(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】血管内血液ポンプ内の血流を推定する方法、血管内血液ポンプ内の血流推定に用いる装置、及びコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
A61M 60/538 20210101AFI20230718BHJP
A61M 60/205 20210101ALI20230718BHJP
A61M 60/122 20210101ALI20230718BHJP
A61M 60/546 20210101ALI20230718BHJP
【FI】
A61M60/538
A61M60/205
A61M60/122
A61M60/546
(21)【出願番号】P 2020538046
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(86)【国際出願番号】 EP2019050339
(87)【国際公開番号】W WO2019137911
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-11-18
(32)【優先日】2018-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ニックス クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ベンシュ シュテファン
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-296528(JP,A)
【文献】特開平8-270595(JP,A)
【文献】国際公開第2017/137578(WO,A1)
【文献】特表2004-515278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/00-90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内血液ポンプ(12,13)内の血流
を推定
する方法であって、
-試験環境内で取得された基準データの組から基準データを抽出するステップ(100)であって、前記基準データの組が、第1のポンプ負荷を含む異なるポンプ負荷の下で少なくとも1個のモーター速度(N)に対して、前記血液ポンプを駆動するモーターの基準モーター電流(I)及び前記血液ポンプを通過する血流(FL)の量の両方を含むステップと、
-前記血液ポンプ
が患者の体内に設置
されているときに、前記第1のポンプ負荷の下での少なくとも1個のモーター速度(N)に対する患者固有モーター電流を測定するステップ(101)と、
-前記第1のポンプ負荷の下での前記基準モーター電流(I)
と、前記第1のポンプ負荷の下での前記少なくとも1個のモーター速度(N)に対する患者固有モーター電流とから
、モーター電流偏
差(ΔI
)を計算するステップ(102)と、
-前記血液ポンプを通過する患者固有の血流(FL)量を推定すべくモーター電流偏
差(ΔI)を適用するステップ(103)とを含む方法。
【請求項2】
前記モーター電流偏
差(ΔI)を適用するステップ(103)が、前記モーター電流偏
差(ΔI)を少なくとも1個の基準モーター電流(I)に追加するか、又は前記少なくとも1個のモーター速度(N)に対する前記患者固有の血流(FL)を取得すべく前記モーター電流偏
差(ΔI)を少なくとも1個の測定された患者固有モーター電流から減算するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のポンプ負荷の下での前記少なくとも1個のモーター速度(N)に対する前記患者固有モーター電流を測定するステップ(101)が、前記少なくとも1個のモーター速度(N)に対する最大又は最小患者固有モーター電流を測定するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、新たなモーター電流偏
差(ΔI)を計算するステップ(102)と、前記新たなモーター電流偏
差(ΔI)を適用するステップ(103)により反復される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
各々の反復における次回の反復が所定の時間間隔で生起する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記時間間隔が一群の特徴、すなわちモーター電流の変化、血液温度の変化、パージ液体の温度の変化、血液粘度の変化、パージ液体の粘度の変化、及び血液ポンプの物理特性の変化から選択された影響を及ぼす少なくとも1個の特徴の関数として構成されている、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が複数のモーター速度(N)に対して実行される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
