(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】体外血液処理のための装置および体外血液処理装置を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20230718BHJP
【FI】
A61M1/16 171
(21)【出願番号】P 2019555682
(86)(22)【出願日】2018-04-10
(86)【国際出願番号】 EP2018059207
(87)【国際公開番号】W WO2018189207
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】102017003508.3
(32)【優先日】2017-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501276371
【氏名又は名称】フレセニウス・メディカル・ケア・ドイチュラント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】グラセル、ベネディクト
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0131332(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0045540(US,A1)
【文献】特表2007-510473(JP,A)
【文献】米国特許第07841189(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外血液処理のための装置であって、複数のラインを有し、かつ透析治療のために透析液を供給するための水圧システムと、1または複数の電気的構成要素を備える制御システムとを備え、前記水圧システムは、前記体外血液処理のための装置に流体を供給するための少なくとも1つのポートを有し、
前記体外血液処理のための装置が、前記制御システムの前記1または複数の電気的構成要素のうちの少なくとも1つを冷却するための冷却装置を有し、前記冷却装置が、流体によって冷却されることができ、かつ前記1または複数の電気的構成要素と熱接触している少なくとも1つのヒートシンクを有し、前記冷却装置が、流体を供給するための前記ポートと流体接続している少なくとも1つの入口を有し、ドレンと流体接続している少なくとも1つの出口を有する
ことを特徴とする、体外血液処理のための装置。
【請求項2】
前記水圧システムが、入口を有する流体調製装置を有し、供給ラインを介して流体を供給するための前記ポートが、前記流体調製装置の前記入口に接続され、バイパスラインが前記供給ラインから外れ、前記バイパスラインが前記ドレンと流体接続していることを特徴とする、請求項1に記載の体外血液処理のための装置。
【請求項3】
前記流体調製装置が、流体を収集するための入力チャンバを有し、前記流体調製装置の前記入口が、前記入力チャンバの入口であることを特徴とする、請求項2に記載の体外血液処理のための装置。
【請求項4】
前記供給ラインにおける前記流体の流れを遮断または調整するための手段が、前記供給ラインからの前記バイパスラインの分岐の下流に設けられることを特徴とする、請求項2または3に記載の体外血液処理のための装置。
【請求項5】
前記供給ラインが、流体を供給するための前記ポートを前記冷却装置の前記入口に接続する第1の部分と、前記冷却装置の前記出口を前記流体調製装置の前記入口に接続する第2の部分とを備えることを特徴とする、請求項2~4のいずれか一項に記載の体外血液処理のための装置。
【請求項6】
前記バイパスラインの第1の部分が、流体を供給するための前記ポートまたは前記供給ラインを前記冷却装置の前記入口に接続し、前記冷却装置の前記出口が、前記バイパスラインの第2の部分を介してドレンと流体接続していることを特徴とする、請求項2または3に記載の体外血液処理のための装置。
【請求項7】
前記流体の流れを遮断または調整するための手段が、前記バイパスラインに設けられることを特徴とする、請求項2~6のいずれか一項に記載の体外血液処理のための装置。
【請求項8】
前記冷却装置が、前記ヒートシンクと熱接触している前記1または複数の電気的構成要素の温度を測定するための温度センサと、前記温度が指定されたしきい値より下になるように、前記バイパスラインにおける前記流体の流れを遮断または調整するための前記手段を作動する制御ユニットとを有することを特徴とする、請求項7に記載の体外血液処理のための装置。
