(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】ディスク装置用サスペンションの製造方法と、その製造方法に使用されるサスペンションアセンブリ
(51)【国際特許分類】
G11B 21/21 20060101AFI20230718BHJP
G11B 5/60 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
G11B21/21 C
G11B5/60 C
G11B5/60 P
(21)【出願番号】P 2020020749
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井本 耕一
(72)【発明者】
【氏名】堤 邦博
(72)【発明者】
【氏名】杉山 和弘
(72)【発明者】
【氏名】松澤 正記
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-225261(JP,A)
【文献】特開2008-052779(JP,A)
【文献】特開2001-297550(JP,A)
【文献】特開2013-054813(JP,A)
【文献】特開2001-110023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 21/21
G11B 5/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロードビームと前記ロードビームに固定されるフレキシャとを含むディスク装置用サスペンションの製造方法であって、
前記ロードビームと、前記ロードビームに連なる第1フレームと、を含むロードビームブランクを形成すること、
前記フレキシャと、前記フレキシャに連なる第2フレームと、を含むフレキシャブランクを形成すること、
前記第1フレームに凸部を形成すること、
前記第2フレームの前記凸部と対応した位置に前記凸部に挿入可能な開口部を形成すること、
前記ロードビームブランクと前記フレキシャブランクとを重ね、かつ前記凸部を前記開口部に挿入すること、
前記フレキシャを前記ロードビームに固定すること、
前記固定後に前記第1フレームから前記ロードビームを切り離し、かつ前記第2フレームから前記フレキシャを切り離すこと、を具備し、
前記第2フレームは、メタルベースと、前記ロードビームよりも柔らかい金属材料で形成された導体層と、を有し、
前記開口部は、前記メタルベースに形成された第1開口と、前記第1開口と重なり前記導体層に形成された第2開口と、を有し、
前記導体層は、前記第1開口の内面より内側に向けて突出した縁部を有し、
前記凸部を前記開口部に挿入する際に前記縁部が前記凸部に接触する、
ディスク装置用サスペンションの製造方法。
【請求項2】
前記凸部がドーム状に形成される、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第1開口と前記第2開口とが円形であり、
前記第1開口の直径が前記凸部の外径よりも大きく、前記第2開口の直径が前記凸部の外径よりも小さい、
請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第2開口の前記縁部が前記凸部と接触する、
請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記凸部を前記開口部に挿入する際に前記第2開口の前記縁部が前記凸部に沿って変形する、
請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記凸部を前記開口部に挿入する前に前記第2開口の前記縁部を曲げること、をさらに具備する、
請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記凸部に開口を形成すること、をさらに具備する、
請求項2乃至6のうちいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
データの読取りあるいは書込みを行うためのスライダの端子部に接続されるパッドを前記導体層と同じ金属材料で前記導体層と同じ層に形成すること、をさらに具備する、
請求項2乃至7のうちいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
ディスク装置用サスペンションのためのロードビームブランクとフレキシャブランクとを含むサスペンションアセンブリであって、
前記ロードビームブランクは、ロードビームと、前記ロードビームに連なる第1フレームと、前記第1フレームに形成された凸部と、を有し、