液体及び前記血液ポンプを用いて前記試験環境内で抽出対象の基準データを取得するステップを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記液体の温度が患者の血液温度に等しくされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記液体が血流の挙動に等しい流れの挙動を有するように選択されている、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記液体が水とグリセロールを血液の粘度に等しい粘度となる混合比率で含むことを特徴とする、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記基準データが、前記血液ポンプを駆動する前記モーターの前記基準モーター電流(I)と、前記異なるポンプ負荷の下での前記少なくとも1個のモーター速度(N)に対する、前記ポンプを通過する液流(FL)の量の少なくとも一方を測定することにより取得される、請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
血管内血液ポンプ(12,13)内の血流推定に用いる装置であって、
-試験環境内で取得された基準データの組から基準データを抽出(100)すべく適合されたインターフェースであって、前記基準データの組が第1のポンプ負荷を含む異なるポンプ負荷の下で少なくとも1個のモーター速度(N)に対して、前記血液ポンプを駆動するモーターの基準モーター電流(I)及び前記血液ポンプを通過する血流(FL)の量の両方を含むインターフェースと、
-前記血液ポンプを患者の体内に設置した後で、前記第1のポンプ負荷の下での少なくとも1個のモーター速度(N)に対する患者固有モーター電流を測定(101)すべく適合された測定部と、
-前記第1のポンプ負荷の下での前記基準モーター電流(I)
と、前記第1のポンプ負荷の下での前記少なくとも1個のモーター速度(N)に対する患者固有モーター電流
との差異として、モーター電流偏差(ΔI)を計算(102)すべく適合された計算部と、
-前記血液ポンプを通過する患者固有の血流(FL)量を推定すべくモーター電流偏
差(ΔI)を適用(103)すべく適合された推定部とを含む装置。
【請求項14】
前記血液ポンプが有線(18)駆動血液ポンプである、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
コンピュータ上に実行された際に、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法を実行すべくプログラミングされているコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、較正方法及び装置並びに血管内血液ポンプ内の血流推定への応用に関する。本発明は更に、前記方法を実行すべくプログラミングされたコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内血液ポンプは、左室補助人工心臓(LVAD)又は右室補助人工心臓(RVAD)のいずれかとして患者の心臓の機能を補助すべく用いられる。本発明に関する血管内血液ポンプは典型的に、患者の心臓内、例えば大動脈を貫通して左室内に、又は大静脈を貫通して右心室内に経皮的に挿入されるカテーテル及び当該カテーテルに取り付けられたポンピング装置を含んでいる。カテーテルは、近位部及び遠位部を有する細長い本体を有していてよく、長手軸に沿って伸長可能であり、ポンピング装置は外科医等の施術者から離れた遠位部でカテーテルに取り付けられている。ポンピング装置は典型的に、血流入口及び血流出口を有するポンプ部を含んでいる。血流入口(例:左心室における)から血流出口(例:大動脈における)への血流を生起させるべく、典型的にはインペラ又はローターが、ポンプ筐体内で血液を搬送する回転軸の回りに回転可能に支持されている。血液ポンプは、ポンプ部に隣接したポンピング装置に含まれるモーターにより、又は代替的に患者の体外のモーターにより駆動されてよく、後者の場合、モーターは可撓駆動軸、すなわちカテーテルを貫通して伸長する駆動ケーブルによりインペラ又はローターに接続されており、本明細書でケーブル駆動血液ポンプと称する。
【0003】
血液ポンプを流れる血流を推定して医療スタッフにデータを提供することは重要であり、当該データから医療スタッフはシステムの動作及び/又は患者の状態に関して特定の結論を導くことができる。特に、心臓機能を充分に補助又は代替するのに必要な血流を血液ポンプが常に配送していることを医療スタッフが確認することが重要である。
【0004】
