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特許7314066接合用芯線、接合用具、リードワイヤー、製紙用シームフェルト及びその接合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】接合用芯線、接合用具、リードワイヤー、製紙用シームフェルト及びその接合方法
(51)【国際特許分類】
   D21F 7/10 20060101AFI20230718BHJP
【FI】
D21F7/10
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020009503
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021116484
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000229852
【氏名又は名称】日本フエルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】青木 茂人
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-169489(JP,A)
【文献】特開2011-184822(JP,A)
【文献】特開2002-013089(JP,A)
【文献】特表2001-503124(JP,A)
【文献】実開昭55-075696(JP,U)
【文献】特開2007-277784(JP,A)
【文献】特表2008-518116(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0037573(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104179059(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC D21B 1/00 - 1/38
D21C 1/00 - 11/14
D21D 1/00 - 99/00
D21F 1/00 - 13/12
D21G 1/00 - 9/00
D21H 11/00 - 27/42
D21J 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有端状製紙用織物の長手方向の両端が接合されて無端状にされた製紙用シームフェルトの接合に用いられる接合用芯線であって、
前記有端状製紙用織物の一端側に設けられた接合用ループの内孔と、前記有端状製紙用織物の他端側に設けられた接合用ループの内孔と、を幅方向に整列させてなる連通孔に挿通して用いられ、
繊維をループ状に巻回したループ状繊維束を含むことを特徴とする接合用芯線。
【請求項2】
前記ループ状繊維束の束長さが、前記有端状製紙用織物の幅長さ以下である請求項1に記載の接合用芯線。
【請求項3】
前記ループ状繊維束を、前記連通孔に挿通した状態で固定する補助芯線を備え、
前記補助芯線は、前記ループ状繊維束の少なくとも一端側に設けられている請求項2に記載の接合用芯線。
【請求項4】
前記補助芯線は、異形断面繊維のマルチフィラメントである請求項3に記載の接合用芯線。
【請求項5】
前記補助芯線は、モノフィラメント及び/又は紡績糸の撚糸からなる請求項3に記載の接合用芯線。
【請求項6】
有端状製紙用織物の長手方向の両端が接合されて無端状にされた製紙用シームフェルトの接合に用いられる接合用具であって、
前記有端状製紙用織物の一端側に設けられた接合用ループの内孔と、前記有端状製紙用織物の他端側に設けられた接合用ループの内孔と、を幅方向に整列させてなる連通孔に挿通される接合用芯線と、
前記接合用芯線を、前記連通孔内へ誘導するためのリードワイヤーと、を備え、
前記接合用芯線は、繊維をループ状に巻回したループ状繊維束を含み、
前記リードワイヤーは、前記ループ状繊維束の端部に取り外し可能に設けられていることを特徴とする接合用具。
【請求項7】
前記ループ状繊維束の束長さが、前記有端状製紙用織物の幅長さ以下である請求項6に記載の接合用具。
【請求項8】
前記ループ状繊維束を、前記連通孔に挿通した状態で固定する補助芯線を備え、
前記補助芯線は、前記ループ状繊維束の少なくとも一端側に設けられている請求項6又は7に記載の接合用具。
【請求項9】
前記補助芯線は、異形断面繊維のマルチフィラメントである請求項8に記載の接合用具。
【請求項10】
前記補助芯線は、モノフィラメント及び/又は紡績糸の撚糸からなる請求項8に記載の接合用具。
【請求項11】
有端状製紙用織物の長手方向の両端が接合されて無端状にされ、製紙用織物の製紙面又は/及び走行面にバット繊維層が積層され、ニードリングにより一体化された製紙用シームフェルトであって、
前記有端状製紙用織物と、
前記有端状製紙用織物の一端側に設けられた接合用ループの内孔と、前記有端状製紙用織物の他端側に設けられた接合用ループの内孔と、を幅方向に整列させてなる連通孔内に挿通された接合用芯線と、を備え、
前記接合用芯線は、繊維をループ状に巻回したループ状繊維束を含むことを特徴とする製紙用シームフェルト。
【請求項12】
前記接合用ループの内孔径が1.5~4.0mmである請求項11に記載の製紙用シームフェルト。
【請求項13】
前記ループ状繊維束の束長さが、前記有端状製紙用織物の幅長さ以下である請求項11又は12に記載の製紙用シームフェルト。
【請求項14】
前記ループ状繊維束を、前記連通孔に挿通した状態で固定する補助芯線を備え、
前記補助芯線は、前記ループ状繊維束の少なくとも一端側に設けられている請求項11乃至13のうちのいずれかに記載の製紙用シームフェルト。
【請求項15】
前記補助芯線は、異形断面繊維のマルチフィラメントである請求項14に記載の製紙用シームフェルト。
【請求項16】
前記補助芯線は、モノフィラメント及び/又は紡績糸の撚糸からなる請求項14に記載の製紙用シームフェルト。
【請求項17】
前記接合用芯線は、前記ループ状繊維束の一端側に設けられた第1補助芯線と、前記ループ状繊維束の他端側に設けられた第2補助芯線と、を備え、
前記第1補助芯線及び前記第2補助芯線が、前記有端状製紙用織物に接合されて、前記ループ状繊維束が前記連通孔内で固定されている請求項11乃至16のいずれかに記載の製紙用シームフェルト。
【請求項18】
