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特許7314162駆動装置によって作動される回転ブロック装置を備えるステアリングコラム
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  • 特許-駆動装置によって作動される回転ブロック装置を備えるステアリングコラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】駆動装置によって作動される回転ブロック装置を備えるステアリングコラム
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/181 20060101AFI20230718BHJP
   B60R 25/0215 20130101ALI20230718BHJP
   B62D 1/19 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
B62D1/181
B60R25/0215
B62D1/19
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020549680
(86)(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 FR2019050544
(87)【国際公開番号】W WO2019175502
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】18/52263
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511110625
【氏名又は名称】ジェイテクト ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイ ローラン
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-298229(JP,A)
【文献】特開平02-088346(JP,A)
【文献】特開2012-201169(JP,A)
【文献】特開2010-052648(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00499001(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00497063(EP,A1)
【文献】特開2005-138832(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00918000(EP,A1)
【文献】特開2009-096427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00-1/28
B60R 25/0215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転連結された2つのテレスコピックドライブシャフト(8,16)を備え、ステアリングホイールを支持するフロントシャフト(16)の軸方向のスライドを、最も前方位置からスタートして、このステアリングホイールの位置の第1の深さ調整範囲(PR)、次にドライバーの前記ステアリングホイールへの衝撃を減衰させるための、事故の場合に使用される第2の減衰範囲(PA)、に亘って連続的に可能にする自動車用ステアリングコラムにおいて、前記スライドを制御するための電動駆動装置(30)と、一方の前記シャフト(16)の回転をブロックする盗難防止回転ブロック装置と、を備える、自動車用ステアリングコラムであって、
記ブロック装置は、前記第2の減衰範囲(PA)に位置する、前記駆動装置(30)によって与えられる、前記フロントシャフト(16)をブロックするための、軸方向位置に対して、自動的に係合され、
前記ブロック装置は、軸方向歯をその外側輪郭上に有するインナーリング(40)を含み、前記歯は、アウターリング(50)内に配置された歯の間に係合され
前記インナーリング(40)及び前記アウターリング(50)の前記軸方向歯は、軸方向において、他方のリングへの係合側にチップ(48)を有し、
前記インナーリング(40)及び前記アウターリング(50)は、軸方向において、前記他方のリングへの係合側へ他方のチップを軸方向に越えて突出する、チップ(48)を有する、ことを特徴とする自動車用ステアリングコラム。
【請求項2】
前記第2の減衰範囲(PA)のストロークの端の前方に、前記フロントシャフト(16)をブロックするための前記軸方向位置が、配置される、ことを特徴とする請求項1に記載の自動車用ステアリングコラム。
【請求項3】
記ブロック装置は、この装置によって伝達されるトルクを制限する回転スライドシステムを、含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車用ステアリングコラム。
【請求項4】
