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特許7314225低温排出制御のためのSCRとPNAの組み合わせ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】低温排出制御のためのSCRとPNAの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/76 20060101AFI20230718BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230718BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20230718BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20230718BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
B01J29/76 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 228
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/08 A
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/28 Q
【請求項の数】 37
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021157548
(22)【出願日】2021-09-28
(62)【分割の表示】P 2017526562の分割
【原出願日】2015-11-18
(65)【公開番号】P2022020628
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】62/081,894
(32)【優先日】2014-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バージェス, ゲイリー アダム
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラー, ガイ リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ギャル, ミロスワフ
(72)【発明者】
【氏名】グリーン, アレキサンダー ニコラス マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハリス, マシュー エベン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス, ポール リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ワイリー, ジェームズ アレキサンダー
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0084222(US,A1)
【文献】特表2010-507480(JP,A)
【文献】特開2013-013894(JP,A)
【文献】米国特許第07332135(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 29/76
B01D 53/94
F01N 3/00 -3/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒物品及び近位連結触媒化スートフィルター(CSF)又はSCRフィルター(SCRF)を備えた排気システムであって、前記触媒物品がSCR触媒とNOx吸着触媒を含み、ここで:
(a)前記SCR触媒が、金属含有モレキュラーシーブを含み、前記SCR触媒中の前記金属が銅を含み;及び
(b)前記NOx吸着触媒が、金属含有モレキュラーシーブを含み、前記金属が、コバルト、マンガン、パラジウム又は亜鉛であり、前記金属含有モレキュラーシーブ中のモレキュラーシーブが、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、及びZON、並びにそれらの混合物又は連晶からなる群から選択される骨格タイプを含み、
前記CSF又はSCRFが触媒物品の下流に配置される、排気システム。
【請求項2】
追加のSCR又はSCRF触媒を更に含み、該追加のSCR又はSCRF触媒が、触媒物品の下流に配置される、請求項1に記載の排気システム。
【請求項3】
触媒物品の上流でシステム内に尿素を添加する第一の手段と、触媒物品の後でシステム内に尿素を添加する第二の手段とを更に含む、請求項1又は2に記載の排気システム。
【請求項4】
前記第一の手段を制御して前記触媒物品の前でシステム内に尿素を添加する手段を更に備え、前記第一の手段を制御してシステム内に尿素を添加する手段が、触媒物品の温度がライトオフ温度より低いときに尿素の導入を停止又は減少させる、請求項3に記載の排気システム。
【請求項5】
前記SCR触媒の金属含有モレキュラーシーブにおけるモレキュラーシーブが、アルミノシリケートモレキュラーシーブ、アルミノホスフェートモレキュラーシーブ、シリコアルミノホスフェートモレキュラーシーブを含む、請求項1に記載の排気システム。
【請求項6】
前記SCR触媒の金属含有モレキュラーシーブにおけるモレキュラーシーブが、AEI、BEA(ベータゼオライト)、CHA(チャバザイト)、FAU(ゼオライトY)、FER(フェリエライト)、MFI(ZSM-5)及びMOR(モルデナイト)からなる群から選択される骨格タイプ又はエリオナイトを含む、請求項5に記載の排気システム。
【請求項7】
前記NOx吸着触媒中の前記金属含有モレキュラーシーブの前記モレキュラーシーブが、アルミノシリケート、アルミノホスフェート、又はシリコアルミノホスフェートを含む、請求項1に記載の排気システム。
【請求項8】
前記SCR触媒中の前記金属含有モレキュラーシーブの前記モレキュラーシーブが、前記NOx吸着触媒中の前記金属含有モレキュラーシーブのモレキュラーシーブと同じである、請求項5に記載の排気システム。
【請求項9】
前記SCR触媒中の前記金属含有モレキュラーシーブの前記モレキュラーシーブが、前記NOx吸着触媒中の前記金属含有モレキュラーシーブのモレキュラーシーブと異なる、請求項5に記載の排気システム。
【請求項10】
前記金属含有モレキュラーシーブ中の前記モレキュラーシーブが、10以上かつ100以下のSARを有するアルミノシリケート、又は5%以上かつ15%以下のシリカを含むシリカアルミノホスフェートを含む、請求項1に記載の排気システム。
【請求項11】
前記NOx吸着触媒中の前記金属がパラジウム又は亜鉛を含む、請求項1に記載の排気システム。
【請求項12】
前記NOx吸着触媒中の前記金属含有モレキュラーシーブが、5以上かつ100以下のSARを有するアルミノシリケート、又は5%以上かつ15%以下のシリカを含むシリカアルミノホスフェートを含む、請求項11に記載の排気システム。
【請求項13】
前記NOx吸着触媒中の前記金属が、パラジウムを含み、前記NOx吸着触媒中のパラジウム含有モレキュラーシーブが、パラジウム含有シリコアルミノホスフェートであり、前記シリコアルミノホスフェートが、5%以上かつ15%以下のシリカを含む、請求項11に記載の排気システム。
【請求項14】
前記SCR触媒中の前記金属が銅であり、前記NOx吸着触媒中の前記金属がパラジウムである、請求項1に記載の排気システム。
【請求項15】
前記NOx吸着触媒中の金属が、NOx吸着触媒の全重量に基づき0.01~20重量%の濃度で存在する、請求項1に記載の排気システム。
【請求項16】
触媒物品が前記SCR触媒を含む第一層と前記NOx吸着触媒を含む第二層を含む、請求項1に記載の排気システム。
【請求項17】
前記第一層は、触媒物品を通過する排気ガスが前記第二層との接触前に接触するように配置される、請求項16に記載の排気システム。
【請求項18】
前記第一層は、前記第二層の上に位置する上層である、請求項16に記載の排気システム。
【請求項19】
前記第一層は前記第二層に隣接している、請求項17に記載の排気システム。
【請求項20】
前記第一層と前記第二層が双方とも同じ基材上に位置する、請求項17に記載の排気システム。
【請求項21】
前記第一層は第一基材上に配置され、前記第二層は第二基材上に配置される、請求項16に記載の排気システム。
【請求項22】
前記第二層がパラジウム又は亜鉛含有モレキュラーシーブを含む、請求項17に記載の排気システム。
【請求項23】
前記第一層と前記第二層の少なくとも一つの前記モレキュラーシーブが、AEI又はCHA構造を含む、請求項17に記載の排気システム。
【請求項24】
前記第一層と前記第二層のモレキュラーシーブが、AEI又はCHA構造を含む、請求項17に記載の排気システム。
【請求項25】
