(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】巻き取り器のブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
F16D 57/06 20060101AFI20230718BHJP
B65H 75/38 20060101ALI20230718BHJP
B65H 54/74 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
F16D57/06
B65H75/38 S
B65H54/74 A
(21)【出願番号】P 2020505914
(86)(22)【出願日】2018-08-20
(86)【国際出願番号】 AU2018050880
(87)【国際公開番号】W WO2019036750
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-07-26
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】500221091
【氏名又は名称】マクノート ピーティワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ウッセラーニ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】シング,プラブジョト
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0267612(US,A1)
【文献】実開昭49-127100(JP,U)
【文献】特開平06-147237(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009043964(DE,A1)
【文献】特開2006-056619(JP,A)
【文献】独国実用新案第000020221032(DE,U1)
【文献】特開昭49-096595(JP,A)
【文献】特開平04-046227(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0158139(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0171001(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 57/06
B65H 75/38
B65H 54/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホース又はケーブルの巻き取り器のためのブレーキシステムであって、
前記ホース又はケーブルの巻き取り器は、回転可能なドラムに配置されたホース又はケーブルを有し、前記ドラムは、前記ドラムから前記ホース又はケーブルを延ばすために第1の方向に回転するように構成されるとともに、前記ホース又はケーブルを前記ドラム上へと格納するために反対の第2の方向に回転するように構成され、
前記ブレーキシステムは、
前記巻き取り器の
前記ドラムの内部に嵌合すると共
に前記ドラムと共に回転するよう構成された筐体
であって、前記筐体の内部に開口する流体の入口及び出口オリフィスと、前記入口及び出口オリフィスとそれぞれ流体連通している第1及び第2の導管と、を有する、筐体と、
前記筐体の内部に配置された内側ギア及び外側ギアを含むジェロータであって、前記内側ギアは前記巻き取り器のシャフトに取り付け可能であり、前記外側ギアは、使用中に前記筐体
及び前記ドラムと共に前記内側ギアに対して回転することにより、油圧油を前記ジェロータに送り込み、前記ドラムの回転を妨げるように構成されている、ジェロータと、
前記筐体に接続されるとともに第1及び第2の内部導管を有するバルブ構成であって、各内部導管は、前記第1及び第2の導管の各端部と流体連通しており、前記バルブ構成は、前記第2の方向への前記ドラムの回転に伴い前記第1の導管から前記バルブ構成を介した前記第2の導管への油圧油の流れを制限しそれにより前記ドラムの回転を妨げるように構成され、かつ、前記ドラムから前記ホース又はケーブルが延びる間に前記ドラムが比較的妨げられずに回転可能となるように、前記第1の方向への前記ドラムの回転に伴い前記第2の導管から前記バルブ構成を介した前記第1の導管への油圧油の流れを許容するように構成されている、バルブ構成と、