前記フレキシャブランクは、前記ロードビームに重ねられるフレキシャと、前記フレキシャに連なる第2フレームと、前記第2フレームの前記凸部と対応した位置に形成された開口部と、を有し、
前記第2フレームは、メタルベースと、前記ロードビームよりも柔らかい金属材料で形成された導体層と、を有し、
前記開口部は、前記メタルベースに形成された第1開口と、前記第1開口と重なり前記導体層に形成された第2開口と、を有し、
前記導体層は、前記第1開口の内面より内側に向けて突出した縁部を有している、
サスペンションアセンブリ。
【請求項10】
前記凸部は、ドーム状に形成された、
請求項9に記載のサスペンションアセンブリ。
【請求項11】
前記第1開口および前記第2開口は、円形であり、
前記第1開口の直径は、前記凸部の外径よりも大きく、前記第2開口の直径は、前記凸部の外径よりも小さい、
請求項10に記載のサスペンションアセンブリ。
【請求項12】
前記第1フレームの前記凸部が形成された部分の板厚は、前記凸部以外の部分の板厚よりも薄い、
請求項10または11に記載のサスペンションアセンブリ。
【請求項13】
前記凸部は、開口を有する、
請求項10乃至12のうちいずれか1項に記載のサスペンションアセンブリ。
【請求項14】
前記フレキシャは、データの読取りあるいは書込みを行うためのスライダの端子部に接続されるパッドを有し、
前記パッドは、前記導体層と同じ金属材料で同じ層に形成される、
請求項10乃至13のうちいずれか1項に記載のサスペンションアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク装置等に使われるディスク装置用サスペンションの製造方法と、その製造方法に使用されるサスペンションアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータなどの情報処理装置に、ハードディスク装置(HDD)が使用されている。ハードディスク装置は、スピンドルを中心に回転する磁気ディスクや、ピボット軸を中心に旋回するキャリッジなどを含んでいる。キャリッジはアクチュエータアームを有し、ボイスコイルモータ等のポジショニング用モータによってピボット軸を中心にディスクのトラック幅方向に旋回する。
【0003】
上記アクチュエータアームにディスク装置用サスペンション(これ以降、単にサスペンションと称す)が取り付けられている。サスペンションは、ロードビームや、ロードビームに重ねて配置されたフレキシャなどを含んでいる。フレキシャの先端付近に形成されたジンバル部に、磁気ヘッドを構成するスライダが設けられている。スライダには、データの読取りあるいは書込み等のアクセスを行なうための素子(トランスジューサ)が設けられている。これらロードビームやフレキシャおよびスライダなどによって、ヘッドジンバルアセンブリが構成されている。上記ジンバル部は、スライダを搭載するタングと、タングの両側に形成された一対のアウトリガーとを含んでいる。
【0004】
ディスクの高記録密度化に対応するために、ヘッドジンバルアセンブリをさらに小形化し、かつディスクの記録面に対してスライダをさらに高精度に位置決めできるようにすることが必要である。ヘッドジンバルアセンブリの小形化に伴い、使用されるスライダのサイズも小型化している。ロードビームとフレキシャは別々に形成される部品であるので、ロードビームに対するフレキシャの位置精度が重要となる。
【0005】
ロードビームに対するフレキシャの位置精度が悪いと、配線端子部が位置ずれする原因となる。配線端子部の位置ずれは、スライダをディンプル中心に組付けた時に配線端子とスライダが有する端子との間の位置ずれとして現れ、ショートなど導通不良の原因となる。そのため、ロードビームに対してフレキシャを固定する際に、ロードビームとフレキシャの位置精度を向上することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば特許文献1にサスペンションのための製造方法が開示されている。その製造方法においては、ロードビームとフレキシャを位置決めするために、ロードビームに連なるフレーム部には位置決め用部分が形成され、フレキシャに連なるフレーム部の一部には位置決め用部分と嵌合可能な嵌合部が形成され、位置決め用部分が嵌合部に嵌合されている。特許文献1のように、ロードビーム側の位置決め部分をドーム状の凸部に形成し、フレキシャ側の嵌合部を単純な孔に形成した場合、凸部と孔とを嵌合させる際に凸部の裾部のR形状部分と孔の縁が干渉することがあった。また、フレキシャの材質がステンレスのため、嵌合部を位置決め用部分に嵌合させた際に、同じくステンレスに形成されたドーム状の凸部である位置決め部分へ倣わず、うまく嵌合しないことがあった。これらは、ロードビームに対するフレキシャの位置精度を向上するためには好ましくなかった。
