(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】加工システム、測定プローブ、形状測定装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/20 20060101AFI20230718BHJP
【FI】
B23Q17/20 A
(21)【出願番号】P 2019561398
(86)(22)【出願日】2017-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2017046371
(87)【国際公開番号】W WO2019130381
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】山田 智明
(72)【発明者】
【氏名】西川 静雄
(72)【発明者】
【氏名】宮本 敏
(72)【発明者】
【氏名】森下 淳一
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-221314(JP,A)
【文献】特開2010-194660(JP,A)
【文献】特表2010-519533(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0126677(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0086095(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/20、17/24
G01B 7/00、11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物の形状を算出するための測定情報
と、前記測定情報を生成した時期を示す情報とを出力する測定部を含む工作機械と、
前記加工対象物の
形状測定時における前記測定部の位置に関する位置情報を
周期的に生成し、生成した前記位置情報と、当該位置情報の生成に応じて生成される生成時期信号とを出力する制御部と、
出力された前記位置情報を取得するとともに、前記生成時期信号を前記位置情報の生成時期からの遅れ誤差を含んだ取得時期において取得する取得部と、
前記取得部が取得した複数の前記生成時期信号についての取得時期の間隔を示す統計値を算出する取得間隔算出部と、
前記取得間隔算出部が算出する前記統計値に少なくとも基づいて、前記位置情報が生成された時期を推定する推定部と、
前記測定情報と
、前記測定情報が生成された時期を示す情報と、前記位置情報と
、前記推定部が推定した時期とに基づいて、前記加工対象物の形状を算出する形状算出部と
を備える加工システム。
【請求項2】
前記推定部は、前記位置情報が生成された時期と前記取得部が前記生成時期信号を取得した時期との時間差に含まれる系統誤差に基づいて、前記位置情報が生成された時期を推定する
請求項1に記載の加工システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記位置情報を生成する第1の周期よりも長い第2の周期によって前記生成時期信号を出力し、
前記取得間隔算出部は、前記第2の周期によって出力される前記生成時期信号の取得間隔を示す値を前記統計値として算出し、
前記推定部は、前記統計値に基づいて前記第1の周期を推定することにより、前記位置情報が生成された時期を推定する
請求項1又は請求項2に記載の加工システム。
【請求項4】
工作機械に取り付け可能であって、前記工作機械の加工対象物の形状を算出するための測定情報
と、前記測定情報を生成した時期を示す情報とを生成する測定部と、
前記加工対象物の
形状測定時における前記測定部の位置に関する情報として前記工作機械が
周期的に生成する位置情報を取得するとともに、当該位置情報の生成に応じて生成される生成時期信号を、前記位置情報の生成時期からの遅れ誤差を含んだ取得時期において取得する取得部と、
前記取得部が取得した複数の前記生成時期信号についての取得時期の間隔を示す統計値を算出する取得間隔算出部と、
前記取得間隔算出部が算出する前記統計値に少なくとも基づいて、前記位置情報が生成された時期を推定する推定部と、
前記測定情報と
、前記測定情報が生成された時期を示す情報と、前記位置情報と
、前記推定部が推定した時期とに基づいて、前記加工対象物の形状を算出する形状算出部と
を備える形状算出システム。
【請求項5】
工作機械に取り付け可能な形状測定プローブであって、
前記工作機械の加工対象物を撮像することにより前記加工対象物の測定情報
と、前記測定情報を生成した時期を示す情報とを生成する測定部と、
前記加工対象物の
形状測定時における前記形状測定プローブの位置に関する情報として、前記工作機械が
周期的に生成する位置情報の生成に応じて生成される生成時期信号を、前記位置情報の生成時期からの遅れ誤差を含んだ取得時期において取得する取得部と、
前記取得部が取得した複数の前記生成時期信号についての取得時期の間隔を示す統計値を算出する取得間隔算出部と、
前記取得間隔算出部が算出する前記統計値に少なくとも基づいて、前記位置情報が生成された時期を推定する推定部と、
前記測定情報と
、前記測定情報が生成された時期を示す情報と、前記位置情報と
、前記推定部が推定した時期に関する情報と前記測定情報とを出力する出力部と、
を備える形状測定プローブ。
【請求項6】
工作機械に取り付け可能な測定部が生成する前記工作機械の加工対象物の形状を算出するための測定情報
と、前記測定情報を生成した時期を示す情報とを取得する測定情報取得部と、
前記加工対象物の
形状測定時における前記測定部の位置に関する情報として、前記工作機械が
周期的に生成する位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記工作機械から前記位置情報の生成に応じて生成される生成時期信号を、前記位置情報の生成時期からの遅れ誤差を含んだ取得時期において取得する信号取得部と、
前記信号取得部が取得した複数の前記生成時期信号についての取得時期の間隔を示す統計値を算出する取得間隔算出部と、
前記取得間隔算出部が算出する前記統計値に少なくとも基づいて、前記位置情報が生成された時期を推定する推定部と、
前記測定情報と
、前記測定情報が生成された時期を示す情報と、前記位置情報と
、前記推定部が推定した時期とに基づいて、前記加工対象物の形状を算出する形状算出部と
を備える形状算出装置。
【請求項7】
工作機械に取り付け可能な測定部が出力する前記工作機械の加工対象物の形状を算出するための測定情報
と、前記測定情報を生成した時期を示す情報とを取得することと、
前記加工対象物の
形状測定時における前記測定部の位置に関する情報として前記工作機械が
周期的に生成する位置情報を取得することと、
前記位置情報の生成に応じて前記工作機械によって生成される生成時期信号を、前記位置情報の生成時期からの遅れ誤差を含んだ取得時期において取得することと、
取得された複数の前記生成時期信号についての取得時期の間隔を示す統計値を算出することと、
算出された前記統計値に少なくとも基づいて、前記位置情報が生成された時期を推定することと、
取得された前記測定情報と、
取得された前記測定情報が生成された時期を示す情報と、取得された前記位置情報と、推定された前記時期とに基づいて、前記加工対象物の形状を算出することと
を有する形状測定方法。
【請求項8】
コンピュータに、
工作機械に取り付け可能な測定部が出力する前記工作機械の加工対象物の形状を算出するための測定情報
と、前記測定情報を生成した時期を示す情報とを前記測定部から取得することと、
前記加工対象物の
形状測定時における前記測定部の位置に関する情報として前記工作機械が
周期的に生成する位置情報を取得することと、
前記位置情報の生成に応じて前記工作機械によって生成される生成時期信号を、前記位置情報の生成時期からの遅れ誤差を含んだ取得時期において取得することと、
取得された複数の前記生成時期信号についての取得時期の間隔を示す統計値を算出することと、
算出された前記統計値に少なくとも基づいて、前記位置情報が生成された時期を推定することと、
取得された前記測定情報と、
取得された前記測定情報が生成された時期を示す情報と、取得された前記位置情報と、推定された前記時期とに基づいて、前記加工対象物の形状を算出することと
を実行させるためのプログラム。
【請求項9】
工作機械に取り付け可能な測定部で加工対象物の形状を算出するための測定情報
と、前記測定情報を生成した時期を示す情報とを生成することと、
前記加工対象物の
形状測定時における前記測定部の位置に関する位置情報を
周期的に生成することと、
前記位置情報の生成に応じて生成される生成時期信号を、前記位置情報の生成時期からの遅れ誤差を含んだ取得時期において取得することと、
取得された複数の前記生成時期信号についての取得時期の間隔を示す統計値を算出することと、