請求項17に記載の製紙用シームフェルトの接合方法であって、
前記連通孔を形成する連通孔形成工程と、
前記ループ状繊維束と、前記ループ状繊維束の前記一端側に設けられた前記第1補助芯線と、前記ループ状繊維束の前記他端側に取り外し可能に設けられたリードワイヤーと、を備える接合用具を、前記連通孔の一端側から挿入して、前記第1補助芯線の後端が前記連通孔の一端側に露出されながら、前記ループ状繊維束の前記他端が前記連通孔の他端外に露出された状態を形成する引出工程と、
前記引出工程後に、前記ループ状繊維束の他端側において、前記リードワイヤーを前記第2補助芯線に交換する交換工程と、
前記交換工程後に、前記ループ状繊維束を前記連通孔の一端側へ引き戻して、前記第2補助芯線の前端を前記連通孔内に引き込んだ状態を形成する引戻工程と、を備えることを特徴とする製紙用シームフェルトの接合方法。
【請求項19】
前記引戻工程後に、前記第1補助芯線及び/又は前記第2補助芯線を、有端状製紙用織物の縁部に縫い込んで固定する縫込工程を備える請求項18に記載の製紙用シームフェルトの接合方法。
【請求項20】
前記引戻工程後に、前記第1補助芯線及び/又は前記第2補助芯線を、有端状製紙用織物の縁部に引き込んで固定する引込工程を備える請求項18に記載の製紙用シームフェルトの接合方法。
【請求項21】
請求項18乃至20のうちのいずれかに記載の接合方法で用いられることを特徴とするリードワイヤー。
【請求項22】
前記リードワイヤーは、V字状に折り曲げた形状である請求項21に記載のリードワイヤー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合用芯線、接合用具、リードワイヤー、製紙用シームフェルト及びその接合方法に関する。更に詳しくは、有端状製紙用織物の長手方向の両端を接合して無端状にした製紙用シームフェルト及びその接合方法、並びに、製紙用シームフェルトの接合に用いる接合用芯線、接合用具、リードワイヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製紙用シームフェルトには、有端状製紙用織物の長手方向の両端を接合して無端状にする製紙用シーム付き織物が用いられている。
この製紙用シーム付き織物は、有端状製紙用織物の一端側に設けられた接合用ループの内孔と、有端状製紙用織物の他端側に設けられた接合用ループの内孔と、が幅方向に重なるように整列させて形成される接合用ループ同士の共通孔に、接合用芯線を挿通することによって行われるのが通常である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、湿紙のプレス工程において、大量の脱水が必要なパートでは、高い搾水性を確保するために、空隙容積を大きくした多重織構造の基布が用いられることがある。
特許文献1に記載の製紙用シーム付き織物では、4重織構造からなり、厚さ方向上下2段の2重織それぞれの端部にループ列を形成して、それぞれのループ列を分離可能にして、接合作業の効率化を図っている。
【0004】
製紙用フェルトは、製紙マシンにおいて、プレスロールと複数本のロールに装着され、プレスロールの回転により走行する。この時、走行姿勢を維持するための装置の一部を製紙用フェルトの側面に接触させる場合がある。一般的に、この接触により製紙用フェルトの側面は擦られ摩耗する。また、製紙用シームフェルトの場合、挿通された接合用芯線の両端部について、走行中に、接合用ループ内に引き込まれないような処置がなされている。例えば、織物の側面から飛び出た接合用芯線の端部を結節してコブ状にしたりする。コブがループの内孔よりも大きければ引き込まれることが防止される。この時、結節が解けないことや、前述の装置との摩擦による結節部の破断のないことが重要となる。また、結節させる方法の他に、接合用芯線の端部を折り返して、噛み合わせたループの外側の隙間に挿通させる方法や織物に縫い付ける方法もある。この場合においても前述の装置との摩擦による折り返し部の摩耗は致命的になるので、織物の側面より折り返し部が飛び出ることは避けなければならない。織物のシーム部端部に三角形の切り込みを入れ、接合用芯線が織物の側面から飛び出さないような方法もあるが、切り込みを入れると織物の糸を切断することになり、切断された糸が抜け出すことがあるため好ましくない。
ここで、ループ径が大きい場合、挿通させる接合用芯線の本数が多くなりかつ構成する糸の直径が大きくなるので、結節のコブは大きくなり、糸剛性が高くなるため解けやすくなる。接合用芯線を折り返す場合においては、織物の側面から飛び出す部分が大きく出っ張るので擦られやすくなってしまう。
【0005】
また、従来、シーム部の接合には、リードワイヤーと呼ばれる細い線材の後端に接合用芯線(糸の束)が固定されて一体化した用具を用いる(特許文献2参照。)。
例えば、図18に示すように、接合用具95は、接合用芯線91をリードワイヤー92の筒状部に内挿接着して形成し、先端部から接合用ループ同士の共通孔に、接合用芯線を挿通する。
更に、細い線材の後端を縫い針のような孔状にしたリードワイヤーも提案されている(特許文献3参照。)。このリードワイヤーは、細い線材の後端を縫い針のような孔状にして形成され、孔部に接合用芯線を掛け止めして、先端側から前記共通孔に挿入して接合用芯線を挿入することができる。ループ径が小さな場合、針孔で折り返された部分の糸の膨らみがループ径より大きくなり、スムーズな挿通が阻害される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-138347号公報
【文献】特開2008-169489号公報
【文献】特開2002-13089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、多重織の製紙用シームフェルトであっても、外側の基布(製紙用織物)同士の糸を用いてシングルシームにしたい場合には、必然的にループ径が大きくなる。
ここで、接合用芯線の太さ、本数はループ径の大きさによって調整することになるが、ループ径が大きくなれば必然的に、接合用芯線の本数が多くなり、接合用芯線を構成する糸径は大きいものが選択される。接合用芯線の本数が多くなれば、ループ孔への挿通作業も手間取ることになる。更に、接合用芯線の本数が多くなりかつ接合用芯線の糸径が大きくなると、束としての糸の曲げ剛性が高くなり、結果として接合用芯線の両端部を基布端部に固定するための接合用芯線の折り返し作業、あるいは接合用芯線の結節作業が困難となる。例えば、図17に示すように、従来の接合用芯線91は、有端状製紙用織物の一端側3、他端側4を接合するに際して、端部から引き出されるとほうき状となり、特に10本を超える場合は、その剛性から処置が困難である。
