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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】ディスク装置用サスペンション
(51)【国際特許分類】
   G11B 21/21 20060101AFI20230718BHJP
   G11B 5/60 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
G11B21/21 C
G11B5/60 P
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020041726
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021144770
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸恵
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-216263(JP,A)
【文献】特開2016-170852(JP,A)
【文献】特開2015-156246(JP,A)
【文献】特開2010-262685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 21/21
G11B 5/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロードビームと、
スライダが搭載されるタングと、前記タングに接続されたアウトリガーとを有し、前記ロードビームに重ねられたフレキシャと、
前記ロードビームに貼り付けられたダンパー材と、を備え、
前記アウトリガーは、前記ロードビームに対向するアームと、前記アームから延出するとともに前記アームの厚さ方向に折り返された折り返し部と、を有し、
前記折り返し部が前記ダンパー材に貼り付けられている、ディスク装置用サスペンション。
【請求項2】
前記ロードビームは、第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、前記第1面から前記第2面に貫通する開口と、を有し、
前記アウトリガーは、前記第1面側に配置され、
前記ダンパー材は、前記第2面に貼り付けられるとともに前記開口の少なくとも一部と重なり、
前記折り返し部は、前記開口を通じて前記ダンパー材に貼り付けられている、
請求項1に記載のディスク装置用サスペンション。
【請求項3】
前記アームは、前記開口と重なる屈曲部を有し、
前記折り返し部は、前記屈曲部から延出している、
請求項2に記載のディスク装置用サスペンション。
【請求項4】
前記アウトリガーは、前記ロードビームの幅方向における両側辺から延出した一対の前記折り返し部を有している、
請求項1~3のうちいずれか1項に記載のディスク装置用サスペンション。
【請求項5】
前記一対の折り返し部は、前記アームの幅方向に並んでいる、
請求項4に記載のディスク装置用サスペンション。
【請求項6】
前記一対の折り返し部は、前記アームの延出方向においてずれた位置に設けられている、
請求項4に記載のディスク装置用サスペンション。
【請求項7】
前記折り返し部の先端は、少なくとも1つの凹部または凸部を有している、
請求項1~6のうちいずれか1項に記載のディスク装置用サスペンション。
【請求項8】
前記アームは、開口を有し、
前記折り返し部は、前記アームの前記開口の内縁から延出している、
請求項1~7のうちいずれか1項に記載のディスク装置用サスペンション。
【請求項9】
前記折り返し部と前記ダンパー材の間に配置された絶縁層をさらに備え、
前記折り返し部は、前記絶縁層を介して前記ダンパー材に貼り付けられている、
請求項1~8のうちいずれか1項に記載のディスク装置用サスペンション。
【請求項10】
前記フレキシャは、前記アームおよび前記折り返し部をそれぞれ有する一対の前記アウトリガーを含み、
前記一対のアウトリガーの各々に対して前記ダンパー材が設けられ、かつこれらダンパー材が互いに離間している、
請求項1~9のうちいずれか1項に記載のディスク装置用サスペンション。
【請求項11】
前記フレキシャは、前記アームおよび前記折り返し部をそれぞれ有する一対の前記アウトリガーを含み、
前記ダンパー材は、前記一対のアウトリガーの双方と重なる大きさを有している、
請求項1~9のうちいずれか1項に記載のディスク装置用サスペンション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク装置等に使われるディスク装置用サスペンションに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータなどの情報処理装置に、ハードディスク装置(HDD)が使用されている。ハードディスク装置は、スピンドルを中心に回転する磁気ディスクや、ピボット軸を中心に旋回するキャリッジなどを含んでいる。キャリッジはアクチュエータアームを有し、ボイスコイルモータ等のポジショニング用モータによってピボット軸を中心にディスクのトラック幅方向に旋回する。
【0003】
上記アクチュエータアームにディスク装置用サスペンション(これ以降、単にサスペンションと称す)が取り付けられている。サスペンションは、ロードビームや、ロードビームに重ねて配置されたフレキシャなどを含んでいる。フレキシャの先端付近に形成されたジンバル部に、磁気ヘッドを構成するスライダが設けられている。スライダには、データの読取りあるいは書込み等のアクセスを行なうための素子(トランスジューサ)が設けられている。これらロードビームやフレキシャおよびスライダなどによって、ヘッドジンバルアセンブリが構成されている。
【0004】
