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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】ベッド装置
(51)【国際特許分類】
   A47C 19/02 20060101AFI20230718BHJP
   A61G 7/05 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
A47C19/02 B
A61G7/05
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021069517
(22)【出願日】2021-04-16
(65)【公開番号】P2022164185
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000010032
【氏名又は名称】フランスベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】緑川 明浩
(72)【発明者】
【氏名】石橋 俊一
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-264819(JP,A)
【文献】特開平7-473(JP,A)
【文献】特開平8-336431(JP,A)
【文献】特開2006-326(JP,A)
【文献】国際公開第02/074592(WO,A1)
【文献】特開2007-144159(JP,A)
【文献】特開2005-144070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 19/02
A61G 7/00-075
A61G 1/00-06
B60B 33/00-08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドフレームと、
前記ベッドフレームに設けられた少なくとも1つのキャスタ機構と、
を備え、
前記キャスタ機構は、
キャスタと、
ブレーキパッドを有するブレーキ部材と、
前記ベッドフレームに連結され、前記ブレーキ部材を鉛直方向に移動可能に保持するとともに、前記キャスタを回動可能に保持するホルダと、
第1踏み込み部を有し、第1軸を中心として回動可能なロックレバーと、
第2踏み込み部を有し、前記第1軸と平行な第2軸を中心として回動可能な解除レバーと、
を備え、
前記キャスタ機構は、
前記ベッドフレームが設置される設置面に前記キャスタが接触し、かつ前記ブレーキパッドが前記設置面と離間したロック解除状態と、
前記キャスタが前記設置面と離間し、かつ前記ブレーキパッドが前記設置面と接触したロック状態と、
の間で切り替え可能であり、
前記キャスタ機構が前記ロック解除状態にあるとき、前記第1踏み込み部が踏まれると前記キャスタ機構が前記ロック状態に切り替わり、
前記キャスタ機構が前記ロック状態にあるとき、前記第2踏み込み部が踏まれると前記キャスタ機構が前記ロック解除状態に切り替わる、
ベッド装置。
【請求項2】
前記キャスタ機構が前記ロック解除状態にあるとき、前記第1踏み込み部が前記第2踏み込み部よりも前記鉛直方向における上方に位置し、
前記キャスタ機構が前記ロック状態にあるとき、前記第2踏み込み部が前記第1踏み込み部よりも前記鉛直方向における上方に位置する、
請求項1に記載のベッド装置。
【請求項3】
前記ブレーキ部材は、前記第1軸および前記第2軸と平行に延びるブレーキピンを有し、
前記ホルダは、前記ブレーキピンが前記鉛直方向に移動可能に挿された開口を有し、
前記ロックレバーは、前記開口から突出した前記ブレーキピンと係合する係合部を有し、
前記ロックレバーの回動に伴って前記ブレーキピンが前記開口内で移動することにより、前記ブレーキ部材が前記鉛直方向に移動する、
請求項1または2に記載のベッド装置。
【請求項4】
前記ブレーキピンは、前記キャスタ機構が前記ロック解除状態にあるときに前記開口内の第1位置に位置し、前記キャスタ機構が前記ロック状態にあるときに前記開口内の第2位置に位置し、
前記解除レバーは、
前記第1位置にある前記ブレーキピンと係合することにより前記ブレーキ部材の移動を規制する第1規制部と、
前記第2位置にある前記ブレーキピンと係合することにより前記ブレーキ部材の移動を規制する第2規制部と、
を有している、
請求項3に記載のベッド装置。
【請求項5】
前記キャスタ機構は、
前記ブレーキ部材を前記鉛直方向の上方に付勢する第1弾性体と、