を備える、ブレーキシステム。
【請求項2】
使用時に前記ジェロータは、前記ドラムの回転方向に応じて、油圧油を前記第1又は第2の導管から前記筐体内へ吸引し、その後、前記筐体から他方の導管へ送り出す、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記バルブ構成は、逆止弁及び流量制御弁を含み、
前記逆止弁及び前記流量制御弁は、油圧油が前記バルブ構成を通って流れる場合、
前記第1の導管から前記第2の導管へ流れる際は、前記逆止弁よりも前記流量制御弁の方に多くの油圧油が流れるように、及び、
前記第2の導管から前記第1の導管へ流れる際は、前記流量制御弁よりも前記逆止弁の方に多くの油圧油が流れるように、
構成されている、請求項2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記逆止弁は、油圧油が前記第1の導管から前記バルブ構成を介して前記第2の導管へ流れる場合は前記逆止弁を通って流れることができないように構成されている、請求項3に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記流量制御弁は、前記第1の内部導管を通る油圧油の流れを抑制し、
前記逆止弁は、前記第2の内部導管を通る油圧油の流れを制御する、請求項3又は4に記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記バルブ構成は、圧力補償器及び流量制御弁を含み、
前記圧力補償器及び前記流量制御弁は、油圧油が前記バルブ構成を通って流れる場合、
前記第1の導管から前記第2の導管へ流れる際は、油圧油を前記圧力補償器によって抑制することができるように、及び、
前記第2の導管から前記第1の導管へ流れる際は、油圧油が前記圧力補償器によって抑制されないように、
構成されている、請求項2に記載のブレーキシステム。
【請求項7】
前記圧力補償器は、
前記バルブ構成を通る油圧油の流れが前記圧力補償器によって抑制されない開放位置と、油圧油が前記バルブ構成を通って流れることができない閉鎖位置と、の間で変位可能なスプールと、
前記スプールを前記開放位置に付勢するように配置されたばねと、
を含む、請求項6に記載のブレーキシステム。
【請求項8】
前記バルブ構成は更に、
前記流量制御弁の第1の側及び前記スプールの第1の端部と流体連通している第1の圧力導管であって、前記流量制御弁を通って流れる油圧油により発生した前記流量制御弁の前記第1の側における背圧によって前記スプールが強制的に前記開放位置の方へ押される、第1の圧力導管と、
前記流量制御弁の第2の側及び前記スプールの第2の端部と流体連通している第2の圧力導管であって、前記流量制御弁を通って流れる油圧油により発生した前記流量制御弁の前記第2の側における背圧によって前記スプールが強制的に前記閉鎖位置の方へ押される、第2の圧力導管と、
を含む、請求項7に記載のブレーキシステム。
【請求項9】
前記システムは、前記内側ギアに接続された細長いスリーブを更に含み、
前記細長いスリーブは、前記巻き取り器の前記シャフトと軸方向に位置合わせされ、前記内側ギアを前記シャフトに固定するため前記シャフトを受容するように構成された内腔を含む、請求項1から8の何れか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項10】
前記ブレーキシステムの制動力は、前記流量制御弁によって決定される、請求項3から9の何れか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項11】
前記ブレーキシステムの制動力は、前記入口オリフィスのサイズによって決定される、請求項1から10の何れか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項12】
前記ブレーキシステムの制動力は、前記出口オリフィスのサイズによって決定される、請求項1から11の何れか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項13】
前記ブレーキシステムの制動力は、前記ブレーキシステムに含まれる油圧油の粘度によって決定される、請求項1から12の何れか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項14】