【請求項9】
前記ドレンが、前記水圧システムのための追加のドレン、特に処理中の透析液のためのドレンとは独立していることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の体外血液処理のための装置。
【請求項10】
体外血液処理のための装置を動作させるための方法であって、前記装置は、複数のラインを有し、かつ透析器に透析液を供給するための水圧システムと、少なくとも1つの電気的構成要素を有する制御システムとを備え、前記透析液は、前記体外血液処理のための装置に供給される流体を使用して生成され、
前記制御システムの少なくとも1つの
電気的構成要素を冷却するために、前記少なくとも1つの電気的構成要素が、前記透析液を生成するための前記流体を使用して冷却される少なくとも1つのヒートシンクと熱接触することを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記透析液を生成するために使用される前記流体が浸透液であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
体外血液処理のための装置を動作させるための方法であって、前記装置は、複数のラインを有し、かつ透析器に透析液を供給するための水圧システムと、少なくとも1つの電気的構成要素を有する制御システムとを備え、前記体外血液処理のための装置は、前記水圧システムの熱水消毒を実施するための動作モードを提供し、ここで、指定された温度に加熱された流体は、前記水圧システムの前記ラインのうちの少なくともいくつかを流れ、
前記熱水消毒の動作モード中、前記少なくとも1つの電気的構成要素が熱接触する少なくとも1つのヒートシンクは、指定された温度に加熱された前記流体が前記水圧システムの前記ラインのうちの少なくともいくつかを流れる間に、前記体外血液処理のための装置に供給される流体を使用して冷却されることを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記熱水消毒のために使用される前記流体が浸透液であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの電気的構成要素の温度が測定され、前記体外血液処理のための装置に供給された前記流体の前記供給が、前記少なくとも1つの
電気的構成要素の前記温度が指定されたしきい値より下になるように調整されることを特徴とする、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか一項に記載の装置が請求項10~14のいずれか一項に記載の前記方法を実施するために使用されることを特徴とする、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外血液処理のための装置に関し、当該装置は、複数のラインを有し、かつ透析器に透析液を供給することまたは透析治療を意図した水圧システムを備え、透析液は透析器を流れ、および/または透析液は、治療中に体外血液チューブシステムに置換液として供給され、当該装置は、少なくとも1つの電気的構成要素、通常は複数の電気的構成要素を有する制御システムを備える。本発明はまた、体外血液処理のための装置を動作させるための方法に関し、当該装置は、複数のラインを有し、かつ透析器に透析液を供給することまたは透析治療を意図した水圧システムを備え、透析液は透析器を流れ、および/または透析液は、治療中に体外血液チューブシステムに置換液として供給され、当該装置は、少なくとも1つの電気的構成要素、通常は複数の電気的構成要素を有する制御システムを備え、透析液は、体外血液処理のための装置に供給される流体を使用して生成される。
【0002】
透析中、処理されることになる血液は、半透膜によって血液チャンバと透析液チャンバとに分けられている透析器の血液チャンバを通って体外血液回路内を流れ、一方、透析液は、透析器の透析液チャンバを流れる。体外血液回路は、血液チャンバに通じる血液供給ラインと、血液チャンバから遠ざかる血液排出ラインとを備える。体外血液処理のための装置の水圧システムは、新しい透析液を供給するための透析器に通じるラインと、使用済み透析液をドレンに排出するための透析器から遠ざかるラインとを有する。流体を搬送するためにポンプが設けられる。体外血液処理のための装置のすべての構成要素は、複数の電気的構成要素を備える制御システムによって制御される。制御システムは、1つまたは複数のサブアセンブリから成ることができる。この説明は、透析のための一例である。本発明のコンテキストでは、透析という用語は、血液濾過も含み、ここで透析液は、透析液チャンバには供給されず、置換液として血液供給ラインおよび/または血液排出ラインに供給され、流体は透析器によって除去される。本発明のコンテキストでは、透析という用語は、当該方法のすべての組合せを含む。
