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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】撮像装置、画像生成装置及び撮像方法
(51)【国際特許分類】
   G21K 1/06 20060101AFI20230718BHJP
   G21K 1/00 20060101ALI20230718BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20230718BHJP
   G02B 17/00 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
G21K1/06 M
G21K1/00 X
G01N23/04
G02B17/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020010215
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021117083
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 武
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/051890(WO,A1)
【文献】特開2014-013169(JP,A)
【文献】特開2017-044557(JP,A)
【文献】特開2020-008353(JP,A)
【文献】特開2013-221874(JP,A)
【文献】特開平08-271697(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0165773(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K 1/00
G21K 1/06
G21K 7/00
G01N 23/00-23/2276
G02B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に照射する撮像光を透過する開口と、
第1方向に延在するライン状の受光面を有するライン状センサを有する検出器と、
前記第1方向における前記撮像光の成分を集光し、前記受光面に第1の波面収差量で結像する第1結像素子と、
前記第1方向と直交する第2方向における前記撮像光の成分を集光し、前記受光面に前記第1の波面収差量より少ない第2の波面収差量で結像する第2結像素子と、
を備えた撮像装置。
【請求項2】
前記開口は、前記試料に照射する撮像光を円形状に制限する、
請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記ライン状センサの前記第1方向の長さは、前記試料に照射する撮像光の照射領域の前記第1方向の幅に相当する値に、前記第1の波面収差量によって発生する像拡がり量を加えた長さより大きい、
請求項1又は請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第1結像素子は、反射面形状が、第1の楕円に沿って形成された第1楕円ミラーを含み、
前記第2結像素子は、一方の焦点が、前記第1の楕円の一方の焦点と略同一である双曲線に沿って形成された双曲ミラーと、前記双曲ミラーの検出器側に配置され、一方の焦点が該双曲線の他方の焦点と略同一であり、他方の焦点が前記第1の楕円の他方の焦点と略同一であり、かつ、前記第1の楕円と直交する第2の楕円に沿って形成された第2楕円ミラーと、を含む、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1結像素子は、反射面形状が、第1の楕円に沿って形成された第1楕円ミラーを含み、
前記第2結像素子は、一方の焦点が、前記第1の楕円の一方の焦点と略同一であり、かつ、前記第1の楕円と直交する第2の楕円に沿って反射面形状が形成された第2楕円ミラーと、前記第2楕円ミラーの検出器側に配置され、一方の焦点が前記第1の楕円の他方の焦点と略同一であり、他方の焦点が前記第2の楕円の他方の焦点と略同一である双曲線に沿って形成された双曲ミラーと、を含む、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項記載の撮像装置。
【請求項6】