典型的に、血液ポンプは選択されたモーター速度で動作する、すなわちインペラ又はローターは所定の毎分回転数で駆動される。モーター速度すなわち毎分回転数は必要に応じて変更可能である。所与のモーター速度で、血液ポンプを通過する血流は、血液ポンプが克服すべき圧力差に依存する。以下において、圧力差は「ポンプ負荷」とも称する。従って、最大血流量は圧力差が無い場合に生じるのに対し、圧力差が高い場合、例えば心臓拡張期に心室が血液で満たされ始めて血液ポンプが低圧の心室から高圧の大動脈内に血液をポンプで送っている場合、血流がゼロであるか又は血液ポンプを通過して逆流が生じることさえある。一心周期にわたる全ポンプ流が所望の血流量未満である場合、モーター速度は所望の血流量に達するまで相応に増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
血流を推定すべく、US7,010,954B2では血液ポンプの特定のモーター速度における血流対ポンプ負荷を示す参照表又はグラフを血液ポンプに付与することを提案している。当該参照表又はグラフは各種のモーター速度毎に付与される。このように、大動脈に配置された第1の圧力センサ及び左心室に配置された第2の圧力センサを用いる際に、血液ポンプが駆動される特定のモーター速度に対して参照表又はグラフを参照して、測定された血圧差から血液ポンプを通過する現在の血液流を判定することができる。
【0007】
ポンプ負荷、すなわち血液ポンプが克服すべき圧力差は、血流だけでなく、ポンプ負荷とは独立インペラ又ローターの毎分回転数を一定に保つために所与のモーター速度を設定点に維持するのに必要なモーター電流にもある程度影響を及ぼすことが分かっている。
【0008】
従って、各モーター速度に対して、血流とモーター電流の相関を示す参照表又はグラフを作成することが可能である。従って、本発明によれば、心室及び大動脈圧ではなくモーター電流を監視する。
【0009】
参照表又はグラフで用いるデータ、例えばモーター電流及び血流は、ポンプにより生じる流れを記録する間に所与のモーター速度及び所定のポンプ負荷の下でポンプを液体内で動作させることにより試験ベンチアセンブリ内で記録することができる。ポンプ負荷は時間経過に伴いモーター電流及び血流を記録しながら、例えばゼロ負荷(血流入口と血流出口の間に圧力差が無い、すなわち最大血流)から最大負荷(ポンプ機能無し、すなわち流れが無い)まで増大可能である。いくつかの異なるモーター速度に対してこのような参照表又はグラフを作成することが可能である。上述のように、ポンプ負荷及び流れが変化するとモーター電流が僅かに変化する。上述の手順を実行する間にモーター電流、血流、ポンプ負荷及びモーター速度が試験ベンチで測定及び記録されるため、モーター電流に基づいて所与のモーター速度及びポンプ負荷の下での血流を判定することができる。
【0010】
血液ポンプの設計及び幾分かの損失に応じて、モーター電流は、流れが増大するにつれて、又はポンプ負荷が減少するにつれて増減し得る。例えば、特定の血液ポンプにおいて、ポンプ負荷が増大したならばモーター電流は増大する、又は換言すればモーター電流の増大は血流の減少を示す。対照的に、他の血液ポンプでは、ポンプ負荷が増大したならばモーター電流は減少する、又は換言すればモーター電流の増大はポンプを通過する血流の増大を示す場合がある。
【0011】
血液ポンプが患者の体内に植設されたならば、殆ど想定外の損失が生じる。モーターパラメータ及びポンプパラメータ等のいくつかのパラメータがモーター電流と血流との関係に影響を及ぼし得る。また、ポンプを通過する血液及び/又はカテーテルを介して患者の血液内に投与されたパージ液の粘度が影響を及ぼし得る。また、摩擦損失、特にケーブル駆動血液ポンプのカテーテル内の可撓駆動軸の摩擦が影響を及ぼす場合があり、そのような摩擦は、患者の血管系を通過するカテーテルの曲げ曲率に応じて上下し得る。従って、血液ポンプが患者の体内に植設されたならば、所与のモーター速度で測定されたモーター電流に基づいて血流を確実に判定することは不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、医療スタッフが患者の体内で血管内血液ポンプを動作させた際に血流の監視を補助する血管内血液ポンプの血流の推定に用いる方法及び装置を提供することが本発明の特定の目的である。本方法を実行して対応する装置を動作させるべくプログラミングされた各々のコンピュータプログラム製品を提供することも本発明の更なる目的である。
【0013】
上述の目的は独立請求項の特徴により解決される。本発明の好適な実施形態は従属請求項に記述している。
【0014】
従って、血管内血液ポンプ内の血流を推定する方法であって、
-(a)試験環境内で取得された基準データであって第1のポンプ負荷を含む異なるポンプ負荷の下で少なくとも1個のモーター速度に対して、当該血液ポンプを駆動するモーターの基準モーター電流及び当該血液ポンプを通過する血流の量の両方を含む前記データを抽出するステップと、
-(b)当該ポンプが患者の体内に設置されているときに、前記第1のポンプ負荷の下での少なくとも1個のモーター速度に対する患者固有モーター電流を測定するステップと、
-(c)その後、第1のポンプ負荷の下での基準モーター電流と、第1のポンプ負荷の下での少なくとも1個のモーター速度に対する患者固有モーター電流とから、モーター電流偏差を計算するステップと、
