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  • 特許-亜硝酸ナトリウムの透析中の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】亜硝酸ナトリウムの透析中の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/00 20060101AFI20230718BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230718BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230718BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
A61K33/00
A61K9/08
A61P9/12
A61P13/12
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2019548431
(86)(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 US2018021053
(87)【国際公開番号】W WO2018165098
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/468,857
(32)【優先日】2017-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511195448
【氏名又は名称】ホープ メディカル エンタープライズ インコーポレイテッド ディー.ビー.エー. ホープ ファーマシューティカルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】クライグ スヘルマン
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-003871(JP,A)
【文献】Nitric Oxide,2016年,Vol.58,pp.1-9
【文献】化学工学論文集,1989年,Vol.15, No.6,pp.1102-1108
【文献】Free Radical Biology and Medicine,2013年,Vol.58,pp.46-51
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液透析を受けている対象における、亜硝酸イオンの生理学的なレベル維持するための方法における使用のための亜硝酸ナトリウムを含む亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液であって、該方法が、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液が、約7.0超のpHを有する、前記亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液
【請求項2】
血液透析を受けている対象における、心筋梗塞予防するための方法における使用のための亜硝酸ナトリウムを含む亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液であって、該方法が、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液が、約7.0超のpHを有する、前記亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液
【請求項3】
血液透析を受けている対象における、突発性の心臓死予防するための方法における使用のための亜硝酸ナトリウムを含む亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液であって、該方法が、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液が、約7.0超のpHを有する、前記亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液
【請求項4】
血液透析を受けている対象における、脳卒中予防するための方法における使用のための亜硝酸ナトリウムを含む亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液であって、該方法が、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液が、約7.0超のpHを有する、前記亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液
【請求項5】
血液透析を受けている対象における、狭心症、脳血管攣縮、跛行、重症虚血肢、末梢血管疾患、及び鎌状赤血球クリーゼを含む組織虚血を特徴とする心血管系疾患予防するための方法における使用のための亜硝酸ナトリウムを含む亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液であって、該方法が、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液が、約7.0超のpHを有する、前記亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液
【請求項6】
血液透析を受けている対象における、高血圧症、肺高血圧症、及び腎性高血圧症予防するための方法における使用のための亜硝酸ナトリウムを含む亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液であって、該方法が、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液が、約7.0超のpHを有する、前記亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液
【請求項7】
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約1マイクロモル濃度以下である、請求項1~6のいずれか1項記載の亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液
【請求項8】
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約200ナノモル濃度~約500ナノモル濃度である、請求項1~6のいずれか1項記載の亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液
【請求項9】
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約300ナノモル濃度である、請求項1~6のいずれか1項記載の亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液
【請求項10】
前記亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約1マイクロモル濃度以下である、請求項1~9のいずれか1項記載の亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液
【請求項11】
前記亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約200ナノモル濃度~約500ナノモル濃度である、請求項1~9のいずれか1項記載の亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液
【請求項12】
前記亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約300ナノモル濃度である、請求項1~9のいずれか1項記載の亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液
【請求項13】
前記亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液のpHが、約7.3~約7.5である、請求項1~12のいずれか1項記載の亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液
【請求項14】
前記亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液のpHが、約7.4である、請求項1~12のいずれか1項記載の亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液
【請求項15】
前記対象が、慢性腎不全のヒトである、請求項1~14のいずれか1項記載の亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液
【請求項16】
前記対象が、急性腎不全のヒトである、請求項1~14のいずれか1項記載の亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液
【請求項17】
前記対象が、1週間あたり3~7回透析を受ける、請求項1~16のいずれか1項記載の亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液
【請求項18】
血液透析を受けている対象における亜硝酸イオンの生理学的なレベルを維持するための亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液を、透析装置と透析膜を有する透析器とを接続する透析液配管において作製するための方法であって:
スパイクされていない透析液を該透析装置から該透析液配管内へポンプで送り、該透析膜へと流すこと;及び
該スパイクされていない透析液が該透析装置から該透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液を、該透析液配管の該透析器との接続部より前の位置で該透析液配管に取り付けられた弁を通じて、該スパイクされていない透析液に添加すること、を含み、
該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含む、前記方法。
【請求項19】
血液透析を受けている対象における心筋梗塞を予防するための亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液を、透析装置と透析膜を有する透析器とを接続する透析液配管において作製するための方法であって:
スパイクされていない透析液を該透析装置から該透析液配管内へポンプで送り、該透析膜へと流すこと;及び
該スパイクされていない透析液が該透析装置から該透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液を、該透析液配管の該透析器との接続部より前の位置で該透析液配管に取り付けられた弁を通じて、該スパイクされていない透析液に添加すること、を含み、
該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含む、前記方法。
【請求項20】
血液透析を受けている対象における突発性の心臓死を予防するための亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液を、透析装置と透析膜を有する透析器とを接続する透析液配管において作製するための方法であって:
スパイクされていない透析液を該透析装置から該透析液配管内へポンプで送り、該透析膜へと流すこと;及び
該スパイクされていない透析液が該透析装置から該透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液を、該透析液配管の該透析器との接続部より前の位置で該透析液配管に取り付けられた弁を通じて、該スパイクされていない透析液に添加すること、を含み、
該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含む、前記方法。
【請求項21】
血液透析を受けている対象における脳卒中を予防するための亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液を、透析装置と透析膜を有する透析器とを接続する透析液配管において作製するための方法であって:
スパイクされていない透析液を該透析装置から該透析液配管内へポンプで送り、該透析膜へと流すこと;及び
該スパイクされていない透析液が該透析装置から該透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液を、該透析液配管の該透析器との接続部より前の位置で該透析液配管に取り付けられた弁を通じて、該スパイクされていない透析液に添加すること、を含み、
該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含む、前記方法。
【請求項22】
血液透析を受けている対象における狭心症、脳血管攣縮、跛行、重症虚血肢、末梢血管疾患、及び鎌状赤血球クリーゼを含む組織虚血を特徴とする心血管系疾患を予防するための亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液を、透析装置と透析膜を有する透析器とを接続する透析液配管において作製するための方法であって:
スパイクされていない透析液を該透析装置から該透析液配管内へポンプで送り、該透析膜へと流すこと;及び
該スパイクされていない透析液が該透析装置から該透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液を、該透析液配管の該透析器との接続部より前の位置で該透析液配管に取り付けられた弁を通じて、該スパイクされていない透析液に添加すること、を含み、
該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含む、前記方法。
【請求項23】
血液透析を受けている対象における高血圧症、肺高血圧症、及び腎性高血圧症を予防するための亜硝酸イオンでスパイクされた医薬透析液を、透析装置と透析膜を有する透析器とを接続する透析液配管において作製するための方法であって:
スパイクされていない透析液を該透析装置から該透析液配管内へポンプで送り、該透析膜へと流すこと;及び
該スパイクされていない透析液が該透析装置から該透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液を、該透析液配管の該透析器との接続部より前の位置で該透析液配管に取り付けられた弁を通じて、該スパイクされていない透析液に添加すること、を含み、
該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含む、前記方法。
【請求項24】
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、約3mg/L以下の亜硝酸ナトリウムを含む、請求項18~23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記水が、約2mg/L以下の亜硝酸イオンを含む、請求項18~23のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記スパイクされていない透析液が、前記透析液配管中を約500mL/分~約700mL/分の速度で流れる、請求項18~25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記スパイクされていない透析液が、前記透析液配管中を約600mL/分の速度で流れる、請求項18~25のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記弁を通じて前記スパイクされていない透析液に約100mL/時~約550mL/時の速度で添加される、請求項18~25のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記弁を通じて前記スパイクされていない透析液に約250mL/時の速度で添加される、請求項18~25のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本出願は、2017年3月8日に出願された米国仮特許出願第62/468,857号の優先権の利益を主張し、その内容は全体として参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
(分野)
本明細書で提供されるものは、血液透析を受けている対象において、亜硝酸イオンの生理学的なレベルを維持するための方法である。また、本明細書で提供されるものは、医薬として許容し得る亜硝酸ナトリウムを、血液透析を受けている対象に投与する方法である。
【背景技術】
【0003】
(背景)
慢性腎疾患(CKD)の患者は、腎機能の劣化を被っており、それは代謝老廃物の排泄の減少をもたらす。代謝老廃物の蓄積は、数日以内に生命を脅かすようになることもある。腎機能がほとんど又は全く残っていない患者は、「末期腎疾患」であるとみなされる。従って、そのような患者は、生き延びるために老廃物を排泄する代替手段を必要とする。透析は、後に廃棄されることとなる外部液体への、血液からの老廃物の移送を伴う老廃物を排泄する手段である(Am. J. Kidney Dis. 2002, 39(Suppl. 1), S1-266)。
【0004】
透析は、半透過性の「透析膜」で分離された2つの液体の間での溶質及び水の移動と定義される。血液透析においては、血液が透析膜の片側を流れ、透析液と呼ばれる水ベースの溶液が反対側を流れる。透析膜は、溶質が通過することができる細孔を含む。これら2つの液体中に存在する溶質の濃度は、浸透力のために、該溶質が高濃度液体から出て、透析膜細孔を通って、低濃度液体に入るように強いられるために、平衡化する。
【0005】
透析膜は、種々の細孔サイズで設計され、血液透析の間に通過することができる溶質を限定する。血液透析の間に、透析膜を通って拡散することができる小分子溶質の過度の量を血液から除去することが有害であることもある。
【0006】
血液は、亜硝酸イオン(nitrite)(NO2 -)などの低分子量の溶質を含有する。亜硝酸アニオンは、46ダルトンの分子量を有する。亜硝酸イオンは、ヒトにおける一酸化窒素の生理学的な供給源であることが確認されている(Gladwinの文献、PCT/US2004/021985、出願日2004年7月9日)。健康な個人の血液中の亜硝酸イオンの濃度は、約300ナノモル濃度である。
【0007】
米国医療機器振興協会(the Association for the Advancement of Medical Instrumentation; AAMI)は、透析に用いられる水の中の硝酸イオン含量の品質仕様限度を確立した(1リットルあたり最高で2mg、すなわち2ppm)(#ANSI/AAMI/ISO 13959:2009)。また、AAMIは、水中の硝酸イオン含量が、「カドミウム還元法」を用いて測定されるべきであると規定した。この方法では、試料が、粒状の銅-カドミウムが入ったカラムに通され、硝酸イオンが亜硝酸イオンに還元される。それに続き、分光計を用いて測定される色の濃いアゾ色素を生成するスルファニルアミドとのジアゾ化及びN-(1-ナフチル)-エチレンジアミン二塩酸塩とのカップリングによって、亜硝酸イオンが決定される(アメリカ合衆国環境保護庁のNational Environmental Methods Index. www.nemi.gov/methods/method_summary/5121でオンライン入手可能)。本試験法では、硝酸イオンと亜硝酸イオンとが区別されない。その代わりに、該試験法は、実際には、硝酸イオン及び亜硝酸イオン双方の測定である。従って、AAMIによって規定される試験法では、硝酸イオンと亜硝酸イオンとが区別されないために、AAMIの硝酸イオンの品質仕様は、透析に用いられる水の中の硝酸イオン及び亜硝酸イオンの和を限定している。従って、AAMIの硝酸イオンの品質仕様は、実際には、透析に用いられる水の中の硝酸イオン及び亜硝酸イオンの和の限度である。
【0008】
心筋梗塞は、減少した血中亜硝酸イオンレベルと関連づけられている(Kehmeierらの文献, Free Radic. Biol. Med. 2008, 44, 1945-1950)。心筋虚血においては、亜硝酸イオンは、一酸化窒素に還元される。一酸化窒素は、血管拡張剤であるために、亜硝酸イオンの一酸化窒素への還元は、虚血組織への血流を増加させることによって、心機能を保護する。亜硝酸イオンが、血液中で利用可能であり続ける限りは、該有益な作用が現われる。亜硝酸イオンの枯渇は、血管拡張を維持することができない場合の、組織虚血の梗塞への進行における寄与因子であろう(Landmesserらの文献, Curr. Opin. Cardiol. 2005, 20, 547-551)。
【0009】
心血管系疾患は、慢性血液透析を必要とする患者の全ての死のうちの半数超を占める(Goらの文献, N. Eng. J. Med. 2004, 351, 1296-1305)。透析治療から始まる12時間の期間において、突然死イベントのリスクが、1.7倍率増加した。突然死イベントは、透析処置それ自体の間及び治療後の双方で増加した(Bleyerらの文献, Kidney Int. 2006, 12, 2268-2273)。
【0010】
同時に、亜硝酸イオンの血漿濃度は、血液透析の初めの1時間に60%超低下し、4時間の血液透析セッションのその後の時間は顕著に低下したままとなる(Bryanらの文献, Free Radic. Biol. Med. 2013, 58, 46-51)。
【0011】
亜硝酸ナトリウムは、静脈内注射によって血液中に投与することができる;しかしながら、それは、透析患者で生理学的なレベルを維持するのに有効ではないであろう。これは、亜硝酸ナトリウムが、血液透析の間に急速に除去されるためである。現時点では、血液透析を受ける患者の血液中の亜硝酸イオンの生理学的なレベルを維持するための有効な方法はない。また、血液透析の間に亜硝酸ナトリウムを患者に投与するための満足な方法もない。
【発明の概要】
【0012】
(概要)
本開示は、血液透析を受けている対象において、亜硝酸イオンの生理学的なレベルを維持するための方法を提供する。本開示はまた、血液透析を受けている対象において、心筋梗塞、突発性の心臓死、脳卒中、心血管系疾患、高血圧症、肺高血圧症、及び/又は腎性高血圧症を予防するための方法を提供する。本開示はまた、血液透析を受けている対象において、亜硝酸ナトリウムを投与するための方法を提供する。
【0013】
ある実施態様において、本明細書で提供されるものは、血液透析を受けている対象において、亜硝酸イオンの生理学的なレベルを維持するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0014】
また、ある実施態様において、本明細書で提供されるものは、血液透析を受けている対象において、亜硝酸イオンの生理学的なレベルを維持するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液と透析中に接触させることを含み、スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0015】
また、ある実施態様において、本明細書で提供されるものは、透析を受けている対象において、心筋梗塞を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、該スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0016】
また、ある実施態様において、本明細書で提供されるものは、透析を受けている対象において、突発性の心臓死を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、該スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0017】
また、ある実施態様において、本明細書で提供されるものは、透析を受けている対象において、脳卒中を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、該スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0018】
また、ある実施態様において、本明細書で提供されるものは、透析を受けている対象において、狭心症、脳血管攣縮、跛行、重症虚血肢、末梢血管疾患、及び鎌状赤血球クリーゼを含む組織虚血を特徴とする心血管系疾患を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、該スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0019】
また、ある実施態様において、本明細書で提供されるものは、透析を受けている対象において、高血圧症、肺高血圧症、及び腎性高血圧症を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、該スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0020】
また、ある実施態様において、本明細書で提供されるものは、透析を受けている対象に亜硝酸ナトリウムを投与するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、該スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
(図面の簡単な説明)
図1図1は、透析液、患者の血液、及び亜硝酸ナトリウムを含む水溶液の流路の要素の概略図である。(10)透析装置;(20)酸濃縮溶液;(30)重炭酸塩濃縮溶液;(40)亜硝酸ナトリウムを含む水溶液;(50)亜硝酸ナトリウムを含む水溶液の流れ;(60)透析液配管;(70)弁;(80)透析器;(90)透析膜;(100)検出点透析膜「前」;(110)検出点透析膜「後」;(120)検出点「V」;(130)検出点「A」;(140)使用済み透析液。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(詳細な説明)
以下の詳細な説明は、限定する意味でとられるべきではなく、単に本明細書で提供される実施態様を説明する目的のためになされるものである。
【0023】
本明細書に記載される開示の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。
【0024】
通常、本明細書で使用される命名法、並びに本明細書に記載される無機化学、分析化学、有機化学、医薬品化学、及び薬理学の実験室的方法は、当該技術分野において周知かつ通常採用されるものである。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、概して、本件開示が属する分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語に複数の定義が存在する場合には、別段の記載がない限り、本セクションのものが優先される。
【0025】
「対象」という用語は、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、又はマウスを含むが、これらに限定されない動物を指す。「対象」及び「患者」という用語は、例えば、ヒト対象などの哺乳動物対象について本明細書において参照により互換的に使用される。一実施態様において、対象は、本明細書において提示される疾患、障害、又は疾病を有するか又はそのリスクがある。別の実施態様において、対象は、疾患、障害、又は疾病を有するか又はそのリスクがあり、該疾患、障害、もしくは疾病、又はその症状は、亜硝酸ナトリウムの投与によって治療、予防、又は改善することができる。別の実施態様において、対象は、定期的な血液透析を受けている末期腎疾患(ESRD)患者である。別の実施態様において、対象は、血液から老廃物を安全なレベルまで減少させるために透析を受けている腎臓の機能がいくらかあるか全くない患者である。別の実施態様において、血液透析を受けている対象における亜硝酸イオンの定常状態血漿及び唾液濃度は、約3~約5時間の血液透析の結果としてかなり減少する。別の実施態様において、対象は、正常な生理学的レベルに満たない亜硝酸イオンの血漿レベルを有する。