【0008】
そこで、本発明は、ロードビームとフレキシャとの相対位置を正確に規制することができるサスペンションの製造方法、その製造方法に使用されるサスペンションアセンブリを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係るディスク装置用サスペンションの製造方法は、ロードビームと、前記ロードビームに連なる第1フレームと、を含むロードビームブランクを形成すること、フレキシャと、前記フレキシャに連なる第2フレームと、を含むフレキシャブランクを形成すること、前記第1フレームに凸部を形成すること、前記第2フレームの前記凸部と対応した位置に前記凸部に挿入可能な開口部を形成すること、前記ロードビームブランクと前記フレキシャブランクとを重ね、かつ前記凸部を前記開口部に挿入すること、前記フレキシャを前記ロードビームに固定すること、前記固定後に前記第1フレームから前記ロードビームを切り離し、かつ前記第2フレームから前記フレキシャを切り離すこと、を具備している。前記第2フレームは、メタルベースと、前記ロードビームよりも柔らかい金属材料で形成された導体層と、を有している。前記開口部は、前記メタルベースに形成された第1開口と、前記第1開口と重なり前記導体層に形成された第2開口と、を有している。前記導体層は、前記第1開口の内面より内側に向けて突出した縁部を有し、前記凸部を前記開口部に挿入する際に前記縁部が前記凸部に接触する。
【0010】
前記凸部がドーム状に形成されてもよい。前記第1開口と前記第2開口とが円形であり、前記第1開口の直径が前記凸部の外径よりも大きく、前記第2開口の直径が前記凸部の外径よりも小さくてもよい。前記第2開口の前記縁部が前記凸部と接触してもよい。
【0011】
前記凸部を前記開口部に挿入する際に前記第2開口の前記縁部が前記凸部に沿って変形してもよい。前記凸部を前記開口部に挿入する前に前記第2開口の前記縁部を曲げること、をさらに具備してもよい。前記凸部に開口を形成すること、をさらに具備してもよい。
【0012】
データの読取りあるいは書込みを行うためのスライダの端子部に接続されるパッドを前記導体層と同じ金属材料で前記導体層と同じ層に形成すること、をさらに具備してもよい。
【0013】
一実施形態に係るサスペンションアセンブリは、ディスク装置用サスペンションのためのロードビームブランクとフレキシャブランクとを含むサスペンションアセンブリである。前記ロードビームブランクは、ロードビームと、前記ロードビームに連なる第1フレームと、前記第1フレームに形成された凸部と、を有している。前記フレキシャブランクは、前記ロードビームに重ねられるフレキシャと、前記フレキシャに連なる第2フレームと、前記第2フレームの前記凸部と対応した位置に形成された開口部と、を有している。前記第2フレームは、メタルベースと、前記ロードビームよりも柔らかい金属材料で形成された導体層と、を有している。前記開口部は、前記メタルベースに形成された第1開口と、前記第1開口と重なり前記導体層に形成された第2開口と、を有している。前記導体層は、前記第1開口の内面より内側に向けて突出した縁部を有している。
【0014】
前記凸部は、ドーム状に形成されてもよい。前記第1開口および前記第2開口は、円形であり、前記第1開口の直径は、前記凸部の外径よりも大きく、前記第2開口の直径は、前記凸部の外径よりも小さくてもよい。前記第1フレームの前記凸部が形成された部分の板厚は、前記凸部以外の部分の板厚よりも薄くてもよい。
【0015】
前記凸部は、開口を有してもよい。前記フレキシャは、データの読取りあるいは書込みを行うためのスライダの端子部に接続されるパッドを有し、前記パッドは、前記導体層と同じ金属材料で同じ層に形成されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ロードビームとフレキシャとの相対位置を正確に規制することが可能なサスペンションの製造方法と、その製造方法に使用されるサスペンションアセンブリを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るロードビームブランクの概略的な平面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るフレキシャブランクの概略的な平面図である。
【
図3】
図3は、
図2中のA-A線に沿う第2フレームの概略的な部分断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るサスペンションアセンブリの概略的な平面図である。
