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特許7314058テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンエステルを含むマスカラ組成物
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  • 特許-テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンエステルを含むマスカラ組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンエステルを含むマスカラ組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20230718BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230718BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20230718BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20230718BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230718BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/39
A61K8/41
A61K8/86
A61Q1/10
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019564946
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 FR2018053429
(87)【国際公開番号】W WO2019122727
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】1762856
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】302071210
【氏名又は名称】エルヴェエムアッシュ ルシェルシュ
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペイ、カール
(72)【発明者】
【氏名】ビション、ヨハン
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-520413(JP,A)
【文献】特表2010-513421(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0042440(KR,A)
【文献】特開2011-126884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
睫毛または眉をメーキャップするためのマスカラであって、水相中のエマルションの状態のワックス、および16~20個の炭素原子を含む直鎖飽和脂肪酸又はベヘン酸とテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンとを反応させることによって得られる少なくとも1つのエステルを含み、該脂肪酸と該アミンとのモル比は、0.9~5であり、該マスカラの重量に対して、該脂肪酸は、2.0~8.0重量%を占め、該アミンは、3.0~8.0重量%を占め、及び、
トリエタノールアミンエステルを含まない、マスカラ。
【請求項2】
前記脂肪酸が、パルミチン酸、ステアリン酸またはベヘン酸であることを特徴とする、請求項1に記載のマスカラ。
【請求項3】
前記マスカラが、ステアリン酸とテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンとのエステル、およびパルミチン酸とテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンとのエステルの混合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載のマスカラ。
【請求項4】
前記2つのエステルは、等しい重量で存在することを特徴とする、請求項3に記載のマスカラ。
【請求項5】
前記ワックスが、10~35重量%を占めることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のマスカラ。
【請求項6】
融点が70℃以上である少なくとも1つのワックスと、融点が70℃未満である少なくとも1つのワックスとの混合物であって、該ワックスの一方は、アルカンワックスであり、他方は、極性ワックスであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のマスカラ。
【請求項7】
粘度が、140000mPa・s~210000mPa・sであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のマスカラ。
【請求項8】
前記マスカラが、HLBが8未満である少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のマスカラ。
