(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】ブレードに電気エネルギを供給するための回転変圧器を備えた航空機用の推進アセンブリ
(51)【国際特許分類】
B64D 35/00 20060101AFI20230718BHJP
B64D 15/12 20060101ALI20230718BHJP
F16C 19/26 20060101ALI20230718BHJP
H01F 38/18 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
B64D35/00
B64D15/12
F16C19/26
H01F38/18 Q
(21)【出願番号】P 2020563478
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(86)【国際出願番号】 FR2019050795
(87)【国際公開番号】W WO2019215399
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-03-31
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】315008740
【氏名又は名称】サフラン エアークラフト エンジンズ
(73)【特許権者】
【識別番号】517038637
【氏名又は名称】サフラン エレクトリカル アンド パワー
(73)【特許権者】
【識別番号】516247122
【氏名又は名称】サフラン・トランスミッション・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】マチュー ジャン ジャック サンタン
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム ジュリアン ベック
(72)【発明者】
【氏名】アルドリック ルノ ガブリエル マリー モロー ドゥ リゼル
(72)【発明者】
【氏名】ボリ ピエール マルセル モレリ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ミシェル ベルナール ポール シャスタニエ
(72)【発明者】
【氏名】トマ チュルシー
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0260047(US,A1)
【文献】米国特許第02488392(US,A)
【文献】特表2007-531855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 35/00
B64D 15/00
F16C 19/26
H01F 38/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(20)と、前記エンジン(20)により回転駆動されるプロペラシャフト(18)とを有する、航空機用推進ユニットであって、前記プロペラシャフトは潤滑流体を収容する密封ケース(16A)を通過し、前記航空機用推進ユニットは、前記プロペラシャフトに連結されかつ電力消費部材である複数の電気部材(12A~12D)を更に有する、複数の翼(12)を備えたプロペラ(1
0)をさらに有し、前記密封ケースと前記プロペラシャフトとの間の密封は、前記プロペラシャフトに角度的に固定された回転動的シール支持体(32)と、前記プロペラ(10)に面する前記密封ケースの端部に固定された動的シール支持フランジ(34)との間に収容された、動的シール(30)によって保証されており、前記回転動的シール支持体は、前記プロペラシャフトに固定されており、かつ、前記プロペラシャフトを支持するための軸受(28)に当接して軸線方向に保持されている、航空機用推進ユニットにおいて、
前記航空機用推進ユニットは、前記複数の電気部材に電力を供給するために、前記プロペラシャフトによって回転させられる回転変圧器(36)であって、前記回転変圧器(36)は、
固定子(38)のケーシング(34A、34B)が前記動的シール支持フランジに固定された固定子(38)と、
回転子(40)のケーシング(40A;32A、32B)が前記プロペラシャフトに固定される、回転子(40)とを有する、回転変圧器(36)を備え
、
前記固定子のケーシングは、全く同一の部分を形成しているように前記動的シール支持フランジに一体化されていることを特徴とする航空機用推進ユニット。