-(d)最後に、血液ポンプを通過する患者固有の血流量を推定すべくモーター電流偏差を適用するステップとを含む方法を提案する。
【0015】
「モーター速度」、「速度レベル」又は「モーター速度レベル」は、ポンプのローター又はインペラの回転速度と相関を有し、例えば毎分回転数で指定可能なモーターの回転速度を指す。
【0016】
「ポンプ負荷」は、ポンプを介して液体をポンピングする際に克服すべき液体の圧力差として定義される。換言すれば、「ポンプ負荷」は、ポンプの血流入口と血流出口の圧力差として理解できる。従って、上述のように、所与のモーター速度でポンプが動作している場合、ゼロポンプ負荷の下で流れが最大であり、最大ポンプ負荷の下で流れがゼロである。
【0017】
「液流」、「血流」、「流れ」及び「血流量」は、例えばポンピング装置を介して単位時間当たりに搬送される液体又は血液の体積を指す。従って、流れはリットル毎分で測定することができる。
【0018】
基準モーター電流等の「基準データ」は試験環境内で得られるデータを指す。従って、患者の体内に設置されたポンプを通過する血流を推定するために、例えば試験環境内で以前に取得された参照表又はグラフとして基準データを抽出する。
【0019】
試験環境は、人の血管又は器官をシミュレート可能であり、従って人体内での血液ポンプの動作に際してモーター電流偏差等の偏差を低く保つべく人体内における血液ポンプの動作を良好にシミュレートすることができる。
【0020】
本発明は、ケーブル駆動型の血管内血液ポンプに特に適している。カテーテル内でのケーブルの摩擦により生じる損失は、患者毎に異なり得る曲げ数及び急激な曲げ半径に応じて増大する。従って、試験環境内で測定された基準モーター電流と、実使用時に生じる対応する特定のモーター電流との差異は、特にケーブル駆動血液ポンプにおいて患者毎に異なり得る。
【0021】
前記基準データは、ポンプを駆動するモーターの基準モーター電流及び所与のモーター速度での特定の基準モーター電流で生じる液流の量を含んでいる。これらのデータを異なるポンプ負荷に対して取得する理由は、上述のように、所与のモーター速度を維持するために、ポンプ負荷の変化に応じてモーター電流が調整されるからであり、更に、定常駆動されるポンプを通過する液流がポンプ負荷の変化に応じて変化するからである。所与のモーター速度に対して取得されて、液流対モーター電流の相関を示す基準データを参照表又はグラフとして有利に提示している。上述のように、血液ポンプの設計に応じて、モーター電流は血流量の増大に応じて、又はポンプ負荷の減少に応じて増減し得る。
【0022】
このようなグラフ又は参照表は複数のモーター速度、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上のモーター速度に対して作成されてよい。他のモーター速度に対するモーター電流値と液流値のペアが、基準データが得られている次に高いモーター速度及び次に低いモーター速度のモーター電流値と液流値のペアに基づいて内挿されていてよい。いずれの場合も、各々の所与のモーター速度に対する異なるポンプ負荷の下で得られたモーター電流値と液流値のペアは、特定の「第1の」ポンプ負荷に対して少なくとも第1のモーター電流値と液流値のペアを含んでいる。これは、患者の体内に血液ポンプを設置した後で、患者固有モーター電流が前記第1のポンプ負荷の下で各々のモーター速度に対して測定される次のステップにおいて重要である。2個のモーター電流、すなわち基準モーター電流及び患者固有モーター電流は、同じポンプ負荷、すなわち第1のポンプ負荷の下で同じモーター速度で取得されたため、互いに比較可能である。従って、前記特定の第1のポンプ負荷の下での前記モーター速度に対する基準モーター電流及び患者固有モーター電流からモーター電流偏差を計算することができ、他のポンプ負荷及び他のモーター速度に対して同じ処理を実行してもよい。次いでこれらのモーター電流偏差を、血液ポンプを通過する患者固有の血流量を推定する更なる処理に用いてもよい。
【0023】
例えば、モーター電流偏差を用いて、本来の基準データの組に基づいて、患者固有の基準データの組を作成することができる。上述のように、本来の基準データの組は、試験環境における異なるモーター速度に対するモーター電流と液流の依存関係を例えばグラフ又は参照表の形式で示す。モーター電流偏差を全ての基準モーター電流値に適用して患者に植設された血液ポンプを通過する血流を推定することができる。
【0024】
計算されたモーター電流偏差を本来の基準データの組に適用する場合、計算されたモーター電流偏差を、全ての液流及び全てのモーター速度に対する本来の基準モーター電流に単に加算することによりグラフ又は参照表における対応図をずらして、基準データの患者固有の組における液流が患者内に設置された血液ポンプを通過する実際の血流を示すようにできる。
【0025】
