(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】外科手術用アセンブリおよびシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20230718BHJP
【FI】
A61B18/14
(21)【出願番号】P 2019570016
(86)(22)【出願日】2018-06-20
(86)【国際出願番号】 GB2018051725
(87)【国際公開番号】W WO2018234803
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-10
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517048935
【氏名又は名称】アレジ サージカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーン ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】グリフィス ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】アモアー フランシス クエク エジン
(72)【発明者】
【氏名】ブリュワー ジェイソン
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0086915(US,A1)
【文献】特開2001-346804(JP,A)
【文献】国際公開第2016/024130(WO,A1)
【文献】特表2012-533380(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0228836(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/00-18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に外科手術を実施する際に使用するための外科手術用アセンブリであって、
前記外科手術中に前記患者の組織を切断または焼灼する際に使用する第1の信号を受信するように配置された外科手術用ツールと、
前記ツール上に配置された電極と、
前記外科手術の部位の近くの前記電極から電界を生成する際に使用する第2の信号を生成するために、また前記外科手術部位の近くに浮遊する粒子を除去するために、前記電極と通信可能に結合可能な発電機と、
前記電極への前記第2の信号の印加を制御するためのコントローラと
を備え、前記第1の信号の作動状態を感知する感知装置をさらに備え、前記感知装置は、前記コントローラと通信可能に結合され、前記第1の信号の前記作動状態に応じて、感知信号を前記コントローラに出力するように配置され、
前記コントローラは、前記第1の信号の起動を表す感知信号を受信すると、前記電極への前記第2の信号の印加を可能にするように配置され、前記発電機は、前記電極の患者組織への近接を監視する閉ループ制御回路を備え、前記閉ループ制御回路は、前記電極の遠位端の電圧を監視するための電圧監視装置を備え、前記閉ループ制御回路は、外科手術に伴う粒子およびスモークをイオン化するための適切な電位差を前記電極と前記患者組織との間に作り出す
ことができないほど、前記電極が前記患者組織に接近し
ている場合に、前記電極への前記第2の信号の印加を防止または終了するように構成されている、外科手術用アセンブリ。
【請求項2】
前記コントローラは、前記第1の信号の停止を表す感知信号を受信すると、前記電極への前記第2の信号の印加を無効にするように構成される、請求項1に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第1の信号の停止を表す感知信号を受信した後、所定時間の間、前記電極への前記第2の信号の印加を無効にするタイマーを含む、請求項1に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項4】
前記第1の信号の起動状態とは無関係に、前記電極への前記第2の信号の前記印加を可能にするオーバーライドアクチュエータをさらに備える、請求項1に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項5】
前記電極は、電気絶縁性キャリア上に配置された導電性材料のカラーを備え、前記キャリアは、前記カラーの少なくとも連続した円周方向に延びる部分を電気的に露出するための、連続した周辺に延びる窓を備える、請求項1に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項6】
前記電極は、電気絶縁性キャリア上に配置された導電性材料のカラーを備え、前記キャリアは、前記ツールの周りの前記カラーの部分を電気的に露出するための複数の円周方向に分離された窓を備える、請求項1に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項7】
前記窓は、三角形の形状を備える、請求項6に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項8】
前記窓は、正方形の形状を備える、請求項6に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項9】
前記外科手術用ツールは、ハンドルと、その近位端で前記ハンドルに結合されるシャフトとを備え、前記電極は、前記シャフトからオフセットされている、請求項1に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項10】
前記外科手術用ツールは、ハンドルと、その近位端で前記ハンドルに結合されるシャフトとを備え、前記電極は、前記シャフトに沿ってその遠位端に向かう方向に、前記シャフトから分岐する、請求項1に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項11】
前記外科手術用ツールは、ハンドルと、その近位端で前記ハンドルに結合されるシャフトとを備え、前記外科手術用アセンブリは、前記電極と前記シャフトの前記遠位端との間に長手方向に配置された前記シャフトの領域を加熱するためのヒータをさらに備える、請求項1に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項12】
前記ツールはハンドルと、その近位端で前記ハンドルに結合されるシャフトとを備え、前記電極は前記シャフトの遠位端に近接して配置され、前記シャフトは、少なくとも前記電極と前記シャフトの前記遠位端との間に長手方向に配置された領域内に、輪郭が描かれた外側表面を備える、請求項1に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項13】
