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特許7314137スパークプラグおよびスパークプラグを製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】スパークプラグおよびスパークプラグを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/20 20060101AFI20230718BHJP
【FI】
H01T13/20 E
H01T13/20 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020531628
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 AT2018060316
(87)【国際公開番号】W WO2020124103
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】504344576
【氏名又は名称】インニオ ジェンバッハー ゲーエムベーハー アンド コー オーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・グラープナー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・クラウスナー
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート・ラングセンレーナー
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-045643(JP,A)
【文献】特開平02-258186(JP,A)
【文献】特開2013-58482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 7/00 - 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関用のスパークプラグ(1)を製造する方法であって、
スパークプラグの少なくとも2つの構成要素間の溶接継手にレーザビーム(8)を向け、
レーザビーム(8)により前記溶接継手の表面を溶融して第1の溶融材料を形成し、
レーザビーム(8)により粉末(5)を溶融して第2の溶融材料を形成し、
前記第1および第2の溶融材料を接続して固化させて、少なくとも前記溶接継手の表面に沿って被処理領域を形成して前記溶接継手を保護し、
前記被処理領域は耐高温腐食性および/または耐酸化性を向上させ、粉末(5)は、耐高温腐食性および/または耐酸化性の金属粉末を含み、前記金属粉末は、耐食性ニッケル粉末またはセラミック材料を含有する金属粉末を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記スパークプラグの電極の部材が、少なくとも前記2つの構成要素として用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電極の部材が中心電極担体(3)および貴金属体(2、2’)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記貴金属体(2、2’)が段部(4)を形成するように前記中心電極担体(3)と接続される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記段部(4)が前記中心電極担体(3)の端部領域に加工成形され、および/または、前記貴金属体(2、2’)が段部(4)を残して前記中心電極担体(3)上に配置される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
凹部(14)を粉体(5)の第2の溶融材料で少なくとも部分的に充填して充填部を形成する、請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1および第2の溶融材料を接続して固化したのち、前記充填部を部分的に除去する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