1個の第1のモーター速度での1個の第1のポンプ負荷に対するモーター電流偏差が、当該偏差が計算された第1のモーター速度での全てのポンプ負荷に対してほぼ同じであると仮定してよい。結果的に、モーター速度毎に1個のモーター電流偏差を計算して、当該特定のモーター速度に対する本来の基準データの組の複数の基準モーター電流に、最も好適には当該特定のモーター速度に対する本来の基準データの組の全ての基準モーター電流に加算して当該モーター速度に対する完全な患者固有のグラフ又は参照表を確定すすることができる。
【0026】
更に、一特定のモーター電流に対して計算された同一(単一)モーター電流偏差はまた、当該値が計算された特定のモーター速度とは別のモーター速度に対する本来の基準データの組における基準モーター電流に追加できるため、全体として1個のモーター電流偏差だけを計算すればよい。
【0027】
しかし、より好適には、基準データが基準データの組で利用できる各々のモーター速度に対して単一のモーター電流偏差が個別に計算されるが、その理由は、いくつかの血液ポンプにおいて異なるモーター速度間でモーター電流偏差が顕著に異なり得るからである。
【0028】
代替的に、基準データの患者固有の組を構築するのではなく、1個以上の単一モーター電流偏差を上述のように保存しておいて、患者体内における血液ポンプの使用で測定されている任意の患者固有モーター電流から導くことができる。この場合も同様に、全てのモーター速度に対して、1個(単一)のモーター電流偏差が全ての参照されたモーター速度に適用されたならば、各々のモーター速度に対する患者固有の血流量が得られて医療スタッフに提供される。
【0029】
最も重要な点は、前記同一の「第1の」ポンプ負荷の下での患者固有モーター電流と、対応する基準モーター電流とを相関させることが重要であるため、患者固有モーター電流を測定する適当な「第1の」ポンプ負荷を識別することである。
【0030】
圧力センサ及び/又はEKGの支援を受けて心臓周期における特定の瞬間を識別することが一般に可能であるため、所与のモーター速度で測定された患者固有モーター電流のタイミングと、基準データの組の対応する基準モーター電流とを相関させることができるようになる。
【0031】
しかし、本発明の特に好適な実施形態によれば、モーター電流偏差を決定する患者固有モーター電流はモーター電流値により明らかに識別可能なポンプ負荷の下で測定されるため、追加的なセンサは一切不要である。より具体的には、以下の点を考慮する。所与のモーター速度で、ポンプを通過する最大血流量は最小負荷、又は換言すれば血流入口と血流出口の間の圧力差がゼロ、すなわち心臓弁が開いている場合に生じる。後述するように、心臓弁が開いた状態で、モーター電流偏差を決定する患者固有モーター電流が測定される好適なポンプ負荷を示す。
【0032】
より具体的には、好適な実施形態において、血流入口が心室、例えば左心室に配置されるように、及び血流出口が患者の血管、例えば大動脈に配置されるように、血液ポンプが患者の血管系で配置されており、心室及び血管は自然弁、例えば大動脈弁により分離されている。例えば心収縮期に弁が開いたならば、血流入口及び血流出口は圧力により分離されておらず、従って両者の圧力差はゼロである。血流入口と血流出口の圧力差がゼロである当該時点で、ポンプを通過する血流は選択されたモーター速度で最大レベルにあり、当該モーター速度レベルでのモーター電流は最大又は最小のいずれかに到達する。従って、所与のモーター速度に対する最大血流量は、血液ポンプの設計に応じて最小又は最大モーター電流で生じる。従って、血液ポンプの設計に応じて、最大モーター電流又は最小モーター電流のいずれかが心臓弁の開いた状態を示すものと解釈でき、開いた状態は上述のように、モーター電流偏差を決定するための患者固有モーター電流が測定される好適なポンプ負荷を示す。
【0033】
基準データの組から、心臓弁の開いた状態(すなわち血液ポンプの最大血流)が最大モーター電流値又は最小モーター電流値により、すなわち参照表又はグラフにおける流れ曲線の傾きに応じて、識別可能であるか否かが明らかである。換言すれば:流れ曲線の傾きが負ならば最小モーター電流は心臓弁、例えば大動脈弁の開いた状態及び最大血流を示し、流れ曲線の傾きが正ならば最大モーター電流は心臓弁、例えば大動脈弁の開いた状態及び最大血流を示す。
【0034】
従って、患者固有モーター電流が測定される「第1のポンプ負荷」は好適には、心臓弁、例えば大動脈弁が開いているときのポンプ負荷である。
【0035】
従って、前記第1のポンプ負荷の下での少なくとも1個のモーター速度に対する患者固有モーター電流を測定するステップは好適には特定のモーター速度に対する最大又は最小患者固有モーター電流を測定するステップを含んでいる。
【0036】
ポンプの効率は、ポンプが患者の体内にある間、各種の大いに未知の理由によりパラメータを変更することにより更に影響を受ける場合がある。従って、以前に計算された患者固有モーター電流偏差に対して、しばらく後で実際のモーター電流偏差を再び計算するという意味で上述の方法を反復することが好適である。換言すれば、モーター電流偏差が、以前に計算されたモーター電流偏差と比較して時間経過に伴い変化する場合、以前に計算されたモーター電流偏差を実際のモーター電流偏差で代替する。
【0037】