前記第1規制部または前記第2規制部が前記ブレーキピンに押し当てられるように前記解除レバーを付勢する第2弾性体と、
をさらに備え、
前記第2規制部と前記ブレーキピンが係合した状態において前記第2踏み込み部が踏まれると、前記解除レバーが前記第2弾性体の弾性力に抗して回転し、これにより前記第2規制部と前記ブレーキピンの係合が解除され、前記ブレーキ部材が前記第1弾性体の弾性力によって上方に移動する、
請求項4に記載のベッド装置。
【請求項6】
前記ベッドフレームは、それぞれ前記ベッドフレームの長手方向に長尺であるとともに前記長手方向と交差する幅方向に間隔を空けて並ぶ一対のフレーム部材を備え、
前記一対のフレーム部材の各々は、前記長手方向における第1端部と、前記第1端部の反対側の第2端部とを有し、
前記一対のフレーム部材の前記第1端部の間隔は、前記一対のフレーム部材の前記第2端部の間隔よりも大きく、
前記キャスタ機構は、前記一対のフレーム部材の前記第1端部にそれぞれ設けられている、
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載のベッド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスタ機構を備えたベッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャスタ機構が設けられたベッド装置が存在する(例えば特許文献1)。キャスタ機構を設けることで、ベッド装置の移動が容易となる。ベッド装置を移動させた後には、ベッド装置が容易に動かないようにキャスタ機構がロックされる。このロックとその解除は、例えばキャスタ機構が備えるレバー(ペダル)によって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5294272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベッド装置のキャスタ機構には、その操作性や機能性に関して、種々の改善の余地がある。そこで、本発明は、操作性や機能性に優れたキャスタ機構を備えるベッド装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係るベッド装置は、ベッドフレームと、前記ベッドフレームに設けられた少なくとも1つのキャスタ機構と、を備えている。前記キャスタ機構は、キャスタと、ブレーキパッドを有するブレーキ部材と、前記ベッドフレームに連結され、前記ブレーキ部材を鉛直方向に移動可能に保持するとともに、前記キャスタを回動可能に保持するホルダと、第1踏み込み部を有し、第1軸を中心として回動可能なロックレバーと、第2踏み込み部を有し、前記第1軸と平行な第2軸を中心として回動可能な解除レバーと、を備えている。前記キャスタ機構は、前記ベッドフレームが設置される設置面に前記キャスタが接触し、かつ前記ブレーキパッドが前記設置面と離間したロック解除状態と、前記キャスタが前記設置面と離間し、かつ前記ブレーキパッドが前記設置面と接触したロック状態と、の間で切り替え可能である。前記キャスタ機構が前記ロック解除状態にあるとき、前記第1踏み込み部が踏まれると前記キャスタ機構が前記ロック状態に切り替わる。さらに、前記キャスタ機構が前記ロック状態にあるとき、前記第2踏み込み部が踏まれると前記キャスタ機構が前記ロック解除状態に切り替わる。
【0006】
一実施形態においては、前記キャスタ機構が前記ロック解除状態にあるとき、前記第1踏み込み部が前記第2踏み込み部よりも前記鉛直方向における上方に位置し、前記キャスタ機構が前記ロック状態にあるとき、前記第2踏み込み部が前記第1踏み込み部よりも前記鉛直方向における上方に位置する。
【0007】
一実施形態において、前記ブレーキ部材は前記第1軸および前記第2軸と平行に延びるブレーキピンを有し、前記ホルダは前記ブレーキピンが前記鉛直方向に移動可能に挿された開口を有し、前記ロックレバーは前記開口から突出した前記ブレーキピンと係合する係合部を有している。この場合において、前記ロックレバーの回動に伴って前記ブレーキピンが前記開口内で移動することにより、前記ブレーキ部材が前記鉛直方向に移動する。
【0008】
一実施形態において、前記ブレーキピンは、前記キャスタ機構が前記ロック解除状態にあるときに前記開口内の第1位置に位置し、前記キャスタ機構が前記ロック状態にあるときに前記開口内の第2位置に位置する。さらに、前記解除レバーは、前記第1位置にある前記ブレーキピンと係合することにより前記ブレーキ部材の移動を規制する第1規制部と、前記第2位置にある前記ブレーキピンと係合することにより前記ブレーキ部材の移動を規制する第2規制部と、を有している。