算出された前記統計値に少なくとも基づいて、前記位置情報が生成された時期を推定することと、
取得された前記測定情報と、
取得された前記測定情報が生成された時期を示す情報と、取得された前記位置情報と、推定された前記時期とに基づいて、前記加工対象物の形状を算出することと
を有する加工対象物の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工システム、測定プローブ、形状測定装置、及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物の表面を非接触に走査して当該測定対象物の表面形状を測定する非接触形状測定装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
このような非接触形状測定装置は、NC(numerically-controlled)工作機の加工対象物の表面形状の測定に用いられる場合がある。この場合、例えば、NC工作機の工具主軸に取り付けられた測定プローブを、NC工作機による座標制御によって加工対象物に対して相対的に移動させることにより加工対象物の表面形状を算出するための画像を取得する。このような非接触形状測定装置においては、測定プローブが取得した加工対象物の画像に対して、加工対象物に対する測定プローブの相対位置に基づく座標変換演算を施すことにより、加工対象物の形状データを算出する。
【0005】
このような非接触形状測定装置においては、測定プローブの座標はNC工作機によって制御され、加工対象物の形状を算出するための加工対象物の画像は測定プローブによって取得される場合がある。この場合、非接触形状測定装置は、加工対象物の形状データを算出するためには、加工対象物の画像を測定プローブから、測定プローブの座標をNC工作機からそれぞれ取得する。
【0006】
しかしながら、測定プローブから画像が取得されるタイミングと、NC工作機から測定プローブの座標が取得されるタイミングとの間には時間的な誤差が生じ、さらにこの時間的な誤差には誤差間のばらつきが生じる。このため、従来の非接触形状測定装置においては、算出される加工対象物の形状データの精度が低下してしまうという問題があった。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様は、加工対象物の形状を算出するための測定情報と、前記測定情報を生成した時期を示す情報とを出力する測定部を含む工作機械と、前記加工対象物の形状測定時における前記測定部の位置に関する位置情報を周期的に生成し、生成した前記位置情報と、当該位置情報の生成に応じて生成される生成時期信号とを出力する制御部と、出力された前記位置情報を取得するとともに、前記生成時期信号を前記位置情報の生成時期からの遅れ誤差を含んだ取得時期において取得する取得部と、前記取得部が取得した複数の前記生成時期信号についての取得時期の間隔を示す統計値を算出する取得間隔算出部と、前記取得間隔算出部が算出する前記統計値に少なくとも基づいて、前記位置情報が生成された時期を推定する推定部と、前記測定情報と、前記測定情報が生成された時期を示す情報と、前記位置情報と、前記推定部が推定した時期とに基づいて、前記加工対象物の形状を算出する形状算出部とを備える加工システムである。
【0008】
本発明の一態様は、工作機械に取り付け可能であって、前記工作機械の加工対象物の形状を算出するための測定情報と、前記測定情報を生成した時期を示す情報とを生成する測定部と、前記加工対象物の形状測定時における前記測定部の位置に関する情報として前記工作機械が周期的に生成する位置情報を取得するとともに、当該位置情報の生成に応じて生成される生成時期信号を、前記位置情報の生成時期からの遅れ誤差を含んだ取得時期において取得する取得部と、前記取得部が取得した複数の前記生成時期信号についての取得時期の間隔を示す統計値を算出する取得間隔算出部と、前記取得間隔算出部が算出する前記統計値に少なくとも基づいて、前記位置情報が生成された時期を推定する推定部と、前記測定情報と、前記測定情報が生成された時期を示す情報と、前記位置情報と、前記推定部が推定した時期とに基づいて、前記加工対象物の形状を算出する形状算出部と
を備える形状算出システムである。
【0009】
本発明の一態様は、工作機械に取り付け可能な形状測定プローブであって、前記工作機械の加工対象物を撮像することにより前記加工対象物の測定情報と、前記測定情報を生成した時期を示す情報とを生成する測定部と、前記加工対象物の形状測定時における前記形状測定プローブの位置に関する情報として、前記工作機械が周期的に生成する位置情報の生成に応じて生成される生成時期信号を、前記位置情報の生成時期からの遅れ誤差を含んだ取得時期において取得する取得部と、前記取得部が取得した複数の前記生成時期信号についての取得時期の間隔を示す統計値を算出する取得間隔算出部と、前記取得間隔算出部が算出する前記統計値に少なくとも基づいて、前記位置情報が生成された時期を推定する推定部と、前記測定情報と、前記測定情報が生成された時期を示す情報と、前記位置情報と、前記推定部が推定した時期に関する情報と前記測定情報とを出力する出力部と、を備える形状測定プローブである。
【0010】
本発明の一態様は、工作機械に取り付け可能な測定部が生成する前記工作機械の加工対象物の形状を算出するための測定情報と、前記測定情報を生成した時期を示す情報とを取得する測定情報取得部と、前記加工対象物の形状測定時における前記測定部の位置に関する情報として、前記工作機械が周期的に生成する位置情報を取得する位置情報取得部と、前記工作機械から前記位置情報の生成に応じて生成される生成時期信号を、前記位置情報の生成時期からの遅れ誤差を含んだ取得時期において取得する信号取得部と、前記信号取得部が取得した複数の前記生成時期信号についての取得時期の間隔を示す統計値を算出する取得間隔算出部と、前記取得間隔算出部が算出する前記統計値に少なくとも基づいて、前記位置情報が生成された時期を推定する推定部と、前記測定情報と、前記測定情報が生成された時期を示す情報と、前記位置情報と、前記推定部が推定した時期とに基づいて、前記加工対象物の形状を算出する形状算出部と
を備える形状算出装置である。
【0011】
本発明の一態様は、工作機械に取り付け可能な測定部が出力する前記工作機械の加工対象物の形状を算出するための測定情報と、前記測定情報を生成した時期を示す情報とを取得することと、前記加工対象物の形状測定時における前記測定部の位置に関する情報として前記工作機械が周期的に生成する位置情報を取得することと、前記位置情報の生成に応じて前記工作機械によって生成される生成時期信号を、前記位置情報の生成時期からの遅れ誤差を含んだ取得時期において取得することと、取得された複数の前記生成時期信号についての取得時期の間隔を示す統計値を算出することと、算出された前記統計値に少なくとも基づいて、前記位置情報が生成された時期を推定することと、取得された前記測定情報と、取得された前記測定情報が生成された時期を示す情報と、取得された前記位置情報と、推定された前記時期とに基づいて、前記加工対象物の形状を算出することとを有する形状測定方法である。
【0012】
本発明の一態様は、コンピュータに、工作機械に取り付け可能な測定部が出力する前記工作機械の加工対象物の形状を算出するための測定情報と、前記測定情報を生成した時期を示す情報とを前記測定部から取得することと、前記加工対象物の形状測定時における前記測定部の位置に関する情報として前記工作機械が周期的に生成する位置情報を取得することと、前記位置情報の生成に応じて前記工作機械によって生成される生成時期信号を、前記位置情報の生成時期からの遅れ誤差を含んだ取得時期において取得することと、取得された複数の前記生成時期信号についての取得時期の間隔を示す統計値を算出することと、算出された前記統計値に少なくとも基づいて、前記位置情報が生成された時期を推定することと、取得された前記測定情報と、取得された前記測定情報が生成された時期を示す情報と、取得された前記位置情報と、推定された前記時期とに基づいて、前記加工対象物の形状を算出することとを実行させるためのプログラムである。
【0013】
本発明の一態様は、コンピュータに、工作機械に取り付け可能な測定部が出力する前記工作機械の加工対象物の形状を算出するための測定情報と、前記測定情報を生成した時期を示す情報とを前記測定部から取得することと、前記加工対象物の形状測定時における前記測定部の位置に関する情報として前記工作機械が周期的に生成する位置情報を取得することと、前記位置情報の生成に応じて前記工作機械によって生成される生成時期信号を、前記位置情報の生成時期からの遅れ誤差を含んだ取得時期において取得することと、取得された複数の前記生成時期信号についての取得時期の間隔を示す統計値を算出することと、算出された前記統計値に少なくとも基づいて、前記位置情報が生成された時期を推定することと、取得された前記測定情報と、取得された前記測定情報が生成された時期を示す情報と、取得された前記位置情報と、推定された前記時期とに基づいて、前記加工対象物の形状を算出することとを実行させるためのプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態による加工システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態の加工システムの動作のタイミングを示す図である。
