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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】フロート弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20230718BHJP
   B60K 15/03 20060101ALI20230718BHJP
   F16K 31/18 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
F02M37/00 311A
B60K15/03 Z
F16K31/18 C
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2019542507
(86)(22)【出願日】2018-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 IL2018050164
(87)【国際公開番号】W WO2018150419
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】62/458,587
(32)【優先日】2017-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514240644
【氏名又は名称】ラヴァル エイ.シー.エス.リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RAVAL A.C.S.Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルカン,オマー
(72)【発明者】
【氏名】クレイマン,デニス
(72)【発明者】
【氏名】クミノフ,アントン
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-156093(JP,A)
【文献】特開2013-095339(JP,A)
【文献】特開2002-285929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
B60K 15/03
F16K 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体媒体と共に用いるためのフロート弁において、前記フロート弁は直立構成と反転構成とを有し、
少なくとも1つの入口ポート及び少なくとも1つの出口ポートを画成するハウジングと、
前記ハウジング内で移動可能なフロートアセンブリと、
前記ハウジング内で液体媒体の上を浮動するよう移動可能な補助フロート部材と、を備え、
前記フロートアセンブリは、前記補助フロート部材とは異なる一次フロート部材と、ばね要素とを備え、前記一次フロート部材は、当接した場合に前記少なくとも1つの出口ポートを閉じるために構成され、前記ばね要素は、前記少なくとも1つの出口ポートに向かう方向に前記一次フロート部材に付勢ばね力を提供するために構成され、
前記補助フロート部材は、前記フロート弁が前記直立構成にあるか又は前記反転構成にあるかにかかわらず、液浸条件下で前記液体媒体によって押上力を提供されるように構成され、
前記一次フロート部材はその中に前記補助フロート部材を完全に収容するように構成されたフロートチャンバを備えることを特徴とする、
フロート弁。
【請求項2】
請求項1に記載のフロート弁において、前記フロートチャンバは、その下端において開口し、その上端において閉じられていることを特徴とするフロート弁。
【請求項3】
請求項2に記載のフロート弁において、前記フロートアセンブリは第1の直立モードで選択的に動作するために構成され、前記液浸条件下で、
前記第1の直立モードにおいて、前記フロート弁は前記直立構成にあり、前記フロートアセンブリは、前記補助フロート部材からいかなる前記押上力も提供されない状態で前記少なくとも1つの出口ポートを閉じるために構成されることを特徴とするフロート弁。
【請求項4】
請求項3に記載のフロート弁において、前記フロートアセンブリは第2の直立モードで選択的に動作するために構成され、前記液浸条件下で、
前記第2の直立モードにおいて、前記フロート弁は前記直立構成にあり、前記フロートチャンバは、閾レベルを少なくとも超えて前記液体媒体で充填され、前記フロートアセンブリは、前記補助フロート部材によって提供される前記押上力を用いて前記少なくとも1つの出口ポートを閉じるために構成されることを特徴とするフロート弁。
【請求項5】
請求項4に記載のフロート弁において、前記フロートアセンブリは反転モードで選択的に動作するために構成され、前記液浸条件下で、
前記反転モードにおいて、前記フロート弁は前記反転構成にあり、前記フロートアセンブリは、前記補助フロート部材からいかなる前記押上力も提供されない状態で前記少なくとも1つの出口ポートを閉じるために構成されることを特徴とするフロート弁。
【請求項6】
請求項5に記載のフロート弁において、前記フロートアセンブリは、前記第1の直立モード、前記第2の直立モード、及び前記反転モードで選択的且つ交互に動作するために構成されることを特徴とするフロート弁。
【請求項7】
請求項1に記載のフロート弁において、前記フロートチャンバは、その下端において開口し、更にその上端で少なくとも1つの開口部を備えることを特徴とするフロート弁。
【請求項8】
請求項7に記載のフロート弁において、前記フロートアセンブリは第1の直立モードで選択的に動作するために構成され、前記液浸条件下で、
前記第1の直立モードにおいて、前記フロート弁は前記直立構成にあり、前記フロートチャンバは、閾レベルを少なくとも超えて前記液体媒体で充填され、前記フロートアセンブリは、前記補助フロート部材によって提供される前記押上力を用いて前記少なくとも1つの出口ポートを閉じるために構成されることを特徴とするフロート弁。
【請求項9】
請求項8に記載のフロート弁において、前記フロートアセンブリは反転モードで選択的に動作するために構成され、前記液浸条件下で、
前記反転モードにおいて、前記フロート弁は前記反転構成にあり、前記フロートアセンブリは、前記補助フロート部材からいかなる押上力も提供されない状態で前記少なくとも1つの出口ポートを閉じるために構成されることを特徴とするフロート弁。
【請求項10】
請求項9に記載のフロート弁において、前記フロートアセンブリは、前記第1の直立モード、及び前記反転モードで選択的且つ交互に動作するために構成されることを特徴とするフロート弁。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載のフロート弁において、前記補助フロート部材は前記フロートチャンバ内で往復移動可能であることを特徴とするフロート弁。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載のフロート弁において、前記補助フロート部材は、前記液体媒体の密度よりも低い総合密度を有することを特徴とするフロート弁。
【請求項13】
請求項12に記載のフロート弁において、前記補助フロート部材は1つ以上の材料からできている固体として形成され、前記補助フロート部材の前記総合密度は前記液体媒体の前記密度よりも低いことを特徴とするフロート弁。
【請求項14】
請求項12に記載のフロート弁において、前記補助フロート部材は、内部容積を画成する外皮を含む密封中空体として形成され、前記内部容積と前記補助フロート部材の外部との間に流体連通がなく、前記補助フロート部材の前記総合密度は前記液体媒体の前記密度よりも低いことを特徴とするフロート弁。
【請求項15】
請求項14に記載のフロート弁において、前記内部容積は低密度材料を備えることを特徴とするフロート弁。
【請求項16】
請求項15に記載のフロート弁において、前記低密度材料は、前記液体媒体の前記密度よりも相当に低い材料密度を有する気体、液体、固体、又は発泡体のうちの何れか1つであることを特徴とするフロート弁。