前記第2の信号を前記発電機から前記電極に伝達するために、前記電極から前記ツールの近位端まで延びる導電性経路をさらに備える、請求項1に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項14】
患者に対して外科手術を実施する際に使用するための外科手術用システムであって、
外科手術用ツールと、
前記外科手術中に前記患者の組織を切断または焼灼する際に使用する第1の信号を生成するための、前記外科手術用ツールと通信可能に結合可能な外科手術用発電機と、
前記ツール上に配置された電極と、
前記外科手術の部位の近くの前記電極から電界を生成するのに使用する第2の信号を生成するために、また前記外科手術部位の近くに浮遊する粒子を除去するために、前記電極と通信可能に結合可能な発電機と、
前記電極への前記第2の信号の印加を制御するためのコントローラと
を備え、前記システムは、前記第1の信号の起動状態を感知する感知装置をさらに備え、前記感知装置は、前記コントローラと通信可能に結合され、前記第1の信号の起動状態に応じて、感知信号を前記コントローラに出力するように構成され、 前記コントローラは、前記第1の信号の起動を表す感知信号を受信すると、前記電極への前記第2の信号の前記印加を可能にするように構成され、前記発電機は、前記電極の患者組織への近接を監視する閉ループ制御回路を備え、前記閉ループ制御回路は、前記電極の遠位端の電圧を監視するための電圧監視装置を備え、前記閉ループ制御回路は、外科手術に伴う粒子およびスモークをイオン化するための適切な電位差を前記電極と前記患者組織との間に作り出す
ことができないほど、前記電極が前記患者組織に接近し
ている場合に、前記電極への前記第2の信号の印加を防止または終了するように構成されている、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術用アセンブリ、外科手術用システムおよび電極アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾル形態の粒子状物質は、一般的に外科手術中に遭遇する。粒子状物質は、例えば、治療薬を供給するために利用されるか、外科手術を行った結果として経験することがあり得る。微粒子ベースの治療薬の例としては、血液の急速な凝固をもたらすための、または癌などの疾患を治療するための薬剤の供給がある。外科手術を行った結果として作り出される粒子状物質の一般的な例としては、「エネルギーベースの」外科手術器具を使用するときに経験するものがある。エネルギーベースの外科手術器具には、組織の切断や凝固などの治療効果を実現するために、何らかの方法で電力が供給される。無線周波数(RF)、超音波、レーザなどの動作モードがいくつかあるが、これらのエネルギーベースの器具は全て、その動作モードの副産物として粒子状物質を作り出す。
【0003】
エネルギーベースの器具によってエアロゾルの形態で作り出された粒子状物質は、少なくとも2つの理由で問題がある。第1に、それは外科医の視野を急速に遮り、したがって外科手術を遅くし、視界不良により引き起こされる患者への偶発的危害のリスクを生み出す。第2に、これらの器具によって作り出された粒子状物質への長期間の曝露は、医療従事者にとって危険である可能性があるという懸念がある。歴史的に真空ベースのシステムが、手術野からエアロゾル粒子状物質を抽出するために使用されてきた。ただし、これは希釈ベースのプロセスであるため、粒子状物質を迅速に除去し視野の質を改善するのには非効率的である。これに加えて、例えば腹腔鏡手術などの手術空間を作り出すためにガス注入を必要とする外科手術の場合、結果として生じるガス交換により、組織は乾燥し干上がり、これにより患者に有害な影響を及ぼす。この結果と、真空ベースのシステムは音が大きくて扱いにくいという事実の結果として、真空ベースのシステムの採用は乏しくなっている。
【0004】
国際公開第2011/010148号は、電気外科手術中に発生するサージカルスモークおよび他のエアロゾル粒子の低減ならびに除去のための装置を介して外科手術で粒子状物質を管理するための代替アプローチを開示している。装置は、腹腔内などの外科手術部位の近くに配置された尖った電極から電子の流れを生成し、電極から放出された電子は近くに浮遊するエアロゾル粒子に付着する。装置はさらに、電極と患者との間に電位差を確立して、イオン化粒子を外科手術部位から引き離し、それにより外科医の部位視界が改善される。
【0005】
しかしながら、例えば腹腔内に配置される電極は、腹壁内に追加の切開を必要とし、これは望ましくない。装置の有効性はまた、外科手術部位や他の外科手術器具に対する電極の位置にも依存するため、外科医の経験とスキルにも左右される。
【発明の概要】
【0006】
本発明者は、現在、上記の制限の少なくともいくつかに対処する外科手術用アセンブリ、外科手術用システム、および電極アセンブリを考案した。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、患者に外科手術を実施する際に使用するための外科手術用アセンブリであって、
外科手術中に患者の組織を切断または焼灼する際に使用する第1の信号を受信するように配置された外科手術用ツールと、
ツール上に配置された電極と、
外科手術の部位の近くの電極から電界を生成する際に使用する第2の信号を生成するために、また外科手術部位の近くに浮遊する粒子を除去するために、電極と通信可能に結合可能な発電機と、
電極への第2の信号の印加を制御するためのコントローラと
を備え、第1の信号の起動状態を感知する感知装置をさらに備え、感知装置は、コントローラと通信可能に結合され、第1の信号の起動状態に応じて、感知信号をコントローラに出力するように配置され、
コントローラは、第1の信号の起動を表す感知信号を受信すると、発電機から電極への第2の信号の印加を可能にするように配置される、アセンブリが提供される。
【0008】
一実施形態では、コントローラは、第1の信号の停止を表す感知信号を受信すると、電極への第2の信号の印加を無効にするように構成される。
【0009】
一実施形態では、コントローラは、第1の信号の停止を表す感知信号を受信した後、所定時間の間、電極への第2の信号の印加を無効にするタイミング装置を備える。
【0010】
一実施形態では、感知装置は、第1の信号を起動させる1つ以上のアクチュエータの起動を感知するためのセンサを備える。例えば、アクチュエータは、第1の信号を生成するための電気外科手術用発電機または超音波発電機などの外科手術用発電機に関連付けられてもよく、ツール上に配置されてもよい。代替的に、またはそれに加えて、感知装置は、第1の信号を直接感知するためのセンサを備える。
【0011】
一実施形態では、本アセンブリは、第1の信号を生成するための外科手術用発電機をさらに備え、第1の信号はケーブルを介してツールに伝達される。したがって、感知装置のセンサは、ケーブルに沿った第1の信号の生成または起動を感知するように構成されてもよい。