上記ジンバル部は、スライダを搭載するタングと、タングの両側に形成された一対のアウトリガーとを含んでいる。これらアウトリガーは、それぞれフレキシャの両側部の外側に張り出す形状を有している。各アウトリガーの長さ方向の両端部付近は、それぞれ、例えばレーザ溶接等によりロードビームに固定されている。各アウトリガーは、それぞれ厚さ方向にばねのように撓むことができ、タングのジンバル運動を確保する上で重要な役割を担っている。
【0005】
ディスクの高記録密度化に対応するためには、ヘッドジンバルアセンブリをさらに小形化し、かつディスクの記録面に対してスライダをさらに高精度に位置決めできるようにすることが必要である。そのためには、ヘッドジンバルアセンブリに要求されるジンバル運動を確保した上で、フレキシャの揺れを極力小さくする必要がある。例えば特許文献1や特許文献2に記載されているように、フレキシャの揺れを抑制するために、サスペンションの一部にダンパー材を設けることも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6,967,821号明細書
【文献】特開2010-86630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
振動が入力したときのフレキシャの揺れを小さくするには、アウトリガーの揺れを抑制することが効果的な場合がある。このためアウトリガーそのものにダンパー材を設けることも考えられた。つまりアウトリガーにダンパー材を貼り付けることにより、アウトリガーとダンパー材とが一体に動くようにする。しかしながらアウトリガーにダンパー材を貼り付けると、フレキシャの揺れを抑制できる反面、フレキシャの剛性が大きくなってしまうという問題がある。たとえばアウトリガーの長さ方向に延びるダンパー材をアウトリガーに貼り付けたフレキシャは、ダンパー材を有さないフレキシャと比較して、ピッチ方向の剛性とロール方向の剛性が増加するため、ジンバル運動にとって好ましくない。
【0008】
そこで、本発明は、フレキシャの揺れを効果的に抑制できるとともに、フレキシャの剛性が大きくなることも抑制できるディスク装置用サスペンションを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係るディスク装置用サスペンションは、ロードビームと、フレキシャと、ダンパー材と、を備えている。前記フレキシャは、スライダが搭載されるタングと、前記タングに接続されたアウトリガーとを有し、前記ロードビームに重ねられている。前記ダンパー材は、前記ロードビームに貼り付けられている。前記アウトリガーは、前記ロードビームに対向するアームと、前記アームから延出するとともに前記アームの厚さ方向に折り返された折り返し部と、を有している。さらに、前記折り返し部が前記ダンパー材に貼り付けられている。
【0010】
例えば、前記ロードビームは、第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、前記第1面から前記第2面に貫通する開口と、を有している。また、前記アウトリガーは前記第1面側に配置され、前記ダンパー材は前記第2面に貼り付けられるとともに前記開口の少なくとも一部と重なり、前記折り返し部は前記開口を通じて前記ダンパー材に貼り付けられている。
【0011】
前記アームが前記開口と重なる屈曲部を有し、前記折り返し部が前記屈曲部から延出してもよい。この場合において、前記アウトリガーは、前記ロードビームの幅方向における両側辺から延出した一対の前記折り返し部を有してもよい。
【0012】
前記一対の折り返し部は、前記アームの幅方向に並んでもよい。他の例として、前記一対の折り返し部は、前記アームの延出方向においてずれた位置に設けられてもよい。前記折り返し部の先端は、少なくとも1つの凹部または凸部を有してもよい。
【0013】
前記アームが開口を有し、前記折り返し部が前記アームの前記開口の内縁から延出してもよい。
【0014】
前記ディスク装置用サスペンションは、前記折り返し部と前記ダンパー材の間に配置された絶縁層をさらに備えてもよい。この場合において、前記折り返し部は、前記絶縁層を介して前記ダンパー材に貼り付けられてもよい。
【0015】
前記フレキシャは、前記アームおよび前記折り返し部をそれぞれ有する一対の前記アウトリガーを含んでもよい。この場合においては、例えば前記一対のアウトリガーの各々に対して前記ダンパー材が設けられ、かつこれらダンパー材が互いに離間している。他の例として、前記ダンパー材は、前記一対のアウトリガーの双方と重なる大きさを有してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フレキシャの揺れを効果的に抑制できるとともに、フレキシャの剛性が大きくなることも抑制できるディスク装置用サスペンションを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ディスク装置の一例を示す概略的な斜視図。
図2図1に示されたディスク装置の概略的な断面図。
図3】第1実施形態に係るディスク装置用サスペンションの概略的な斜視図。
図4図3に示されたサスペンションをスライダ側から見た概略的な斜視図。
図5図4に示されたサスペンションの概略的な平面図。
図6図5中のF6-F6線に沿うサスペンションの概略的な断面図。
図7】第1実施形態に係るサスペンションの第1制振部および第2制振部の構造を概略的に示す平面図。
図8図7中のF8-F8線に沿う第1制振部の概略的な断面図。
図9】比較例に係るサスペンションの概略的な平面図。
図10】ダンパー材を有するサスペンションと、ダンパー材を有さないサスペンションとのそれぞれに関してフレキシャの剛性を示す図。
図11】第2実施形態に係るサスペンションの概略的な平面図。