【請求項17】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のフロート弁において、前記一次フロート部材は、前記ばね要素が存在しない状態で、前記フロートチャンバ内に空気ポケットを同時に含み、前記液体媒体に浮かないことを特徴とするフロート弁。
【請求項18】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のフロート弁において、前記一次フロート部材は、前記ばね要素が存在しない状態で、前記フロートチャンバ内に空気ポケットを同時に含み、前記液体媒体内に完全に沈められることを特徴とするフロート弁。
【請求項19】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のフロート弁において、前記一次フロート部材は、前記ばね要素が存在しない状態で、前記フロートチャンバ内に空気ポケットを同時に含み、前記液体媒体から受ける浮力があることを特徴とするフロート弁。
【請求項20】
請求項5、6、9及び10の何れか1項に記載のフロート弁において、前記一次フロート部材及びばね要素を含む前記フロートアセンブリは、前記フロート弁が前記第1の直立モードにある場合、前記一次フロート部材が液体媒体上で浮動構成を呈することを可能にするために構成されることを特徴とするフロート弁。
【請求項21】
請求項20に記載のフロート弁において、前記一次フロート部材及び前記ばね要素を含む前記フロートアセンブリは、更に、前記フロート弁が前記反転モードにある場合、前記液体媒体上で前記浮動構成を設けないために構成されることを特徴とするフロート弁。
【請求項22】
請求項20又は21に記載のフロート弁において、前記フロート弁は、最大の前記押上力が前記一次フロート部材に作用する場合、前記最大の押上力が、前記ばね要素によって提供される前記付勢ばね力と共に、前記一次フロート部材の重量よりも共に十分に大きく、それによって前記一次フロート部材が前記浮動構成を呈することが可能となるように、構成されることを特徴とするフロート弁。
【請求項23】
請求項20又は21に記載のフロート弁において、前記フロートアセンブリは、最大の前記押上力が前記一次フロート部材に作用する場合、前記最大の押上力が、前記ばね要素によって提供される前記付勢ばね力と共に、前記一次フロート部材の重量よりも共に十分に大きく、それによって前記一次フロート部材が前記浮動構成を呈することが可能となるように、構成されることを特徴とするフロート弁。
【請求項24】
請求項22又は23に記載のフロート弁において、前記最大の押上力が前記一次フロート部材に作用するように前記一次フロート部材が前記液体媒体内で自由に十分に沈められた結果として、前記最大の押上力が提供されることを特徴とするフロート弁。
【請求項25】
請求項22乃至24の何れか1項に記載のフロート弁において、前記最大の押上力は、前記一次フロート部材の液浸体積に前記一次フロート部材の前記フロートチャンバ内に閉じ込められた空気又は蒸気の体積を少なくとも加えたものに対応する前記一次フロート部材に作用する浮力であることを特徴とするフロート弁。
【請求項26】
請求項1乃至25の何れか1項に記載のフロート弁において、前記ばね要素はコイルばねの形をとることを特徴とするフロート弁。
【請求項27】
請求項1乃至26の何れか1項に定義されるフロート弁を含むことを特徴とする車両用燃料タンク。
【請求項28】
請求項1乃至26の何れか1項に定義されるフロート弁を有する燃料タンクを含むことを特徴とする車両。
【請求項29】
請求項28に記載の車両において、前記車両が道路車両であることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
現在開示されている主題は、一般に、フロート弁に関し、特に、車両の燃料タンクにおいて用いるためのフロート弁に関する。
【背景技術】
【0002】
現在開示されている主題に対する背景として関連があると考えられる参考文献を以下に列挙する。
-国際公開第2000/53960号パンフレット
本明細書中の上記の参考文献の承認は、これらが現在開示されている主題の特許性に何らかの形で関連することを意味するものとして推量されるべきではない。
【0003】
フロート弁は、特に、車両の燃料タンクにおいて用いるために周知である。かかるフロート弁は、一方で開放された場合に燃料蒸気を通気させるために用いられ、他方で、それぞれ、燃料タンクの過充填を防止するか、及び/又は、例えば、弁が部分的又は完全に燃料中に沈んだ横転事故シナリオ又は他の状況において、それを通る燃料の漏出を防止するよう作動する過充填阻止弁として及び/又はロールオーバー弁として一般的に使用される。かかる状態は、例えば、燃料タンクの傾斜(例えば、車両が上り坂又は下り坂を走行する)、又は燃料がタンク内を移動している(例えば、液体スロッシングがタンク内で生じている)場合にタンク内の燃料のレベルにおける波頂及び谷の原因となることを含むことができる。
【0004】
従来のフロート弁は、ばね付勢された底が開いたフロート部材の浮力及びばね力を用いてフロート部材を上方向に付勢し、フロート弁が部分的又は完全に燃料中に沈んだ条件下で弁を閉じ、そうでなければ、結果として弁を通る燃料漏出を生じる可能性がある。横転状態において、今反転したフロート部材は正味浮力をほとんど又は全く提供せず、代わりにその重量(多くの場合、今反転したフロート部材に含まれる燃料の重量も含む)が、ばね付勢と共に弁を閉位置に付勢して、燃料漏出を防ぐ。
【0005】
かかる弁の通常の使用において、底が開いたフロート部材によって提供される開放空間は、燃料蒸気で満たされ、ばねによって提供される付勢ばね力と共に必要な正味浮力をフロート部材に提供して、燃料タンクの過充填又はそれからの漏出を防止する。しかし、環境温度が下がるにつれて(例えば夜間)、燃料蒸気は凝縮する可能性があり、従って、開放空間は液体燃料で部分的又は完全に充填されることになり、フロート部材の実効正味浮力を前述の必要な正味浮力未満まで大幅に減少させる可能性がある。これは、これらの条件下で、過充填阻止弁としての機能又は漏出を防止することにおけるフロート弁の有効性に影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
非限定的な例として、国際公開第2000/53960号パンフレットは、内部に弁アセンブリが位置するハウジングを含む過充填及びロールオーバー弁を開示している。弁アセンブリは、ハウジング内で同軸的に且つ相対的に変位可能な第1のステージ部材及び第2のステージ部材を含んでいる。第1のステージ部材は、底部にスリット状アパーチャ及び上部に出口アパーチャを有している。入口及び出口アパーチャは流体連通している。第2のステージ部材は、第1のステージ部材のスリット状アパーチャを閉じるための可撓性メンブレンストリップを備えたフロートである。弁アセンブリは、第1のステージ部材と第2のステージ部材との間に延在し、第2のステージ部材のその第2の位置への変位が第1のステージ部材のその第2の位置への正の変位を必然的に伴うような方法でそれらの間の相対移動の制限された自由を許容する少なくとも1つの固着部材を備える。
【発明の概要】
【0007】
現在開示されている主題の一態様によれば、液体媒体と共に用いるためのフロート弁が提供され、フロート弁は直立構成と反転構成とを有し、
少なくとも1つの入口ポート及び少なくとも1つの出口ポートを画成するハウジングと、
前記ハウジング内で移動可能なフロートアセンブリと、
前記ハウジング内で移動可能な補助フロート部材と、を備え、
フロートアセンブリは、前記補助フロート部材とは異なる一次フロート部材と、ばね要素とを備え、一次フロート部材は、当接した場合に前記少なくとも1つの出口ポートを閉じるために構成され、ばね要素は、前記少なくとも1つの出口ポートに向かう方向に一次浮動部材に付勢ばね力を提供するために構成され、
前記補助フロート部材は、フロート弁が前記直立構成にあるか又は前記反転構成にあるかにかかわらず、液浸条件下で液体媒体に対して正味の押上力を提供するために構成される。
【0008】
例えば、前記一次フロート部材は前記補助フロート部材を収容するフロートチャンバを備える。
【0009】