【
図3】本実施形態の加工システムの動作フローの一例を示す図である。
【
図4】本実施形態の機械座標推定部による推定機械座標の算出手順の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態における系統誤差の取得手順の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態の推定トリガパルス取得タイミングの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態による加工システム1の機能構成の一例を示す図である。
【0016】
[加工システム1の機能構成]
加工システム1は、加工機100と、形状算出装置200と、測定プローブPBとを備える。加工機100は、例えば工作機械(例えば、NC工作機)であって、工具主軸MSの位置座標を制御することにより、加工対象物OBJを加工する。この工具主軸MSには、測定プローブPBが取り付けられている。
なお、測定プローブPBは測定部と言い換えることもできる。また、測定プローブPBは、工具主軸MSに取り外し可能に構成されており、工具主軸MSには、測定プローブPBの他、加工対象物OBJを加工する工具(例えば、バイトやフライス)が測定プローブPBと交換可能に取り付けられる。
【0017】
測定プローブPB(測定部)は、光投影部PRJと撮像部CAMとを備えている。光投影部PRJは、加工対象物OBJの表面にライン状の強度分布を有するライン光を投影する。また、撮像部CAMは、光投影部PRJによりライン光が投影された加工対象物OBJの表面を撮像して画像データIMを生成する。この画像データIMは、撮像部CAMから出力される情報である。光投影部PRJと撮像部CAMは共通の筐体で固定されている。したがって、光投影部PRJからのライン光の投影方向と撮像部CAMによる撮像方向とのそれぞれの位置関係は固定された状態に保たれている。したがって、ライン光の投影方向と撮像部CAMの撮像方向の関係を基に、画像データIMにおいて検出されたライン光の像の位置から三角測量法に基づき、加工対象物OBJの三次元空間における位置(すなわち、加工対象物OBJの形状)を求めることができる。ここで、画像データIMは、加工対象物OBJの形状を算出するための測定情報である。光投影部PRJは、不図示の光源と、光源から照射された光の空間的な光強度分布をライン状に変調して加工対象物OBJに投影する投影光学系を備える。一例として、光源はレーザーダイオードを含み、投影光学系はシリンドリカルレンズを含む複数の光学素子から成る。レーザーダイオードから照射された光は、シリンドリカルレンズが正のパワーを有する方向に広げられて、投影方向に沿って出射する。撮像部CAMは、不図示の撮像素子と光投影部PRJからライン光が投影された加工対象物OBJの像を撮像素子へ結像させる結像光学系を備える。撮像素子は、撮像した加工対象物OBJの像に基づき、画素毎に所定の強度の信号を出力する。一例として、撮像素子は、CCDやCMOS等の固体撮像素子であり、結像光学系はレンズなどの複数の光学素子から成る。撮像部CAMは、撮像素子から出力された信号に基づき、各画素の座標に紐付けられた一連の信号を生成し、撮像部CAMはその信号に基づいたデータを画像データIMとして生成する。
ここで、画像データIMとは、撮像素子の各画素から出力される所定の強度の信号の値(例えば、画素値)が、画素の座標に対応付けられて構成されている情報(例えば、2次元画像を生成するための情報)であるとして説明するが、これに限られず、画像データIMは、撮像素子から出力された信号に基づいて既存の処理で加工されたデータであってもし、撮像素子から出力された未処理の信号であってもよい。
【0018】
本実施形態の一例では、生成された画像データIMは、光切断法による加工対象物OBJの三次元形状測定に用いられる。ここで、光切断法とは、加工対象物OBJの表面に測定プローブPBからライン光(平面に投影した形状がライン状の光)を投影することにより、ライン光が投影された加工対象物OBJの表面におけるライン光の像(すなわち、加工対象物OBJの表面におけるライン光の像を含む画像データIMを利用して、三角測量により加工対象物OBJの表面の位置座標を幾何学的に求める非接触三次元形状測定法である。本実施形態の一例では、測定プローブPBと加工対象物OBJとを相対的に移動させることにより、加工対象物OBJの表面全体の位置座標を求める。上述したように本実施形態の一例において測定プローブPBは工具主軸MSに取り付けられているため、工具主軸MSの位置座標(以下の説明において、機械座標MCとも記載する。)を求めれば、測定プローブPBの位置座標を求めることができる。この機械座標MCとは、加工対象物OBJの測定時における測定プローブPBの位置に関する位置情報の一例である。本実施形態の一例に示す加工システム1は、機械座標MCと、この機械座標MCにおいて測定プローブPBが生成する画像データIMとに基づいて、加工対象物OBJの三次元形状を測定する。
【0019】
ここで、機械座標MCは工具主軸MSの位置制御を行う加工機100が生成し、画像データIMは測定プローブPBが生成する。すなわち、機械座標MCを生成する装置と、画像データIMを生成する装置とが互いに別の装置である。このため、機械座標MCを生成するタイミングと、画像データIMを生成するタイミングとを厳密に同期させつづけることが困難であり、これら2つのタイミング間にはゆらぎ(言い換えると偶発的な誤差であり、いわゆるジッタδ)が生じる。このジッタδが生じると、測定プローブPBが生成した画像データIMに基づいて算出される三次元形状の測定結果に誤差が生じる。以下、本実施形態の加工システム1が、三次元形状の測定結果に生じるジッタδによる誤差を低減する仕組みについて説明する。
【0020】
なお、本実施形態では、加工システム1が三次元形状の測定を光切断法によって行う場合を一例にして説明するがこれに限られない。光切断法以外の形状測定方法であったとしても、加工対象物OBJの形状を示す情報(例えば画像データIM)を生成する装置と、この情報が生成された位置を示す情報(例えば機械座標MC)を生成する装置とが互いに別装置の場合には、上述したジッタδによる課題が生じる。すなわち、加工システム1が、光切断法以外の周知の非接触式の形状測定方法や周知の接触式の形状測定方法によって加工対象物OBJの形状を測定するものであってもよい。
なお、加工システム1は、加工対象物OBJの形状を示す情報を生成する形状測定システムとしても機能する。
【0021】
[加工機100の機能構成]
加工機100は、加工機制御部110と、プローブ制御部120とを備える。加工機制御部110は、機械座標生成部111と、トリガパルス出力部112とをその機能部として備える。ここで、加工機制御部110は、機械座標生成部111及びトリガパルス出力部112の機能をハードウエアによって実現していてもよいし、これらの機能をソフトウエアによって実現していてもよい。また、加工機制御部110は、機械座標生成部111及びトリガパルス出力部112の機能の一部をハードウエアによって、これらの機能の他の一部をソフトウエアによって実現していてもよい。加工機制御部110は、機械座標生成部111及びトリガパルス出力部112の機能の一部又は全部をハードウエアによって実現する場合には、ASICやプログラマブルロジックデバイスによって実現していてもよい。また、加工機制御部110は、機械座標生成部111及びトリガパルス出力部112の機能のすべてを統合して実現してもよいし、これらの機能の一部を統合せずに実現してもよい。
この一例において、加工機制御部110は、マイクロプロセッサなどの演算部を備えており、機械座標生成部111及びトリガパルス出力部112の機能の一部をソフトウエアによって実現する。
【0022】
加工機制御部110は、駆動装置(不図示)を制御することにより工具主軸MSを加工対象物OBJに対して相対的に移動させる。機械座標生成部111は、所定の周期Tgenによって工具主軸MSの現在の位置座標を示す機械座標MCを生成する。なお、この機械座標MCは、工具主軸MS上のゲージラインの座標であってもよいし、測定プローブPBのいずれかの位置を示す座標であってもよい。この所定の周期Tgenは、一例として、4[msec]である。この一例において、機械座標生成部111は、4[msec]毎に工具主軸MSの現在の位置座標を検出し、この位置座標を示す機械座標MCを生成する。