例えば、少なくとも1個のモーター速度に対する実際の患者固有モーター電流を測定して、更新された基準モーター電流として保存されていた以前に測定された患者固有モーター電流からの差異を計算することができる。従って、以前に測定された患者固有モーター電流又は以前に更新された基準モーター電流は、実際の患者固有モーター電流に近づくよう(更に)更新することができる。
【0038】
好適には、各々の次の反復は所定の時間間隔で生起する。これがもたらす利点は、血液ポンプがより長時間動作される場合に、たとえ血液、患者、パージ液体又はシステムの特定の特性が変化したとしても特定の量の血流が維持されるようにモーター電流を調整できることである。例えば、このような時間間隔は、秒、分、時間、又は日単位で指定されてよい。各々の時間間隔は医療スタッフにより設定されてよい。
【0039】
追加的又は代替的に、次の反復は、影響を及ぼす少なくとも1個の特徴、例えばモーター電流、温度又は血液及び/又はパージ液の粘度変化、或いは血液ポンプの物理特性、例えば血液ポンプのモーター温度等の変化により生起する。これらの特徴の一つ以上の顕著な変化が観察された都度、モーター電流偏差の計算を反復してよい。
【0040】
試験環境における基準データの抽出に関して、好適には特定の種類の血液ポンプ及び液体を用いて実行され、液体は必ずしも血液でなくてよい。いずれの場合も、液体は血液流の挙動と同等の流れ挙動を有するよう好適に選択される。同様に、液体の温度が患者の血液温度に合致することが好適である。これらの処置は、基準データの正確さ及び測定された患者固有のデータとの比較可能性を向上させるのに役立つ。
【0041】
特定の一実施形態によれば、試験環境内で用いる液体は、水とグリセロールを、人の体温で血液の粘度に等しい粘度となる混合比率で含んでいる。これにより試験液を直接製造できるという利点が得られる。
【0042】
試験環境内で設定された血液ポンプが人の血管系内におけるカテーテルの曲線をシミュレートすることが更に好適である。換言すれば、血液ポンプを誘導するカテーテルが、人の血管系内の血液ポンプの設置に応じて試験ベンチの曲率に合わせて設定されることが好適である。
【0043】
本方法が血流の推定に用いる各々の装置における構造的特徴として同様に実装できる方法のステップを提供することに利点がある。このような装置は、上述の方法の対応ステップを各々実装する構造的特徴を有している。従って、本方法と装置に言及する特徴は、本装置が提案された方法を実行し、提案された方法が本装置を動作させるように交換可能に用いることができる。更に、コンピュータプログラム製品が、例えばコンピュータ上で実行された際に、本方法を実現して本装置を動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
添付の図面を通じて更なる利点を示す。
【
図1】心臓の左心室に設置された血管内血液ポンプを示す図である。
【
図2】9個の異なるモーター速度の組に対する1個の例示的なポンプを通過する試験環境におけるモーター電流と液流との関係を示すグラフを示す図である。
【
図3】
図2のグラフにおいて2個のモーター速度に対するポンプを通過する最大血流における2個の例示的なモーター電流偏
差ΔIを追加的に示す図である。
【
図4】左心室のポンプの異なる速度Nで複数の心臓周期にわたるモーター電流Iの時間経過に伴う変化を示す図である。
【
図5】血管内血液ポンプを通過する血流の推定に用いる方法を表すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0045】
図1に、血管内血液ポンプが大動脈弁20を横断する大動脈11を貫通して挿入される人の心臓10を示す。血管内血液ポンプは、カテーテル12とカテーテル12の遠位端に取り付けられたポンピング装置13とを含んでいる。ポンピング装置は、ポンプ部14と、入口開口部16及び出口開口部17を有し、入口開口部16が心臓壁に吸い付けられるのを回避すべくポンピング装置13を心臓壁から離しておくピグテール形状の柔らかい、可撓先端部19を更に有しているカニューレ15を含んでいる。インペラ又はローターはポンプ部14内で回転して入口開口部16から出口開口部17を介して血液を搬送する。ポンピング装置13は更に、インペラ又はローターを駆動すべくポンプ部14と共に単一筐体内に駆動部を含んでいてよい。しかし、
図1に示す実施形態ではポンピング装置はカテーテル12内を導かれる可撓ケーブル18により駆動される。
図1に示すポンプの代わりに、拡張可能な血液ポンプ等、拡張後の直径が
図1に示すポンプ部14と比較して顕著に大きい他の血管内血液ポンプを用いてよい。
【0046】
明らかに、駆動ケーブル18の動作時にカテーテル12内で表面摩擦等の損失が生じる。損失の量もまた、曲げ数及び曲げ半径に依存し、患者毎に異なり得る、又は同じ患者でも時間経過に伴い血液ポンプが患者の血管系内で再配置又は移動された場合に異なり得る。従って、ポンプ部14内で所与の回転速度でインペラを駆動するのに必要なエネルギーは個々の状況に応じて異なり得る。
【0047】