前記スライドシステムは、一方のリング(40,50)とそれを支持するパーツとの間に配置された、スロットを形成した弾性環(42)を、含む、ことを特徴とする請求項3に記載の自動車用ステアリングコラム。
【請求項5】
記ブロック装置は、前記第2の減衰範囲(PA)における前記フロントシャフト(16)の変位中に、前記ブロック装置の2つの部分に接触したときの、軸方向の力の影響下での事故の場合に、破壊される得る、軸方向ヒューズシステムを、含むことを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1つに記載の自動車用ステアリングコラム。
【請求項6】
前記軸方向ヒューズシステムは、プラスチック材料からなる弾性クリップ(44)を含み、前記リング(40,50)のうちの少なくとも一方を軸方向に保持する、ことを特徴とする請求項に記載の自動車用ステアリングコラム。
【請求項7】
記ブロック装置は、リアシャフト(8)に固定された前記インナーリング(40)と、前記フロントシャフト(16)のガイドを行うガイドチューブ(12)の内側に固定された前記アウターリング(50)と、を含む、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の自動車用ステアリングコラム。
【請求項8】
両のイグニッションをスイッチオフした後に、前記電動駆動装置(30)を体系的に制御して、前記フロントシャフト(16)を、回転をブロックするためのその軸方向位置に保つ、ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1つに記載の自動車用ステアリングコラムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転をブロックするための盗難防止システムを備える自動車のステアリングコラム、及びこのステアリングコラムを制御する方法に、関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車は、その前端でステアリングホイールを受け、車両の前側のステーアードホイールの旋回を行うステアリングボックスを駆動するロアシャフトに回転連結された、フロントアッパーシャフトを含む、ステアリングコラムを、備える。
【0003】
2つのテレスコピックシャフトは、それらの間を軸方向にスライドして、その最も前方の位置からスタートして、ステアリングホイールの軸方向ストロークを形成する、第1の調整範囲内での、ステアリングホイールの位置の深さ調整を、確保することができる。
【0004】
また、このスライドは、ドライバーによってステアリングホイールのエアバッグに与えられる力を制限する、エネルギーを吸収する減衰を行うために、車両の前部への衝撃時に、第1の範囲の後に来る第2の減衰範囲に亘って、アッパーシャフトが凹む可能性を、確保する。
【0005】
ステアリングホイールの深さ位置の調整を補助的又は自動的な方法で行うために、フロントシャフトを受けるガイドチューブの長手方向のスライドを行って、それをガイドする電動駆動装置を、配置することが知られている。
【0006】
さらに、ステアリングコラムは、イグニッションキーが外されるときに自動的に作動して、コラムのシャフトのブロックを行う、回転をロックするための盗難防止システムを、備える。これは、コラムのサポートに連結されたボルトを含み、回転におけるそのブロックを確保するために、コラムのシャフトの周りに固定されたブロックリング上に形成された開口に、入るようにスライドする。特に、ボルトは、イグニッションをスイッチオフすることより制御される電動駆動装置によって、作動させることができる。
【0007】
特に、文献FR-A1-2861673及びEP-A1-0918000によって提示される公知のブロックシステムは、第1の文献において、ボルトのハウジングと、シャフトとの間に、又は第2の文献において、コラムサポートと、シャフトに配置された軸方向固定リブを受けるスライドスリーブとの間に、取り付けられた摩擦装置を含み、所定のトルクを越えてこのシャフトの周りを回転してスライドする可能性を与える。特に、所定のスライドトルクは、100Nm~200Nmの間に含まれ、好ましくは150Nmである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようにして、車両の盗難が試みられた場合、操縦者は、ステアリングホイールのブロックを破壊しようとするために、ステアリングホイールに高いトルクを加え、ブロックリングは、機械的要素の変形又はこれらの要素の破壊を得る前に、シャフト上で回転する結果となる。このようにして、力を制限することによって、盗難を可能にするロックの破壊が回避され、この破壊を得ることなく、運転を危険にして交換を必要とする要素の変形が生じる。
【0009】
ブロックリングがスライドすることを可能にする高いトルクは、ブロックが維持されるときに車両を駆動不可能にするステアリングホイールに対して、過度に高い力を必要とすることに、留意されたい。
【0010】