【請求項2】
前記動的シール支持フランジは、複数のねじ(35)によって前記密封ケースの端部に固定されていることを特徴とする請求項
1に記載の航空機用推進ユニット。
【請求項3】
前記動的シール支持フランジは、前記密封ケースの端部に締付カラー(44)により固定されていることを特徴とする請求項
1に記載の航空機用推進ユニット。
【請求項4】
前記回転子のケーシングは、全く同一の部分を形成しているように前記回転動的シール支持体に一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の航空機用推進ユニット。
【請求項5】
前記プロペラシャフトの小さな長さに当接するだけでは前記回転子のケーシングが前記プロペラシャフトの曲げ動作に追従しないように、前記回転子のケーシングは前記プロペラシャフトの肩部(18C)上に片持梁状に配置されていることを特徴とする請求項
4に記載の航空機用推進ユニット。
【請求項6】
前記回転動的シール支持体(32)は、前記プロペラシャフトを支持するために、前記プロペラシャフトの前記肩部と前記軸受(28)との間に挟持されていることを特徴とする請求項
5に記載の航空機用推進ユニット。
【請求項7】
前記回転子のケーシングは、前記プロペラシャフトの肩部(18D)と前記回転動的シール支持体との間に挟持することにより、前記プロペラシャフトに固定されることを特徴とする請求項1に記載の航空機用推進ユニット。
【請求項8】
前記複数の電気部材は、1つ又は複数の電気除氷素子(12A~12D)を備え、前記電力は、前記電気除氷素子に供給するために前記複数の翼を備える前記プロペラに供給されることを特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載の航空機用推進ユニット。
【請求項9】
前記エンジンは、ターボプロップ又は航空機ターボファンターボジェットエンジン、ヘリコプターボシャフトエンジン、又は、フライングドローンの電気モータからなることを特徴とする請求項1~
8のいずれか一項に記載の航空機用推進ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用推進ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のターボプロップでは、プロペラはギアボックスを介してガスタービン(フリータービン又はリンクタービン)によって駆動され、プロペラとターボ機械の間に配置されるギアボックスは、単純な歯車列、複合歯車列、ハーモニックドライブ(登録商標)、エピサイクリック等の異なるタイプのものとすることができる。同様に、従来のヘリコプタでは、ヘリコプタの複数の翼を有する主回転子も、主ギアボックス(MGB)からなるギアボックスを介してガスタービンによって駆動される。
【0003】
このようなターボプロップに取り付けられたプロペラ、並びに、ヘリコプタの主回転子は、一般に、プロペラ又は主回転子の複数の翼上に蓄積された氷を取り除くことができる除氷システムを備えている。現在の除氷システムの大部分は、例えば、エネルギを供給されると、翼上に形成された氷を取り除くことを可能にする熱を発生させ、その後に遠心分離によって排出されるであろう、前縁において各翼の内輪及び外輪に固定された電気加熱マットを有する電気システムである。この加熱マットへのエネルギ供給は、三相交流ネットワークによって供給される数キロワットの電力を必要とし、単相交流又は低電圧直流供給は、実際にはより少ない充電で蓄えられる。
【0004】
そうするためには、この電気エネルギをエンジン内の静止部分から回転部分、すなわち、プロペラ又は主回転子に伝達することを可能にする装置を介して、翼上に固定されたマットに電気エネルギを供給することが必要である。
【0005】
従来、この電気エネルギの回転伝達は、「ブラシ+コレクタ」システムを用いて行われている。従来のターボプロップでは、電力の伝達は、プロペラの後部カウルに取り付けられかつ典型的には銅である導電性材料から成る1つ又は複数のトラックから成るコレクタと、エンジンの減速ギアに取り付けられかつ銅トラック上を擦る導電性材料から成るブラシとの間の接触によって行われる。この取付けの変形例は、米国の会社であるHamilton Sundstrand社に対して付与された特許文献1(欧州特許第2730506号明細書)によって例示されており、従来実施されているように、減速ギアの後部で、減速ギアとプロペラとの間ではなく、回転伝達(ブラシ及びコレクタ)に必要な装置の取付けがなされている。