図12】第3実施形態に係るサスペンションの概略的な平面図。
図13】第4実施形態に係るサスペンションの概略的な平面図。
図14】第4実施形態に係る折り返し部の形状の一例を示す平面図。
図15】第5実施形態に係るサスペンションの概略的な平面図。
図16】第6実施形態に係るサスペンションの概略的な平面図。
図17】第7実施形態に係るサスペンションの概略的な平面図。
図18図17中のF18-F18線に沿う第1制振部の概略的な断面図。
図19】第8実施形態に係るサスペンションの概略的な平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
いくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
図1は、ディスク装置(HDD)1の一例を示す概略的な斜視図である。このディスク装置1は、ケース2と、スピンドル3を中心に回転する複数のディスク4と、ピボット軸5を中心に旋回可能なキャリッジ6と、キャリッジ6を駆動するためのポジショニング用モータ(ボイスコイルモータ)7とを有している。ケース2は、図示しない蓋によって密閉される。
【0019】
図2は、ディスク装置1の一部を示す概略的な断面図である。図1および図2に示されるように、キャリッジ6に複数のアーム(キャリッジアーム)8が設けられている。各アーム8の先端部には、サスペンション10が取り付けられている。各サスペンション10の先端部には、磁気ヘッドを構成するスライダ11が設けられている。ディスク4が高速で回転すると、ディスク4とスライダ11との間に空気が流入することによって、エアベアリングが形成される。
【0020】
ポジショニング用モータ7によってキャリッジ6が旋回すると、サスペンション10がディスク4の径方向に移動することにより、スライダ11がディスク4の所望トラックまで移動する。
【0021】
図3は、本実施形態に係るサスペンション10の概略的な斜視図である。サスペンション10は、キャリッジ6のアーム8(図1および図2に示す)に固定されるベースプレート20と、ロードビーム21と、フレキシャ22とを備えている。ベースプレート20には、アーム8に形成された孔8a(図2に示す)に挿入されるボス部20aが形成されている。
【0022】
フレキシャ22は、ロードビーム21に沿って配置されている。ロードビーム21およびフレキシャ22は、いずれもサスペンション10の長さ方向Xに延びている。以下、長さ方向Xに直交する方向をサスペンション10、ロードビーム21およびフレキシャ22などの幅方向Yと呼ぶ。また、ロードビーム21の先端近傍に円弧状の矢印で示すように、スウェイ方向Sを定義する。
【0023】
図4は、サスペンション10の先端側の一部をスライダ11側から見た概略的な斜視図である。ロードビーム21は、図4に示す第1面21aと、図3に示す第2面21bとを有している。第1面21aは、フレキシャ22が配置される側の面である。図3に示すように、第2面21bにダンパー部材25が設けられてもよい。
【0024】
図4に示すように、磁気ヘッドをなすスライダ11の先端部には、例えばMR素子のように磁気信号と電気信号とを変換可能な素子28が設けられている。これらの素子28によって、ディスク4に対するデータの書込みあるいは読取り等のアクセスが行なわれる。スライダ11、ロードビーム21およびフレキシャ22などによって、ヘッドジンバルアセンブリ(head gimbal assembly)が構成されている。
【0025】
フレキシャ22は、薄いステンレス鋼の板からなるメタルベース40と、メタルベース40に沿って配置された配線部41とを有している。メタルベース40の厚さは、ロードビーム21の厚さよりも小さい。メタルベース40の厚さは、好ましくは12~25μmであり、一例では20μmである。ロードビーム21の厚さは、例えば30μmである。配線部41の一部は、スライダ11用の端子41aを介してスライダ11の素子28に電気的に接続されている。
【0026】
図5は、サスペンション10の先端部付近をスライダ11側から見た概略的な平面図である。フレキシャ22は、タング45と、第1アウトリガー51と、第2アウトリガー52とを有している。タング45には、スライダ11が搭載されている。第1アウトリガー51および第2アウトリガー52は、幅方向Yにおいてタング45の両外側にそれぞれ配置されている。
【0027】
第1アウトリガー51と第2アウトリガー52は、タング45の幅方向の両外側に張り出す形状を有している。タング45、第1アウトリガー51および第2アウトリガー52は、いずれもメタルベース40の一部であり、例えばエッチングによってそれぞれの輪郭が形成されている。
【0028】
図6は、図5中のF6-F6線に沿うサスペンション10の概略的な断面図である。ロードビーム21の先端付近に、タング45に向かって突出するディンプル55が形成されている。ディンプル55の先端55aは、タング45に接している。タング45は、ディンプル55の先端55aを中心として揺動し、所望のジンバル運動をなすことができる。タング45、第1アウトリガー51、第2アウトリガー52およびディンプル55などによってジンバル部56が構成されている。
【0029】
図4および図5に示すように、第1アウトリガー51はタング45の一方の側部の外側に配置され、フレキシャ22の長さ方向Xに延びている。第2アウトリガー52はタング45の他方の側部の外側に配置され、フレキシャ22の長さ方向Xに延びている。
【0030】