上流部分と下流部分を有するフロースルー基材、又は入口側と出口側を有するウォールフローフィルターを更に含む、請求項1に記載の排気システム。
【請求項26】
触媒物品が、SCR触媒を含む第一層と、NOx吸着触媒を含む第二層とを備え、
(a)前記基材がフロースルー基材であり、前記第一層が該基材の上流部分のコーティングであり、第二層が該基材の下流部分にコーティングされているか、又は(b)前記基材がウォールフローフィルターであり、前記第一層が該フィルターの入口側のコーティングであり、第二層が該フィルターの出口側のコーティングである、請求項25に記載の排気システム。
【請求項27】
前記SCR触媒が、前記フロースルー基材上で該基材の上流部分に配置され、前記NOx吸着触媒が、前記フロースルー基材上で該基材の下流部分に配置される、請求項26に記載の排気システム。
【請求項28】
前記SCR触媒が、前記ウォールフローフィルター上で該ウォールフローフィルターの入口に配置され、前記NOx吸着触媒が、前記ウォールフローフィルター上で該ウォールフローフィルターの出口側に配置される、請求項26に記載の排気システム。
【請求項29】
前記SCR触媒と前記NOx吸着触媒が、前記基材上に混合物として存在する、請求項25に記載の排気システム。
【請求項30】
一又は複数種の追加の触媒を更に含む、請求項25に記載の排気システム。
【請求項31】
前記ウォールフローフィルター又は前記フロースルー基材が、炭化ケイ素、コーディエライト又はチタン酸アルミニウムを含む、請求項25に記載の排気システム。
【請求項32】
前記SCR触媒中の前記金属は銅であり、前記NOx吸着触媒中の前記金属はパラジウム又は亜鉛であり、前記モレキュラーシーブは小細孔モレキュラーシーブである、請求項に記載の排気システム。
【請求項33】
前記小細孔モレキュラーシーブがCHA又はAEIを含む、請求項32に記載の排気システム。
【請求項34】
前記NOx吸着触媒中の前記金属がパラジウムである、請求項1に記載の排気システム。
【請求項35】
前記NOx吸着触媒がパラジウム含有モレキュラーシーブを含み、次の条件:
(a)アルミニウムに対する銅の比が0.01以上かつ0.5以下である;
(b)アルミニウムに対するパラジウムの比が0.01以上かつ0.5以下である;
(c)アルミニウムに対する(銅+パラジウム)の比が0.02以上かつ0.5以下である
の一又は複数が満たされる、請求項14に記載の排気システム。
【請求項36】
排気ガスを処理するための方法において、請求項1から35のいずれか一項に記載の排気システムにおいて、150℃~750℃の温度で、NOx濃度を有する排気ガス流を窒素含有還元剤と接触させる工程を含む、方法。
【請求項37】
エンジンのコールドスタート中に排気ガス流中のNOx濃度を低減させるための方法であって、NOxを含む排気ガス流を、請求項1から35のいずれか一項に記載の排気システムの触媒物品に接触させ、吸蔵NOxを炭化水素SCRによって還元することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的接触還元(SCR)触媒と受動的NOx吸着触媒とを含む触媒物品の使用に関する。これら触媒は、NOx吸着触媒として作用し、アンモニアスリップ制御並びに炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)転換をまたもたらしうるセリア担持パラジウム又は金属ゼオライトを含む下層とSCR触媒を含む上層とを備えた層状系に配置することができる。あるいは、これら触媒はゾーン化することができ、又は単一ウォッシュコート中で組み合わせることができる。
【背景技術】
【0002】
エンジンにおける炭化水素系燃料の燃焼は、大部分が比較的無害な窒素(N)、水蒸気(HO)、及び二酸化炭素(CO)を含む排気ガスを生成する。しかし、排気ガスは、有害及び/又は有毒物質、例えば不完全燃焼からの一酸化炭素(CO)、未燃焼燃料由来の炭化水素(HC)、過度な燃焼温度による窒素酸化物(NOx)、及び粒子状物質(大部分はスート)もまた比較的少量含んでいる。大気中に放出される煙及び排気ガスの環境への影響を軽減するために、好ましくは他の有害又は有毒物質を生じさせない方法により、望ましくない成分を除去し又はその量を低減させることが望ましい。
【0003】
典型的には、リーンバーンガスエンジンからの排気ガスは、炭化水素燃料の十分な燃焼を確保するために提供される高い割合の酸素のために、正味の酸化効果を有する。このようなガス中で、除去するのが最も面倒な成分の一つは、一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO)を含むNOxである。排気ガスは、還元の代わりに酸化反応を有利にするのに十分な酸素を含んでいるので、NOxのNへの還元が特に問題である。それにもかかわらず、NOxは、選択的接触還元(SCR)として一般に知られているプロセスにより還元することができる。SCRプロセスは、触媒の存在下、アンモニアのような窒素性還元剤の助けを借りて元素状窒素(N)及び水へのNOxの変換を含む。SCRプロセスでは、アンモニアのようなガス状還元剤が、排気ガスをSCR触媒と接触させる前に、排気ガス流に加えられる。還元剤は触媒上に吸着され、ガスが触媒化基材の中又はその上を通過するときにNOx還元反応が起こる。アンモニアを使用する化学量論的SCR反応の化学式は、
4NO+4NH+O→4N+6H
2NO+4NH+O→3N+6H
NO+NO+2NH→2N+3H
である。
【0004】
NHSCR排出制御システムは、その作動温度(典型的に200℃以上)に達すると非常に効果的である。しかしながら、これらのシステムは、その作動温度未満(「コールドスタート(冷間始動)」期間)では比較的非効果的である。例えば、ユーロ6の排出量を満たすために実施される現在の尿素ベースの選択的接触還元(SCR)の利用では、尿素の添加位置での温度が、尿素が添加されNOx転化に使用される前に約180℃を超えていることが必要である。180℃未満でのNOx転化は現在のシステムの使用では対応が難しく、将来の欧州及び米国の法律は低温NOx転化を重視する。SCR触媒は、NOの存在によって促進されるが、DOCの低NO酸化活性のため又はエンジンアウトNOがDOC上でHC又はCOによってNOに還元され、SCR前NOxが主にNOとして存在するため、低温で存在するNOは限られている。低温NOx排出は加熱方策によって制御することができるが、これにはCO排出という有害な影響がある。より厳しい国や地域の法律がディーゼルエンジンから排出されうる汚染物質の量を低下させるので、コールドスタート期間中の排出削減が大きな課題になっている。従って、コールドスタート状態中に排出されるNOxのレベルを低減させるための方法が引き続き探求されている。本発明は、低温でNOxを捕捉することができる受動的NOx吸着触媒をNH SCR触媒と組み合わせることによってこの課題に対処する。PNAは、NHスリップ並びにCO及びHC排出を制御するという更なる効果をもたらしうる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様では、触媒物品は、SCR触媒とNOx吸着触媒を含み、前記NOx吸着触媒は、セリア担持パラジウム又は金属含有モレキュラーシーブを含み、前記金属は、セリウム、クロム、コバルト、銅、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニッケル、ニオブ、パラジウム、銀、タングステン、バナジウム、及び亜鉛、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0006】
本発明の別の態様では、触媒物品は、(a)SCR触媒を含む第一層とNOx吸着触媒を含む第二層、又は(b)NOx吸着触媒を含む第一層とSCR触媒を含む第二層を含み、ここで、前記層は上層と下層として又は2つの隣接する層として存在し、第一層が第二層の前で排ガスの流れに接触する。
【0007】
本発明の更に別の態様では、触媒物品は、SCR触媒とNOx吸着触媒を含み、NOx吸着触媒中のモレキュラーシーブは、SCR触媒中の金属含有モレキュラーシーブ中のモレキュラーシーブと同じであり、NOx吸着触媒中の金属とSCR触媒中の金属は、モレキュラーシーブと組み合わされる。
【0008】
本発明の更なる態様では、触媒物品は、SCR触媒とNOx吸着触媒を含み、ここで、NOx吸着触媒中のモレキュラーシーブは、SCR触媒中の金属含有モレキュラーシーブ中のモレキュラーシーブとは異なり、NOx吸着触媒中の金属はNOx吸着触媒中のモレキュラーシーブとの第一の組み合わせにおけるものであり、SCR触媒中の金属はSCR触媒中のモレキュラーシーブとの第二の組み合わせにおけるものであり、第一の組み合わせと第二の組み合わせは第三の組み合わせで存在する。
【0009】