【0026】
「治療する」、「治療すること」、及び「治療」という用語は、障害、疾患、もしくは疾病、又は該障害、疾患、もしくは疾病に伴う症状のうちの1つ以上を軽減もしくは抑止すること;又は該障害、疾患、もしくは疾病の原因自体を軽減もしくは根絶させることを含むことが意味される。
【0027】
「予防する」、「予防すること」、及び「予防」という用語は、障害、疾患、もしくは疾病、及び/又はその付随する症状の発症を遅らせる及び/又は防止するか;対象が疾患を得てしまうのを阻止するか;又は対象が障害、疾患、又は疾病を得てしまうリスクを減少させる方法を含むことが意味される。
【0028】
一般に、従来の透析液は、最近特許を受けたものを含み、独占所有物であるかどうかを問わない、これまでに公知の任意の製剤として定義される。これらのうちの多くは、特定の種類の要求を満たすように特別に製剤化される。例えば、米国特許第6,436,969号は、AGE阻害剤を含有する組成物を開示し、米国特許第5,869,444号は、浸透圧的に有効なペプチドの混合物を含有する溶液を特許請求し、米国特許第6,306,836号及び第6,380,163号は、浸透圧バランスを達成するのにアミノ酸を利用する腹膜透析溶液を開示する。
【0029】
「重炭酸塩濃縮溶液」という用語は、重炭酸塩を含む水溶液、又は重炭酸塩とANSI/AAMI/ISO#13959:2009に記載される現行の血液透析水質基準を満たすか又は該基準を超える水(以下、「精製水」と呼ぶ)との混合物を指す。ミネソタ州ミネアポリスのMinntech Renal Systemsは、Centrisol(登録商標)重炭酸塩濃縮粉末MB-330を供給している。Centrisol(登録商標)重炭酸塩濃縮粉末45X MB-330の各包みには、約650グラムの重炭酸ナトリウムが入っている。袋の内容物が、精製水と混合され、約8リットルの透析液重炭酸塩濃縮溶液が作られる。
【0030】
「酸濃縮溶液」という用語は、酸を含む水溶液又は酸と精製水との混合物を指す。酸の代表例としては、塩酸、酢酸、クエン酸、及び過酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。ミネソタ州ミネアポリスのMinntech Renal Systemsは、Centrisol(登録商標)酸濃縮物45X SB-111を供給している。Centrisol(登録商標)酸濃縮粉末45Xの各包みには、酢酸イオン、重炭酸イオン、カルシウム、塩化物イオン、ブドウ糖、マグネシウム、及びカリウムが入っている。酸濃縮物の1体積部を、1.72体積部の適切に混合されたMB-330シリーズ重炭酸ナトリウム濃縮物及び42.28体積部の精製水と混合して、45体積部の透析溶液を調製すべきである。
【0031】
「透析装置」という用語は、体外回路及び透析液回路を備える機械である。体外回路には、配管、血液ポンプ、ヘパリンポンプ、腎臓、並びに血流、血圧、及び気泡のモニターがさらに含まれる。透析液回路には、透析液配管、透析液ポンプ、並びに透析液流、透析液圧力、及び気泡のモニターがさらに含まれる。現在、透析装置は、酸濃縮溶液、重炭酸塩濃縮溶液、及び精製水を特定の比率で混合して透析液を生じさせる自動配分システムを利用する。透析液濃縮溶液(酸及び重炭酸塩)は、通常、大型の貯留タンク内の精製水に添加される予混合粉末として(重炭酸塩粉末として)か又はそのまま使用できる溶液として(酸濃縮物として)のいずれかで、製造業者によって供給される。該透析液濃縮溶液は、透析装置のチャンバー内にポンプで送られ、そこで、それらは精製水と混合されて、透析液が作られる。
【0032】
「透析液配管」という用語は、透析装置及び透析器を接続する配管を指す。
【0033】
「透析器」という用語は、酢酸セルロース、キュプラファン(cupraphane)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、又はポリスルホンを含むが、これらに限定されない、化学材料製の合成又は半合成の半透膜(以下、「透析膜」と呼ぶ)を備える人工腎臓を含むことを意図している。膜の一方の側での一定の血液の流れ及び他方の側での透析液は、血液中の老廃物の除去を可能とする。人工腎臓を使用して、血液透析を行うことができ、その間では、拡散が溶質除去の主要な機構である。他方、血液濾過(血液透析濾過及び透析濾過とも呼ばれる)は、拡散よりもむしろ限外濾過及び対流輸送に基づいて、高空隙率の半透膜の反対側へ溶質を移動させる。
【0034】
「スパイクされていない透析液」という用語は、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、弁を通じて透析液配管に添加される前の、透析装置によって混合され、透析液配管内へポンプで送られ、透析膜へと流れる透析溶液を指す。
【0035】
「亜硝酸イオンでスパイクされた透析液」という用語は、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、弁を通じて透析液配管に添加された後の透析液配管内の透析溶液を指す。
【0036】
「治療有効量」という用語は、投与された場合に、治療中の障害、疾患、又は疾病の症状のうちの1つ以上の発生を予防するか、又はそれをある程度軽減するのに十分な化合物の量を含むことを意図している。また、「治療有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師、又は臨床医が求めている細胞、組織、系、動物、又はヒトの生物学的又は医学的な反応を誘発するのに十分な化合物の量も指す。一実施態様において、治療有効量は、対象の亜硝酸イオンの血中レベルを、おおよそ生理学的なレベルに維持するのに十分な量である。
【0037】
「約」又は「おおよそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値についての許容し得る誤差を意味し、これは、一つには、どのように該値が測定又は決定されるかによって決まる。ある実施態様において、「約」又は「おおよそ」という用語は、1、2、3、又は4標準偏差以内を意味する。ある実施態様において、「約」又は「おおよそ」という用語は、所与の値又は範囲の15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、又は0.05%以内を意味する。ある実施態様において、「約」又は「おおよそ」という用語が前についた値が、正確なものであることが考えられる。
【0038】
亜硝酸イオンの「正常な生理学的レベル」という用語は、健康な成人対象でみられる亜硝酸イオンのレベルを意味する。一実施態様において、対象における亜硝酸イオンの正常な生理学的なレベルは、約300ナノモル濃度である。
【0039】
(亜硝酸ナトリウム)
ある実施態様において、本明細書で提供される方法は、亜硝酸のモノナトリウム塩としても知られる、亜硝酸ナトリウム(NaNO2)の精製された形態の使用を含む。一実施態様において、本明細書で提供されるものは、医薬として許容し得る亜硝酸ナトリウムである。別の実施態様において、本明細書で提供されるものは、医薬における使用のための亜硝酸ナトリウムのFDA標準のうちの1つ、2つ以上、又は全てを満たす亜硝酸ナトリウムの形態である。一実施態様において、医薬として許容し得る亜硝酸ナトリウムは、その全体が引用により本明細書に組み込まれる、2010年2月10日に出願された米国特許公開公報第2010/0203172号に開示されているものである。
【0040】
一実施態様において、医薬として許容し得る亜硝酸ナトリウムは、白色からオフホワイトの固体である。
【0041】
一実施態様において、医薬として許容し得る亜硝酸ナトリウムは、米国薬局方XXXII(2009)の方法<191>により決定されるナトリウムの確認試験が陽性である。
【0042】
一実施態様において、医薬として許容し得る亜硝酸ナトリウムは、米国薬局方XXXII(2009)の方法<191>により決定される亜硝酸イオンの確認試験が陽性である。
【0043】
一実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約97重量%以上かつ/又は約101重量%以下の亜硝酸ナトリウムを含有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の亜硝酸ナトリウムの量は、米国薬局方比色アッセイ(米国薬局方XXXII(2009))により決定される。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の亜硝酸ナトリウムの量は、イオンクロマトグラフィーによって決定される。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の亜硝酸ナトリウムの量は、本明細書に記載されるようなサプレッサー付き電気伝導度検出と連結されたイオンクロマトグラフィーによって決定される。
【0044】
別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、10%溶液中25℃で測定される場合に、約7~約9のpHを有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムのpHは、pH計を用いて測定される。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムのpHは、米国薬局方XXXII(2009)の方法791により決定される。
【0045】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約0.25重量%以下の乾燥減量を有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムの乾燥減量は、米国薬局方XXXII(2009)の方法731により定量化される。
【0046】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約0.5重量%以下の含水量を有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の含水量は、カールフィッシャー法によって決定される。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の含水量は、米国薬局方XXXII(2009)の方法921により定量化される。
【0047】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の重金属含量は、約10ppm以下の重金属である。本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の重金属含量は、米国薬局方XXXII(2009)の方法231により決定される。
【0048】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約0.4重量%以下の硝酸ナトリウムを含有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の硝酸ナトリウムの量は、本明細書に記載されるようなサプレッサー付き電気伝導度検出と連結されたイオンクロマトグラフィー法によって決定される。
【0049】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約0.02重量%以下の炭酸ナトリウムを含有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の炭酸ナトリウムの量は、試料を酸と混合して炭酸イオンを二酸化炭素へと変換し、測定のために二酸化炭素を非分散型赤外線検出器に逃がすことによって決定される。
【0050】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約0.005重量%以下の不溶物を含有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の不溶物質の量は、10グラムの本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムを100mLの水に溶解させることによって決定され、該溶液は、1時間沸騰まで加熱され、該溶液は、濾過され、温水で洗浄され、乾燥され、デシケーター内で冷却され、秤量される。
【0051】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約0.005重量%以下の塩化物イオンを含有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の塩化物イオン含量は、米国薬局方XXXII(2009)の方法221により決定される。
【0052】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約0.01重量%以下の硫酸イオンを含有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の硫酸イオン含量は、米国薬局方XXXII(2009)の方法221により決定される。
【0053】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約0.001重量%以下の鉄を含有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の鉄含量は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を用いて決定される。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の鉄含量は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)を用いて決定される。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の鉄含量は、米国薬局方XXXII(2009)の方法241により決定される。