第1アウトリガー51は、第1基端部51aと、第1基端アーム51bと、第1先端アーム51cと、第1接続部51dとを有している。第1基端部51aは、固定部61によってロードビーム21に固定されている。第1基端アーム51bは、第1基端部51aからフレキシャ22の先端に向けて延びている。第1先端アーム51cの一端は第1基端アーム51bに接続され、他端はフレキシャ22の先端部22aに接続されている。第1接続部51dは、第1基端アーム51bの先端とタング45の一方の側部とを接続している。先端部22aは、固定部62によってロードビーム21の先端付近に固定されている。固定部61,62は、例えばレーザスポット溶接等によって形成されている。
【0031】
第2アウトリガー52は、第1アウトリガー51と同様の形状を有している。すなわち、第2アウトリガー52は、第2基端部52a、第2基端アーム52b、第2先端アーム52cおよび第2接続部52dを有している。第2基端部52aは、例えばレーザスポット溶接等で形成された固定部63によってロードビーム21に固定されている。
【0032】
上述の通り、第1アウトリガー51の長さ方向Xの両端部が固定部61,62によって支持されている。さらに、第2アウトリガー52の長さ方向Xの両端部が固定部62,63によって支持されている。これにより、第1アウトリガー51の固定部61,62の間に位置する部分、および、第2アウトリガー52の固定部62,63の間に位置する部分は、メタルベース40の厚さ方向に撓むことができる。このように、タング45は、第1アウトリガー51および第2アウトリガー52によって弾性的に支持され、ディンプル55を支点として揺動することができる。
【0033】
ジンバル部56には、第1マイクロアクチュエータ素子65および第2マイクロアクチュエータ素子66が搭載されている。これらマイクロアクチュエータ素子65,66はそれぞれ圧電材料からなり、幅方向Yにおけるスライダ11の両側に配置されている。第1マイクロアクチュエータ素子65の両端部65a,65bは、それぞれタング45のアクチュエータ支持部70,71に固定されている。第2マイクロアクチュエータ素子66の両端部66a,66bは、それぞれタング45のアクチュエータ支持部72,73に固定されている。
【0034】
マイクロアクチュエータ素子65,66は、タング45をスウェイ方向S(図3に示す)に回動させる機能を有している。図4および図5の例においては、タング45の一方の側部と第1アウトリガー51との間に、タング45の過剰な揺れを抑制するリミッタ部材75が設けられている。タング45の他方の側部と第2アウトリガー52との間にもリミッタ部材76が設けられている。
【0035】
図3図5に示すように、本実施形態に係るサスペンション10は、フレキシャ22の振動を抑制する第1制振部80および第2制振部90を備えている。第1制振部80は第1アウトリガー51の第1基端部51aの近傍に設けられ、第2制振部90は第2アウトリガー52の第2基端部52aの近傍に設けられている。以下、これら第1制振部80および第2制振部90の詳細について説明する。
【0036】
図7は、第1制振部80および第2制振部90の近傍におけるサスペンション10の構造を概略的に示す平面図である。図8は、図7におけるF8-F8線に沿う第1制振部80の概略的な断面図である。
【0037】
図7に示すように、ロードビーム21は、第1面21aから第2面21bに貫通する第1開口81を第1基端部51aの近傍に有している。第1基端アーム51bの一部は、第1開口81と重なっている。さらに、第1基端アーム51bは、第1開口81と重なる位置において、第1屈曲部51eを有している。第1基端部51aと第1屈曲部51eの間においては、第1基端アーム51bがサスペンション10の幅方向Yにおける中心Cに近づく方向に延びている。一方、第1屈曲部51eと第1先端アーム51c(図5に示す)の間においては、第1基端アーム51bが中心Cから遠ざかる方向に延びている。
【0038】
第1開口81は、ロードビーム21の第2面21bに貼り付けられた第1ダンパー材82と重なっている。図7の例においては第1ダンパー材82が第1開口81の全体を塞いでいるが、第1ダンパー材82は第1開口81の一部のみを塞いでもよい。
【0039】
さらに、第1アウトリガー51は、第1屈曲部51eにおいて第1基端アーム51bから延出する一対の第1折り返し部51f,51gを有している。第1折り返し部51fは、幅方向Yにおける第1基端アーム51bの一方の側辺から延出した部分を第1基端アーム51bの厚さ方向に折り返すことにより形成されている。同様に、第1折り返し部51gは、幅方向Yにおける第1基端アーム51bの他方の側辺から延出した部分を第1基端アーム51bの厚さ方向に折り返すことにより形成されている。
【0040】
図7の例では、長さ方向Xにおける第1折り返し部51f,51gの位置が一致している。すなわち、第1折り返し部51f,51gは、幅方向Yに並んでいる。また、第1折り返し部51f,51gは、それぞれの先端が向かい合うように折り返されている。
【0041】
第1折り返し部51fの一部は第1基端アーム51bの下方に位置し、第1開口81内に露出した第1ダンパー材82に貼り付けられている。同様に、第1折り返し部51gの一部は第1基端アーム51bの下方に位置し、第1開口81内に露出した第1ダンパー材82に貼り付けられている。本実施形態においては、第1開口81、第1ダンパー材82および第1折り返し部51f,51gによって第1制振部80が構成される。
【0042】
ロードビーム21は、第1面21aから第2面21bに貫通する第2開口91を第2基端部52aの近傍に有している。第2開口91は、ロードビーム21の第2面21bに貼り付けられた第2ダンパー材92によって塞がれている。第2ダンパー材92は、第2開口91の一部のみを塞いでもよい。第2ダンパー材92は、第1ダンパー材82と幅方向Yにおいて離間している。
【0043】