本発明の更に別の態様では、SCR触媒とNOx吸着触媒を含む触媒物品は、フロースルー基材又はウォールフローフィルターを更に含みうる。触媒物品がフロースルー基材を含み、第一層が基材の上流部分のコーティングであり、第二層が基材の下流部分にコートされている場合、SCR触媒はフロースルー基材上で基材の下流部分に配され得、NOx吸着触媒は、フロースルー基材上で基材の上流部分に配されうる。触媒物品がウォールフローフィルターを含む場合、SCR触媒を含む第一層は、フィルターの出口側のコーティングであり得、NOx吸着触媒を含む第二層は、フィルターの入口側のコーティングでありうる。
【0010】
本発明の更に別の態様では、触媒物品は、押出されたモノリス基材を含み、ここで、(a)押出された基材はSCR触媒を含み、NOx吸着触媒は押出された基材上に層として配され、あるいは(b)押出された基材はNOx吸着触媒を含み、SCR触媒は押出された基材上に層として配され、あるいは(c)押出された基材は、SCR触媒とNOx吸着触媒を含む。
【0011】
本発明の更なる態様では、触媒ウォッシュコートは、SCR触媒、NOx吸着触媒及び少なくとも一種の結合剤を含み、SCR触媒は、セリウム、クロム、コバルト、銅、ガリウム、インジウム、イリジウム、鉄、マンガン、モリブデン、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム、銀、スズ及び鉛から選択され;NOx吸着触媒は、モレキュラーシーブとセリウム、コバルト、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニオブ、パラジウム、タングステン、銀及び亜鉛からなる群から選択される金属を含み、ここで、(a)SCR触媒中の金属とNOx吸着触媒中の金属は異なっており、又は(b)SCR触媒中の金属とNOx吸着触媒中の金属は同じであり、かつ(i)NOx吸着触媒のみがモレキュラーシーブを含むか、又は(ii)SCR触媒中のモレキュラーシーブが、NOx吸着触媒中のモレキュラーシーブとは異なり、少なくとも一種の結合剤が、アルミナ、シリカ、非ゼオライトシリカ-アルミナ、天然粘土、TiO、ZrO及びSnOからなる群から選択される。
【0012】
本発明の別の態様では、排気システムは、SCR触媒とNOx吸着触媒と近位連結触媒化スートフィルター(CSF)を含む触媒物品を含み、前記NOx吸着触媒は、セリア担持パラジウム又はモレキュラーシーブ上に分散されたセリウム、コバルト、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニオブ、パラジウム、タングステン、銀及び亜鉛からなる群から選択される金属を含む。触媒化スートフィルターは、排気ガスの流れの中で触媒物品の下流又は上流の何れかに配置されうる。
【0013】
本発明の更に別の態様では、アンモニアスリップ触媒を製造する方法は、(a)モレキュラーシーブ上に分散させたセリウム、コバルト、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニオブ、パラジウム、タングステン、銀及び亜鉛からなる群から選択される金属を含むNOx吸着触媒を含む下層ウォッシュコートを基材上に適用することによって、基材上に下層を形成する工程、(b)基材上の下層ウォッシュコートを乾燥させる工程、(c)基材上の下層ウォッシュコートをか焼する工程、(d)SCR触媒を含む上層ウォッシュコートを工程(c)で形成されたか焼された下層上に適用することによって下層上に位置する上層を形成する工程、(e)基材上のか焼された下層上の上層ウォッシュコートを乾燥させる工程、及び(f)基材上の下層ウォッシュコート上の上層ウォッシュコートをか焼する工程を含む。本発明の別の態様では、アンモニアスリップ触媒の製造方法は、SCR触媒が下層に配置され、NOx吸着触媒が上層に配置される以外は同じ工程を含む。
【0014】
本発明の更に別の態様では、排気ガスを処理する方法は、ある濃度のNOxを有する排気ガス流を、(a)入口面の端部と出口面と入口面から出口面へのガス流の軸を有するウォールフローモノリスと、(b)SCR触媒を含む第一層と、セリア担持パラジウム又は金属含有モレキュラーシーブであって、金属がセリウム、コバルト、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニオブ、パラジウム、タングステン、銀及び亜鉛からなる群から選択されるものを含むNOxトラップ触媒を含む第二層とを含む組成物であって、第一層が第二層の前に排気ガスに接触するように配された組成物と、(c)場合によっては、第二のSCR触媒を含む第一層と貴金属を含む第二層を含む第二組成物であって、第一層が第二層の前に排気ガスに接触するように配された第二組成物を含む触媒物品の存在下、約150℃~約750℃の温度で窒素含有還元剤と接触させる工程を含み、ここで、前記第一組成物と第二組成物はウォールフローモノリスの一部分内に軸に沿って直列に配され、前記第一組成物は前記入口面に近接して配され、第二領域は前記出口面に近接して配される。
【0015】
本発明の更に別の態様では、排気ガス流中のアンモニア、NOx、一酸化炭素及び炭化水素の一又は複数の濃度を低減させる方法は、アンモニア、NOx、一酸化炭素及び/又は炭化水素を含む排気ガス流を、SCR触媒を含む第一層と、セリア担持パラジウム又は金属含有モレキュラーシーブを含むNOx吸着触媒を含む第二層とを含むアンモニアスリップ触媒であって、金属がセリウム、コバルト、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニオブ、パラジウム、タングステン、銀及び亜鉛からなる群から選択され、第一層が第二層の前で排気ガスに接触するように配される触媒に接触させることを含む。SCR触媒とNOx吸着触媒は、フロースルー基材又はウォールフローフィルター内に配されうる。本発明の更に別の態様では、排気ガス流中のアンモニア、一酸化炭素及び炭化水素の一又は複数の濃度を低減させる方法は、第一及び第二層の配向が、第二層が第一層の前に排気ガスと接触するように配されることを除いて、上述の工程を含む。
【0016】
本発明の別の態様では、排気ガス中のアンモニア、NOx、CO及び炭化水素の少なくとも一つを低減させる方法は、ガスを、(a)入口面の端部と出口面と該入口面から該出口面へのガス流の軸を有するウォールフローモノリスと、(b)第一SCR触媒を含む第一層と、セリア担持パラジウム又は金属含有モレキュラーシーブであって、金属がセリウム、コバルト、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニオブ、パラジウム、タングステン、銀及び亜鉛からなる群から選択されるものを含むNOx吸着触媒を含む第二層で、第二層が第一層の前に排気ガスに接触するように配されたものと、場合によっては、(c)第二SCR触媒を含む第一層と貴金属を含む第二層を含む第二組成物であって、第一層が第二層の前に排気ガスと接触するように配され、第一及び第二組成物がウォールフローモノリスの一部分内に軸に沿って直列に配され、前記第一組成物は入口面に近接して配され、第二領域は出口面に近接して配されるものを含む触媒物品と、ガス中のアンモニア、NOx、CO及び炭化水素の少なくとも一つのレベルを低減させるのに十分な時間と温度で接触させることを含む。
【0017】
本発明の別の態様では、排気ガス流中のアンモニア、NOx、CO及びTHCの少なくとも一つの濃度を低減させる方法は、アンモニア、NOx、CO及びTHCを含む排気ガス流を、ここに記載された触媒物品と、ガス中のアンモニア、NOx、CO及びTHCの少なくとも一つのレベルを低減させるのに十分な時間と温度で接触させることを含む。
【0018】
本発明の更に別の態様では、エンジンのコールドスタート中における排気ガス流中のNOx濃度を低減させる方法は、NOxを含む排気ガス流をここに記載の触媒物品に接触させることを含み、吸蔵NOxは炭化水素SCRによって還元される。
【0019】
本発明の更に別の態様では、アンモニアスリップ触媒は入口ゾーンと出口ゾーンを含み、SCR触媒は入口ゾーン内に配置され、NOx吸着触媒は出口ゾーン内に配置され、NOx吸着触媒は、金属がセリウム、コバルト、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニオブ、パラジウム、タングステン、銀及び亜鉛からなる群から選択された金属含有モレキュラーシーブを含み、SCR触媒及びNOx吸着触媒の少なくとも一つが、ウォールフローフィルター上に配置される。
【0020】
本発明の別の態様では、触媒物品は、SCR触媒とNOx吸着触媒を含み、SCR触媒は、金属含有モレキュラーシーブを含み、金属は、セリウム、銅、鉄、及びマンガン、並びにそれらの混合物からなる群から選択され、NOx吸着触媒は金属含有モレキュラーシーブを含み、該金属は、パラジウム又は銀、及びそれらの混合物からなる群から選択され、SCR触媒とNOx吸着触媒は同じモレキュラーシーブを含み、SCR触媒の金属とNOx吸着触媒の金属の両方がモレキュラーシーブ内において交換及び/又は置換される。
【0021】