【0012】
一実施形態では、本アセンブリは、第1の信号の起動状態とは無関係に、電極への第2の信号の印加を可能にするオーバーライドアクチュエータをさらに備える。この設備は、外科手術部位の近くに浮遊する粒子を除去するために、外科医に第2の信号を手動で起動させるオプションを提供することが想定される。オーバーライドアクチュエータは、ツールまたは発電機上に配置されてもよく、例えば、押しボタンを備えて、外科医がスモーク除去期間を開始できるようにしてもよい。
【0013】
電極はツール上に配置され、一実施形態では、電極はツールの遠位端に近接してツールの周りに延在する。電極は、電気絶縁性キャリア上に配置された導電性材料のカラーまたはリングを備える。キャリアおよびカラーは、ツールの長手方向軸の中心にあり、一実施形態では、キャリアは、カラーの少なくとも連続した円周方向に延在する部分を電気的に露出するための連続した周辺方向に延在する窓を備える。
【0014】
代替実施形態では、キャリアは、ツールの周りのカラーの部分を電気的に露出するための円周方向に分離された複数の窓を備える。一実施形態では、窓は、カラーの成形部分を電気的に露出させるために、正方形および/または三角形などの形状である。代替的に、カラーは、カラー部分の所望の成形を提供するように成形されてもよい。
【0015】
一実施形態では、ツールはハンドルと、その近位端でハンドルに結合されるシャフトとを備え、電極はシャフトの遠位端に近接して配置される。電極は、ツール、特にシャフトの周りに延在してもよい。一実施形態では、電極はシャフトからオフセットされており、ワイヤの直線部分または尖った端部を有するロッドを備えてもよい。さらなる代替では、電極はブレードを備えてもよい。
【0016】
一実施形態では、電極は、シャフトに沿ってシャフトの遠位端に向かう方向に、シャフトから分岐する。
【0017】
代替実施形態では、電極はツール上に配置され、ツールの周りで円周方向に分離された複数の導電性要素を備える。当該要素は、発電機からそれぞれの当該要素に第2の信号を伝達するために、ツールの近位端まで延びるそれぞれの導電性経路と電気的に結合される。当該要素は電線を含んでもよい。
【0018】
一実施形態では、ツールはハンドルと、その近位端でハンドルに結合されるシャフトとを備え、電極はシャフトの遠位端に近接して配置される。一実施形態では、本アセンブリは、電極とシャフトの遠位端との間に長手方向に配置されたシャフトの領域を加熱するためのヒータをさらに備える。
【0019】
一実施形態では、シャフトは、少なくとも電極とシャフトの遠位端との間に長手方向に配置された領域内に、輪郭が描かれた外側表面を備える。
【0020】
一実施形態では、本アセンブリは、電極とシャフトの遠位端との間に長手方向に配置された領域内におけるシャフト上での材料の蓄積を監視するための監視回路をさらに備える。監視回路は、電極から患者に流れる電流に起因して患者を流れる全電流を監視するようにさらに構成される。第1の実施形態では、監視回路は、第1の電気経路に沿って電極をツールに結合する第1の構成と、第2の電気経路に沿ってツールピースを外科手術用発電機と結合する第2の構成との間で再構成可能なスイッチを備える。監視回路は、電流計などの電流センサをさらに備え、スイッチが第1の構成内で構成されている場合、電極と患者との間で直接、第1の電気経路を流れる電流を監視するための、およびスイッチが第2の構成内で構成されている場合、第2の電気経路に沿って電極とツールとの間を直接流れる電流を別個に監視するための電流センサをさらに備える。
【0021】
代替実施形態では、監視回路は、ツールシャフトの遠位端の周りに配置されたガードカラーを備え、監視回路は、電極とガードカラーとの間に第1の電気経路を備え、第1の経路は、第1の経路、すなわち電極とガードカラーとの間、を流れる電流を監視する第1の電流センサを備える。監視回路は、電極と患者との間の第2の電気経路をさらに備え、第2の経路は、第2の経路、すなわち電極と患者との間、を流れる電流を監視する第2の電流センサを備える。
【0022】
一実施形態では、電極は、発電機からカラーに第2の信号を伝達するために、カラーからツールの近位端まで延びる導電性経路をさらに備える。
【0023】
一実施形態では、外科手術用アセンブリは、ツールへの第1および第2の信号の印加を切り替える少なくとも1つのリレーと、残留電荷の放電または消散を可能にする少なくとも1つの抵抗器をさらに備える。
【0024】
一実施形態では、ツールは、外科手術を実施するために、その遠位端に配置されたツールピースを備える。本アセンブリは、ツールピースと患者組織との間の分離とは無関係に、ツールピースと患者組織との間の電圧差を実質的に一定に維持するための電圧補償回路をさらに備えてもよい。電圧補償回路は、ツールピースと患者組織との間を流れる電流が0~100μAの間で変化するとき、電圧差を実質的に一定に維持するように構成される。一実施形態では、電圧補償回路は、3kVと15kVとの間、好ましくは3kVと8kVとの間の電圧差を設定するように構成される。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、患者に対して外科手術を実施する際に使用するための外科手術用システムであって、
外科手術用ツールと、
外科手術中に患者の組織を切断または焼灼する際に使用する第1の信号を生成するための、外科手術用ツールと通信可能に結合可能な外科手術用発電機と、
ツール上に配置された電極と、
外科手術の部位の近くの電極から電界を生成するのに使用する第2の信号を生成するために、また外科手術部位の近くに浮遊する粒子を除去するために、電極と通信可能に結合可能な発電機と、
電極への第2の信号の印加を制御するためのコントローラと
を備え、アセンブリは、第1の信号の起動状態を感知する感知装置をさらに備え、感知装置は、コントローラと通信可能に結合され、第1の信号の起動状態に応じて、感知信号をコントローラに出力するように構成され、
コントローラは、第1の信号の起動を表す感知信号を受信すると、電極への第2の信号の印加を可能にするように構成される、システムが提供される。
【0026】
外科手術用システムのさらなる特徴は、外科手術用アセンブリの特徴のうちの1つ以上を備えることができる。
【0027】
本発明の第3の態様によれば、患者に対して行われる外科手術の部位の近くに浮遊する粒子を除去するための電極アセンブリであって、本アセンブリは、発電機と通信可能に結合可能であり、電気信号を受信するように構成された複数の導電性要素を備える電極を備え、本アセンブリは、感知装置と通信可能に結合されたコントローラをさらに備え、患者組織への導電性要素の近接を表す感知装置からの感知信号を受信するように構成され、コントローラは、感知信号に応じて、導電性要素に電気信号を選択的に受け入れるように構成される、電極アセンブリが提供される。
【0028】