【請求項9】
前記HLBが8未満である非イオン性界面活性剤が、ステアリン酸グリセリルまたはINCI名がステアレス-2である化合物であることを特徴とする、請求項8に記載のマスカラ。
【請求項10】
前記マスカラが、8を超えるHLBを有する少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のマスカラ。
【請求項11】
前記8を超えるHLBを有する非イオン性界面活性剤が、INCI名がステアレス-20である化合物であることを特徴とする、請求項10に記載のマスカラ。
【請求項12】
前記マスカラが、40~55重量%の水を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のマスカラ。
【請求項13】
睫毛または眉をメーキャップするためのプロセスであって、請求項1~12のいずれか1項に記載のマスカラを睫毛または眉に塗布する工程にある、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、睫毛のメーキャップまたはケアの分野、特に、クリームマスカラの分野に関し、より詳細には、ケラチン繊維に適用され得る化粧品組成物に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン(THPE)の脂肪酸エステルを用いて水相に乳化された多量のワックスを含むマスカラに関する。
【背景技術】
【0003】
ステアリン酸トリエタノールアミンなどのトリエタノールアミン(TEA)エステルを含む水中ワックス型マスカラは、その柔らかくクリーミーで滑らかな塗布特性で評価されている。トリエタノールアミンエステルは、脂肪酸または脂肪酸の混合物をトリエタノールアミンと反応させることによって、マスカラを調製するプロセス中に形成される。
【0004】
しかしながら、TEAは、包装材の中で保存されたマスカラの貯蔵中および使用中にニトロソアミンを形成するリスクが高い。TEAは、実際に、包装材の構成要素と反応して、NDELA(N-ニトロソジエタノールアミン)などのニトロソアミンを放出し得るため、数多くの製品においてその使用が規制されている。主要な欧州諸国における規制に従うためには、例えば、化粧品製品は、NDELA含有量が10ppb未満でなければならない。
【0005】
脂肪酸エステルを形成するためにTEAを他のヒドロキシル化アミンに部分的または完全に置き換えるためのいくつかの提案がなされてきたが、得られるマスカラに欠点がある。
【0006】
これは、特に、TEAをアミノメチルプロパンジオール(AMPD)で完全に置き換えたときの、塗布の際、よりクリーミーさが少なく、より水分の少ない、AMPDエステルを含む水中ワックス型マスカラの場合である。そのような配合は、例えば、欧州特許第3228304号明細書に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許第3228304号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
トロメタミンなどの他のアミンも評価されてきたが、TEAをこれらのアミンで置き換えた試験は、満足のいくメーキャップ結果をもたらしつつこの配合からTEAを完全に除去することはできなかった。
【0009】
ゆえに、存在期間中にニトロソアミンを放出し得ず、塗布時に滑らかなテクスチャーを有する、脂肪酸エステルを含む水中ワックス型エマルションの状態でクリームマスカラを得る必要性が残っている。
【0010】
より詳細には、トリエタノールアミンエステルを含まず、前記トリエタノールアミンエステルを含むマスカラの塗布特性と少なくとも等しい塗布特性を有し、かつトリエタノールアミンを置き換えることによって開発されたマスカラの欠点に悩まされないマスカラが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、水中ワックス型エマルションに製剤化されたテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンの脂肪酸エステルによって、ニトロソアミン放出のリスクなしに、使用感がよい滑らかでクリーミーな製品を得ることが可能になることを見出した。
【0012】
テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンの脂肪酸エステルは、既存の構造におけるトリエタノールアミンエステルを完全に置き換えることができ、その構造の特性を保ち、またはさらにその特性のうちのいくつかを改善することができる。
【0013】
特に、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンの脂肪酸エステルが、感覚、塗布特性およびメーキャップ結果に由来する独創的な、新規のマスカラテクスチャーを提供することを可能にすることが発見された。
【0014】
このテクスチャーは、より流動性であり得、これにより、塗布のすべりがより良くなり、より快適になる。このエマルションは、より流動性であるにもかかわらず、睫毛の補強は、等しいままであり、これは非常に驚くべきことである。
【0015】