本発明の更に別の態様では、ここに記載のSCR触媒とNOx吸着触媒を含む触媒物品を調製する方法は、(a)セリウム、銅、鉄、及びマンガン、並びにそれらの混合物からなる群から選択される第一金属をモレキュラーシーブに添加して、第一金属を含むモレキュラーシーブを形成する工程;(b)第一金属を含むモレキュラーシーブをか焼して第一か焼モレキュラーシーブを形成する工程;(c)パラジウム又は銀、並びにそれらの混合物からなる群から選択される第二金属を第一か焼モレキュラーシーブに添加して、第一金属と第二金属を含むモレキュラーシーブを形成する工程;(d)第一金属と第二金属を含むモレキュラーシーブをか焼する工程を含む。
【0022】
本発明の更に別の態様では、エンジンのコールドスタート中に排気ガス流中のNOx濃度を低減させる方法は、NOxを含む排気ガス流を、ここに記載されたSCR触媒とNOx吸着触媒を含む触媒物品に接触させ、エンジンの低温始動中に触媒物品中にNOxを吸蔵し、吸蔵NOxを炭化水素SCRによって還元することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
次の詳細な説明を添付図面に関連させて読めば、本発明を理解することができる。
図1】MVEG試験プロトコルを示すグラフである。
図2A-C】SCR触媒とNOx吸着触媒の位置を示す触媒物品の構成図である。
図2D-G】SCR触媒とNOx吸着触媒の位置を示す触媒物品の構成図である。
図3】比較例1及び2並びに実施例3~5の組成物を使用したNOx転化率を示すグラフである。
図4】様々な量の銅と1%のPdをCHAに分散させた触媒に、750℃でのエージング処理後に様々な温度で吸着されたNOの量(g/リットル)を示すグラフである。
図5】様々な量のCuと1%のPdをCHAに分散させた触媒から、750℃でのエージング処理と150℃でのNO吸蔵後にTPDの間に放出されるNOx放出量を示すグラフである。
図6】NH SCR反応の間に750℃でエージング処理した後に様々な量の銅と1%のPdをCHA上に分散させた触媒からのNOx転化%に対する温度の影響を示すグラフである。
図7】750℃でエージング処理した後に2.5%のCuと様々な量のPdをCHA上に分散させた触媒からのNOx濃度を示すグラフである。
図8】750℃でエージング処理した後に2.5%のCuと様々な量のPdをCHA上に分散させた触媒からの様々な温度での吸着されたNO2の量(g/リットル)を示すグラフである。
図9】NH SCR反応の間に750℃でエージング処理した後に、2.5%のCuと様々な量のPdをCHA上に分散させた触媒からのNOx転化%に対する温度の影響を示すグラフである。
図10】NH SCR反応の間に比較例1及び2並びに実施例3~5の組成物を使用したNOx転化率を示すグラフである。
図11】比較例1及び2並びに実施例3~5の組成物を使用したCO転化率を示すグラフである。
図12】MVEG実施中のSCR/PNA→CSF又はDOC→SCRF系におけるSCR/PNA又はSCRFの前の温度を経時的に示すグラフである。
図13】DOC→SCRF系におけるMVEG試験中のエンジンアウトNO/NOx比(SCRF前)を示す。
図14】SCR/PNA→CSF系におけるMVEG試験中のエンジンアウトNO/NOx比(SCR/PNA前)を示す。
図15】MVEG運転の間に、エンジンから放出された後(エンジンアウト)と、(a)ディーゼル酸化触媒(DOC)+Cu SCRF又は(b)パラジウム細孔ゼオライトの下層を有する銅SCRを通過した後に測定された累積全炭化水素(THC)量(g)を経時的に示すグラフである。
図16】MVEG運転の最初の250秒の間に、エンジンから放出された後(エンジンアウト)と、(a)DOC+Cu SCRF又は(b)パラジウム細孔ゼオライトの下層を有する銅SCRを通過した後に測定された累積NOx量(g)を経時的に示すグラフである。
図17】MVEG運転の間に、エンジンから放出された後(エンジンアウト)と、尿素添加と共に(a)DOC+Cu SCRF又は(b)パラジウム細孔ゼオライトの下層を有する銅SCRを通過した後に測定された累積NOx生成量(g)を経時的に示すグラフである。
図18】MVEG運転の間に、尿素添加と共に(a)DOC+Cu SCRF;又は(b)パラジウム細孔ゼオライトの下層を有する銅SCRを通過した後のアンモニアスリップ(ppm)を経時的に示すグラフである。
図19】MVEG運転の間に、エンジンから放出された後(エンジンアウト)と、尿素添加と共に(a)DOC+Cu SCRF又は(b)パラジウム細孔ゼオライトの下層を有する銅SCRを通過した後に測定される累積一酸化炭素(CO)生成量(g)を経時的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈から他の定義が明らかに示されていることがない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「触媒(a catalyst)」への言及は、2つ以上の触媒の混合物などを含む。
【0025】
ここで使用される場合、「か焼する」又は「か焼」という用語は、材料を空気又は酸素中で加熱することを意味する。この定義はか焼のIUPAC定義と一致している。(IUPAC.Compendium of Chemical Terminology,2版(the“Gold Book”).A.D.McNaught及びA.Wilkinson編,Blackwell Scientific Publications,Oxford(1997).XMLオンライン修正版:http://goldbook.iupac.org(2006-) M.Nic,J.Jirat,B.Kosata著;修正版A.Jenkins編 ISBN0-9678550-9-8.doi:10.1351/goldbook)。か焼は、金属塩を分解させ、触媒中の金属イオンの交換を促進するため、また触媒を基材に付着させるために実施される。か焼に使用される温度は、か焼される材料中の成分に依存し、一般に約400℃~約900℃でおよそ1~8時間である。ある場合には、か焼は約1200℃の温度まで実施されうる。ここに記載されたプロセスに関連する用途では、か焼は、一般に約400℃~約700℃の温度でおよそ1~8時間、好ましくは約400℃~約650℃の温度でおよそ1~4時間、実施される。
【0026】
MVEG(自動車排気グループ)は、ECE+EUDC試験サイクルを使用する車両からの排出試験のための試験プロトコルである。該手順は、EEC指令90/C81/01に記載の通りに実施され、中断なしに繰り返される4つのECEセグメントに一つのEUDC(ヨーロピアンアーバンドライビングサイクル)セグメントが続く構成である。このプロトコルで評価される場合の経時的な車両の車速を示すグラフを図1に示す。
【0027】
ここで使用される場合、「約」という用語は、およそを意味し、該用語が関連している値の場合によっては±25%、好ましくは±10%、より好ましくは±5%、又は最も好ましくは±1%である範囲を意味する。
【0028】
様々な数値要素の範囲又は範囲群が与えられている場合、特に指定しない限り、その範囲又は範囲群はその値を含みうる。
【0029】
本発明は、ここに記載される配置でのSCR触媒とNOx吸着触媒下層の組み合わせが、MVEG試験サイクルに示されるように、顕著な炭化水素及び二酸化炭素転化率をもたらし、エンジンのコールドスタート中のNOx吸蔵の更なる効果をもたらすという知見に関連する。前記NOx吸着触媒は、セリア担持パラジウム又は金属含有モレキュラーシーブを含み、該金属は特定の金属群から選択される。近位連結(close-coupled)SCRシステムを使用する際のリスクは、フィルターなどの熱質量がより高い基材上の酸化触媒のより低温の下流位置のためにHC/CO転化率が低下することである。添加/SCR点火の開始前のNOx除去もまた必要とされる。ここに記載された発明は、コールドスタート段階の間に、ここに記載のSCR触媒とNOx吸着触媒下層との組み合わせによって炭化水素が低減されるという知見に関する。このシステムは、DOC+SCRFシステムよりも優れたNOx性能をもたらす。NOx吸着材下層は、オンサイクルNOx転化に影響を及ぼすことなく、NHスリップ制御をまたもたらす。SCRをNOx吸着材下層と共に使用することにより、DOC/CSFの下流の遠い床下位置においてSCRの効果がまたもたらされ、SCR点火と還元剤添加の前の低温でのNOx吸蔵と、NHスリップ制御が最大のNOx転化を可能にするより高いNH充填レベルでの運転を可能にする。
【0030】
NOx吸着下層は、SCRフィルター(SCRF)内での統合されたNHスリップ制御を可能にするために使用することもできる。出口チャネルに被覆されたNOx吸着材成分は、NOx転化に悪影響を及ぼすことなく、NHスリップ制御と追加のHC/CO転化をもたらすであろう。
【0031】