一実施形態では、電極は外科手術用ツール上に配置される。感知装置は、各導電性要素に沿って流れる電流を別個に感知するための複数の電流センサを備えてもよい。感知された電流が所定の閾値を超える場合、これは、要素が患者の組織の近くを通過するか、さもなければ組織に接触することを示す場合があり、感知装置は感知信号をコントローラに出力して、コントローラが発電機からの導電性要素を抑止するか、そうでなければ電気的に絶縁するように構成される。
【0029】
一実施形態では、コントローラは、導電性要素を選択的に電気的に絶縁するための切替え装置を備える。
【0030】
一実施形態では、コントローラは、タイミングシーケンスに従って導電性要素への電気信号を受け入れるためのタイマーを備える。したがって、タイミング装置により、所望のシーケンスに従って、電気信号によって要素を別個にアドレス指定できるようになる。
【0031】
本発明を上記で説明してきたが、本発明は、上で述べたまたは以下の説明で述べる特徴の任意の発明の組合せにまで及ぶ。本発明の例示的な実施形態を添付図面を参照して本明細書で詳細に説明するが、本発明はこれらの正確な実施形態に限定されないことを理解すべきである。
【0032】
さらに、個別にまたは実施形態の一部として説明される特定の特徴は、他の特徴および実施形態が特定の特徴について言及していない場合でも、他の個別に説明される特徴または他の実施形態の一部と組み合わせることができると考えられる。したがって、本発明は、まだ説明されていないそのような特定の組合せにまで及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明は、様々な方法で実施することができ、例示のみを目的として、添付の図面を参照しながら、その実施形態を以下に説明する。
【
図1】本発明の一実施形態による外科手術用アセンブリの概略図である。
【
図2a】外科手術用ツールに取り付けられた電極の実施形態の概略図である。
【
図2b】外科手術用ツールに取り付けられた電極の実施形態の概略図である。
【
図2c】外科手術用ツールに取り付けられた電極の実施形態の概略図である。
【
図2d】外科手術用ツールに取り付けられた電極の実施形態の概略図である。
【
図2e】外科手術用ツールに取り付けられた電極の実施形態の概略図である。
【
図2f】外科手術用ツールに取り付けられた電極の実施形態の概略図である。
【
図2g】外科手術用ツールに取り付けられた電極の実施形態の概略図である。
【
図2h】外科手術用ツールに取り付けられた電極の実施形態の概略図である。
【
図2i】外科手術用ツールに取り付けられた電極の実施形態の概略図である。
【
図2j】鉗子に取り付けられた電極の側面図の概略図である。
【
図2k】
図2jに示された電極および鉗子の平面図である。
【
図3】閉ループ電流制御回路を示す回路図の概略図である。
【
図4b】電流の関数としての、ツールピースの遠位端での出力電圧のグラフ表示である。
【
図5】本発明の一実施形態による外科手術用システムの概略図である。
【
図6】外科手術用ツールのシャフト上の導電性材料の蓄積を監視するための監視回路の概略図である。
【
図7】
図5に示された外科手術用システムの回路図の概略図である。
【
図8】本発明の一実施形態による電極アセンブリの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図面の
図1を参照すると、電気外科手術、超音波またはレーザベースの外科手術など、外科手術中に使用するための本発明の一実施形態による外科手術用アセンブリ100が示されている。本アセンブリ100は、通常、外科医が組織を切断および/または焼灼するために保持するツールを備える場合がある、外科手術用ツール110を備える。図示の実施形態では、ツール110は、ハンドル111と、その近位端でハンドル111に結合される細長いシャフト112とを含む。シャフト112は、誘電材料から形成され、通常、その長手方向軸に沿ってシャフト112を通って延伸する導体113を備える。導体113は、シャフト112の遠位端から外に延伸し、したがって、電気的に露出しており、エネルギーを組織に供給する役割を担うツールピース114を形成するかまたはこれに接合する。ツールピースは、外科手術を容易にするように形成されており、例えば、弓形部、もしくはL形部に形成されたワイヤ、または鉗子の顎もしくは把持器を備えてもよいし、あるいは、例えば、血管の密閉に適した顎/把持器の配置(図示せず)を備えてもよい。
【0035】
図面の
図1および
図2を参照すると、本アセンブリ100は、ツールシャフト112上に、その遠位端に近接して配置された電極120をさらに含む。第1の実施形態では、電極120は、シャフト112の周りに円周方向に延在し、シャフトの長手方向軸を中心とする。電極120は、電気絶縁性シース(図示せず)またはキャリア122内に収容された導電性カラー121を備える。この点で、キャリア122は、カラー121とツール110のシャフト112との間に放射状に配置され、したがって、カラー121とツール110に沿って延伸する導体113との間を直接流れる電流を最小限に抑えるように機能する。電極カラー121は、キャリア122の半径方向外向き側に形成された円周方向に延在する窓123により、電極120の半径方向外向き側に沿って、その円周方向に電気的に露出されており、したがって、カラーのリング状部分124を露出させる(
図2a)。代替実施形態では、キャリア122は、その半径方向外向き側に形成された複数の窓125を備え、この窓はカラー121の部分を電気的に露出するために、電極120の周りで角度分離されている。窓125は、例えば、正方形(第2の実施形態-
図2b)もしくは三角形(第3の実施形態-
図2c)、またはこれらの組合せを含み、カラー121の成形部分を電気的に露出するように作用してもよい。電極の第1、第2および第3の実施形態のそれぞれにおいて、カラー121は、キャリア122の開口部を通って突出するように配置され、したがって、キャリア122の外面の上方に延在する。カラー121の隆起部分により、そこからの微粒子材料イオン化のための電子放出が促進される。図面の
図2dに示される第4の実施形態では、カラー121は、キャリア122の遠位端を超えてシャフト112の長手方向に延在し、カラー121の遠位縁またはリングを電気的に露出する(
図2d)。この場合、同様に電子の放出を促進するために、遠位端を鋭くしてもよい。さらなる代替実施形態(図示せず)では、カラー121は、所望の形状を形成するように直接パターン化されてもよいし、キャリア122内に収容されるのではなく、キャリア122の半径方向外向き側に配置されてもよく、カラー121の露出部分の望ましい形状は、キャリア122の窓の形状によって決定される。
【0036】
第5の実施形態(図面の