【
図5】
図5は、
図4中のB-B線に沿うサスペンションアセンブリの概略的な部分断面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係るサスペンションアセンブリの概略的な斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6中のC-C線に沿うサスペンションアセンブリの概略的な部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
いくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
本実施形態に係る製造方法において、ディスク装置用サスペンションは、ロードビームを含むロードビームブランクと、フレキシャを含むフレキシャブランクとを用いて製造される。以下に、ロードビームブランク、フレキシャブランク、および、これらを重ね合わせたサスペンションアッセンブリに適用し得る構造を例示する。
【0019】
図1は、第1実施形態に係るロードビームブランク10の概略的な平面図である。ロードビームブランク10は、ロードビーム11と、第1フレーム12とを備えている。ロードビームブランク10は、エッチングやプレス加工などの加工方法によって、金属板(薄板ばね)から形成される。金属板は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料によって形成される。
【0020】
ロードビーム11は、軸線X1に沿う方向に延びている。ロードビーム11の軸線X1上には、ディンプル14が形成されている。第1フレーム12は、ロードビーム11と一体的に連なっている。第1フレーム12は、サスペンションの製造過程で、ロードビーム11から切り離される。
図1中の2点鎖線C1は、その切断予定部を示している。
【0021】
第1フレーム12は、ロードビーム11に向かって延出する延出部12aを有している。延出部12aの軸線X1上に凸部13が形成されている。凸部13は、後述するフレキシャブランク20が重なる面側に向かって突出するドーム状に形成されている。ドーム状とは、例えば半球面状である。
【0022】
凸部13は、例えば金型を用いたプレス加工などによって成形される。凸部13は、ディンプル14が形成される工程で成形される。また、凸部13が形成される工程とディンプル14が形成される工程は、別々の工程であってもよい。
【0023】
図2は、第1実施形態に係るフレキシャブランク20の概略的な平面図である。フレキシャブランク20は、フレキシャ21と、第2フレーム30とを備えている。フレキシャブランク20は、エッチングやプレス加工などの加工方法によって、金属板(薄板ばね)から形成される。金属板は、例えば、ロードビーム11よりも薄いステンレス鋼等の金属材料によって形成される。フレキシャ21は、金属板と、金属板に沿って形成された配線部とを備えている。配線部は、銅等の導体層やポリイミド等の絶縁層等を含んでいる。
【0024】
フレキシャ21は、先端側(第2フレーム30側)にスライダ23(
図2中の破線部)が接続されるパッド22を有している。スライダ23には、データの読取りあるいは書込み等のアクセスを行なうための素子(トランスジューサ)が設けられている。この素子は、スライダ23が有する図示しない端子部と電気的に導通している。スライダ23の端子部は、ボンディングによってパッド22に電気的に接続される。端子部とパッド22のボンディングが正確に行われない場合、ショートなど導通不良が発生する原因となる。
【0025】
フレキシャ21の延出部21aは、軸線X2に沿う方向に延びている。延出部21aには、位置決め部24が形成されている。位置決め部24は、例えば円形の貫通孔であるがこの限りではない。
【0026】
第2フレーム30は、フレキシャ21と一体的に連なっている。第2フレーム30は、サスペンションの製造過程で、フレキシャ21から切り離される。
図2中の2点鎖線C2は、その切断予定部を示している。
【0027】
第2フレーム30には、開口部30aが形成されている。開口部30aは、第1フレーム12に形成された凸部13に対応した位置に形成されている。また、開口部30aは、凸部13を挿入可能な形状である。開口部30aは、例えば円形であるが凸部13を挿入可能であれば他の形状であってもよい。
【0028】
図3は、
図2中のA-A線に沿う第2フレーム30の概略的な部分断面図である。
図3(a)および
図3(b)は、主に開口部30aの断面に適用可能な構造例をそれぞれ示している。