【0009】
一実施形態において、前記キャスタ機構は、前記ブレーキ部材を前記鉛直方向の上方に付勢する第1弾性体と、前記第1規制部または前記第2規制部が前記ブレーキピンに押し当てられるように前記解除レバーを付勢する第2弾性体と、をさらに備えている。さらに、前記第2規制部と前記ブレーキピンが係合した状態において前記第2踏み込み部が踏まれると、前記解除レバーが前記第2弾性体の弾性力に抗して回転し、これにより前記第2規制部と前記ブレーキピンの係合が解除され、前記ブレーキ部材が前記第1弾性体の弾性力によって上方に移動する。
【0010】
一実施形態において、前記ベッドフレームは、それぞれ前記ベッドフレームの長手方向に長尺であるとともに前記長手方向と交差する幅方向に間隔を空けて並ぶ一対のフレーム部材を備えている。前記一対のフレーム部材の各々は、前記長手方向における第1端部と、前記第1端部の反対側の第2端部とを有している。前記一対のフレーム部材の前記第1端部の間隔は、前記一対のフレーム部材の前記第2端部の間隔よりも大きい。さらに、前記キャスタ機構は、前記一対のフレーム部材の前記第1端部にそれぞれ設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、操作性や機能性に優れたキャスタ機構を備えるベッド装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係るベッド装置の概略的な斜視図である。
図2図2は、ベッド装置の概略的な側面図である。
図3図3は、ベッド装置が備える床板の形状の一例を概略的に示す側面図である。
図4図4は、ベッド装置が備える下部フレームの概略的な平面図である。
図5図5は、ベッド装置が備える第1キャスタ機構の概略的な側面図である。
図6図6は、第1キャスタ機構が備えるホルダの概略的な三面図である。
図7図7は、第1キャスタ機構が備えるブレーキ部材の概略的な側面図である。
図8図8は、第1キャスタ機構が備えるロックレバーの概略的な三面図である。
図9図9は、第1キャスタ機構が備える解除レバーの概略的な三面図である。
図10図10は、第1キャスタ機構の動作を説明するための図である。
図11図11は、第1キャスタ機構の動作を説明するための図である。
図12図12は、第1キャスタ機構の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るベッド装置Bの概略的な斜視図である。図2は、ベッド装置Bの概略的な側面図である。以下の説明においては、図示したようにX方向、Y方向およびZ方向を定義する。X方向は、ベッド装置Bの頭側から足側に向かう方向である。Y方向は、ベッド装置Bの幅方向である。Z方向は、ベッド装置Bの高さ方向(鉛直方向)である。Y方向の矢印が示す側(仰臥位の利用者から見た左)を「左」と言い、その反対側(仰臥位の利用者から見た右)を「右」と言うことがある。また、Z方向の矢印が示す側を「上」または「上方」と言い、その反対側を「下」または「下方」と言うことがある。
【0014】
ベッド装置Bは、床板1と、駆動機構2と、ベッドフレーム3とを備えている。床板1の上には図示せぬマットレス等が置かれる。本実施形態において、床板1は、利用者の背部を支持する背板部10と、利用者の腰部を支持する腰板部11と、利用者の脚部を支持する脚板部12とを備えている。
【0015】
背板部10は、中央板10Cと、一対の側板10L,10Rとを含む。側板10L,10Rは、中央板10Cの幅方向(Y方向)における左右両側に対し、それぞれ中央板10Cの長手方向(図1の状態においてはX方向)と平行な軸周りに回動可能に連結されている。
【0016】
腰板部11は、第1腰板13と、第2腰板14とを含む。脚板部12は、利用者の大腿部を支持する大腿部板15と、利用者の膝部または腓腹部を支持する膝板16と、利用者の足部を支持する第1足板17および第2足板18とを含む。
【0017】
中央板10Cと第1腰板13、第1腰板13と第2腰板14、第2腰板14と大腿部板15、大腿部板15と膝板16、膝板16と第1足板17は、Y方向と平行な軸周りに回動可能に連結されている。第2足板18は、第1足板17に対してスライド可能である。第1足板17と第2足板18は、少なくとも一部が重なっている。
【0018】
図1においては、背板部10、腰板部11および脚板部12が水平(X-Y平面と平行)である。一方、図2においては、背板部10および第1腰板13がZ方向に立ち上がるとともに、膝板16が頂点となるように脚板部12が屈曲している。