しかしながら、このブロックシステムのために電動駆動装置を使用することによって、このアセンブリは、直径及び軸長の両方がかさばり、高い質量及び高いコストを有する。さらに、モータの動作と同様に車両のオンボードネットワークによって与えられるこのモータによる係合制御は、車両を運転している間における不用意なブロックを回避するために、完全に確保すべきであり、このことは、このシステムを複雑にする。
【0011】
本発明の目的は、特に、従来技術のこれらの欠点を回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のために、回転連結された2つのテレスコピックドライブシャフトを備え、ステアリングホイールを支持するフロントシャフトの軸方向のスライドを、最も前方位置からスタートして、このステアリングホイールの位置の第1の深さ調整範囲、次にドライバーの前記ステアリングホイールへの衝撃を減衰させるための、事故の場合に使用される第2の減衰範囲、に亘って連続的に可能にする、自動車用ステアリングコラムを、提案する。このコラムは、前記スライドを制御するための電動駆動装置と、一方の前記シャフトの回転をブロックする盗難防止回転ブロック装置と、を備える。前記回転ブロック装置は、前記第2の減衰範囲に位置する、前記駆動装置によって与えられる、前記フロントシャフトをブロックするための、軸方向位置に対して、自動的に係合される、という点で注目すべきである。
【0013】
このステアリングコラムの利点は、イグニッションをスイッチオフした後、フロントシャフトを車両の運転のために使用される第1の調整範囲の外である軸方向ブロック位置に配置するために、既存の駆動装置を使用することによりフロントシャフトの軸方向スライドを行うことで、ロックシステムを作動させる第2の駆動装置の設置が回避され、これは、ステアリングコラムのサイズ、質量及びコストを低減することを可能にする、ことにある。
【0014】
本発明に係るステアリングコラムは、互いに組み合わせることが可能な、以下の特徴のうちの1つ又は複数を、さらに含んでもよい。
【0015】
有利には、フロントシャフトをブロックするための軸方向位置は、第2の減衰範囲のストロークの端の前に、配置される。このようにして、この第2の範囲の端に来るフロントシャフトの完全な押し下げ(depression)を引き起こした事故の場合には、ロックシステムは、その中に残ることなく軸方向ブロック位置を通過し、このことは、一定の規則が要求することに従って、必要に応じてステアリングが車両を操縦し続けるように、オペレーショナルステアリングを維持する。
【0016】
有利には、回転ブロック装置は、その外側輪郭上に軸方向歯(axial teeth)を有するインナーリングを含み、軸方向歯は、アウターリング内に配置された歯の間に、係合される。このブロックシステムは、実施するのがシンプルである。
【0017】
この場合、有利には、インナーリング及びアウターリングの軸方向歯は、軸方向において、他方のリングへの係合側に、チップ(tip)を有する。
【0018】
さらに、有利には、インナーリング及びアウターリングは、軸方向において、他方のリングへの係合側に、他方のチップから軸方向に突出する、チップを有する。
【0019】
有利には、回転ブロック装置は、この装置によって伝達されるトルクを制限する回転スライドシステムを、含む。
【0020】
この場合、スライドシステムは、有利には、一方のリングとそれを支持するパーツとの間に配置された、スロットを形成した弾性環を、含む。
【0021】
有利には、回転ブロック装置は、第2の減衰範囲におけるフロントシャフトの変位中に、回転ブロック装置の2つの部分に接触するときの、軸方向の力の影響下での事故の場合に破壊され得る、軸方向ヒューズシステムを、含む。
【0022】
この場合、軸方向ヒューズシステムは、少なくとも一方のリングを軸方向に保持する、プラスチック材料で作られた弾性クリップを、含んでもよい。
【0023】
特に、回転ブロック装置は、リアシャフトに固定されたインナーリングと、フロントシャフトのガイドを行うガイドチューブの内側に固定されたアウターリングと、を含んでもよい。
【0024】
さらに、本発明は、上述の特徴のいずれか1つを備えるステアリングコラムを制御するための方法に関し、これは、車両のイグニッションをスイッチオフした後に、電動駆動装置を体系的に制御して、フロントシャフトを、回転をブロックするためのその軸方向位置に置く。
【0025】
本発明は、添付の図面を参照して、例として与えられる以下の説明を読むことにより、より良く理解され、他の特徴及び利点がより明確に示されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1及び図2は、それぞれ、本発明に係るステアリングコラムを、部分的に切断した斜視図及び垂直面に沿う軸方向断面図で、示す。
図2図1及び図2は、それぞれ、本発明に係るステアリングコラムを、部分的に切断した斜視図及び垂直面に沿う軸方向断面図で、示す。
図3図3は、この軸方向断面図の部分拡大図である。
