(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツール
(51)【国際特許分類】
G02B 6/46 20060101AFI20230718BHJP
【FI】
G02B6/46
(21)【出願番号】P 2019221042
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】399040405
【氏名又は名称】東日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595083051
【氏名又は名称】株式会社ジャパンリーコム
(74)【代理人】
【識別番号】100145470
【氏名又は名称】藤井 健一
(72)【発明者】
【氏名】天坂 竜一
(72)【発明者】
【氏名】白根澤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】大島 義久
(72)【発明者】
【氏名】真野 恭
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘久
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-329730(JP,A)
【文献】特開平09-251124(JP,A)
【文献】特開2019-015759(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0265426(US,A1)
【文献】特開昭58-111010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/46-6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の光ケーブル接続用クロージャの外装を交換するためのツールであって、
ツールを光ケーブル接続用クロージャ本体に固定するためのツール固定部と、
光ケーブルを所定の位置で固定する把持部を有する第1ケーブル把持部と、
一端に光ケーブルを把持する把持部を有し、他端に前記光ケーブルの軸方向を中心に回動する回動軸を有する第2ケーブル把持部と、
が設けられていることを特徴とする光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツール。
【請求項2】
前記第2ケーブル把持部の前記把持部は、前記光ケーブルを軸中心に摺動可能に把持することを特徴とする請求項1に記載の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツール。
【請求項3】
前記第1ケーブル把持部は前記光ケーブルの軸方向に対して直交水平方向にスライド可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツール。
【請求項4】
前記光ケーブル接続用クロージャ本体に載せ替え用フレームが取り付けられて、前記載せ替え用フレームを介して前記光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールが前記ツール固定部によって前記光ケーブル接続用クロージャ本体に固定されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツール。
【請求項5】
前記載せ替え用フレームが前記光ケーブル接続用クロージャの外装を交換したのちのクロージャのメインフレームとなることを特徴とする
請求項4に記載の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツール。
【請求項6】
前記第1ケーブル把持部の前記把持部及び前記第2ケーブル把持部の前記把持部には前記光ケーブルを締め付け固定するための締め付けダイヤルが設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツール。
【請求項7】
前記ツール固定部はバネ付勢されたフック形状となっていて、前記フック形状部分によって掛け止められて固定されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に地下区間で使用されている光ケーブル接続用クロージャ外装を交換する際に使用されるツールに関する。
【背景技術】
【0002】
1980年代より光ケーブルによる光通信が普及され始め、光ケーブル接続用クロージャは年々改良され、耐久性や作業性、構造最適化によりコンパクト化などが成されている。例えば、本願出願人が出願した特許文献1の光ケーブル接続用クロージャは、当時としては、光ケーブルの伝送特性に悪影響を与えることなく、光ケーブル、心線の接続や切り替え或いは分岐接続作業が容易に実施でき、増設も楽にでき、きわめてコンパクトに心線余長並びに心線接続部を収納することのできるクロージャとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-42134号公報
【文献】特開2010-169969号公報
【文献】特開2019-15759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の光ケーブル接続用クロージャは非常に優れた発明であるが、水密構造が複雑であり、メンテナンス時等での何度も開閉作業を伴う場合、水密構造で使用しているゴム製パッキン類が経年劣化による性能低下、変形などで浸水する場合があり、また、作業時の浸水対策が作業者の技量に左右される可能性もあった。
【0005】