また、この配合は、より粘着性であり得、これにより、製品の長時間にわたる睫毛に対する持続性が改善される。
【0016】
最後に、その組成物は、より濃い色合い、特に、より濃い黒色を得ることを可能にする。
【0017】
テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンは、pH調整の機能を発揮するために、すでに低濃度で化粧品組成物に組み込まれている。しかしながら、これらの組成物では、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンは、ワックスを水相中で安定化するためにマスカラにおいて必要なかなりの量のエステルをエマルションの状態で形成できない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1の組成物を、顕微鏡下において100倍の倍率で観察した像を示している。
図2】比較例2の組成物を、顕微鏡下において100倍の倍率で観察した像を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
したがって、本発明の主題は、睫毛または眉をケアするためまたはメーキャップするための化粧品組成物であり、その組成物は、水相中のエマルションの状態のワックス、および16~20個の炭素原子を含む直鎖飽和脂肪酸とテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンとを反応させることによって得られる少なくとも1つのエステルを含み、その脂肪酸は、1.0~10.0重量%を占め、そのアミンは、0.1~8.0重量%を占め、その脂肪酸とアミンとのモル比は、0.9~5である。
【0020】
上記脂肪酸は、本組成物の重量に対して、1.0~10重量%、好ましくは、2.0~8.0重量%、より優先的には、2.5~5.0重量%、なおもより優先的には、4.0~6.0重量%を占め得る。
【0021】
上記アミンは、本組成物の重量に対して、0.1~8.0重量%、好ましくは、1.0~8.0重量%または1.0~6.0重量%、より優先的には、3.0~8.0重量%、なおもより好ましくは、3.0~7.0重量%、なおもより優先的には、3.0~6.0重量%、なおもより優先的には、3.0~4.5重量%を占め得る。
【0022】
直鎖飽和脂肪酸とテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンとのモル比は、好ましくは、0.9~4.0、好ましくは、1.0~3.0、より好ましくは、1.1~2.0である。その脂肪酸は、好ましくは、脂相の構造化に寄与するように過剰量で使用される。
【0023】
本説明において、重量パーセントは、別段述べられない限り、エマルションの重量に対して表される。
【0024】
本組成物は、好ましくは、1重量%未満の、トリエタノールアミンエステル、アミノメチルプロパンジオールエステルおよびトロメタミンエステルから選択される化合物または化合物の混合物を含み、これらは、マスカラの性能品質を害し得る。
【0025】
本発明は、ニトロソアミンに分解し得るアミン官能基を有するある量の化合物を10ppb未満の量で含む水中ワックス型エマルションの形態の、睫毛または眉をケアするためまたはメーキャップするための化粧品組成物も記載し、その組成物は、それが16~20個の炭素原子を有する直鎖飽和脂肪酸とテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンとのエステルを含み、前記エステルは、ある粘度を得るのに十分な量で存在し、その粘度の値は、トリエタノールアミン、トロメタミンおよびアミノプロパンジオールから選択されるアミンの脂肪酸エステルを含む同一組成物の粘度よりも少なくとも20%低いことを特徴とする。
【0026】
本組成物は、有益なことに、直鎖飽和脂肪酸と、トリエタノールアミン、アミノプロパンジオールおよびトロメタミンから選択されるアミンとのエステルを含まない。
【0027】
上記直鎖飽和脂肪酸は、ステアリン酸、パルミチン酸またはベヘン酸であり得る。1つの実施形態によると、例えば、80/20~20/80の重量比、有益には50/50の重量比での、ステアリン酸とパルミチン酸との混合物が、使用される。1つの特定の実施形態は、等重量のステアリン酸とパルミチン酸との混合物を含む。
【0028】
テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンのIUPAC命名法は、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンであり、INCI名は、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンである。それは特に、Neutrol(登録商標)TE、Lutropur(登録商標)Q75という商標でBASFから、およびAdeka Carpol(登録商標)MD100という商標でAdekaから販売されている。
【0029】
テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンの脂肪酸エステルの量は、好ましくは、マスカラを生成するために使用されるテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン成分がトリエタノールアミンで置き換えられた同一の組成のマスカラに対して、10%、15%、20%、25%、30%、35%および40%からなる群より選択される値より高いマスカラの粘度低下率を得るのに十分な量である。