前記ライン状センサは、超伝導単一光子検出器を含む、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項記載の撮像装置。
【請求項7】
前記ライン状センサは、一又は複数の画素を含む、
請求項1乃至請求項6のいずれか一項記載の撮像装置。
【請求項8】
前記検出器は、受光面を共通にして、並行配置された複数の前記ライン状センサを備えている、
請求項1乃至請求項7のいずれか一項記載の撮像装置。
【請求項9】
前記試料を保持するとともに、前記撮像光の光軸を回転軸として前記試料を回転させるステージを備えた、
請求項1乃至請求項8のいずれか一項記載の撮像装置。
【請求項10】
前記試料を保持するとともに、前記撮像光の光軸に垂直な平面に沿って前記試料を移動可能なステージと、
前記光軸に重心が一致する長方形状の開口と、
を備えた、
請求項1乃至請求項8のいずれか一項記載の撮像装置。
【請求項11】
前記撮像光は、X線を含む、
請求項1乃至請求項10のいずれか一項記載の撮像装置。
【請求項12】
試料に撮像光を照射する光源と、
請求項1乃至請求項11のいずれか一項記載の撮像装置と、
前記検出器の出力に基づいて、前記試料の画像再構成を行う画像再構成部と、
を備えた画像生成装置。
【請求項13】
試料に撮像光を照射させる過程と、
第1方向における前記撮像光の成分を集光し、前記第1方向に延在するライン状の受光面を有するライン状センサを有する検出器の前記受光面に、第1結像素子を介して第1の波面収差量で結像する過程と、
前記第1方向と直交する第2方向における前記撮像光の成分を集光し、前記受光面に、第2結像素子を介して前記第1の波面収差量より少ない第2の波面収差量で結像する過程と、
を備えた撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、撮像装置、画像生成装置及び撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハを透過するX線による顕微鏡の光学系を実現するものとして、X方向とY方向のそれぞれに楕円ミラーと双曲ミラーを用いて収差を低減させる手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6478433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記手法においては、ミラーの枚数が4枚必要であるため、ミラーの反射率(<100%)に起因して発生するエネルギー損失が大きいという課題があった。
さらに、光学系全体の長さに制限がある場合はミラーを配置するスペースが狭く、ミラーの長さを長くして開口数や視野を拡大することが困難であるという課題があった。
そこで、本発明の実施形態が解決する課題は、エネルギー損失を低減してコントラストの高い画像を得ることができるとともに、開口数や視野の拡大を図ることが可能な撮像装置、画像生成装置及び撮像方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、実施形態の撮像装置は、試料に照射する撮像光の照射領域を円形状に制限する開口と、第1の方向に延在するライン状の受光面を有するライン状センサを有する検出器と、第1方向における撮像光の成分を集光し、受光面上に第1の波面収差量で結像する第1結像素子と、第1方向と直交する第2方向における撮像光の成分を集光し、受光面上に第1の波面収差量より少ない第2波面収差量で結像する第2結像素子と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態の撮像装置の構成模式図である。
図2図2は、第1実施形態の撮像装置における結像素子の配置説明図である。
図3図3は、1次元検出器の原理回路構成図である。
図4図4は、超伝導ストリップにおけるX線光子の検出原理説明図である。
図5図5は、画像再構成の説明図である。
図6図6は、第1実施形態の変形例の説明図である。
図7図7は、第1実施形態の他の効果の説明図である。
図8図8は、第2実施形態の撮像装置の構成模式図である。
図9図9は、第2実施形態の変形例の撮像装置の構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図面は、模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は、必ずしも現実のものと同一であるとは限らない。図面において、同一符号は同一または相当部分を付してあり、重複した説明は必要に応じて行う。また、簡略化のために、同一または相当部分があっても符号を付さない場合もある。