【0006】
しかしながら、この解決法は、これらのブラシの摩耗の重要な原因である、コレクタのトラック上のブラシの摩擦に主に関係する多くの欠点を有している。したがって、この急速な摩耗で交換作業を定期的に行う必要があるが、ブラシの実際の耐用年数に関する知識の不足は、システムの信頼性を損なう結果をもたらす。
【0007】
さらに、ブラシは、オイルの発射や、プロペラの後部パネルを構成する(マグネシウムを有する場合がある)可燃性素子の燃焼を開始しかつターボ機械の損失につながる可能性のある初期火災を引き起こす可能性のある、接点における電気アークを発生させる可能性のあるダスト粒子(砂などの外部粒子を有する)に曝される。
【0008】
また、特許文献2(米国特許第5572178号明細書)では、(翼あたり300W~500Wの)低又は中程度の電力の電熱式又は電気機械式の除氷システムを供給するための非接触の回転伝達を達成するために、単相回転変圧器を航空機の駆動軸上に一体化することが知られている。しかしながら、このような解決策は、翼あたり1kW程度の電力伝送を必要とする純粋に電気システムの場合には適しておらず、従って、従来のように並んで配置される3つの単相回転変圧器からなる3相変圧器を使用する必要があるであろうが、以下の欠点を有する。このように構成される三相変圧器は、長さがかさばることになり、その寸法を変更することなくターボ機械のシャフト上で一体化することが困難になり、これは、(質量の増加や航空機への一体化の困難を伴う)エンジンの長さに全体的な影響を与えることになり、そのような変圧器の質量は必然的に高くなり、その内径と共に増加し、したがって、シャフトの端部に、著しい力を受けうるシャフト上に片持ち支持された方法で取り付けられることになり、このような変圧器の追加は、この変圧器の全長にわたって、通常1mm未満の小さな空隙を保証するために必要なシャフトラインの運動状態を複雑にすることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許第2730506号明細書
【文献】米国特許第5572178号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は、航空機用推進ユニット内の回転変圧器の一体化であって、例えば、プロペラの翼の除氷を保証しかつ構造上の変更をほとんど又は全く必要とせず、この一体化は、推進ユニットのエンジンによって駆動される、複数の翼を有するプロペラへの相当な電力の非接触伝達を可能にする、航空機用推進ユニット内の回転変圧器の一体化を提案することを目的とする。複数の翼を有するプロペラの普通名称は、航空機のプロペラ及びヘリコプタの主回転子、又は、フライングドローンの主回転子の両方を記述するために使用され、そのプロペラシャフト又は主回転子のシャフトは、プロペラシャフトと同様に記述される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、エンジンと、エンジンにより回転駆動されるプロペラシャフトとを有する、航空機用推進ユニットであって、プロペラシャフトは潤滑流体を収容する密封ケースを通過し、推進ユニットは、プロペラシャフトに連結されかつ電力消費部材である複数の電気部材を更に有する、複数の翼を備えたプロペラをさらに有し、密封ケースとプロペラシャフトとの間の密封は、プロペラシャフトに角度的に固定された回転動的シール支持体と、プロペラに面するケースの端部に固定された動的シール支持フランジとの間に収容された、動的シールによって保証されており、回転動的シール支持体は、プロペラシャフトに固定されており、かつ、プロペラシャフトを支持するための軸受に当接して軸線方向に保持されている、航空機用推進ユニットにおいて、推進ユニットは、複数の電気部材に電力を供給するために、プロペラシャフトによって回転させられる回転変圧器であって、回転変圧器は、そのケーシングが動的シール支持フランジに固定された固定子と、そのケーシングがプロペラシャフトに固定される、回転子とを有する、回転変圧器を備える、航空機用推進ユニットによって実現される。
【0012】
従って、プロペラシャフトに関連して動的シール支持フランジのレベルで変圧器を直接的に一体化することにより、変圧器によって支持される力と同様にターボ機械の構造上の変更が制限される。変圧器は、有利的には、この一体化のために十分なコンパクト性を保証する、低減された空隙を有している。