【0003】
透析液は、浸透液(純水)および1つまたは複数の濃縮液から透析機械において生成されることができる。透析機械は、浸透液を供給するための水接続部を有する。透析液は、機械の水圧システムにおいて調製される。しかしながら、「ベッドサイドステーション」も既知であり、透析液が外部から透析機械に供給される実施形態を構成する。
【0004】
下記で「水」または「純水」を指すとき、これは、外部から透析機械に供給される、または透析機械内に供給されている、透析液またはリンス流体を意味するとも理解される。本発明のコンテキストでは、「水」および「純水」は、同じまたは異なる意味を有し得る。当業者は、技術的コンテキストから、水が純水でもあり得るかどうかがわかるであろう。不確かな場合、それら用語は同義とみなされるべきである。
【背景技術】
【0005】
透析機械は、ますます小型設計を有してきている。この発展の理由は、輸送能力の向上およびクリニックまたは家庭透析での狭い状況で空間を節約する必要性によるものである。別の発展は、熱水浄化または熱水消毒プロセスが透析機械で非常に一般的になってきているということであり、これらのプロセスは重要性が増加し続けている。これらのプロセスは、とりわけ、薬品の使用が低減されることを可能にする。熱水消毒プロセス中、浸透液および/または消毒剤と混合された浸透液が、80°Cよりも高い温度で水圧システム内を循環する。熱水浄化および熱水消毒という用語は、当業者がコンテキストから一方または他方のプロセスを意味することを結論付けない限り、本明細書では同義とみなされるべきである。原理上、消毒が浄化効果も有するのに対して、浄化は必ずしも消毒に至らない。それゆえ、例えば、消毒することよりも著しく低い温度で浄化することが可能である。
【0006】
小型設計を有する透析機械では熱管理がますます困難になってきている。特に、透析機械の筐体内部の温度は、熱水消毒中、急速に増加する可能性がある。筐体内部の高温は、熱水消毒に必要とされる温度に達するのに必要であるか、または少なくとも役立つ。ユニット内部の空気温度は、50°Cから65°Cである可能性もある。
【0007】
高い空気温度は、制御システムの電気的構成要素、例えば電力半導体またはプロセッサについての問題を引き起こす。この問題は、小型の透析ユニット内の電子回路が、水圧システムの構成要素のごく近傍に位置するという事実によって悪化するだけである。
【0008】
多くの電気的構成要素は、最大でも45°C/50°Cの温度に達することしか許容されていない。さらに、電気的構成要素の耐用年数は、ある特定の温度を超えた場合に著しく減少する。それゆえ電気的構成要素の十分な冷却が必要である。電気的構成要素は、一般に、構成要素が取り付けられた、既知のヒートシンク(heat sink)を使用して冷却される。しかしながら、この冷却は、筐体内部の高温時には不十分であることがわかっている。
【0009】
それゆえ、先行技術は、必要に応じて制御される追加のファンを有する透析機械を含む。ファンを使用して熱問題は解決できるが、しかしながら、それに関連する欠点がある。
【0010】
まず、ファンは追加の生産コストにつながる。これに関して、ファンが限られた耐用年数しか有していないことが考慮されるべきである。ユニットの中に埃を吸い込むこともファンを使用すると増加し、音レベルの増加もその結果である。さらに、外気温が非常に高い国では、空気冷却が実用可能であると必ずしも示されるわけではない。
【0011】
それゆえ本発明によって対処される課題は、上述の欠点が回避される体外血液処理のための装置を生産することである。本発明によって対処される課題は、特に、高い外気温でも確実に動作する体外血液処理のための装置を生産することである。本発明によって対処されるさらなる課題は、体外血液処理のための装置がそれによって上述の欠点なく動作されることができる方法を提供することである。
【0012】
この課題は、独立請求項に記載の特徴によって本発明にしたがって解決される。従属請求項は、本発明の好ましい実施形態に関連する。
【発明の概要】
【0013】