第2基端アーム52bは、第2屈曲部52eを有している。さらに、第2アウトリガー52は、第2基端アーム52bから延出する一対の第2折り返し部52f,52gを有している。第2折り返し部52fの一部は第2基端アーム52bの下方に位置し、第2開口91内に露出した第2ダンパー材92に貼り付けられている。同様に、第2折り返し部52gの一部は第2基端アーム52bの下方に位置し、第2開口91内に露出した第2ダンパー材92に貼り付けられている。
【0044】
図7の例において、第2基端アーム52b、第2折り返し部52f,52g、第2開口91および第2ダンパー材92は、第1基端アーム51b、第1折り返し部51f,51g、第1開口81および第1ダンパー材82と中心Cに関して線対称の形状を有している。第2開口91、第2ダンパー材92および第2折り返し部52f,52gによって第2制振部90が構成される。
【0045】
図8に示すように、第1基端アーム51b(第1屈曲部51e)は、ロードビーム21の第1面21aと平行である。第1折り返し部51f,51gの各々は、第1基端アーム51bと第1ダンパー材82の間に位置する平坦部511と、第1基端アーム51bと平坦部511を繋ぐ湾曲部512とを有している。湾曲部512の一部と平坦部511は、第1開口81内に位置している。
【0046】
平坦部511は、第1基端アーム51bと平行である。湾曲部512は、円弧状に曲げられている。平坦部511および湾曲部512は、ロードビーム21に接触していない。第1折り返し部51f,51gの平坦部511と第1基端アーム51bの間には、それぞれ隙間G1が設けられている。
【0047】
第1折り返し部51f,51gの平坦部511は、先端513をそれぞれ有している。これら先端513は、隙間G2を介して互いに対向している。図8の例においては、隙間G2が隙間G1よりも大きい(G2>G1)。他の例として、隙間G2が隙間G1以下であってもよい(G2≦G1)。
【0048】
第1ダンパー材82は、粘弾性層(viscoelastic material layer)83と、拘束板(constrained plate)84とを有している。粘弾性層83は、変形したときに粘性抵抗を発揮することができる高分子材料(例えばアクリル系樹脂)からなり、粘着性を有している。粘弾性層83の厚さは、例えば51μmである。拘束板84は、ポリエステル等の合成樹脂からなり、粘弾性層83に対して積層されている。拘束板84の厚さは、例えば51μmである。
【0049】
第1ダンパー材82は、第1開口81の周囲において、粘弾性層83により第2面21bに貼り付けられている。第1折り返し部51f,51gの平坦部511は、それぞれ粘弾性層83に貼り付いている。
【0050】
第2制振部90の断面構造は、図8に示した第1制振部80の断面構造と同様である。すなわち、第2ダンパー材92が粘弾性層と拘束板を有し、第2折り返し部52f,52gが平坦部と屈曲部を有し、第2折り返し部52f,52gの平坦部がそれぞれ第2ダンパー材92の粘弾性層に貼り付いている。
【0051】
以下に、本実施形態に係るサスペンション10の作用について説明する。
ポジショニング用モータ7によってキャリッジ6(図1図2に示す)が旋回すると、サスペンション10がディスク4の径方向に移動することにより、磁気ヘッドのスライダ11がディスク4の記録面の所望トラックまで移動する。マイクロアクチュエータ素子65,66に電圧が印加されると、電圧に応じてマイクロアクチュエータ素子65,66が歪むことにより、ロードビーム21をスウェイ方向S(図3に示す)に微小量移動させることができる。
【0052】
本実施形態に係るサスペンション10は、一対のアウトリガー51,52の基端部51a,52aの近傍(根元部)に、それぞれ制振部80,90を備えている。フレキシャ22を振動させるエネルギーが外部から入力されると、当該振動エネルギーが折り返し部51f,51g,52f,52gを通じてダンパー材82,92に伝わる。このとき、ダンパー材82,92のそれぞれの粘弾性層83が変形し、粘弾性層83を構成する分子の摩擦による内部抵抗を生じる。このため振動エネルギーが熱エネルギーに変換され、フレキシャ22の揺れを抑制することができる。
【0053】
ここで、比較例を参照して本実施形態に係るサスペンション10の効果をさらに説明する。図9は、比較例に係るサスペンション200の概略的な平面図である。このサスペンション200は、本実施形態と同じく、第1アウトリガー211および第2アウトリガー212を含むフレキシャ210と、ジンバル部220とを備えている。
【0054】
さらに、第1アウトリガー211に第1ダンパー材213が設けられ、第2アウトリガー212に第2ダンパー材214が設けられている。ダンパー材213,214は、それぞれアウトリガー211,212のみに接着し、アウトリガー211,212の長さ方向に延びている。
【0055】
このような構成のサスペンション200であっても、ジンバル部220の揺れを抑制することができる。しかしながら、以下に説明するようにダンパー材213,214を有しないサスペンションと比較して、フレキシャの剛性が大きくなる。
【0056】
図10は、図9に示したようにダンパー材213,214を有するサスペンション200と、ダンパー材を有さないサスペンションとのそれぞれに関し、フレキシャの剛性を示すグラフである。図10中のE,Fは、それぞれ図9に示された比較例のサスペンション200のピッチ方向の剛性とロール方向の剛性を示している。図10中のG,Hは、それぞれダンパー材213,214を有さないサスペンションのピッチ方向の剛性とロール方向の剛性を示している。
【0057】
このグラフから分かるように、ダンパー材213,214を有するサスペンション200におけるフレキシャの剛性E,Fは、ダンパー材213,214を有さない場合と比較していずれも約13%増加した。このように剛性が増加することにより、サスペンション200においてはジンバル運動に悪影響が生じ得る。
【0058】
