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  • 特許-半断線検出装置 図1
  • 特許-半断線検出装置 図2
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  • 特許-半断線検出装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】半断線検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/54 20200101AFI20230718BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20230718BHJP
   G01R 19/12 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
G01R31/54
G01R19/00 A
G01R19/12
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019221468
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021092402
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】河合 智成
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-008859(JP,A)
【文献】特開2004-080930(JP,A)
【文献】特開2001-045652(JP,A)
【文献】特開2005-117750(JP,A)
【文献】特開2014-166127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
G01R 19/00
G01R 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に印加されている交流電圧の波形情報を入手して、1周期を少なくとも100分割して個々の分割点の電圧値情報を出力する計測部と、
前記計測部が出力する分割点電圧値情報を基に前記電線の半断線発生を判断する半断線判断部と、
前記半断線判断部が半断線発生と判断したら、それを報知する報知部とを有し、
前記半断線判断部は、前記分割点電圧値情報から隣接する分割点電圧の変化量を算出し、この変化量の絶対値が所定の閾値を超えたら半断線発生と判断することを特徴とする半断線検出装置。
【請求項2】
電線に印加されている交流電圧の波形情報を入手して、1周期を少なくとも100分割して個々の分割点の電圧値情報を出力する計測部と、
前記計測部が出力する分割点電圧値情報を基に前記電線の半断線発生を判断する半断線判断部と、
前記半断線判断部が半断線発生と判断したら、それを報知する報知部とを有し、
前記半断線判断部は、電圧波形1周期を4分割して少なくともゼロクロス点から立ち上がる4分の1周期、及びゼロクロス点から立ち下がる4分の1周期の波形を監視し、
立ち上がる波形の中で分割点間の電圧変化が負の値を示したら、或いはたち下がる波形の中で分割点間の電圧変化が正の値を示したら、半断線発生と判断することを特徴とする半断線検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電線の半断線を検出する半断線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電線の半断線を検出する従来の技術としては、特許文献1に開示されたものがあった。特許文献1では、電線に流れる電流情報を入手し、電流波形の半断線特有の変化を検出して半断線の発生を判断した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-8859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術は、電路電流の波形を基に判断するため、電路電流を検出するためのセンサである零相変流器が必要であり、そのための広い設置スペースが必要であった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、電路電流を検出することなく半断線の発生を検出できる半断線検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、電線に印加されている交流電圧の波形情報を入手して、1周期を少なくとも100分割して個々の分割点の電圧値情報を出力する計測部と、計測部が出力する分割点電圧値情報を基に電線の半断線発生を判断する半断線判断部と、半断線判断部が半断線発生と判断したら、それを報知する報知部とを有し、半断線判断部は、分割点電圧値情報から隣接する分割点電圧の変化量を算出し、この変化量の絶対値が所定の閾値を超えたら半断線発生と判断することを特徴とする。
この構成によれば、正常な電圧波形は正弦波形であるため、分割点電圧値の隣接する電圧値同士は所定値を超えて変化することはないため、通電状態で所定値を超える電圧変動が変化したら半断線発生と判断できる。よって、電流を監視すること無く半断線の発生を検出できる。
【0007】
請求項2の発明は、電線に印加されている交流電圧の波形情報を入手して、1周期を少なくとも100分割して個々の分割点の電圧値情報を出力する計測部と、計測部が出力する分割点電圧値情報を基に電線の半断線発生を判断する半断線判断部と、半断線判断部が半断線発生と判断したら、それを報知する報知部とを有し、半断線判断部は、電圧波形1周期を4分割して少なくともゼロクロス点から立ち上がる4分の1周期、及びゼロクロス点から立ち下がる4分の1周期の波形を監視し、立ち上がる波形の中で分割点間の電圧変化が負の値を示したら、或いはたち下がる波形の中で分割点間の電圧変化が正の値を示したら、半断線発生と判断することを特徴とする。