【0008】
また、特許文献2に記載のリードワイヤーは、リードワイヤーと接合用芯線が一体化しているので取り外しができず、挿通後、挿通させた部分を差し引いて切断されるので、挿通ごとに接合用芯線は短くなり、必要長さを確保できなくなった時点で廃棄される消耗品となってしまう。
更に、特許文献3に記載のリードワイヤーは、線材の後端を孔状にするために、後端を熔接することになるが、接合用芯線を挿通する時の引っ張り力は大きいので、熔接部が破壊されることが多々ある。
【0009】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、製紙用シームフェルトにおいて、接合用のループ径が大きな場合であっても、効率的に接合可能な製紙用シームフェルトの接合用芯線及びその接合用具並びに製紙用シームフェルト及びその接合方法とその接合方法に用いるリードワイヤーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の通りである。
1.有端状製紙用織物の長手方向の両端が接合されて無端状にされた製紙用シームフェルトの接合に用いられる接合用芯線であって、
前記有端状製紙用織物の一端側に設けられた接合用ループの内孔と、前記有端状製紙用織物の他端側に設けられた接合用ループの内孔と、を幅方向に整列させてなる連通孔に挿通して用いられ、
繊維をループ状に巻回したループ状繊維束を含むことを特徴とする接合用芯線。
2.前記ループ状繊維束の束長さが、前記有端状製紙用織物の幅長さ以下である1.に記載の接合用芯線。
3.前記ループ状繊維束を、前記連通孔に挿通した状態で固定する補助芯線を備え、
前記補助芯線は、前記ループ状繊維束の少なくとも一端側に設けられている2.に記載の接合用芯線。
4.前記補助芯線は、異形断面繊維のマルチフィラメントである3.に記載の接合用芯線。
5.前記補助芯線は、モノフィラメント及び/又は紡績糸の撚糸からなる3.に記載の接合用芯線。
6.有端状製紙用織物の長手方向の両端が接合されて無端状にされた製紙用シームフェルトの接合に用いられる接合用具であって、
前記有端状製紙用織物の一端側に設けられた接合用ループの内孔と、前記有端状製紙用織物の他端側に設けられた接合用ループの内孔と、を幅方向に整列させてなる連通孔に挿通される接合用芯線と、
前記接合用芯線を、前記連通孔内へ誘導するためのリードワイヤーと、を備え、
前記接合用芯線は、繊維をループ状に巻回したループ状繊維束を含み、
前記リードワイヤーは、前記ループ状繊維束の端部に取り外し可能に設けられていることを特徴とする接合用具。
7.前記ループ状繊維束の束長さが、前記有端状製紙用織物の幅長さ以下である6.に記載の接合用具。
8.前記ループ状繊維束を、前記連通孔に挿通した状態で固定する補助芯線を備え、
前記補助芯線は、前記ループ状繊維束の少なくとも一端側に設けられている6.又は7.に記載の接合用具。
9.前記補助芯線は、異形断面繊維のマルチフィラメントである8.に記載の接合用具。
10.前記補助芯線は、モノフィラメント及び/又は紡績糸の撚糸からなる8.に記載の接合用具。
11.有端状製紙用織物の長手方向の両端が接合されて無端状にされ、製紙用織物の製紙面又は/及び走行面にバット繊維層が積層され、ニードリングにより一体化された製紙用シームフェルトであって、
前記有端状製紙用織物と、
前記有端状製紙用織物の一端側に設けられた接合用ループの内孔と、前記有端状製紙用織物の他端側に設けられた接合用ループの内孔と、を幅方向に整列させてなる連通孔内に挿通された接合用芯線と、を備え、
前記接合用芯線は、繊維をループ状に巻回したループ状繊維束を含むことを特徴とする製紙用シームフェルト。
12.前記接合用ループの内孔径が1.5~4.0mmである11.に記載の製紙用シームフェルト。
13.前記ループ状繊維束の束長さが、前記有端状製紙用織物の幅長さ以下である11.又は12.に記載の製紙用シームフェルト。
14.前記ループ状繊維束を、前記連通孔に挿通した状態で固定する補助芯線を備え、
前記補助芯線は、前記ループ状繊維束の少なくとも一端側に設けられている11.乃至13.のうちのいずれかに記載の製紙用シームフェルト。
15.前記補助芯線は、異形断面繊維のマルチフィラメントである14.に記載の製紙用シームフェルト。
16.前記補助芯線は、モノフィラメント及び/又は紡績糸の撚糸からなる14.に記載の製紙用シームフェルト。
17.前記接合用芯線は、前記ループ状繊維束の一端側に設けられた第1補助芯線と、前記ループ状繊維束の他端側に設けられた第2補助芯線と、を備え、
前記第1補助芯線及び前記第2補助芯線が、前記有端状製紙用織物に接合されて、前記ループ状繊維束が前記連通孔内で固定されている11.乃至16.のいずれかに記載の製紙用シームフェルト。
18.17.に記載の製紙用シームフェルトの接合方法であって、
前記連通孔を形成する連通孔形成工程と、
前記ループ状繊維束と、前記ループ状繊維束の前記一端側に設けられた前記第1補助芯線と、前記ループ状繊維束の前記他端側に取り外し可能に設けられたリードワイヤーと、を備える接合用具を、前記連通孔の一端側から挿入して、前記第1補助芯線の後端が前記連通孔の一端側に露出されながら、前記ループ状繊維束の前記他端が前記連通孔の他端外に露出された状態を形成する引出工程と、
前記引出工程後に、前記ループ状繊維束の他端側において、前記リードワイヤーを前記第2補助芯線に交換する交換工程と、
前記交換工程後に、前記ループ状繊維束を前記連通孔の一端側へ引き戻して、前記第2補助芯線の前端を前記連通孔内に引き込んだ状態を形成する引戻工程と、を備えることを特徴とする製紙用シームフェルトの接合方法。
19.前記引戻工程後に、前記第1補助芯線及び/又は前記第2補助芯線を、有端状製紙用織物の縁部に縫い込んで固定する縫込工程を備える18.に記載の製紙用シームフェルトの接合方法。
20.前記引戻工程後に、前記第1補助芯線及び/又は前記第2補助芯線を、有端状製紙用織物の縁部に引き込んで固定する引込工程を備える18.に記載の製紙用シームフェルトの接合方法。