【0019】
駆動機構2は、床板1を支持するとともに、リモートコントローラの操作により入力される指示に応じて床板1を後述する各種の形状に変形させる。ベッドフレーム3は、下部フレーム31と、上部フレーム32とを備えている。これらフレーム31,32は、いずれも床板1の下方に配置されている。下部フレーム31は、上部フレーム32を支持している。下部フレーム31は、第1キャスタ機構CM1および第2キャスタ機構CM2を備えている。
【0020】
図2に示すように、駆動機構2は、床板1を支持するための要素として、固定ピン21と、背上げフレーム22と、膝上げアーム23と、膝上げアーム23の先端に取り付けられた膝上げローラ24と、第1リンク25と、第2リンク26とを備えている。
【0021】
固定ピン21は、第2腰板14に設けられた一対の孔14a(図1参照)に通されている。背上げフレーム22は、背板部10(中央板10C)の裏面を支持している。膝上げローラ24は、大腿部板15の裏面を支持している。第1リンク25は、第1足板17を回動可能に支持している。第2リンク26は、第2足板18を回動可能に支持している。
【0022】
駆動機構2は、複数のモータやその動力を床板1の各部に伝達するための部材を有している。駆動機構2は、背上げフレーム22、膝上げアーム23、第1リンク25および第2リンク26の位置関係や傾斜角度を調整することにより、床板1を種々の形状に変形させることが可能である。
【0023】
図3は、床板1の形状の一例を概略的に示す側面図である。図3(a)に示す床板1においては、図1の例と同じく、背板部10、腰板部11および脚板部12がいずれも水平に並んでいる。以下、少なくとも背板部10が水平(X-Y平面と平行)な床板1の形状を臥位状態と呼ぶ。
【0024】
図3(b)に示す床板1においては、図2の例と同じく、背板部10がZ方向に立ち上がるとともに、腰板部11および脚板部12が曲がっている。具体的には、第1腰板13がZ方向に立ち上がるとともに、膝板16が大腿部板15および各足板17,18よりも上方に位置するように脚板部12が上方に凸の形状を成している。
【0025】
図3(c)に示す床板1においては、各足板17,18が腰板部11および大腿部板15の下方に位置している。大腿部板15は、例えば上部フレーム32の足側の端部32a近傍に位置しており、腰板部11とともに座面を形成する。膝板16は、大腿部板15と第1足板17の間でZ方向に延びている。以下、このような床板1の形状を座位状態と呼ぶ。
【0026】
図3(d)に示す床板1も座位状態にあり、図3(c)の例よりも床板1全体が前傾している。本実施形態における「前傾」は、少なくとも背板部10の上端が足側に向かい、かつ背板部10の下端が頭側に向かうように床板1が回動することを意味する。このような床板1の形状への変形は、利用者が座位から立ち上がる動作の補助に役立つ。
【0027】
このように、床板1は、図3(a)に示す臥位状態から図3(b)に示す形状を経て図3(c)(d)に示す座位状態に変形可能である。
【0028】
図3(a)~(c)には、第1足板17と第2足板18が重なる距離Dを示している。距離Dや各足板17,18が重なる面積Sは、図3(a)に示す臥位状態から図3(c)に示す座位状態に向けて増加する。すなわち、臥位状態から座位状態への変形に際して、第1足板17および第2足板18は、互いに重なる面積が増す方向にスライドする。
【0029】
図4は、下部フレーム31の概略的な平面図である。下部フレーム31は、一対のフレーム部材311と、横桟312,313とを備えている。一対のフレーム部材311は、X方向(ベッドフレーム3の長手方向)に長尺であるとともに、Y方向(ベッドフレーム3の幅方向)に間隔を空けて並んでいる。横桟312,313は、Y方向と平行に延び、一対のフレーム部材311を接続している。
【0030】
各フレーム部材311は、X方向における第1端部311aと、第1端部311aの反対側の第2端部311bとを有している。第1端部311aは、ベッド装置Bの上に寝る利用者の足側の端部である。第2端部311bは、ベッド装置Bの上に寝る利用者の頭側の端部である。
【0031】