機械座標生成部111は、生成した機械座標MCを、形状算出装置200に対して出力する。
【0023】
また、機械座標生成部111は、機械座標MCを生成すると、トリガパルス出力部112に対してトリガパルス出力指示TPCを出力する。このトリガパルス出力指示TPCとは、機械座標生成部111がトリガパルス出力部112に対してトリガパルス信号TPSの出力を指示する信号である。なお、機械座標生成部111が機械座標MCを生成するタイミングは、機械座標MCを生成した時刻、加工機100の稼働開始からの経過時間、測定プローブPBの稼働開始からの経過時間、形状算出装置200の稼働開始からの経過時間などの他、基準となる時刻からの経過時間などに基づく。
【0024】
また、タイミングとは、時期とも称される。すなわち、機械座標生成部111が機械座標MCを生成するタイミングとは、機械座標生成部111が機械座標MCを生成する時期と称してもよい。
例えば、機械座標MCを生成するタイミングと画像データIMを生成するタイミングとの同期の一例として、時刻どうしを同期させる場合について説明する。この場合、加工機100と測定プローブPBとがそれぞれ独立した時計を備えており、機械座標MCを生成する時刻と、画像データIMを生成する時刻とを同期させる。
【0025】
トリガパルス出力部112は、機械座標生成部111が出力するトリガパルス出力指示TPCに応じて、形状算出装置200に対してトリガパルス信号TPSを出力する。具体的には、トリガパルス出力部112は、機械座標生成部111からトリガパルス出力指示TPCが出力されると、そのトリガパルス出力指示TPCを検出する。トリガパルス出力部112は、トリガパルス出力指示TPCを検出すると、形状算出装置200に対してトリガパルス信号TPSを出力する。このトリガパルス信号TPSとは、機械座標生成部111によって機械座標MCが生成されたタイミング(時期)を示す信号である。このトリガパルス信号TPSのことを生成時期信号とも称する。また、トリガパルス信号TPSは、機械座標MCが生成されたことを示す信号と言い換えることもできるし、トリガ出力指示TPCが受信されたタイミング(時期)を示す信号と言い換えることもできる。
なお、本実施形態の一例では、機械座標MCが生成されたタイミングは、トリガパルス信号TPSの立ち上がりエッジに対応する。具体的には、機械座標生成部111は、機械座標MCを生成するタイミングでトリガパルス出力指示TPCを立ち上げる。つまりこの場合、トリガパルス出力指示TPCの立ち上がりエッジは、機械座標MCが生成されたタイミングを示す。また、本実施形態の一例では、トリガパルス出力部112は、トリガパルス出力指示TPCの立ち上がりエッジを検出すると、トリガパルス信号TPSを立ち上げる。つまりこの場合、トリガパルス信号TPSの立ち上がりエッジは、トリガパルス出力部112によるトリガパルス出力指示TPCの立ち上がりエッジ検出タイミングを示す。
図2を参照して、機械座標生成部111が機械座標MCを生成するタイミングと、トリガパルス出力部112がトリガパルス信号TPSを出力するタイミングとについて説明する。
【0026】
図2は、本実施形態の加工システム1の動作のタイミングを示す図である。機械座標生成部111が生成する機械座標MCを一例として座標Cnと表し、
図2(A)に示す。機械座標生成部111は、上述したように、周期Tgenによって工具主軸MSの現在の位置座標を示す機械座標MCを生成する。機械座標生成部111は、時刻t1
1において座標C1を機械座標MCとして生成する。この場合、時刻t1
1は座標C1の生成タイミングである。機械座標生成部111は、座標C1を生成すると、トリガパルス出力部112に対してトリガパルス出力指示TPCを出力する。トリガパルス出力部112は、この信号を取得すると、時刻t1
1
においてトリガパルス信号TPSを出力する。この場合、座標C1のトリガパルス出力タイミングT1cとは、時刻t1
1
である
。
【0027】
図1に戻り加工システム1の機能構成の説明を続ける。プローブ制御部120は、測定プローブPBの光投影部PRJによるライン光の投影動作と、撮像部CAMによる撮像動作とを同期させつつ制御する。プローブ制御部120による光投影部PRJの投影動作と撮像部CAMの撮像動作の同期制御によって、光投影部PRJから加工対象物OBJへライン光を投影させつつ、その像を撮像部CAMで撮像することができる。この一例では、測定プローブPBは、プローブ制御部120の制御により30[msec]毎に加工対象物OBJを撮像する。つまり、測定プローブPBの撮像周期は、この一例の場合、30[msec]である。
一例として、プローブ制御部120は、撮像部CAMに対して撮像指示信号を出力する。撮像部CAMは、プローブ制御部120から撮像指示信号が出力されると加工対象物OBJを撮像し、撮像素子の各画素から出力される信号の強度に基づく画像データIMを生成する。測定プローブPB(撮像部CAM)は、生成した画像データIMをプローブ制御部120に出力する。なお、以下の説明においてプローブ制御部120から出力される撮像指示信号に基づいて、撮像部CAMが加工対象物OBJを撮像するタイミングを、撮像部CAMの露光タイミングとも称する。なお、撮像部CAMのなお、撮像部CAMの露光タイミングは、撮像部CAMで加工対象物OBJが撮像部CAMで撮像されるタイミングとも言い換えることができるし、撮像部CAMで画像データIMが生成されるタイミングとも言い換えることもできる。
プローブ制御部120は、撮像部CAMが生成した画像データIMを取得する。プローブ制御部120は、取得した画像データIMと、取得した画像データIMについての撮像部CAMの露光タイミングTEmとを対応付けて、形状算出装置200に出力する。
なお、本実施形態の一例では、プローブ制御部120は、加工機100に備えられているとして説明するがこれに限られない。プローブ制御部120は、測定プローブPBに内蔵されていてもよいし、加工機100以外の装置(例えば、形状算出装置200)に備えられていてもよい。
【0028】
[形状算出装置200の機能構成]
形状算出装置200は、機械座標取得部210と、トリガパルス取得部220と、画像情報取得部230と、タイミング情報付加部240と、機械座標推定部250と、点群情報生成部260とをその機能部として備える。ここで、形状算出装置200は、機械座標取得部210、トリガパルス取得部220、画像情報取得部230、タイミング情報付加部240、機械座標推定部250、及び点群情報生成部260の機能をハードウエアによって実現していてもよいし、これらの機能をソフトウエアによって実現していてもよい。また、加工機制御部110は、これらの機能の一部をハードウエアによって、これらの機能の他の一部をソフトウエアによって実現していてもよい。加工機制御部110は、これらの機能の一部又は全部をハードウエアによって実現する場合には、ASICやプログラマブルロジックデバイスによって実現していてもよい。また、加工機制御部110は、これらの機能のすべてを統合して実現してもよいし、これらの機能の一部を統合せずに実現してもよい。
この一例において、形状算出装置200は、例えばパーソナルコンピュータであって、機械座標取得部210、トリガパルス取得部220、画像情報取得部230、タイミング情報付加部240、機械座標推定部250、及び点群情報生成部260の機能の一部をソフトウエアによって実現する。
【0029】
機械座標取得部210は、機械座標生成部111が出力する機械座標MCを取得する。機械座標取得部210は、取得した機械座標MCを機械座標推定部250に出力する。
【0030】
トリガパルス取得部220は、トリガパルス出力部112が出力するトリガパルス信号TPSを取得する。トリガパルス取得部220は、トリガパルス信号TPSの立ち上がりエッジを機械座標MCが生成されたタイミングであるとして、トリガパルス信号TPSを取得する。換言すれば、トリガパルス取得部220は、トリガパルス信号TPSの立ち上がりエッジを機械座標MCが生成された時期であるとして、トリガパルス信号TPSを取得する。
なお、トリガパルス信号TPSの立ち上がりエッジを機械座標MCが生成されたタイミングであるとするのは一例であって、トリガパルス取得部220は、トリガパルス信号TPSの立ち下りエッジを機械座標MCが生成されたタイミングであるとしてもよく、トリガパルス信号TPSの立ち上がりエッジと立ち下りエッジとの中間を機械座標MCが生成されたタイミングであるとしてもよい。
また、トリガパルス取得部220は、トリガパルス取得タイミングTnを生成する。このトリガパルス取得タイミングTnとは、トリガパルス取得部220がトリガパルス信号TPSを取得したタイミングを示すタイムスタンプである。この場合、トリガパルス取得タイミングTnは、トリガパルス取得部220がトリガパルス信号TPSを取得した時刻又は時間によって表現される。