【0013】
有利的には、ターボ機械の静止部分は、プロペラとは反対の減速ギアの端部である。
【0014】
固定子のケーシングは、全く同一の部分を形成しているように動的シール支持フランジに一体化されていることが好ましい。
【0015】
有利的には、動的シール支持フランジは、複数のねじによって又は締付カラーによってケース端部に固定されている。
【0016】
一実施形態によれば、回転子のケーシングは、全く同一の部分を形成しているように回転動的シール支持体に一体化されており、プロペラシャフトの小さな長さに当接するだけでは回転子のケーシングがプロペラシャフトの曲げ動作に追従しないように、回転子のケーシングはプロペラシャフトの肩部上に片持梁状に配置されている。回転動的シール支持体は、プロペラシャフトを支持するために、プロペラシャフトの肩部と軸受との間に挟持されている。
【0017】
別の実施形態によれば、回転子のケーシングは、プロペラシャフトの肩部と回転動的シール支持体との間に挟持することにより、プロペラシャフトに固定される
【0018】
有利的には、複数の電気部材は、1つ又は複数の電気除氷素子を備え、電力は、電気除氷素子に供給するために複数の翼を備えるプロペラに供給される。
【0019】
本発明は、特に、エンジンは、ターボプロップ又は航空機ターボファンターボジェットエンジン、ヘリコプターボシャフトエンジン、又は、フライングドローンの電気モータへの用途が見出されている。
【0020】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照しながら、非限定的な例として説明される、本発明の特定の実施例の以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】
図1Aは、本発明の第1の例による実施を可能にする航空ターボ機械を概略化した斜視図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の第2の例による実施を可能にする航空ターボ機械の模式図である。
【
図2】
図2は、
図1Aのターボ機械のシャフト上での軸流式の回転変圧器の一体化を非常に概略的に示している。
【
図3】
図3は、
図1Aのターボ機械のシャフト上での軸流式の回転変圧器の一体化を非常に概略的に示している。
【
図4】
図4は、
図2の変圧器のカラーアセンブリの詳部を示している。
【
図5】
図5は、
図1Aのターボ機械のシャフト上での半径流式の回転変圧器の一体化を非常に概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の原理は、例えば、参照することによって本明細書に組み込まれている、国際公開第2013/167827号~国際公開第2014/167830号に記載されているように、ターボ機械プロペラ又はヘリコプタ回転子への電力の伝達のために、従来の三相変圧器と比較して、同じ電力に対して、質量及びバルクの利得を可能にする、「U字型」のタイプ(本明細書の残りの部分ではTFUと呼ばれる)の半径方向の流れを有する又は「E字型」のタイプ(本明細書の残りの部分ではTFEと呼ばれる)の軸線方向の流れを有する、回転三相変圧器のギアボックス又は航空機用ターボ機械ギアボックスへの特定の一体化に基づいているものである。
【0023】
「航空ターボ機械」とは、ターボプロップ又は航空機ターボジェットエンジン、ヘリコプターボシャフトエンジン、又は、好ましくは高いバイパス比を有する航空機ターボファンを意味する。
【0024】
航空機ターボプロップに関する
図1Aに概略的に示すように、ハブ14の周囲に配置され、かつ、1つ又は複数の電気除氷素子12A~12Dを各々が有する、複数の翼12を有するプロペラ10が、プロペラシャフト18を介してギアボックス16に接続されている。ギアボックスは、駆動軸22を介して航空ターボ機械のガスタービンエンジン20に接続されている。ギアボックスは、ギアボックスの前方に配置されかつ決められた速度で回転するプロペラと、ギアボックスの後方に取り付けられかつはるかに高速で回転するガスタービンエンジンとの間で速度変換を保証する。
【0025】
ほぼ同じ要素は、ヘリコプタのターボシャフトエンジンに関する