21.18.乃至20.のうちのいずれかに記載の接合方法で用いられることを特徴とするリードワイヤー。
22.前記リードワイヤーは、V字状に折り曲げた形状である21.に記載のリードワイヤー。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製紙用シームフェルトの接合に用いられる接合用芯線は、有端状製紙用織物の一端側に設けられた接合用ループの内孔と、前記有端状製紙用織物の他端側に設けられた接合用ループの内孔と、を幅方向に整列させてなる連通孔に挿通して用いられ、
繊維をループ状に巻回したループ状繊維束を含むことで、大きな径のループ(連通孔)であっても多数本分の繊維をループ内に効率的に挿通させることができる。
また、接合用ループの内孔径が1.5~4.0mmである場合には、特に効率的に多数本分の繊維をループ内に挿通させることができる。
更に、前記有端状製紙用織物の幅長さよりも短いループ状繊維束を含む接合用芯線の場合には、織物の幅長を上限とした長さにループ状繊維束を設定することができ、また幅方向縁部には、端部を処理しやすい糸を補助用芯線とし、挿通後にループ状繊維束の端部となる部分に挿通する形で固定することができる。
また、前記ループ状繊維束を、前記連通孔に挿通した状態で固定する補助芯線を備え、前記補助芯線が、前記ループ状繊維束の一端側に設けられている場合には、シーム部の幅方向の縁部に強固に固定することができる。
更に、前記補助芯線は、異形断面繊維のマルチフィラメントである場合には、更にシーム部の幅方向の縁部に強固に固定することができる。
また、前記補助芯線が、モノフィラメント及び/又は紡績撚糸からなる場合においても、更にシーム部の幅方向の縁部に強固に固定することができる。
【0012】
本発明の接合用具は、有端状製紙用織物の一端側に設けられた接合用ループの内孔と、前記有端状製紙用織物の他端側に設けられた接合用ループの内孔と、を幅方向に整列させてなる連通孔に挿通される接合用芯線と、前記接合用芯線を、前記連通孔内へ誘導するためのリードワイヤーと、を備え、前記接合用芯線は、繊維をループ状に巻回したループ状繊維束を含み、前記リードワイヤーは、前記ループ状繊維束の端部に取り外し可能に設けられているため、有端状製紙用織物同士を両端側に備えたループ同士を接合するのに極めて効率的に作業をする用具となる。
【0013】
本発明の製紙用シームフェルトは、有端状製紙用織物と、前記有端状製紙用織物の一端側に設けられた接合用ループの内孔と、前記有端状製紙用織物の他端側に設けられた接合用ループの内孔と、を幅方向に整列させてなる連通孔内に挿通された接合用芯線と、を備え、前記接合用芯線は、繊維をループ状に巻回したループ状繊維束を含むため、大きな径のループ(連通孔)であっても多数本分の繊維をループ内に効率的に挿通させることができる。
更に、接合用芯線が、前記ループ状繊維束の一端側に設けられた第1補助芯線と、前記ループ状繊維束の他端側に設けられた第2補助芯線と、を備え、前記第1補助芯線及び前記第2補助芯線が、前記有端状製紙用織物に接合されて、前記ループ状繊維束が前記連通孔内で固定されている場合には、シーム部両端の端部をより強固に固定することができる。
【0014】
本発明の製紙用シームフェルトの接合方法は、連通孔を形成する連通孔形成工程と、ループ状繊維束と、ループ状繊維束の一端側に設けられた前記第1補助芯線とコイル状繊維束の他端側に取り外し可能に設けられたリードワイヤーと、を備える接合用具を、連通孔の一端側から挿入して、第1補助芯線の後端が連通孔の一端側に露出されながら、ループ状繊維束の他端が連通孔の他端外に露出された状態を形成する引出工程と、引出工程後に、ループ状繊維束の他端側において、リードワイヤーを第2補助芯線に交換する交換工程と、交換工程後に、ループ状繊維束を連通孔の一端側へ引き戻して、第2補助芯線の前端を連通孔内に引き込んだ状態を形成する引戻工程と、を備えるため、ループ状繊維を効率よく連通孔内に引き込むことができると共に、補助芯線の縁部を確実に固定できる。
本接合方法において、引戻工程後に、第1補助芯線及び/又は第2補助芯線を、有端状製紙用織物の縁部に縫い込んで固定する縫込工程を備える場合には、補助芯線の端部を更に確実に固定することができる。
本接合方法において、引戻工程後に、第1補助芯線及び/又は第2補助芯線を、有端状製紙用織物の縁部に引き込んで固定する引込工程を備える場合にも、補助芯線の端部を更に確実に固定することができる。
本接合方法で用いられるリードワイヤーであれば、効率よく確実に接合用芯線を連通孔に挿着することができる。
また、リードワイヤーが、V字状に折り曲げた形状である場合には、取り外しができ、作業が簡単となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
本発明は、製紙用シームフェルトに係る発明であるが、図面においては、バット繊維層を省略した方が判り易いため、製紙用織物部分のみについて記載し、バット繊維層については記載を省略している。
図1】実施例の接合用芯線に係り、ループ状繊維束の模式的な平面図である。
図2】実施例の接合用芯線に係り、ループ状繊維束の一端側に補助芯線を備えた状態を示す模式的な平面図である。
図3】実施例の接合用芯線に係り、片側ループ状繊維束の一端側に補助芯線を備えた状態を示す模式的な平面図である。
図4】実施例の接合用芯線に係り、コイル折り畳み状繊維束の一端側に補助芯線を備えた状態を示す模式的な平面図である。
図5】(a)実施例の接合用具に係り、接合用芯線にリードワイヤーを取り付けた状態を示す模式的な平面図である。
図6】(a)実施例の製紙用シーム付き織物1A及び2の長さ方向の模式的な断面図、(製紙用シーム付き織物2については、図8のA-A´断面図)である。(b)実施例の製紙用シーム付き織物1Bの長さ方向の模式的な断面図である。(c)実施例の製紙用シーム付き織物2の図8のB-B´断面図である。
図7図6(a)に示した製紙用シーム付き織物1Aに係り、接合用芯線を縁部に縫い込んで固定した状態を示す模式的な平面図である。
図8】実施例の製紙用シーム付き織物2に係り、接合用芯線を縁部に折り返して固定した状態を示す模式的な平面図である。
図9】実施例の製紙用シームフェルトの接合方法のうちの連通孔形成工程を示し、(a)は、有端状製紙用織物の接合用ループの内孔を幅方向に整列させる前の状態の模式的な平面図、(b)同じく整列させた状態の模式的な平面図、(c)は、(b)の模式的な側面図である。