具体的には、トリガパルス取得タイミングTnは、トリガパルス取得部220がトリガパルス信号TPSを取得した時刻や形状算出装置200の稼働開始からの経過時間などによって示される。
トリガパルス取得部220は、トリガパルス取得タイミングTnをタイミング情報付加部240に出力する。
【0031】
ここで、
図2を参照して、トリガパルス取得タイミングTnについて説明する。まず、系統誤差εとジッタδとについて説明する。
【0032】
[系統誤差εとジッタδ]
加工機制御部110と形状算出装置200とは互いに別々のコンピュータ装置である。したがって、加工機制御部110と形状算出装置200との間の信号や情報のやり取りには時間的な遅れ、すなわち誤差が生じる。この誤差には、加工システム1の構成に依存し長期にわたって変化しない系統誤差εと、短期間で変化してしまうジッタδとが含まれる。このジッタδを偶然誤差ともいう。ここで、系統誤差とは、機械座標生成部111による機械座標MCの生成及びトリガパルス出力指示TPCの出力、トリガパルス出力部112によるトリガパルス信号TPSの出力、及びトリガパルス取得部220によるトリガパルス信号TPSの取得までの一連の過程の繰り返しにおいて生じる誤差が変化せずに一定(ほぼ一定)である誤差であり、偶然誤差とは、上述した機械座標MCの生成からトリガパルス信号TPSの取得までの一連の過程の繰り返しにおいて生じる誤差が変化する(ばらつく)誤差である。すなわち、ジッタδは、系統誤差ではなく偶然誤差であるから、上述した機械座標MCの生成からトリガパルス信号TPSの取得までの一連の過程の繰り返しにおいて生じる誤差が変化する(ばらつく)誤差である。ジッタδを含まない場合、すなわち系統誤差εのみを含む場合のトリガパルス取得タイミングTnoを、
図2(C)に示す。系統誤差εに加えジッタδを含む場合のトリガパルス取得タイミングTnを、
図2(D)に示す。
【0033】
図1に戻り、トリガパルス取得部220は、トリガパルス取得タイミングTnをタイミング情報付加部240及び取得間隔算出部270に出力する。
【0034】
画像情報取得部230は、プローブ制御部120が出力する画像データIMと露光タイミングTEmとを取得する。画像情報取得部230は、取得した画像データIMと露光タイミングTEmとをタイミング情報付加部240に出力する。
【0035】
タイミング情報付加部240は、画像情報取得部230から画像データIMと露光タイミングTEmとを取得する。また、タイミング情報付加部240は、トリガパルス取得部220からトリガパルス取得タイミングTnを取得する。タイミング情報付加部240は、画像データIMと、露光タイミングTEmと、トリガパルス取得タイミングTnとを対応付けて機械座標推定部250に出力する。
【0036】
取得間隔算出部270は、トリガパルス取得部220がトリガパルス信号TPSを取得したタイミングの時間間隔の平均値、すなわち平均取得間隔ITVを算出する。具体的には、取得間隔算出部270は、トリガパルス取得部220がトリガパルス信号TPSを取得する毎に、トリガパルス取得部220からトリガパルス取得タイミングTnを取得する。取得間隔算出部270は、タイミングが隣接する2つのトリガパルス信号TPSの取得タイミングの時間差を算出する。例えば、タイミングが隣接する2つのトリガパルス信号TPSの取得タイミングがトリガパルス取得タイミングTn及びトリガパルス取得タイミングTn+1である場合、取得間隔算出部270は、トリガパルス取得タイミングTnとトリガパルス取得タイミングTn+1との時間差を算出する。取得間隔算出部270は、算出した時間差に対して統計演算を行い、トリガパルス信号TPSの取得間隔を算出する。この一例では、取得間隔算出部270は、時間差の平均値をトリガパルス信号TPSの平均取得間隔ITVとして算出する。
【0037】
取得間隔算出部270は、算出した平均取得間隔ITVと、加工機制御部110においてトリガパルス信号TPSの出力周期として予め定められている周期との差分を、平均ジッタδAVEとして算出する。本実施形態の具体例においては、加工機制御部110においてトリガパルス信号TPSの出力周期として予め定められている周期は、4[msec]である。この具体例の場合、取得間隔算出部270は、算出した平均取得間隔ITVから4[msec]を差し引くことにより平均ジッタδAVEを算出する。
【0038】
なお、取得間隔算出部270は、トリガパルス取得タイミングの時間差についての統計演算を行えばよく、上述した平均取得間隔ITVのほか、各トリガパルス取得タイミングの時間差における中央値や最頻値などの値を、トリガパルス信号TPSの取得間隔として算出してもよい。
【0039】
また、取得間隔算出部270は、各トリガパルス取得タイミングの時間差の度数分布の分散や標準偏差などに基づいてトリガパルス信号TPSの取得間隔の精度を評価してもよい。例えば、取得間隔算出部270は、時間差の度数分布を複数回に分けて求め、求めた複数の度数分布のうち、分散がより小さい度数分布に基づいて取得間隔を算出してもよい。また例えば、取得間隔算出部270は、度数分布の分散の大きさや標準偏差の大きさに応じて、生成された機械座標MCの信頼性を変化させてもよい。
【0040】
取得間隔算出部270は、算出した平均ジッタδAVEを機械座標推定部250に出力する。
【0041】
機械座標推定部250は、平均ジッタδAVEと、系統誤差εとに基づいてトリガパルス出力タイミングTnc、すなわち、機械座標MC(座標Cn)が生成されたタイミングを推定する。機械座標推定部250は、トリガパルス出力タイミングTncの推定結果に基づいて、画像データIMの露光タイミングTEmにおける測定プローブPBの座標を推定する。具体的には、機械座標推定部250は、機械座標取得部210が出力した機械座標MCと、タイミング情報付加部240が出力したトリガパルス取得タイミングTn及び露光タイミングTEmと、取得間隔算出部270が出力した平均ジッタδAVEとをそれぞれ取得する。また、機械座標推定部250は、タイミング情報付加部240が出力した画像データIMを取得してもよい。
機械座標推定部250は、取得した各情報のうち、平均ジッタδAVEと、予め求められている系統誤差εとに基づいて、画像データIMに対応付けられているトリガパルス取得タイミングTnを補正する。本実施形態における一例として、機械座標推定部250は、トリガパルス取得タイミングTnから平均ジッタδAVE分の時間を差し引くことにより、ジッタδを含まず系統誤差εを含むトリガパルス取得タイミングTnoを推定する。このトリガパルス取得タイミングTnoの推定値を推定トリガパルス取得タイミングATnとも称する。すなわち、機械座標推定部250は、トリガパルス取得タイミングTnから平均ジッタδAVE分の時間を差し引くことにより、推定トリガパルス取得タイミングATnを算出する。さらに、機械座標推定部250は、算出した推定トリガパルス取得タイミングATnから系統誤差εを差し引くことによりトリガパルス出力タイミングTnc、すなわち、機械座標MC(座標Cn)が生成されたタイミングを推定する。機械座標推定部250は、推定されたトリガパルス出力タイミングTncを補正後のトリガパルス取得タイミングTnとする。
機械座標推定部250は、補正後のトリガパルス取得タイミングTn及び露光タイミングTEmに基づいて露光タイミングTEmにおける測定プローブPBの座標を推定する。機械座標推定部250は、推定した座標を推定機械座標EMCとして、画像データIMとともに点群情報生成部260に出力する。
【0042】
点群情報生成部260は、機械座標推定部250が出力する画像データIMと、推定機械座標EMCとを取得する。点群情報生成部260は、取得した画像データIMと、測定プローブPBの推定機械座標EMCとに基づいて、既知の三角測量手法によって加工対象物OBJの形状を算出(すなわち、点群の座標を算出する)。
次に、
図3を参照して加工システム1の動作フローの一例について説明する。
【0043】
[加工システム1の動作フロー]
図3は、本実施形態の加工システム1の動作フローの一例を示す図である。
(ステップS210)形状算出装置200は、加工機100に対して測定プローブPBのスキャンパスの指示を行う。
(ステップS110)加工機100の加工機制御部110は、ステップS210において指示されたスキャンパスに基づく測定プローブPBの移動を開始する。プローブ制御部120は、撮像部CAMによる撮像を開始する。プローブ制御部120は、撮像部CAMに所定の周期によって撮像させる。この一例において、所定の周期とは、30[msec]である。プローブ制御部120は、生成された画像データIMと、この撮像部CAMの露光タイミングTEmとを対応付けて、形状算出装置200に対して順次出力する。