1つ以上のカバー層(6)が少なくとも前記被処理領域(7)の上および/または下に配置される、請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記被処理領域(19)は前記被処理領域(19)のすぐ隣の未処理領域(7)を除外する、請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記レーザビーム(8)のデフォーカスされたビーム部分が前記溶接継手に向けられる、請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記粉末(5)は、前記溶接継手から距離をおいて前記レーザビーム(8)に導入される、請求項1乃至10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
内燃機関用のスパークプラグ(1)であって、
溶接継手を介して接合されている前記スパークプラグ(1)の少なくとも2つの構成要素であり、前記溶接継手が第1の材料を含む2つの構成要素と、
少なくとも前記溶接継手の被処理領域(19)であって、前記被処理領域が、前記溶接継手の前記第1の材料と前記第1の材料と異なる第2の材料とを含む合金を有し、前記被処理領域(19)が前記溶接継手を保護することを特徴とする、スパークプラグ。
【請求項13】
前記溶接継手を介して接合された前記少なくとも2つの構成要素は前記スパークプラグ(1)の電極の部材であり、前記電極の部材が電極担体および前記溶接継手を介して前記電極担体と接続された貴金属体(2)を含む、請求項12に記載のスパークプラグ。
【請求項14】
前記被処理領域(19)は前記被処理領域(19)のすぐ隣の未処理領域(7)を除外し、前記未処理領域は前記電極のスパーク領域(9)の隣に配置される、請求項13に記載のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の特徴を有する内燃機関用のスパークプラグを製造する方法、および請求項13の前提部の特徴を有する内燃機関用のスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
概してスパークプラグは、スパークプラグの長手軸に沿って中心に配置された中心電極と、この中心電極から径方向に離間した少なくとも1つの接地電極とを有する。中心電極と少なくとも1つの接地電極との間には、中心電極と少なくとも1つの接地電極とが互いに向き合う領域(スパーク領域)間にスパークギャップが形成される。
【0003】
中心電極および/または少なくとも1つの接地電極を少なくとも2部品で形成することが知られており、各スパーク領域は、接地電極担体または中心電極担体上に配置された貴金属体によって形成される。それぞれの貴金属体は、溶接継手を介して接地電極担体または中心電極担体と接続される。そのようなスパークプラグは、例えばEP0859436A1またはEP3068001A1から読み取れる。
【0004】
概してスパークプラグの製造は、例えばレーザ溶接法で行われる。
【0005】
スパークプラグは、内燃機関の運転中、高温と機械的圧力にさらされ、そのことが時間の経過とともにスパークプラグのスパークギャップにおける電極材料の除去、そしてそれによる寿命の低下をもたらす。従来技術から知られたスパークプラグのさらに別の欠点は、スパークプラグピンおよび貴金属体の、燃焼室に面する(スパーク側)端面もしくは先端面の領域における、高温腐食または酸化によって引き起こされる変化である。
【0006】
従来技術においては、スパークプラグを可能な限り燃焼室の外側に配置する努力がなされたが、そうすると、燃焼室内でのスパークプラグの放電位置の遠さによっては燃料を十分に点火することができないという欠点を伴う。
【0007】
従来技術のさらに別の方策は、スパークプラグの構成要素に導入される熱量を可能な限り迅速かつ完全に(多くの場合、スパークプラグスリーブを用いて)シリンダヘッドに導入することである。この目的で、中心電極担体が、例えば銅などの伝導性の良い材料からなる芯を有することが多い。しかしながら、中心電極担体を構成する(たいていの場合、セラミックから製造されている)絶縁体と、スパークプラグハウジングとの間の接触領域の面積が非常に小さく、そのため、中心電極担体の端面の領域の熱が上述の問題を回避するようには放出されないということが問題になる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の課題は、好ましくは高温腐食および/または酸化を最小限に抑えることにより寿命を延ばす、概して内燃機関用のスパークプラグを製造する方法、および内燃機関用のスパークプラグを提供することである。
【0009】
上記課題は、請求項1の特徴を有する内燃機関用のスパークプラグを製造する方法、および請求項13の特徴を有する内燃機関用のスパークプラグによって解決される。
【0010】