図2eに示される)では、電極120は、代わりに、電気的に露出したワイヤなど複数の導電性の細長い要素126を備え、実質的に平行な向きに配向され、ツール110のシャフト112の長手方向軸と平行であってもよい。要素126は、シャフト112の周りに角度分離され、ツールシャフト112の周りに円周方向に延在する導電性リング127によってそれらの近位端で電気的に結合される。
【0037】
上記の各実施形態の電極120は、第1~第4の実施形態のそれぞれのカラー121または第5の実施形態のリング127からシャフト112に沿ってハンドル111に向かって延伸する導電性経路128をさらに備え、経路は電気コネクタ115で終端する。経路128は、例えば、電気絶縁ワイヤを備えてもよく、コネクタ115を介して、発電機140からカラー121またはリング127に電気信号を電気的に伝達するように構成される。発電機140は、1.5~20kV、好ましくは3~10kVを生成することができる高電圧発電機を備えてもよく、外科手術の部位に近接した、カラー121または細長い要素126の電気的に露出した部分から電界を確立するために使用される直流(DC)電圧波形を生成するように構成される。
【0038】
図面の
図2fおよび
図2gに示す第6の実施形態では、電極120は、尖った遠位端を有する細長いロッドまたはワイヤ129を備える。電極120は、シャフト112の長手方向軸に実質的に平行に延伸してもよく(
図2f)、シャフト112に沿ってその遠位端に向かう方向にシャフト112から離れるように分岐してもよい(
図2g)。両方の状況において、電極120の近位端は、第1のオフセットXだけシャフト112の外面から半径方向に間隔が空けられ、電極120の遠位端は、第2のオフセットYだけ、シャフト112の遠位端(すなわち、導体113が露出する場所)から長手方向に間隔が空けられる。図面の
図2jに示すように、ツールピース114が、例えば、鉗子を備える状況では、第1のオフセットは、鉗子の顎J1、J2が回転する平面の外に向けられる。この点で、例えば、顎がx-y平面内で回転する状況では、第1のオフセットはx-y平面から横方向に伸びz軸に沿った分離の成分を含む。
【0039】
第1および第2のオフセットX、Yにより、外科手術の結果として生じる流体および組織など、シャフト112上での導電性材料(図示せず)の蓄積によって引き起こされる、電極120と導体113またはツールピース114との間の直接的な望ましくない電気的トラッキング/コンダクタンスが最小限に抑えられる。シャフト112上の導電性材料の蓄積により、電極120の露出したワイヤ129とツールピース114との間に電気経路が生じ、図面の
図2hに示すように、シャフト112の外面を雄ねじ112aまたは波形で輪郭を描くことにより、この経路をさらに減少させることができる。輪郭を描くことは、シャフト112の周りの輪郭112に優先的に材料を追従させる(それにより沿面距離を増加させる)ことによって、シャフト112に沿って導電性材料が分布(クリープ)する傾向を低減させる。
【0040】
第1~第6の実施形態の各々に関連して上述した電極120は、アクチュエータ(図示せず)によって、シース(図示せず)内に収容されてもよいし、電極120を露出させるためにシースに対して引き込み可能に展開可能であってもよい。シースに対して電極120を引っ込めると、シースは電極120を拭き取り、したがって電極120から導電性材料を除去するように構成される。シース(図示せず)がシャフト112に対して引き込み可能である状況では、シャフトから導電性材料を除去して電極120とツールピース114との間の電気的トラッキングをさらに最小限に抑えるように、シースをさらに構成してもよい。
【0041】
シースの代替として、またはそれに加えて、本アセンブリ100は、図面の
図2iに示すように、シャフト112の遠位端と電極120との間で長手方向にツールシャフト112上に配置されたヒータ130を備えてもよい。ヒーター130は、例えば、シャフト112の周りに延びる、またはシャフト112内に埋め込んでもよく、抵抗コイル131に電流を供給するために、転送ワイヤ132を介して電源(図示せず)に電気的に結合される、カプセル化された抵抗線のコイル131を備えてもよい。コイル131を通る電流の経路は、電極120とツールピース114との間に長手方向に配置されたシャフト112の領域を加熱し、シャフト112の周りに配置された導電材料および流体を乾燥させ、電極120とツールピース114との間の電気経路の発達を最小限に抑えるように配置される。
【0042】
図面の
図3を参照すると、発電機140は、患者を通る電極120からの出力電流の閉ループ制御のためのアナログ閉ループ制御回路200を備える。動作電流は、患者組織からの電極120の遠位端の分離によって影響を受ける。電極120が患者の組織に近づくにつれて、インピーダンスは低下する。これにより、電流が増加し、電極120と患者との間の出力電圧が低下する。しかしながら、発電機140は、電極120と患者組織との間に流れる電流を監視し、通常、患者に安全に印加できる最大DC電流である10μAに近づくと電流を終結させる。その結果、電圧は電気集塵を引き起こすのに十分なレベルを下回る。
【0043】
制御回路200は、主に発電機140の出力電流を制御する。発電機140は、その出力部に200MΩの直列抵抗632(
図7を参照)を備えており、単一短絡故障状態、すなわち、電流制限が機能せずに発電機140が最大電圧を出力する場合、最大電流50μAを保証する。抵抗は、それぞれ発電機140の高電圧および低電圧の出力端子と直列に別個に接続された2つの別々の100MΩ抵抗器632a、632b(
図7を参照)として具体化される。電流は、抵抗器を介して発電機140に戻され(
図7を参照)、それによりバッファリングされてプロセス値として使用される電圧が発生する。この値は、コンパレータ201を使用して電流設定点と比較され、結果の誤差は、発電機140に制御信号を提供する積分器202を介して積分される。プロセス値が電流設定点を上回る/下回る場合、発電機140への制御信号は減少/増加する。これにより、高電圧出力が減少/増加し、測定電流が目標設定点の値に向かって増加/減少する。
【0044】
発電機出力が約10kVで飽和すると、エラー信号が飽和し、使用可能な電流が制限される可能性がある。閉ループ回路200は、可変レベルで飽和するように設計されており、プロセス値電流が設定点を下回るたびに出力飽和電圧を10kV未満に調整することが可能になる。
【0045】
発電機140のこの出力抵抗により、通常の動作条件下で出力部において望ましくない電圧降下が起き、出力部での利用可能な電圧と引き出される電流との間に依存性が生じる。実際には、コロナ電流が、通常10μAという患者電流制限に近い場合に問題が発生する。直列抵抗632両端での電圧降下により、出力電圧は、効率的なコロナ、即ちスモーク微粒子のイオン化に必要な電圧を下回る。使用可能な電流が不十分なためではなく、電圧が不十分なため、強制的な電流制限によりスモーク除去性能が低下する。
【0046】
しかしながら、