前記ブレーキシステムに含まれる油圧油は、オイルを含む、請求項1から13の何れか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項15】
前記筐体は、前記ドラムに着脱可能に取り付け可能である、請求項1から14の何れか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項16】
前記筐体は、概ね円筒形である、請求項1から15の何れか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項17】
前記筐体は、プラスチック製である、請求項1から16の何れか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項18】
前記バルブ構成、並びに前記第1及び第2の導管は、前記筐体内に一体的に形成されている、請求項1から17の何れか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項19】
ホース巻き取り器であって、前記ホース巻き取り器に設置された請求項1から18の何れか一項に記載のブレーキシステムを有する、ホース巻き取り器。
【請求項20】
前記ブレーキシステムの前記筐体は、前記ホース巻き取り器のドラム内部に配置されている、請求項
19に記載のホース巻き取り器。
【請求項21】
ケーブル巻き取り器であって、前記ケーブル巻き取り器に設置された請求項1から18の何れか一項に記載のブレーキシステムを有する、ケーブル巻き取り器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、ホース又はケーブルの巻き取り器(reel)のためのブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] ホース及びケーブルの巻き取り器は、様々な業界において、職場の安全と効率を向上させるために用いられている。巻かれていないホース及びケーブルは、つまずいたり滑ったりする危険があり、職員に人身障害を引き起こす恐れがある。これは労災補償の請求や生産性の低下につながる可能性がある。巻き取りデバイスによって、職場がきちんと整頓されることが保証され、ホース及びケーブルを便利に保管、格納、及び使用することが可能となる。
【0003】
[0003] 典型的な巻き取り器は、ホース又はケーブルが巻かれるドラムを備えている。ドラムは、ドラムの中心を貫通している、使用中に静止状態のままであるシャフトを中心として回転する。ホースを引っ張るとドラムが回転し、ホース又はケーブルが巻き取り器からほどけるので、使用が可能となる。
【0004】
[0004] また、巻き取りドラムは、使用後にユーザがホース又はケーブルをドラムの方へ戻した場合にドラムを自動的に反対方向へ回転させるばね駆動格納機構を含み得る。また、自動格納機構は、ホース及びケーブルの巻き取り器のユーザに対してリスクを与える。例えば格納中にユーザがうっかり手を放した場合、ドラムの回転速度が制御不能に加速し、ホースが急に危険な回転をして、そのユーザ又は近くに立っている他の人に接触する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005] この文脈において、ホース及びケーブルが巻き取り器に格納される速度を制御するためのブレーキシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006] 本発明に従って、ホース又はケーブルの巻き取り器のためのブレーキシステムが提供される。ホース又はケーブルの巻き取り器は、回転可能なドラムに配置されたホース又はケーブルを有し、ドラムは、ドラムからホース又はケーブルが延ばすために第1の方向に回転するように構成されるとともに、ホース又はケーブルをドラム上へと格納するために反対の第2の反対の方向に回転するように構成される。このブレーキシステムは、
巻き取り器のドラムの内部に嵌合すると共にドラムと共に回転するよう構成された筐体であって、筐体の内部に開口する流体の入口及び出口オリフィスと、入口及び出口オリフィスとそれぞれ流体連通している第1及び第2の導管と、を有する、筐体と、