このように、特許文献1のクロージャのように当時としては優れた構造ではあるが、改良が施され、全く新しい構造のクロージャが提案されることにより、クロージャ本体・外装を交換するような機会も増えてきている。
【0006】
例えば、本願出願人が出願した特許文献2の光ケーブル接続用クロージャのように、外装のスリーブが上中下段の3分割で構成され、ケーブル導入口が中段のスリーブに集約されて、安全性や水密性、光ケーブルや心線の配線作業効率が向上したスキルレスで均一施工が可能なクロージャへの交換の要望が増加している。
【0007】
クロージャ外装を交換する場合、既に接続された心線等が収納されている収納部には手を加えずに交換することが望ましい。これは、光ケーブル及び心線の材質・特性上、接続された心線等の位置関係をなるべく変更しない方が心線を傷つけたり、曲率が変わることなく、また、煩雑な心線の切断・延長作業も行わずに安全にクロージャ外装交換作業を行うことができるためである。
【0008】
ここで、特許文献3の外装交換用クロージャのように、既設のクロージャを移設する際に簡便に移設することができるようなクロージャが発明されている。特許文献3のクロージャは心線等が収納されている収納部などの内装部品を一切変更することなく移設作業を行うことができる構成となっている。
【0009】
ところが、特許文献3の外装交換用クロージャは内装部品の位置関係が全く変更されずに移設する場合には非常に有効な構成ではあるが、クロージャの改良等により内部構造に位置変更がある場合には逆に細かな位置調整ができないという欠点がある。特に光ケーブルの配設位置変更を行う場合にはケーブルや心線に負担をかけないような新たな作業、例えば心線延長作業が必要となる可能性がある。
【0010】
本発明は上述のような課題に鑑みなされたものであり、心線等に負担をかけずに細かな位置調整ができ、クロージャ外装を交換することができる光ケーブル接続用クロージャ外装交換用のケーブル移動ツールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決したものであって、請求項1の発明は、既設の光ケーブル接続用クロージャの外装を交換するためのツールであって、ツールを光ケーブル接続用クロージャ本体に固定するためのツール固定部と、光ケーブルを所定の位置で固定する把持部を有する第1ケーブル把持部と、一端に光ケーブルを把持する把持部を有し、他端に前記光ケーブルの軸方向を中心に回動する回動軸を有する第2ケーブル把持部と、が設けられていることを特徴とする光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールである。
【0012】
請求項2の発明は、前記第2ケーブル把持部の前記把持部は、前記光ケーブルを軸中心に摺動可能に把持することを特徴とする請求項1に記載の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールである。
【0013】
請求項3の発明は、前記第1ケーブル把持部は前記光ケーブルの軸方向に対して直交水平方向にスライド可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールである。
【0014】
請求項4の発明は、前記光ケーブル接続用クロージャ本体に載せ替え用フレームが取り付けられて、前記載せ替え用フレームを介して前記光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールが前記ツール固定部によって前記光ケーブル接続用クロージャ本体に固定されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールである。
【0015】
請求項5の発明は、前記載せ替え用フレームが前記光ケーブル接続用クロージャの外装を交換したのちのクロージャのメインフレームとなることを特徴とする請求項4に記載の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールである。
【0016】
請求項6の発明は、前記第1ケーブル把持部の前記把持部及び前記第2ケーブル把持部の前記把持部には前記光ケーブルを締め付け固定するための締め付けダイヤルが設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールである。
【0017】
請求項7の発明は、前記ツール固定部はバネ付勢されたフック形状となっていて、前記フック形状部分によって掛け止められて固定されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールは、既設の光ケーブル接続用クロージャの外装を交換するためのツールであって、ツールを光ケーブル接続用クロージャ本体に固定するためのツール固定部と、光ケーブルを所定の位置で固定する把持部を有する第1ケーブル把持部と、一端に光ケーブルを把持する把持部を有し、他端に前記光ケーブルの軸方向を中心に回動する回動軸を有する第2ケーブル把持部と、が設けられていることを特徴としているので、光ケーブル類に負担をかけずに安全確実に交換作業ができるだけでなく、特に光ケーブルが上下2段の異なる高さに配設されている既設のクロージャから1段に配設されるクロージャへの交換作業において、第2ケーブル把持部によって上段の光ケーブルを把持したまま回動して所定の位置まで下降移動して高さを変更する場合に心線等への負担を大幅に軽減して安全に交換作業を行うことができる。
【0019】
