドチップ41b)においても、基本的には、実施の形態のインクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0155】
また、特にこの変形例2では、上記したように、拡張流路部431b,432b(開口部H31,H32)におけるY軸方向に沿った一方の端部が、前述したポンプ室の外部まで拡張していることから、以下のようになる。すなわち、前述したような、吐出チャネルC1e1,C1e2間における第1入口側流路断面積Sfin1の差が更に小さくなり、前述したインク9の流入側からノズル孔H11,H12までの圧力損失も、更に小さくなる。その結果、この変形例2では、ヘッドチップ41b全体での水頭値マージンが更に増加し、インクジェットヘッド4bにおけるインク9の吐出特性が、更に向上することになる。よって、この変形例2では、印刷画質を更に向上させることが可能となる。
【0156】
[変形例3]
(構成)
図18,
図19はそれぞれ、変形例3に係るインクジェットヘッド4cの断面構成例(Y-Z断面構成例)を、模式的に表したものである。具体的には、
図18は、この変形例3に係るインクジェットヘッド4cにおいて、ノズル孔H11(吐出チャネルC1e1)を含む部分に対応する断面構成例を示しており、実施の形態の
図3に対応している。また、
図19は、この変形例3に係るインクジェットヘッド4cにおいて、ノズル孔H12(吐出チャネルC1e2)を含む部分に対応する断面構成例を示しており、実施の形態の
図4に対応している。
【0157】
図18,
図19に示したように、この変形例3のインクジェットヘッド4cは、実施の形態のインクジェットヘッド4(
図3,
図4参照)において、ヘッドチップ41の代わりに、ヘッドチップ41cを設けるようにしたものに対応している。また、この変形例3のヘッドチップ41cは、ヘッドチップ41において、位置合わせプレート415を設けないようにすると共に、ノズルプレート411の代わりに、以下説明するノズルプレート411cを設けるようにしたものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている。なお、このようなインクジェットヘッド4cは、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。
【0158】
このようなノズルプレート411cには、実施の形態で説明した拡張流路部431,432と同様の機能を有する、拡張流路部431c,432cが、それぞれ形成されている(
図18,
図19参照)。具体的には、ノズルプレート411cにおけるノズル孔H11,H21付近に、これらのノズル孔H11,H21付近におけるインク9の流路の断面積(流路断面積Sf3)を広げる、拡張流路部431cが形成されている(
図18参照)。また、ノズルプレート411cにおけるノズル孔H12,H22付近に、これらのノズル孔H12,H22付近におけるインク9の流路の断面積(流路断面積Sf4)を広げる、拡張流路部432cが形成されている(
図19参照)。
【0159】
このように、実施の形態のヘッドチップ41では、拡張流路部431,432がいずれも、位置合わせプレート415における開口部H31,H32を含むようにして構成されていたのに対し、この変形例3のヘッドチップ41cでは、拡張流路部431c,432cがいずれも、ノズルプレート411cに設けられている。ちなみに、このような拡張流路部431c,432cはそれぞれ、ノズルプレート411c上における、ノズル孔H11,H12,H21,H22と連通する階段状(2段構造)の開口構造によって、構成されている(
図18,
図19参照)。
【0160】
なお、このような拡張流路部431cは、本開示における「第1拡張流路部」の一具体例に対応している。同様に、拡張流路部432cは、本開示における「第2拡張流路部」の一具体例に対応している。
【0161】
(作用・効果)
このような構成の変形例3のインクジェットヘッド4c(ヘッドチップ41c)においても、基本的には、実施の形態のインクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0162】
また、特にこの変形例3では、上記したように、拡張流路部431c,432cがいずれも、ノズルプレート411cに設けられていることから、既存の部材(ノズルプレート)に対する加工によって、これらの拡張流路部431c,432cを形成できることになる。よって、この変形例3では、ヘッドチップ41cの製造コストを、更に抑えることが可能となる。
【0163】
なお、この変形例3においても、上記した変形例2と同様に、拡張流路部431c,432cにおけるY軸方向に沿った一方の端部が、前述したポンプ室の外部まで拡張しているようにしてもよい。
【0164】
[変形例4]
(構成)
図20,
図21はそれぞれ、変形例4に係るインクジェットヘッド4dの断面構成例(Y-Z断面構成例)を、模式的に表したものである。具体的には、