筐体の内部に配置された内側ギア及び外側ギアを含むジェロータ(gerotor)であって、内側ギアは巻き取り器のシャフトに取り付け可能であり、外側ギアは、使用中に筐体及びドラムと共に内側ギアに対して回転することにより、油圧油をジェロータに送り込み、ドラムの回転を妨げるように構成されている、ジェロータと、
筐体に接続されるとともに第1及び第2の内部導管を有するバルブ構成であって、各内部導管は、第1及び第2の導管の各端部と流体連通しており、バルブ構成は、第2の方向へのドラムの回転に伴い第1の導管からバルブ構成を介した第2の導管への油圧油の流れを制限しそれによりドラムの回転を妨げるように構成され、かつ、ドラムからホース又はケーブルが延びる間にドラムが比較的妨げられずに回転可能となるように、第1の方向へのドラムの回転に伴い第2の導管からバルブ構成を介した第1の導管への油圧油の流れを許容するように構成されている、バルブ構成と、
を備える。
【0007】
[0007] 使用時にジェロータは、ドラムの回転方向に応じて、油圧油を第1又は第2の導管から筐体内へ吸引し、その後、筐体から他方の導管へ送り出し得る。
【0008】
[0008] バルブ構成は、逆止弁及び流量制御弁を含み得る。逆止弁及び流量制御弁は、油圧油がバルブ構成を通って流れる場合、
第1の導管から第2の導管へ流れる際は、逆止弁よりも流量制御弁の方に多くの油圧油が流れるように、及び、
第2の導管から第1の導管へ流れる際は、流量制御弁よりも逆止弁の方に多くの油圧油が流れるように
構成されている。
【0009】
[0009] 逆止弁は、油圧油が第1の導管からバルブ構成を介して第2の導管へ流れる場合は逆止弁を通って流れることができないように構成できる。
【0010】
[0010] バルブ構成は更に、第1及び第2の内部導管を含み得る。各内部導管は、第1及び第2の導管の各端部と流体連通しており、
流量制御弁は、第1の内部導管を通る油圧油の流れを制御し、
逆止弁は、第2の内部導管を通る油圧油の流れを制御する。
【0011】
[0011] バルブ構成は、圧力補償器及び流量制御弁を含み得る。圧力補償器及び流量制御弁は、油圧油がバルブ構成を通って流れる場合、第1の導管から第2の導管へ流れる際は、油圧油を圧力補償器によって制御することができるように、及び、第2の導管から第1の導管へ流れる際は、油圧油が圧力補償器によって制御されないように、構成されている。
【0012】
[0012] 圧力補償器は、バルブ構成を通る油圧油の流れが圧力補償器によって制御されない開放位置と、油圧油がバルブ構成を通って流れることができない閉鎖位置と、の間で変位可能なスプールと、スプールを開放位置に付勢するように配置されたばねと、を含み得る。
【0013】
[0013] バルブ構成は更に、流量制御弁の第1の側及びスプールの第1の端部と流体連通している第1の圧力導管であって、流量制御弁を通って流れる油圧油により発生した流量制御弁の第1の側における背圧によってスプールが強制的に開放位置の方へ押される、第1の圧力導管と、流量制御弁の第2の側及びスプールの第2の端部と流体連通している第2の圧力導管であって、流量制御弁を通って流れる油圧油により発生した流量制御弁の第2の側における背圧によってスプールが強制的に閉鎖位置の方へ押される、第2の圧力導管と、を含み得る。
【0014】
[0014] ブレーキシステムは、内側ギアに接続された細長いスリーブを更に含み得る。細長いスリーブは、巻き取り器のシャフトと軸方向に位置合わせされ、内側ギアをシャフトに固定するためシャフトを受容するように構成された内腔を含む。
【0015】
[0015] ブレーキシステムの制動力は、流量制御弁によって決定され得る。
【0016】
[0016] ブレーキシステムの制動力は、入口オリフィスのサイズによって決定され得る。
【0017】
[0017] ブレーキシステムの制動力は、出口オリフィスのサイズによって決定され得る。
【0018】
[0018] ブレーキシステムの制動力は、ブレーキシステムに含まれる油圧油の粘度によって決定され得る。
【0019】
[0019] ブレーキシステムに含まれる油圧油は、オイルを含み得る。
【0020】
[0020] 筐体は、ドラムに着脱可能に取り付け可能とすることができる。
【0021】
[0021] 筐体は、概ね円筒形とすることができる。
【0022】
[0022] 筐体は、プラスチック製とすることができる。
【0023】
[0023] バルブ構成、並びに第1及び第2の導管は、筐体内に一体的に形成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