本発明により提供される方法によれば、(好ましくはレーザ溶接により作製される)溶接継手の、および場合によっては溶接継手に隣接する領域の選択された材料特性を改善するために、溶接継手に、および場合によっては溶接継手に隣接する領域にレーザビームを向けることと、レーザビームにより表面が溶融された溶接継手に、選択された材料特性を改善する粉末を導入することにより、粉末が溶け、溶けた粉末が溶接継手の、および場合によっては溶接継手に隣接する領域の表面の溶融された混合組織(Mischgefuge、uはウムラウト)と結合することによって、改善された材料特性を有する被処理(合金化)領域が生じる。このため、被処理領域が溶接継目の領域、および場合によっては溶接継目に隣接する領域における高温腐食を防止し、かつ被処理領域の酸化挙動が未処理の溶接継目の酸化挙動よりも好適であることから、内燃機関の運転時に燃焼室内に突出する溶接継手の溶接継目が被処理領域によって保護される。
【0011】
(好ましくは本発明による方法で製造される)本発明によるスパークプラグに関しては、(好ましくはレーザ溶接により作製される)溶接継手の領域、および場合によっては溶接継手に隣接する領域に、溶接継手の領域、および場合によっては溶接継手に隣接する領域を溶融させ、粉末を導入することによって生成された合金化領域が設けられている。合金化領域は、溶接継手の領域、および場合によっては溶接継手に隣接する領域を高温腐食から守る。したがって、被処理領域の酸化挙動は、未処理の溶接継手の酸化挙動よりも好適である。
【0012】
溶接継手は、溶接継目の形で設けられていてもよい。溶接継目がすみ肉であることが好ましい。
【0013】
本発明の有利な実施形態は従属請求項によって規定されている。
【0014】
本発明により提供される方法の一実施例では、スパークプラグの電極の部材が、少なくとも1つの溶接継手を介して接合された2つの構成要素として用いられ、好ましくは電極担体、および少なくとも1つの溶接継手を介して電極担体と接続された貴金属体の形をとる。
【0015】
本発明により提供される方法の一実施例では、電極担体として、好ましくはスパークプラグピンの形状の中心電極担体が使用される。さらに好ましくは、少なくとも1つの溶接継手の作製前に、段部を形成するように、貴金属体が中心電極担体と接続される。
【0016】
さらに、段部が中心電極担体の端部領域もしくは端面の領域に加工成形され、および/または貴金属体が段部を形成するように中心電極担体上に載置される。上述の段部が形成されているので、取り付けられた貴金属体が中心電極担体の端面から突出することにより、(実質的に窪んだ)凹部が形成される。
【0017】
さらに、好ましくは凹部に粉末が導入され、その量は好ましくは溶融され再び固化した粉末によって(窪んだ)凹部が満たされるか、または覆われる量である。
【0018】
溶融され再び固化した粉末の突出する可能性がある領域が材料除去によって(例えば切削、旋削、または研削によって)取り除かれると有利であり得る。材料除去後に表面の平滑化を行ってもよい。
【0019】
本発明により提供される方法の一実施例では、少なくとも被処理領域、および好ましくは被処理領域のすぐ隣に配置された別の、そして未処理の領域(好ましくは電極のスパーク領域のすぐ隣に、スパーク領域に対して直角に配置される)が、1つのカバー層、または好ましくは異なった材料からなる積層された複数のカバー層で被覆され、および/または前記被処理領域の下にかかるカバー層の少なくとも1層が配置される。
【0020】
本発明により提供される方法の一実施例では、好ましくは電極のスパーク領域の隣に(スパーク領域に対して直角に)配置された領域の形で存在する未処理領域が被処理領域のすぐ隣に残される。このようにして、合金化の悪影響が電極、殊に中心電極の耐用期間に及ぶのを防ぐことができる。
【0021】
本発明により提供される方法の一実施例では、レーザビームの収束または発散された(一般に:デフォーカスされた)ビーム部分が溶接継手、および場合によっては溶接継手の周囲の領域に向けられる。その結果、合金化を行う際に、レーザビームの焦点が溶接継手の下方または上方にある。
【0022】
本発明により提供される方法の一実施例では、改善される材料特性として、耐高温腐食性および/または耐酸化性の向上が選択され、粉末として、異なるものであってもよい材料成分を有する耐高温腐食性および/または耐酸化性の金属粉末が使用される。好ましくは、粉末として、耐食性ニッケル粉末、またはセラミック材料を含む金属粉末が使用される。追加の、またはこれに代わる材料特性は、例えば改善された温度耐性および/またはより高い熱伝導性であってもよい。
【0023】