本発明による体外血液処理のための装置は、流体、特に浸透液(純水)を機械に供給することができるように中央ポートを有する血液処理装置である。流体は、透析液を生成するため、または熱水消毒のために使用されることができる。流体が供給されるので、十分な量の流体が利用可能である。流体の温度は、大部分が室温に依存し、中央供給によって、高い可能性がある室温より下でもあり得る指定された値に設定されることができる。
【0014】
本装置は、制御システムの電気的構成要素のうちの少なくとも1つを冷却するための冷却装置を有し、当該冷却装置は、電気的構成要素から熱を散らすために、装置に中央で供給された流体、特に浸透液(純水)を使用する。冷却装置は、流体によって冷却されることができ、かつ少なくとも1つの電気的構成要素と熱接触している少なくとも1つのヒートシンクを有し、当該冷却装置は、流体を供給するためのポートと流体接続している少なくとも1つの入口を有し、ドレンと流体接続している少なくとも1つの出口を有する。熱接触は、好ましくは、タッチ接触(touching contact)または配向接触(orientation contact)であり、ここで、ヒートシンクは、例えば、回路基板に直接触れているか、またはヒートシンクは、その冷却効果が電気的構成要素に効率的に伝わるような向きにされている。これは、ヒートシンクが、30cm、好ましくは20cmまたは10cm未満だけ電気的構成要素から離隔されるように配置されることによって達成されることができる。
【0015】
体外血液処理のための装置の、個別、複数、またはすべての熱的に負荷された電気的構成要素は、冷却装置によって冷却されることができる。特に、冷却せずに装置を動作させたときに、熱水消毒または熱水浄化プロセス中に、45°Cまたは50°Cより上に加熱されるべきではないことを述べる仕様、もしくは45°Cまたは50°Cまたは60°Cより上の温度だと影響を受けやすくなる仕様を有する、個別、複数、またはすべての熱的に負荷された電気的構成要素は、冷却されることができる。これに関連して、電気的構成要素は、制御システムのすべての電気素子または電子素子であると理解される。制御システムは、体外血液処理のための装置の電子回路全体、すなわち、個別の回路またはサブアセンブリも形成することができるすべての電気または電子素子もしくは構成要素であると理解される。冷却装置はまた、複数のヒートシンクも備えることができる。
【0016】
少なくとも1つの構成要素と熱接触しており、かつ流体によって冷却されるヒートシンクがどのように設計されるかは、本発明に必須ではない。しかしながら、熱が散らされることができるようにヒートシンクが流体と熱接触していることが重要である。熱伝導材料、例えばアルミニウムから成るヒートシンクは、流体によって囲まれることができ、および/または流体は、そこを流れることができる。例えば、流路がヒートシンクに形成されることができる。流体は、1つまたは複数の入口に流れ込み、1つまたは複数の出口を流れ出ることができる。次いで流体は押し出されることができる。流体はドレンに向けられ、それは透析機械に初期設定で存在する使用済み透析液のためのドレンまたは追加のドレンであり得る。
【0017】
少なくとも1つのヒートシンクは、好ましくは、熱負荷が最も高い、体外血液処理のための装置の動作モード中に、流体を使用して冷却される。この動作モードは、水圧システムの熱水消毒であり得、ここで、指定された温度に加熱された流体が、水圧システムのラインのうちの少なくともいくつかを流れる。本発明は、透析機械において、流体、特に浸透液の中央流体供給のための供給路が、通常は熱水消毒循環から除外されるという事実を有利に利用する。結果として、冷却装置は、供給路内に、または供給路に流体接続され、かつドレンに接続されることができるバイパスライン内に接続されることができる。よって冷却装置は、熱水消毒プロセスから独立して動作されることができる。供給路におけるかかる配置は、電気的構成要素を冷却することが冷却流体を加熱するという状況ももたらし、当該冷却流体はその後、当該冷却流体が処理のためにせよ熱水消毒のためにせよ、もはや強力に加熱されなくてよい水圧システムへと、少なくとも部分的または完全に向けられる。よってエネルギーを節約することが可能である。
【0018】
本発明の好ましい実施形態は、水圧システムが、入口を備える流体調製装置を有することを提供し、供給ラインを介して流体を供給するためのポートは、流体調製装置の入口に接続されている。この供給ラインは、中央流体供給のための供給路を形成する。流体は透析液であり得、流体調製装置は、透析液調製装置である。
【0019】