図2に、モーター電流Iに関して9個の異なるモーター速度N1~N9に対するポンプを通過する血流FLのグラフP1~P9(モーター速度Nはインペラの回転速度に関する)を示す。上述のように、血液ポンプが克服すべき圧力差が高いほど、血液ポンプを通過する血流FLは低い。
図2から分かるように、モーター電流Iは各モーター速度Nについて一定ではなく、ポンプを通過する血流FLの量が変化すれば変化する。
図2に示す特定の例の場合、データは拡張可能なケーブル駆動血液ポンプから実際に記録された。このケースでは、モーター電流Iはポンプを通過する血流FLの上昇に伴い減少する。他の血液ポンプ、特に非拡張可能な血液ポンプでは、血流FLの上昇に伴いモーター電流Iが増加することが分かっている。
【0048】
グラフP1~P9の個々の測定点は、試験環境における異なるポンプ負荷の下でポンプを通過する血流FLとモーター電流Iの両方を測定することにより得られた。試験環境は、可能な限り人体内の条件に近づけた。例えば、試験環境内の液体は、血液の流れ挙動に等しい流れ挙動を有するように選択された。更に、温度は患者の血液温度に等しく、例えば36~37℃であって。更に、試験環境における液体は水とグリセロールを血液の粘度に等しい粘度となる混合比率で含んでいる。また、カテーテルの曲げ及び曲げ曲率は、人の平均的な血管系に従い近似されていた。
【0049】
しかし、本明細書で示唆するように、血流FLは、何らかの圧力信号に基づくのではなく、モーター電流Iに基づいて推定されるため、異なるモーター速度N1~N9に対するグラフP1~P9は個々の患者毎に調整する必要があり、その理由は、基準データの対応する組の基準モーター電流Iと比較した、患者の心臓内で血液ポンプが用いる患者固有モーター電流の
差異が、
図2を参照しながら更に説明するように、誤った解釈につながる恐れがあるからである。
【0050】
図2に示すように、血液ポンプがモーター速度P9で駆動された場合、克服すべき圧力差により血流FLが約5.2lL/分である(最大血流FL約6.5lL/分を若干下回る)。この状況で患者固有モーター電流が正のモーター電流偏
差ΔI9だけ基準モーター電流I9から逸脱したならば、医療スタッフは基準データの組から血流FLが約1.8L/分に過ぎないと誤って結論付けるであろう。代替的に、同じ状況で患者固有モーター電流が正ではなく負のモーター電流偏
差-ΔI9(
図2に示さず)だけ基準モーター電流I9から逸脱したならば、医療スタッフは何ら対応する基準モーター電流を発見しないか、又は流れ推定システムがエラー信号を送る。
【0051】
従って、そのような誤解を避けるために、患者固有モーター電流値を含む参照表又はグラフを生成して医療スタッフが参照することにより、医療スタッフは正しい血流を結論付けることができる。従って、患者の体内に血液ポンプを設置した後で、ポンプの各動作点、すなわち特定のポンプ負荷におけるモーター速度N9に対する(同様に他の全てのモーター速度に対する)患者固有モーター電流を測定することができ、対応するモーター電流偏差ΔI9を基準モーター電流I9と、これらの特定のポンプ負荷に対して測定された患者固有モーター電流との差として計算することができる。
【0052】
しかし、上述のように、且つ
図3を参照しながら更に説明するように、モーター電流偏
差ΔIは、1個の特定の「第1の」ポンプ負荷だけに対して計算されて、基準データの組の所与のモーター速度Nの全ての基準モーター電流に追加される。当該「第1の」ポンプ負荷は好適には心周期内での最小ポンプ負荷の状態、すなわち心臓弁の開いた状態に対応している。その理由は、このような状態が測定されたモーター電流Iだけに基づいて、すなわちモーター電流Iが最大又は最小のいずれかである場合に、容易に検出できるからである。しかし、完全を期すため、圧力センサ及び/又はEKGが所定位置にある場合、他の任意のポンプ負荷もモーター電流偏
差ΔIが決定される特定の「第1の」ポンプ負荷として用いてよい。
【0053】
いずれの場合も、計算されたモーター電流偏差ΔIを対応する基準モーター電流に追加することにより、新たな基準データの組又は更新された基準データの組を生成することができ、これはモーター速度Nに対する完全な患者固有の基準データの組を取得すべく基準データの組において基準モーター電流が入手可能な全てのポンプ負荷に対して行うことができる。更に、この手順は、各々のモーター速度N1~N9に対して個々に実行することができる。
【0054】
更にまた、モーター速度N9で得られたモーター電流偏差ΔI9が、他の全てのモーター速度N1~N8に対するモーター電流偏差ΔI1…ΔI8とほぼ同一であると仮定して、モーター電流偏差ΔI9は、モーター速度N1~N9の各々の基準データの組に同様に適用することができる。
【0055】
代替的に、新規又は更新された基準データの組を作成するのではなく、各々のモーター電流偏差ΔI又はΔI1~ΔI9を保存して、ポンプが患者の血管系内に配置された際に測定されたモーター電流から導くことができるため、測定されたモーター電流を以前に保存された基準データの組と比較することができる。
【0056】