本発明により提供される方法の一実施例では、粉末として、耐食性ニッケル粉末(例えばInconel 600またはInconel 625という商品名で入手可能)、またはセラミック材料を含有する金属粉末が使用される。
【0024】
本発明により提供される方法の一実施例では、粉末は、溶接継手、および/または溶接継手の周囲の領域から距離をおいてレーザビームに、好ましくは吹き込まれることによって導入される。
【0025】
本発明により提供される方法の一実施例では、方法が保護雰囲気(例えばアルゴン)中で実施される。
【0026】
本発明により提供されるスパークプラグの一実施例は、少なくとも1つの溶接継手を介して接合された構成要素が電極の部材であり、好ましくは電極担体であって特に好ましくは中心電極担体、および少なくとも1つの溶接継手を介して電極担体と接続された貴金属体の形をとる。本開示において、貴金属体は、貴金属(好ましくは貴金属を有する合金)から成る物体であるか、または貴金属で被覆された物体である。
【0027】
本件において、好ましくは合金化された領域のすぐ隣に未処理領域が残され、当該未処理領域は、好ましくは電極のスパーク領域の隣に(スパーク領域に対して直角に)配置された領域の形で存在する。このようにして、合金化の悪影響が電極の耐用期間に及ぶのを防ぐことができる。
【0028】
1つまたは2つのスパーク領域それぞれがスパークギャップを形成する。好ましくは、中心電極のスパーク領域のすぐ隣で、かつ中心電極のスパーク領域に対して実質的に直角である領域が未処理のままにしておかれる。
【0029】
貴金属体が段部を形成するように中心電極担体と接続されていてもよい。この場合、好ましくは、段部が中心電極担体の端部領域に加工成形され、および/または貴金属体が段部を形成するように中心電極担体上に載置される。
【0030】
凹部が設けられ、凹部には粉末が導入され、その量は溶融され再び固化した粉末によって凹部が満たされるか、または覆われる量であってもよい。
【0031】
この場合、溶融され再び固化した粉末の突出する可能性がある領域が材料除去によって取り除かれると有利であり、それにより貴金属体が段部のない、かつスパーク領域に対して直角に配された表面を有するようにすると有利であり得る。
【0032】
好ましくは、本発明により提供されるスパークプラグの一実施例では、粉末が耐食性ニッケル粉末(例えばInconel 600またはInconel 625という商品名で入手可能)、またはセラミック材料を含有する金属粉末である。
【0033】
本発明により提供されるスパークプラグの一実施例では、少なくとも被処理領域、および好ましくは被処理領域のすぐ隣に配置された別の、そして未処理の領域(好ましくは電極のスパーク領域の隣に、スパーク領域に対して直角に配置される)が、1つのカバー層、または好ましくは異なった材料からなる積層された複数のカバー層で被覆され、および/または前記被処理領域の下にかかるカバー層の少なくとも1つが配置される。これに代えて、またはこれに加えて、被処理領域の下に少かかるカバー層がなくとも1層設けられていてもよい(その場合、当然のことながら被処理領域の作製前に(単数または複数の)カバー層が付着される)。
【0034】
本発明により提供されるスパークプラグの一実施例では、スパークプラグは、リングの、好ましくはディスク状円環の形に形成された接地電極を有し(いわゆるリング電極)、リングの内周面によってスパーク領域が形成される。接地電極は、スパーク領域に対して直角に延びる表面に少なくとも1つの、好ましくは複数の貫通開口部を有していてもよい。スパークプラグの作動時に、燃料空気混合物が(単数または複数の)貫通開口部を通ってスパークプラグに流入することができる。
【0035】
本発明により提供されるスパークプラグの一実施例では、合金化領域が改善された耐高温腐食性および/または耐酸化性を有する。追加の、またはこれに代わる改善された特性は、改善された温度耐性および/またはより高い熱伝導性であってもよい。
【0036】
接地電極が、接地電極担体(接地電極担体は、好ましくは溶接継手を介してスパークプラグハウジングと接続されていてもよい)、および接地電極と(好ましくは溶接継手を介して)接続された貴金属体によって形成されていることが好ましい。かかる接地電極が先行する段落で述べた特徴を備えている場合、リングに関連してなされた説明が接地電極の貴金属体に当てはまる。貴金属体は、接地電極担体の段部に、または接地電極担体の表面領域に配置され、接地電極担体と接続されていてもよい。
【0037】
接地電極および中心電極は、上から見て円環状もしくは円形状に形成されていてよいが、どちらも或る多角形の周縁状であってもよい。
【0038】