図4の例において、各フレーム部材311は、X方向およびY方向のそれぞれに対して傾斜した傾斜部311cを有している。各フレーム部材311において、この傾斜部311cを除く部分は、X方向と平行である。傾斜部311cを有していることにより、各第1端部311aの間のY方向における間隔W1は、各第2端部311bの間のY方向における間隔W2よりも大きい。このように、足側において一対のフレーム部材311の間隔を大きくすることで、図3(c)(d)に示したように足板17,18を上部フレーム32の下方に回り込ませる機構を設けるスペースが確保されている。
【0032】
本実施形態においては、各フレーム部材311の第1端部311aに第1キャスタ機構CM1が設けられている。また、各フレーム部材311の第2端部311bに第2キャスタ機構CM2が設けられている。
【0033】
第1キャスタ機構CM1は、キャスタ4Aを備えている。詳しくは後述するが、キャスタ4Aは、図2および図4に示すキャスタ軸AXa1を中心に回動(転動)可能である。キャスタ軸AXa1は、Y方向と平行である。
【0034】
第2キャスタ機構CM2は、キャスタ4Bを備えている。キャスタ4Bは、図2および図4に示すキャスタ軸AXb1を中心に回動(転動)可能であるとともに、Z方向と平行なキャスタ軸AXb2を中心に回動(旋回)可能である。キャスタ軸AXb1は、Z方向と垂直を成す。キャスタ4Bがキャスタ軸AXb2を中心に回転すると、キャスタ軸AXb1がX-Y平面内で回転する。
【0035】
図5は、第1キャスタ機構CM1の概略的な側面図である。第1キャスタ機構CM1は、キャスタ4Aの他に、ホルダ5と、ブレーキ部材6と、ロックレバー7と、解除レバー8とを備えている。
【0036】
キャスタ4Aは、キャスタ軸AXa1を中心に回動可能な一対のホイール41と、各ホイール41の外周部に設けられた複数の回転体42とを備えている。一対のホイール41は、Y方向に重ねられている。各ホイール41に設けられる複数の回転体42は、キャスタ軸AXa1を中心とした周方向において一定の間隔で並んでいる。
【0037】
各回転体42は、例えば樹脂材料で形成された円筒状の部材であり、キャスタ軸AXa2を中心に回動可能である。例えば、キャスタ軸AXa2は、回転体42が設けられた位置におけるホイール41の外周部の接線方向と平行である。各ホイール41にそれぞれ設けられる回転体42の位置は、周方向においてずれている。これにより、キャスタ4Aの外周部に途切れなく回転体42が配置される。
【0038】
このような構成のキャスタ4Aであれば、ホイール41がキャスタ軸AXa1を中心に回転することでX方向またはその反対方向にベッド装置Bが移動可能となるだけでなく、回転体42が回転することでY方向またはその反対方向にベッド装置Bが移動可能となる。
【0039】
図6は、ホルダ5の概略的な三面図である。ホルダ5は、キャスタ4Aを保持するキャスタ保持部51と、ブレーキ部材9を保持するブレーキ保持部52とを有している。キャスタ保持部51およびブレーキ保持部52は、金属材料によって一体的に形成されている。図5に示したフレーム部材311は、例えばブレーキ保持部52に対してねじ止めや溶接などの適宜の手段で連結されている。
【0040】
キャスタ保持部51は、Y方向に対向する一対の側板511,512を有している。各側板511,512は、連結孔51a,51b,51cを有している。キャスタ4Aは、側板511,512の間に配置される。さらに、ホイール41の中心に設けられた連結孔および側板511,512の連結孔51aには、図5に示す軸部材54aが通される。これにより、キャスタ4Aは、キャスタ保持部51に対してキャスタ軸AXa1を中心として回動可能に連結される。連結孔51b,51cは、後述するようにロックレバー7および解除レバー8との連結に用いられる。
【0041】
ブレーキ保持部52は、上下が開口した中空状であり、Y方向に対向する側壁521,522と、X方向に対向する側壁523,524とを有している。側壁521,522は、Z方向に長尺な開口52aをそれぞれ有している。側壁524は、連結孔52bを有している。
【0042】
ホルダ5は、仕切部材53をさらに備えている。仕切部材53は、ブレーキ保持部52の内部に位置する底壁531と、底壁531の両端部から上方に延出する一対の側壁532,533と、側壁532,533の上端部にそれぞれ設けられた爪534,535とを有している。爪534,535は、それぞれブレーキ保持部52の側壁523,524の上端部に引っ掛かっている。
【0043】
底壁531は、貫通孔53aを有している。貫通孔53aは、開口52aの上方に位置している。側壁533は、連結孔53bを有している。図6には示していないが、仕切部材53とブレーキ保持部52は、連結孔52b,53bに通されたねじ等の連結部材により連結されている。
【0044】