これに関連して、流体調製装置は、流体を調製するため、例えば、透析液を生成、加熱、またはガス抜きするために使用される透析機械のすべての構成要素であると理解される。流体調製装置は、例えば、流体を収集するための入力チャンバ、またはガス抜きチャンバ、またはヒータ等を備えることができる。
【0020】
流体調製装置が流体を収集するための入力チャンバを有する場合、流体調製装置の入口は、入力チャンバの入口であることができる。その結果として、供給路は入力チャンバの上流の領域を備えるだけであり、それゆえ、入力チャンバへの流体の供給の遮断または調整の場合には冷却装置への流体の供給に関係なく水圧システムの熱水消毒が行われることができる。特に好ましい実施形態では、流体流れを遮断または調整するための手段が供給ラインに設けられる。
【0021】
異なる実施形態は、透析機械の既存の流体システムに冷却装置を設置するための異なる構成を示す。
【0022】
第1の実施形態では、供給ラインは、流体を供給するためのポートを冷却装置の入口に接続する第1の部分と、冷却装置の出口を流体調製装置の入口に接続する第2の部分とを有する。それゆえ冷却装置は、供給ライン内に接続される。熱水消毒プロセス中、水圧システムへの流体の供給は、その流体が冷却装置のみを流れるように遮断されることができる。冷却装置の出口は、バイパスラインを介してドレンと流体接続することができ、当該ドレンは、透析機械における追加のドレンまたは既存のドレンであり得る。バルブまたはスロットルであることができる手段が、流体流れを遮断または調整するためにバイパスラインに設けられる。遮断手段は、ポンプまたは上記の様々な手段の組合せでもあることができる。
【0023】
特に好ましい実施形態は、冷却装置が、ヒートシンクと熱接触している電気的構成要素の温度を測定するための温度センサを有すること、および温度が指定されたしきい値より下になるようにバイパスラインにおける流体流れを遮断または調整するための手段を作動する制御ユニットを有することを提供する。冷却装置の制御ユニットは、体外血液処理のための装置の中央制御および演算ユニットの構成要素でもあることができる。
【0024】
さらなる実施形態では、追加の冷却流体ラインの第1の部分が流体の取り込みのためのポートまたは供給ラインを冷却装置の入口に接続し、冷却装置の出口は、冷却流体ラインの第2の部分を介してドレンと流体接続しており、当該ドレンはまた、透析機械における追加のドレンまたは既存のドレンであることができる。流体流れを遮断または調整するための手段が、好ましくは冷却流体ラインに設けられる。それゆえ冷却流体ラインは、別のバイパスラインを構成する。この実施形態でも、流体流れを調整することは、少なくとも1つの構成要素の温度に依存することができる。
【0025】
さらなる代替の実施形態では、リンス流体ラインの第1の部分が供給ラインから分岐して冷却装置の入口に通じ、冷却装置の出口は、リンス流体ラインの第2の部分を介してドレンと流体接続している。この種類のリンス流体ラインは、既に存在する流体を使用して供給路をリンスおよび/または消毒するために透析機械に存在し得る。このラインは次いで、供給路をリンスおよび/または消毒すること、および流体を冷却装置に供給することの両方を行うために使用される。それゆえリンス流体ラインは、別のバイパスラインを構成する。温度はまたここでも調整され得る。
【0026】
ラインにおけるシャットオフ部材またはバルブの温度を調整する代わりに、シャットオフ部材またはバルブは時間制御されることもできる。例えば、シャットオフ部材またはバルブは、指定された時間期間の間、制御ユニットによって完全または部分的に開かれるか閉じられることができる。
【0027】
本発明は、以下の図面を参照して下記で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】冷却装置を備える、本発明による血液処理装置の第1の実施形態の非常に簡易化された概略図である。
【
図2】本発明による血液処理装置の第2の実施形態を示す。
【
図3】本発明による血液処理装置の第3の実施形態を示す。
【
図4】本発明による血液処理装置の第4の実施形態を示す。
【詳細な説明】
【0029】
図1は、本発明による血液処理装置の一実施形態の非常に簡易化された概略図である。血液処理装置は、体外血液回路A(略図のみで図示)と、水圧システムBとを備える。体外血液回路Aは、血液チャンバ1を組み込み、水圧システムBは、透析器3の透析液チャンバ2を組み込んでいる。透析器3の血液チャンバ1および透析液チャンバ2は、半透膜4によって分離されている。透析液を調製するために、水圧システムBは、流体調製装置5、特に透析液調製装置を有し、それは、透析液を生成するための流体、特に浸透液(純水)のための入口5Aと、出口5Bとを有する。浸透液は、入力チャンバ6で収集されることができる。浸透液は、透析液を生成するために1つまたは複数の濃縮液と混合される。透析液調製装置5の残りの構成要素5Cは、