【0030】
本発明に係る組成物は、流動性のテクスチャーを有する。その粘度は、好ましくは、250000mPa・s未満、例えば、150000mPa・s~230000mPa・s、好ましくは、140000mPa・s~210000mPa・sである。本組成物の粘度は、組成物の稠性に応じて選択される、200rpmの回転速度で回転する、MS-R1、MS-R2、MS-R3、MS-R4またはMS-R5スピンドルを備えたRheomat(登録商標)180(LAMY社)を用いて25℃において測定され得る。測定は、回転の10分後に行う。
【0031】
THPEの脂肪酸エステルは、8を超えるHLBを有する陰イオン界面活性剤の機能を発揮する。本発明において、HLB値は、25℃におけるGriffin値である。
【0032】
特に組成物中のワックスの量が20重量%超であるとき、HLBが8未満の少なくとも1つの非イオン性界面活性剤が、必要に応じて前記エステルと組み合わされ得る。この界面活性剤は、
・単糖のエステルおよびエーテル;
・脂肪酸、特に、C-C24、好ましくは、C16-C22脂肪酸のエステル、およびポリオール、特に、グリセロールまたはソルビトール、好ましくは、グリセロールのエステル、例えば、ステアリン酸グリセリル;
・10未満のオキシアルキレン単位、より望ましくは、なおも5未満のオキシアルキレン単位、特に、オキシエチレン単位および/またはオキシプロピレン単位を含むオキシアルキレン化アルコール
からなる群より選択され得る。
【0033】
5未満のオキシアルキレン単位を含むオキシエチレン化アルコールは、INCI名がステアレス-2である化合物であり得る。
【0034】
本組成物は、THPEの脂肪酸エステル、上に記載されたようなHLBが8未満の少なくとも1つの非イオン性界面活性剤、およびHLBが8を超える少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含む界面活性剤の混合物も含み得る。この組み合わせは、組成物中のワックス含有量が30重量%を超えるとき、特に有益である。
【0035】
前記界面活性剤は、
・20オキシエチレン単位を含む8~24個の炭素原子を含む脂肪アルコール(例えば、ステアリルアルコール)(INCI名がステアレス-20、INCI名がセテアレス-30である化合物およびINCI名がパレス-7である化合物)、
・モノステアリン酸PEG-40、
・30オキシエチレン単位を含む脂肪酸エステル、例えば、30オキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン化ステアリン酸グリセリル、30オキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン化オレイン酸グリセリル、30オキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン化ココ酸グリセリル、30オキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン化イソステアリン酸グリセリル、30オキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン化ラウリン酸グリセリル、および
・ポリオキシエチレン化ソルビタンエステル、例えば、ポリソルベート60
から選択され得る。
【0036】
本組成物は、8以上のHLB値を有する陰イオン界面活性剤、例えば、リン酸アルキルおよび硫酸酸アルキルを含み得る。本発明の1つの特定の実施形態において、本組成物は、陰イオン界面活性剤を含まない。
【0037】
本発明に係る組成物において優先的に使用される界面活性剤は、例えば、オキシエチレン化および/またはオキシプロピレン化エーテル、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール重縮合体、グリセロールの脂肪酸エステル(例えば、ステアリン酸グリセリル)、ソルビトールの脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、スクロースエステルおよびスクロースエーテルから選択される。
【0038】
1つの特定の実施形態によると、本組成物は、多量のワックス、好ましくは、15~25重量%のワックスを含む。有益なことに、これらの特定の組成物によって、睫毛をよりよくコーティングするために、ユーザーが直ちに気づくことができるボリュームを提供するために、および長時間にわたるメーキャップの持続を高めるために、睫毛にブラシを通す1回目から大量の製品を付着させることが可能になる。
【0039】
しかしながら、従来技術の高ワックス含有量を有する水中ワックス型エマルションは、流動性を欠くことがあり、その結果、睫毛に付着する製品の量が多くなりすぎて、睫毛のコーティングが均一にならない。
【0040】