【0054】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約0.01重量%以下のカルシウムを含有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中のカルシウム含量は、ICP-MSを用いて決定される。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中のカルシウム含量は、フレーム発光分光分析(FES)を用いて決定される。
【0055】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約0.005重量%以下のカリウムを含有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中のカリウム含量は、ICP-MSを用いて決定される。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中のカリウム含量は、FESを用いて決定される。
【0056】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約10ppm以下、約100ppm以下、約500ppm以下、約1000ppm以下、又は5000ppm以下のエタノールを含有する。ある実施態様において、有機揮発性不純物の含量は、米国薬局方XXXII(2009)の方法467により決定される。
【0057】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約10ppm以下、約100ppm以下、約500ppm以下、約1000ppm以下、又は3000ppm以下のメタノールを含有する。ある実施態様において、有機揮発性不純物の含量は、米国薬局方XXXII(2009)の方法467により決定される。
【0058】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約2.5ppm以下、約6ppm以下、約8ppm以下、約10ppm以下、約20ppm以下、約25ppm以下、又は約50ppm以下の総不揮発性有機炭素を含有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約10ppm以下の総不揮発性有機炭素(non-volatile organic carbon NVOC)又は等価である除去不能有機炭素(non-purgeable organic carbon; NPOC)を含有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約7.9ppm以下の総不揮発性有機炭素を含有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約5.6ppm以下の総不揮発性有機炭素を含有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の総不揮発性有機炭素は、本明細書に記載される方法を用いて決定される。
【0059】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約0.05ppm以下の水銀を含有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の水銀含量は、ICP-MSを用いて決定される。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の水銀含量は、ICP-OESを用いて決定される。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の水銀含量は、米国薬局方XXXII(2009)の方法261により決定される。
【0060】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約2ppm以下のアルミニウムを含有する。さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約0.2ppm以下のアルミニウムを含有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中のアルミニウム含量は、ICP-MSを用いて決定される。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中のアルミニウム含量は、ICP-OESを用いて決定される。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中のアルミニウム含量は、米国薬局方XXXII(2009)の方法206により決定される。
【0061】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約3ppm以下のヒ素を含有する。さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約1ppm以下のヒ素を含有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中のヒ素含量は、ICP-MSを用いて決定される。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中のヒ素含量は、ICP-OESを用いて決定される。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中のヒ素含量は、米国薬局方XXXII(2009)の方法211により決定される。
【0062】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約10ppm(0.001重量%)以下の固化防止剤を含有する。ある実施態様において、該固化防止剤は、アルキル-ナフタレンスルホン酸ナトリウムである。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中のアルキル-ナフタレンスルホン酸ナトリウムの量は、本明細書に記載されるような質量分析及び液体クロマトグラフィー法を用いて定量化される。
【0063】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約0.003重量%以下のセレンを含有する。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中のセレン含量は、ICP-MSを用いて決定される。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中のセレン含量は、ICP-OESを用いて決定される。ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中のセレン含量は、米国薬局方XXXII(2009)の方法291により決定される。
【0064】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の微生物負荷の総好気性菌数は、約100CFU/g以下である。本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の微生物負荷の総好気性菌数は、米国薬局方XXXII(2009)の方法61により定量化される。
【0065】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の総酵母・カビ数は、約20CFU/g以下である。本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の総酵母・カビ数は、米国薬局方XXXII(2009)の方法61により定量化される。
【0066】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、約0.25EU/mg以下の菌体内毒素を含有する。本明細書で提供される亜硝酸ナトリウム中の菌体内毒素の量は、米国薬局方XXXII(2009)の方法85により定量化される。
【0067】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、以下のこと:
米国薬局方比色アッセイ(米国薬局方XXXII(2009))により約97重量%以上かつ/又は約101重量%以下である亜硝酸ナトリウムを含有すること;
ナトリウムの確認試験が陽性であること;
亜硝酸イオンの確認試験が陽性であること;
10%溶液中25℃で測定される場合に約7~約9のpHを有すること;
約0.25重量%以下の乾燥減量を有すること;
約0.5重量%以下の含水量を有すること;
約10ppm以下の重金属含量を有すること;
約0.4重量%以下の硝酸ナトリウムを含有すること;
約0.02重量%以下の炭酸ナトリウムを含有すること;
約0.005重量%以下の不溶物を含有すること;
約0.005重量%以下の塩化物イオンを含有すること;
約0.01重量%以下の硫酸イオンを含有すること;
約0.001重量%以下の鉄を含有すること;
約0.01重量%以下のカルシウムを含有すること;
約0.005重量%以下のカリウムを含有すること;
約0.1重量%以下のエタノール、又は約10ppm以下、約100ppm以下、約500ppm以下、約1000ppm以下、又は5000ppm以下のエタノールを含有すること;
約10ppm以下、約100ppm以下、約500ppm以下、約1000ppm以下、又は3000ppm以下のメタノールを含有すること;
約2.5ppm以下、約5.6ppm以下、約6ppm以下、約7.9ppm以下、約8ppm以下、約10ppm以下、約20ppm以下、約25ppm以下、又は約50ppm以下の;また、一実施態様において、約10ppm以下の総不揮発性有機炭素又は等価物を有すること;
約0.05ppm以下の水銀を含有すること;
約2ppm以下のアルミニウムを含有すること;
約3ppm以下のヒ素を含有すること;
約10ppm以下の固化防止剤を含有すること;
約0.003%(ICP-OES又は同等品)以下のセレンを含有すること;
約100CFU/g以下の微生物負荷の総好気性菌数を有すること;
約20CFU/g以下の総酵母・カビ数を有すること;
約0.25EU/mg以下の菌体内毒素を含有すること;
のうちの1つ以上を特徴とする。
【0068】
一実施態様において、本明細書で提供されるものは、本明細書において言及された特徴のうちの1つ以上を有する亜硝酸ナトリウムである。
【0069】
(亜硝酸イオンの生理学的なレベルを維持する方法)
本明細書で提供されるものは、血液透析を受けている対象において、亜硝酸イオンの生理学的なレベルを維持するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0070】
また、本明細書で提供されるものは、血液透析を受けている対象において、亜硝酸イオンの生理学的なレベルを維持するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液と透析中に接触させることを含み、スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0071】
一実施態様において、前記対象は、哺乳動物である。別の実施態様において、前記対象は、ヒトである。
【0072】
一実施態様において、前記対象における亜硝酸イオンの生理学的なレベルは、約1マイクロモル濃度以下である。別の実施態様において、前記対象における亜硝酸イオンの生理学的なレベルは、約100ナノモル濃度~約700ナノモル濃度である。さらに別の実施態様において、前記対象における亜硝酸イオンの生理学的なレベルは、約200ナノモル濃度~約500ナノモル濃度である。さらに別の実施態様において、前記対象における亜硝酸イオンの生理学的なレベルは、約250ナノモル濃度~約400ナノモル濃度である。さらに別の実施態様において、前記対象における亜硝酸イオンの生理学的なレベルは、約300ナノモル濃度である。
【0073】
一実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度は、約1マイクロモル濃度以下である。別の実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度は、約100ナノモル濃度~約700ナノモル濃度である。さらに別の実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度は、約200ナノモル濃度~約500ナノモル濃度である。さらに別の実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度は、約250ナノモル濃度~約400ナノモル濃度である。さらに別の実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度は、約300ナノモル濃度である。
【0074】
ある実施態様において、前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液は、約1mg/L、約2mg/L、約3mg/L、約4mg/L、約5mg/L、約6mg/L、約7mg/L、約8mg/L、約9mg/L、又は約10mg/L以下の亜硝酸ナトリウムを含む。
【0075】
ある実施態様において、前記水は、約1mg/L、約2mg/L、約3mg/L、約4mg/L、約5mg/L、約6mg/L、約7mg/L、約8mg/L、約9mg/L、又は約10mg/L以下の亜硝酸イオンを含む。
【0076】
一実施態様において、透析液配管が前記透析器に接続する前の位置で該配管に取り付けられた弁を通じて、前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記スパイクされていない透析液に添加される。別の実施態様において、前記スパイクされていない透析液は、前記透析配管を約200mL/分~約1000mL/分の速度で流れる。さらに別の実施態様において、前記スパイクされていない透析液は、前記透析配管を約300mL/分~約900mL/分の速度で流れる。さらに別の実施態様において、前記スパイクされていない透析液は、前記透析配管を約400mL/分~約800mL/分の速度で流れる。さらに別の実施態様において、前記スパイクされていない透析液は、前記透析配管を約500mL/分~約700mL/分の速度で流れる。さらに別の実施態様において、前記スパイクされていない透析液は、前記透析配管を約600mL/分の速度で流れる。
【0077】