[0024] これより添付図面を参照して単に一例として本発明の実施形態を説明する。
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に従ったブレーキシステムの立面図である。
【
図2】ブレーキシステムを設置することができるホース巻き取り器の立面図である。
【
図3】ブレーキシステムに含めることができる油圧回路の概略図である。
【
図4】本発明の別の実施形態に従ったブレーキシステムの立面図である。
【
図6】
図4のブレーキシステムの線A-Aに沿った横断面図である。
【
図7】本発明の別の実施形態に従ったブレーキシステムの立面図である。
【
図9】
図8に示されているバルブ構成の拡大図である。
【
図10】
図7のブレーキシステムの線B-Bに沿った横断面である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[0025] 図面を参照すると、本発明の例示的な実施形態は、巻き取り器16のドラム14の内部に嵌合すると共に使用中にドラム14と共に回転するよう構成された筐体12を含むブレーキシステム10を提供する。ブレーキシステム10は更に、筐体12の内部に配置された内側ギア20及び外側ギア22を含むジェロータ18を含む。内側ギア20は巻き取り器16のシャフト24に取り付け可能であり、外側ギア22は、使用中に筐体12と共に内側ギア20に対して回転することにより、油圧油をジェロータ18に送り込み、ドラム14の回転を妨げるように構成されている。
【0027】
[0026] 更に具体的に述べると、筐体12は、概ね円筒形でプラスチック製とすることができ、巻き取り器16の内部25に直接設置してドラム14に取り付けるように構成できる。一例において、筐体12はドラム14に着脱可能に取り付けることができる。一例において筐体12は、筐体12の周縁に配置された複数のクリップ部材(図示せず)を含み、これらは、筐体12をドラム14に着脱可能に取り付けるため、ドラム14の内壁に配置された複数の相補的なフランジ(図示せず)と係合するよう構成されている。一例において、筐体12は、筐体12の周縁を巻き取り器16の内壁に留めるよう構成された複数のねじ又はナットとボルト(図示せず)を用いてドラム14に着脱可能に取り付け可能とすることができる。
【0028】
[0027] ブレーキシステム10は、油圧油をジェロータ18に供給するための手段を含む。
図3で概略的に示されているように、一例において筐体12は、筐体12の内部に開口する流体入口及び出口オリフィス26、28を有し、ブレーキシステム10は、入口及び出口オリフィス26、28とそれぞれ流体連通している第1及び第2の流体移送導管30、32を含むことができる。使用時、一方向に動作している場合、ジェロータ18の内側ギア20と外側ギア22との相対的な回転によって、油圧油は第1の導管30から筐体12内へ吸引され、その後、筐体12から第2の導管32へ注入される。反対方向に動作している場合、油圧油は第2の導管32から筐体12内へ吸引され、その後、筐体12から第1の導管30へ注入される。
【0029】
[0028] また、ブレーキシステム10は、ジェロータ18に出入りする油圧油の流れを制御するための手段も含む。いくつかの例示的な実施形態において、ブレーキシステム10は更に、第1及び第2の導管30、32の終端部36、38に接続されたバルブ構成34、134、234を含むことができる。バルブ構成34、134、234は、使用中に第1の導管30からバルブ構成34、134、234を介した第2の導管32への油圧油の流れを制限するよう構成できる。すなわちバルブ構成34、134、234は、油圧油が第1の導管30から第2の導管32へ流れる場合に、第2の導管32からバルブ構成34、134、234を介して第1の導管30へ反対方向に流れる場合よりも大きい抵抗を油圧油に与えることを保証する。
【0030】
[0029] 一例において、バルブ構成34は逆止弁40及び流量制御弁42を含むことができる。バルブ構成34は更に、各々が第1及び第2の導管30、32の終端部36、38に接続された第1及び第2の内部導管44、46を含むことができ、これらはそれぞれ逆止弁40及び流量制御弁42と流体連通している。
【0031】