図10】実施例の製紙用シームフェルトの接合方法の引き出し工程に係り、接合用具を連通孔の一端側に挿入する様子を示す模式的な平面図である。
図11】(a)図10におけるループ状繊維束に補助芯線を取り付けた状態の実物の写真、(b)図10におけるループ状繊維束にリードワイヤーを取り付けた状態の実物の写真である。
図12】(a)、(b)それぞれ図11(a)、(b)を90度変えた方向からの写真である。
図13】実施例の製紙用シームフェルトの接合方法の引き出し工程に係り、ループ状繊維束の他端が連通孔の他端外に露出された様子を示す模式的な平面図である。
図14】実施例の製紙用シームフェルトの接合方法に係り、交換工程を示す模式的な平面図である。
図15】実施例の製紙用シームフェルトの接合方法に係り、引戻工程を示す模式的な平面図である。
図16図13図15に対応する実物の写真(連通孔50の他端側50b付近)を示す。(a)図13に対応するは引き出し工程、(b)図14に対応する交換工程、(c)図15の引戻工程の途中の段階、(d)図15の引戻工程を示す。
図17】従来例の製紙用シームフェルトの接合方法に係り、接合用芯線を接合部から引き出した状態を示す実物の写真である。
図18】従来例に係り、接合用芯線にリードワイヤーを取り付けた様子を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0017】
[1]接合用芯線
前記「接合用芯線」は、例えば図9(a)に示すように、有端状製紙用織物1aの長手方向の両端(一端側3、他端側4)を接合して無端状の製紙用シーム付き織物1Aにするために用いられる。
この接合は、有端状製紙用織物1aの一端側3と、前記有端状製紙用織物1aの他端側4によって接合形成された連通孔50に、接合用芯線10Cを挿通することによって行われる。
【0018】
接合用芯線は、ループ状に巻回された繊維を束ねたループ状繊維束を含む。
前記「ループ状繊維束」は、ループ状に巻回された繊維を束ねたループ状繊維束であれば、特に限定はなく、後述のように、コイル状繊維束、片側ループ状繊維束、又はコイル折り畳み状繊維束などを含む。
接合用芯線を連通孔へ挿通する際の作業性を向上させることができる。即ち、引き伸ばした状態で、長尺である1本の繊維を、短い長さにまとめようとした場合、繊維をループ状に巻回して束ねる方法以外にも、例えば、折り畳んで束ねる方法等が存在する。しかしながら、長尺な繊維を折り畳んで束ねると、束ねた状態にある繊維束の一端側には、複数のループが同形状にまとまった一塊のループ塊が形成されるものの、他端側は、ばらばらになった複数のループが形成されてしまう。すると、この他端側の複数のループを、同形状にまとまった一塊のループ塊に形成するという手間を要するととともに、ループ塊を形成すると繊維束の中央付近にねじれやたるみを生じてしまうことになる。このようなねじれを生じると、その箇所のみ束の太さが大きくなってしまうことになり、連通孔へ挿通の障害となり得る。
【0019】
この点、ループ状に巻回された繊維束であるループ状繊維束は、左右の両端ともに、複数のループが同形状にまとまった一塊のループ塊が各々形成され、尚且つ、繊維束の中央部にねじれやたるみを生じることがない。従って、両端のループ塊を得やすく、更には、繊維束を全体としてほぼ同じ太さに揃えることができるため、連通孔への挿通性を良くすることができる。
即ち、後述するように、引出工程及び引戻工程において、どちらの方向へループ状繊維束を移動させても連通孔内で繊維束がばらばらに分離されないよう、補助芯線やリードワイヤーを設けることが可能である。
【0020】
尚、芯線本体は、ループ状繊維束のみからなることが好ましいが、例えば、他の繊維を含んでもよい。
また、「接合用芯線」は、芯線本体のみからなってもよいし、後述するように、芯線本体に補助芯線が取り付けられた状態、即ち、芯線本体と補助芯線とを含んでもよい。例えば、図1に示す接合用芯線10Aは、ループ状繊維束(コイル状繊維束)11のみからなる。即ち、芯線本体がループ状繊維束11のみからなる例である。他方、図2に示す接合用芯線10Bは、芯線本体(ループ状繊維束11)と補助芯線12とからなる例である。また、図2では、芯線本体(ループ状繊維束11)はループ状繊維束のみからなる。
【0021】
ループ状繊維束は、多数回巻回した繊維の束であり、巻回数は特に限定はないが、ループ径に応じて巻回数を定めることができ、4~20巻であることが好ましく、10~15巻であることが更に好ましい。本実施形態に係るループ状繊維束11は、4巻であり、8本の繊維束を形成している。
繊維の種類は特に限定はなく、モノフィラメントの単糸又は撚糸、マルチフィラメントであってもよいが、これらの中でもモノフィラメントの単糸であることが好ましい。
モノフィラメントの単糸であれば、その径は、0.2~0.6mmであることが好ましく、0.3~0.5mmであることが更に好ましい。
ループ状繊維束を構成する糸の材質は特に限定はないが、ポリアミドなどの高強度な合成樹脂材料からなるモノフィラメント糸であることが好ましい。
【0022】
ループ状繊維束11は、前記有端状製紙用織物1aの幅長さよりも短くすることができる。即ち、有端状製紙用織物1aの長手方向の一端3における幅(3a-3a縁部間の幅)、及び、有端状製紙用織物1aの長手方向の他端4における幅(4a-4a縁部間の幅)より短くできる。このように、ループ状繊維束の束長さが、有端状製紙用織物1aの幅長さより短い場合、適切な紙抄き幅にループ状繊維束11を設定することができ、幅方向両端には、補助芯線として縁部に固定しやすい糸を用いることができる。即ち、図7及び図8に例示するように、有端状製紙用織物1aの縁部(3a、4a)から、補助芯線12及び13が飛び出さないように設置することができる。
また、ループ状繊維束の束長さは、有端状製紙用織物の幅長さ以下としたうえで、更に、抄き幅以上にできる。即ち、織物(図7の符号1A、図8の符号2)の幅のうち、実際に紙抄きに供される領域幅より、ループ状繊維束の束長さを大きくすることができる。この場合、図7に示す結び目(12c、13c)、縫い込み部(12d、13d)、図8に示す結び目(12c、13c)等の補助芯線12及び13に起因するイレギュラーな凹凸を抄き幅の外側へ設置できる。このため、紙のマーク等の抄紙への影響を防止できる。
【0023】