代替的に、または追加的に、本発明による方法を接地電極に対し、好ましくは接地電極担体と貴金属体との間の溶接継手に対して、使用することができる。同じことが、記載された実施例、および本発明によるスパークプラグおよび記載されたスパークプラグの実施例についても当てはまる。
【0039】
更に言及すると、本発明はリング電極の形の中心電極を有するスパークプラグに限定されるものではなく、少なくとも1つのフック電極等の任意の形状に設計された中心電極を有するスパークプラグにも使用可能である。
【0040】
本発明の実施例について図をもとにして説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明にしたがって製造されたスパークプラグを示す図である。
図2a図1のスパークプラグの合金化前を示す模式的断面図である。
図2b図1のスパークプラグの合金化後を示す模式的断面図である。
図2c図1のスパークプラグの合金化後を示す模式的断面図である。
図2d図1のスパークプラグの合金化後を示す等角断面図である。
図3】粉末の塗布、およびそれと同時の溶融を示す図である。
図4a図2aに対応する断面図である。
図4b図2aに対応する断面図の写真である。
図5a】合金化後および研削工程前を示す断面図である。
図5b】合金化後および研削工程前を示す写真である。
図6a】本発明の別の実施例を示す断面図である。
図6b】本発明の別の実施例を示す詳細図である。
図7a】本発明による方法のステップを示す図である。
図7b】本発明による方法のステップを示す図である。
図7c】本発明による方法のステップを示す図である。
図7d】本発明による方法のステップを示す図である。
図7e】本発明による方法のステップを示す図である。
図8】本発明の別の実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、本発明による方法で製造されたスパークプラグ1の写真を示す。
【0043】
スパークプラグ1は、スパーク側の領域にねじ山13を備えているスパークプラグハウジング12を有している。中心電極と、リング電極として形成された接地電極との間に環状のスパークギャップ15が形成されている。接地電極は、内燃機関におけるスパークプラグ1の作動時に燃焼ガスの通過を可能にする、ここでは例示的に4つの開口部11を備えている。
【0044】
図1に示されるスパークプラグ1の構造が図2a~図2dに見て取れ、図2aは、本発明による方法の中間製造物を示す。
【0045】
スパークプラグ1は、スパークプラグハウジング12内に(ねじ山13は図示せず)、知られているようにセラミック体16を有し、このセラミック体の中心開口部内に棒状体が配置され、この棒状体のスパーク側の端が中心電極の電極担体(中心電極担体3)を成す。棒状体は、放熱性を向上させるために、図示されるように熱伝導性の良い材料(例えば銅)からなる芯17を有していてもよい。セラミック体16の肩部とスパークプラグハウジング12との間に配置されたシール18を介して、電極から加わった熱がスパークプラグハウジング12に導出される。
【0046】
中心電極担体3には、(ここではレーザ溶接により)溶接継手を介して貴金属体2が取り付けられている。貴金属体2は、ここでは円形ディスク状に形成されており、(ここではスパークプラグピンの形の)中心電極担体3の段部4の肩部に配置されている。溶接継手は段部4全体にわたって延在する。貴金属体2から中心電極担体3への遷移部に溶接継目、好ましくはすみ肉を生成するために、貴金属体2は、溶接プロセス、好ましくはレーザ溶接プロセスの前には中心電極担体3のスパーク側の端面から突出していることが好ましい。その結果、相応の領域(図2aおよび図4b)に実質的に窪んだ凹部14が生じ、この凹部は本発明による製造方法によって一部だけ、または全部が満たされる(図2b、図2c、図2d)。
【0047】
スパークプラグハウジング12には接地電極担体10が取り付けられている。この接地電極担体にはリングの形の貴金属体2’が(ここではレーザ溶接により)取り付けられている。貴金属体2、2’の互いに向き合うスパーク領域9がスパークギャップ15を画定する。
【0048】
本発明による製造方法に関する中間ステップを示す図2aで示されるものは、従来技術のスパークプラグ1に相当する。貴金属体2と中心電極担体3との間の溶接継手(および貴金属体2’と接地電極担体10との間の溶接継手)は、内燃機関におけるスパークプラグ1の作動時、燃焼ガスに無防備にさらされる。図2bにおいて、溶接継手の領域に、溶接継手の表面を溶融させ、粉末5を導入することによって生成された合金化領域が見て取れ、この合金化領域は、溶接継手自体を覆うだけでなく、この実施例では、溶接継手の隣の領域にまで、即ち、径方向視で半径が大きくなる方向にも(しかし、スパークギャップ15の隣に未処理領域7が残る)、半径が小さくなる方向にも(ここでは中心領域全体にわたって)延在する。したがって、図2bおよび図2dに示された中心電極は、スパークギャップ15から径方向内方に未処理領域7と、それに隣接する被処理領域19とを有する(詳細は図2cに示す)。