ここに記載のSCR及びNOx吸着触媒の組み合わせは、HC、CO及びNOx除去の増加と選択的NHスリップ機能をもたらすことに加えて、下流の酸化被膜の性能に対する要求を低減させる。SCR点火と還元剤添加の前に低温(キーオンから約180℃まで)でNOx吸蔵をNOとしてもたらすことにより、DOC/CSF又はSCRFの下流のSCRに対してまた効果があるであろう。CSF NO及びHC酸化点火より低い温度では、エンジンアウトNOがDOC上のHCと反応し、SCR前NOxが主にNOであるので、低温NOx吸蔵は重要である。前記NOx吸着材下層は、特に低温、低NO条件下でより高いNOx転化率を与えるためにより高いNH充填レベルでのSCR操作を可能にするNHスリップ制御をもたらす。
【0032】
触媒物品は、SCR触媒とNOx吸着触媒を含み、前記NOx吸着触媒は、金属含有モレキュラーシーブを含み、該金属は、セリウム、コバルト、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニオブ、パラジウム、タングステン、銀及び亜鉛からなる群から選択され、前記SCR触媒が金属を含む場合、前記NOx吸着触媒中の金属と前記SCR触媒中の金属は異なる金属である。
【0033】
[触媒]
SCR触媒
SCR触媒は、卑金属、卑金属の酸化物、混合酸化物上に担持された金属、モレキュラーシーブ、金属含有モレキュラーシーブ又はそれらの混合物を含みうる。前記卑金属は、セリウム(Ce)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、及びバナジウム(V)、並びにそれらの混合物からなる群から選択されうる。アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア及びそれらの組み合わせなどの耐火性金属酸化物上に担持されたバナジウムからなるSCR組成物は周知であり、モバイル用途で商業的に広く使用されている。典型的な組成物は、その全内容が出典明示によりここに援用される米国特許第4010238号及び第4085193号に記載されている。特にモバイル用途において商業的に使用される組成物は、WO及びVがそれぞれ5~20重量%及び0.5~6重量%の範囲の濃度で分散されたTiOを含む。
【0034】
前記SCR触媒は、セリアにドープされたバナジウム、ニオブ、タンタル及び/又はタングステンを含みうる。好ましくは、バナジウム、ニオブ、タンタル及び/又はタングステンは、セリア上に0.1~9重量%で存在し、セリアは、バナジウム、ニオブ、タンタル及び/又はタングステンがドープされたセリアの少なくとも91重量%に存在する。
【0035】
前記SCR触媒は、(i)セリウム及びジルコニウムからなる担体材料としての混合酸化物又は複合酸化物又はそれらの混合物の上に分散された少なくとも一種の遷移金属;あるいは(ii)不活性な酸化物担体材料上に分散された単一酸化物又はそれらの複合酸化物又は単一酸化物と複合酸化物の混合物としての酸化セリウム及び酸化ジルコニウムであって、その上に少なくとも一種の遷移金属が分散され、該少なくとも一種の遷移金属が、VIB族金属、IB族金属、IVA族金属、VB族金属、VIIB族金属、VIII族金属及びこれらの任意の2種上の混合物からなる群から選択され、但し少なくとも一種の選択された遷移金属がタングステンであり、触媒成分中の酸化物としてのセリウム及びジルコニウムの含有量がCeZr(1-x)(ここで、X=0.1~0.9、好ましくはX=0.2~0.5)であるものからなる少なくとも一種の触媒成分を含む混合酸化物上に担持された金属を含む。このタイプのSCR触媒は、米国特許出願公開第2012/0141347号に記載されており、その全内容は出典明示によりここに援用される。
【0036】
前記SCR触媒は、モレキュラーシーブ又は金属含有モレキュラーシーブを含みうる。ここで使用される場合、「金属含有モレキュラーシーブ」は、金属交換又は金属置換モレキュラーシーブを意味する。前記SCR触媒は、アルミノシリケートモレキュラーシーブ、アルミノホスフェートモレキュラーシーブ、シリコアルミノホスフェートモレキュラーシーブ、金属含有アルミノシリケートモレキュラーシーブ、金属含有アルミノホスフェートモレキュラーシーブ、又は金属含有シリコアルミノホスフェートモレキュラーシーブを含みうる。好ましくは、モレキュラーシーブは金属含有モレキュラーシーブである。ここで使用される場合、モレキュラーシーブという用語は、次の材料から作製されたモレキュラーシーブを含む:アルミノシリケート、金属含有アルミノシリケート、アルミノホスフェート(AlPO)、金属含有アルミノホスフェート(MeAlPO)、シリコアルミノホスフェート(SAPO)、及び金属含有シリコ-アルミノホスフェート(MeAPSO)モレキュラーシーブ。この用語は、国際ゼオライト学会(IZA)によって出版されたゼオライト構造のデータベースに列挙された骨格構造の何れか一つを有する微小孔性アルミノシリケートに限定されていた伝統的なゼオライトモレキュラーシーブを含む。当業者は、上記の他のファミリーもまた当業者によってゼオライトであると考えられることを認識するであろう。
【0037】
前記SCR触媒は、小細孔、中細孔又は大細孔モレキュラーシーブ、又はそれらの組み合わせを含みうる。小細孔モレキュラーシーブは、8個までの四面体原子によって定まるチャネルを含む。中細孔モレキュラーシーブは、10員環によって定まるチャネルを含む。大細孔モレキュラーシーブは、12員環によって定まるチャネルを含む。
【0038】
前記SCR触媒は、アルミノシリケートモレキュラーシーブ、金属含有アルミノシリケートモレキュラーシーブ、アルミノホスフェート(AlPO)モレキュラーシーブ、金属含有アルミノホスフェート(MeAlPO)モレキュラーシーブ、シリコ-アルミノホスフェート(SAPO)モレキュラーシーブ、及び金属含有シリコ-アルミノホスフェート(MeAPSO)モレキュラーシーブ、並びにそれらの混合物からなる群から選択される小細孔モレキュラーシーブを含みうる。前記SCR触媒は、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、及びZON、並びにそれらの混合物及び/又は連晶からなる骨格タイプの群から選択される小細孔モレキュラーシーブを含みうる。好ましくは、小細孔モレキュラーシーブは、CHA、LEV、AEI、AFX、ERI、SFW、KFI、DDR及びITEからなる骨格タイプの群から選択される。
【0039】
前記SCR触媒は、AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、-PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、-SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI、及びWEN、並びにそれらの混合物及び/又は連晶からなる骨格タイプの群から選択される中細孔モレキュラーシーブを含みうる。好ましくは、中細孔モレキュラーシーブは、FER、MEL、MFI及びSTTからなる骨格タイプの群から選択される。
【0040】
前記SCR触媒は、AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、-RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY、及びVET、並びにそれらの混合物及び/又は連晶からなる骨格タイプの群から選択される大細孔モレキュラーシーブを含みうる。好ましくは、大細孔モレキュラーシーブは、AFI、BEA、MAZ、MOR及びOFFからなる骨格タイプの群から選択される。
【0041】
前記SCR触媒は、モレキュラーシーブ又は金属含有モレキュラーシーブを含み得、ここで、前記モレキュラーシーブ又は前記金属含有モレキュラーシーブ中の前記モレキュラーシーブは、AEI、BEA(ベータゼオライト)、CHA(チャバザイト)、FAU(ゼオライトY)、FER(フェリエライト)、MFI(ZSM-5)及びMOR(モルデナイト)からなる群から選択される骨格タイプを含む。前記骨格構造には、CHA、FAU、BEA、MFI、MORタイプのものが含まれるが、これらに限定されない。これらの構造を有するゼオライトの非限定的な例には、チャバザイト、ホージャサイト、ゼオライトY、超安定性ゼオライトY、ベータゼオライト、モルデナイト、シリカライト、ゼオライトX、及びZSM-5が含まれる。アルミノシリケートゼオライトは、少なくとも約5、好ましくは少なくとも約20で、約10~200の有用な範囲のSiO/Alとして定義されるシリカ/アルミナモル比(SAR)を有しうる。
【0042】
金属含有モレキュラーシーブは、外表面上の骨格外部位上又はモレキュラーシーブのチャネル、キャビティ、又はケージ内に堆積させられた周期律表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、又はIIB族のうちの一つからの少なくとも一種の金属を含みうる。金属は、ゼロ価金属原子又はクラスター、孤立カチオン、単核もしくは多核オキシカチオン、又は拡張金属酸化物を含むが、これらに限定されない幾つかの形態の一つでありうる。好ましくは、金属はセリウム、クロム、コバルト、銅、ガリウム、インジウム、イリジウム、鉄、マンガン、モリブデン、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム、銀、スズ及び亜鉛からなる群から選択される。より好ましくは、金属は銅である。