少なくとも1つの実施例において、前記フロートチャンバは、その下端において開口し、その上端において閉じられている。例えば、前記フロートアセンブリは第1の直立モードで選択的に動作するために構成され、前記液浸条件下で、前記第1の直立モードにおいて、フロート弁は前記直立構成にあり、フロートアセンブリは、補助フロート部材によって提供することができるものよりもいかなる押上もない状態で前記少なくとも1つの出口ポートを閉じるために構成される。加えて又は代替として、例えば、前記フロートアセンブリは第2の直立モードで選択的に動作するために構成され、前記液浸条件下で、前記第2の直立モードにおいて、フロート弁は前記直立構成にあり、前記フロートチャンバは、閾レベルを少なくとも超えて液体媒体で充填され、前記フロートアセンブリは、補助フロート部材によって提供される前記押上を用いて前記少なくとも1つの出口ポートを閉じるために構成される。加えて又は代替として、例えば、前記フロートアセンブリは反転モードで選択的に動作するために構成され、前記液浸条件下で、前記反転モードにおいて、フロート弁は前記反転構成にあり、フロートアセンブリは、補助フロート部材によって提供することができるものよりもいかなる押上もない状態で前記少なくとも1つの出口ポートを閉じるために構成される。加えて又は代替として、例えば、前記フロートアセンブリは、前記第1の直立モード、前記第2の直立モード、及び前記反転モードで選択的且つ交互に動作するために構成される。
【0010】
少なくとも別の例において、前記フロートチャンバは、その下端において開口し、更にその上端で少なくとも1つの開口部を備える。例えば、フロートアセンブリは第1の直立モードで選択的に動作するために構成され、前記液浸条件下で、前記第1の直立モードにおいて、フロート弁は前記直立構成にあり、前記フロートチャンバは、閾レベルを少なくとも超えて液体媒体で充填され、前記フロートアセンブリは、補助フロート部材によって提供される前記押上を用いて前記少なくとも1つの出口ポートを閉じるために構成される。加えて又は代替として、例えば、前記フロートアセンブリは反転モードで選択的に動作するために構成され、前記液浸条件下で、前記反転モードにおいて、フロート弁は前記反転構成にあり、フロートアセンブリは、補助フロート部材によって提供することができるものよりもいかなる押上もない状態で前記少なくとも1つの出口ポートを閉じるために構成される。加えて又は代替として、例えば、前記フロートアセンブリは、前記第1の直立モード、及び前記反転モードで選択的且つ交互に動作するために構成される。
【0011】
少なくとも上記又は他の実施例において、前記補助フロート部材は前記フロートチャンバ内で往復移動可能である。
【0012】
加えて又は代替として、例えば、前記補助フロート部材は、液体媒体の密度より低い総合密度を有する。例えば、補助フロート部材は1つ以上の材料からできている固体として形成され、補助フロート部材の前記総合密度は液体媒体の密度よりも低い。代替として、例えば、補助フロート部材は、内部容積を画成する外皮を含む密封中空体として形成され、前記内部容積と補助フロート部材の外部との間に流体連通がなく、補助フロート部材の前記総合密度は液体媒体の密度よりも低い。例えば、内部容積は低密度材料を備える。例えば、前記低密度材料は、液体媒体の密度よりも相当に低い材料密度を有する気体、液体、固体、又は発泡体のうちの何れか1つである。
【0013】
加えて又は代替として、例えば、前記一次フロート部材は、前記ばね要素が存在しない状態で、前記フロートチャンバ内に空気ポケットを同時に含み、液体媒体に対して浮力がない。
【0014】
加えて又は代替として、例えば、前記一次フロート部材は、前記ばね要素が存在しない状態で、前記フロートチャンバ内に空気ポケットを同時に含み、液体媒体内に完全に沈められる。
【0015】
加えて又は代替として、例えば、前記一次フロート部材は、前記ばね要素が存在しない状態で、前記フロートチャンバ内に空気ポケットを同時に含み、液体媒体に対して浮力がある。
【0016】
加えて又は代替として、例えば、前記一次フロート部材及びばね要素を含む前記フロートアセンブリは、フロート弁が前記第1の直立モードにある場合、前記一次フロート部材が液体媒体上で浮動構成を呈することを可能にするために構成される。例えば、前記一次フロート部材及び前記ばね要素を含む前記フロートアセンブリは、更に、フロート弁が前記反転モードにある場合、液体媒体上で前記浮動構成を設けないために構成される。加えて又は代替として、例えば、前記フロート弁は、最大の前記押上が一次フロート部材に作用する場合、前記最大押上が、ばね要素によって提供される前記付勢ばね力と共に、一次フロート部材の重量よりも共に十分に大きく、それによってフロート部材が浮動構成を呈することが可能となるように、構成される。加えて又は代替として、例えば、前記フロートアセンブリは、最大の前記押上が一次フロート部材に作用する場合、前記最大押上が、ばね要素によって提供される前記付勢ばね力と共に、一次フロート部材の重量よりも共に十分に大きく、それによってフロート部材が浮動構成を呈することが可能となるように、構成される。加えて又は代替として、例えば、最大押上が一次フロート部材に作用するように一次フロート部材が液体媒体内で自由に十分に沈められた結果として、前記最大押上が提供される。加えて又は代替として、例えば、前記最大押上は、一次フロート部材の液浸体積に一次フロート部材のフロートチャンバ内に閉じ込められた空気又は蒸気の閾体積を少なくとも加えたものに対応する一次フロート部材に作用する最小押上力又は浮力である。
【0017】
加えて又は代替として、例えば、前記ばね要素はコイルばねの形をとる。
【0018】
現在開示されている主題のこの態様によれば、本明細書中で定義されるようなフロート弁を含む車両用燃料タンクも提供される。
【0019】
現在開示されている主題のこの態様によれば、本明細書中で定義されるようなフロート弁を有する燃料タンクを含む車両も提供される。例えば、車両は道路車両であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本明細書中に開示する主題をより良く理解し、それがどのように実際に行うことができるかを例示するために、実施例を、非限定的な実施例のみを用いて、添付図面を参照してここで説明する。
【0021】
図1図1は、現在開示されている主題によるフロート弁の第1の実施例を断面側面図で示し、フロート弁は直立構成で開口されており、フロート弁は沈んでいない。
図2図2は、図1の実施例を断面側面図で示し、フロート弁は直立構成で開口されており、フロート弁は部分的に沈んでいる。
図3図3は、図1の実施例を断面側面図で示し、フロート弁は直立構成で開口されており、フロート弁は部分的に沈んでおり、一次フロート部材が液体媒体上で浮動している。
図4図4は、図1の実施例を断面側面図で示し、フロート弁は直立構成で閉じられており、フロート弁は部分的又は完全に沈んでいる。
図5図5は、図1の実施例を断面側面図で示し、フロート弁は直立構成で閉じられており、フロート弁は部分的又は完全に沈んでおり、補助フロート部材が一次フロート部材に押上を提供している。
図6図6は、図1の実施例を断面側面図で示し、フロート弁は直立構成で閉じられており、フロート弁は部分的又は完全に沈んでおり、補助フロート部材が液体媒体上で浮動している。
図7図7は、図1の実施例を断面側面図で示し、フロート弁は反転構成で閉じられており、フロート弁は部分的又は完全に沈んでいる。
図8a図8(a)は、図1の実施例の補助フロート部材の一実施例を断面側面図で示す。
図8b図8(b)は、図1の実施例の補助フロート部材の別の実施例を断面側面図で示す。
図9a図9(a)は、図1の実施例の補助フロート部材の一実施例を等角図で示す。
図9b図9(b)は、図1の実施例の補助フロート部材の別の実施例を等角図で示す。
図9c図9(c)は、図1の実施例の補助フロート部材の別の実施例を等角図で示す。
図9d図9(d)は、図1の実施例の補助フロート部材の別の実施例を等角図で示す。