図4aに示すように、電圧補償回路300を使用して電圧降下を補償することができ、この回路は発電機140からの電圧出力に応じた増加を設計するように構成される。これは、直列抵抗632での電圧降下分だけ電圧設定点を増加させることで実現される。この回路は、所望のまたは目標の電圧と、抵抗632を流れる電流を表す信号とを入力として受信するように構成されたプロセッサ301または加算装置を含む。この電流は、閉ループ制御回路200によって既に知られており、制御回路のプロセス値は、直列抵抗を流れる電流を表す。したがって、電流信号の一部を設定点に追加することにより、所望の電圧補償を実現する。この回路300で動作すると、図面の
図4bに示すように、電流制限までほぼ平坦な負荷曲線が得られる。これにより、発電機140が電圧飽和点に達していない限り、電流の増加に伴ってイオン化効率が低下しないことが保証される。
【0047】
図面の
図5を参照すると、患者に外科手術を実施する際に使用するための、本発明の一実施形態による外科手術用システム400が示されている。システム400は、上述の(および
図1に示す)外科手術用アセンブリ100と、外科手術を実施する際に使用するためのツール110に沿ってツールピース114への外科手術信号を生成する外科手術用発電機410とを備える。ツールピース114が導電体を備える実施形態では、外科手術用発電機410は、シャフト112内のワイヤ113に沿って電流外科手術信号を生成するための電気外科手術用発電機を備えてもよい。しかし、代替実施形態では、シャフト112は、必要な外科手術を実施するために、超音波またはレーザ外科手術信号をそれぞれの超音波またはレーザ外科手術用発電機から伝達する導波管(図示せず)を備えてもよいことが想定される。
【0048】
本アセンブリ100およびシステム400は、発電機140からカラー121/リング127/ワイヤ129への電極120の電気経路128に沿った電流の印加を制御するために、コントローラ150をさらに備える。コントローラ150は、外科手術信号の起動状態に応じて電極120への電流の印加を有効化および無効化するための切替え装置151を備える。起動状態は、本アセンブリ100の感知装置160によって決定され、当該感知装置160は、外科手術信号を作動させるためのアクチュエータ420の動作を直接感知するように、または代替として、電流センサ161を介してなど、外科手術用発電機410からの外科手術信号を直接感知するように構成されてもよい。感知装置160は、起動状態に応じて感知信号をコントローラ150に出力するように構成されており、コントローラ150は、電極120への電流を有効化/無効化するかどうかを決定することができる。
【0049】
使用中、電極120は、切替え装置151を介して、ケーブル142で発電機140の電極141と電気的に結合される。ケーブルは、ツール110のハンドル111上のコネクタ115と接続するためのコネクタ(図示せず)で終端する。患者は、例えば、患者の脚(図示せず)に当てられる接触パッド144およびさらなる接続ケーブル145を介して発電機140のさらなる電極143に電気的に結合される。次いで、ツール110は、ハンドル111上に配置されたさらなる接続ケーブル411およびコネクタ412を介して、外科手術を実施するための外科手術用発電機410と電気的に結合される。外科医が、ツールハンドル111のボタン420、例えば、フットスイッチ(図示せず)のペダル、または外科手術用発電機410自体のボタン420を介するなどして、外科手術信号を起動させると、感知装置160は、コントローラ150に感知信号を出力し、コントローラ150が切替え装置151を閉じることにより同時に電極120に電流を流せるように構成される。したがって、電極120への電力供給により、カラー121の露出部分または導電性要素126またはワイヤ129と患者との間に電界が確立され、これにより、例えば、外科手術部位近くで浮遊状態に保持されたイオン化微粒子が患者の方に引き付けられ、外科医の視野がクリアになる。したがって、コントローラ150は、外科手術信号が開始された時点で、電極120が微粒子除去の促進を可能にすることは明らかである。
【0050】
外科手術用発電機410のアクチュエータ420が外科手術信号を除去するために操作されたことを感知装置160が感知したとき、または外科手術信号がツール110から除去された、すなわち無効になったことを感知装置160が感知したとき、感知装置160はコントローラ150に感知信号を出力し、コントローラ150に切替え装置151を開かせ、それによりさらなる電流が電極120に流れるのを阻止して、電界を除去するように構成される。
【0051】
しかしながら、代替実施形態では、コントローラ150はタイマー152をさらに備え、このタイマーは、コントローラ150が、外科手術信号が除去された後、1~10秒などの所定時間の間、電極120への電気信号の無効化を遅らせることができる。これにより、電極120は、例えば、外科医が外科手術の局面を終えた後でも患者への電界を維持することができ、その結果、手術の局面が完了した後でも、スモークおよび微粒子の除去を継続できる。
【0052】
一実施形態では、本アセンブリ100は、電極120とツールピース114との間のツールのシャフト111上の導電性材料の蓄積を監視するための監視回路500をさらに備える。監視回路500の概略図が図面の
図6に示されており、ツールピース114、導体113、発電機140および電極120を含む直列電気経路510を含む。経路510は、電極120からツールピース114を分離することによって中断され、スイッチ520は、
図6aに示す実施形態では、外科手術信号がツールピース114に印加されている間、開いたままである(すなわち、外科手術用発電機410に切り替えられる)。しかしながら、ツールピース114からの外科手術信号の除去の後、スイッチ520は、コントローラ150からの命令を介して閉じるように構成されており、これにより、ツールピース114と電極120との間に電気経路が確立され、この経路は電極120からツールピース114を物理的に分離することによってのみ中断される。したがって、ツールピース114と電極120との間のシャフト112上に配置された導電性材料は、(発電機130から生成される)電流が直接それらの間を通過することを促進することになるであろう。したがって、監視回路500を流れる電流は、導電性材料の蓄積を示している。シャフト112上に導電性材料が完全にないツール110の場合、ツールピース114と電極120の物理的分離により、電流が監視回路500を流れることはできない。逆に、シャフト112が導電性材料でひどく汚染されている状況では、電流はツールピース114と電極120との間を容易に流れることになる。したがって、経路510内に直列に配置された電流計530を使用するなどして経路510を流れる電流を監視することにより、導電性材料の蓄積を監視することができ、次に、患者と電極120との間の電圧差が使用不可能なレベルまで低下する前に、(例えば、シース(図示せず)または上記の加熱コイル131を介して)シャフト112を洗浄することができる。シャフト112が加熱コイル131を介して洗浄される状況では、発生する加熱がシャフト112上に配置された材料のレベルに依存するように、加熱コイル131を監視回路500の経路510と直列構成で配置してもよいことが想定される。