【0043】
金属含有モレキュラーシーブは、外表面上の骨格外部位上又はモレキュラーシーブのチャネル、キャビティ、又はケージ内に位置するVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、又はIIB族金属を約0.10重量%~約10重量%の範囲で含みうる。好ましくは、骨格外金属は、約0.2重量%~約5重量%の範囲の量で存在しうる。金属含有モレキュラーシーブ中の金属の重量%は、金属の重量を金属とモレキュラーシーの総重量で割って100倍したものである。
【0044】
前記SCR触媒は、約0.5~約4.0g/inの濃度で触媒物品中に存在しうる。触媒物品中に存在するSCRの量は、該物品中のSCR触媒のタイプに依存しうる。SCR触媒が卑金属又はその酸化物を含む場合、該卑金属は、SCR触媒の全重量に基づいて0.01~20重量%の濃度で存在しうる。SCR触媒がモレキュラーシーブ又は金属含有モレキュラーシーブを含む場合、モレキュラーシーブは、SCR触媒の全重量に基づいて40~100重量%の濃度で存在しうる。
【0045】
NOx吸着材
前記NOx吸着材は、セリウム担持パラジウム又は金属含有モレキュラーシーブを含み、該金属はセリウム、クロム、コバルト、銅、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニッケル、ニオブ、パラジウム、タングステン、銀バナジウム、及び亜鉛、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、前記金属はコバルト、マンガン、パラジウム、又は亜鉛である。より好ましくは、前記金属はパラジウム又は亜鉛である。最も好ましくは、前記SCR触媒中の前記金属は銅であり、前記NOx吸着触媒中の前記金属はパラジウムである。前記NOx吸着触媒中の前記金属含有モレキュラーシーブの前記モレキュラーシーブは、前記SCR触媒中のモレキュラーシーブの説明において上述したように、アルミノシリケート、アルミノホスフェート、又はシリコアルミノホスフェートを含みうる。前記SCR触媒が金属含有モレキュラーシーブを含む場合、前記SCR触媒中の前記金属含有モレキュラーシーブの前記モレキュラーシーブは、前記NOx吸着触媒中の前記金属含有モレキュラーシーブの同じモレキュラーシーブであり得、あるいは前記SCR触媒中の前記金属含有モレキュラーシーブのモレキュラーシーブは、前記NOx吸着触媒中の前記金属含有モレキュラーシーブのモレキュラーシーブとは異なるものであってもよい。
【0046】
前記NOx吸着触媒中の前記金属含有モレキュラーシーブの前記モレキュラーシーブは、前記SCR触媒において上述されたように、小細孔、中細孔又は大細孔モレキュラーシーブでありうる。前記NOx吸着触媒中の前記金属含有モレキュラーシーブの前記モレキュラーシーブは、好ましくは、前記SCR触媒において上述されたように、小細孔モレキュラーシーブである。前記小細孔モレキュラーシーブは、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、及びZON、並びにそれらの混合物又は連晶からなる群から選択される骨格タイプを含みうる。好ましくは、前記小細孔モレキュラーシーブは、チャバザイト(CHA)又はAEIである。好ましい中細孔モレキュラーシーブは、FER、MEL、MFI及びSTTを含む。好ましい大細孔モレキュラーシーブには、AFI、BEA、MAZ、MOR及びOFFが含まれる。好ましくは、前記金属含有モレキュラーシーブ中の前記モレキュラーシーブは、5から100のSARを有するアルミノシリケート又はアルミノホスフェートを含む。パラジウム含有モレキュラーシーブがパラジウム含有シリコアルミノホスフェートである場合、好ましくはシリコアルミノホスフェートは5%~15%のシリカを含む。
【0047】
前記NOx吸着触媒中の前記金属は、0.01~20重量%の濃度で存在しうる。前記金属含有モレキュラーシーブは、約0.5~約4.0g/inの濃度で前記触媒物品中に存在しうる。
【0048】
SCR触媒とNOx吸着触媒の混合物
触媒物品は、SCR触媒とNOx吸着触媒を含み得、前記SCR触媒は金属含有モレキュラーシーブを含み、該金属は、セリウム、銅、鉄、及びマンガン、並びにそれらの混合物からなる群から選択され、前記NOx吸着触媒は金属含有モレキュラーシーブを含み、該金属は、パラジウム又は銀、及びそれらの混合物からなる群から選択され、前記SCR触媒と前記NOx吸着触媒は、同じモレキュラーシーブを含み、前記SCR触媒中の金属と前記NOx吸着触媒中の金属は、モレキュラーシーブ内で交換及び/又は置換される。
【0049】
前記SCR及び前記NOx吸着触媒中の前記金属含有モレキュラーシーブの前記モレキュラーシーブは、アルミノシリケート、アルミノホスフェート、又はシリコアルミノホスフェートを含みうる。前記NOx吸着触媒中の前記金属含有モレキュラーシーブの前記モレキュラーシーブは、好ましくは小細孔モレキュラーシーブである。好ましくは、前記NOx吸着触媒中の前記金属含有モレキュラーシーブの前記モレキュラーシーブは、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、及びZON、並びにそれらの混合物又は連晶を含む。より好ましくは、前記モレキュラーシーブは、AEI又はCHA骨格タイプを含む。
【0050】
SCR触媒とNOx吸着触媒を含む触媒物品であって、前記SCR触媒は、金属がセリウム、銅、鉄、及びマンガン、並びにそれらの混合物からなる群から選択される金属含有モレキュラーシーブを含み、前記NOx吸着触媒は、金属がパラジウム又は銀、及びそれらの混合物からなる群から選択される金属含有モレキュラーシーブを含み、前記SCR触媒と前記NOx吸着材触媒が同じモレキュラーシーブを含み、前記SCR触媒の金属と前記NOx吸着触媒の金属がモレキュラーシーブ内で交換及び/又は置換される触媒物品を調製する方法が記載される。前記方法は、(a)セリウム、銅、鉄、及びマンガン、並びにそれらの混合物からなる群から選択される第一金属をモレキュラーシーブに添加して、前記第一金属を含むモレキュラーシーブを形成する工程;(b)前記第一金属を含む前記モレキュラーシーブをか焼して第一か焼モレキュラーシーブを形成する工程;(c)パラジウム又は銀、及びそれらの混合物からなる群から選択される第二金属を前記第一か焼モレキュラーシーブに添加して、前記第一金属と前記第二金属を含むモレキュラーシーブを形成する工程;(d)前記第一金属と前記第二金属を含む前記モレキュラーシーブをか焼する工程を含む。前記方法は工程(a1)及び工程(c1)を更に含み得、ここで、工程(a1)は前記第一金属を含む前記モレキュラーシーブを乾燥させることを含み、工程(c1)は前記第一金属と前記第二金属を含む前記モレキュラーシーブを乾燥させることを含む。前記第一及び第二金属を添加する工程(a)及び(c)は、含浸、吸着、イオン交換、インシピエントウェットネス法、沈殿、噴霧乾燥等々の一又は複数によって実施されうる。
【0051】
触媒物品は、上述の組成を有するSCR触媒とNOx吸着触媒を含み得、ここで、(a)前記NOx吸着触媒中の前記モレキュラーシーブが前記SCR中の金属含有モレキュラーシーブの前記モレキュラーシーブと同じ場合、前記NOx吸着触媒中の前記金属と前記SCR触媒中の前記金属は前記モレキュラーシーブと組み合わされており、あるいは(b)前記NOx吸着触媒中の前記モレキュラーシーブが、前記SCR触媒中の金属含有モレキュラーシーブの前記モレキュラーシーブと異なる場合には、前記NOx吸着触媒中の前記金属は前記NOx吸着触媒中の前記モレキュラーシーブとの第一の組み合わせにあり、前記SCR触媒中の前記金属は前記SCR触媒中の前記モレキュラーシーブとの第二の組み合わせにあり、かつ第一の組み合わせと第二の組み合わせは第三の組み合わせで存在する。好ましくは、前記NOx吸着触媒中の前記金属はパラジウムである。より好ましくは、前記SCR触媒中の前記金属は銅であり、前記NOx吸着触媒中の前記金属はパラジウムであり、前記モレキュラーシーブはチャバザイト又はAEIである。パラジウムは、噴霧乾燥又はPd硝酸塩での含浸によってモレキュラーシーブ中に導入されうる。前記モレキュラーシーブは水熱的にエージングされうる。前記触媒物品は、炭化水素-SCR活性を更に含みうる。前記触媒物品は、炭化水素SCRによって吸蔵されたNOxを還元しうる。好ましくは、銅添加量は、物品の全重量に基づいて0.1~10.0重量%である。好ましくは、パラジウム添加量は、物品の全重量に基づいて0.01~20.0重量%である。
【0052】
基材