図3(a)において、第2フレーム30は、メタルベース31と、導体層32と、絶縁層33と、保護層34とを有している。第2フレーム30は、メタルベース31上に絶縁層33、導体層32、保護層34をこの順番に積層することで形成されている。例えば、メタルベース31の下面から導体層32の下面までの距離L1は、0.025mmである。
【0029】
メタルベース31は、ロードビーム11よりも薄いステンレス鋼等の金属材料で形成されている。メタルベース31は、フレキシャ21と一体的に連なっている。導体層32は、ロードビームブランク10を形成する金属材料よりも柔らかい金属材料で形成され、例えば銅である。導体層32は、絶縁層33の上に所定のパターンとなるようにエッチングによって形成される。他の方法としては、例えば所定のパターンでマスキングされた絶縁層33の上に、めっき等の層形成プロセスによって導体層32を形成するようにしてもよい。絶縁層33や保護層34は、ポリイミド等の電気絶縁材料で形成されている。
【0030】
また第2フレーム30とフレキシャ21とは、厚さ方向における各層の構成が同じである。例えば、導体層32は、フレキシャ21上に形成されるパッド22と同じ金属材料であって、同じ層に形成され得る。導体層32とパッド22を含む層は、同一工程で形成されてもよい。
【0031】
メタルベース31は、第1開口31aを有している。導体層32は、第2開口32aを有している。絶縁層33は、第3開口33aを有している。保護層34は、第4開口34aを有している。第1開口31a、第2開口32a、第3開口33a、および第4開口34aの形状は、例えば円形である。開口部30aは、第1開口31a、第3開口33a、第2開口32a、および第4開口34aが重なることで形成されている。
【0032】
第2開口32aの直径D2は、第1開口31aの直径D1、第3開口33aの直径D3および第4開口34aの直径D4よりも小さい。言い換えると、導体層32は、メタルベース31、絶縁層33、および保護層34よりも内側に突出している。導体層32は、メタルベース31の第1開口31aの内面より内側に向けて突出した縁部32bを有している。図示した例においては、第1開口31aの直径D1は、第3開口の直径D3および第4開口34aの直径D4よりも大きい。しかし、第1開口31aの直径D1は、第3開口の直径D3および第4開口34aの直径D4より小さくてもよい。また
図3(b)に示すように、縁部32bは、予め絶縁層33側から保護層34側に向けて曲げられた形状であってもよい。
【0033】
図4は、第1実施形態に係るサスペンションアセンブリ40の概略的な平面図である。サスペンションアセンブリ40は、ロードビームブランク10と、フレキシャブランク20と、ベースプレート50とを有している。サスペンションアセンブリ40は、ロードビームブランク10に沿って、フレキシャブランク20が重ねられることで形成されている。フレキシャ21の延出部21aは、ベースプレート50に固定されている。
【0034】
ロードビームブランク10とフレキシャブランク20が重ねられる際に、凸部13は開口部30aに挿入される。凸部13を開口部30aに挿入する際、導体層32の縁部32bは凸部13に接触する。そして、位置決め部24には、回り止め部15が挿入される。回り止め部15は、ロードビームブランク10に形成されてもよいし、図示しない他の部材に形成されてもよい。位置決め部24は、回り止め部15に対応した位置に形成されていればよいので、フレキシャブランク20の他の位置(例えば、図示しないフレキシャテール部)に形成されてもよい。
【0035】
ロードビームブランク10にフレキシャブランク20を重ねる際に、凸部13を開口部30aに挿入するだけでなく、回り止め部15を位置決め部24に挿入する。回り止め部15を位置決め部24に挿入することで、フレキシャブランク20が凸部13を中心に回転することを防止できる。つまり、回り止め部15を位置決め部24に挿入することで、回転方向の位置決めをすることができる。
【0036】
回転方向の位置決め後、開口部30aを凸部13に押し付けることで、開口部30aに凸部13が嵌合し、最終的な位置決めがなされる。そして、ロードビーム11とフレキシャ21は、レーザー溶接等によって互いに固定される。そののち、第1フレーム12からロードビーム11が切り離される。また第2フレーム30からフレキシャ21が切り離されることにより、サスペンションが完成する。
【0037】
図5は、
図4中のB-B線に沿うサスペンションアセンブリ40の概略的な部分断面図である。
図5は、主に凸部13と開口部30aの断面を示している。
図5は、開口部30aに凸部13が嵌合し、最終的な位置決めがなされた状態である。
【0038】