【0053】
上記監視回路500は、ツールピース114からの外科手術信号の除去後にのみ有効化される。しかし、代替実施形態では、図面の
図6bに示すように、監視回路500は、シャフト112の遠位端、その外側に配置された導電性ガードカラーまたはリング540を備えてもよく、シャフト112上の導電性材料の蓄積レベルは、電極120とツールピース114との間ではなく、電流計A1 530aを介して材料を通過し、電極120とリング540との間を流れる電流を監視することにより決定されるので、シャフト112上の材料の蓄積を監視することができる。この代替実施形態の監視回路は、別個の電流計A2 530bをさらに備えるので、電極120から患者を流れる電流は、外科手術信号をツールピース114に印加する間、すなわち使用中に、同時に監視することができる。
【0054】
図6aおよび
図6bに示される監視回路500はまた、電極120からの電気信号により患者を通過する全電流を監視するようにも構成される。
図6aおよび
図6bを参照すると、ツールピース114および電極120の使用中に、電流は電極120から患者を通過し、患者パッド144を介してそれぞれの発電機140に戻る。したがって、外科手術中に電流を監視することができるので、電極120への電流供給を最大化して、患者の安全電流制限を超えることなく、最適なイオン化を提供することができる。
【0055】
本アセンブリ100は、外科医が電極120への電流を起動させて感知信号とは無関係に粒子状物質の除去を行えるように、例えば、発電機140上に配置されてもよいオーバーライドアクチュエータ170と、(図面の
図1および
図5に示されるように)コントローラ150と、外科手術用ツール110またはフットスイッチ(図示せず)とをさらに備える。オーバーライド設備により、外科医は、例えば、スモーク除去のために、意識的にツール110を配置することができ、さらに外科医がコントローラ150の切替え装置151を操作して、あらかじめ準備した時間の間、外科手術部位の近くに浮遊する粒子状物質を適切に除去することができる。
【0056】
外科医が外科手術用発電機410を起動させて(したがって電極120への電気信号のコールを開始して)、またはオーバーライドアクチュエータ170を作動させて電極120への電気信号を有効にするかどうかに関係なく、電極120への電気(スモーク除去)信号の印加は、基本的に、電極120の患者組織への近接を監視する閉ループ制御回路200によって制御される。制御回路200は、電極120の遠位端の電圧を監視するための電圧監視装置(図示せず)を備える。電極120が、例えば、患者の腹腔内の腹壁(図示せず)に接近しすぎて配置された場合、電極120と患者組織との間のインピーダンスが減少するため、電圧は閾値値を下回ることになる。この低下した電圧は、外科手術に伴う粒子とスモークをイオン化するための適切な電位差を作り出すには低すぎることになる。さらに、電極120が患者の組織に接近しすぎる場合、これは、電気信号の印加時に、患者を通過する直接的な電気的短絡をもたらす可能性がある。したがって、制御回路200は、電極120のカラー121/要素126/ワイヤ129が、電気信号の要求またはコールに関係なく、患者の組織に接近しすぎて配置されるか、または配置されるようになる場合に、電極120への電気信号の印加を防止/終了するように構成される。
【0057】
図面の
図7を参照すると、本発明の一実施形態による外科手術用システム400の回路
図600の概略図が提供されているが、感知装置160は除外されている。システム400は、入力端子602を介して交流主電力を受電するように構成され、この交流主電力は、発電機140に関連する整流回路(図示せず)を使用して直流に変換される。発電機140からの高電圧出力は、ケーブル142内のライン142aを介してハンドピース110に提供される。ライン142aはリレーR1を備え、電極120への電気信号の印加は、このリレーR1の切替え状態に依存する。
【0058】
同様に、外科手術用発電機410は、入力端子604を介して交流主電力を受電し、インタフェース606を介して出力される第1の信号すなわち外科手術信号を生成するように構成される。外科手術信号は、ケーブル411およびコネクタ608を介してハンドピース110、したがってツールピース114に伝達される。ケーブル411は、リレーR2が配置されたライン411aと、リレーR3が配置されたケーブル411bとを含む。ケーブル411では、患者回路と環境との間の静電容量を低減し、外科手術用発電機出力部の電極間の静電容量も低減するために、長さが最小化されている。これにより、RF漏れ電流が減少し(したがって、オペレータまたは患者の火傷のリスクが低下し)、患者への感電の危険性である低周波(電源)漏れ電流のリスクが減少する傾向がある。一部のシステムでは、治療ケーブルを長くすることで増加するRF変位電流/容量電流は、外科手術効果電流と比較して有意であり(外科手術用プラズマは多くの場合、高インピーダンスである)、この結果、意図した治療波形は減衰する。
【0059】
システム400の回路は、リレーR2の両側に結合され、帰路または接地経路614まで延びる第1および第2の電気経路610、612をさらに備える。経路614は、コントローラ150のハウジング150a上の端子616まで延びる。第2の極143または発電機140の戻りは、ケーブル411’を介してこの経路614に電気的に結合される。ケーブル411’は、端子616と電気的に結合するために、その遠位端に配置されたコネクタ618を備える。第1の経路610は、リレーR2の高電圧側で電気的に結合され、その中に配置された直列接続ブリード抵抗器620(1MΩ~300MΩ、好ましくは50MΩ~200MΩの範囲の抵抗値を有する)を備える。ブリード抵抗器620は、第1の信号の印加から生じる残留電荷の消散または放電を促進するように機能する。ブリード抵抗器620の抵抗は、第1の信号が好ましくは10μAに制限されるため、外科手術用発電機410の出力部に現れる外科手術信号の残留部分を適切に減衰するように選択される。ブリード抵抗器620は、第2の信号に与えられる負荷に対して些細な追加であり、したがって、第2の信号に実質的に影響を及ぼさない。第2の経路612は、リレーR2の低電圧側で電気的に結合され、直列接続されたリレーR6および放電抵抗器622を備える。
【0060】