【0008】
(1)第1実施形態
図1は、第1実施形態の撮像装置の構成模式図である。
撮像装置100は、図1に示すように、光源101と、照明ミラー102と、開口103と、試料104を載置するステージ105と、第1楕円ミラー106と、双曲ミラー107と、第2楕円ミラー108と、1次元検出器109と、パーソナルコンピュータ110を備えている。
【0009】
上記構成において、第1楕円ミラー106は、第1結像素子として機能し、双曲ミラー107及び第2楕円ミラー108は、第2結像素子として機能する。
【0010】
また、開口103と、試料104を載置するステージ105と、第1楕円ミラー106と、双曲ミラー107と、第2楕円ミラー108と、1次元検出器109と、は、撮像装置として機能する。
【0011】
パーソナルコンピュータ110は、画像再構成部として機能する。
さらに光源101、照明ミラー102、撮像装置及び画像再構成部は、画像生成装置として機能する。
【0012】
第1実施形態の撮像装置100の光源101としては、モリブデン等を材料とするターゲットに電子線を照射してX線を発生させるX線源が用いられる。
照明ミラー102は、光源101から発せられるX線を集光する。これによりX線は、開口103を透過して試料104に照射される。
照明ミラーとしてはモンテルミラーなど光源101から発せられたX線を集光させて試料104を照射できるものであれば構わない。
【0013】
開口103は、試料104にX線が照射される領域を円形状に形成するものであり、この領域の中心は光軸(=主光線の透過位置)に一致する。
試料104は、本実施形態では、半導体デバイスが形成されたシリコンウェハとされており、試料104は、XYZ方向に移動でき光軸を中心に回転できる機構をもつステージ105上に載置される。
【0014】
図2は、第1実施形態の撮像装置における結像素子の配置説明図である。
第1結像素子として機能する第1楕円ミラー106は、反射凹面が楕円形状とされており、試料104を透過したX線を双曲ミラー107の反射面に導くとともに、試料104を透過したX線のY方向の成分を集光し、1次元検出器109の検出面(結像面)に結像させる。
【0015】
この場合において、第1楕円ミラー106の反射凹面は、図2(B)に示すように、一方の焦点がFS1、他方の焦点がFS2である楕円LEL_Yに沿った形状とされている。
さらに焦点FS1が試料104の面上、焦点FS2は1次元検出器109の検出面上にある。
【0016】
また、第2結像素子として機能する双曲ミラー107は、反射凹面が双曲線状とされており、後述する第2楕円ミラーと共働して、第1楕円ミラー106により反射されて導かれたX線のX方向の成分を集光し、1次元検出器109の検出面(結像面)に結像させる。
【0017】
この場合において、双曲ミラー107の反射凹面は、図2(A)に示すように、一方の焦点が焦点FS1、他方の焦点が楕円LEL_Xの一方の焦点である焦点FS3と同一の位置(あるいは同一と見做せる略同一の位置)である双曲線LHYに沿った形状とされている。
【0018】
さらに、第2結像素子として機能する第2楕円ミラー108は、反射凹面が楕円形状とされており、双曲ミラー107により反射されて導かれたX線のX方向の成分を集光し、1次元検出器109の検出面(結像面)に結像させる。
【0019】
さらに第2楕円ミラー108の反射凹面は、図2(A)に示すように、一方の焦点が双曲線LHYの焦点FS3、他方の焦点が楕円LEL_Yと同一(あるいは同一と見做せる略同一)の焦点FS2であり、楕円LEL_Yに直交する楕円LEL_Xに沿った形状とされている。
【0020】
上記構成において、第2結像素子として機能する双曲ミラー107及び第2楕円ミラー108は、共働して、X線のX方向の波面収差を低減するように機能している。具体的には、X方向のRMS波面収差の値が0.08×λ(λは波長)以下になるように楕円LEL_Xの形状と双曲線LHYの形状が決定されている。
【0021】
1次元検出器109は、本第1実施形態では、Y方向のライン状の画素がX方向に等間隔に配列されている検出器である。1次元検出器109を構成する検出器としては、例えば、超伝導ストリップ(超伝導単一光子検出器)が複数配置された超伝導ストリップ検出器が挙げられる。
【0022】
具体的には、1次元検出器109は、Y方向に沿って互いに平行、かつ、等間隔に配置された、複数の超伝導ストリップ(超伝導単一光子検出器)120を備えている。