「基材」という用語は、当該分野で一般的に知られているように、触媒と場合によっては担体が上に配置されうる実質的に不活性な材料を指す。基材は、任意の一般的に適した形態でありうる。例えば、基材は、フィルター、フロースルーモノリス、例えばセラミック、ハニカム、又は異なる押出構造を含みうる。
【0053】
固体基材は、排気ガス処理触媒の調製に典型的に使用される材料の何れかであり得、好ましくは、ハニカム構造を有する金属又は耐火セラミックを含む。流路が開口して流体連通するように、担体の入口又は出口面から貫通して延びる複数の微細で平行なガス流路を有するタイプのモノリス基材のような、任意の適切な基材を用いることができる。その流体入口からその流体出口への本質的に真っ直ぐな経路である流路は、流路を流れるガスが触媒材料に接触するように触媒が「ウォッシュコート」として被覆された壁によって画成される。モノリス担体の流路は、台形、長方形、正方形、正弦波状、六角形、楕円形、円形等々の任意の適切な断面形状及びサイズでありうる薄壁チャネルである。このような構造は、断面1平方インチ当たり約60~約600又はそれ以上のガス入口開口部(すなわち、「セル」)を含みうる。
【0054】
ハニカム基材は、該基材の入口面から出口面までほぼ延びる複数の隣接した平行チャネルを含み、両端が開口しているか(フロースルー基材)又はチェッカーボード型パターンで交互に端部が覆われている(ウォールフローフィルター)。この幾何形状により表面積対体積比が高くなる。ハニカム構造はプレートタイプよりもコンパクトであるが、圧力損失が大きく、より簡単に詰まる。しかし、殆どの移動用途では、好ましい基材はハニカムである。所定の用途では、ハニカムフロースルーモノリスは、高いセル密度、例えば1平方インチ当たり約600~800セル、及び/又は約0.18~0.35mm、好ましくは約0.20mm~約0.25mmの平均内壁厚さを有する。所定の他の用途では、ハニカムフロースルーモノリスは、好ましくは、約150セル~約600セル/平方インチ、より好ましくは約200セル~約400セル/平方インチの低いセル密度を有する。好ましくは、ハニカムモノリスは多孔質である。コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、セラミック、及び金属に加えて、基材に使用できる他の材料には、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム、α-アルミナ、ムライト、例えば針状ムライト、ポルサイト、サーメット、例えばAlZFe、Al/Ni又はBCZFe、又はそれらの任意の2つ以上のセグメントを含む複合材が含まれる。好ましい材料には、コーディエライト、炭化ケイ素、及びチタン酸アルミナが含まれる。所定の実施態様では、基材は不活性である。
【0055】
ハニカムの基材壁は、好ましくは、ウォッシュコーティングの助けとなる気孔率と孔径を有する。気孔率は、多孔質基材中の空隙の割合の尺度である。好ましくは、多孔質基材は、約10%~約80%、例えば約15%~約75%、約40%~約65%、又は約50%~約60%の気孔率を有する。細孔の相互接続性は、基材の全空隙容量の百分率として測定され、多孔質基材を貫通する、すなわちフィルターの入口面から出口面への連続経路を形成するために、細孔、空隙、及び/又はチャネルが接合される程度である。好ましくは、前記多孔質基材は、少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約40%の細孔相互接続容量を有する。
【0056】
基材壁の平均孔径は、水銀ポロシメトリーを含む任意の許容可能な手段によって決定することができる。好ましい多孔質基材は、約10μm~約40μm、例えば約20μm~約30μm、約10μm~約25μm、約10μm~約20μm、約20μm~約25μm、約10μm~約15μm、及び約15μm~約20μmの平均孔径を有する。
【0057】
フロースルーモノリス
前記触媒物品は、フロースルーモノリス基材を更に含み得、前記SCR触媒は第一層として該フロースルーモノリス基材上に配され、前記NOx吸着触媒は第二層として該フロースルーモノリス基材上に配される。前記触媒物品は、前記第一層が該物品を通る排気ガスの流れの方向において前記第二層の上流に位置するように構成されうる。前記触媒物品は、前記SCR触媒と前記NOx吸着触媒の混合物である触媒組成物を含みうる。
【0058】
フィルター
前記触媒物品はフィルターを更に含みうる。前記フィルターは、好ましくは炭化ケイ素、コーディエライト又はチタン酸アルミニウムを含みうる。前記SCR触媒は第一層として前記フィルター上に配され得、前記NOx吸着触媒は第二層として前記フィルター上に配される。前記触媒物品は、前記第一層が前記物品を通る排気ガスの流れの方向において第二層の上流に位置するように構成されうる。また、前記触媒物品は、前記第二層が前記物品を通る排気ガスの流れの方向において第一層の上流に位置するように構成されうる。前記触媒物品は、一又は複数の追加の層を含み得、追加の層は一又は複数の追加の触媒を含む。前記SCR触媒と前記NOx吸着触媒は前記フィルター上に混合物として存在しうる。前記SCR触媒と前記NOx吸着触媒は、ゾーン化された構成で前記フィルター上に存在しうる。
【0059】
押出基材
前記触媒物品は押出基材を含み得、ここで、(a)前記押出基材が前記SCR触媒を含み、前記NOx吸着触媒が前記押出基材上に層として配され、又は(b)前記押出基材が前記NOx吸着触媒を含み、前記SCR触媒が前記押出基材上に層として配され、又は(c)前記押出基材が、前記SCR触媒と前記NOx吸着触媒を含む。前記押出触媒物品は一又は複数の追加の層を更に含み得、前記追加の層は一又は複数の触媒を含む。
【0060】
ウォッシュコート
「ウォッシュコート」という用語は、当該技術分野で広く認識されている用語であり、一又は複数の触媒又は触媒前駆体、担体材料、及び場合によっては他の材料、例えば結合剤、促進剤又は安定剤の混合物を指す。
【0061】
本発明の触媒は、不均一触媒反応系(すなわち、ガス反応物と接触している固体触媒)に利用することができる。接触表面積、機械的安定性、及び流体流動特性を改善するために、触媒成分を、例えばコーティングとして、基材の上及び/又は内部に配することができる。所定の実施態様では、一又は複数の触媒成分を含むウォッシュコートは、フィルター、ハニカムコーディエライトブリック又は他の押出形態などの不活性基材にコーティングとして適用される。ウォッシュコートは、好ましくは溶液、懸濁液、又はスラリーである。適切なコーティングには、基材の一部又は全部を覆う表面コーティング、基材の一部を貫通するコーティング、基材に浸透するコーティング、又はそれらの幾つかの組み合わせが含まれる。ウォッシュコートは、前記触媒成分に加えて、アルミナ、シリカ、非ゼオライトシリカアルミナ、チタニア、ジルコニア、セリアの一又は複数を含む充填剤、結合剤、安定剤、レオロジー調整剤、及び他の添加剤などの成分をまた含みうる。所定の実施態様では、前記ウォッシュコートは、グラファイト、セルロース、デンプン、ポリアクリレート、及びポリエチレンなどの細孔形成剤を含む。これらの追加の成分は、必ずしも所望の反応を触媒するとは限らないが、代わりに、例えばその操作温度範囲を増加させ、触媒の接触表面積を増加させ、触媒の基材への付着性を高め、より良好な処理のためにレオロジーを改質する等々により、触媒材料の効果を改善する。典型的には、結合剤として使用される金属酸化物粒子は、粒径に基づき担体として使用される金属酸化物粒子とは区別可能であり、結合剤粒子は担体粒子に対して有意に大きい。
【0062】
触媒を基材上に堆積させるための様々な堆積方法が当該技術分野で知られている。基材上に触媒を堆積させる方法としては、例えば、液体ビヒクル中に触媒を配してスラリーを形成し、基材をスラリー中に浸漬すること、スラリーを基材上に噴霧すること等により基材をスラリーで濡らすことなどが挙げられる。ウォッシュコートは典型的には水性スラリーとして基材に適用される。典型的には、スラリーは、少なくとも20重量%の総含水量を有する。少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%又は少なくとも60重量%の含水量もまた使用されうる。スラリーで被覆された基材は、使用前に乾燥されか焼されうる。か焼に使用される温度と時間は、か焼される材料中の成分に依存し、一般に約400℃~約900℃の間である。ここに記載の方法を含む用途では、か焼は一般に約500℃~約700℃の温度で約2~約6時間、実施される。
【0063】