図20は、この変形例4に係るインクジェットヘッド4dにおいて、ノズル孔H11(吐出チャネルC1e1)を含む部分に対応する断面構成例を示しており、実施の形態の
図3に対応している。また、
図21は、この変形例4に係るインクジェットヘッド4dにおいて、ノズル孔H12(吐出チャネルC1e2)を含む部分に対応する断面構成例を示しており、実施の形態の
図4に対応している。
【0165】
図20,
図21に示したように、この変形例4のインクジェットヘッド4dは、実施の形態のインクジェットヘッド4(
図3,
図4参照)において、ヘッドチップ41の代わりに、ヘッドチップ41dを設けるようにしたものに対応している。また、この変形例3のヘッドチップ41dは、ヘッドチップ41において、位置合わせプレート415を設けないようにすると共に、アクチュエータプレート412の代わりに、以下説明するアクチュエータプレート412dを設けるようにしたものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている。なお、このようなインクジェットヘッド4dは、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。
【0166】
このようなアクチュエータプレート412dには、実施の形態で説明した拡張流路部431,432と同様の機能を有する、拡張流路部431d,432dが、それぞれ形成されている(
図20,
図21参照)。具体的には、アクチュエータレート412dにおけるノズル孔H11,H21付近に、これらのノズル孔H11,H21付近におけるインク9の流路の断面積(流路断面積Sf3)を広げる、拡張流路部431dが形成されている(
図20参照)。また、アクチュエータプレート412dにおけるノズル孔H12,H22付近に、これらのノズル孔H12,H22付近におけるインク9の流路の断面積(流路断面積Sf4)を広げる、拡張流路部432dが形成されている(
図21参照)。
【0167】
このように、実施の形態のヘッドチップ41では、拡張流路部431,432がいずれも、位置合わせプレート415における開口部H31,H32を含むようにして構成されていたのに対し、この変形例4のヘッドチップ41dでは、拡張流路部431d,432dがいずれも、アクチュエータプレート412dに設けられている。ちなみに、このような拡張流路部431d,432dはそれぞれ、アクチュエータプレート412d上における、ノズル孔H11,H12,H21,H22と連通する階段状(2段構造)の開口構造によって、構成されている(
図20,
図21参照)。
【0168】
なお、このような拡張流路部431dは、本開示における「第1拡張流路部」の一具体例に対応している。同様に、拡張流路部432dは、本開示における「第2拡張流路部」の一具体例に対応している。
【0169】
(作用・効果)
このような構成の変形例4のインクジェットヘッド4d(ヘッドチップ41d)においても、基本的には、実施の形態のインクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0170】
また、特にこの変形例4では、上記したように、拡張流路部431d,432dがいずれも、アクチュエータプレート412dに設けられていることから、既存の部材(アクチュエータプレート)に対する加工によって、これらの拡張流路部431d,432dを形成できることになる。よって、この変形例4では、ヘッドチップ41dの製造コストを、更に抑えることが可能となる。
【0171】
なお、この変形例4においても、上記した変形例2と同様に、拡張流路部431d,432dにおけるY軸方向に沿った一方の端部が、前述したポンプ室の外部まで拡張しているようにしてもよい。
【0172】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0173】
例えば、上記実施の形態等では、プリンタおよびインクジェットヘッドにおける各部材の構成例(形状、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。また、上記実施の形態等で説明した各種パラメータの値や範囲、大小関係等についても、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の値や範囲、大小関係等であってもよい。
【0174】
具体的には、例えば、上記実施の形態等では、2列タイプの(2列のノズル列An1,An2を有する)インクジェットヘッド4を挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、1列タイプ(1列のノズル列を有する)のインクジェットヘッドや、3列以上(例えば3列や4列など)の複数例タイプ(3列以上のノズル列を有する)インクジェットヘッドであってもよい。
【0175】