この場合において、超伝導ストリップ120の幅および厚さは200nm以下である。その理由は、超伝導ストリップ120の断面積を超伝導領域の分断が発生する程度に小さくするためである。
【0023】
超伝導ストリップ120の材料は、公知のものから適宜選択することが可能であるが、タンタルを含む材料のようにX線の吸収率が高いものほどX線光子の検出効率は高くなる。また、本第1実施形態では、超伝導ストリップ120の数は7本としているが、その本数は1~6本あるいは8本以上でも構わない。
【0024】
図3は、1次元検出器の原理回路構成図である。
1次元検出器109は、図3に示すように、一端が接地された超伝導ストリップ120の他端に接続され、超伝導ストリップ120にバイアス電流Ibを供給する電流源121と、超伝導ストリップ120で発生した電気信号を増幅する増幅器122と、増幅器122の出力信号に基づいてX線光子の検出時に検出されるパルス状の電気信号のカウントを行う計測器123と、を備えている。
【0025】
なお、電流源121、増幅器122及び計測器123は、1次元検出器109の外部に設けるようにすることが可能である。例えば、電流源121、増幅器122及び計測器123をパーソナルコンピュータ110内に設けるように構成することも可能である。
【0026】
ここで、超伝導ストリップ120におけるX線光子の検出原理について説明する。
図4は、超伝導ストリップにおけるX線光子の検出原理説明図である。
超伝導ストリップ120を図示しない冷凍機により転移温度以下に冷却して超伝導状態にした状態で、超伝導ストリップ120の超伝導状態を維持する臨界電流をわずかに下回る程度のバイアス電流Ibを電流源121から供給している状態で、X線光子を超伝導ストリップ120に入射させる。
【0027】
このとき、超伝導ストリップ120の幅(図1におけるW方向の長さ)および厚さは200nm以下であるので、超伝導ストリップ120の断面積は小さい。そのため、X線光子が超伝導ストリップ120にて吸収されると、図4に示すように、超伝導ストリップ120の超伝導領域50内にホットスポットと呼ばれる常伝導に転移する領域(ホットスポット領域)51が生成される。ホットスポット領域51の電気抵抗は増加するので、図4に示すように、バイアス電流Ibはホットスポット領域51を迂回して別の領域である迂回領域52内を流れる。
【0028】
そして、迂回領域52に臨界電流以上の電流が流れると、迂回領域52が常伝導に転移して電気抵抗が増大し、最終的に超伝導領域50は分断される。すなわち、上述した超伝導ストリップ120の超伝導領域が分断した状態(分断状態)が発生する。
【0029】
この後、常伝導に転移したホットスポット領域51および迂回領域52は冷却により速やかに消滅するため、超伝導領域50の分断により発生する一時的な電気抵抗によってパルス状の電気信号が発生する。このパルス状の電気信号を増幅器122で増幅し、計測器123でカウントすることによってX線光子の数を検出することができるのである。
【0030】
以上の説明は、一つの投影位置に関するものであるが、ステージ105をn度単位で回転させて、0度~180度の範囲をn度間隔でX線光子の数の検出を行ってサイノグラムを構築し、画像再構成を行っている。
この場合において、角度nは、なるべく均等に強度データを取得できるように、0度~180度の間を均等に分割できるように決定するものとする。
【0031】
図5は、画像再構成の説明図である。
図5においては、理解の容易のため、1次元検出器109を回転させた状態で説明を行っているが、実際には、図1の装置では、ステージ105、ひいては、試料104を回転させて実効的に同様の状態としている。
【0032】
ここで、サイノグラムとは、各検出位置(投影位置)における超伝導ストリップ120の出力データを示すもので、各超伝導ストリップ120の出力データを輝度表示とし、時系列で表したものである。これはCT画像として画像再構成される前のデータ列であるので、サイノグラムに基づいて再構成画像を得ることとなる。
【0033】
例えば、試料104が図5(A)に示すようなものであるとする。
ステージ105を0度の位置として、光源101からX線を入射し、開口103を介してステージ105上の試料104に照射する。
【0034】