図7は、X方向と平行に見たブレーキ部材6の概略的な側面図である。ブレーキ部材6は、第1円柱部61と、第1円柱部61よりも小径の第2円柱部62と、ブレーキパッド63と、端板64と、第1弾性体65と、ブレーキピン66とを備えている。
【0045】
第2円柱部62は、第1円柱部61の上端部から上方に延びている。円柱部61,62は、例えば金属材料により一体的に形成されている。ブレーキパッド63は、第1円柱部61の下端部に連結された支持板631と、支持板631の下面に設けられた底部632とを有している。例えば、支持板631および底部632は、平面視において円形である。例えば、支持板631は金属材料で形成され、底部632はゴムや樹脂材料で形成されている。
【0046】
端板64は、第2円柱部62の上端部に連結されている。第1弾性体65は、Z方向において第1円柱部61の上端部と端板64の間に位置している。本実施形態において、第1弾性体65は、第2円柱部62が通されたコイルばねである。
【0047】
第1円柱部61は、Y方向と平行な貫通孔6aを有している。ブレーキピン66は、貫通孔6aに嵌められている。ブレーキピン66の両端部は貫通孔6aから突出している。
【0048】
図5に示すように、ブレーキ部材6の大部分は、ブレーキ保持部52の内側に配置される。ブレーキパッド63は、ブレーキ保持部52の下方に位置している。第2円柱部62は、図6に示したホルダ5の貫通孔53aに通される。ブレーキピン66のうち貫通孔6aから突出した部分は、ホルダ5の一対の開口52aにそれぞれ通される。
【0049】
図8は、ロックレバー7の概略的な三面図である。ロックレバー7は、Y方向に対向する一対のアーム71,72と、第1踏み込み部73とを有している。アーム71,72は、連結孔7aと、係合孔7b(係合部)とをそれぞれ有している。ホルダ5は、アーム71,72の間に配置される。
【0050】
アーム71,72の連結孔7aには、図5に示す軸部材54bが通される。軸部材54bは、図6に示したホルダ5の各連結孔51bにも通される。これにより、ロックレバー7は、キャスタ保持部51に対し第1軸AX1を中心として回動可能に連結される。第1軸AX1は、Y方向と平行である。
【0051】
第1踏み込み部73は、平板状であり、アーム71,72を連結している。アーム71,72と第1踏み込み部73は、例えば金属材料によって一体的に形成されている。ただし、アーム71,72と第1踏み込み部73が別々に形成され、ねじ止めや溶接などの適宜の手段により連結されてもよい。
【0052】
図8においては、第1踏み込み部73がX方向およびY方向と平行な状態のロックレバー7を示している。このとき、係合孔7bは、X方向に長尺である。ロックレバー7の回動範囲において、係合孔7bは、ホルダ5の開口52aと重なる。アーム71,72の係合孔7bには、図7に示したブレーキ部材6のブレーキピン66のうち貫通孔6aから突出した部分がそれぞれ通される。
【0053】
図9は、解除レバー8の概略的な三面図である。解除レバー8は、一対のアーム81,82と、第2踏み込み部83とを有している。ホルダ5は、アーム81,82の間に配置される。また、解除レバー8は、ロックレバー7のアーム71,72の間に配置される。
【0054】
アーム81,82は、連結孔8aをそれぞれ有している。これら連結孔8aには、図5に示す軸部材54cが通される。軸部材54cは、図6に示したホルダ5の各連結孔51cにも通される。これにより、解除レバー8は、キャスタ保持部51に対し第2軸AX2を中心として回動可能に連結される。第2軸AX2は、Y方向と平行である。
【0055】
第2踏み込み部83は、平板状であり、アーム81,82を連結している。アーム81,82と第2踏み込み部83は、例えば金属材料によって一体的に形成されている。ただし、アーム81,82と第2踏み込み部83が別々に形成され、ねじ止めや溶接などの適宜の手段により連結されてもよい。
【0056】
解除レバー8は、一対の規制アーム84,85をさらに備えている。規制アーム84,85は、アーム81,82から下方に向けてそれぞれ延出している。規制アーム84は、第1規制部86と、第2規制部87とを有している。本実施形態において、これら規制部86,87は、いずれも規制アーム84の側辺からX方向に窪んだ滑らかな凹部である。第2規制部87は、第1規制部86よりも規制アーム84の先端側に位置している。規制アーム85も同様の規制部86,87を有している。
【0057】