図4図4は、この斜視図の部分拡大図である。
図5図5は、インナーブロックリングを持つリアシャフトの分解図である。
図6図6は、インナーブロックリング及びアウターブロックリングを、詳示する。
図7図7の(a),(b),(c)及び(d)は、軸方向断面図において、前方調整位置、後方調整位置、ロック位置、及び事故後に完全に押し下げられた位置に、連続的に配置された、このステアリングコラムを、示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1及び図2は、車両ダッシュボードのクロスメンバの下に固定するために設けられた上部タブを装備した、ステアリングコラムの固定サポート4を、示す。固定サポート4は、横(短手)軸ピボット26によって可動サポート2に連結されており、ステアリングホイールの高さ調整を可能にしている。可動サポート2は、矢印ARによって示されるリア側(後方側)に、縦(長手)方向をなす主軸に沿って配置されたリアシャフト8をガイドするための、リアボールベアリング6を内部に含む、閉じたケーシングを、形成している。
【0028】
リアボールベアリング6によって可動サポート2内に軸方向に楔どめされたリアシャフト8は、ステアリングコラムのシャフトに連結するためのダイヤル10をその後方端に含み、それを車両のステアリングボックスに連結する。
【0029】
軸方向にスライド可能に可動サポート2のボア内にガイドされたフロントスライドチューブ12は、ステアリングコラムのフロントシャフト16を受けるフロントガイドベアリング14を、その前端に含む。フロントシャフト16は、このフロントベアリングによって、スライドチューブに軸方向に楔どめされている。
【0030】
このようにして、フロントシャフト16は、スライドチューブ12内で自由に回転する。しかし、フロントシャフト16がその軸に沿ってスライドするときには、このチューブを駆動する。
【0031】
フロントシャフト16は、その前端に、ステアリングホイールを固定するためのアウタースプライン18と、長手後方において、リアシャフト8の周りに形成されたアウタースプライン22に係合して回転連結を確保するインナースプライン20と、を含むチューブによって形成されている。
【0032】
縦軸に垂直な軸を有する電動駆動装置30は、アングルトランスミッションを形成する歯車減速機32を、駆動する。次に、歯車減速機32は、可動サポート2の下に配置されたねじ34を、主軸に平行に駆動する。ねじ34に係合されたナットを含むキャリッジ36は、湾曲したメタルブレード28によって、ねじ24によりこのブレードに固定されたスライドチューブ12を、駆動する。
【0033】
縦軸に平行に配置された湾曲メタルブレード28は、その2つの端部における一方が他方の下になるように、180°の曲率を含む。2つの端部は、一方がキャリッジ36に、他方がスライドチューブ12に、連結される。したがって、ステアリングホイールの深さ調整を行うために、キャリッジ36とスライドチューブ12との間に、剛性のある軸方向連結が、得られる。
【0034】
特に、ねじ34とキャリッジ36のナットとの、ねじーナット接続は、不可逆的な運動機構(kinematic)を有し、このナット上の軸方向スラストは、ドライバーがその上に軸方向の力を加えた場合に、ステアリングホイールの深さ位置を誤調整することを回避するために、このねじの十分に小さなピッチのおかげで、ねじの回転を引き起こさない。これを行うために、ねじ34の軸線に対して、ねじ山の傾斜が有利に行われ、これは、8度と20度との間で、好ましくは12度で、構成される。
【0035】
しかしながら、ステアリングホイールエアバッグの膨張を引き起こす車両前方への衝撃の場合、ドライバーの胴体は、ステアリングホイールに大きな力を加える。この力は、メタルブレード28により保持されたスライドチューブ12に、フロントシャフト18によって伝達される。十分に高い力の場合、メタルブレード28の湾曲が、スライドチューブ12をエネルギー吸収を伴って後方に移動させることによって、徐々に行われ、ストロークの端において、図7の(d)に示すように、可動サポート2の底部に到達する。
【0036】
リアシャフト8は、その輪郭に軸方向歯を備えたインナーブロックリング40を、支持する。スライドチューブ12は、対応する軸方向歯を内部に備えたアウターブロックリング50を、支持する。これらは、図7の(c)に示す、このチューブの所定の軸方向位置において、ステアリングの盗難防止回転ブロックを行うために、互いに係合される。
【0037】
図3,4,5及び6は、スライドチューブ12の後部で強固に(rigidly)固定されたアウターリング50を、示す。アウターリングは、後方に向いたチップ48においてそれぞれが終端する一連の軸方向歯を、内側に含む。
【0038】
リアシャフト8にフレキシブルな方法で固定されたインナーリング40は、軸方向のスライドによってアウターリング50の歯に係合することができるように、前方に向いたチップ48においてそれぞれが終端する一連の軸方向歯を、外側に含む。
【0039】