【0049】
接地電極担体10と接地電極の貴金属体2’との間の溶接継手に関しても(または代替的な実施例では、この溶接継手に関してのみ)、本発明の方法による溶接継手の保護のための合金化領域を設けてもよいが、本実施例では設けていない。
【0050】
図3において、合金化領域の作製が示されている。本発明によれば、これは、レーザビーム8を溶接継手に向け、選択された材料特性を改善する粉末5を、レーザビーム8により表面が溶融された溶接継手に導入することによって、粉末5を溶かし、溶けた粉末5を溶接継手の表面の溶融した混合組織と結合させることによって、改善された材料特性を有する被処理(合金化)領域を生じさせることにより行われる。
【0051】
凹部14が本発明による方法で満たされてもよい。続いて、特に図2cに見て取れる領域19に余分に付着した材料を旋削、切削、研削などによって除去することによって、図5aおよび図5bに示されるような平らな面が形成される。
【0052】
図3では、中心電極のスパーク側の領域のみが示されている。レーザビーム8のデフォーカスまたは「アウト・オブ・フォーカス」照射による(すなわち収束または発散した)ビーム部分(図3において焦点の下方)が溶接継手に向けられることが見て取れる。ここで、溶接継手の表面の上方において、粉末5がレーザビーム8の発散ビーム部分に導入されている。
【0053】
レーザの「アウト・オブ・フォーカス」照射の利点は、レーザビーム8の出力密度が比較的大きな面積に亘って均一に分布することである。同じレーザセットアップを使用しつつ、加工されるべき面に対してフォーカスの距離を変化させることによって入熱を変化させられることがわかった。必要なのは単一のレーザセットアップであるため、コストを節減することができる。
【0054】
図4aは図2aに対応するように(但し、ここでは接地電極は図示されない)、スパークプラグ1のスパーク側の領域を示す模式的断面図である。スパークプラグピンの上面の写真(図4b)には、中心電極担体3上に好ましくはプレスされて載置された貴金属体2のレーザ溶接プロセス後が見て取れる。溶接継手は、実質的にすみ肉溶接によって形成される。さらに、溶接プロセスによって凹部14が形成されることが見て取れる。
【0055】
図5aは、スパークプラグ1のスパーク側の領域を示す模式的断面図である。未処理領域7および被処理領域19が互いに面一に隣接するように、レーザにより固化された粉末5の突出部が材料除去(ここでは研削)によって除去されている。
【0056】
別の実施例では、図6aおよび図6b(図6aの詳細図)に示されるように、少なくとも被処理領域19と、好ましくはそのすぐ隣に配置された別の、そして未処理の領域7も、好ましくは異なった材料からなる積層された複数のカバー層6で被覆することができる。この被覆は、任意の知られた技術で行うことができる。
【0057】
図7a~図7eに、本発明による方法の中間製造物が示されている。
【0058】
図7aにおいて、貴金属体2が中心電極担体3の面取りされた先端部に配置され、図7bの状態になるようにレーザ溶接によって溶接される。図7cへ移行する際に、上述したように合金化領域が生成された。また、図7dへ移行する際に、粉末5の突出部が除去された。図7eに示す変形形態では、合金化領域上に積層された複数のカバー層6が配置されている。
【0059】
図8の実施例では、貴金属体2と一緒に中心電極担体3の先端部のみが示されている。ここでは例示的に2つのカバー層6が、貴金属体2の全体、そして被処理領域19をも覆い、スパーク領域9にまで延在する。図示とは異なり2層より多いカバー層6または単一のカバー層6が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 スパークプラグ
2、2’ 貴金属体
3 中心電極担体
4 段部
5 粉末
6 カバー層
7 未処理領域
8 レーザビーム
9 スパーク領域
10 接地電極担体
11 接地電極の貴金属体における開口部
12 スパークプラグハウジング
13 ねじ山
14 凹部
15 スパークギャップ
16 セラミック体
17 芯
18 シール
19 被処理領域
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e
図8