したがって、直鎖脂肪酸とテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンとのエステルを、大量のワックスなどの固体化合物を含む水中ワックス型エマルションに投入することは、特に有益である。なぜなら、そのエステルは、これらの化合物によってもたらされる稠性の上昇を、粘度をかなり大きく低下させることによって相殺することを可能にするからである。したがって、このタイプの構造では、本発明の組成物は、全く有益なことに、製品が滑らかかつ均一に塗布された後、即時にボリュームを提供し、高い性能品質で長時間にわたって睫毛の伸長および持続を提供するクリームマスカラを提案することを可能にする。
【0041】
化粧品の分野の当業者に公知の任意のワックスを使用してよい。そのワックスは、例えば、
・油の蒸留によって生じるワックス(例えば、ミクロクリスタリンワックスおよびある特定のパラフィンろう);メチレン、エチレンまたはプロピレンの重合によって得られる合成ワックス(例えば、ポリメチレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エチレン/プロピレンコポリマーワックスおよびエチレン/ヘキセンコポリマーワックス);フィッシャー・トロプシュワックス;オゾケライトワックス;およびオゾケライトの精製によって得られるセレシンから選択される、無極性ワックスとも称されるアルカンワックス、
・シリコーンワックス、および
・極性ワックスとも称される、シリコーンワックスでもアルカンワックスでもないワックス(例えば、蜜ろう、米糠ろう、カルナウバろう、カンデリラろう、オーリクリー(ouricurry)ろう、和ろう、ベリーワックス、木ろう、モンタンワックス、エスパルトワックス、コルク繊維ワックス、サトウキビろう、オレンジワックス、レモンワックス、ベーベリろう、直鎖または分枝状のC-C32脂肪鎖を有する動物油または植物油(例えば、ホホバ油、ヒマワリ油、ヒマシ油、ヤシ油、ラノリン油、ステアリルアルコールとエステル化したオリーブ油、セチルアルコールとエステル化したヒマシ油)の水素化によって得られるワックス)
から選択され得る。
【0042】
本発明の1つの実施形態によると、上記ワックスは、本組成物の重量に対して、10~35重量%、好ましくは、15重量%~35重量%、より好ましくは、18重量%~28重量%を占める。
【0043】
1つの特定の実施形態において、本組成物は、無極性ワックスと極性ワックスとの混合物を含む。
【0044】
別の実施形態において、本組成物は、10~20重量%の、融点が70℃以上のワックスを含む。融点は、当業者に公知の任意の方法によって測定され得る。本発明の目的では、化合物の「融解温度」または「融点」という用語は、特に、以下のパラメータ:この化合物の融解の開始に対応する融点またはこの化合物の吸熱ピークに対応する温度のうちの1つを意味すると意図されており、これらのパラメータは、ISO11357-3規格に従ってD.S.C.(示差走査熱量測定)によって測定されることが可能である。
【0045】
本発明の文脈において使用される、融点が70℃以上のワックスは、パラフィンろう(融点は62℃~65℃である)、カンデリラろう、蜜ろう、またはカルナウバろう(融点は78~85℃である)であり得る。融点は、そのワックスを生成するためのプロセスおよび融点を測定するために用いられる方法に応じて異なる。
【0046】
本組成物は、特に、融点が70℃以上の少なくとも1つのワックスと、融点が70℃未満の少なくとも1つのワックスとの混合物を含み得、それらのワックスのうちの一方は、無極性ワックスであり、他方は、極性ワックスである。
【0047】
本組成物は、テクスチャー形成剤、薄膜形成剤またはゲル化剤の機能を発揮する少なくとも1つのポリマーを含み得る。そのポリマーは、特に、睫毛をコーティングすること、睫毛を長くすること、および/または睫毛をカーブさせることを高めることを目的としていることがある。
【0048】
ポリマーの量は、本組成物の重量に対して、2~20重量%、好ましくは、3~10重量%の範囲であり得る。
【0049】
想定され得るポリマーは、ポリブテン、エチルセルロースとビニルピロリドン(VP)とのコポリマー(例えば、VP/エイコセンまたはVP/ヘキサデセン)、水素化ポリデセン、不揮発性シリコーン油、特に、フェニルトリメチコンおよびそれらの混合物である。
【0050】
それらのポリマーとしては、セルロースポリマー(例えば、ヒドロキシエチルセルロース)、ビニルポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)、アラビアゴム、グアーゴム、キサンタン誘導体、アクリル酸コポリマーの水分散液およびそれらの混合物も挙げられ得る。
【0051】
本組成物中のポリマーおよびワックスの総量は、好ましくは、本組成物の15%~35%である。
【0052】
マスカラ組成物は、その組成物の5~20重量%、例えば、8~15重量%を占める顔料を含む。
【0053】
上記顔料は、好ましくは、二酸化チタン、酸化亜鉛、(黒色、黄色または赤色)酸化鉄、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロム水和物およびフェリックブルーならびに金属粉末(例えば、アルミニウム粉末または銅粉末)から選択される。有機顔料としては、カーボンブラック、D&C顔料およびレーキが挙げられ得る。反射顔料および真珠光沢顔料も挙げられ得る。