図10図10は、図3の実施例の代替の変形例を断面側面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照すると、現在開示されている主題の第1の実施例による、符号10で示されるフロート弁は、ハウジング12、フロートアセンブリ60、及び補助フロート部材50を備える。フロートアセンブリ60は、一次フロート部材70及びばね要素を備える。この及び他の実施例において、ばね要素はコイルばね80の形をとっており、コイルばね80は、以下でより明らかとなるように、一次浮動部材70に対して付勢ばね力を提供するために構成される。これら実施例の代替の変形例において、ばね要素は、任意の適切な構成、特に、機械的構成、例えば、一次浮動部材70に対して付勢ばね力を提供するために構成される弾性部材の形を備えることができる。
【0023】
フロート弁は流体出口ポート24を含み、ダクト部分23が流体出口ポート24と流体連通して設けられる。この実施例の代替の変形例において、フロート弁は、1つを超える流体出口ポート、例えば、2つ以上の流体出口ポートを含むことができる。
【0024】
この実施例において、ハウジング12は円筒形である一方で、この実施例の代替の変形例において、ハウジングは、代わりに、他の任意の適切な形状又は断面、例えば、楕円形又は多角形の断面を有することができる。
【0025】
この実施例において、及び本明細書中でより明らかとなるように、フロート弁10は、過充填阻止弁として及び/又はロールオーバー弁(ROV)として、及び/又は組合せロールオーバー弁(CROV)として用いるために構成される。しかし、この実施例の代替の変形例において、フロート弁10は、代わりに、充填レベル通気弁(FLVV)として、若しくは組合せ充填レベル通気弁(CFLVV)として、又は充填レベル弁(FLV)として、又は組合せ充填レベル弁(CFLV)として構成される。
【0026】
フロート弁10は、その上部を介して、燃料タンク16の上部、例えば、燃料タンク16の上壁に取り付け可能である。この実施例において、かかる取り付けは、タンク上部壁における開口部11を介してタンクの外側から行われる(図1)が、しかし、この実施例の他の変形例において、フロート弁が、代わりにタンク内のタンク上部壁の下側に取り付けられてもよい。いずれにせよ、かかる取り付けは、当該技術においてそれ自体公知のような幾つかの方法のうちのいずれか1つによって、例えば、熱溶接又は機械的取り付け(例えば、クリップ、リベット締め、等)によって達成されてもよい。このように取り付けられる場合、ハウジング12は燃料タンク16の内部容積V内に延在する。
【0027】
給油モードにおいて、容積Vは燃料Fで充填されてもよく、フロート弁10は、燃料蒸気が流体出口ポート24を介してタンク16から放出されることを可能にするよう動作する。フロート弁10は、更に、フロート弁10が沈む場合に燃料の漏出を防ぐため、例えば、タンク16を過充填することを防ぐために、流体出口ポート24を選択的に閉じるよう動作する。フロート弁10は、また、車両エンジンの運転中にタンク16内の燃料レベルが減損するにつれてタンク16を通気するよう動作する。
【0028】
フロート弁10の一般的な動作において、フロート弁10は、更に、フロート弁が部分的又は完全に燃料内に沈んだ状態で、流体出口ポート24を介した燃料の漏出を選択的に防止するよう動作し(又は、この実施例の幾つかの変形例において、代替として動作し)、場合によっては弁を介する燃料漏出を招く可能性がある。かかる状態は、例えば、タンクの横転(例えば、タンクが設置されている車両(図示せず)、例えば、道路車両が横転する場合)、燃料タンクの傾斜(例えば、車両が上り坂又は下り坂を走行する)、又は燃料がタンク内を移動している(例えば、液体スロッシングがタンク内で生じている)場合にタンク内の燃料の液面における波頂及び谷の原因となることを含むことができる。
【0029】
ハウジング12は、ハウジング12の下端部14若しくはその近傍に及び/又はハウジング12の側面に設けられる1つ又は複数の流体入口ポート20を有する内部チャンバ18を画成する一方で、流体出口ポート24は内部チャンバ18の上端部に設けられる。
【0030】
少なくともこの実施例において、流体入口ポート20及び出口ポート24は、フロート弁10が開構成にある場合、高流量で燃料蒸気の排出を可能にするように、極めて大きい断面を有する。
【0031】
一次フロート部材70は、その上端部71において上端壁75に接合される外周壁72を有し、下端部76は開放しており、それによって開放端フロートチャンバ77を画成している。この実施例において、周壁72は円筒形である一方で、この実施例の代替の変形例において、周壁72は、代わりに、他の任意の適切な形状又は断面、例えば、楕円形又は多角形の断面を有することができる。この実施例において、周壁72はその長手方向軸AAに沿って一定又は一様な断面を有する一方で、この実施例の変形例において、周壁72は、代わりに、減少又は長手方向軸AAに沿って減少する大きさ及び/又は形状を有する断面を有することができる。
【0032】
一次フロート部材70及びコイルばね80を含むフロートアセンブリ60は、フロート弁10が通常の(直立)向きにある場合に一次フロート部材70が液体媒体上で浮動構成を呈することを可能にするために構成されており(例えば、図3を参照)、また、本明細書中で直立構成とも区別なく称される。液体媒体(また、本明細書中で「作動流体」とも区別なく称される)は、この及び他の実施例において、特にタンク16を充填するために用いられる種類の液体燃料Fである。前述の浮動構成において、一次フロート部材70は液体媒体中に完全には沈まない。むしろ、一次フロート部材70は部分的に沈んだままであり、開放フロートチャンバ77内に閉じ込められた空気ポケット(典型的には空気及び/又は燃料蒸気で充填される)によって提供される浮力とコイルばね80によって提供される付勢ばね力とは、共に一次フロート部材70の少なくとも上部65が一次フロート部材70を囲む液体媒体の液面より上に突出することを可能にする。
【0033】
現在開示されている主題の幾つかの実施例において、一次フロート部材70は、コイルばね80が存在しないが、開放フロートチャンバ77内に空気ポケットを含む状態で、液体媒体上で浮動せず、代わりに、液体媒体内に完全に沈むことになる一方で、現在開示されている主題の他の実施例において、一次フロート部材70は、コイルばね80が存在しないが、開放フロートチャンバ77内に空気ポケットを含む状態で、液体媒体上で浮動することに留意されたい。
【0034】
一方、少なくともこの実施例において、一次フロート部材70及びコイルばね80を含むフロートアセンブリ60は、また、フロート弁10が図7の横転(反転)向きにある場合(本明細書中で反転構成とも区別なく称される)、液体媒体、特に燃料F上で前述の浮動構成を提供しないために構成されており、フロートチャンバ77は、ここで、燃料蒸気又は空気ではなく、液体媒体、特に燃料Fで充填される。
【0035】
出口ポート24は弁座22を画成し、一次フロート部材70、特にその上端壁75は、ハウジング12の弁座22と選択的に封止係合するために適した弾性シール部材79を備えている。シール部材79は、一次フロート部材70の前述の上部65に設けられており、その結果、シール部材79は、フロートアセンブリ60が浮動構成にある場合、一次フロート部材70を囲む液体媒体の液面より上に突出する。
【0036】
一次フロート部材70は、長手方向軸AAと平行又は同軸の方向に内部チャンバ18内を往復移動可能である。
【0037】
コイルばね80は、コイルばね80の上端部が上端壁75の下面に当接する一方で、コイルばね80の下端部がハウジング12の下端部14に当接するように、フロートチャンバ77内に収容される。コイルばね80は、以下でより明確となるように、所定の圧縮状態に圧縮され(それによって、その内部に位置エネルギーを蓄積し)、一次フロート部材70を下端部14から離間して及び流体出口ポート24に向かって上方に付勢するために付勢ばね力を提供するよう付勢される。
【0038】