図1Bの参照番号と同じ参照番号を有する。中央本体14の周囲に配置された複数の翼12を有する主ヘリコプタ回転子10は、回転子シャフト18を介してギアボックス16に接続されている。減速比が比較的に大きいギアボックスからなるギアボックスは、駆動軸22を介して航空ターボ機械のガスタービンエンジン20に接続されている。ギアボックス16は、決められた速度で回転する回転子と、はるかに高速で回転するガスタービンエンジンとの間の速度変換を保証する。
【0026】
より詳細には、航空機ターボプロップ(ただし、この例は限定されない)に関する
図2では、より詳細に(しかしながら、図面に過剰に記載しないために表されていない除氷素子と電源への接続の異なる電気配線を伴わずに)示されたプロペラシャフト18は、特にその前部18Aの一端にプロペラ10に固定するためのフランジ24を有し、ロール型の一対の軸受26、28、例えばロール型の転がり軸受によってそれが通過する減速ギア16内に支持されており、この減速ギアは潤滑流体を収容する密封ケース16A内に封入されている。転がり軸受タイプの第3の軸受(図面には表されていない)を、プロペラの軸力を吸収するために、一対の軸受26、28を完成させることができる。プロペラシャフトは、一般に、この前方部分において、後方部分18Bの直径よりも大きい直径を有する(この構成は限定的とみなされない)。静止した減速ギア16と回転プロペラシャフト18との間の動的シールは、プロペラシャフト18に角度的に固定された回転動的シール支持体32と、減速ギアのケース16Aに固定された動的シール支持フランジ34との間に収容された動的シール30によって従来から確保されている。回転動的シール支持体は、プロペラシャフトに固定されつつ、プロペラシャフトを支持するために軸受28に当接した状態で軸線方向に保持されている。
【0027】
より具体的には、
図2に表わす実施形態では、回転動的シール支持体32は、例えば、肩部18Cの方向に軸受28を軸線方向に押圧するために設けられた当接装置(図示せず)によって、プロペラシャフトの肩部18Cと軸受28との間に挟持されている。この当接装置は、例えば、軸受28に当接するナットと、プロペラシャフトのこの位置に設けることができる転がり軸受とを備えることができる。動的シール支持フランジは、有利的には複数のネジ35によってギアボックスのケースに固定される部品のためのものである。
【0028】
本発明の第1の実施の形態によれば、電気除氷素子に供給するために必要な電力を供給するために、プロペラに固定するためのフランジ24とギアボックスのケース16Aとの間において、ギアボックスを通過するプロペラシャフト上において、このギアボックスの出力部(つまり、プロペラシャフトの前方、つまり、プロペラ側)において、軸流式回転変圧器(TFE)36を配置することが提案される。この位置は、従来技術の「ブラシ+コレクタ」システムの位置での一体化によってプロペラシャフトの長さが通常では制約されるので、ほとんどの現行の減速の機構成上に存在するので、他の何らかの位置よりもむしろ選択される。この変圧器36は、この従来のシステムに代えてこの利用可能な空間に嵌合することにより、付加的な自由体積を解放する必要がなく、かつ、使用する変圧器の寸法によっては、プロペラの固定フランジとギアボックスのケースとの距離を小さくし、必要に応じて、このように構成された新しいアセンブリの質量を低減することができるようになる。
【0029】
この第1の構成では、変圧器の固定子38が減速ギア16に固定され、回転子40がプロペラシャフト18に固定され、通常1mm未満の小さな軸線方向の空隙42が固定子と回転子との間に配置される。より具体的には、固定子38は、複数のネジ35によってギアボックスのケースに固定され、これは、この固定子のケーシングのための支持体を兼ねるように変更され、従って、これと共に同じ部品34を形成する。図示の例では、回転子40は、他方では、このプロペラシャフトの肩部18Dに対してプロペラシャフトに焼き嵌めされたケーシング40A内に単純に取り付けられている。
【0030】
当然、この回転子の固定は決して限定するものではなく、
図3の例では、回転子40のケーシング40Aは、この肩部18Dと、その一端がケーシング40Aに当接している管状部分32Aによって軸線方向に延長される回転動的シール支持体32との間に挟持することによって、プロペラシャフトに固定されている。
【0031】
減速ギア(特にプロペラシャフトを支持するための軸受28)により近いプロペラシャフト上の軸流変圧器の一体化を可能にする、この解決策によってもたらされる利点は、特に、
ギアボックスの動的密封システムへの一体化による省空間と、