この構成によれば、半断線の発生による電圧波形の変動は、主に電圧波形ゼロクロス点からの立ち上がりからピークに至る範囲、或いは立ち下がり時からピークに至る範囲で発生することが知られている。よって、少なくともそれぞれ4分の1周期の区間の電圧波形を監視して、その区間で傾きの極性が反転する場合が発生したら半断線発生と判断するため、半断線の発生を高い精度で検出でき、電流を監視することなく半断線の発生を検出できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分割点電圧値の隣接する電圧値の変化量が所定値を超えて変化したら、或いは少なくとも電圧がゼロクロス点から立ち上がってピークに至る範囲、或いは立ち下がりからピークに至る範囲で、電圧の傾きが反転したら半断線発生と判断するため、電流を監視することなく半断線の発生を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る半断線検出装置の一例を示すブロック図である。
図2】半断線を判断する第1の形態を示す波形説明図である。
図3図2のA部を拡大した説明図である。
図4】半断線検出装置の第2の形態を示す波形説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る半断線検出装置の一例を示すブロック図である。半断線検出装置10は、電線Lから検出した電圧を分圧する分圧回路1、分圧した電圧波形の1周期を200分割して1周期あたり200ポイントの電圧値情報を出力する計測部2、計測部2が出力する分割電圧値情報から、電圧の変化量(傾き)を算出して半断線の発生を判断する判断部3、半断線が発生したら電路を遮断操作する出力部4、計測した電圧情報を表示して報知する表示部5を備えている。また、6は電線Lを電源から遮断する開閉接点を備えた遮断部を示している。
ここでは、半断線を検出したら遮断部6が遮断するよう構成されている。
【0011】
判断部3は、図示しないA/D変換回路、判断する閾値を記憶する記憶部、判定するCPU等を具備し、次のように動作する。
まず第1の形態を図2の波形説明図を参照して説明する。
図2は電線Lに印加されている実効値100V、60Hzの電圧波形の1周期を示している。W1は比較のために示している波形で、半断線が発生していない正常な状態の電圧波形を示している。W2は半断線が発生した波形を半周期のみ示し、1周期を200分割したうちの半周期分の分割点電圧100点を示している。尚、正常な波形W1は1周期を40分割した分割点電圧を示している。
【0012】
図2に示す分割点P1からQ1に至る区間M1で大きな電圧変動が発生し、正常な波形に比べて大きく低下していることが分かる。そのため、この範囲で半断線特有の放電現象が発生していると判断できる。判断部3は、この電圧低下を検出して放電発生(半断線発生)と判断する。
具体的に、100V実効値の場合の電圧変化量の最大値はゼロクロス付近で発生し、約33V/msecである。ここでは、この値を閾値として判断部3が記憶しており、通電状態において分割点電圧値の変化量の絶対値がこの閾値を超えたら半断線発生と判断する。
【0013】
図3図2のA部を拡大した図であり、図3に示すように分割点P1での電圧v1が約73V、次の分割点P2での電圧v2が約64Vであり、この間の時間経過が0.083msであるため、電圧の変化量(傾き)Δv=108V/msecとなり、設定された閾値を大きく超えた値となっている。
判断部3はこの電圧の変化量Δvを算出して、これが閾値を超えた数値であるため半断線発生と判断する。半断線発生と判断すると、出力部4に駆動信号が出力され、出力部4が遮断部6を遮断操作する。また、表示部5は半断線発生を表示する。
尚、判断部3は、絶対値で判断するため負側半周期での電圧低下も同様に検出する。
【0014】
このように、正常な電圧波形は正弦波形であるため、分割点電圧値の隣接する電圧値同士は所定値を超えて変化することはないため、通電状態で所定値を超える電圧変動が変化したら半断線発生と判断できる。よって、電流を監視すること無く半断線の発生を検出できる。
【0015】
次に、半断線検出装置の第2の形態を説明する。回路構成は図1と同様であるため説明を省略し、図4の波形説明図を参照して説明する。
上記形態では、全ての分割点電圧値から半断線を判断しているが、ここでは全ての電圧情報を使用せず、図4に示す範囲M2,M3、即ち電圧波形1周期のうちの負から正に極性が変化するゼロクロス点C1からの4分の1周期、及び正から負の極性に変化するゼロクロス点C2からの4分の1周期の情報により判断している。尚、図4においても、半断線が発生した電圧波形は正側半周期のみ示し、負側半周期は省略してある。
【0016】
半断線が発生したら、ゼロクロス点C1から電圧が立ち上がって、その後正のピークに達するまでの間、又は半周期後のゼロクロス点C2から電圧が立ち下がって、その後負のピークに達するまでの間で、半断線発生部で放電が発生することで電線に大きな電圧変動(電圧降下)が生ずる。この2つの範囲でこの電圧降下を検出することで、半断線を判断することできる。
【0017】
判断部3は、立ち上がり4分の1周期の範囲M2、及び立ち下がり4分の1周期の範囲M3を計測部2からの電圧値情報で把握し、範囲M2では電圧が増加し、電圧の傾きが正、範囲M3では電圧は負に増加し、傾きが負であることを把握している。
そして、200分割された分割点電圧の入力を受けて、まず分割点間の変化量を算出する。傾きが正である範囲で突然負の傾きとなる変化が発生(図4に示す分割点P1~P3)したら、半断線発生と判断する。また、傾きが負である範囲M3の中で突然正の傾きが発生したら、半断線発生と判断する。
このように、分割点電圧値が上昇するはずのエリアにおいて減少が発生したり、減少するはずのエリアにおいて上昇(絶対値は減少)が発生したら半断線発生と判断する。
【0018】
このように、半断線の発生による電圧変動は、電圧波形ゼロクロス点からの立ち上がり(或いは立ち下がり)からピークに至る範囲で発生し、それがピークを過ぎるまで継続することが知られている。そこで、少なくともそれぞれ4分の1周期の区間の電圧波形を監視し、その傾きの極性が反転する場合があったら半断線発生と判断することで、半断線の発生を高い精度で検出でき、電流を監視することなく半断線の発生を検出できる。
【0019】
尚、第2の形態では、立ち上がり、立ち下がりの4分の1周期の情報から判断し、他の2分の1周期の電圧情報は見ていないが、他の2分の1周期も休まず判断要素に加えても良い。
また上記実施形態では、いずれも電圧1周期を200分割して判断しているが、100分割程度の分割点電圧の情報であっても、判断することは可能である。また、分割は200分割より多くても良い。
【符号の説明】
【0020】
2・・計測部、3・・判断部(半断線判断部)、5・・表示部(報知部)、L・・電線。
図1
図2
図3
図4