任意選択的に、一次フロート部材70は、一方で、内部チャンバ18内での一次フロート部材70の往復軸方向移動を可能にしながら、一次フロート部材70と内部チャンバ18との間の相対的な回転を防止する内部チャンバ18の内側に設けられるスロット(図示せず)内で摺動して収容される突出部(図示せず)を備えることができる。かかる特徴は、例えば、弾性シール部材79がその一端において上端壁75の上面に形成される傾斜支持面に固定される可撓性閉鎖メンブレンストリップの形である図示する実施例の少なくとも幾つかの代替の変形例における特定の用途のものであってもよく、ここで弁座22は傾斜支持面に対して平行に傾斜する傾斜底面を備える。かかる場合、一次フロート部材70と内部チャンバ18との間の相対的回転を防止することは、弁座22の傾斜底面に対する傾斜面及び可撓性閉鎖メンブレンストリップの正確な位置決めを確実にすることができる。代替として、他の構成が、一次フロート部材70と内部チャンバ18との間の相対的回転を防止するために任意選択的に設けられてもよい。
【0039】
フロート弁10、特に、フロートアセンブリ60は、最大押上(すなわち、最大浮力)が液体媒体において一次フロート部材70に作用する場合(一次フロート部材70が自由に沈む結果として(すなわち、完全又は部分的に沈むが、最大押上が一次フロート部材70に作用するように十分沈む)、この押上がコイルばね80によって提供される付勢ばね力と共に、それによりフロート部材が浮動構成を呈することを可能にするよう一次フロート部材70の重量よりも共に十分に大きいように、設計されている。前述の最大押上は、一次フロート部材70に作用し、一次フロート部材70の浸漬体積に一次フロート部材70のフロートチャンバ77内に閉じ込められた空気/蒸気の少なくとも閾体積を加えたものに対応する最小押上又は浮力として定義されてもよい。
【0040】
一次フロート部材70は、流体出口ポート24が開いている(フロート弁の開放構成に対応する)最下位置(図1)と、弾性シール部材79が弁座22と封止係合し、それによって流体出口ポート24を閉じている(フロート弁の閉鎖構成に対応する)最上位置(図4、5、6)との間で長手方向軸AAと平行又は同軸の方向に内部チャンバ18内で往復移動可能である。
【0041】
補助フロート部材50は、フロート弁10が図1~6の通常の向き(直立構成)、若しくは図7の横転向き(反転構成)、又はそれらの間の他の任意の角度配置にあるかどうかにかかわらず、液体媒体、特に燃料F(特に、タンク16を充填するために用いられる種類のもの)の上で浮動するために構成される。
【0042】
補助フロート部材50は、フロートチャンバ77内に収容され、内部チャンバ18内、特にこの実施例においてフロートチャンバ77内で、長手方向軸AAと平行又は同軸の方向に、補助フロート部材50が下端部14で静止している最下位置(図1、7)と、補助フロート部材50が上端壁75の下側に当接している最上位置(図5)との間で、自由に且つ往復移動可能であり、上端壁75の位置は、内部チャンバ18に対する一次フロート部材70の軸方向位置に従って、内部チャンバ18に対して変化できる。特に、フロート部材50は、フロートチャンバ77内で自由に且つ往復運動可能に変位可能である。
【0043】
特に指定のない限り、用語「最上位置」、「最下位置」、「上部」、「下部」等は、本明細書中で一般に「直立構成」にあるフロート弁に関して用いられ、特に指定のない限り、これらの用語は、混乱を避けるために、フロート弁が反転構成である場合にも保持される。
【0044】
図9(a)及び9(b)を参照すると、この実施例において、補助フロート部材50は円筒形である一方で、この実施例の代替の変形例において、補助フロート部材50は、代わりに、他の任意の適切な形状又は断面、例えば、楕円形又は多角形を有することができる。この実施例において、補助フロート部材50は長手方向軸AAに沿って一定又は一様な断面を有する一方で、この実施例の変形例において、補助フロート部材50は、代わりに、長手方向軸AAに沿って減少又は大きさが減少及び/又は形状が変化する断面を有することができる。図9(a)及び9(b)を参照すると、補助フロート部材50は、例えば、円錐台状の形態を有することができる。
【0045】
この実施例において、補助フロート部材50は、コイルばね80の径方向内側に同心円状に収容され、従って、コイルばね80の巻線は、補助フロート部材50から離間して外側に径方向に配設される。しかし、図9(b)及び9(d)並びに図10を参照すると、この実施例の代替の変形例において、反対の場合があってもよく、コイルばね80は、代わりに、補助フロート部材50に形成される中央内腔51内に収容されてもよく、かかる場合、補助フロート部材50は、例えば、コイルばね80の巻線を径方向に囲むトーラス、リング又は他の環状形態の形態であってもよい。
【0046】
本明細書中に開示される実施例において、補助フロート部材50は、燃料Fの密度よりも小さい総合密度を有し、補助フロート部材50が、燃料表面SFに対するその向きにかかわらず燃料表面SF上を浮動することを可能にして構成される。例えば、この総合密度は、例えば、ガソリン、ディーゼル、フレックス燃料、バイオ燃料等のうちの1つ以上を含む、燃料Fと共に用いるための、約0.16kg/m~0.60kg/mの範囲内、又は約0.16kg/m~0.65kg/mの範囲内、特に、約0.20kg/m~約0.40kg/mの範囲の間であってもよい。
【0047】
図1の図示の実施例において、また図8(a)を参照すると、補助フロート部材50は、低密度材料M、例えば、幾つかのプラスチック、ニトリルゴム(NBR)、木、コルク、等の中実体として形成される。
【0048】
この実施例の他の変形例において、また図8(b)を参照すると、補助フロート部材50は、極めて低密度の材料(例えば、空気若しくは他の気体、又は発泡体、又は燃料Fの密度と比較して、極めて低密度の液体)で充填され得る内部容積57を画成するか、又は真空で閉じられる外皮58を含む密封中空体53として、及び、この内部容積57と補助フロート部材50の外側との間に何の流体連通もないように、及び、補助フロート部材50の総合密度が燃料Fの密度よりも相当に小さいように、作成されてもよい。
【0049】
従って、補助フロート部材50は、燃料表面SFに対する補助フロート部材50の向きにかかわらず、従って、フロート弁10の向きにかかわらず、常に正味の押上(すなわち、補助フロート部材50の重量を超える押上又は浮力)を提供するよう構成される。これにより、燃料面に対する補助フロート部材50の向き(すなわち、例えば、直立又は反転されるかどうか)にかかわらず、従って、フロート弁10の向きにかかわらず、補助フロート部材50が常に燃料面上を浮動することが保証される。
【0050】
対照的に、フロートアセンブリ60は、フロート弁10が図1の通常向き(直立構成)にあり、フロートチャンバ77が空気及び/又は燃料蒸気の少なくとも閾体積を捕捉する場合に浮動構成を提供するために一次フロート部材70に正味押上を提供する一方で、そうでなければ、フロート弁10が図7の横転向き(反転構成)にある(及びフロートチャンバ77はここで燃料Fで充填される可能性がある)場合に浮動構成を一次フロート部材70に提供するであろう任意のかなり大きい正味押上を提供しないよう構成される。従って、一次フロート部材70は、直立位置にあり、フロートチャンバ77が(捕捉された空気/蒸気少なくとも閾体積を提供するよう)同時に部分的又は完全に気体又は蒸気で充填される場合に燃料表面上を浮動するが、一次フロート部材70が燃料表面に対して反転位置にある場合、特に、フロートチャンバが部分的、又は完全に液体燃料Fで充填される場合、燃料表面より下に沈む。従って、一次フロート部材70に作用する正味力ベクトルは、燃料表面に対する一次フロート部材70の向き及びフロートチャンバ77がどの材料で同時に充填されるかに左右される。
【0051】
現在開示されている主題の一態様によれば、フロート弁10は、フロート弁10が燃料F内に完全又は部分的に沈められる条件下で、それを通る燃料の漏出を防止するように動作する一方で、かかる条件のない状態において、すなわち、フロート弁10がもはや燃料Fに沈んでいないか、又は、それを通る燃料の漏出の危険性がないように、わずかしか沈んでいない場合、フロート弁はそれを通る燃料タンクの通気を可能にするように動作する。
【0052】
1つのかかる状態はタンク16の補給モードで起こり得、その場合、フロート弁10は以下のように補給モードで動作する。