【0054】
液相は、マスカラ組成物の重量に対して、例えば、30重量%~60重量%、好ましくは、40重量%~55重量%を占める。
【0055】
液相は、水、揮発油、およびブチレングリコールなどのポリオールを含み得る。それらの油は、揮発性ジメチコン、シクロメチコン、イソドデカン、イソヘキサデカンまたはイソデカンから選択され得る。
【0056】
本発明の1つの実施形態によると、液相は、40重量%~55重量%を占め、ワックスは、20重量%~25重量%を占め、顔料は、8~12重量%を占める。
【0057】
本発明の組成物は、上に記載された成分に加えて、マスカラ製剤の分野において慣例の補助剤(例えば、親水性または親油性のゲル化剤、活性な作用物質、不揮発油、ペーストの形態の脂肪化合物、保存剤、酸化防止剤、pH調整剤および芳香剤)を含み得る。
【0058】
上記不揮発油は、流動パラフィン、イソノナン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、ネオペンタン酸トリデシルおよびオクタン酸セチルから選択され得る。好ましくは、活性な作用物質としても働き得る植物起源の不揮発油(例えば、ヒマシ油、アルゴン油またはアーモンド油)が使用される。
【0059】
本発明の組成物の一部である成分の説明は、仏国特許出願公開第2996767号明細書の内容から補足され得る。
【0060】
本発明は、以下の実施例によって例証される。
【実施例
【0061】
実施例1、比較例2および比較例3:
3つのマスカラ配合物を、下記の表1に示される比率の成分を用いて調製した。
【0062】
【表1】
【0063】
信頼性が高い比較を行うために、ステアリン酸およびパルミチン酸の総量を2つの試験に対して一定に保ち、THPEの量を調整して、等しいTHPE/(脂肪酸)モル比を得た。
【0064】
調製プロセス:
水相A1を調製し、85℃のウォーターバス内においてStaroミキサーを用いて撹拌する。
A1に水相A2のゲル化剤を撹拌しながら加える。
脂相B1を調製し、Staroミキサーを用いて撹拌しながら85℃のウォーターバスに置く。
相B1が融解したら、B1に顔料と充填剤との混合物B2を撹拌しながら加え、30分間分散させる。
Staroミキサーを用いて激しく(vigoruosu)撹拌しながら、85℃において5分間、AをBに乳化し、次いで、ウォーターバスを取り除く。
撹拌を徐々に緩めながら30℃まで放冷する。
【0065】
顕微鏡下での観察
実施例1および比較例2の組成物を、顕微鏡下において100倍の倍率で観察した。図1および図2は、得られた像を示している。
【0066】
上記2つの組成物の分散物は、均質かつ均一であり、かなり密であり、ワックスおよび顔料は、十分に分散されている。
【0067】
THPEエステルは、トリエタノールアミンエステルを用いて得られる分散物と同程度に微細な分散物を得ることを可能にする。
【0068】
粘度およびpHの測定
測定方法
各配合物を120mLの薬瓶に詰め、25℃の温度の恒温器内で24時間静置させた。
装置:Rheolab QC
測定スピンドル:ST22-2V
7分間、50rpmの回転
【0069】
結果
測定された値を下記の表2に示す。
本発明のマスカラの粘度は、約150000~160000cPsである一方、ステアリン酸トリエタノールアミンを含むマスカラの粘度は、約200000cPsである。
【0070】
【表2】
【0071】
メーキャップ結果
結果を下記の表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
本発明の組成物は、ステアリン酸トリエタノールアミンおよびパルミチン酸トリエタノールアミンを含む従来技術のコントロールよりも流動性であり、より粘着性であり、その結果、ブラシを1回通すことで睫毛がメーキャップされる。そのマスカラは、より付け心地がよく、知覚される黒色の色合いがより濃い。睫毛に付着する製品の量は、すべての組成物で等しい。
【0074】
実施例4、比較例5および比較例6:
3つのマスカラ配合物を、下記の表4に示される比率の成分を用いて調製した。
【0075】
【表4】
【0076】
調製プロセスは、先の実施例に記載されたものと同じである。
【0077】
粘度およびpHの測定
測定方法
測定方法は、上に記載されたものと同一である。
【0078】
結果
測定された値を下記の表5に示す。
本発明のマスカラの粘度は、約143000cPsである一方、ステアリン酸トリエタノールアミンを含むマスカラの粘度は、約165000cPsである。
【0079】
【表5】
【0080】
メーキャップ結果
結果を下記の表6に示す。
【0081】
【表6】
【0082】
ニトロソアミンアッセイ
測定方法
2つの配合物を120mLの薬瓶において条件づけ、40℃の温度の恒温器内で6ヶ月間静置させ、このアッセイは、ISO15819:2014規格に従って行う。
【0083】
結果
測定された値を下記の表7に示す。
【0084】
【表7】
【0085】
NDLEA含有量については、本発明の配合物の場合、6ヶ月間の貯蔵後は規格に準拠している(すなわち、20℃および40℃において10ppb未満である)のに対して、ステアリン酸トリエタノールアミンを含む比較配合物の場合、NDLEA含有量は、20ppbを超えている。
図1
図2