最も現実的には、二つのモーター電流I7、I9及び対応するモーター電流グラフP7、P9を
図3に例示的に示すように、血液ポンプが血液を左心室から大動脈内へポンピングする場合の大動脈弁のような心臓弁の開いた状態で単一モーター電流偏
差ΔI7、ΔI9が測定される。この瞬間が容易に検出できるのは、
図3に示すグラフP1~P9の最上部の点、すなわち最大血流FLの点をマークするからである。従って、
図3に示す実施形態において、基準モーター電流I7及びI9と比較するように、対応する患者固有モーター電流のモーター電流偏
差ΔI7、ΔI9が測定されるのは、各々の患者固有モーター電流が最大値に達した場合であり、これは開いた状態すなわち血液ポンプを通過する血流FLが最大の状態を示すためである。
図3に示すように、モーター電流偏
差ΔI7及びΔI9は各々、対応するモーター速度I7、I9に関する他の全ての基準データに適用されている。モーター速度I7、I9の新規又は更新されたグラフを
図3においてP7
ΔI7、P9
ΔI9として識別される。同じことが、残りのモーター速度P1~P6及びP8について実行されてよい。
【0057】
再び、上述のように、特定の状況では1個のモーター速度Nに対して1個の単一モーター電流偏差ΔIを計算して、当該1個のモーター電流偏差を他のモーター速度に適用することも受容できる。
【0058】
図4に、異なるモーター速度Nで複数の心臓周期にわたるモーター電流Iの時間経過に伴う変化を示す。
図4に示す曲線は、ポンプが患者の左心室に配置された後で取得されたものである。各モーター速度Nに対して、3個の心周期が監視及び記録され、図から分かるように、モーター電流は各心周期にわたり同様に変化する。特に、曲線は各周期における最大モーター電流及び最小モーター電流を示す。
図3に示すように基準データの組及びモーター電流グラフPの負の傾きから、最小モーター電流が最小ポンプ負荷及び最大血流の状態に対応することが明らかであるため、当該最小モーター電流を、対応するモーター速度Nのモーター電流偏
差ΔIを計算する際の患者固有モーター電流値として用いる。モーター電流グラフPの傾きが正である他の血液ポンプにおいて、最大のモーター電流がモーター電流偏
差ΔIを計算する患者固有モーター電流値として用いられる。
【0059】
図5に、血流を推定する方法を示す。第1のステップ100において、試験環境内で取得された基準データの組から基準データを取得する。これらの基準データは、血液ポンプを駆動するモーターの基準モーター電流Iと、好適にはポンプを通過する最大血流FLでの、すなわち心臓弁の開いた状態での最小ポンプ負荷である「第1の」ポンプ負荷を含む異なるポンプ負荷の下での少なくとも1個のモーター速度N(
図3の例ではグラフP1~P9に示す9個のモーター速度N1~N9)に対する血液ポンプを通過する液流FLの量の両方を含んでいる。
【0060】
次いで、第2のステップ101において、患者の体内に血液ポンプを設置した後で、各モーター速度Nに対する患者固有モーター電流が前記「第1の」ポンプ負荷、すなわち好適には最小ポンプ負荷及び最大血流で測定される。
図3の例において、基準モーター電流I1~I9を示すグラフP1~P9から最小モーター電流が最小ポンプ負荷及び最大血流FLの点に対応することが明らかに分かるように、測定対象は最小患者固有モーター電流である。
【0061】
その後、ステップ102において、測定された患者固有モーター電流を基準データの組の対応する基準モーター電流Iから、すなわち当該特定のモーター速度Nで前記「第1の」(最小)ポンプ負荷に対して得られた基準モーター電流から減算することにより、モーター電流偏差ΔIが計算される。
【0062】
最後に、ステップ103において、上述のように、血液ポンプが患者の体内に配置された際に血液ポンプを通過する血流FLを正確に推定可能にすべく、モーター電流偏差ΔIが、少なくとも当該特定のモーター速度Nの全ての基準モーター電流Iに適用される。
【0063】
当業者には、本方法のステップが副ステップを含んでいてよいことが理解されよう。例えば、上述のように、基準モーター電流Iにモーター電流偏差ΔIが適用されるのは、医療スタッフ又はシステムが参照できる新規の又は更新された患者固有参照表又はグラフPが作成された場合、又は医療スタッフ又はシステムが血流FLを推定したときだけモーター電流偏差ΔIが基準モーター電流に追加された場合のいずれかである。更に、特定のモーター速度Nに対して測定及び計算されたモーター電流偏差ΔIは他の全てのモーター速度にも適用されてよい。
【0064】
また、前記「第1の」ポンプ負荷の下で各モーター速度Nに対して患者固有モーター電流を測定する第2のステップ101は、当該モーター速度Nでの1個又は好適には複数の完全な心周期にわたり患者固有モーター電流を監視及び好適には記録するサブステップを含んでいてよい。より好適には、患者固有モーター電流は監視され、好適には複数のモーター速度Nで1個以上の完全な心周期にわたり、最も好適には基準データの組に基準モーター電流Iが取得されている全てのモーター速度Nで記録される。