これに対し、本実施形態に係るサスペンション10においては、アウトリガー51,52の基端アーム51b,52bから延出した折り返し部51f,51g,52f,52gが開口81,91を通じてダンパー材82,92に貼り付けられている。このような構造であれば、基端アーム51b,52bや先端アーム51c,52cはダンパー材82,92によって直接は拘束されないので、ダンパー材82,92によるアウトリガー51,52の剛性への影響を抑制できる。
【0059】
また、折り返し部51f,51g,52f,52gは、基端アーム51b,52bから延出した部分であるため、これら折り返し部の曲げに起因したアウトリガー51,52の機能への影響も抑制できる。
【0060】
なお、図9に示した比較例に係るサスペンション200においては、ダンパー材213,214がアウトリガー211,212の長さ方向に大きく延びている。これらダンパー材213,214は、ロードビームのフレキシャ210が配置される側の面(本実施形態における第1面21aに相当する面)と対向する。サスペンション200をディスク装置に組付ける際に使用されるシッピングコウム(shipping comb)はロードビームの当該面に接触するため、シッピングコウムがダンパー材213,214と干渉し、ダンパー材213,214が破損するおそれがある。これに対し、本実施形態に係るサスペンション10においては、ロードビーム21の第2面21bにダンパー材82,92が設けられている。このような構造であれば、ダンパー材82,92とシッピングコウムとの干渉を抑制することができる。
【0061】
また、仮に折り返し部51f,51g,52f,52gを設けない場合、第1基端アーム51bの振動を第1ダンパー材82に伝えるためのスペーサが必要となる。これに対し、本実施形態ではアウトリガー51,52の一部である折り返し部51f,51g,52f,52gがスペーサの役割を担うので、部品点数が削減できるとともに、製造工程も簡略化できる。
以上の他にも、本実施形態からは種々の好適な効果を得ることができる。
【0062】
本実施形態にて開示した制振部80,90の構造は一例に過ぎない。以下の第2~第8実施形態においては、制振部80,90に適用し得る他の構造を例示する。各実施形態において特に言及しない部分については、第1実施形態と同様の構造を適用できる。
【0063】
[第2実施形態]
図11は、第2実施形態に係るサスペンション10の一部を示す概略的な平面図である。このサスペンション10は、第1アウトリガー51が第1折り返し部51gを有しておらず、さらに第2アウトリガー52が第2折り返し部52gを有していない点で図7の例と相違する。
【0064】
アウトリガー51,52をそれぞれダンパー材82,92に対し良好に貼り付けて制振力を高める観点からは、第1実施形態のようにアウトリガー51,52にそれぞれ2つの折り返し部を設けるなどしてダンパー材82,92と折り返し部の接触面積を大きくすることが好ましい。しかしながら、本実施形態のように第1アウトリガー51が1つの第1折り返し部51fを有し、第2アウトリガー51が1つの第2折り返し部52fを有する構成であっても、フレキシャ22の揺れを抑制することが可能である。
【0065】
図11に示す第1折り返し部51fは、図7に示した第1折り返し部51fよりも幅方向Yに長い形状を有している。同様に、図11に示す第2折り返し部52fは、図7に示した第2折り返し部52fよりも幅方向Yに長い形状を有している。このように折り返し部51f,52fを大きくすれば、折り返し部51f,52fとダンパー材82,92との接触面積が増えるので、制振部80,90の制振力を高めることができる。
【0066】
なお、図11における折り返し部51f,52fは、図7に示した折り返し部51g,52gの位置にそれぞれ設けられてもよい。また、第1アウトリガー51または第2アウトリガー52が有する折り返し部の数は、第1実施形態のように2つである場合や、本実施形態のように1つである場合に限られず、3つ以上であってもよい。
【0067】
[第3実施形態]
図12は、第3実施形態に係るサスペンション10の一部を示す概略的な平面図である。このサスペンション10は、第1折り返し部51f,51gおよび第2折り返し部52f,52gの位置において図7の例と相違する。
【0068】
図12の例においては、第1折り返し部51f,51gの位置が長さ方向X(あるいは第1基端アーム51bの延出方向)においてずれている。具体的には、第1折り返し部51fは第1屈曲部51eと第1基端部51aの間に位置し、第1折り返し部51gは第1屈曲部51eと第1先端アーム51c(図5に示す)の間に位置している。
【0069】
同様に、第2折り返し部52f,52gの位置も長さ方向X(あるいは第2基端アーム52bの延出方向)においてずれている。具体的には、第2折り返し部52fは第2屈曲部52eと第2基端部52aの間に位置し、第2折り返し部52gは第2屈曲部52eと第2先端アーム52c(図5に示す)の間に位置している。
【0070】
図12の例において、第1折り返し部51fは第1延出方向D1に延びている。一方、第1折り返し部51gは第1延出方向D1と異なる第2延出方向D2に延びている。これら延出方向D1,D2は、例えば長さ方向Xおよび幅方向Yと交差する方向である。同様に、第2折り返し部52f,52gも異なる方向に延びている。
【0071】
図12に示す第1折り返し部51f,51gは、図7の例に比べて長い。この場合であっても、第1折り返し部51f,51gが長さ方向Xにおいてずれているため、第1折り返し部51f,51gが第1基端アーム51bの下方で接触しない。したがって、図12の構成であれば第1折り返し部51f,51gと第1ダンパー材82の接触面積を増やし、制振力を高めることができる。第2折り返し部52f,52gについても同様の効果を得ることができる。
【0072】