第2踏み込み部83は、連結孔8bを有している。また、解除レバー8は、連結孔8bに一端が嵌められたピン88と、第2弾性体89とをさらに備えている。ピン88は、アーム81,82の間において下方に延びている。本実施形態において、第2弾性体89は、ピン88が通されたコイルばねである。
【0058】
図10乃至図12は、第1キャスタ機構CM1の動作を説明するための図である。これらの図においては、ロックレバー7の一部を破断している。本実施形態においては、軸AXa1,AX1,AX2が平行である。これら軸を中心とした第1回転方向R1および第2回転方向R2を各図に示すように定義する。
【0059】
第1弾性体65は、Z方向においてホルダ5の底壁531と端板64の間に位置している。フレーム部材311は、例えば金属製の中空部材であり、その上面には貫通孔311dが設けられている。解除レバー8のピン88は、貫通孔311dに通されている。これにより、第2弾性体89は、回転方向R1,R2においてフレーム部材311と第2踏み込み部83の間に位置している。
【0060】
図10においては、ベッドフレーム3が設置される設置面Fにキャスタ4Aが接触し、かつブレーキパッド63が設置面Fと離間している。以下、このような状態をロック解除状態と呼ぶ。
【0061】
ロック解除状態において、ブレーキピン66は、開口52a内の第1位置P1に位置している。第1位置P1は、例えば開口52aの上端部である。解除レバー8の第1規制部86は、第1位置P1にあるブレーキピン66と係合している。
【0062】
第2弾性体89は、解除レバー8を第1回転方向R1に付勢する。これにより、第1規制部86が第1位置P1にあるブレーキピン66に押し当てられる。規制アーム84,85の一部(第1規制部86と第2規制部87の間の凸部)がブレーキピン66の下方において開口52aを塞ぐため、ブレーキ部材6の自重によってはブレーキ部材6が下降しない。
【0063】
図10には表れていないが、図8に示したロックレバー7の各係合孔7bには、ブレーキピン66が係合している。したがって、ブレーキピン66が第1位置P1にあるとき、ロックレバー7は図10に示す姿勢で静止する。ロック解除状態においては、第1踏み込み部73が第2踏み込み部83よりもZ方向(鉛直方向)における上方に位置している。
【0064】
図11においては、矢印AR1で示すように、第1踏み込み部73が下方に踏み込まれている。このとき、ロックレバー7は第2回転方向R2に回転する。この回転時には、ブレーキピン66がロックレバー7によって下方に押され、解除レバー8が第2回転方向R2に回転し、ブレーキピン66が開口52a内の第2位置P2に移動する。これにより、底壁531と端板64の間で第1弾性体65が圧縮される。第2位置P2は、例えば開口52aの下端部である。
【0065】
ブレーキピン66が第2位置P2にあるとき、第2弾性体89の弾性力により、第2規制部87がブレーキピン66に押し当てられる。このように第2規制部87とブレーキピン66が係合した状態においては、規制アーム84,85の一部(第1規制部86と第2規制部87の間の凸部)がブレーキピン66の上方において開口52aを塞ぐため、圧縮された第1弾性体65の弾性力によってはブレーキ部材6が上昇しない。
【0066】
図11においては、ブレーキパッド63の底部632が設置面Fと接触している。さらに、キャスタ4Aと設置面Fの間に隙間Gが形成されている。以下、このようにキャスタ4Aが設置面Fと離間し、かつブレーキパッド63が設置面Fと接触した状態を、ロック状態と呼ぶ。
【0067】
ロック状態においては、キャスタ4Aが設置面Fから浮いているため、ベッド装置Bが設置面Fに対して安定的に支持される。また、ロック状態においては、第2踏み込み部83が第1踏み込み部73よりもZ方向における上方に位置している。
【0068】
ロック状態は、第2踏み込み部83を踏むことにより解除できる。すなわち、図12において矢印AR3で示すように第2踏み込み部83が下方に踏み込まれると、解除レバー8が第2弾性体89の弾性力に抗して第2回転方向R2に回転し、第2規制部87がブレーキピン66から離間する。このとき、矢印AR4で示すように、ブレーキ部材6が第1弾性体65の弾性力によって上方に移動する。
【0069】
第2踏み込み部83から足が離れると、第1キャスタ機構CM1は、図10に示すロック解除状態に戻る。すなわち、ブレーキピン66が第1位置P1に移動し、ロックレバー7が第1回転方向R1に回転し、第1規制部86がブレーキピン66に係合する。
【0070】