減速されたプロペラシャフトの片持ち梁と、プロペラシャフトのラインの運動状態への衝撃の減少と、
変圧器を固定するために必要な中間部品の数を構造が制限するための質量利得と、
プロペラシャフト内の曲げ効果にも影響されにくい軸流取り付けによって促進される空隙の変化の制限である。
【0032】
また、変圧器はもはやギアボックスに搭載されている一片の機器ではなく、ギアボックスの一体部分となるため、ギアボックスと同時に組み立てられる。
【0033】
図4の変形例に示すように、固定子を支持する動的シール支持フランジ34は、また、複数のネジ35による固定以外の手段によってケースに組み付けることができる。例えば、カラー44の組立の解決策は、空間の必要性を低減し、固定子及び回転子を軸受28に近づけることを可能にし、これにより、動作時のそれらのたわみを制限する。
【0034】
図5は、(電気配線を同様に省略し)ギアボックスの出力部におけるプロペラシャフト18上のTFU半径方向磁束式の回転変圧器の一体化を概略的に示す。
【0035】
前述の実施形態と同様に、動的シール支持フランジ34は、半径方向の戻り壁34Bによって終端された軸線方向の円周壁34Aによって延長されて変圧器の固定子38のケーシングを形成するように変更され、次いで、このアセンブリは同じ部品を構成する。一方、この第2の実施形態では、回転動的シール支持体32は、半径方向の戻り壁32Bによって終端された軸線方向の円周壁32Aによって延長されて回転子のケーシングを形成し、このアセンブリは、プロペラシャフト18の肩部18Cとプロペラシャフト18を支持する軸受28との間で挟持することによって軸線方向に保持される同じ部品を構成する。このようにして、この肩部に片持ち支持された回転子は、プロペラシャフト18の力を吸収する、軸受28のころ軸受により近い位置に配置された領域で、プロペラシャフトの小さな長さに載置される。
【0036】
プロペラシャフト18上への一体化を可能にするTFUのこの構成によってもたらされる利点は複数であり、また、省空間及び質量利得及び減速されたプロペラシャフトの片持ち梁の前述の利点に加えて、この半径方向の流れ構成によって、空隙の変化を制限するために、変圧器の回転子40をプロペラの曲げ動作から切り離すことができる。実際、回転子は、プロペラシャフトの利用可能な全長にわたって直接的に当接することはなく、従って、このシャフトの曲げ動作によって「駆動」されることはない。
【0037】
上述した実施形態では、プロペラシャフト18は一体に形成されている。それにもかかわらず、プロペラシャフトを少なくとも2つの部分でけることは可能であり、例えば、プロペラ固定フランジ24を有する「取り付けられたフランジ」と呼ばれる外側部分が、回転動的シール支持体32及びシャフトを支持するための軸受28を担持する内側部分に回転不能に取り付けられている。シャフトの内側部分に肩部を設けて、取り付けられたフランジをナットで締め付けることができる停止部を形成することができ、このナットは、取り付けられたフランジと肩部との間で回転動的シール支持体を挟持することができる。この実施形態では、減速ギアの完全な除去を必要とせずに、プロペラと取り付けられたフランジを引き抜くことだけで、電気的故障の場合に、特に、回転変圧器の交換を可能にし、従って、メンテナンス作業が容易となる。
【0038】
本発明により、ギアボックスの出力部におけるプロペラシャフトへの一体化が、TFU変圧器及びTFE変圧器の空間要求及び質量を最適化するために提案される。しかしながら、上記一体化が、国際公開第2013/167827号~国際公開第2014/167830号に記載されている「U字型」の変圧器又は「E字型」の変圧器と呼ばれる変圧器の技術に基づくことが好ましい場合、それらが、任意のタイプの多相の軸線方向又は半径方向の磁束の変圧器にも適用可能であることが明らかであることに留意されたい。
【0039】
また、
図1Aに示されるような航空機推進ユニットに関して上記の説明が本質的になされた場合には、当業者は、
図1Bに示されるヘリコプタの推進ユニットにおいて、本発明を実施することに困難はなく、(ヘリコプタの主回転子を駆動することができる減速ギアを有する)主ギアボックスの密封ケースは、上記密封ケースと同様であることに留意されたい。同様に、ヘリコプタの主回転子のシャフトでの発明の実施は、航空機のプロペラシャフトで前述した発明の実施と同様である。
【0040】