そして、試料104を透過したX線を第1楕円ミラー106に入射し、X線のY方向の成分を集光し、双曲ミラー107に導いて、1次元検出器109の検出面(結像面)に結像される。このとき試料104上の1点が結像面上に結像される位置は、Y方向の波面収差によって、Y方向のある位置範囲内の拡がり(像拡がり)を持つ。しかし超伝導ストリップがY方向のライン状であり、Y方向のどの位置においても同じ超伝導ストリップにて検出されるため、超伝導ストリップのY方向の長さLは、試料104にX線が照射される領域に相当するY方向の幅に像拡がり量を加えた長さより大きければよいので、Y方向のRMS波面収差はX方向のRMS波面収差よりも大きくても構わない。
【0035】
続いて、双曲ミラー107に入射したX線は、反射されて、第2楕円ミラー108に入射し、1次元検出器109の検出面(結像面)に結像される。
【0036】
このとき試料104上の1点が結像面上に結像される位置は、X方向の波面収差によって、X方向のある位置範囲内の像拡がりを持つ。この像拡がりによって隣接する他の超伝導ストリップ120にて検出されてしまうと、像ボケにつながる。従ってX方向のRMS波面収差は許容できる値以下に抑える必要がある。
【0037】
この状態において、超伝導領域50の分断により発生するパルス状の電気信号を増幅器122で増幅し、計測器123でカウントすることによってX線光子の数(#pH)を超伝導ストリップ120毎にカウントして、図5(B)(a)に示すような0度における像強度プロファイルを取得する。
【0038】
同様にして、図5(B)(b)~図5(B)(d)に示すように、角度nを90の約数である角度とした場合には、n度、2・n度、…、90度の像強度プロファイルを取得する。さらに必要に応じて、(90+n)度~(180-n)度の像強度プロファイルを取得する。
【0039】
そして得られた像強度プロファイルを合成して、図5(C)に示すように、試料104の撮像面全体に対応するサイノグラムを取得する。
【0040】
そして、図5(C)の試料104の撮像面全体に対応するサイノグラムから投影切断面定理を用いて像を再構成し、図5(D)に示すように試料104の領域111における像を再構成して取得する。
【0041】
(1.1)第1実施形態の第1変形例
図6は、第1実施形態の変形例の説明図である。
以上の第1実施形態の説明においては、結像素子として、第1楕円ミラー106、双曲ミラー107及び第2楕円ミラー108を用いる構成としていたが、これに代えて、Y方向の集光を行う第1楕円ミラー111と、X方向の集光を行う第2楕円ミラー112及びX方向の集光を行う双曲ミラー113を用いる構成とすることも可能である。
【0042】
上記構成において、第1楕円ミラー111は、第1結像素子として機能し、第2楕円ミラー112及び双曲ミラー113は、第2結像素子として機能している。
【0043】
この場合において、図6(A)及び(B)に示すように、第1楕円ミラー111の反射凹面及び第2楕円ミラー112の反射凹面を規定する楕円は、それぞれの一方の焦点が同一(あるいは同一と見做せる略同一)で試料104上のFS4にあり、互いに直交するようにするとともに、第1楕円ミラー111の反射凹面を規定する楕円の他方の焦点と双曲ミラー113の反射凸面を規定する双曲線の一方の焦点が同一(あるいは同一と見做せる略同一)で1次元検出器109の検出面上のFS5にあり、第2楕円ミラー112の反射凹面を規定する楕円の他方の焦点FS6は双曲ミラー113の反射凸面を規定する双曲線の他方の焦点と同一(あるいは同一と見做せる略同一)とされる。
【0044】
(1.2)第1実施形態の第2変形例
以上の説明においては、ステージ105を回転させて検出を行う場合について述べたが、第1実施形態においては、第1楕円ミラー106、双曲ミラー107、第2楕円ミラー108及び1次元検出器109を一体に回転させ、第1実施形態の第1変形例においては、第1楕円ミラー111、第2楕円ミラー112、双曲ミラー113及び1次元検出器109を一体に回転させるように構成することも可能である。
【0045】
(1.3)第1実施形態の効果
以上の説明のように、本第1実施形態によれば、Y方向成分の集光及び結像を行う結像素子の波面収差量を大きく低減させる必要がないため、結像素子としては、第1楕円ミラー106の1枚のみにすることが可能となる。このため、Y方向成分の集光及び結像を行う結像素子として、楕円ミラーと双曲ミラーの組み合わせを使用する場合に比較して光量損失を抑制することができる。
【0046】
図7は、第1実施形態の他の効果の説明図である。