エラストマーからなる弾性環42は、一連のスロットを形成した輪郭を、有する。一連のスロットは、内側において、リアシャフト8の周りに形成された対応する軸方向歯60を受け入れる凹部と、外側において、インナーリング40に形成された対応する軸方向歯46を受け入れる凹部と、を含む。アウターリング50の歯の内径は、インナーリング40の歯の外径よりも、大きい。
【0040】
このようにして、シャフト8上におけるインナーリング40の回転がブロックされ、このインナーリングに応力が加わったときに、ノイズを回避することを可能にする、少しのフレキシビリティを有する、アセンブリが得られる。
【0041】
有利には、弾性リング42は、-80℃と+30℃との間に含まれ、好ましくは-40℃に近い、ガラス転移温度を有する、エラストマーで作られる。このため、特に、熱可塑性エラストマータイプの材料、エチレン‐プロピレン‐ジエンモノマー「EPDM」、ブタジエン‐アクリロニトリル「NBR」、水素化ブタジエン‐アクリロニトリル「HBNR」、又はシリコーンを、使用することが可能である。
【0042】
アウターリング50の軸方向歯における後方チップ48及びインナーリング40の前方チップは、フロントシャフト8が後方に移動するときに、このアウターリングの歯が、インナーリングのそれらの間に挿入されるのを、促進する。
【0043】
さらに、有利には、より長い歯が各リング40,50上に作られ、約0.5~3mm、好ましくは1mmの、他方のリングに面する延長部を有し、これは、わずかに角度的にオフセットされ、結果として、必要であれば、小さな角度回転によって、残りの歯の係合を準備する。この小さな回転は、弾性リング42の変形可能な性質によって可能とされ、これは、2つのリング40,50の歯が、互いにブロックすることなく、一緒に協働することができるように、リアシャフト8の周りでのインナーリング40の小さな回転を、可能にする。
【0044】
開放された弾性クリップ44は、インナーリング40の各側におけるリアシャフト8の溝に固定され、このリング及び弾性環42の軸方向位置を維持する。
【0045】
図7の(a)及び(b)は、それぞれ、車両の通常運転のフレームワーク内で駆動装置30によって行われる、ステアリングホイールの深さ調整のための、最大前方位置A及び最大後方位置Bを、示しており、調整範囲PRは、これら2つの最大値の間(一般に30~50mm)に、含まれる。
【0046】
図7の(c)は、駆動装置30によって、車両が停止するたびに体系的に配置される、ロック位置Cを示しており、ドライバーがイグニッションをスイッチオフした後、ガイドチューブ12を後方に移動させることによって、結果として、その歯を互いに係合させた後に、アウターリング50をインナーリング40に、一致させるようする。
【0047】
ステアリングのロックは、ステアリングホイールの深さ調整のための、既存の駆動装置30及びその制御回路を使用することによって、非常に少ない追加コンポーネントで、シンプル且つ費用対効果の高い方法で、実行される。
【0048】
ステアリングホイールの深さ調整範囲PRに対して明らかに後方に移動されたロック位置Cは、このステアリングホイールの前方の空間を解放しており、このことは、ドライバーが車両に出入りするのを容易にする、ことに留意されたい。
【0049】
図7の(d)は、調整範囲PR内の位置から得られた事故D後の位置を、示しており、ドライバーは、湾曲メタルブレード28を完全に巻き出す(unwinding)ことによって変形する、ステアリングホイールに大きな力を加えて、この調整範囲の後に来る減衰範囲PAを通過した後、ガイドチューブ12をリアストップに配置する。
【0050】
この場合、アウターリング50は、インナーリング40を超えて通され、このインナーリングによってブロックされることなく、後ろに進む。このことは、ステアリングホイールを用いたステアリングの可能な操縦をこの場合に課す、いくつかの規制要件を満たすことができるように、ステアリングを完全に自由にする。
【0051】
あるいは、インナーリング40のアセンブリは、軸方向力ヒューズを、含んでもよい。軸方向力ヒューズは、例えば、プラスチック材料からなる弾性クリップ44で構成され、通路を自由にするための角度的な位置合わせができずに、2つのリング40,50の歯が互いに当接する場合に、事故の場合における衝撃の影響下での破壊によって、フロントシャフト16の完全な後方移動を可能にする。
【0052】
あるいは、リング40,50の任意の他の配置を、使用することができる。悪意のある人物がそのロックを破壊することを試みて、ステアリングホイールに高いトルクを加える場合に、ステアリングコラムのダメージを回避するために、十分に高いトルク閾値、好ましくは150Nmの範囲に対して、ガイドチューブ12に対してアウターリング50を回転させてスライドさせるための、システムを提供することが、特に可能である。可動サポート2における他の箇所にも、リング40,50を軸方向に配置することが、また可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7