[第4実施形態]
図13は、第4実施形態に係るサスペンション10の一部を示す概略的な平面図である。このサスペンション10は、第1折り返し部51f,51gおよび第2折り返し部52f,52gの形状において図7の例と相違する。すなわち、第1折り返し部51f,51gは、第1基端アーム51bの下方において長さ方向Xに拡大するとともに、先端が蛇行している。同様に、第2折り返し部52f,52gは、第2基端アーム52bの下方において長さ方向Xに拡大するとともに、先端が蛇行している。
【0073】
図14は、本実施形態に係る第1折り返し部51fの形状の一例を示す図であり、第1折り返し部51fをロードビーム21の第2面21b側から見た平面図に相当する。第1折り返し部51gおよび第2折り返し部52f,52gに対しても同様の形状を適用し得る。
【0074】
図14に示す第1折り返し部51fにおいて、平坦部511の先端513は、幅方向Yに窪む2つの凹部513aを有している。他の観点から言えば、先端513は、凹部513aに隣り合う3つの凸部513bを有している。なお、先端513が有する凹部513aおよび凸部513bの数は、図示した例より多くてもよいし少なくてもよい。
【0075】
このように先端513が凹部513aや凸部513bを有することにより非直線状であれば、先端513が第1ダンパー材82に食い込み、平坦部511と第1ダンパー材82の剥がれを抑制できる。
【0076】
また、図14に示す第1折り返し部51fにおいては、平坦部511の長さ方向Xにおける幅W1が湾曲部512の長さ方向Xにおける幅W2よりも大きい。これにより、第1ダンパー材82と接触する平坦部511の面積が向上するので、平坦部511と第1ダンパー材82の剥がれをより好適に抑制できる。
【0077】
なお、図14に例示した形状は、折り返し部51f,51g,52f,52gの全てに適用されてもよいし、一部のみに適用されてもよい。また、図14に例示した形状は、他の実施形態にて開示する折り返し部に適用することもできる。
【0078】
[第5実施形態]
図15は、第5実施形態に係るサスペンション10の一部を示す概略的な平面図である。このサスペンション10においては、第1アウトリガー51の第1基端アーム51bが第1屈曲部51eの近傍において第1アーム開口51hを有している。第1アーム開口51hは、少なくとも一部が第1開口81と重なっている。さらに、第1アウトリガー51は、第1アーム開口51hの内縁から延出する第1折り返し部51iを有している。
【0079】
第1折り返し部51iは、図8に示した第1折り返し部51f,51gと同様に第1基端アーム51bの厚さ方向に折り返され、第1基端アーム51bの下方において第1ダンパー材82に貼り付いている。図15の例において、第1折り返し部51iの延出方向Dは、長さ方向Xおよび幅方向Yの双方に対して傾いている。
【0080】
図15の例において、第2アウトリガー52、第2開口91および第2ダンパー材92は、第1アウトリガー51、第1開口81および第1ダンパー材82と中心Cに関して線対称の形状を有している。すなわち、第2基端アーム52bが第2アーム開口52hを有し、この第2アーム開口52hの内縁から第2折り返し部52iが延出している。第2折り返し部52iは第2基端アーム52bの厚さ方向に折り返され、第2ダンパー材92に貼り付いている。
【0081】
本実施形態のように第1アーム開口51hの内側に第1折り返し部51iを設けた場合、第1基端アーム51bをその幅方向における中心付近でバランス良く固定できる。同様に、第2アーム開口52hの内側に第2折り返し部52iを設けた場合、第2基端アーム52bをその幅方向における中心付近でバランス良く固定できる。
【0082】
[第6実施形態]
図16は、第6実施形態に係るサスペンション10の一部を示す概略的な平面図である。このサスペンション10は、上述の第1ダンパー材82および第2ダンパー材92に代えて、第1アウトリガー51および第2アウトリガー52の双方と重なる大きさのダンパー材100を備える点で図7の例と相違する。
【0083】
ダンパー材100は、ロードビーム21の第2面21b(図3に示す)に貼り付けられている。ダンパー材100には、図8に示した第1ダンパー材82と同様の構造を適用できる。
【0084】
ダンパー材100は、第1開口81と重なる第1部分101と、第2開口91と重なる第2部分102と、これら第1部分101および第2部分102を繋ぐ中間部分103とを有している。中間部分103は、2つの配線部41と重なっている。図16の例においては、中間部分103の長さ方向Xにおける幅が、第1部分101および第2部分102の長さ方向Xにおける幅よりも小さい。
【0085】
第1折り返し部51f,51gは、第1開口81を通じて第1部分101に貼り付いている。第2折り返し部52f,52gは、第2開口91を通じて第2部分102に貼り付いている。
【0086】
本実施形態のように1つのダンパー材100にてアウトリガー51,52の双方を制振する構造であれば、2つのダンパー材82,92を用いる場合に比べサスペンション10の部品点数が低減されるとともに製造工程が簡略化される。また、ダンパー材100とロードビーム21の接着面積が大きくなるので、ダンパー材100がロードビーム21から剥がれにくくなる。
【0087】
本実施形態の構造は、ダンパー材100がロードビーム21の第2面21bに貼り付けられていることにより実現可能となる。すなわち、仮にダンパー材100を第1面21aに貼り付ける場合、ダンパー材100が配線部41を拘束してフレキシャ22の剛性やジンバル運動に悪影響が生じ得る。これに対し、ダンパー材100が第2面21bに貼り付けられていれば配線部41が拘束されないので、フレキシャ22の剛性やジンバル運動への影響が抑制される。
【0088】