図2に示す接合用芯線10Bのように、前記ループ状繊維束11を、前記連通孔50に挿通した状態で固定するように、ループ状繊維束11の一端11a側に補助芯線12を備えることができる。
補助芯線12の材質は特に限定はないが、ループ状繊維束11を連通孔50内に固定し、縁部に縫い込み等により固定しやすいことが好ましい。例えば、異形断面繊維のマルチフィラメントとすることができる。異形断面繊維のマルチフィラメントである場合には、円形断面繊維のマルチフィラメントに比べ、結び目が解け難い。また、織物の縁部に糸を縫い付けて固定する場合、摩擦抵抗により解れにくく、更に接着剤で固定をより強固にする場合には、接着剤成分のアンカー効果が発現しやすくなるメリットがある。
また補助芯線12は、モノフィラメント及び/又は紡績糸の撚糸からなることができる。モノフィラメントの撚糸、紡績糸の撚糸、モノフィラメントと紡績糸の混合糸などを採用でき、これらであれば、結び目が解け難く、シーム部の幅方向の縁部をより強固にすることができる。
図2に示す補助芯線12は、モノフィラメントの撚糸に紡績糸の撚糸がカバーリングされた混合糸からなり、ある程度剛性を保持しつつ、縁部への固定しやすさを備えている。
【0024】
図3に示す接合用芯線70Bのように、片側ループ状繊維束71と片側ループ状繊維束一端71a側に補助芯線12を備えることもできる。片側ループ状繊維束71は、一端71a側がループ状に形成されているが、他端71b側は、コイルが切断された形状となっている。
更に図4に示す接合用芯線80Bのように、コイル折り畳み状繊維束81とコイル折り畳み状繊維束81の一端81a側のそれぞれのループ状の端部に補助芯線12を備えることもできる。コイル折り畳み状繊維束81は、一端側に2箇所のループが形成され、他端81b側は、1箇所のみにループが形成されている。
【0025】
[2]製紙用シームフェルト
前記「製紙用シームフェルト」は、有端状製紙用織物の長手方向の両端が接合されて無端状にされた製紙用シーム付き織物にバット繊維層を積層一体化して製造される。
以下の説明において、バット繊維層を省略した方が説明が判り易いため、あえてバット繊維層については記載を省略している。
織物の織組織は特に限定はなく、2重織、3重織、4重織、1重織を2枚重ねたラミネート、1重織と2重織を重ねたラミネート、2重織を2枚重ねたラミネート、織物ではなく有孔のウレタンシートと2重織を重ねたラミネートタイプにすることができる。
本発明に係る一例としての製紙用シーム付き織物1Aを模式的に記載した図6及び、図7に示す。
図6(a)に示すように、製紙用シーム付き織物1Aは、第1経糸51、第2経糸52、第3経糸53、第4経糸54が厚さ方向に重ねられ、これらと交絡する緯糸61、62、及び接結糸63から形成された4重織の織物組織をなしている。
第1~第4の経糸51~54のうちの第1経糸51と第4経糸54の折り返しにより長手方向の両端部に接合用ループ30、40が形成されている。このうち、有端状製紙用織物1Aの一端側3の接合用ループ30の内孔30hと、有端状製紙用織物1aの他端側4の接合用ループ40の内孔40hと、を重ね合わることで、連通孔50を形成している。
即ち、接合用ループ30、40は、織物の幅方向に多数配列されてループ列を構成する。そして、接合相手となる接合用ループ30、40と互いの内孔30h、40hが整列されて連通孔50が形成されている。
【0026】
経糸51~54、緯糸61、62の種類は、特に限定はないが、ポリアミドなどの高強度な合成樹脂材料からなるモノフィラメント糸であることが好ましい。なお、接合用ループ直近においては、多数のフィラメントを束ねたマルチフィラメント糸からなる緯糸を織り込んで、接合用ループの基部の締め付けを緩和して、接合用ループの形態を適正化することもできる。
【0027】
そして、連通孔50内に挿通された接合用芯線10Cを備えている。
接合用芯線10Cは、図7に示すように、ループ状繊維束11と、ループ状繊維束11の両端に固定された補助芯線12、13とからなる。ループ状繊維束11、補助芯線12、13の構成、作用効果については前述の通りである。
補助芯線12、13は、有端状製紙用織物1aの縁部3a、4aの耳部35に瘤状に結び目12c、13cを形成し、更に織物に縫い込んだ縫い込み部12d、13dを有する。縫い込み部12d、13d部に接着剤を塗布することで更に強固に固定することができる。補助芯線が紡績糸又は紡績糸とモノフィラメントの混合糸の場合は、特に接着性がよいため、接着効率が特に優れている。
耳部35は、縁部3a、4aの内方に切込み形成されており、結び目12c、13cが製紙用シーム付き織物1Aの幅から、はみ出さないことが好ましい。
なお、接合用芯線の本数が多く構成する糸径が大きい場合であっても、製紙用シーム付き織物1Aの幅からはみ出すのは、補助芯線12、13であり、補助芯線12、13はループ状繊維束11を構成する糸よりも糸径を小さくすることができる。糸径が小さければ結び目12c、13cは、結節しやすく、小さくできる。また、折り返しのみによる処置を行う場合にあっては、折り返し部の飛び出を小さくでき出っ張りは小さくなる。
また、一般的に、走行姿勢を維持するための装置の一部は、織物の片方の側面にのみ配置されるが、織物の幅が適正でない場合は、その反対側の側面についても、製紙マシンのフレームに擦れる場合があるため、接合用芯線の端部の処置は、両側面について行うことが望ましい。
【0028】
製紙用シーム付き織物1Bは、図6(b)に示すように、製紙用シーム付き織物1Aにおいて、ループ状繊維束(コイル状繊維束)17を使用している。他の構成は、製紙用シーム付き織物1Aと同様である。ループ状繊維束17は、15巻することにより30本の繊維束を構成している。実施形態に係る連通孔50は、第1経糸51と第4経糸54から形成されるため、その内径を大きくすることができる。そのため、このような本数の多い繊維束であっても接合用芯線として使用できる。
【0029】
製紙用シーム付き織物2は、図8に示すように、補助芯線12、13が、有端状製紙用織物1aの縁部4aの耳部35に瘤状に結び目12c、13cを形成し、更に耳部35に引き込んだ引き込み部12e、13eを有する(図6(c)参照。)。縁部3a、4a付近の織物に引き込んでもよいが、引き込み部12e、13eのように、連通孔50の外部の内孔30h又は40h内に引き込むことが好ましい。こうすることで、連通孔50の外面と内孔30h又は40hの内面とで、引き込み部12e、13eを確実に固定することができる。更に引き込み部に接着剤を塗布することが好ましい点、耳部35が切込み形成されている点については、製紙用シーム付き織物1Aと同様であり、前述の通りである。