回路は、ボタン420などを介して外科医によって手動で起動されるツールハンドル111に配置されたリレーR5をさらに備える。リレーR5は、外科医の要求を伝えるためにケーブル142内でコントローラ150まで延びる電気経路142b内に配置される。経路142bは、DC電流がコントローラ150に流れるのを防止するためのコンデンサ624などの電気絶縁要素をさらに備える。
【0061】
ツールピース114および電極120の動作状態は、フロントパネルインジケータディスプレイ626を介して外科医への視覚的出力として提供される。このディスプレイ626は、DC電流がディスプレイ626に流れるのを防止する保護コンデンサ630も含む経路628を介して、コントローラ150から信号を受信するように構成される。
【0062】
図7を参照すると、回路は、線142aに電気的に結合され、ハウジング150aに配置されたポート625まで延びる別個の電気経路621をさらに備える。経路621は、スモーク除去のためにさらなる電極(図示せず)を発電機140に電気的に結合する必要がある場合、第1の信号をポート625に伝達するためにコントローラ150により動作可能な直列接続リレーR4をさらに備える。
【0063】
初期化プロセス中、切替え装置151のリレーR1およびR2は閉じられ、切替え装置151の他の全てのリレー(R3~R6)は開いているため、外科手術用発電機410の出力部における残留電荷は、10ms~100msの間、放電抵抗器620を介して急速に放電または消散することができる。この初期化の後、リレーR1が開く。この状態では、システムは待機状態にあり、R2のみが閉じられ、外科医からの要求に対応できる。
【0064】
外科医がボタン181を作動させることにより外科手術信号をツールピース114に印加することを要求すると、リレーR5が閉じられ、それによりコントローラ150に対してリレーR3を閉じるように命令する。ボタン181が押されている間、外科手術信号はツールピース114に伝達され、感知装置(
図7には図示せず)は、外科手術信号の起動を感知し、スモーク除去のために、リレーR1を閉じて電気信号を電極120に印加するように構成される。電気信号が電極120へ印加されると、そこから電子が発生し、電子は浮遊粒子に付着し、それにより粒子をイオン化する。DC信号により電極120と患者との間に生成される電界は、その後、イオン化粒子が患者に引き付けられるようになり、したがって、外科手術部位から離れるようになり、外科医の視界が改善される。
【0065】
外科医がボタン181を解除すると、リレーR5が開く。感知装置160は、この解除を検出し、このボタン解除をコントローラ150に伝え、これによりリレーR2およびR3が開き、それにより外科手術信号がツールピース114まで移動するのを止める。約5~10秒の時間遅延に続いて、リレーR1がコントローラ150によって開かれ、電極120から電気信号が除去される。しかしながら、例えば、外科医が長時間のスモーク除去を必要とする場合、外科医はオーバーライドアクチュエータ170を押して、電気信号が電極120まで移動し続けるようにしてもよい。さらに、外科医がボタン181を解除してツールピース114から外科手術信号を除去すると、コントローラ150はリレーR6を閉じさせ、ツールピース114で発生した容量性残留電荷が抵抗器622を介して放電できるようにする。
【0066】
しかしながら、電極120への電気信号の印加は、患者組織と接触しないように配置され、閉ループ制御回路200によって決定されるように、患者組織から最小距離に配置される電極120に依存する。制御回路200は、電極120が患者組織に接近しすぎて配置された場合、電気信号の要求またはコールに関係なく、電極120への電気信号の印加を無効化/防止するように構成される。
【0067】
図面の
図8を参照すると、本発明の一実施形態による電極アセンブリ700が示されており、これは、外科手術部位の近くで外科手術中に発生するサージカルスモークなどの粒子状物質を低減する際に外科手術用ツール110と共に使用される。電極アセンブリ700は、外科手術用アセンブリ100と共に使用することができ、上記のシステム400は、それぞれの電気経路128a~dを介して発電機130とそれぞれ別個に電気的に結合可能な複数の導電性要素126a~dを含む電極を備え、発電機140から電気信号、すなわち電流を受け取るように構成されている。
【0068】
要素126a~dは、外科手術用ツール110の周りで、要素126a~d間の角度分離を維持するキャリア122を介して円形アレイに構成される。しかしながら、熟練した読者は、要素126が、ツールシャフト112の断面形状に応じて、異なる形状のアレイに構成できることを認識するであろう。要素126は、例えば、実質的に平行な構成で、ツール110の長手方向軸と平行に配向され得る細長い電気ストリップまたはワイヤを備えてもよい。各要素126は、それぞれの経路128a~dに配置されたそれぞれのスイッチ710a~dを介して電流を受け取るように構成される。スイッチ710a~dは、コントローラ150の切替え装置710の一部を形成し、コントローラ150は、電流感知装置720からの電流感知信号に応じて装置710の各スイッチ710a~dを動作させるように構成される。
【0069】
電流感知装置720は、それぞれの経路128a~dを流れる電流を別個に感知するようにそれぞれが配置された複数の電流センサ720a~720dを備える。特定のセンサ720a~dが、特定の経路128a~dに流れる電流が所定の閾値値を超えたことを感知した場合、感知装置720は、コントローラ150に信号を出力し、コントローラ150にそれぞれの経路128a~d内のスイッチ710a~dを開かせ、要素126a~dを電気的に絶縁させる。この点で、1つ以上の導電性要素126a~dが患者組織に接近しすぎて通過する、またはそうでなければ患者に接触する状況では、コントローラ150は、それぞれの要素126a~dに流れる電流を除去して、導電性要素126a-dからの患者を通る電流の直接的な放電を防止するように構成される。選択された要素126aおよび126b(例えば)を効果的に「スイッチオフ」するこの機能により、残りの要素126cおよび126d(例えば)が正常に機能し続けることができるため、電極120の完全なシャットダウンの必要がなくなる。
【0070】
コントローラ150は、タイミングシーケンスに従って切替え装置710のスイッチ710a~710dを選択的に開閉するタイミング装置154をさらに備えてもよい。タイミング装置154により、コントローラ150は、例えば、各導電性要素126a~dに順番に電流を周期的に印加するか、そうでなければ特定の順序で導電性要素126a~dに電流を印加して、要素126a~dから所望の時間変化する電界を生成できるであろうことが想定される。
【0071】
上記から、本アセンブリおよびシステムにより、外科医がツールピースで患者組織を切断し、同時に電極で切断手術から生成された粒子を除去することもできることは明らかである。したがって、本アセンブリおよびシステムは、よりコンパクトで機能的な外科手術用装置を提供する。