なお、他の実施形態に係るサスペンション10において、本実施形態と同様に第1ダンパー材82および第2ダンパー材92に代えてダンパー材100を用いてもよい。
【0089】
[第7実施形態]
図17は、第7実施形態に係るサスペンション10の一部を示す概略的な平面図である。このサスペンション10の基本的な構造は、図7の例と同様である。ただし、図17に示すサスペンション10は、第1制振部80が一対の第1絶縁層85を備え、第2制振部90が一対の第2絶縁層95を備える点で図7に示した例と相違する。
【0090】
一対の第1絶縁層85は、第1開口81においてそれぞれ第1折り返し部51f,51gと重なっている。一対の第2絶縁層95は、第2開口91においてそれぞれ第2折り返し部52f,52gと重なっている。
【0091】
図18は、図17中のF18-F18線に沿う第1制振部80の概略的な断面図である。第1絶縁層85は、第1折り返し部51f,51gの平坦部511の外面(第1ダンパー材82と対向する面)に形成されている。
【0092】
第1絶縁層85は、平坦部511と第1ダンパー材82とで挟まれている。すなわち、本実施形態においては、平坦部511が第1絶縁層85を介して第1ダンパー材82に貼り付けられている。
【0093】
図18の例においては、第1絶縁層85の厚さがロードビーム21や平坦部511の厚さよりも小さい。第1絶縁層85は、例えばポリイミドを平坦部511に塗布し、これを硬化させることで形成できる。なお、配線部41もポリイミドで形成された絶縁層を含んでいる。第1絶縁層85と配線部41の絶縁層は、第1折り返し部51f,51gが曲げられる前の平坦なフレキシャ22に対するポリイミドの成膜とパターニングにより、同一の製造工程にて形成されてもよい。
【0094】
図18の例において、各第1絶縁層85は、第1折り返し部51f,51gの先端513から突出している。図17に示すように、長さ方向Xにおいても各第1絶縁層85が第1折り返し部51f,51gの両側部(平坦部511の両側部)から突出している。
【0095】
このように各第1絶縁層85を第1折り返し部51f,51gよりも大きくすれば、第1折り返し部51f,51gが第1ダンパー材82に安定して接着される。結果として、第1ダンパー材82による制振効果が向上する。また、フレキシャ22を曲げて第1折り返し部51f,51gを形成する際に、曲げ加工のためのツールとの接触によって第1折り返し部51f,51gが損傷することを抑制できる。
【0096】
一方、図18の例において、各第1絶縁層85は、第1折り返し部51f,51gの湾曲部512には及んでいない。これにより、上記曲げ加工における第1折り返し部51f,51gの変形が阻害されにくい。また、曲げによる第1絶縁層85の損傷を抑制できる。
【0097】
第2制振部90の断面構造も図18に示した第1制振部80の断面構造と同様である。すなわち、各第2絶縁層95は第2折り返し部52f,52gの平坦部に形成され、これら平坦部と第2ダンパー材92の間に介在している。
【0098】
なお、本実施形態のように絶縁層85,95を設ける構成は、他の実施形態に係るサスペンション10に対しても同様に適用できる。絶縁層85,95は、アウトリガー51,52が有する複数の折り返し部の一部のみに設けられてもよい。
【0099】
[第8実施形態]
図19は、第8実施形態に係るサスペンション10の一部を示す概略的な平面図である。このサスペンション10は、第2アウトリガー52が第2折り返し部52gを有していない点で図7の例と相違する。
【0100】
すなわち、図19の例においては、第1アウトリガー51が有する折り返し部の数が、第2アウトリガー52が有する折り返し部の数よりも多い。他の例として、第2アウトリガー52が有する折り返し部の数が、第1アウトリガー51が有する折り返し部の数より多くてもよい。
【0101】
このように、第1制振部80の構造と第2制振部90の構造とが非対称であっても、アウトリガー51,52の制振効果を得ることができる。第1制振部80の構造と第2制振部90の構造とが非対称となる例としては、アウトリガー51,52が有する折り返し部の数が異なる場合の他にも、アウトリガー51,52の折り返し部の延出方向が異なる場合、アウトリガー51,52の折り返し部の長さ方向Xにおける位置が異なる場合、開口81,91の形状や位置が異なる場合、ダンパー材82,92の形状や位置が異なる場合などが想定される。
【0102】
以上の各実施形態にて開示した発明を実施するに当たっては、ロードビームやフレキシャの形状、第1制振部および第2制振部の配置などの具体的な態様をはじめとして、ディスク装置用サスペンションを構成する各要素の具体的な態様を種々に変更できる。例えば、マイクロアクチュエータ素子65,66を有しないサスペンションに各実施形態と同様の第1制振部および第2制振部が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1…ディスク装置、10…サスペンション、11…スライダ、21…ロードビーム、21a…第1面、21b…第2面、22…フレキシャ、40…メタルベース、41…配線部、45…タング、51…第1アウトリガー、51a…第1基端部、51b…第1基端アーム、51e…第1屈曲部、51f,51g,51i…第1折り返し部、52…第2アウトリガー、52a…第2基端部、52b…第2基端アーム、52e…第2屈曲部、52f,52g,52i…第2折り返し部、55…ディンプル、56…ジンバル部、61,62,63…固定部、65,66…マイクロアクチュエータ素子、80…第1制振部、81…第1開口、82…第1ダンパー材、83…粘弾性層、84…拘束板、90…第2制振部、91…第2開口、92…第2ダンパー材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19