【0030】
[3]製紙用シームフェルトの接合方法
本発明の製紙用シームフェルトは以下の工程により接合することができる。
(1)連通孔形成工程
前記「連通孔形成工程」は、前記製紙用シームフェルトの接合方法であって、前記連通孔を形成する工程である。
具体的には、図9(a)に示すように、有端状製紙用織物1aの一端側3に設けられた接合用ループ30の内孔30hと、有端状製紙用織物1aの他端側4に設けられた接合用ループ40の内孔40hと、を同図(b)に示すように重ね合わせて、幅方向に整列させてなる連通孔50(同図(c))を形成する工程である。
即ち、接合用ループ30、40を、織物の幅方向に配列させてループ列を形成する。そして、接合相手となる接合用ループ30、40と互いの内孔30h、40hが整列するようにして、連通孔50を形成させる。
【0031】
(2)引出工程
前記「引出工程」は、ループ状繊維束と、ループ状繊維束の一端側に設けられた前記第1補助芯線とループ状繊維束の他端側に取り外し可能に設けられたリードワイヤーと、を備える接合用具を、連通孔の一端側から挿入して、第1補助芯線の後端が連通孔の一端側に露出されながら、ループ状繊維束の他端が連通孔の他端外に露出された状態を形成する工程である。
具体的には、図10に示すように、ループ状繊維束11の一端11a側に第1補助芯線12の前端12aを掛け止めする。図11(a)、図12(a)に実物の写真を示す。図12(a)は、図11(a)の状態から長手方向を軸として90度向きを変えた写真である。
更に、ループ状繊維束11の他端側11bにリードワイヤー20のフック部20aを掛け止めする。図11(b)、図12(b)に実物の写真を示す。図12(b)は、図11(b)の状態から長手方向を軸として90度向きを変えた写真である。
ここで、「第1補助芯線12とループ状繊維束11の他端11bに取り外し可能に設けられたリードワイヤー20」が「接合用具16」である。「接合用具」、「リードワイヤー」については、後述する。
そして、リードワイヤー20の先端部20bを、連通孔50の一端50a側から他端50b側に向かって挿入する。次いで、図13に示すようにループ状繊維束11の他端11b側が連通孔50の他端50b外に露出された状態にする。この場合、第1補助芯線12の後端12bが連通孔50の一端50a外に露出したままとなっている。
【0032】
(3)交換工程
交換工程は、引出工程後に、ループ状繊維束の他端側において、リードワイヤーを第2補助芯線に交換する工程である。
具体的には、ループ状繊維束11の他端側11bに掛け止めしてあったリードワイヤー20のフック部20aを取り外し、図14に示すように、第2補助芯線13の前端13aを掛け止めする。
【0033】
(4)引戻工程
前記「引戻工程」は、交換工程後に、ループ状繊維束を連通孔の一端側へ引き戻して、第2補助芯線の前端を連通孔内に引き込んだ状態を形成する工程である。
具体的には、図15に示すように、ループ状繊維束11に掛け止めされた第1補助芯線12を連通孔50の一端50a側に引き戻す。そして、第2補助芯線13の前端13aが連通孔50の他端50b側内に引き込んだ状態にする。
こうすることで、ループ状繊維束11は、その両端(一端11a及び他端11b)側がいずれも、連通孔50内に引き込まれ、その両端側に掛け止めされた第1補助芯線12の前端12a、第2補助芯線13の前端13aのいずれも連通孔50内に引き込まれ、第1補助芯線12の後端12b、第2補助芯線13の後端13bのいずれも連通孔50の外部に露出された状態となる。
【0034】
図16(a)~(d)に図13図15に対応する実物の写真(連通孔50の他端側50b付近)を示す。図16(a)は引き出し工程(図13)、図16(b)は交換工程(図14)、図16(d)は、引戻工程(図15)を示す。なお、図16(c)は、引戻工程の途中の段階を示す。
【0035】
(5)縫込工程
前記「縫込工程」は、前記引戻工程後に、前記第1補助芯線及び/又は前記第2補助芯線を、有端状製紙用織物の縁部に縫い込んで固定する工程である。
具体的には、ループ状繊維束11の一端11a側と第1補助芯線12の前端12aを結び固定し、ループ状繊維束11の他端側11bと第2補助芯線13の前端13aを結び固定する。
そして、図7に示すように、結び目12c、13cから更に有端状製紙用織物1aの他端側4の縁部4aに縫い込み、縫い込み部12d、13dを形成して、適宜な長さにて切断する。縫い込み部12d、13dは、更に接着剤で固定することが好ましい。
【0036】
(6)引込工程
前記「引込工程」は、前記引戻工程後に、前記第1補助芯線及び/又は前記第2補助芯線を、有端状製紙用織物の縁部に引き込んで固定する工程である。
具体的には、ループ状繊維束11の一端11a側と第1補助芯線12の前端12aを結び固定し、ループ状繊維束11の他端11b側と第2補助芯線13の前端13aを結び固定する。
そして、図8に示すように、形成された結び目12c、13cから更に有端状製紙用織物1aの引込経路である連通孔50外部の内孔30h又は40h内に引き込み、引き込み部12e、13eを形成して、適宜な長さにて切断する。引き込み部12e、13eは、更に接着剤で固定することが好ましい。
【0037】
[4]接合用具
前記「接合用具」は、製紙用シームフェルトの接合に用いられる用具であり、前記接合用芯線と、前記接合用芯線を、前記連通孔内へ誘導するためのリードワイヤーと、を備えている。
前記「接合用芯線」は前述の通り、ループ状繊維束のみからなる場合、ループ状繊維束と、ループ状繊維束の一端側に設けた補助芯線とからなる場合がある。
具体的には、図5(a)に示すように、接合用具15は、ループ状繊維束11のみからなる接合用芯線10Aと、接合用芯線10Aの他端11bに設けられたリードワイヤー20とからなる。リードワイヤー20は、後述のように、接合用芯線10Aを掛け止めして連通孔50に誘導するための部材である。
また、図5(b)に示す接合用具18のように、接合用具15において、リードワイヤー20の先端部20bを溶接して溶接部20wを形成した用具とすることもできる。