図7に示すように、従来の結像ミラーを4枚用いる4枚光学系と比較して、第1実施形態の結像ミラーを3枚用いる3枚光学系によれば、実効的に結像素子としての結像ミラーを配置するスペースが大きくなるため、より大きいミラーを配置することが可能となり、ひいては、開口数(NA)や視野(FOV)を拡大させることが可能となる。
【0047】
(2)第2実施形態
次に第2実施形態について詳細に説明する。
図8は、第2実施形態の要部構成図である。
図8において、図1と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
【0048】
本第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、第1実施形態では、試料104に対し、開口として円形状の照射領域を形成する開口103のみを用いていたが、本第2実施形態では、開口103に加えて試料104に長方形状の照射領域を形成する開口131を用いる点、及び、開口131と円形状の照射領域を形成する開口103を切り替える切替機構135を備えている点である。その他の構成については第1実施形態と同様である。
【0049】
上記構成において、開口131の長方形の重心と、開口103の円の中心(主光線の透過位置)とは一致しているものとする。
【0050】
まずステージ105をX方向あるいはY方向に任意に移動させて、開口103を用いて試料104のX線照射領域(図1における試料104上の直径Dの領域)における像を取得する。
次に、得られた像を確認しながら試料104の所望位置を開口103の円の中心(主光線の透過位置)に移動させる。
【0051】
次に切替機構135により、開口103を開口131に切り替えて、撮像を行い、1次元検出器109から出力させることにより、所望位置の像強度プロファイルを取得する。
本第2実施形態によれば、ステージ105を回転せずに試料104の所望位置の像強度プロファイルを取得できる。
したがって、回転に伴って生じるステージの振動等の外乱要因を抑制させることが可能になる。
【0052】
(2.1)第2実施形態の変形例
図8は、第2実施形態の変形例の要部構成図である。
以上の説明においては、長方形状の照射領域を形成する開口131を開口103に代えて用いていたが、開口131及び切替機構に代えて、検出領域を長方形状に形成する開口132及び開口132を1次元検出器109の直前に挿脱可能な図示しない切替機構を設けるように構成することも可能である。
【0053】
本変形例においても、第2実施形態と同様に、ステージ105をX方向あるいはY方向に任意に移動させて開口103を用いて試料104のX線照射領域(図1における試料104上の直径Dの領域)における像を取得した後、得られた像を確認しながら試料104の所望位置を開口103の円の中心(主光線の透過位置)に相当する位置に移動させ、切替機構により、光路中に開口132を挿入して撮像を行い、1次元検出器109から出力させることにより、所望位置の像強度プロファイルを取得する。
【0054】
これらの結果、第2実施形態と同様に回転に伴って生じるステージの振動等の外乱要因を抑制させることが可能になる。
【0055】
(3)実施形態の変形例
以上の説明においては、ライン状の超伝導ストリップ120を用いていたが、これに代えて、複数の画素(受光面)を有するアレイ状の2次元検出器を用い、X方向に直線状に並ぶ複数の画素(受光面)の出力を加算して、ライン状の超伝導ストリップ120の出力と同様に取り扱うように構成することも可能である。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
100 撮像装置
101 光源
102 照明ミラー
103 開口
104 試料
105 ステージ
106 第1楕円ミラー(第1結像素子)
107 双曲ミラー(第2結像素子)
108 第2楕円ミラー(第2結像素子)
109 1次元検出器
110 パーソナルコンピュータ
111 第1楕円ミラー(第1結像素子)
112 第2楕円ミラー(第2結像素子)
113 双曲ミラー(第2結像素子)
120 超伝導ストリップ(ライン状センサ)
121 電流源
122 増幅器
123 計測器
131、132 開口
135 切替機構
D 直径
FS1、FS2、FS3、FS4、FS5、FS6 焦点
Ib バイアス電流
LEL_X 楕円(第1の楕円)
LEL_Y 楕円(第2の楕円)
LHY 双曲線
n 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9