また、請求項2の発明は、前記第2ケーブル把持部の前記把持部は、前記光ケーブルを軸中心に摺動可能に把持することを特徴とする請求項1に記載の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールであるので、仮に光ケーブルが把持部に摺動せずに完全に固定された状態で回動すると通常では光ケーブルが捻れてしまい内部の心線に断線等の悪影響を及ぼす可能性が高くなるが、請求項2の第2ケーブル把持部の把持部は摺動可能に把持することにより光ケーブルが捻れることなく高さを含む位置調整を行うことができる。
【0020】
また、請求項3の発明は、前記第1ケーブル把持部は前記光ケーブルの軸方向に対して直交水平方向にスライド可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールであるので、クロージャの形状が異なっていても最適な位置で光ケーブルを把持することができる。
【0021】
また、請求項4の発明は、前記光ケーブル接続用クロージャ本体に載せ替え用フレームが取り付けられて、前記載せ替え用フレームを介して前記光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールが前記ツール固定部によって前記光ケーブル接続用クロージャ本体に固定されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールであるので、載せ替え用フレームによってより簡便に交換作業を行うことができる。
【0022】
また、請求項5の発明は、前記載せ替え用フレームが前記光ケーブル接続用クロージャの外装を交換したのちのクロージャのメインフレームとなることを特徴とする請求項4に記載の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールであるので、交換作業完了後にわざわざ載せ替え用フレームを取り外す必要が無く、作業効率を大幅に高めることができる。
【0023】
また、請求項6の発明は、前記第1ケーブル把持部の前記把持部及び前記第2ケーブル把持部の前記把持部には前記光ケーブルを締め付け固定するための締め付けダイヤルが設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールであるので、狭い作業スペースでも安全確実にケーブルの把持締め付け作業を行うことができる。
【0024】
また、請求項7の発明は、前記ツール固定部はバネ付勢されたフック形状となっていて、前記フック形状部分によって掛け止められて固定されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールであるので、作業開始時の仮固定の段階でバネ付勢により掛け止めておける利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明のケーブル移動ツールの一実施形態の全体図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は平面図、(d)は斜視図である。
【
図2】本発明のケーブル移動ツールの一実施形態の把持部の図のうち第2把持部を開いた状態の図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は平面図、(d)は斜視図である。
【
図3】本発明のケーブル移動ツールの一実施形態の把持部の図のうち第2把持部を閉じた状態の図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は平面図、(d)は斜視図である。
【
図4】本発明のケーブル移動ツールをアーム部分に設けられた折り畳み用スイッチにより折り畳んだ状態の図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は平面図、(d)は斜視図である。
【
図5】本発明の載せ替え用フレームを示す図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は平面図、(d)は斜視図である。
【
図6】本発明のケーブル移動ツールの各部写真であり、(a)はツール固定部のツール固定フック、(b)は第1把持部のケーブル把持部、(c)は第2把持部のケーブル把持部、(d)はスライド用ハンドルを示す。
【
図7】本発明のケーブル移動ツールの把持部の左右切り替えの手順を示す図である。
【
図8】既設の光ケーブル接続用クロージャのケーブル接続状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は平面図、(d)は斜視図である。
【
図9】既設の光ケーブル接続用クロージャに載せ替え用フレームを取り付けた状態の図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は平面図、(d)は斜視図である。
【
図10】
図9の載せ替え用フレームにケーブル移動ツールを取り付けた状態の図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は平面図、(d)は斜視図である。
【
図11】
図10のケーブル移動ツールの第2把持部を開いて第1把持部と同様の高さまで移動した状態の図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は平面図、(d)は斜視図である。
【
図12】新型の光ケーブル接続用クロージャへの交換完了後のケーブル接続状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は平面図、(d)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールについて、図面を参照して説明する。