一実施態様において、前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液は、前記弁を通じて前記スパイクされていない透析液に、約0mL/時~約750ml/時の速度でか、約50mL/時~約650mL/時の速度でか、約100ml/時~約550mL/時の速度でか、約150mL/時~約450ml/時の速度でか、又は約200mL/時~約350mL/時の速度で添加される。別の実施態様において、前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液は、前記弁を通じて前記スパイクされていない透析液に、約250mL/時の速度で添加される。
【0078】
さらに別の実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHは、約7.0~約8.0である。さらに別の実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHは、約7.1~約8.0である。さらに別の実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHは、約7.3~約8.0である。さらに別の実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHは、約7.3~約7.5である。さらに別の実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHは、約7.4である。
【0079】
さらに別の実施態様において、前記対象は、慢性腎不全のヒトである。別の実施態様において、前記対象は、急性腎不全のヒトである。
【0080】
さらに別の実施態様において、前記対象は、血液透析を1週間あたり1~10回受ける。さらに別の実施態様において、前記対象は、血液透析を1週間あたり3~7回受ける。
【0081】
ある実施態様において、本明細書で提供される方法は、対象の亜硝酸イオンの血漿レベルを正常な生理学的レベルに戻しかつ/又は維持する。
【0082】
(予防の方法)
(1.心筋梗塞を予防する方法)
ある実施態様において、本明細書で提供されるものは、透析を受けている対象において、心筋梗塞を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0083】
ある実施態様において、本明細書においてさらに提供されるものは、血液透析を受けている対象において、心筋梗塞を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液と透析中に接触させることを含み、スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0084】
一実施態様において、前記対象は、哺乳動物である。別の実施態様において、前記対象は、ヒトである。
【0085】
ある実施態様において、本明細書で提供される方法は、対象の亜硝酸イオンの血漿レベルを正常な生理学的レベルに戻しかつ/又は維持する。
【0086】
(2.突発性の心臓死を予防する方法)
ある実施態様において、本明細書で提供されるものは、透析を受けている対象において、突発性の心臓死を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、該スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0087】
ある実施態様において、本明細書においてさらに提供されるものは、血液透析を受けている対象において、突発性の心臓死を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液と透析中に接触させることを含み、スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0088】
一実施態様において、前記対象は、哺乳動物である。別の実施態様において、前記対象は、ヒトである。
【0089】
ある実施態様において、本明細書で提供される方法は、対象の亜硝酸イオンの血漿レベルを正常な生理学的レベルに戻しかつ/又は維持する。
【0090】
(3.脳卒中を予防する方法)
ある実施態様において、本明細書で提供されるものは、透析を受けている対象において、脳卒中を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、該スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0091】
ある実施態様において、本明細書においてさらに提供されるものは、血液透析を受けている対象において、脳卒中を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液と透析中に接触させることを含み、スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0092】
一実施態様において、前記対象は、哺乳動物である。別の実施態様において、前記対象は、ヒトである。
【0093】
ある実施態様において、本明細書で提供される方法は、対象の亜硝酸イオンの血漿レベルを正常な生理学的レベルに戻しかつ/又は維持する。
【0094】
(4.心血管系疾患を予防する方法)
ある実施態様において、本明細書で提供されるものは、透析を受けている対象において、狭心症、脳血管攣縮、跛行、重症虚血肢、末梢血管疾患、及び鎌状赤血球クリーゼを含む組織虚血を特徴とする心血管系疾患を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、該スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0095】
ある実施態様において、本明細書においてさらに提供されるものは、透析を受けている対象において、狭心症、脳血管攣縮、跛行、重症虚血肢、末梢血管疾患、及び鎌状赤血球クリーゼを含む組織虚血を特徴とする心血管系疾患を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液と透析中に接触させることを含み、スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0096】
一実施態様において、前記対象は、哺乳動物である。別の実施態様において、前記対象は、ヒトである。
【0097】
ある実施態様において、本明細書で提供される方法は、対象の亜硝酸イオンの血漿レベルを正常な生理学的レベルに戻しかつ/又は維持する。
【0098】
(5.高血圧症、肺高血圧症、及び腎性高血圧症を予防する方法)
ある実施態様において、本明細書で提供されるものは、透析を受けている対象において、高血圧症、肺高血圧症、及び腎性高血圧症を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、該スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0099】
ある実施態様において、本明細書においてさらに提供されるものは、透析を受けている対象において、高血圧症、肺高血圧症、及び腎性高血圧症を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液と透析中に接触させることを含み、スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0100】
ある実施態様において、前記肺高血圧症は、新生児肺高血圧症、原発性肺高血圧症、又は続発性肺高血圧症である。
【0101】
一実施態様において、前記対象は、哺乳動物である。別の実施態様において、前記対象は、ヒトである。
【0102】
ある実施態様において、本明細書で提供される方法は、対象の亜硝酸イオンの血漿レベルを正常な生理学的レベルに戻しかつ/又は維持する。
【0103】
ある実施態様において、[0103]~[0112]段落の実施態様が、本明細書で提供される全ての方法に適用される。
【0104】
一実施態様において、前記対象における亜硝酸イオンの生理学的なレベルは、約1マイクロモル濃度以下である。別の実施態様において、前記対象における亜硝酸イオンの生理学的なレベルは、約100ナノモル濃度~約700ナノモル濃度である。さらに別の実施態様において、前記対象における亜硝酸イオンの生理学的なレベルは、約200ナノモル濃度~約500ナノモル濃度である。さらに別の実施態様において、前記対象における亜硝酸イオンの生理学的なレベルは、約250ナノモル濃度~約400ナノモル濃度である。さらに別の実施態様において、前記対象における亜硝酸イオンの生理学的なレベルは、約300ナノモル濃度である。
【0105】
一実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度は、約1マイクロモル濃度以下である。別の実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度は、約100ナノモル濃度~約700ナノモル濃度である。さらに別の実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度は、約200ナノモル濃度~約500ナノモル濃度である。さらに別の実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度は、約250ナノモル濃度~約400ナノモル濃度である。さらに別の実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度は、約300ナノモル濃度である。
【0106】
ある実施態様において、前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液は、約1mg/L、約2mg/L、約3mg/L、約4mg/L、約5mg/L、約6mg/L、約7mg/L、約8mg/L、約9mg/L、又は約10mg/L以下の亜硝酸イオンを含む。
【0107】
ある実施態様において、前記水は、約1mg/L、約2mg/L、約3mg/L、約4mg/L、約5mg/L、約6mg/L、約7mg/L、約8mg/L、約9mg/L、又は約10mg/L以下の亜硝酸イオンを含む。
【0108】
一実施態様において、透析液配管が前記透析器に接続する前の位置で該配管に取り付けられた弁を通じて、前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記スパイクされていない透析液に添加される。別の実施態様において、前記スパイクされていない透析液は、前記透析配管を約200mL/分~約1000mL/分の速度で流れる。さらに別の実施態様において、前記スパイクされていない透析液は、前記透析配管を約300mL/分~約900mL/分の速度で流れる。さらに別の実施態様において、前記スパイクされていない透析液は、前記透析配管を約400mL/分~約800mL/分の速度で流れる。さらに別の実施態様において、前記スパイクされていない透析液は、前記透析配管を約500mL/分~約700mL/分の速度で流れる。さらに別の実施態様において、前記スパイクされていない透析液は、前記透析配管を約600mL/分の速度で流れる。
【0109】
一実施態様において、前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液は、前記弁を通じて前記スパイクされていない透析液に、約0mL/時~約750ml/時の速度でか、約50mL/時~約650mL/時の速度でか、約100ml/時~約550mL/時の速度でか、約150mL/時~約450mL/時の速度でか、又は約200ml/時~約350mL/時の速度で添加される。別の実施態様において、前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液は、前記弁を通じて前記スパイクされていない透析液に、約250ml/時の速度で添加される。
【0110】
さらに別の実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHは、約7.0~約8.0である。さらに別の実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHは、約7.1~約8.0である。さらに別の実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHは、約7.3~約8.0である。さらに別の実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHは、約7.3~約7.5である。さらに別の実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHは、約7.4である。
【0111】
さらに別の実施態様において、前記対象は、慢性腎不全のヒトである。別の実施態様において、前記対象は、急性腎不全のヒトである。
【0112】
さらに別の実施態様において、前記対象は、血液透析を1週間あたり1~10回受ける。さらに別の実施態様において、前記対象は、血液透析を1週間あたり3~7回受ける。
【0113】
一実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液は、検出点「前」(100)又は検出点「後」(110)から採取した試料中に測定される硝酸イオン含量に反映される、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、約0.4%、又は約0.1%未満の亜硝酸イオンの分解を受ける。
【0114】
(投与の方法)
ある実施態様において、本明細書で提供されるものは、透析を受けている対象に亜硝酸ナトリウムを投与するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、該スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0115】
ある実施態様において、本明細書においてさらに提供されるものは、亜硝酸ナトリウムを投与するための方法であって、血液透析を受けている対象に、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液と透析中に接触させることを含み、スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法である。