(ステップS220)形状算出装置200の画像情報取得部230は、プローブ制御部120から出力される画像データIMと露光タイミングTEmとを取得する。画像情報取得部230は、取得した画像データIMと露光タイミングTEmとを対応付けて、形状算出装置200の記憶部(不図示)に順次記憶させる。
【0044】
(ステップS120)加工機制御部110の機械座標生成部111は、所定の周期Tgenによって測定プローブPBの位置を取得し、この測定プローブPBの位置を示す機械座標MCを生成する。この一例において、所定の周期Tgenとは、4[msec]である。また、機械座標生成部111は、機械座標MCを生成する毎に、トリガパルス出力指示TPCをトリガパルス出力部112に出力する。トリガパルス出力部112は、機械座標生成部111からトリガパルス出力指示TPCが出力されると、トリガパルス信号TPSを形状算出装置200に対して出力する。
(ステップS130)機械座標生成部111は、生成した機械座標MCを加工機制御部110の記憶部(不図示)に記憶させる。
(ステップS140)加工機制御部110は、ステップS210において指示されたスキャンパスに沿って測定プローブPBを移動させる。加工機制御部110は、ステップS210において指示されたスキャンパスに基づいて測定プローブPBを移動させている間、ステップS120及びステップS130を繰り返し実行する。具体的には、加工機制御部110は、測定プローブPBの位置がスキャンパスの終点に到達したか否かを判定する。加工機制御部110は、スキャンパスの終点に到達していないと判定した場合(ステップS140;NO)には、処理をステップS120に戻す。加工機制御部110は、スキャンパスの終点に到達したと判定した場合(ステップS140;YES)には、測定プローブPBの移動を終了させ、処理をステップS150に進める。
この結果、加工機制御部110の記憶部(不図示)には、スキャンパスに沿った測定プローブPBの機械座標MCが順次蓄積される。
【0045】
(ステップS230)形状算出装置200のトリガパルス取得部220は、ステップS120において出力されたトリガパルス信号TPSを取得する。
(ステップS240)タイミング情報付加部240は、トリガパルス取得部220が生成したトリガパルス取得タイミングTnと、画像情報取得部230が取得した画像データIM及び露光タイミングTEmとを対応づけて、形状算出装置200の記憶部(不図示)に順次記憶させる。
【0046】
(ステップS250)形状算出装置200は、スキャンパスに従った測定プローブPBの移動が終了し、加工機100からのトリガパルス信号TPSの出力が止まると、画像データIMの取得を終了する。
(ステップS260)形状算出装置200は、加工機100に対して加工機制御部110の記憶部(不図示)に蓄積されている機械座標MCの出力を要求する。
(ステップS150)機械座標生成部111は、ステップS260における機械座標MCの出力を要求に応じて、加工機制御部110の記憶部(不図示)に蓄積されている機械座標MCをまとめて出力する。
【0047】
(ステップS270)形状算出装置200の取得間隔算出部270は、トリガパルス信号TPSの平均取得間隔ITVを算出する。さらに、取得間隔算出部270は、算出した平均取得間隔ITVと、予め定められているトリガパルス信号TPSの出力周期とに基づいて、平均ジッタδAVEを算出する。
【0048】
(ステップS280)形状算出装置200の機械座標推定部250は、ステップS270において算出された平均ジッタδAVEに基づいて、露光タイミングTEmにおける測定プローブPBの座標を推定する。機械座標推定部250は、推定した座標を推定機械座標EMCとして、画像データIMとともに点群情報生成部260に出力する。
【0049】
(ステップS290)点群情報生成部260は、画像データIMと、機械座標推定部250が推定した推定機械座標EMCとに基づいて、既知の三角測量手法によって加工対象物OBJの形状を求める(すなわち、点群の座標を算出する)。
【0050】
なお、上述の一例では、加工機100は、生成した機械座標MCを記憶部(不図示)に蓄積し、蓄積した機械座標MCを形状算出装置200の要求に基づいてまとめて形状算出装置200に出力するとしたが、これに限られない。加工機100は、機械座標MCを生成する毎に(すなわち、記憶部に蓄積することなく)、生成した機械座標MCを形状算出装置200に対して出力してもよい。
次に、ステップS280における機械座標推定部250による推定機械座標EMCの算出手順について、より詳しく説明する。
【0051】
[点群情報の精度低下の要因について]
上述したように、点群情報生成部260は、撮像部CAMの露光タイミングにおける測定プローブPBの位置座標に基づいて、加工対象物OBJの点群情報を生成する。以下の説明において、撮像部CAMの露光タイミングと、そのタイミングにおける測定プローブPBの位置座標とを対応付けることを「紐づけ」又は「マッチング」と記載する。
【0052】
この画像データIMと測定プローブPBの位置座標との紐づけは、撮像部CAMの露光タイミングTEmと、測定プローブPBの位置座標が生成されたタイミングとに基づいて行われる。上述したように、測定プローブPBの位置座標(すなわち、機械座標MC)が生成された後、トリガパルス信号TPSが出力される。このトリガパルス信号TPSは、機械座標生成部111が機械座標MCを生成したタイミングにおいて出力されるトリガパルス出力指示TPCをトリガパルス出力部112が検出したことにより、トリガパルス出力部112から出力される。加工システム1の系統誤差ε及びジッタδが、仮にいずれも0(ゼロ)であれば、トリガパルス取得タイミングTnは、機械座標MCが生成された真のタイミングを示す。このように系統誤差ε及びジッタδがいずれも0(ゼロ)であると仮定した場合には、機械座標MCと、撮像部CAMの露光タイミングTEmとをそのまま紐づけすることができる。
【0053】
しかしながら、実際には加工システム1の系統誤差ε及びジッタδはいずれも0(ゼロ)ではない。
ここで、
図2に示すように、本実施形態における一例として、時刻t1
2がジッタδ1を含まない場合のトリガパルス取得タイミングT1oであり、時刻t1
3がジッタδ1を含む場合のトリガパルス取得タイミングT1である。すなわち、時刻t1
2と時刻t1
3との時間差がジッタδ1である。
具体的には、機械座標MC1の生成タイミングと、トリガパルス取得タイミングT1oとの間には、(時刻t1
2-時刻t1
1)の遅れ誤差が生じる。この遅れ誤差(時刻t1
2-時刻t1
1)には、系統誤差ε1が含まれ、ジッタδ1が含まれない。また、座標C1の生成タイミングと、トリガパルス取得タイミングT1との間には、(時刻t1
3-時刻t1
1)の遅れ誤差が生じる。この遅れ誤差(時刻t1
3-時刻t1
1)には、系統誤差ε1とジッタδ1とが含まれる。
【0054】
上述したように、生成された座標C1に対応するトリガパルス信号TPSは、トリガパルス出力タイミングT1c(時刻t11)においてトリガパルス出力部112から出力される。この一例では、トリガパルス取得部220は、トリガパルス出力タイミングT1c(時刻t11)において出力されたトリガパルス信号TPSを、トリガパルス取得タイミングT1(時刻t13)において取得する。この場合、トリガパルス出力タイミングT1cと、トリガパルス取得タイミングT1との間には、(時刻t13-時刻t11)の遅れ誤差が生じる。つまりこの場合、座標C1が生成されたタイミングと、トリガパルス取得タイミングT1との間には、(時刻t13-時刻t11)の遅れ誤差が生じる。
【0055】
このため、機械座標生成部111において機械座標MCが生成された真のタイミングと、トリガパルス取得部220がトリガパルス信号TPSを取得したタイミングとの間には時間差が生じる。したがって、トリガパルス取得部220がトリガパルス信号TPSを取得したタイミングに基づいて画像データIMと測定プローブPBの位置座標との紐づけを行うと、点群情報の位置精度に系統誤差ε及びジッタδに由来する誤差が含まれてしまう。例えば、
図2に示すように、機械座標生成部111において座標Cnが生成された真のタイミングであるトリガパルス出力タイミングTncと、トリガパルス取得部220がトリガパルス信号TPSを取得したタイミングであるトリガパルス取得タイミングTnとの間には、系統誤差εn及びジッタδn分の時間差が生じる。仮に、座標Cnがトリガパルス取得タイミングTnにおいて生成されたものとして画像データIMと測定プローブPBの位置座標との紐づけを行った場合には、画像データIMに紐づけられた測定プローブPBの位置座標が、真の位置座標に対して、系統誤差εn及びジッタδnの時間差の分ずれた位置を示すことになる。つまりこの場合、画像データIMに紐づけられた測定プローブPBの位置座標が真の位置座標からずれているため、この画像データIMに基づいて算出される加工対象物の形状データの精度が低下してしまう。