[0030] 逆止弁40及び流量制御弁42は、それぞれ第1及び第2の内部導管44、46を通る油圧油の流れを制御するよう構成されている。一例において、逆止弁40は、第1の内部導管44内の油圧油が、第2の導管32から第1の導管30へ向かう方向に(すなわち
図3の概略図の右側から左側に)だけ逆止弁40を通って流れること又は実質的に流れることを可能とする。この例では、油圧油が第1の内部導管44において反対方向に流れる場合、逆止弁40は、油圧油が逆止弁40を通過することを可能としないか、又は無視できる程度の量の油圧油のみが通過することを可能とする。
【0032】
[0031] 逆止弁40とは異なり、流量制御弁42は、第2の内部導管46内の油圧油が流量制御弁42を通っていずれの方向にも流れることができるようにする。しかしながら、流量制御弁42は、流量制御弁42を通っていずれかの方向に流れる際の油圧油にある程度の抵抗を与えるよう構成されている。
【0033】
[0032] 逆止弁40及び流量制御弁42は共に、油圧油がバルブ構成34を介して第1の導管30から第2の導管32へ向かう方向に流れる場合、逆止弁40よりも流量制御弁42を通って流れる油圧油の方が多くなるようにする。これにより、バルブ構成34を通ってこの方向に流れる場合、流量制御弁42によって油圧油の流れにある程度の抵抗が与えられる。更に、油圧油がバルブ構成34を通って反対方向に(すなわち第2の導管32から第1の導管30へ)流れる場合は、流量制御弁42よりも逆止弁40を通って流れる油圧油の方が多い。これにより、バルブ構成34を通ってこの方向に流れる場合、油圧油に与えられる抵抗は実質的に小さくなる。第1の内部導管44と逆止弁40の組み合わせは、油圧油が第2の導管32から第1の導管30へ実質的に自由に流れるように、従って、バルブ構成34を通ってこの方向に流れる場合は油圧油にほとんど抵抗が与えられないように構成できる。
【0034】
[0033]
図4から
図6を参照すると、一例においてバルブ構成134は、逆止弁140と流体連通した、第1及び第2の導管30、32の終端部36、38に接続された第1の内部導管144を含むことができる。逆止弁140は、ボール148及びばね150を含み得る。例示的なバルブ構成134は、流量制御弁142と流体連通した、第1の内部導管144と平行に接続された第2の内部導管146を含み得る。逆止弁140が閉鎖位置にある場合、第2の内部導管146は、逆止弁140のボール148のいずれかの側で第1の内部導管144に接続することができる。
【0035】
[0034]
図6を参照すると、一例において流量制御弁142は、第1及び第2の内部導管144、146の双方を通る流れを少なくとも部分的に制御するように配置できる。
【0036】
[0035]
図7から
図10を参照すると、一例において、バルブ構成234は圧力補償器240及び流量制御弁242を含み得る。流量制御弁242はオリフィス弁とすることができる。バルブ構成234は更に、第1及び第2の導管30、32の終端部36、38に接続された内部導管244を含み得る。圧力補償器240及び流量制御弁242の双方は、内部導管244内において、内部導管244を通る油圧油の流れを制御するよう配置することができる。
【0037】
[0036] バルブ構成234は、内部導管244と流体連通している内部チャンバ252を含み得る。圧力補償器240は内部チャンバ252内に収容できる。圧力補償器240はスプール248及びばね250を含むことができる。スプール248は、内部チャンバ252及び内部導管244を通る油圧油の流れを調節するように構成できる。スプール248は、油圧油が内部チャンバ252を通って内部導管244を介して流れることができる開放位置と、油圧油が内部チャンバ252及び内部導管244を通って流れることができない閉鎖位置との間で、変位可能とすることができる。ばね250は、例えば
図8及び
図9に示されているように、スプール248を開放位置に付勢するよう構成できる。
【0038】
[0037] バルブ構成234は、内部導管244と流体連通している第1及び第2の圧力導管254、256を含み得る。第1の圧力導管254は、流量制御弁242の一方側の内部導管の第1のセクション244aと内部チャンバ252内のスプール248の第1の端部との間に流体連通を提供できる。第2の圧力導管256は、流量制御弁242の他方側の内部導管の第2のセクション244bと内部チャンバ252内のスプール248の第2の端部との間に流体連通を提供できる。