以上のように、本実施形態に係る第1キャスタ機構CM1においては、ロックレバー7と解除レバー8によってロック解除状態とロック状態とを切り替えることができる。このように2種類のレバーの踏み込みでロック状態への切り替えとロック解除状態への切り替えを行う構成であれば、ロック状態とロック解除状態の切り替えが容易であり、ベッド装置Bの操作性が向上する。また、ロック状態においてはキャスタ4Aが設置面Fと離間するため、ベッド装置Bの安定性が向上する。
【0071】
ロック解除状態においては、ロックレバー7の第1踏み込み部73が解除レバー8の第2踏み込み部83よりも上方に位置する。一方、ロック状態においては、第2踏み込み部83が第1踏み込み部73よりも上方に位置する。これらにより、ロック状態からロック解除状態へ、あるいはロック解除状態からロック状態へと切り替える際にレバーを踏み込みやすくなるし、踏むべきレバーが明確となる。
【0072】
本実施形態においては、ロックレバー7および解除レバー8がいずれもホルダ5からフレーム部材311に向かう方向に延びており、第2踏み込み部83が第1踏み込み部73と軸AX1,AX2との間に位置している。さらに、軸AX1,AX2がいずれもキャスタ軸AXa1よりもフレーム部材311側に位置している。このような構成であれば、ロックレバー7および解除レバー8がキャスタ4Aの前方に張り出さない。したがって、ベッド装置Bを移動させる際に、第1キャスタ機構CM1が部屋の壁部や障害物に当たりにくい。
【0073】
図4を用いて説明したように、本実施形態においては、一対のフレーム部材311の間隔が足側において大きい。このような構成においては、ベッド装置を移動する際に足側のキャスタ機構が部屋の壁部等や障害物に当たりやすい。ベッド装置を搬入または搬出する部屋の入口が狭い場合には、足側のキャスタ機構が入口の縁に当たり、作業を円滑に行えない場合も生じ得る。
【0074】
仮に、第2キャスタ機構CM2のように、Z方向と平行な軸を中心としてキャスタが回動可能なキャスタ機構を足側に設けた場合、キャスタがベッドフレーム3の幅方向に張り出すこともあるため、入口の縁に当たりやすい。一方で、Z方向と平行な軸を中心としてキャスタが回動せず、X方向に沿った移動のみが可能なキャスタ機構を足側に設けると、ベッド装置Bの移動方向が制限されてしまう。
【0075】
この点に関し、本実施形態に係る第1キャスタ機構CM1のキャスタ4Aは、Z方向と平行な軸を中心として回動可能でないものの、図5を用いて説明した通りX方向だけでなくY方向にも移動可能である。これにより、ベッド装置Bの移動方向を広く確保しつつも、狭い入口を通じたベッド装置Bの搬入または搬出作業が容易になる。ホルダ5、ブレーキ部材6、ロックレバー7および解除レバー8を含む第1キャスタ機構CM1のロック構造は、このようなキャスタ4Aのロックに適している。
【0076】
なお、本実施形態は、本発明の範囲を当該実施形態にて開示した構成に限定するものではない。本発明は、本実施形態にて開示した構成を種々の態様に変形して実施することができる。
【0077】
例えば、本実施形態においては床板1の形状を変形可能なベッド装置Bに対して第1キャスタ機構CM1を設ける場合を例示した。しかしながら、第1キャスタ機構CM1は、床板が変形しないベッド装置に対しても適用可能である。
【0078】
ホルダ5、ブレーキ部材6、ロックレバー7および解除レバー8を含むロック構造は、キャスタ4A以外の種類のキャスタに対しても適用できる。この場合であっても、本実施形態にて開示した種々の好適な効果を得ることができる。
【0079】
ホルダ5、ブレーキ部材6、ロックレバー7および解除レバー8等の形状は、本実施形態において意図された作用を奏するものであれば、各図に開示したものに限られない。また、第1弾性体65および第2弾性体89の配置態様も各図に開示したものに限られない。第1弾性体65および第2弾性体89は、コイルスばね以外の弾性体であってもよい。
【0080】
ベッド装置Bは、必ずしも足側に第1キャスタ機構CM1を備え、頭側に第2キャスタ機構CM2を備える必要はない。他の例として、足側および頭側の双方に第1キャスタ機構CM1が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0081】
B…ベッド装置、CM1…第1キャスタ機構、CM2…第2キャスタ機構、1…床板、2…駆動機構、3…ベッドフレーム、4A…キャスタ、5…ホルダ、6…ブレーキ部材、7…ロックレバー、8…解除レバー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12