本実施形態の機械座標推定部250は、上述の系統誤差ε及びジッタδに由来する誤差の影響を次のようにして低減する。
【0056】
[機械座標推定部250による推定機械座標EMCの算出]
以下、
図4を参照して、上述した
図3に示すステップS280における動作の詳細について説明する。
図4は、本実施形態の機械座標推定部250による推定機械座標EMCの算出手順の一例を示す図である。
(ステップS2810)機械座標推定部250は、取得間隔算出部270が算出した平均ジッタδ
AVEと、記憶部(不図示)に記憶されている系統誤差εとを取得する。
【0057】
[系統誤差εの取得]
ここで、
図5を参照して系統誤差εの取得手順について説明する。
図5は、本実施形態における系統誤差εの取得手順の一例を示す図である。系統誤差εは、既知の形状の物体を測定プローブPBで観測した際の位置座標の差から求めることができる。一例として、半球体BLを測定プローブPBによって走査する場合について説明する。具体的には、同図に示すxyz直交座標系においてxy平面に半球体BLが載置されており、測定プローブPBがx軸方向に走査されて半球体BLのz軸方向の高さを測定する場合を一例にして説明する。
【0058】
この半球体BLを測定プローブPBによって走査した場合、測定プローブPBの観測位置の半球体BLの真の座標と、観測された半球体BLの座標との間には、座標生成の遅延時間に応じた座標差ξが生じる。ここで、測定プローブPBの走査方向をx軸の正方向にした測定と、走査方向をx軸の負方向にした測定との2回の測定を行う。具体的には、測定プローブPBを座標x1から座標x2を経由して座標x3に移動させる第1回目の測定と、測定プローブPBを座標x3から座標x2を経由して座標x1に移動させる第2回目の測定とを行う。これら2回の測定結果に基づいて、半球体BLの球芯の真の座標(図の座標x2における座標z2)を算出すると、走査方向がx軸の正方向である場合には座標(z2+ξ)が、走査方向がx軸の負方向である場合には座標(z2-ξ)がそれぞれ得られる。ここで、座標差ξとは、半球体BLの球芯の真の座標に対する測定誤差である。この座標差ξの値は、座標(z2+ξ)と座標(z2-ξ)との差(すなわち、2ξ)を半分にすることで求められる。ここで、x軸の正方向に走査する場合の測定プローブPBの移動速度(+v)と、x軸の負方向に走査する場合の測定プローブPBの移動速度(-v)との絶対値が互いに等しい(すなわち、移動の速さvが移動方向によらず等しい)とすれば、その速さvと座標差ξとに基づいて、遅延時間、すなわち系統誤差εを求めることができる。
機械座標推定部250は、上述のようにして予め求められている系統誤差εに基づいて、トリガパルス出力タイミングTncを算出する。
【0059】
本実施形態の形状算出装置200は、上述のようにして求められた系統誤差εを不図示の記憶部に記憶している。なお、本実施形態の一例においては、
図2に示す系統誤差ε1~系統誤差εnが一定値であり、その値が上述の手順によって求められた系統誤差εにいずれも一致しているものとして説明する。
【0060】
なお、この一例では、系統誤差εが予め求められているものとして説明するがこれに限られない。例えば、機械座標推定部250(又は他の機能部)が系統誤差εを算出する機能を有していてもよい。一例として、加工機100や形状算出装置200号機毎、又は測定される時刻毎に、系統誤差εが互いに異なる値になる場合がある。この場合には、加工対象物OBJの形状測定の前に、いわゆるボールバーを上述の半球体BLとしてステージに載置して、上述した手順によって機械座標推定部250(又は他の機能部)が系統誤差εを算出する。
【0061】
(ステップS2820)
図4に戻り、機械座標推定部250は、画像データIM毎に、露光タイミングTEmに対応するトリガパルス取得タイミングTnを取得する。具体的には、機械座標推定部250は、タイミング情報付加部240が記憶させたトリガパルス取得タイミングTnと、画像データIMと、露光タイミングTEmとを記憶部(不図示)から取得する。
【0062】
(ステップS2830)機械座標推定部250は、ステップS2820において取得したトリガパルス取得タイミングTnと、平均ジッタδ
AVEとに基づいて、推定トリガパルス取得タイミングATnを算出する。
ここで、推定トリガパルス取得タイミングATnについて
図6を参照して説明する。
【0063】
図6は、本実施形態の推定トリガパルス取得タイミングATnの一例を示す図である。ステップS2820において取得されたトリガパルス取得タイミングTnには、系統誤差εとジッタδとが、座標Cnが生成されたタイミング(すなわち、トリガパルス出力タイミングTnc)からのタイミングの誤差として含まれる(
図6(A)及び
図6(B))。この誤差のうちジッタδは、上述したように、トリガパルス信号TPSが出力される度にその大きさが変化しうる。本実施形態の取得間隔算出部270は、このジッタδの平均値を平均ジッタδ
AVEとして算出する。同図に示すように、平均ジッタδ
AVEは、例えば(時刻tn
3-時刻tn
2a)である。機械座標推定部250は、この平均ジッタδ
AVEをトリガパルス取得タイミングTn(時刻tn
3)から差し引くことにより、推定トリガパルス取得タイミングATn(時刻tn
2a)を算出する(
図6(C))。機械座標推定部250は、推定トリガパルス取得タイミングATnと同様にして、推定トリガパルス取得タイミングAT2~推定トリガパルス取得タイミングATn+1を算出する。
【0064】
なお、推定トリガパルス取得タイミングAT1については、機械座標推定部250は、ジッタδが0(ゼロ)であると仮定して算出する。すなわち、機械座標推定部250は、トリガパルス取得タイミングT1を推定トリガパルス取得タイミングAT1として算出する。
【0065】
(ステップS2840)機械座標推定部250は、推定トリガパルス取得タイミングATnから系統誤差εを差し引いて、推定トリガパルス取得タイミングATnを算出する。
【0066】
座標Cn-1の生成タイミングと、座標Cnの生成タイミングとの間において測定プローブPBの移動速度が既知(例えば、一定速度)であるとすれば、内挿によりこれらのタイミング間の測定プローブPBの位置座標を求めることができる。
ここで、
図6(D)に示すように、露光タイミングTEmが、座標Cn-1の生成タイミングと、座標Cnの生成タイミングとの間にある場合について説明する。座標Cn-1の生成タイミングから露光タイミングTEmの中央までの時間を時間Fmとし、露光タイミングTEmの中央から座標Cnの生成タイミングまでの時間を時間Bmとする。この場合、露光タイミングTEmの中央の座標Cmcentは、式(1)のように示される。
【0067】
【0068】
(ステップS2850)
図4に戻り、機械座標推定部250は、上述した式(1)によって座標Cn-1と座標Cnとを内挿することにより、座標Cmcentを推定機械座標EMCとして算出する。
【0069】
(ステップS2860)機械座標推定部250は、算出した推定機械座標EMCと、画像データIMとを紐づける。
(ステップS2870)機械座標推定部250は、すべてのトリガパルス信号TPSに対応する画像データIMについて紐づけが終了したか否かを判定する。機械座標推定部250は、すべてのトリガパルス信号TPSに対応する画像データIMについて紐づけが終了していないと判定した場合(ステップS2870;NO)には、処理をステップS2820に戻す。機械座標推定部250は、すべてのトリガパルス信号TPSに対応する画像データIMについて紐づけが終了したと判定した場合(ステップS2870;YES)には、推定機械座標EMCの算出処理を終了する。
【0070】
以上説明したように、本実施形態の加工システム1は、機械座標推定部250を備えている。この機械座標推定部250は、トリガパルス取得部220がトリガパルス信号TPSを取得したタイミングに基づいて、機械座標MCが生成されたタイミングを推定する。
上述したように、トリガパルス取得部220が取得したトリガパルス信号TPSの取得タイミングには、真の機械座標MCの生成タイミングに対する系統誤差εとジッタδとが含まれている。ここで、機械座標MCが生成されたタイミングを推定することなく、トリガパルス信号TPSの取得タイミングをそのまま機械座標MCが生成されたタイミングであるとして点群情報を生成してしまうと、系統誤差εとジッタδとに起因する位置精度の低下が生じてしまう。
一方、本実施形態の加工システム1は、推定機械座標EMCに基づいて点群情報を生成する。この推定機械座標EMCは、トリガパルス信号TPSの取得タイミングに基づいて推定された測定プローブPBの機械座標である。したがって、トリガパルス信号TPSの取得タイミングを、そのまま機械座標MCが生成されたタイミングであるとして点群情報を生成する場合に比べて、点群情報の位置精度を向上させることができる。換言すれば、本実施形態の加工システム1によれば、点群情報の位置精度の低下を抑止することができる。