【0039】
[0038] 一例においては、圧力補償器240によって、油圧油が第1の導管30から第2の導管32へ流れる場合よりも第2の導管32から第1の導管30へ流れる場合の方が内部導管244を通して多くの油圧油を流すことができる。いくつかの実施形態では、例えば
図9に示されているように、油圧油が第2の導管32から内部導管の第1のセクション244aを通って第1の導管30へ流れる場合、油圧油が流量制御弁242の制限部(constraint)を通って流れる時に背圧が生じる可能性がある。生じた背圧は第1の圧力導管254へ伝達される。第1の圧力導管254内の背圧とばね250の組み合わせによって、スプール248は強制的に開放位置となり、油圧油が内部チャンバ252を通って無制限に流れることが可能となる。従って、例示的な実施形態では、流体が第2の導管32から第1の導管30へ流れている場合、油圧油の流れは流量制御弁242によって抑制及び制御されるだけであり、圧力補償器240によって制御されることはない。
【0040】
[0039] 反対に、油圧油が第1の導管30から内部導管の第2のセクション244bを介して第2の導管32へ流れる場合、油圧油が流量制御弁242の制限部を通って流れる時にも背圧が生じ得る。この例では、生じた背圧は第2の圧力導管256へ伝達される。第2の圧力導管256における背圧によってスプール248に加えられた力が、ばね250の力を克服するのに充分な大きさである場合、スプール248は強制的に開放位置から閉鎖位置にされて、内部チャンバ252及び内部導管の第2のセクション244bを通る油圧油の流れを少なくとも部分的に抑制する。内部チャンバ252を通る流れがスプール248によって抑制されると、流量制御弁242を通る流れが等しく減少する。従って、第2の圧力導管256における背圧は低減され、結果としてスプール248はばね250によって強制的に開放位置にされる。従って、流量制御弁242を通る抑制された流れによって生じた第2の圧力導管256内の背圧の力が、ばね250の力を克服するのに充分な大きさである場合、スプール248の位置は開放位置と閉鎖位置の境界内で振動し得る。
【0041】
[0040] 有利な点として、振動するスプール248は、変化する油圧負荷に対して油圧油の一定の流れを維持できる自制システム(self-governing system)を生成する。一定の流れによって、一定のドラム回転速度及び/又は一貫した巻き取り器格納速度が得られる。
【0042】
[0041] 一例において、バルブ構成34、134、234、並びに第1及び第2の導管30、32は、筐体12内に一体的に形成することができる。これにより、筐体12を巻き取り器16のドラム14内に容易に設置できるという利点が得られ、更に、バルブ構成34又は第1及び第2の導管30、32が妨害することなくブレーキシステム10を動作させることが可能となる。
【0043】
[0042]
図1を参照すると、ブレーキシステム10は更に、内側ギア20に接続された細長いスリーブ50を含み得る。細長いスリーブ50は、巻き取り器16のシャフト24と軸方向に位置合わせされ、細長いスリーブ50及び内側ギア20をシャフト24に固定するためシャフト24を受容するように構成された内腔52を含む。
【0044】
[0043] 使用の際、ブレーキシステム10を巻き取り器16内に設置するため、まず筐体12がドラム14内に置かれ、巻き取り器16のシャフト24が細長いスリーブ50の内腔52に挿入される。次いで、筐体12の周縁がドラム14の内壁に取り付けられる。
【0045】
[0044] 人が巻き取り器16からホースを伸ばす必要がある場合、このユーザはホースを引っ張り、これによってドラム14は回転し、ホースは巻き取り器16からほどかれる。ドラム14が回転している間、筐体12の周縁(従って、拡大解釈すると、ジェロータ18の外側ギア22)はドラム14と共に回転する。ジェロータ18の内側ギア20は、使用時に静止状態のままであるシャフト24に取り付けられているので、内側及び外側ギア20、22は相互に対して回転する。これにより、油圧油がジェロータ18によって第1の導管30から第2の導管32内へ注入される。