図1に概略的にしか示されていない。透析液供給ライン7は、透析液調製装置5の出口5Bから透析器3の透析液チャンバ2の入口2Aに通じる。透析液は、透析液ポンプ8によって搬送される。透析液チャンバ2の出口2Bは、透析液排出ライン9を介して、使用済み透析液のためのドレン10に接続される。
【0030】
この説明は、患者の治療を伴う段階に関連する。治療の準備またはフォローアップ中、装置は、体外血液回路Aおよび透析器3の構成要素を有する必要はなく、すなわち透析液供給ライン7は、透析器3をバイパスすることによって透析液排出ライン9に短絡されることができる。装置には、消毒濃縮液ポートも設けられることができる。濃縮された消毒剤は、消毒濃縮液ポートを介して水圧システムBに供給されることができ、供給路14を介して水圧システムBに供給されることができる水と混合されることによって、所望の消毒濃縮液が水圧システムBで利用可能にされることができる。
【0031】
浸透液は、供給ライン12を介して透析液調製装置5の入力チャンバ6の入口6Aに接続された中央ポート11において血液処理装置に供給される。入口バルブ13が、入力チャンバ6の入口6A上に設けられ、それゆえ水圧システムBは、供給路14から分離されることができる。
【0032】
図1は、本発明に必須である水圧システムBの構成要素のみを示している。水圧システムBは、追加の構成要素30、例えばバランシングユニットを備え得る。
【0033】
さらに、血液処理装置は、電気的構成要素を有する複数の回路を備えることができる制御システム15を有する。
図1は、複数の構成要素17A、17B、17Cを有する1つのみの回路16を示す。
【0034】
血液処理装置は、水圧システムBの熱水消毒のための動作モードを提供し、ここで水圧システムは、中央ポート11において血液処理装置に供給された流体でリンスされる。この目的のために、流体、特に浸透液は、80°Cより上の温度に加熱される。熱水消毒プロセス中、血液処理装置の筐体18内の空気温度は増加し、これは、電気的構成要素17A、17B、17Cの熱負荷につながる。
【0035】
冷却装置19が、電気的構成要素17A、17B、17Cを冷却するために設けられ、これは、1つの実施形態について下記で説明される。電気的構成要素17A、17B、17Cは、素子がヒートシンク21と熱接触するように、ヒートシンク上に取り付けられたボード20上に位置する。ヒートシンク21は、ヒートシンクから熱を散らすために流体がヒートシンクを流れることができるように、入口22Aおよび出口22Bを有する1つまたは複数の流路22を有する。機械に中央で供給される浸透液は、ヒートシンクのための冷却流体として使用される。
【0036】
本実施形態では、ヒートシンク21は、供給ライン12内に接続される。供給ライン12は、ポート11をヒートシンク21の入口22Aに接続する第1の部分12Aと、ヒートシンク21の出口22Bを入力チャンバ6の入口6Aに接続する第2の部分22Bとを備える。ドレン10に通じるバイパスライン23は、供給ライン12の第2の部分12Bから分岐する。バイパスバルブ24がバイパスライン23に設けられる。
【0037】
熱水消毒プロセス中、入力チャンバ6上の入口バルブ13は、少なくとも一時的に閉じたままにでき、その結果、水圧システムBは供給路14から分離される。バイパスライン23におけるバイパスバルブ24は、熱を散らすための冷たい浸透液がヒートシンク21に流れ込むように開かれる。浸透液は次いで、ドレン10へと流れ出る。
【0038】
一実施形態では、冷却装置19は、流体流れを制御するための制御ユニット25を有することができ、当該ユニットは、血液処理装置の制御および演算ユニットの構成要素、すなわち制御システムの一部であり得る。制御ユニット25は、電気回路16の電気的構成要素17Cの温度を測定する温度センサ27に測定ライン26を介して接続され、および制御ライン28を介して入口バルブ13およびバイパスバルブ24に接続される。制御ユニット25は、温度センサ27によって測定された温度を、構成要素の許容される動作温度より下である指定されたしきい値と比較する。温度がしきい値より上である場合、制御ユニット25は、浸透液が熱を散らすためにヒートシンク21を流れるようにバイパスバルブ24を開く。