更に、図5(c)に示す接合用具19のように、接合用芯線10Aと、接合用芯線10Aの端部に設けられた一本のリードワイヤー22とからなり、フック部22aの先端を溶接部22wにより形成して、接合用芯線10Aの端部を囲繞した用具とこともできる。リードワイヤー22についても後述する。
【0038】
また、図10に示すように、接合用具16は、ループ状繊維束11と、ループ状繊維束の一端側11aに設けられた第1補助芯線12とループ状繊維束11の他端側11bに設けられたリードワイヤー20とからなる。
本発明に係る接合用具15、16、18、19は、それぞれ接合用芯線10A又は10Bとリードワイヤーを備えており、有端状製紙用織物1aの両端側に備えたループ同士を接合して効率的に無端状の製紙用シームフェルトとすることができる。
【0039】
[5]リードワイヤー
前記「リードワイヤー」は、前記接合用具を構成し、接合用芯線を連通孔内に誘導するための部材である。
具体的には、図5(a)に示すように、リードワイヤー20は、接合用芯線10Aを構成するループ状繊維束11の他端11bに取り付けて、接合用芯線10Aを上記連通孔50内に誘導する部材である。
リードワイヤー20は、1本の長尺の線材を中間部から二つ折りに曲げ形成されており、ループ状繊維束11を掛け止めするフック部20aと、一対の近接対向した線片から形成されており、連通孔50内に誘導する先端部20bに向かって直線的に延びている。
【0040】
リードワイヤー20は、有端状製紙用織物1aの幅方向に形成された連通孔50を挿通してループ状繊維束11を引き出す必要があるため、幅方向長さよりも長く設定されている。
リードワイヤー20の材質は特に限定はないが、軟質の金属線であることが好ましい。軟質であれば、ループ状繊維束11を傷つくのを防ぐことができる。また、同様の理由から断面は円形であることが好ましい。線径は特に限定はないが、0.3~1.0mmであることが好ましく0.4~0.8mmであることが更に好ましい。0.3mm未満では、ループ状繊維束11を傷つけるおそれがあり、1.0mmを超えると連通孔50に挿通しがたくなる。
【0041】
また、フック部20aの形状もループ状繊維束11を掛け止めできれば特に限定はなく、V字状、U字状、コの字状その他の形状とすることができる。
リードワイヤー20は、2本の線材を溶接等により接続して、フック部20aを形成することもできる。この場合、最初に、連通孔50に2本の線材を挿入し、その後端部分が連通孔の一端50aから露出した状態にする。この場合、連通孔50に1本ずつ挿通しても、2本束にして同時に挿通してもよい。次いで、ループ状繊維束の他端11bを2本線材で挟持してから、溶接によってフック部20aを形成する。
しかしながら、リードワイヤー20は、一本の線材を二つに折り曲げ形成することが好ましい。すなわち、織物の幅の2倍よりも長い線材を長さの中心で折畳んだものをリードワイヤーにする、折畳んだ部分すなわちフック部20aにループ状繊維束の他端側11bを引っ掛けて、見かけ上2本の線材をループに挿通する。
このような線材を折畳んだ構造には、引き込む時にループ状繊維束の他端側11bの掛け止め付近に熔接部がないので挿通に際して強い力で引っ張られても破壊の危険がない。
更に、図5(b)に示すように、フック部20aにループ状繊維束11を掛け止めした後、先端部20bを溶接して溶接部20wを形成して連通孔50に挿通してもよい。こうすることで、接合用ループへの挿通が引っ掛かりなく行われ、スムーズになる。接合用芯線の引き込みが終了したら先端の溶接を切断して線材をループ状繊維束から外す
また、リードワイヤーは等分に二つ折りにしている必要はなく一方の線片が他方の線片より長くてもよい。例えば、図5(c)に示すリードワイヤー22のように、他方の線片を短くしたフック部22aを形成し、先端部22bは一本の線片からなるものでもよい。
フック部22aにループ状繊維束11を掛け止めした後、フック部先端を溶接して溶接部22wを形成して連通孔50に挿通してもよい。接合用芯線の引き込みが終了したら溶接部22wを切断して線材をループ状繊維束から外す。
以上の構成をしたリードワイヤーは、簡易な構成でありながら、ループ状繊維束を円滑に連通孔50内に挿入することができ、効率的に有端状製紙用織物1aを接合して、無端状織物を形成する上で、極めて有効な部材である。
【0042】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、有端状製紙用織物の長手方向の両端が接合されて無端状にされた製紙用シームフェルトの接合に関する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0044】
1A、1B、2;製紙用シーム付き織物、
1a;有端状製紙用織物、
3;有端状製紙用織物の一端側、3a;有端状製紙用織物の縁部(一端側の縁部)、
4;有端状製紙用織物の他端側、4a;有端状製紙用織物の縁部(他端側の縁部)、
10A;接合用芯線(ループ状繊維束のみからなる)、
10B、70B、80B;接合用芯線(ループ状繊維束と第1補助芯線とからなる)、
10C;接合用芯線(ループ状繊維束、第1補助芯線及び第2補助芯線からなる)、
11;ループ状繊維束(コイル状繊維束)、11a;ループ状繊維束の一端、11b;ループ状繊維束の他端、
12;補助芯線(第1補助芯線)、12a;前端(第1補助芯線の前端)、12b;後端(第1補助芯線の後端)、12c;結び目、12d;縫い込み部、12e;引き込み部、
13;補助芯線(第2補助芯線)、13a;前端(第2補助芯線の前端)、13b;後端(第2補助芯線の後端)、13c;結び目、13d;縫い込み部、13e;引き込み部
15、16、18、19;接合用具、
17;ループ状繊維束(コイル状繊維束)、
20、22;リードワイヤー、20a、22a;フック部、20b、22b;先端部、
30;接合用ループ、30h;内孔、
35;耳部、
40;接合用ループ、40h;内孔、
50;連通孔、50a;連通孔の一端、50b;連通孔の他端、
51;経糸(第1経糸)、52;第2経糸、53;第3経糸、54;第4経糸、
61、62;緯糸、
63;接結糸、
71;ループ状繊維束(片側ループ状繊維束)、71a;片側ループ状繊維束の一端、
81;ループ状繊維束(コイル折り畳み状繊維束)、81a;コイル折り畳み状繊維束の一端、81b;コイル折り畳み状繊維束の他端。
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