ここで、凸部13が開口部30aに挿入される工程を説明する。まず、凸部13が開口部30aに挿入されると、導体層32の第2開口32aは、凸部13の第1面13a(外面)と接触する。凸部13が開口部30aにさらに挿入されると、上述した通り導体層32はロードビームブランク10よりも柔らかい金属材料で形成されているため、縁部32bが凸部13に沿って変形する。これにより、凸部13が開口部30aに嵌合するので、最終的な位置決めがなされる。
【0039】
本実施形態において、メタルベース31の第1開口31aの直径D1は、凸部13の外径D5よりも大きい。したがって、第1開口31aの内面や縁部は、第1面13aや凸部13の裾部Hとは接触しない。また、第3開口33aの直径D3や第4開口34aの直径D4も凸部13の外径D5よりも大きいため、第3開口33aや第4開口34aは、凸部13に接触することはない。
【0040】
一方、導体層32の第2開口32aの直径D2は、凸部の外径D5よりも小さい。そのため、縁部32bが第1面13aと接触する。また、導体層32とメタルベース31との間には、絶縁層33が位置しているため、縁部32bが裾部Hに接触することはない。
【0041】
縁部32bのみが第1面13aと接触するため、縁部32bが変形する工程が他の部分が凸部13に接触することによって阻害されることがない。他の部分が接触することがなく凸部13が開口部30aに確実に嵌合するため、ロードビームブランク10に対するフレキシャブランク20の位置精度は向上する。
【0042】
縁部32bは、メタルベース31側に第2面32cを有している。メタルベース31に平行な面と第2面32cとがなす接触角αは、45度以上であることが好ましい。接触角αが45度以上であれば、凸部13を開口部30aに挿入する際に凸部13と開口部30aの中心が一致しやすくなるため、ロードビームブランク10に対するフレキシャブランク20の位置精度がより向上する。
【0043】
さらに、凸部13が形成される部分の板厚t1は、凸部13以外の部分の板厚t2よりも薄く形成されている。第1フレーム12は、凸部13の周囲に薄肉部12bを有している。例えば、第1フレーム12の指定の箇所にハーフエッチング加工を行うことで、板厚の薄い部分を形成することができる。凸部13が形成される部分の板厚t1が凸部13以外の部分の板厚t2よりも薄いことで、板厚が厚い場合と比較して凸部13の球面加工が容易となる。また、薄肉部12bを凸部13の周囲のみに形成することで、第1フレーム12の強度の低下を防止することができる。薄肉部12bが平面視において第1開口31a内に位置していれば、メタルベース31が配置される部分の第1フレーム12の強度を確保することができる。
【0044】
また、
図3(b)に示したように予め縁部32bを絶縁層33側から保護層34側に向けて曲げた形状にしておけば、凸部13を開口部30aに挿入する際に、縁部32bが変形する際の初期に第1面13aと第2面32cとの間で生じる摩擦を軽減することができる。さらに、縁部32bが変形する際に発生する微粒子の付着(コンタミネーション)を減少させることができる。
【0045】
以上説明したように、第1フレーム12に形成される凸部13と、第2フレーム30に形成される開口部30aを嵌合させることで、ロードビームに対するフレキシャの位置精度を向上させることができる。
【0046】
特に本実施形態においては、第2開口32aの縁部32bを凸部13に沿って変形させることで、開口部30aを凸部13に嵌合させている。仮に第1開口31aの縁部が凸部13に接触する場合、第1開口31aはロードビーム11と同じ金属材料(例えば、ステンレス鋼)のメタルベース31に形成されているため、当該縁部は凸部13に沿って変形しにくい。そのため、例えば凸部13の外径に比べて第1開口31aの直径が小さい場合には、開口部30aに凸部13がうまく嵌合しない。また、凸部13の裾部Hの角にはR部分が形成される。凸部13の外径と第1開口31aの直径が略一致する場合であっても、当該R部分が第1開口31aの縁部に干渉して開口部30aへの凸部13の良好な嵌合を阻害し得る。一方、第2開口32aを有する導体層32は、ロードビーム11を形成する金属材料よりも柔らかい金属材料(例えば、銅)で形成されているため、縁部32bは凸部13に沿って変形しやすい。そのため、本実施形態のように第1開口31aの縁部が凸部13に接触せず、かつ第2開口32aの縁部32bが凸部13に接触する場合には、開口部30aを凸部13に対して確実に嵌合がさせることができる。
【0047】