【0116】
一実施態様において、前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液は、検出点「前」(100)又は検出点「後」(110)から採取した試料中に測定される硝酸イオン含量に反映される、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、約0.4%、又は約0.1%未満の亜硝酸イオンの分解を受ける。
【0117】
(併用療法)
ある実施態様において、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムを、本明細書において提示される疾患及び疾病の治療及び/又は予防に有用な別の治療薬剤と組み合わせるか、又はそれと組み合わせて用いてもよい。
【0118】
本明細書で使用される、「組み合わせて」という用語は、2種以上の療法(例えば、1種以上の予防及び/又は治療薬剤)の使用を含む。しかしながら、「組み合わせて」という用語の使用は、療法(例えば、予防及び/又は治療薬剤)が、疾患又は障害を有する対象に投与される順序を限定しない。第1の療法(例えば、本明細書で提供される化合物などの予防又は治療薬剤)は、対象への第2の療法(例えば、予防又は治療薬剤)の実施の前に(例えば、約5分、約15分、約30分、約45分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約12時間、約24時間、約48時間、約72時間、約96時間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約8週間、又は約12週間前に)か、それと同時にか、又はその後に(例えば、約5分、約15分、約30分、約45分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約12時間、約24時間、約48時間、約72時間、約96時間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約8週間、又は約12週間後)投与することができる。3剤併用療法もまた、本明細書で想定される。
【0119】
本明細書で使用される、「相乗作用の」という用語は、本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムと、疾患又は障害を治療、予防、又は管理するのに用いられてきたか、又は現在用いられている別の療法(例えば、予防又は治療薬剤)との組合せであって、該療法の相加効果よりも効果的であるものを含む。療法の組合せ(例えば、予防又は治療薬剤の組合せ)の相乗効果は、障害を有する対象への、該療法のうちの1つ以上のより少ない投薬量の使用及び/又は該療法のより頻度の低い実施を可能とする。より少ない投薬量の療法(例えば、予防又は治療薬剤)を利用できること及び/又は該療法をより低頻度で実施できることは、障害の予防又は治療での該療法のエフィカシーを低下させることなく、対象への該療法の実施に伴う毒性を減少させる。加えて、相乗効果は、障害の予防又は治療において薬剤の向上したエフィカシーをもたらすこともある。最後に、療法の組合せ(例えば、予防又は治療薬剤の組合せ)の相乗効果によって、いずれかの療法単独での使用に伴う有害な又は望まれない副作用が回避又は減少され得る。
【0120】
本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、別の治療薬剤と組み合わせてか又はそれと交互に投与することができる。併用療法では、2種以上の薬剤の有効投薬量が、一緒に投与されるが、交互又は逐次段階療法では、各薬剤の有効投薬量が、連続的にか又は順次投与される。与えられる投薬量は、該薬物の吸収速度、不活性化速度、及び排泄速度、並びに当業者に公知の他の因子次第で決まるものである。投薬量の値が、軽減されるべき疾病の重症度によっても異なるものであることに留意すべきである。いかなる特定の対象に対しても、具体的な投薬計画及びスケジュールが、個々の必要性及び該組成物を投与するか該組成物の投与を監督する者の専門的な判断に応じて経時的に調整されるべきであることをさらに理解すべきである。
【0121】
本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、エンドセリン変換酵素(ECE)阻害剤、例えば、ホスホラミドン;トロンボキサン受容体アンタゴニスト、例えば、イフェトロバン;カリウムチャネル開口薬;トロンビン阻害剤、例えば、ヒルジン;増殖因子阻害剤、例えば、PDGF活性のモジュレーター;血小板活性化因子(PAF)アンタゴニスト;抗血小板剤、例えば、GPIIb/IIIaブロッカー(例えば、アブシキシマブ、エプチフィバチド、及びチロフィバン)、P2Y(AC)アンタゴニスト(例えば、クロピドグレル、チクロピジン、及びCS-747)、及びアスピリン;抗凝血剤、例えば、ワルファリン;低分子量ヘパリン、例えば、エノキサパリン;第VIIa因子阻害剤及び第Xa因子阻害剤;レニン阻害剤;中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害剤;バソペプチダーゼ阻害剤(NEP-ACE二重阻害剤)、例えば、オマパトリラト及びゲモパトリラト;HMG CoA還元酵素阻害剤、例えば、プラバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、NK-104(別名:イタバスタチン、ニスバスタチン(nisvastatin)、又はニスバスタチン(nisbastatin))、及びZD-4522(別名:ロスバスタチン、アタバスタチン、又はビサスタチン);スクアレンシンテターゼ阻害剤;フィブラート;胆汁酸捕捉剤、例えば、クエストラン;ナイアシン;抗アテローム硬化剤、例えば、ACAT阻害剤;MTP阻害剤;カルシウムチャネルブロッカー、例えば、ベシル酸アムロジピン;カリウムチャネルアクチベーター;アルファ-アドレナリン作用薬;ベータ-アドレナリン作用薬、例えば、カルベジロール及びメトプロロール;抗不整脈剤;利尿薬、例えば、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、フルメチアジド、ヒドロフルメチアジド、ベンドロフルメチアジド、メチルクロロチアジド、トリクロロメチアジド、ポリチアジド、ベンゾチアジド、エタクリン酸、チクリナフェン、クロルタリドン、フロセニド(furosenide)、ムゾリミン、ブメタニド、トリアムテレン、アミロライド、及びスピロノラクトン;血栓溶解剤、例えば、組織型プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、組換えtPA、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、及びアニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼアクチベーター複合体(APSAC);抗糖尿病剤、例えば、ビグアナイド(例えば、メトホルミン)、グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース)、インスリン、メグリチニド(例えば、レパグリニド)、スルホニル尿素(例えば、グリメピリド、グリブリド、及びグリピジド)、チオゾリジンジオン(thiozolidinedione)(例えば、トログリタゾン、ロシグリタゾン、及びピオグリタゾン)、及びPPAR-ガンマアゴニスト;鉱質コルチコイド受容体アンタゴニスト、例えば、スピロノラクトン及びエプレレノン;成長ホルモン分泌促進因子;aP2阻害剤;ホスホジエステラーゼ阻害剤、例えば、PDE III阻害剤(例えば、シロスタゾール)及びPDE V阻害剤(例えば、シルデナフィル、タダラフィル、及びバルデナフィル);タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤;抗炎症薬;抗増殖薬、例えば、メトトレキサート、FK506(タクロリムス)、ミコフェノール酸モフェチル;化学療法剤;免疫抑制剤;抗癌剤及び細胞傷害性剤(例えば、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、エチレンイミン、及びトリアゼンなどのアルキル化剤);代謝拮抗物質、例えば、葉酸アンタゴニスト、プリン類似物、及びピリミジン類似物;抗生物質、例えば、アントラサイクリン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ダクチノマイシン、及びプリカマイシン;酵素、例えば、L-アスパラギナーゼ;ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ホルモン剤、例えば、グルココルチコイド(例えば、コルチゾン)、エストロゲン/抗エストロゲン剤、アンドロゲン/抗アンドロゲン剤、プロゲスチン、及び黄体ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト、及び酢酸オクトレオチド;微小管撹乱剤(microtubule-disruptor agent)、例えば、エクチナサイジン;微小管安定化剤、例えば、パシタキセル(pacitaxel)、ドセタキセル、及びエポチロンA-F;植物由来の製品、例えば、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、及びタキサン;及びトポイソメラーゼ阻害剤;プレニル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;及びシクロスポリン;ステロイド、例えば、プレドニゾン及びデキサメタゾン;細胞傷害性の薬物、例えば、アザチオプリン及びシクロホスファミド;TNF-アルファ阻害剤、例えば、テニダップ;抗TNF抗体又は可溶性TNF受容体、例えば、エタネルセプト、ラパマイシン、及びレフルニミド(leflunimide);シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤、例えば、セレコキシブ及びロフェコキシブ;並びにその他の種々の薬剤、例えば、チオ硫酸ナトリウム、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、ミトタン、ヘキサメチルメラミン、金化合物、低分子量薬物、低分子量ビタミン、及び白金配位錯体、例えば、シスプラチン、サトラプラチン、及びカルボプラチンを含むが、これらに限定されない、別のクラスの化合物と組み合わせて投与することができる。
【0122】
本明細書で提供される亜硝酸ナトリウムは、銅、フッ化物イオン、ヨウ素、鉄、マンガン、マグネシウム、リン、セレン、チオ硫酸イオン、及び亜鉛を含む、ヒト血液中に天然に存在する他の溶質と組み合わせて投与することができる。
【0123】
本開示は、以下の非限定的な例によってより深く理解されるであろう。
【実施例
【0124】
(実施例)
本明細書で使用される場合、これらの実験、プロセス、スキーム、及び実施例において用いられる記号及び慣用語は、特定の略語が特に定義されているかにかかわらず、現代の科学文献、例えば、the Journal of the American Chemical Society又はthe Journal of Biological Chemistryにおいて用いられるものと一致する。具体的には、限定するものではないが、実施例において及び明細書の全体にわたって以下の略語を用いることがある:g(グラム);mg(ミリグラム);mL(ミリリットル);μL(マイクロリットル);mM(ミリモル濃度); μM(マイクロモル濃度);nM(ナノモル濃度);mmol(ミリモル);eq.(当量);hr又はhrs(時間);min(分)。
【0125】
以下の実験及び以下の実施例の全てに対し、当業者に公知の標準的なワークアップ及び精製方法を利用することができる。別途示されない限り、全ての温度は、℃(摂氏温度)で表される。特に断りのない限り、全ての反応は室温で行われる。以下の実施例で例示される方法は、具体例を用いて適用可能な化学を例示することを意図しており、本発明の範囲を表すものではない。
【0126】
(安定性実験)
以下の安定性実験(実施例1~4)の結果は、酸が添加される場合の水溶液中での亜硝酸イオンの不安定性、また、透析用の透析液の調製において酸濃縮溶液及び重炭酸塩濃縮溶液を含む溶液と混合される場合の亜硝酸イオンの不安定性を例示する。
【0127】
試料中の亜硝酸イオンの濃度を、イオンクロマトグラフィーでアッセイした。イオンクロマトグラフィー装置に、電気伝導度検出器、自己再生サプレッサーシステム、溶離液発生装置、及びDionex IonPacAS19分析用カラムを取り付けた。該試料中の亜硝酸イオン濃度を測定し、亜硝酸ナトリウム外部標準に対して計算した。米国薬局方亜硝酸ナトリウム参照標準(アイテム番号1614454)を、該試験標準とした(米国薬局方.Rockville, Maryland)。
【0128】
(実施例1)
亜硝酸ナトリウムの国際化学物質安全性カードは、該化学薬品が、酸と接触すると分解して、有毒な窒素酸化物の煙霧を生じることを示している(www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.display?p_card_id-1120においてオンラインでアクセスされたInternational Programme on Chemical Safety)。
【0129】
実施例1は、酸が添加される場合の水溶液中での亜硝酸ナトリウムの安定性を測定するために行なわれた。濃度が30mg/mLである亜硝酸ナトリウム溶液100mLの試料を、Orion 95-46型窒素酸化物(NOx)電極及びpH計を用いて、窒素酸化物ガス(NO、NO2、N2O3、及びN2O4)の存在について試験した。一定で撹拌しながら、前記NOx電極でのmV読み取り値及び前記pH電極でのpH読み取り値を、100μLの0.02N又は1Nいずれかの塩酸の連続する添加の後に記録した。亜硝酸ナトリウム溶液の初期pHは、8.73であった。塩酸の連続する添加とともに亜硝酸ナトリウム溶液のpHが6.7まで低下したら、窒素酸化物を検出した(1ppm NOxの検出限界)。亜硝酸ナトリウム溶液のpHが、6.7から4.9へと低下したときに、窒素酸化物電極の応答は、8.0mVから99.5mVへと増加した。これらの結果から、亜硝酸ナトリウムが、酸に露出されると分解すること、及び一般に、分解の程度が、pHに反比例することが確認された。