【0071】
また、本実施形態の加工システム1は、推定機械座標EMCを平均ジッタδAVEに基づいて生成する。この平均ジッタδAVEは、形状算出装置200によって観測可能なトリガパルス信号TPSの取得タイミングに基づいて算出される。つまり、加工システム1は、機械座標生成部111が機械座標MCを生成する所定の周期Tgenを、形状算出装置200が推定する。したがって、本実施形態の加工システム1によれば、機械座標MCの生成周期である周期Tgenを予め形状算出装置200が把握していなくても推定機械座標EMCを生成することができる。また、本実施形態の加工システム1によれば、機械座標MCの生成周期である周期Tgenが変化した場合であっても、形状算出装置200は、その変化に追従して平均ジッタδAVEを変化させて推定機械座標EMCを生成することができる。
また、本実施形態の加工システム1によれば、形状算出装置200は、トリガパルス信号TPSの取得タイミングを順次記憶しておき、そのタイミングの間隔の統計値(例えば、平均値)を求めればよく、複雑な演算を必要としない。つまり、本実施形態の加工システム1によれば、簡易な構成により推定機械座標EMCを生成することができる。
【0072】
また、本実施形態の加工システム1は、系統誤差εに基づいて推定機械座標EMCを生成する。系統誤差εに基づくことにより、加工システム1は、系統誤差εの影響を低減することができるため、点群情報の位置精度の低下を抑止することができる。
【0073】
また、上述したように、本実施形態の加工システム1において、機械座標MCは、第1の周期(例えば、4[msec])によって生成され、トリガパルス信号TPSは、第1の周期よりも長い第2の周期(例えば、40[msec])によって出力されてもよい。ここで、トリガパルス出力部112によるトリガパルス信号TPSの出力周期が短い場合には、加工機制御部110の演算負荷が高くなる場合がある。加工機制御部110の演算負荷が高くなると、トリガパルス信号TPSの生成タイミングの精度が低下し、ジッタδがより大きくなる場合がある。本実施形態の加工システム1は、機械座標MCの生成周期に比べてトリガパルス信号TPSの出力周期を長くすることにより、加工機制御部110の演算負荷を低減する。したがって、本実施形態の加工システム1は、トリガパルス信号TPSの生成タイミングの精度の低下を抑制して、ジッタδをより低減することができる。
【0074】
[変形例]
上述した第1の実施形態においては、撮像部CAMの露光中央のタイミング(露光タイミングTEm)に基づいて機械座標を推定する場合について説明したが、これに限られない。機械座標推定部250は、撮像部CAMの露光タイミングの前縁や及び露光タイミングの後縁に基づいて機械座標を推定してもよい。
この場合、機械座標推定部250は、取得したトリガパルス取得タイミングT1、…、トリガパルス取得タイミングTnに基づいて、トリガ間隔の平均値である平均トリガ前縁周期Taf及び平均トリガ後縁周期Tabをそれぞれ算出する。
【0075】
これらトリガパルス信号TPSの前縁の立上り時間及び後縁の立下り時間に差があった場合であっても、平均トリガ前縁周期Tafと、平均トリガ後縁周期Tabとは等しくなる。そこで、平均トリガ周期Taaveを平均トリガ前縁周期Taf及び平均トリガ後縁周期Tabの代わりに用いて演算を行うことができる。
【0076】
ここで、座標Cn-1の生成タイミングから露光タイミングの前縁までの時間を時間Fmfとし、露光タイミングの前縁から座標Cnの生成タイミングまでの時間を時間Bmfとする。この場合、露光タイミングの前縁のタイミングCmfは、式(2)のように示される。
【0077】
【0078】
また、座標Cn-1の生成タイミングから露光タイミングの後縁までの時間を時間Fmbとし、露光タイミングの後縁から座標Cnの生成タイミングまでの時間を時間Bmbとする。この場合、露光タイミングの後縁のタイミングCmbは、式(3)のように示される。
【0079】
【0080】
ここで、座標Cn-1の生成タイミングと、座標Cnの生成タイミングとの間において測定プローブPBの移動速度が既知(例えば、一定速度)であるとすれば、タイミングCmcentは、式(4)によって求めることができる。
【0081】
【0082】
機械座標推定部250は、座標Cn-1と座標Cnとの内挿により、式(4)によって求められた座標Cmcentを、推定機械座標EMCとして算出する。
【0083】
なお、座標Cn-1の生成タイミングと、座標Cnの生成タイミングとの間において測定プローブPBの移動速度が加速している場合には、式(5)に示すような加重平均演算を行うこともできる。
【0084】
【0085】
以上説明したように、本実施形態の機械座標推定部250は、第1の実施形態において説明した露光タイミングの中央の時刻に基づく場合に限らず、露光タイミングの前縁の時刻や露光タイミングの後縁の時刻に基づいて推定機械座標EMCを算出することができる。
【0086】
なお、上述した各実施形態及びその変形例においては、トリガパルス出力部112がトリガパルス信号TPSを出力するタイミングと、トリガパルス取得部220がトリガパルス信号TPSを取得するタイミングとの間にジッタδnを含む場合について述べたが、この場合に限られず、機械座標生成部111が機械座標MCを生成してからトリガパルス取得部220がトリガパルス信号TPSを取得するまでの間のどの期間にジッタが発生したとしても上述の形状測定方法を使用することができる。一例として、機械座標生成部111が機械座標MCを生成するタイミングと、トリガパルス出力部112がトリガパルス信号TPSを出力するタイミングまでの間にジッタが発生したとしても、上述の形状測定方法により、点群情報生成部260は、機械座標推定部250で推定された機械座標(すなわち、推定機械座標EMC)と画像データIMに基づいて加工対象部OBJの形状を高精度に算出することができる。
【0087】
なお、上述した各実施形態及びその変形例においては、測定プローブPBは工具主軸MSに取り外し可能に構成されており、工具主軸MSに測定プローブPBを取りつけた状態(つまり、工具主軸MSからバイトやフライスなどの加工工具は取り外した状態)で加工対象物OBJの形状を測定したが、この構成に限られない。例えば、工具主軸MSにはバイトやフライスなどの加工工具が取り付けられ、工具主軸MSの近傍に測定プローブPBを設置させるようにしてもよい。一例として、工具主軸MSにおいて、加工工具を取り付ける部分とは別の部分に測定プローブPBを取り付けるような構成にしてもよい。この場合、工具主軸MSに加工工具を取り付けた状態で加工対象物OBJを加工しつつ、測定プローブPBにて加工対象物OBJの形状を測定することができる。
【0088】
なお、上述した各実施形態及びその変形例においては、光投影部PRJから加工対象物OBJに投影する光の強度分布はライン状に限らず、既存の所定の強度分布でもよい。また、光投影部PRJと撮像部CAMのそれぞれの構成については上述の構成に限らず、他の既存の構成を適用することもできる。また、測定プローブPBは、三角測量法を利用した位相シフト法やステレオ法などの他の既存のプローブを適用することもできるし、レンズ焦点法などの三角測量法以外の既存の形状測定方法のプローブを適用することもできる。また、例えば、ステレオ法やレンズ焦点法などを採用する場合は、光投影部PRJは無くてもよく、加工対象物OBJの像を撮像する撮像部CAMがあればよい。この場合、プローブ制御部120は、撮像部CAMの撮像動作を制御すればよい。
【0089】
なお、上述した実施形態における加工システム1の各処理を実行するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、上述した種々の処理を行ってもよい。
【0090】
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウエアを含むものであってもよい。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0091】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0092】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1…加工システム、100…加工機、110…加工機制御部、111…機械座標生成部、112…トリガパルス出力部、120…プローブ制御部、200…形状算出装置、210…機械座標取得部、220…トリガパルス取得部、230…画像情報取得部、240…タイミング情報付加部、250…機械座標推定部、260…点群情報生成部、270…取得間隔算出部、PB…測定プローブ、OBJ…加工対象物