【0053】
再度図1を参照すると、タンク16は燃料レベルSFまで燃料Fで部分的に充填されている。代替として、タンクは燃料Fがなくてもよい。いずれの場合においても、燃料レベルSFはハウジング12の下端部14に達しない。
【0054】
この位置において、一次フロート部材70又は補助フロート部材50に作用する正味押上はない。本明細書中で、用語「押上」は、タンクが充填されている液体燃料F又は他の任意の液体媒体に関して排他的に適用され、従って、大気による又は燃料タンク内の燃料蒸気又は他の気体による任意の公称浮力又は押上効果を排除及び無視することに留意されたい。
【0055】
一方、重力(重量)が一次フロート部材70及び補助フロート部材50のそれぞれに作用している。更に、コイルばね80のばね付勢は、一次フロート部材70に上向きの付勢ばね力、すなわち、重力と反対の方向に出口ポート24に向かう付勢力を印加するよう試みる。しかし、コイルばね80は、それによって提供される付勢ばね力が、捕捉空気/蒸気の上述の閾体積の結果として提供される押上がない状態で一次フロート部材70の重量を克服するのにそれ自体によって不十分であるように設計され、従って、一次フロート部材70はハウジング12の下端部14に着座したその最下位置を呈する。同様に、その自重によってのみ作用されて(再度、大気による又は燃料タンク内の燃料蒸気若しくは他の気体による任意の浮力効果を無視して)、補助フロート部材50もまたハウジング12の下端部14に着座したその最下位置を呈する。これらの条件下で、フロート弁10は、流体出口24が開放され、蒸気が流体入口ポート20、流体出口ポート24、及びダクト23を介してタンク16の外側、通常、蒸気処理装置(図示せず)、例えば、活性炭キャニスタへフロート弁10を通って自由に流れる全開構成にある。図1の構成は、昼間又は夜間の条件と一致しており、燃料タンク16及びフロート弁10がその中で動作するよう設計される環境条件のほとんど又は全てを網羅することができる。
【0056】
ここで図2及び図3を参照すると、弁10が部分的に沈むにつれて、タンク16内の燃料レベルは最終的に流体入口ポート20の真上に上昇する。この時点で、燃料Fは流体入口ポート20を介して内部チャンバ18に進入する。典型的な昼間の条件下において、フロートチャンバ77は液状の燃料Fを未だ欠いており、通常、燃料蒸気及び/又は空気で充填される一方で、補助フロート部材50もその内部に収容している。フロート弁10の外側、更に内側、特に内部チャンバ18の燃料レベル(すなわち、燃料表面SFの液面)は依然としてフロートアセンブリ60の浮力レベル未満であり(この実施例において、燃料レベルは「設計満タン」レベル(DFT)にはなく)、中間又は部分的な押上のみが一次フロート部材70に作用する。この部分的押上は、一次フロート部材70が燃料表面SF上を自由に浮動している場合に一次フロート部材70に作用することができる全押上力よりも小さい。この段階での部分的押上は、コイルばね80によって提供される付勢ばね力の助力を得ても一次フロート部材70の重量を克服するには不十分であり、従って、一次フロート部材70は下端部14に着座したその最下位置に留まる。従って、図2に示す条件下において、補助フロート部材50の重量のみがそれらに作用するため、フロート弁10は全開構成のままであり、補助フロート部材50も下端部14に着座したままである。
【0057】
フロート弁10の外側の燃料レベル上昇中のある時点において、内部チャンバ18内の燃料Fの液面は、一次フロート部材70に作用する押上及びコイルばね80によって提供される付勢ばね力が一次フロート部材70の重量を克服するのに共に十分であるように十分であり、従って、上部65が内部チャンバ18内の燃料Fの表面より上に突出し、従って、一次フロート部材70が下端部14に着座したその最下位置から間隔を空けるようになる浮動構成を採る。従って、図3に示す条件下において、フロート弁10は依然として全開構成のままであり、補助フロート部材50も下端部14に着座したままである(補助フロート部材50の重量のみがそれらに作用し、補助フロート部材50の最近傍の燃料の液面が、フロートチャンバ77内の空気/蒸気の体積によって決定される内部チャンバ18内よりも低いため)一方で、一次フロート部材70は弁座22に向かって変位する。
【0058】
燃料タンク16が燃料Fで充填され続けるにつれて、フロート弁10の外側の燃料レベル(すなわち、燃料表面SFの液面)は、最終的に、タンク16内の燃料表面SFの上に残るいくらかの上部空間HDが存在する「設計満タン」レベルDFTに対応する所望の最大レベルに到達する。この時点で、全押上が一次フロート部材70に印加されることを可能にするために十分な、より多くの燃料が流体入口ポート20を介して内部チャンバ18に進入している。フロート弁10は、コイルばね80によって提供される付勢ばね力と共に一次フロート部材70に作用する全押上が一次フロート部材70の重量よりも大きいように設計されているため、一次フロート部材70は、最終的に一次フロート部材70の最上位置までフロートチャンバ77内で上昇し、それによって、弾性シール部材79を弁座22に封止係合している(図4)。これらの条件下で、フロート弁10は、流体出口24が閉じている閉鎖構成にあり、蒸気(並びに液体燃料F)はフロート弁10を介するタンク16の外側へのタンク16からの流出を防止している。
【0059】
この時点において、燃料タンク16はそれ以上燃料Fで充填することができず、上部空間HDは維持される。通常、閉鎖構成において、バンク16を燃料で充填し続けるそれ以上の試みは、燃料充填機構(図示せず)によって感知され、その後、更なる給油を停止するタンク16の容積内の圧力増加の原因となる。
【0060】
通常、燃料Fはフロートチャンバ77内に全く又は任意の重大な程度まで浸透しない一方で、内部チャンバ18の底部は、一次フロート部材70の下縁部78の水準まで燃料で充填される。内部チャンバ18内の燃料のこの液面は、補助フロート部材50を、その浮力を介して上端壁75と当接するよう付勢するには不十分である。従って、図4に示す条件下において、補助フロート部材50の重量のみがそれらに作用するため、補助フロート部材50は下端部14に着座したままである。
【0061】
図5を参照すると、この図は、タンク16が「設計満タン」レベルDFTまで充填されているか、又はタンク16が既に燃料Fで「設計満タン」レベルDFTまで充填されており、フロートチャンバ77も燃料Fで満ちている状態を示している。かかる状態は、例えば、環境温度が急激に降下する可能性がある環境条件の範囲下で、例えば、環境温度が日中よりも相当に低い可能性がある場合の夜間において、発生する可能性がある。これらの条件下において、一次フロート弁70に作用する正味の押上が減少又は排除され、その結果、フロートアセンブリ60自体によって弁を閉じることができない。一方、フロートチャンバ77内の燃料Fは、その結果として、一次フロート部材70の上端壁75と当接して、その最上位置までここで付勢される押上を生成し、補助フロート部材50に印加することが可能である。更に、かかる当接は、結果として、補助フロート部材50によって生成されて一次フロート部材70にここで印加される押上を生じ、それと共に、コイルばね80によって提供される付勢ばね力は一次フロート部材70の重量と少なくとも等しいか又はそれを超える。これは結果として、一次フロート部材70がその最上位置に抗して付勢されるか又はそれに維持され、フロート弁10を閉位置に維持する。
【0062】
補助フロート部材50によって生成される押上は、フロート弁10の向き、特にフロート弁が直立構成にあるか若しくは逆転構成にあるか又はその間の他の任意の角度向きにあるかどうかに、又は、実際において、捕捉された空気/蒸気の前述の閾体積を保持するフロートチャンバ77の能力に影響を及ぼす可能性がある環境条件(例えば、環境温度)に影響されないことに留意されたい。
【0063】
従って、往復動可能な補助フロート部材50は、一次フロート部材70が十分な押上を提供することができない条件下で、一次フロート部材70に必要な追加の浮力又は押上を提供し、それと共に、付勢ばね力が一次フロート部材70をその最上位置に付勢して閉鎖構成を提供することができ、これにより、燃料タンク16が「設計満タン」レベルDFTを超えて過充填されるか又は燃料が漏出することを防止することができる。