同様に、当業者は、密封ケースとしてフライングドローンの電気モータの密封ケースを採用し、プロペラシャフトをこのモータの出力軸として採用することで、発明の努力なしに、このフライングドローンのプロペラ(複数の翼を有するそのプロペラ)の直接的な駆動を保証することができるであろう。
【0041】
また、本発明がプロペラの翼の除氷システムへの供給のための回転電気伝達の構想内で開発された場合、本発明は、電力消費部材であり、かつ、その用途にかかわらず、複数の翼を有するプロペラへの電気エネルギの回転伝達を必要とする全ての電気部材にも適用可能であることは勿論である。これらの電気部材はこのように、プロペラピッチ作動システム、プロペラバランシングシステム、回転部分上の測定システムなどとしうるが、これに限定されるものではない。
また、本開示は以下の発明を含む。
第1の態様は、エンジン(20)と、前記エンジン(20)により回転駆動されるプロペラシャフト(18)とを有する、航空機用推進ユニットであって、前記プロペラシャフトは潤滑流体を収容する密封ケース(16A)を通過し、前記航空機用推進ユニットは、前記プロペラシャフトに連結されかつ電力消費部材である複数の電気部材(12A~12D)を更に有する、複数の翼(12)を備えたプロペラ(10)をさらに有し、前記密封ケースと前記プロペラシャフトとの間の密封は、前記プロペラシャフトに角度的に固定された回転動的シール支持体(32)と、前記プロペラ(10)に面する前記密封ケースの端部に固定された動的シール支持フランジ(34)との間に収容された、動的シール(30)によって保証されており、前記回転動的シール支持体は、前記プロペラシャフトに固定されており、かつ、前記プロペラシャフトを支持するための軸受(28)に当接して軸線方向に保持されている、航空機用推進ユニットにおいて、
前記航空機用推進ユニットは、前記複数の電気部材に電力を供給するために、前記プロペラシャフトによって回転させられる回転変圧器(36)であって、前記回転変圧器(36)は、そのケーシング(34A、34B)が前記動的シール支持フランジに固定された固定子(38)と、そのケーシング(40A; 32A、32B)が前記プロペラシャフトに固定される、回転子(40)とを有する、回転変圧器(36)を備える、航空機用推進ユニットである。
第2の態様は、前記固定子のケーシングは、全く同一の部分を形成しているように前記動的シール支持フランジに一体化されていることを特徴とする第1の態様における航空機用推進ユニットである。
第3の態様は、前記動的シール支持フランジは、複数のねじ(35)によって前記密封ケースの端部に固定されていることを特徴とする第1の態様又は第2の態様における航空機用推進ユニットである。
第4の態様は、前記動的シール支持フランジは、前記密封ケースの端部に締付カラー(44)により固定されていることを特徴とする第1の態様又は第2の態様における航空機用推進ユニットである。
第5の態様は、前記回転子のケーシングは、全く同一の部分を形成しているように前記回転動的シール支持体に一体化されていることを特徴とする第1の態様における航空機用推進ユニットである。
第6の態様は、前記プロペラシャフトの小さな長さに当接するだけでは前記回転子のケーシングが前記プロペラシャフトの曲げ動作に追従しないように、前記回転子のケーシングは前記プロペラシャフトの肩部(18C)上に片持梁状に配置されていることを特徴とする第5の態様における航空機用推進ユニットである。
第7の態様は、前記回転動的シール支持体(32)は、前記プロペラシャフトを支持するために、前記プロペラシャフトの前記肩部と前記軸受(28)との間に挟持されていることを特徴とする第6の態様における航空機用推進ユニットである。
第8の態様は、前記回転子のケーシングは、前記プロペラシャフトの肩部(18D)と前記回転動的シール支持体との間に挟持することにより、前記プロペラシャフトに固定されることを特徴とする第1の態様における航空機用推進ユニットである。
第9の態様は、前記複数の電気部材は、1つ又は複数の電気除氷素子(12A~12D)を備え、前記電力は、前記電気除氷素子に供給するために前記複数の翼を備える前記プロペラに供給されることを特徴とする第1の態様~第8の態様のいずれか1つにおける航空機用推進ユニットである。
第10の態様は、前記エンジンは、ターボプロップ又は航空機ターボファンターボジェットエンジン、ヘリコプターボシャフトエンジン、又は、フライングドローンの電気モータからなることを特徴とする第1の態様~第9の態様のいずれか1つにおける航空機用推進ユニットである。