図1はケーブル移動ツールの一実施形態の全体図、
図2はケーブル移動ツールの把持部の図のうち第2把持部を開いた状態の図、
図3はケーブル移動ツールの把持部の図のうち第2把持部を閉じた状態の図、
図4はケーブル移動ツールをアーム部分に設けられた折り畳み用スイッチにより折り畳んだ状態の図、
図5は載せ替え用フレームを示す図、
図6はケーブル移動ツールの各部写真、
図7はケーブル移動ツールの把持部の左右切り替えの手順を示す図、
図8は既設の光ケーブル接続用クロージャのケーブル接続状態を示す図、
図9は既設の光ケーブル接続用クロージャに載せ替え用フレームを取り付けた状態の図、
図10は
図9の載せ替え用フレームにケーブル移動ツールを取り付けた状態の図、
図11は
図10のケーブル移動ツールの第2把持部を開いて第1把持部と同様の高さまで移動した状態の図、
図12は新型の光ケーブル接続用クロージャへの交換完了後のケーブル接続状態を示す図である。
【0027】
ケーブル移動ツール10は、本実施例では2つの第1把持部20と第2把持部30をアーム40の一端が支持し、アーム40の他端にツール固定部50が接続されたツールである。
ケーブル移動ツール10は既設光ケーブル接続用クロージャ100の収納部120のフレーム121に載せ替え用フレーム60を介して設置され、すでに配線された収納部120まわりの光ケーブルや心線を保護しながら新型光ケーブル接続用クロージャ200へ交換(換装)することのできるツールとなっている。
【0028】
第2把持部30は回転軸32を把持する光ケーブル軸方向を軸中心にして回動可能であり、クランプ31の高さ・位置を変更することができる。これにより、光ケーブルが上下2段に配置されたクロージャにおいて、上段の光ケーブルの高さ・位置を変更することにより上下2段であった配置を1段へ変更することができるという優れた利点がある。
【0029】
ケーブル移動ツール10の各部を特に
図1~
図7を参照して説明する。
第1把持部20は本実施例では2つが
図1(a)のように左右対となるように設けられている。これは既設の光ケーブル接続用クロージャのケーブル数によって変更も可能である。第1把持部20には
図1や
図6(b)のように光ケーブルを把持するためのクランプ21が設けられ、ダイヤル22によってクランプ21を開閉して光ケーブルを挟み込む。また、さらに増し締めしたい場合には六角レンチによって増し締めできる増し締め穴23を使用する。
【0030】
第2把持部30は主に光ケーブルが上下2段に配置されたクロージャにおいて、上段の光ケーブルの高さ・位置を変更するための把持部であり、
図1のように第1把持部20に並ぶように配置されている。第2把持部30は一端にクランプ31(把持部)が設けられ、他端に回転軸32が設けられて当該回転軸32を把持する光ケーブル軸方向を軸中心に回動可能に第1把持部20に取り付けられている。第2把持部30を開いた状態の図は
図2、閉じた状態の図は
図3となっている。開くと第1把持部20のケーブルと同じ高さ、新型クロージャの光ケーブル引き込み穴と同じ幅となるように長さの調整がされている。閉じた状態では既設光ケーブル接続用クロージャ100の上段の光ケーブルを把持できる位置となっている。
【0031】
第2把持部30の一端には光ケーブルを把持するためのクランプ31が設けられ、ダイヤル34によってクランプ31を開閉して光ケーブルを挟み込む。また、ダイヤル34には
図1や
図6(c)のように増し締め穴も設けられており、さらに増し締めしたい場合には六角レンチによって増し締めできる。クランプ内壁の光ケーブルとの接触部分は摺動部33が設けられている。これは、第2把持部30が光ケーブルを把持して回転軸32を軸中心に回動する場合、光ケーブルが完全に固定されて回動すると光ケーブルが捻れ、心線がダメージを受けてしまう可能性もあるが、この摺動部33が設けられることによってその捻れを解消しながら回動することができるという優れた利点を有している。摺動部33は本実施例では樹脂を用いて摩擦力を低減させることによって摺動させているが、それに限らずベアリングを使用したりして光ケーブルを摺動させることも可能である。
【0032】
第1把持部20及び第2把持部30は切替ねじ11を外すことによって左右反転することができる。
図1(a)、
図7でいうと、本実施例では右側に第2把持部30が設けられているが、クロージャや配線状況によっては第2把持部30が左側になくては作業を行うことができないこともあり、その際には切替ねじ11を外すことによって左右反転させる。これによって、第2把持部30が2つ設けられていなくても交換作業を行うことができ、作業スペースの確保やツールの部品点数削減に寄与できる。
【0033】
アーム40は一端に第1把持部20及び第2把持部30が設けられ、他端はツール固定部50が設けられている。アーム40はツール固定部50と把持部との距離高さを調整するためのものであり、
図10のようにクロージャの交換作業がしやすく、ケーブルに屈曲などの過度の負荷がかからないような位置に水平方向のアームと垂直方向のアームを組み合わせて把持部を配置できる。
【0034】
また、アーム40には水平方向と垂直方向のアームによって構成されており、連結部分には折り畳み用スイッチ41が設けられて
図4のように折り畳むことができる。これによって運搬時のスペース削減に寄与している。
【0035】