【0064】
このようにして、フロート弁10は過充填阻止弁として作動する。
【0065】
図5に示す条件下であるが、補助フロート部材50がない場合に、一次フロート部材70の重量(重量に対抗するためにこれらの条件下で比較的低い押上を有する)は、次いで、コイルばね80によって提供される付勢ばね力を克服し、これにより、一次フロート部材70が流体出口ポート24から離間して間隔を空けることが可能となり、フロート弁10を開放構成に戻して、燃料の漏出を可能にすることに留意されたい。
【0066】
図6は、図5のものと同様の状況を示しており、主な違いは、フロートチャンバ77が燃料Fで相当ではあるが部分的にしか充填されていないことである。図6に示す条件下で、それぞれの全浮力が補助フロート部材50に作用しているが、フロートチャンバ77内の燃料の液面は補助フロート部材50を上端壁75に当接させて付勢するには不十分であり、従って、これらの力をフロートチャンバ77に印加することはできない。他方、フロートチャンバ77がここで部分的に燃料で充填されているという事実により、ここで一次フロート部材70に作用する正味の浮力は、ここで前述の全浮力よりも小さいが、それでもなお、コイルばね80によって提供される付勢ばね力と結合された場合に一次フロート部材70の重量を克服するのに十分である。
【0067】
少なくともこの実施例において、フロート弁10は、補助フロート部材50を上端壁75と正に当接させるために必要な(しかし、まだ補助フロート部材50に作用する正味の押上をそれに伝達するのには十分ではない)フロートチャンバ77内の燃料の液面において、一次フロート部材70が依然として十分な正味の押上を提供することができ、その結果、コイルばね80によって提供される付勢ばね力と共に、フロート弁10が閉鎖構成に留まるように設計されている。フロートチャンバ77内の燃料のこの液面は、本明細書中で最小閾値レベルと称され、フロートチャンバ77内の気体の前述の閾捕捉体積は、この最小閾値レベルを超えるフロートチャンバ77内の空間の体積として定義することができ、すなわち、フロートチャンバ77内の最小閾値レベルと上壁75との間に囲まれている。
【0068】
更に、フロート弁10は、フロートチャンバ77内の燃料の液面が最小閾値レベルから更に増加し、それによって同時に一次フロート部材70に直接作用する押上を減少させるにつれて、補助フロート部材50が、補償するようその正味の押上を発生させ、一次フロート部材70に印加し、それによってフロート弁10が閉鎖構成に留まることを確実にするようにも設計されている。
【0069】
燃料Fがタンク16から圧送され始めるにつれて(例えば、エンジンを運転するために)、燃料レベルSFは「設計満タン」レベルDFTより下に降下し、フロート弁10が再度開放構成を採ることを可能にし、タンク16を通気することを可能にすることに留意されたい。
【0070】
更に、タンク16が満杯ではなく、燃料レベルSFが「設計満タン」レベルDFTを下回るが、それでもフロート弁10が燃料F内に完全又は部分的に沈むことになるような他の条件があることに留意されたい。かかる条件下で、フロート弁10は、それを通る燃料の漏出を防ぐよう動作する一方で、かかる状態が終了した場合に弁10がそれを通る燃料蒸気を排出することを可能にする。かかる条件は、フロート弁が直立構成にあるか、又はそれに対して閉じている他の状況を含むことができるか、又は、例えば、燃料タンクの傾斜(例えば、車両が上り坂又は下り坂を走行する)、又は燃料タンクの加速又は減速(すなわち、車両の加速又は減速)の結果として、又は、タンク内の燃料の液面に山と谷を生じさせるような、燃料がタンク内を移動している(例えば、液体スロッシングがタンク内で発生している)場合、ここで山はフロート弁のかかる液浸の原因となることを含むことができる。
【0071】
かかる条件において、フロート弁10が十分に沈み、燃料漏出を防ぐために出口ポート24を閉じる必要がある場合はいつでも、フロート弁10は以下の(a)又は(b)のどちらか一方に従って作動する。
(a)一次フロート部材70によって生成された正味の押上にコイルばね80によって提供される付勢ばね力を加えたものが、一次フロート部材70を上壁75に向かって付勢し、例えば、図4又は図6に示され、本明細書中で準用して説明されるフロート弁10の動作に対応するシール部材79と弁座22との間の封止係合を確実にするために十分である。
(b)一次フロート部材70によって生成された正味の押上にコイルばね80によって提供される付勢ばね力を加えたものが、一次フロート部材70を上壁75に向かって付勢するのに十分ではなく、例えば、フロートチャンバ77が空気又は燃料蒸気ではなく、燃料で充填され(又は、前述の閾捕捉体積よりもフロートチャンバ77内の空気/蒸気が少なく)、この場合、補助フロート部材50はその正味の押上を提供して一次フロート部材70を上壁75に向かって更に付勢し、これにより、例えば、図5に示され、本明細書中で説明されるフロート弁10の動作に対応するシール部材79と弁座22との間の封止係合を確実にする。
【0072】
フロート弁10がそれを通る燃料の漏出を防止するよう動作する一方で、かかる状態が終了した場合に弁10がそれを通して燃料蒸気を排出することを可能にするが、フロート弁は直立構成ではないが、むしろ反転構成又はそれに対して閉じる他のかかる条件が存在する。
【0073】
かかる状況の1つが横転である。図7を参照すると、この図は、例えば、タンクが設置されている車両の横転により、タンク16が反転している条件下で、フロート弁10の横転(又は反転)構成を示している。フロート弁10が完全又は部分的に反転しているこれらの条件下で、一次フロート部材70の重量は、コイルばね80によって提供される付勢ばね力と共に、同じ方向に沿って作用し、一次フロート部材70を流体出口ポート24に向かって急速に付勢し、それによって弾性シール部材79を弁座22と封止係合させる。一次フロート部材はここで部分的又は完全に反転しているため、フロートチャンバ77も燃料Fで充填することができ、従って、流体ポート出口24を更に高速に閉じるよう、一次フロート部材70を流体出口ポート24に向けて加速することを更に補助する可能性がある一次フロート部材70に作用する押上又は浮力を大幅に減少させることができることに留意されたい。
【0074】
これらの横転状態の下において、フロート弁10は閉鎖構成にあり、液体出口ポート24を介する燃料タンクからの液体燃料F又は燃料蒸気の放出を防いでいる。前述の横転構成におけるフロート弁10の動作は、タンク16内にどれだけの量の燃料Fが存在するかには依存せず、タンク16が燃料Fで一杯、部分的に一杯、又は空であるかどうかにかかわらず、流体出口ポート24を迅速に閉鎖することが可能であることに留意されたい。
【0075】
また、前述の横転構成において、正味の押上は、補助フロート部材50を上方向(すなわち、重力と反対の方向)に付勢するように、補助フロート部材50に作用し続け、従って、この構成において、補助フロート部材50をフロートチャンバ77に沿って上端壁75から離間する方向に変位させることも留意されたい。従って、横転構成において、補助フロート部材50に作用する正味の押上が一次フロート部材70に印加されず、そうでなければ、前述の横転構成において、フロート弁10を閉じるよう一次フロート部材70の動作を妨げる可能性がある。
【0076】
このようにして、フロート弁10はロールオーバー弁としても作動する。
【0077】
図10を参照すると、上記の実施例の他の変形例において、フロートチャンバ77は、内周壁62を介して内部フロートチャンバ68から分離された外側環状フロートチャンバ69に分割することができる。コイルばね80は、この内部フロートチャンバ68内に収容することができる一方で、補助フロート部材50は(例えば、図9(b)又は9(d)に示すような形で)環状フロートチャンバ69内で往復移動可能である。
【0078】