温度がしきい値より下である場合、制御ユニット25は、流体流れが遮断されるようにバイパスバルブ24を閉じる。ある特定の流量を指定するスロットルも、バルブに代えてバイパスライン23に設けられることができる。制御ユニット25は、部分的に入口バルブ13を開いたり閉じたりするだけで、水圧システムBへの流体流れを調整することもできる。制御ユニット25は、流体が第一に水圧システムBに流れ込むように、かかる流れが水圧制御部によって要求された場合には、供給ライン12における流体流れを制御することもできる。この流れが冷却に不十分である場合、制御ユニット25は、二次手段として、例えばバルブ24を開くことによって、バイパスライン23を通るように流れを向けることもできる。
【0039】
ここで説明されるすべての実施形態において、ポンプ(図示せず)が、装置内に設けられ得、当該ポンプによって流体はバイパスラインを通じてポンピングされることができる。このポンプは、蠕動ポンプまたは膜ポンプであることができる。この場合、バルブ24は、蠕動ポンプまたは膜ポンプであることができる。
【0040】
図2は、血液処理装置の第2の実施形態を示し、これは、冷却装置19の設置によって第1の実施形態とは異なる。対応する部分には同じ参照記号が設けられている。第2の実施形態では、ヒートシンク21は、供給ライン12内に接続されていない。ヒートシンク21の入口に通じる追加の冷却流体ライン29の第1の部分29Aが、供給ライン12から分岐する。冷却流体ライン29の第2の部分29Bが、ヒートシンク21の出口22Aをドレン10に接続する。冷媒流れを調整するために、冷却流体ライン29の第2の部分29Bにバルブ24’が設けられる。冷却流体ライン29におけるバルブ24’は、温度センサ27によって測定された温度に依存して、第1の実施形態のバイパスライン23におけるバイパスバルブ24と同様に、制御ユニット25によって調整されることができる。
【0041】
図3は、血液処理装置の第3の実施形態を示し、これは、流体流れを制御するためのバルブ24’’が第2の部分29Bには配置されず、冷却流体ラインの第1の部分29Aに配置されるという点で第2の実施形態とは異なる。流体流れは、第2の実施形態でのように調整されることができる。さらに、第3の実施形態は、冷却流体ライン29の第2の部分29Bが、使用済み透析液のためのドレンに通じず、冷媒のための追加のドレン31に通じるという点で、第2の実施形態とは異なる。しかしながら、冷却流体ライン29の第2の部分29Bは、第3の実施形態(
図1および
図2)において使用済み透析液のためのドレン10にも接続され得る。冷媒のための別個の流出31を有する第3の実施形態は、ドレン10からの使用済み透析液による供給路14の汚染が除外されるという利点を有する。
【0042】
図4は、供給路14のリンスまたは消毒を提供する血液処理装置の別の代替的な実施形態を示す。このタイプの血液処理装置におけるリンスまたは消毒プロセスのために、透析液調製装置5の入口5Aの上流、特に供給路14の端において、供給ライン12から分岐するリンス流体ライン32が設けられ、例えば、当該ラインは、入口バルブ13の上流で、好ましくは入口バルブ13の近くで供給ライン12から分岐し、別個のドレン31に通じる。ヒートシンク21は、代替の実施形態ではリンス流体ライン32内に接続される。リンス流体ライン32は、供給ライン12から分岐してヒートシンク21の入口22Aに通じる第1の部分32Aと、ヒートシンク21の出口22Bを別個のドレン31に接続する第2の部分32Bとを備える。冷媒流れを調整するためのバルブ24’’’が、リンス流体ライン32の第2の部分32Bに設けられることができる。よって、この実施形態では、既存のラインが、冷媒を供給するために使用され、当該ラインは、別の方法ではリンス流体を供給するために使用される。バルブ13および24’’’は、上記実施形態でのように制御されることができる。
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
体外血液処理のための装置であって、複数のラインを有し、かつ透析治療のために透析液を供給するための水圧システムと、少なくとも1つの電気的構成要素を備える制御システムとを備え、前記水圧システムは、前記体外血液処理のための装置に流体を供給するための少なくとも1つのポートを有し、