ツール固定部50は、第1把持部20及び第2把持部30をアーム40を介して既設光ケーブル接続用クロージャ100に固定するためのものであり、本実施例では収納部120が取り付けられているフレーム121に載せ替え用フレーム60が取り付けられ、その載せ替え用フレーム60のケーブル移動ツール設置部61にツール固定部50が固定される構成となっている。
【0036】
ツール固定部50は、
図1のように台の一辺側に一対のツール固定フック51が設けられ、他辺側にアーム40がスライド用ハンドル52を介して
図1(a)や
図6(d)のように左右にスライド可能に取り付けられるようになっている。これにより把持部の位置調整が簡単に行うことができる。
【0037】
ツール固定フック51は
図6(a)のように、略コの字フック形状部材51aの内壁にバネ付勢された板材51bが取り付けられこのすき間53に移動ツール設置部61を挟み込んでツールを固定する。これにより、より簡便にツールを固定することができる。
【0038】
載せ替え用フレーム60は
図5のような形状で、既設光ケーブル接続用クロージャ100の収納部120が固定されているフレーム121に取り付けられる。載せ替え用フレーム60には移動ツール設置部61が設けられているので、そこを利用してツール固定部50を固定し、ケーブル移動ツール10をより安全・簡便に運用することができる。
【0039】
また、載せ替え用フレーム60は、クロージャの交換作業完了後の新型光ケーブル接続用クロージャ200のフレームの役割を果たすこともできる形状となっており、作業完了時に取り外す必要がなく、さらにより堅固なクロージャを構成することができる。
【0040】
次に、既設光ケーブル接続用クロージャ100から新型光ケーブル接続用クロージャ200への交換(換装)手順を
図8~
図12を参照して説明する。
図8は交換作業前の既設光ケーブル接続用クロージャ100となっている。本実施例では上下2段に下段光ケーブルA及び上段光ケーブルBが設置されている構成のクロージャとなっている。これを光ケーブルが1列に配置されている新型光ケーブル接続用クロージャ200へと交換することとなる。
【0041】
外装110とケーブル把持部130は交換され、既設の収納部120と収納部120が固定されているフレーム121は交換後も使用する。本実施例のケーブル移動ツール10は交換時に収納部120部分に手を極力加えずに交換作業ができるツールとなっている。心線の切断や延長などの処理が不要となる部分が多くなり、これにより大幅な作業効率アップを図れる。また、安全性も向上する。
【0042】
図9は既設光ケーブル接続用クロージャ100の外装110を取り外すとともに、載せ替え用フレーム60をケーブル把持部130に取り付けた状態の図である。ケーブル把持部130付近の上面にケーブル移動ツール設置部61が設けられている。
【0043】
図10はケーブル移動ツール10をケーブル移動ツール設置部61に取り付けた状態の図である。
図10のようにケーブル移動ツール10位置関係はケーブル把持部130を挟むように内側にツール固定部50、外側に第1把持部20及び第2把持部30が配置される構成となっている。第1把持部20及び第2把持部30がそれぞれ下段光ケーブルAと上段光ケーブルBは把持したのちケーブル把持部130は取り除かれる。この状態では第2把持部30は閉じた状態で上段に配置された上段光ケーブルBを把持している。
【0044】
図11ではケーブル把持部130が取り除かれたのち、第2把持部30が回転軸32を軸中心に開いて、上段光ケーブルBを第1把持部20の下段光ケーブルAと同じ高さ、新型クロージャの光ケーブル引き込み穴と同じ幅となる位置に移動されている。第2把持部30のクランプ31には摺動部33が設けられていて、これは、第2把持部30が光ケーブルを把持して回転軸32を軸中心に回動する場合、光ケーブルが完全に固定されて回動すると光ケーブルが捻れ、心線がダメージを受けてしまう可能性もあるが、この摺動部33が設けられる機構によってその捻れを解消しながら回動することができるという優れた利点を有している。
【0045】
図12は、新型光ケーブル接続用クロージャ200への交換完了後の構成である。本実施例のクロージャは、光ケーブル引き込み口が横一列に配置され、安全性や水密性、光ケーブル・心線の配線作業効率が向上したスキルレスで均一施工が可能な構成となっている。載せ替え用フレーム60はクロージャのフレームとして流用することにより作業完了時に取り外す必要がなく、さらにより堅固なクロージャを構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る光ケーブル接続用クロージャ外装交換用ケーブル移動ツールは既設されている光ケーブル接続用クロージャを新型のクロージャ外装へ交換(換装)する際に光ケーブルや心線を保護しながら安全確実スピーディーに交換作業を行うことができ、特に既設のクロージャの光ケーブルが上下2段に配置されているものから横一列に配置されたクロージャへの交換作業に有用である。
【符号の説明】
【0047】
A 下段光ケーブル
B 上段光ケーブル
10 ケーブル移動ツール
11 切替ねじ
20 第1把持部
21 クランプ
22 ダイヤル
23 増し締め穴
30 第2把持部
31 クランプ
32 回転軸
33 摺動部
34 ダイヤル
40 アーム
41 折り畳み用スイッチ
50 ツール固定部
51 ツール固定フック
52 スライド用ハンドル
53 挟み込み用すき間
60 載せ替え用フレーム
61 ケーブル移動ツール設置部
100 既設光ケーブル接続用クロージャ
110 クロージャ外装
120 収納部
121 フレーム
130 ケーブル把持部
200 新型光ケーブル接続用クロージャ
210 クロージャ外装