また、上記実施の形態等では、ノズル孔H1(H11,H12),H2(H21,H22)のずらし配置の例(千鳥配置の例)や、各種プレート(ノズルプレート、アクチュエータプレート、カバープレートおよび位置合わせプレート)の構成例等について、具体的に説明したが、これらの例には限られない。すなわち、各ノズル孔のずらし配置や、各種プレートの構成については、他の構成例であってもよい。
【0176】
また、上記実施の形態等では、各吐出チャネル(吐出溝)および各ダミーチャネル(非吐出溝)がそれぞれ、アクチュエータプレート内でY軸方向(各チャネルの並設方向に対する直交方向)に沿って延在している場合を例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、各吐出チャネルおよび各ダミーチャネルがそれぞれ、アクチュエータプレート内で、斜め方向(X軸方向,Y軸方向の各々と角度を成す方向)に沿って延在しているようにしてもよい。
【0177】
更に、例えば、ノズル孔H1,H2の断面形状については、上記実施の形態等で説明したような円形状には限られず、例えば、楕円形状や、三角形状等の多角形状、星型形状などであってもよい。また、吐出チャネルC1e,C2eおよびダミーチャネルC1d,C2dの各断面形状についても、上記実施の形態等では、ダイサーによる切削加工によって形成されることで、円弧状(曲面状)の側面となっている場合を例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、そのようなダイサーによる切削加工以外の加工方法(エッチングやブラスト加工など)を用いて形成することで、吐出チャネルC1e,C2eおよびダミーチャネルC1d,C2dの各断面形状が、円弧状以外の各種の側面形状となるようにしてもよい。
【0178】
加えて、上記実施の形態等では、インクタンクとインクジェットヘッドとの間でインク9を循環させて利用する、循環式のインクジェットヘッドを例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば場合によっては、インク9を循環させずに利用する、非循環式のインクジェットヘッドにおいて、本開示を適用するようにしてもよい。
【0179】
また、インクジェットヘッドの構造としては、各タイプのものを適用することが可能である。すなわち、例えば上記実施の形態等では、アクチュエータプレートにおける各吐出チャネルの延在方向の中央部からインク9を吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのインクジェットヘッドを例に挙げて説明した。ただし、この例には限られず、他のタイプのインクジェットヘッドにおいて、本開示を適用するようにしてもよい。
【0180】
更には、プリンタの方式としても、上記実施の形態等で説明した方式には限られず、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)方式など、各種の方式を適用することが可能である。
【0181】
また、上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0182】
更に、上記実施の形態等では、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例として、プリンタ1(インクジェットプリンタ)を挙げて説明したが、この例には限られず、インクジェットプリンタ以外の他の装置にも、本開示を適用することが可能である。換言すると、本開示の「液体噴射ヘッド」(インクジェットヘッド)を、インクジェットプリンタ以外の他の装置に適用するようにしてもよい。具体的には、例えば、ファクシミリやオンデマンド印刷機などの装置に、本開示の「液体噴射ヘッド」を適用するようにしてもよい。
【0183】
加えて、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0184】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0185】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
液体を噴射するヘッドチップであって、
所定方向に沿って並んで配置された複数の吐出溝を有するアクチュエータプレートと、
前記複数の吐出溝に個別に連通する複数のノズル孔を有するノズルプレートと、
前記吐出溝内に前記液体を流入させるための第1貫通孔と、前記吐出溝内から前記液体を流出させるための第2貫通孔と、前記吐出溝を覆う壁部と、を有するカバープレートと
を備え、
前記複数のノズル孔は、
前記吐出溝の延在方向に沿った中心位置を基準として、前記吐出溝の延在方向に沿った前記第1貫通孔側にずれて配置された複数の第1ノズル孔と、
前記吐出溝の延在方向に沿った中心位置を基準として、前記吐出溝の延在方向に沿った前記第2貫通孔側にずれて配置された複数の第2ノズル孔と
を含んでおり、