【0130】
(実施例2)
実施例2は、透析液重炭酸塩濃縮溶液中での亜硝酸ナトリウムの安定性を測定するために行なわれた。室温で、300mgの亜硝酸ナトリウムを、7,700mLの透析液重炭酸塩濃縮溶液に加えた。透析液重炭酸塩濃縮溶液の亜硝酸イオン濃度を、1)亜硝酸ナトリウムの添加の前;2)亜硝酸ナトリウムの添加の5分後;及び3)亜硝酸ナトリウムの添加2時間後に、イオンクロマトグラフィーによって分析した。表1に示した結果は、亜硝酸イオンが安定であり、かつ透析液重炭酸塩濃縮溶液に添加されたときに劣化して硝酸イオンを生じることがないことを示す。
(表1: 透析液重炭酸塩濃縮物中の亜硝酸イオン濃度)
【表1】
【0131】
(実施例3)
実施例3は、透析装置内で酸濃縮溶液と混合される場合の、実施例2からの亜硝酸ナトリウム及び透析液重炭酸塩濃縮溶液の混合物中の亜硝酸イオンの安定性をさらに測定するために行なわれた。
【0132】
透析装置により、透析液重炭酸塩濃縮溶液(実施例2からの亜硝酸ナトリウムが添加されたもの)、酸濃縮溶液、及び精製水を、実際の臨床で該透析装置により透析液が混合されるのと同様に、1部の該酸濃縮溶液、1.72部の該重炭酸塩濃縮溶液、及び42.38部の精製水の希釈比で混合した。本実験に使用された透析装置は、Fresenius 2008K血液透析装置(Fresenius Medical Care, Waltham, MA)であった。該装置を、生理食塩水を用いて、バイパスモード(透析液速度及び限外濾過速度をゼロに設定)でプライミングした。プライミングの後に、血液透析装置を、以下の設定:血流速度300mL/分、透析液流速600mL/分、限外濾過速度0mL/分、及び限外濾過時間25分で「治療モード」で運転した。透析装置を出たときに混合された透析液の試料を採取し、イオンクロマトグラフィーによって分析した。
【0133】
表2に示す結果は、透析液重炭酸塩濃縮溶液中の亜硝酸イオンが、透析装置内での酸濃縮溶液との混合の過程において、完全に分解したことを示す。
(表2: 血液透析装置内での混合後の透析液中の亜硝酸イオン濃度)
【表2】
【0134】
(実施例4)
実施例4は、透析液が実験室で調製された後に亜硝酸ナトリウムが該透析液に添加される場合の、亜硝酸イオンの安定性を測定するために行なわれた。1部の酸濃縮溶液、1.72部の重炭酸塩濃縮溶液、及び42.38部の精製水の希釈比を用いて、38.22mLの重炭酸塩濃縮溶液及び22.22mLの酸濃縮物溶液を938.56mLの精製水に加えることにより、実験室において1リットルの透析液を調製した。該透析溶液のpHは、24.9℃で7.34であった。1mLの3mg/mL亜硝酸ナトリウム溶液を、予め混合した1Lの透析溶液に加えた。亜硝酸ナトリウム溶液の添加後、透析溶液のpHは、24.4℃で7.32であった。亜硝酸ナトリウムを添加した透析溶液の試料を、亜硝酸イオン濃度に関して分析した。表3に示す結果は、亜硝酸イオンが、予め混合された透析溶液への添加後に、部分的に分解したことを示す。
(表3: 実験室において予め混合された透析液中の亜硝酸イオン濃度)
【表3】
【0135】
(実施例5)
実施例5は、透析液がFresenius 2008K血液透析装置(Fresenius Medical Care, Waltham, MA)内で調製された後に、亜硝酸ナトリウムが該透析液に添加される場合の、亜硝酸イオンの安定性を測定するために行なわれた。透析液重炭酸塩濃縮溶液を、Centrisol(登録商標)MB-330シリーズ重炭酸ナトリウム濃縮粉末の1包み(650g)を7.7リットルの精製水に添加することによって調製した。
【0136】
前記血液透析装置により、重炭酸塩濃縮溶液及び酸濃縮溶液を、1部の酸濃縮溶液、1.72部の重炭酸塩濃縮溶液、及び42.38部の精製水の希釈比で混合した。該装置を、生理食塩水を用いて、バイパスモード(透析液速度及び限外濾過速度をゼロに設定)でプライミングした。プライミングの後に、該血液透析装置を、以下の設定:血流速度300mL/分、透析液流速600mL/分、限外濾過速度0mL/分を用いて「治療モード」で運転した。
【0137】
3mgの亜硝酸ナトリウムを1リットルの精製水中に溶解させることによって、亜硝酸ナトリウムの水溶液を調製した。得られた亜硝酸ナトリウム溶液が、約2mg/Lの亜硝酸アニオン濃度を有していたので、この亜硝酸ナトリウム溶液は、AAMIの硝酸イオン(及び亜硝酸イオン)の品質仕様を満たしていた。該亜硝酸ナトリウム溶液を、Alaris(登録商標)IV輸液ポンプ(モデル8100、CareFusion, San Diego, CA)を用いて、弁(Fresensius Dialysate Sample Valve:パーツ番号650993)を通じて、血液透析装置と透析器との間の透析液配管内に直接注入した。該弁は、透析液配管内で透析器(プレフィルター)の約8インチ(約20.3cm)上流に配置された。2つの試料採取口を、透析器から4インチ(10.2cm)上流(透析器前試料採取口)と、10インチ(25.4cm)下流(透析器後試料採取口)とに配置して、イオンクロマトグラフィーによる硝酸イオンアッセイ用の透析液の試料を採取した。
【0138】
輸液ポンプは、弁を通じて亜硝酸ナトリウム溶液を250mL/時(4.16mL/分)の速度で配管内に注入した。
【0139】
生理食塩水は、動脈ラインから、透析器内を300mL/分の速度で流れ、静脈ラインを通じて透析器を出た。生理食塩水の試料を、透析器の静脈側から採取した。
【0140】
表4に示す結果は、透析液配管内で透析液と混合された亜硝酸ナトリウム溶液が、血液透析装置と透析膜との間の位置で配管に注入される場合に、亜硝酸イオンが安定であることを示す。
(表4: 亜硝酸ナトリウム溶液が、透析液が透析膜に接触する前に透析液配管内の透析液に添加される前及び後の透析液中の亜硝酸イオン濃度)
【表4】
*2つの試料からの平均の結果
【0141】
表4に示す結果は、血液透析装置と透析膜との間の位置で血液透析装置からスパイクされていない透析液に亜硝酸イオンが添加されるのであれば、亜硝酸イオンが、透析器に沿って進むか、又は通り抜けるかのいずれかができることを示す。
【0142】
上記の実施例は、特許請求される実施態様をどのように作製し用いるのかについての完全な開示及び説明を当業者に与えるために提供されており、本明細書において開示されるものの範囲を限定することは意図されない。当業者にとって自明な改変が、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。本明細書で引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかも、そのような刊行物、特許、又は特許出願のそれぞれが、明確にかつ個別に、引用により本明細書に組み込まれると示されているかのように、引用により本明細書に組み込まれる。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
血液透析を受けている対象において、亜硝酸イオンの生理学的なレベルを維持するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法。
(態様2)
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約1マイクロモル濃度以下である、態様1記載の方法。
(態様3)
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約200ナノモル濃度~約500ナノモル濃度である、態様1記載の方法。
(態様4)
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約300ナノモル濃度である、態様1記載の方法。
(態様5)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約1マイクロモル濃度以下である、態様1記載の方法。
(態様6)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約200ナノモル濃度~約500ナノモル濃度である、態様1記載の方法。
(態様7)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約300ナノモル濃度である、態様1記載の方法。
(態様8)
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、約3mg/L以下の亜硝酸ナトリウムを含む、態様1記載の方法。
(態様9)
前記水が、約2mg/L以下の亜硝酸イオンを含む、態様1記載の方法。
(態様10)
透析液配管が前記透析器に接続する前の位置で該配管に取り付けられた弁を通じて、前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記スパイクされていない透析液に添加される、態様1記載の方法。
(態様11)
前記スパイクされていない透析液が、前記透析配管を約500mL/分~約700mL/分の速度で流れる、態様10記載の方法。
(態様12)
前記スパイクされていない透析液が、前記透析配管を約600mL/分の速度で流れる、態様10記載の方法。
(態様13)
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記弁を通じて前記スパイクされていない透析液に約100mL/時~約550mL/時の速度で添加される、態様10記載の方法。
(態様14)
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記弁を通じて前記スパイクされていない透析液に1時間あたり約250mLの速度で添加される、態様10記載の方法。
(態様15)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHが、約7.3~約7.5である、態様1記載の方法。
(態様16)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHが、約7.4である、態様1記載の方法。
(態様17)
前記対象が、慢性腎不全のヒトである、態様1記載の方法。
(態様18)
前記対象が、急性腎不全のヒトである、態様1記載の方法。
(態様19)
前記対象が、1週間あたり3~7回透析を受ける、態様1記載の方法。
(態様20)
透析を受けている対象において、心筋梗塞を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、該スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法。
(態様21)
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約1マイクロモル濃度以下である、態様20記載の方法。
(態様22)
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約200ナノモル濃度~約500ナノモル濃度である、態様20記載の方法。
(態様23)
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約300ナノモル濃度である、態様20記載の方法。
(態様24)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約1マイクロモル濃度以下である、態様20記載の方法。
(態様25)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約200ナノモル濃度~約500ナノモル濃度である、態様20記載の方法。
(態様26)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約300ナノモル濃度である、態様20記載の方法。
(態様27)
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、約3mg/L以下の亜硝酸ナトリウムを含む、態様20記載の方法。
(態様28)
前記水が、約2mg/L以下の亜硝酸イオンを含む、態様20記載の方法。
(態様29)
透析液配管が前記透析器に接続する前の位置で該配管に取り付けられた弁を通じて、前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記スパイクされていない透析液に添加される、態様20記載の方法。
(態様30)
前記スパイクされていない透析液が、前記透析配管を約500mL/分~約700mL/分の速度で流れる、態様29記載の方法。
(態様31)
前記スパイクされていない透析液が、前記透析配管を1分あたり約600mLの速度で流れる、態様29記載の方法。
(態様32)
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記弁を通じて前記スパイクされていない透析液に約100mL/時~約550mL/時の速度で添加される、態様29記載の方法。
(態様33)
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記弁を通じて前記スパイクされていない透析液に1時間あたり約250mLの速度で添加される、態様29記載の方法。
(態様34)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHが、約7.3~約7.5である、態様20記載の方法。
(態様35)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHが、約7.4である、態様20記載の方法。
(態様36)
前記対象が、慢性腎不全のヒトである、態様20記載の方法。
(態様37)
前記対象が、急性腎不全のヒトである、態様20記載の方法。
(態様38)
前記対象が、1週間あたり3~7回透析を受ける、態様20記載の方法。
(態様39)
透析を受けている対象において、突発性の心臓死を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、該スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法。