フロート弁10の第1の実施例の他の変形例を図11~15に示し、ここで、一次フロート部材70は、必要な変更を加えるが、一次フロート部材70’の上壁75に開口部74を有する同様のフロート部材70’と置き換えられ、図11~15の実施例におけるフロート弁は、概して、参照符号10’で示されている。
【0079】
開口部74は、一次フロート部材70’の向きにかかわらず、フロートチャンバ77と一次フロート部材70’の外側との間に開放流体連通を提供する。
【0080】
この実施例の他の変形例において、一次フロート部材70’は、代わりに、上壁75に1つを超える前記開口部74、及び/又は側壁72に1つ以上の開口部を有することができ、これらの開口部の各1つはフロートチャンバ77と一次フロート部材70’の外側との間に開放流体連通を提供している。
【0081】
従って、図11~15のフロート弁10’の実施例は、図1~7、10のフロート弁10の実施例とは、後者のフロートチャンバ77が少なくともある状況におけるある量の空気又は燃料蒸気を捕捉することができ、それによって正味の押上を提供するのに対して、前者において、それぞれのフロートチャンバ77は何れの空気又は燃料蒸気もその中に捕捉されることを許可しないといった点で主に異なる
【0082】
従って、図11~15の実施例の例において、それぞれのフロートチャンバ77は開口部74を介して通気され、従って、そうでなければ図1、2、3、4、6の実施例の捕捉された空気/蒸気の量によって提供される押上に対して何の寄与もなく、かかる捕捉された体積は図11~15の実施例の一次フロート部材77’内に存在しない。言い換えれば、一次フロート部材70’は常に通気されているので、フロートチャンバ77も直立構成において燃料Fで充填することができ、従って、一次フロート部材70と比較して、一次フロート部材70’に作用する押上又は浮力を大幅に減少させる。
【0083】
図11を参照すると、これは図1の構成に対応し、燃料SFの液面は入口ポート20の下にある。この位置において、一次フロート部材70’又は補助フロート部材50に作用する正味押上はない一方で、重力(重量)が一次フロート部材70’及び補助フロート部材50のそれぞれに作用する。更に、コイルばね80のばね付勢は、一次フロート部材70’に上向きの付勢ばね力、すなわち、重力と反対の方向に出口ポート24に向かう付勢力を印加するよう試みる。本明細書中でより明確となるように、この付勢力は、一次フロート部材70’の重量を克服するには不十分である。
【0084】
図12を参照すると、燃料レベルSFが入口ポート20を超えて上昇するにつれて、燃料はフロートチャンバ77に進入し始め、空気/燃料蒸気が開口部74を介してフロートチャンバ77から排出されるため、フロートチャンバ77内の燃料レベルは一次フロート部材70’の外側と同じように名目上上昇する。図12において、フロートチャンバ77内の燃料の液面は、補助フロート部材50が燃料上をここで自由に浮動するが、依然として上壁75から離間しており、従って上壁75と当接しないように、十分に上昇している。この構成において、出口ポート24は依然として開いており、フロート弁10’は開放構成にあり、更に、一次フロート部材70’は依然としてその最下位置にあり、ハウジング12の下端部14に着座している。
【0085】
図13を参照すると、燃料レベルSFが更に上昇するにつれて、自由に浮動する補助フロート部材50は最終的に上壁75に当接し、燃料レベルが更に上昇するにつれて、補助フロート部材50によって提供される押上が一次フロート部材70’に印加され、その後、燃料レベルと共に上昇し始め、その最下位置から離間して、ハウジング12の下端部14に着座する。
【0086】
図11~15の実施例において、コイルばね80は、補助フロート部材50によって提供される印加押上がない状態で、それによって提供される付勢ばね力がそれ自体によって一次フロート部材70’の重量を克服するのに不十分であるように設計されることに留意されたい。他方で、コイルばね80の付勢力は、補助フロート部材50によって提供される押し上げ力と共に、一次フロート部材70’の重量を克服し(フロート弁10’が直立構成にあり、補助フロート部材50が浮動し、一次フロート部材70’に当接する場合)、従って、一次フロート部材70’が出口ポート24に接近することを可能にする。この実施例において、一次フロート部材70’は、燃料内に部分的又は完全に沈んでいる場合、正味の押上を提供しないことに留意されたい。
【0087】
図14を参照すると、燃料SFの液面が更に増加するにつれて、一次フロート部材70’は、補助フラット部材50によって提供される押上にコイルばね80の付勢ばね力を加えたものを介して、フロートチャンバ77内で、最終的には一次フロート部材70’の最上位置まで上昇し、それによって弾性シール部材79を弁座22と封止係合させる。これらの条件下で、フロート弁10’は、流体出口24が閉じている閉鎖構成にあり、蒸気(並びに液体燃料F)はフロート弁10を介するタンク16の外側へのタンク16からの流出を防止している。
【0088】
図15を参照すると、この図は、例えば、タンクが設置されている車両の横転により、タンク16が反転している条件下で、フロート弁10の横転(又は反転)構成を示しており、図7の構成に対応している。フロート弁10’が完全又は部分的に反転しているこれらの条件下で、一次フロート部材70’の重量は、コイルばね80によって提供される付勢ばね力と共に、同じ方向に沿って作用し、一次フロート部材70’を流体出口ポート24に向かって急速に付勢し、それによって弾性シール部材79を弁座22と封止係合させる。
【0089】
これらの横転状態の下において、フロート弁10’は閉鎖構成にあり、液体出口ポート24を介する燃料タンクからの液体燃料F又は燃料蒸気の放出を防いでいる。前述の横転構成におけるフロート弁10’の動作は、タンク16内にどれだけの量の燃料Fが存在するかには依存せず、タンク16が燃料Fで一杯、部分的に一杯、又は空であるかどうかにかかわらず、流体出口ポート24を迅速に閉鎖することが可能であることに留意されたい。また、前述の横転構成において、正味の押上は、補助フロート部材50を上方向(すなわち、重力と反対の方向)に付勢するように、補助フロート部材50に作用し続け、従って、この構成において、補助フロート部材50をフロートチャンバ77に沿って上端壁75から離間する方向に変位させることも留意されたい。従って、横転構成において、補助フロート部材50に作用する正味の押上が一次フロート部材70’に印加されず、そうでなければ、前述の横転構成において、フロート弁10’を閉じるよう一次フロート部材70’の動作を妨げる可能性がある。
【0090】
従って、また図11~15の実施例においても、補助フロート部材50は、燃料表面SFに対する補助フロート部材50の向きにかかわらず、従って、フロート弁10’の向きにかかわらず、常に正味の押上(すなわち、補助フロート部材50の重量を超える押上又は浮力)を提供するよう構成される。これにより、燃料面に対する補助フロート部材50の向き(すなわち、例えば、直立又は反転されるかどうか)にかかわらず、従って、フロート弁10’の向きにかかわらず、補助フロート部材50が常に燃料面上を浮動することが保証される。
【0091】
対照的に、一次フロート部材70’は、浮動構成を有しておらず、フロート弁10’が燃料表面に対する一次フロート部材70’の向きにかかわらず(すなわち、例えば、直立又は反転にかかわらず)、従って、フロート弁10’の向きにかかわらず場合、正味の押上を提供せず、フロートチャンバ77はその内部に空気又は燃料蒸気を捕捉することができない。
【0092】
最後に、添付特許請求の範囲を通して用いられるような単語「備える」は、「含むがこれに限定されない」という意味に解釈されるべきであることに留意すべきである。
【0093】
現在開示されている主題に従って実施例を図示し、開示してきたが、現在開示されている主題の精神から逸脱することなく、多くの変更がそこで行われてもよいことは、正しく認識されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8(a)】
図8(b)】
図9(a)】
図9(b)】
図9(c)】
図9(d)】
図10
図11
図12
図13
図14
図15