図3で概略的に示されているように、ホースを伸ばすプロセス中、油圧油は第2の導管32の終端部38からバルブ構成34を介して第1の導管30の終端部36へ流れる。これが発生すると、流量制御弁42が油圧油に与える抵抗により、油圧油の大部分は第1の内部導管44及び逆止弁40を通って流れる。このため、油圧油はバルブ構成34を通って比較的制限されずに流れるので、ユーザは容易にホースを伸ばすことができる。
【0046】
[0045] ユーザがホースの使用を終了し、ホースを巻き取り器16に収納したい場合、ユーザはホースの端部をゆっくり巻き取り器16の方へ移動させるか、又はホース全体から手を放せばよい。好ましくは、巻き取り器16はばね駆動格納機構のような格納機構を組み込んでおり、これはドラム14を反対方向に回転させることで自動的にホースを格納する。この格納プロセス中、油圧油は第2の導管32からジェロータ18を介して第1の導管30へ注入される。
図3に示されているように、油圧油は同時に第1の導管30の終端部36からバルブ構成34を介して第2の導管32の終端部38内へ流れる。これが発生すると、逆止弁40は第1の内部導管44又は逆止弁40を介してこの方向に油圧油を流さない(又は、無視できる程度の量の油圧油のみをこの方向に流す)ので、油圧油の大部分は第2の内部導管46及び流量制御弁42を通って流れる。
【0047】
[0046] 従って、流量制御弁42により、ホース格納時にバルブ構成34を通る油圧油の流れに対してある程度の抵抗が与えられる。これによって、ドラム14の最大回転速度、拡大解釈すると、ホースを巻き取り器16に戻すことができる最大速度を決定する制動力が与えられる。与えられる抵抗の大きさは、ホースのほぼ一定の格納速度のため、格納機構によってジェロータ18に加わるトルクに比例するという利点がある。ホースの加速は効果的に排除され、格納プロセス全体を通して格納速度は実質的に一定のままである。流量制御弁42は、第2の内部導管46を通る流れを完全に抑制し、ホースの格納を防ぐロックとして作用することが可能である。
【0048】
[0047] ばね駆動格納機構のようないくつかの巻き取り器の格納機構は、本質的に可変格納速度を有し得る。例えば巻き取り器のドラムは、ホースを巻き取り器に格納する際に重くなると共に回転がゆっくりになる場合がある。更に、ばね駆動格納機構は、ばねの伸長又は収縮の量に応じて格納の速度が速くなるか又は遅くなる場合がある。圧力補償器240を含む例示的な実施形態は、そのような可変格納速度及び格納機構を有するドラムに一定の流量及び格納速度を与えるよう有利に適合させることができる。
【0049】
[0048] 格納プロセス中に加えられる制動力の大きさは、ブレーキシステム10の1つ以上の特徴部(features)及びコンポーネントによって単独で又はそれらの組み合わせで決定できる。例えば制動力は、流量制御弁42、入口及び出口オリフィス26、28のサイズ、第1及び第2の導管30、32の直径、第1及び第2の内部導管36、38の直径、及び/又は油圧油の粘度によって、決定することができる。
【0050】
[0049] ブレーキシステム10は、ホース又はケーブルを制御された速度及びやり方で自動的に巻き取り器に格納できるという利点がある。
【0051】
[0050] 更に、ブレーキシステム10は内蔵型(self-contained)筐体12を含むので、ブレーキシステム10は、ブレーキシステムを含まない従来のホース又はケーブルの巻き取り器16に組み込むことができるという利点がある。
【0052】
[0051] 更に、ブレーキシステム10のジェロータ18は、最少数のコンポーネントで構成され、コンパクトなサイズであるという利点がある。従ってジェロータ18は、ロバストで、信頼性が高く、製造の費用対効果が高く、更に、多種多様なサイズ、形状、及び構成のホース巻き取り器に適合させることができる。
【0053】
[0052] 本発明の実施形態は、ホース及びケーブルを自動的に巻き取り器に格納できる速度を制御するために有用なブレーキシステムを提供する。これは、大型の産業用ホース巻き取り器及び国内向けに使用される小型のホース巻き取り器を含む。
【0054】
[0053] 本明細書の目的のため、「備えている(comprising)」という言葉は、「~を含むがそれに限定されない(including but not limited to)」を意味し、「備える(comprises)」という言葉はこれに対応する意味を有する。
【0055】
[0054] 上述の実施形態は一例としてのみ記載されたものであり、以下の特許請求の範囲内で変更が可能である。