また、仮に第1開口31aの縁部が凸部13に接触する場合、上述のように当該縁部は凸部13に沿って変形しにくいので、第1開口31aの直径のばらつきに起因してロードビームブランク10とフレキシャブランク20の相対高さもばらつく。これに対し、変形しやすい第2開口32aの縁部32bを凸部13に接触させる場合には、第2開口32aの直径がばらついたとしても凸部13と開口部30aとの嵌合に影響が及びにくい。そのため、ロードビームブランク10とフレキシャブランク20との相対高さのばらつきを抑えることが可能となる。これにより、組み立て時の変形防止や位置決め性の向上につながる。
【0048】
本実施形態においては、凸部13が第1フレーム12のうちロードビーム11の先端部に近い延出部12aに形成されている。こうすることで、ロードビーム11の先端部におけるフレキシャ21との位置精度を向上させることができる。この結果、ディンプル14に対するフレキシャ21の位置精度が高いジンバル部を構成することが可能となる。位置精度の高いジンバル部を構成することが可能であれば、ジンバル部に設けられるスライダ23とパッド22との接続精度を高めることも可能である。そして、スライダ23の組付けを原因とする不良も発生しにくくなる。また、凸部13をできる限りロードビーム11の先端側に形成することができれば、さらに位置精度を向上させることも期待できる。
【0049】
また本実施形態においては、凸部13は第1フレーム12に形成され、開口部30aは第2フレーム30に形成されている。このため、位置決めの際にロードビーム11やフレキシャ21に傷が付くことを回避でき、サスペンションの品質が向上する。また、サスペンションに位置決めするための開口部等を配置していないため、サスペンション内に位置決め用に大きなスペースを確保する必要がない。そのため、サスペンションを設計する際の設計自由度が阻害されることがない。
【0050】
凸部13が形成される第1フレーム12と、開口部30aが形成される第2フレーム30は、それぞれロードビーム11とフレキシャ21から切り離される。このため、発塵の原因となる凸部13と開口部30aとの嵌合部が、完成したサスペンションに残ることを回避できる。したがって、完成したサスペンションにバリやコンタミネーションが生じる可能性を低減することができる。
【0051】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
図6は、第2実施形態に係るサスペンションアセンブリ60の概略的な斜視図である。
図7は、
図6中のC-C線に沿うサスペンションアセンブリ60の概略的な部分断面図である。本実施形態において、凸部13は開口13bを有している。この点が第1実施形態と相違する。開口13bは、凸部13の中心に形成されてもよいし、凸部13の中心からずらして形成されてもよい。
【0052】
ロードビームブランク10は、ベース70上に配置されている。ベース70はピンPを有しており、ピンPが開口13bに挿入されている。
図7において、開口13bとピンPの間に隙間が形成されている。ピンPに合わせて配置されたロードビームブランク10に沿って、フレキシャブランク20が重ねられることで、サスペンションアセンブリ60が形成されている。
【0053】
凸部13が形成される位置に予め開口13bを形成しておけば、凸部13を形成する際に金属材料が必要以上に引き延ばされることがない。そのため、凸部13に開口13bを有していない場合と比較して、凸部13は第1面13aを平滑な状態に保持したまま形成される。また、凸部13が開口13bを有していれば、ピンPを基準にロードビームブランク10を配置することができ、ロードビームブランク10が配置しやすくなる。開口13bに対する凸部13の位置を若干ずらしてフレキシャブランク20の位置を微調整することも可能である。
【0054】
以上説明した実施形態は、発明の範囲を当該実施形態にて開示した構成に限定するものではない。本発明はその他の様々な形態で実施することが可能である。当該実施形態にて開示した構成やその変形は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
10…ロードビームブランク、11…ロードビーム、12…第1フレーム、12a…延出部、13…凸部、13a…第1面、13b…開口、14…ディンプル、15…回り止め部、20…フレキシャブランク、21…フレキシャ、21a…フレキシャの延出部、22…パッド、23…スライダ、24…位置決め部、30…第2フレーム、30a…開口部、31…メタルベース、31a…第1開口、32…導体層、32a…第2開口、32b…縁部、32c…第2面、33…絶縁層、34…保護層、40…サスペンションアセンブリ、50…ベースプレート、60…サスペンションアセンブリ、70…ベース、C1、C2…切断予定部、H…裾部、P…ピン、X1、X2…軸線、α…接触角。