(態様40)
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約1マイクロモル濃度以下である、態様39記載の方法。
(態様41)
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約200ナノモル濃度~約500ナノモル濃度である、態様39記載の方法。
(態様42)
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約300ナノモル濃度である、態様39記載の方法。
(態様43)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約1マイクロモル濃度以下である、態様39記載の方法。
(態様44)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約200ナノモル濃度~約500ナノモル濃度である、態様39記載の方法。
(態様45)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約300ナノモル濃度である、態様39記載の方法。
(態様46)
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、約3mg/L以下の亜硝酸ナトリウムを含む、態様39記載の方法。
(態様47)
前記水が、約2mg/L以下の亜硝酸イオンを含む、態様39記載の方法。
(態様48)
透析液配管が前記透析器に接続する前の位置で該配管に取り付けられた弁を通じて、前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記スパイクされていない透析液に添加される、態様39記載の方法。
(態様49)
前記スパイクされていない透析液が、前記透析配管を約500mL/分~約700mL/分の速度で流れる、態様48記載の方法。
(態様50)
前記スパイクされていない透析液が、前記透析配管を1分あたり約600mLの速度で流れる、態様48記載の方法。
(態様51)
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記弁を通じて前記スパイクされていない透析液に約100mL/時~約550mL/時の速度で添加される、態様48記載の方法。
(態様52)
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記弁を通じて前記スパイクされていない透析液に1時間あたり約250mLの速度で添加される、態様48記載の方法。
(態様53)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHが、約7.3~約7.5である、態様39記載の方法。
(態様54)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHが、約7.4である、態様39記載の方法。
(態様55)
前記対象が、慢性腎不全のヒトである、態様39記載の方法。
(態様56)
前記対象が、急性腎不全のヒトである、態様39記載の方法。
(態様57)
前記対象が、1週間あたり3~7回透析を受ける、態様39記載の方法。
(態様58)
透析を受けている対象において、脳卒中を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、該スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法。
(態様59)
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約1マイクロモル濃度以下である、態様58記載の方法。
(態様60)
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約200ナノモル濃度~約500ナノモル濃度である、態様58記載の方法。
(態様61)
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約300ナノモル濃度である、態様58記載の方法。
(態様62)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約1マイクロモル濃度以下である、態様58記載の方法。
(態様63)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約200ナノモル濃度~約500ナノモル濃度である、態様58記載の方法。
(態様64)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約300ナノモル濃度である、態様58記載の方法。
(態様65)
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、約3mg/L以下の亜硝酸ナトリウムを含む、態様58記載の方法。
(態様66)
前記水が、約2mg/L以下の亜硝酸イオンを含む、態様58記載の方法。
(態様67)
透析液配管が前記透析器に接続する前の位置で該配管に取り付けられた弁を通じて、前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記スパイクされていない透析液に添加される、態様58記載の方法。
(態様68)
前記スパイクされていない透析液が、前記透析配管を約500mL/分~約700mL/分の速度で流れる、態様67記載の方法。
(態様69)
前記スパイクされていない透析液が、前記透析配管を1分あたり約600mLの速度で流れる、態様67記載の方法。
(態様70)
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記弁を通じて前記スパイクされていない透析液に約100mL/時~約550mL/時の速度で添加される、態様67記載の方法。
(態様71)
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記弁を通じて前記スパイクされていない透析液に1時間あたり約250mLの速度で添加される、態様67記載の方法。
(態様72)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHが、約7.3~約7.5である、態様58記載の方法。
(態様73)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHが、約7.4である、態様58記載の方法。
(態様74)
前記対象が、慢性腎不全のヒトである、態様58記載の方法。
(態様75)
前記対象が、急性腎不全のヒトである、態様58記載の方法。
(態様76)
前記対象が、1週間あたり3~7回透析を受ける、態様58記載の方法。
(態様77)
透析を受けている対象において、狭心症、脳血管攣縮、跛行、重症虚血肢、末梢血管疾患、及び鎌状赤血球クリーゼを含む組織虚血を特徴とする心血管系疾患を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、該スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法。
(態様78)
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約1マイクロモル濃度以下である、態様77記載の方法。
(態様79)
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約200ナノモル濃度~約500ナノモル濃度である、態様77記載の方法。
(態様80)
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約300ナノモル濃度である、態様77記載の方法。
(態様81)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約1マイクロモル濃度以下である、態様77記載の方法。
(態様82)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約200ナノモル濃度~約500ナノモル濃度である、態様77記載の方法。
(態様83)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約300ナノモル濃度である、態様77記載の方法。
(態様84)
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、約3mg/L以下の亜硝酸ナトリウムを含む、態様77記載の方法。
(態様85)
前記水が、約2mg/L以下の亜硝酸イオンを含む、態様77記載の方法。
(態様86)
透析液配管が前記透析器に接続する前の位置で該配管に取り付けられた弁を通じて、前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記スパイクされていない透析液に添加される、態様77記載の方法。
(態様87)
前記スパイクされていない透析液が、前記透析配管を約500mL/分~約700mL/分の速度で流れる、態様86記載の方法。
(態様88)
前記スパイクされていない透析液が、前記透析配管を1分あたり約600mLの速度で流れる、態様86記載の方法。
(態様89)
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記弁を通じて前記スパイクされていない透析液に約100mL/時~約550mL/時の速度で添加される、態様86記載の方法。
(態様90)
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記弁を通じて前記スパイクされていない透析液に1時間あたり約250mLの速度で添加される、態様86記載の方法。
(態様91)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHが、約7.3~約7.5である、態様77記載の方法。
(態様92)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHが、約7.4である、態様77記載の方法。
(態様93)
前記対象が、慢性腎不全のヒトである、態様77記載の方法。
(態様94)
前記対象が、急性腎不全のヒトである、態様77記載の方法。
(態様95)
前記対象が、1週間あたり3~7回透析を受ける、態様77記載の方法。
(態様96)
透析を受けている対象において、高血圧症、肺高血圧症、及び腎性高血圧症を予防するための方法であって、該対象の血液を、亜硝酸イオンでスパイクされた透析液とも接触している透析膜と透析中に接触させることを含み、該スパイクされていない透析液が透析装置から透析膜へと流れる時に、亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が該スパイクされていない透析液に添加され、該スパイクされていない透析液が、水、酸濃縮溶液、及び重炭酸塩濃縮溶液の混合物を含み、かつ該亜硝酸イオンでスパイクされた透析液が、約7.0超のpHを有する、前記方法。
(態様97)
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約1マイクロモル濃度以下である、態様96記載の方法。
(態様98)
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約200ナノモル濃度~約500ナノモル濃度である、態様96記載の方法。
(態様99)
前記対象における前記亜硝酸イオンの生理学的なレベルが、約300ナノモル濃度である、態様96記載の方法。
(態様100)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約1マイクロモル濃度以下である、態様96記載の方法。
(態様101)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約200ナノモル濃度~約500ナノモル濃度である、態様96記載の方法。
(態様102)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液中の亜硝酸イオンの濃度が、約300ナノモル濃度である、態様96記載の方法。
(態様103)
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、約3mg/L以下の亜硝酸ナトリウムを含む、態様96記載の方法。
(態様104)
前記水が、約2mg/L以下の亜硝酸イオンを含む、態様96記載の方法。
(態様105)
透析液配管が前記透析器に接続する前の位置で該配管に取り付けられた弁を通じて、前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記スパイクされていない透析液に添加される、態様96記載の方法。
(態様106)
前記スパイクされていない透析液が、前記透析配管を約500mL/分~約700mL/分の速度で流れる、態様105記載の方法。
(態様107)
前記スパイクされていない透析液が、前記透析配管を1分あたり約600mLの速度で流れる、態様105記載の方法。
(態様108)
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記弁を通じて前記スパイクされていない透析液に約100mL/時~約550mL/時の速度で添加される、態様105記載の方法。
(態様109)
前記亜硝酸ナトリウムを含む水溶液が、前記弁を通じて前記スパイクされていない透析液に1時間あたり約250mLの速度で添加される、態様105記載の方法。
(態様110)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHが、約7.3~約7.5である、態様96記載の方法。
(態様111)
前記亜硝酸イオンでスパイクされた透析液のpHが、約7.4である、態様96記載の方法。
(態様112)
前記対象が、慢性腎不全のヒトである、態様96記載の方法。
(態様113)
前記対象が、急性腎不全のヒトである、態様96記載の方法。
(態様114)
前記対象が、1週間あたり3~7回透析を受ける、態様96記載の方法。
図1