前記体外血液処理のための装置が、前記制御システムの前記電気的構成要素または電気的構成要素のうちの少なくとも1つを冷却するための冷却装置を有し、前記冷却装置が、流体によって冷却されることができ、かつ少なくとも1つの電気的構成要素と熱接触している少なくとも1つのヒートシンクを有し、前記冷却装置が、流体を供給するための前記ポートと流体接続している少なくとも1つの入口を有し、ドレンと流体接続している少なくとも1つの出口を有する
ことを特徴とする、体外血液処理のための装置。
[C2]
前記水圧システムが、入口を有する流体調製装置を有し、流体ラインを介して流体を供給するための前記ポートが、前記流体調製装置の前記入口に接続され、バイパスラインが前記供給ラインから外れ、前記バイパスラインが前記ドレンと流体接続していることを特徴とする、C1に記載の体外血液処理のための装置。
[C3]
前記流体調製装置が、流体を収集するための入力チャンバを有し、前記流体調製装置の前記入口が、前記入力チャンバの入口であることを特徴とする、C2に記載の体外血液処理のための装置。
[C4]
前記供給ラインにおける前記流体の流れを遮断または調整するための手段が、前記供給ラインからの前記バイパスラインの分岐の下流に設けられることを特徴とする、C2または3に記載の体外血液処理のための装置。
[C5]
前記供給ラインが、流体を供給するための前記ポートを前記冷却装置の前記入口に接続する第1の部分と、前記冷却装置の前記出口を前記流体調製装置の前記入口に接続する第2の部分とを備えることを特徴とする、C2~4のいずれか一項に記載の体外血液処理のための装置。
[C6]
前記バイパスラインの第1の部分が、流体を供給するための前記ポートまたは前記供給ラインを前記冷却装置の前記入口に接続し、前記冷却装置の前記出口が、前記バイパスラインの第2の部分を介してドレンと流体接続していることを特徴とする、C2または3に記載の体外血液処理のための装置。
[C7]
前記流体の流れを遮断または調整するための手段が、前記バイパスラインに設けられることを特徴とする、C2~6のいずれか一項に記載の体外血液処理のための装置。
[C8]
前記冷却装置が、前記ヒートシンクと熱接触している電気的構成要素の温度を測定するための温度センサと、前記温度が指定されたしきい値より下になるように、前記バイパスラインにおける前記流体の流れを遮断または調整するための前記手段を作動する制御ユニットとを有することを特徴とする、C7に記載の体外血液処理のための装置。
[C9]
前記ドレンが、前記水圧システムのための追加のドレン、特に処理中の透析液のためのドレンとは独立していることを特徴とする、C1~8のいずれか一項に記載の体外血液処理のための装置。
[C10]
体外血液処理のための装置を動作させるための方法であって、前記装置は、複数のラインを有し、かつ透析器に透析液を供給するための水圧システムと、少なくとも1つの電気的構成要素を有する制御システムとを備え、前記透析液は、前記体外血液処理のための装置に供給される流体を使用して生成され、
前記制御システムの少なくとも1つの構成要素を冷却するために、前記構成要素が、前記透析液を生成するための前記流体を使用して冷却されるヒートシンクと熱接触することを特徴とする、方法。
[C11]
前記透析液を生成するために使用される前記流体が浸透液であることを特徴とする、C10に記載の方法。
[C12]
体外血液処理のための装置を動作させるための方法であって、前記装置は、複数のラインを有し、かつ透析器に透析液を供給するための水圧システムと、少なくとも1つの電気的構成要素を有する制御システムとを備え、前記体外血液処理のための装置は、前記水圧システムの熱水消毒を実施するための動作モードを提供し、ここで、指定された温度に加熱された流体は、前記水圧システムの前記ラインのうちの少なくともいくつかを流れ、
前記熱水消毒の動作モード中、前記ヒートシンクは、指定された温度に加熱された前記流体が前記水圧システムの前記ラインのうちの少なくともいくつかを流れる間に、前記体外血液処理のための装置に供給される流体を使用して冷却されることを特徴とする、方法。
[C13]
前記熱水消毒のために使用される前記流体が浸透液であることを特徴とする、C12に記載の方法。
[C14]
前記少なくとも1つの構成要素の温度が測定され、前記体外血液処理のための装置に供給された前記流体の前記供給が、前記少なくとも1つの構成要素の前記温度が指定されたしきい値より下になるように調整されることを特徴とする、C10~13のいずれか一項に記載の方法。
[C15]
C1~9のいずれか一項に記載の装置が前記方法を実施するために使用されることを特徴とする、C10~14のいずれか一項に記載の方法。