前記第1ノズル孔と連通する前記吐出溝である第1吐出溝においては、前記第1貫通孔と連通する部分における前記液体の流路の断面積である第1断面積が、前記第2貫通孔と連通する部分における前記液体の流路の断面積である第2断面積よりも、小さくなっていると共に、
前記第2ノズル孔と連通する前記吐出溝である第2吐出溝においては、前記第2断面積が前記第1断面積よりも、小さくなっており、
前記第1ノズル孔付近に、前記第1ノズル孔付近における前記液体の流路の断面積である第3断面積を広げる、第1拡張流路部が形成されていると共に、
前記第2ノズル孔付近に、前記第2ノズル孔付近における前記液体の流路の断面積である第4断面積を広げる、第2拡張流路部が形成されており、
前記第1拡張流路部における前記吐出溝の延在方向に沿った中心位置が、前記第1ノズル孔の中心位置である第1中心位置と一致するか、または、前記第1中心位置よりも前記吐出溝の延在方向に沿って前記第1貫通孔側にずれていると共に、
前記第2拡張流路部における前記吐出溝の延在方向に沿った中心位置が、前記第2ノズル孔の中心位置である第2中心位置と一致するか、または、前記第2中心位置よりも前記吐出溝の延在方向に沿って前記第2貫通孔側にずれている
ヘッドチップ。
(2)
前記アクチュエータプレートと前記ノズルプレートとの間に配置されると共に、前記ノズル孔の位置合わせをするための第3貫通孔を前記ノズル孔ごとに有する、位置合わせプレートを更に備え、
前記第1拡張流路部および前記第2拡張流路部がそれぞれ、前記位置合わせプレートにおける前記第3貫通孔を含むようにして構成されている
上記(1)に記載のヘッドチップ。
(3)
前記第1拡張流路部および前記第2拡張流路部がそれぞれ、前記ノズルプレートに設けられている
上記(1)に記載のヘッドチップ。
(4)
前記第1拡張流路部および前記第2拡張流路部がそれぞれ、前記アクチュエータプレートに設けられている
上記(1)に記載のヘッドチップ。
(5)
前記第1拡張流路部における前記第1貫通孔側の端部が、前記壁部における前記第1貫通孔側の端部を基準位置として、前記基準位置よりも前記第2貫通孔側に位置していると共に、
前記第2拡張流路部における前記第2貫通孔側の端部が、前記壁部における前記第2貫通孔側の端部を基準位置として、前記基準位置よりも前記第1貫通孔側に位置している
上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のヘッドチップ。
(6)
前記第1拡張流路部における前記第1貫通孔側の端部が、前記壁部における前記第1貫通孔側の端部を基準位置として、前記基準位置よりも前記第1貫通孔側に位置していると共に、
前記第2拡張流路部における前記第2貫通孔側の端部が、前記壁部における前記第2貫通孔側の端部を基準位置として、前記基準位置よりも前記第2貫通孔側に位置している
上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のヘッドチップ。
(7)
上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のヘッドチップを備えた
液体噴射ヘッド。
(8)
上記(7)に記載の液体噴射ヘッドを備えた
液体噴射記録装置。
【符号の説明】
【0186】
1…プリンタ、10…筺体、2a,2b…搬送機構、21…グリッドローラ、22…ピンチローラ、3(3Y,3M,3C,3K)…インクタンク、4(4Y,4M,4C,4K),4a~4d…インクジェットヘッド、41,41a~41d…ヘッドチップ、411,411c…ノズルプレート、412,412d…アクチュエータプレート、413…カバープレート、415…位置合わせプレート、420…尾部、421,422…チャネル列、431,431a~431d,432,432a~432d…拡張流路部、50…循環流路、50a,50b…流路(供給チューブ)、6…走査機構、61a,61b…ガイドレール、62…キャリッジ、63…駆動機構、631a,631b…プーリ、632…無端ベルト、633…駆動モータ、9…インク、P…記録紙、d…搬送方向、H1,H11,H12,H2,H21,H22…ノズル孔、H31,H32…開口部、An1,An11,An12,An2,An21,An22…ノズル列、C1,C2…チャネル、C1e(C1e1,C1e2),C2e…吐出チャネル、C1d,C2d…ダミーチャネル(非吐出チャネル)、Wd…駆動壁、Ed…駆動電極、Eda…個別電極(アクティブ電極)、Edc…共通電極(コモン電極)、Rin1,Rin2…入口側共通流路、Rout1,Rout2…出口側共通流路、Sin1…第1供給スリット、Sout1…第1排出スリット、Sp1…第1スリット対、W1,W2…壁部、Lw1…第1ポンプ長、Lin1…第1供給スリット長、Lout1…第1排出スリット長、Win1…第1入口側流路幅、Wout1…第1出口側流路幅、Sfin1…第1入口側流路断面積、Sfout1…第1出口側流路断面積、Sf3,Sf4…流路断面積、Pc1,Pn11,Pn12,Ph31,Ph32…中心位置。