触媒のための前記担体は、充填剤、結合剤、及び補強剤などの他の成分と共に、押出可能なペーストに混練され得、これがついでダイを通して押出されて、ハニカムブリックが形成される。ハニカムブリックが乾燥及び/又はか焼される前又は後に、SCR触媒及び/又はNOx吸着触媒の金属成分が、触媒を形成するためにブリックの一又は複数の部分かブリック全体の何れかに添加されうる。他の実施態様では、SCR触媒及び/又はNOx吸着触媒は、押出前に押出可能なペースト中に導入されうる。押出された材料がNOx吸着触媒を含む場合、ついでSCR触媒が、好ましくはSCR触媒が押出ブリック上のガス流の上流に位置させられて、NOx吸着触媒を含む押出ブリック上にコーティングとして適用されうる。押出された材料がSCR触媒を含む場合、ついでNOx吸着触媒が、好ましくはNOx吸着触媒が押出ブリック上のガス流の下流に位置させられて、NOx吸着触媒を含む押出ブリック上にコーティングとして適用されうる。SCR触媒とNOx吸着触媒との両方が、押出されたブリック内で一緒に混合されうる。
【0064】
所定の実施態様では、各層又は二以上の層の組み合わせに対する基材上及び/又は基材内のウォッシュコート又は含浸添加量は、約0.1g/in~約8g/in、より好ましくは約0.5g/in~約6g/in、更により好ましくは約1g/in~約4g/inである。所定の実施態様では、各層又は二以上の層の組み合わせに対する基材上及び/又は基材内のウォッシュコート又は含浸添加量は、≧1.00g/in、例えば≧1.2g/in、≧1.5g/in、≧1.7g/in又は2.00g/in、又は例えば約1.5g/in~約2.5g/inである。
【0065】
触媒ウォッシュコートは、SCR触媒、NOx吸着触媒及び少なくとも一種の結合剤を含み、前記SCR触媒は、セリウム、クロム、コバルト、銅、ガリウム、インジウム、イリジウム、鉄、マンガン、モリブデン、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム、銀、スズ及び鉛からなる群から選択される金属を含み;前記NOx吸着触媒は、モレキュラーシーブと、セリウム、コバルト、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニオブ、パラジウム、タングステン、銀及び亜鉛からなる群から選択される金属を含み、前記SCR触媒中の金属と前記NOx吸着触媒中の金属は異なった金属であり、前記少なくとも一種の結合剤は、アルミナ、シリカ、非ゼオライトシリカ-アルミナ、天然粘土、TiO、ZrO及びSnOからなる群から選択される。
【0066】
アンモニアスリップ触媒は、入口ゾーンと出口ゾーンを含み得、上述のSCR触媒は前記入口ゾーン内に配置され、上述の金属含有モレキュラーシーブを含むNOx吸着触媒は前記出口ゾーン内に配置される。
【0067】
アンモニアスリップ触媒は、(a)セリウム、コバルト、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニオブ、パラジウム、タングステン、銀及び亜鉛からなる群から選択される金属を含むNOx吸着触媒を含む下層ウォッシュコートを基材上に適用することによって、基材上に下層を形成する工程、(b)前記基材上の前記下層ウォッシュコートを乾燥させる工程、(c)前記基材上の前記下層ウォッシュコートをか焼する工程、(d)SCR触媒を含む上層ウォッシュコートを工程(c)で形成されたか焼された下層上に適用することによって前記下層上に位置する上層を形成する工程、(e)前記基材上の前記か焼された下層上の上層ウォッシュコートを乾燥させる工程、及び(f)前記基材上の前記下層ウォッシュコート上の前記上層ウォッシュコートをか焼する工程を含む方法によって製造されうる。
【0068】
アンモニアスリップ触媒は、また、(a)SCR触媒を含む下層ウォッシュコートを基材上に適用することによって基材上に下層を形成する工程、(b)前記基材上の前記下層ウォッシュコートを乾燥させる工程、(c)前記基材上の前記下層ウォッシュコートをか焼する工程、(d)セリウム、コバルト、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニオブ、パラジウム、タングステン、銀及び亜鉛からなる群から選択される金属を含むNOx吸着触媒を含む上層ウォッシュコートを、工程(c)で形成されたか焼下層上に適用することによって、前記下層上に位置する上層を形成する工程、(e)前記基材上の前記か焼下層上の前記上層ウォッシュコートを乾燥させる工程、及び(f)前記基材上の前記下層ウォッシュコート上の前記上層ウォッシュコートをか焼する工程を含む方法によって製造されうる。
【0069】
排気システム
排気システムは、(a)SCR触媒とNOx吸着触媒を含む触媒物品であって、前記SCR触媒が、セリウム、クロム、コバルト、銅、ガリウム、インジウム、イリジウム、鉄、マンガン、モリブデン、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム、銀、スズ及び亜鉛からなる群から選択される第一金属を含み、前記NOx吸着触媒が、セリウム、コバルト、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニオブ、パラジウム、タングステン、銀及び亜鉛からなる群から選択される第二金属を含み、前記第一金属と前記第二金属は異なる金属であり、前記SCR触媒と前記NOx吸着触媒の少なくとも一つはモレキュラーシーブを含む触媒物品と(b)近位連結触媒化スートフィルター(CSF)とを含みうる。前記排出システムは、前記触媒物品の前でシステム内に尿素を添加する第一の手段と、前記触媒物品の後でシステム内に尿素を添加する第二の手段とを更に含みうる。尿素を添加する前記第一及び第二の手段を含む前記排気システムは、前記第一の手段を制御して前記触媒物品の前でシステム内に尿素を添加する手段を更に備えることができ、前記第一の手段を制御してシステム内に尿素を添加する手段は、触媒物品の温度がライトオフ温度にあるとき尿素の導入を停止又は減少させる。
【0070】
排気システムは、上述の触媒物品、受動的NOx吸着材トラップ(PNA)及び場合によりディーゼル酸化触媒(DOC)を含み得、前記受動的NOx吸着材トラップ又は前記任意のDOCは前記触媒物品の上流に配置される。前記排気システムは追加のSCR又はSCRF触媒を更に含み得、該追加のSCR又はSCRF触媒は、前記触媒物品の下流に配置される。
【0071】
排気システムは、上述の触媒物品と追加のSCR又はSCRF触媒を含み得、該追加のSCR又はSCRF触媒は、前記触媒物品の下流に配置される。
【0072】
排気システムは、上述の触媒物品と近位連結触媒化スートフィルター(CSF)を含み、前記触媒化スートフィルターは前記触媒物品の下流に配置される。
【0073】
排気ガスを処理する方法
排気ガスを処理するための方法は、ある濃度のNOxを有する排気ガス流を、(a)入口面の端部と出口面と前記入口面から前記出口面へのガス流の軸を有するウォールフローモノリスと、(b)SCR触媒を含む第一層と、セリウム、コバルト、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニオブ、パラジウム、タングステン、銀及び亜鉛からなる群から選択される金属を含むNOx吸着触媒を含む第二層とを含む組成物であって、第一層が第二層の前に排気ガスに接触するように配された組成物と、(c)場合によっては、第二のSCR触媒を含む第一層と貴金属を含む第二層を含む第二組成物であって、第一層が第二層の前に排気ガスに接触するように配された第二組成物を含む触媒物品の存在下、約150℃~約750℃の温度で窒素含有還元剤と接触させる工程を含み、ここで、前記第一組成物と第二組成物は前記ウォールフローモノリスの一部内に軸に沿って直列に配され、前記第一組成物は前記入口面に近接して配され、第二領域が前記出口面に近接して配される。
【0074】
エンジンのコールドスタート中に排気ガス流中のNOx濃度を低減させるための方法は、SCR触媒とNOx吸着触媒を含む触媒物品にNOxを含む排気ガス流を接触させることを含み、前記NOx吸着触媒は、セリア担持パラジウム又は金属含有モレキュラーシーブを含み、該金属はセリウム、クロム、コバルト、銅、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニッケル、ニオブ、パラジウム、タングステン、銀バナジウム、及び亜鉛、並びにそれらの混合物からなる群から選択され、吸蔵NOxは炭化水素SCRによって還元される。
【0075】
エンジンのコールドスタート中に排気ガス流中のNOxの濃度を低減させるための方法は、(a)SCR触媒とNOx吸着触媒を含む触媒物品にNOxを含む排気ガス流を接触させる工程であって、前記SCR触媒が金属含有モレキュラーシーブを含み、該金属がセリウム、銅、鉄、及びマンガン、並びにそれらの混合物からなる群から選択され、前記NOx吸着触媒が金属含有モレキュラーシーブを含み、該金属がパラジウム又は銀、及びそれらの混合物からなる群から選択され、前記SCR触媒と前記NOx吸着触媒が同じモレキュラーシーブを含み、前記SCR触媒の金属と前記NOx吸着触媒の金属がモレキュラーシーブ内で交換及び/又は置換される工程と、(b)エンジンの低温始動中に前記触媒物品中にNOxを吸蔵する工程と、(c)吸蔵NOxを炭化水素SCRによって還元する工程を含む。
【0076】
排気ガス流中のアンモニア、一酸化炭素及び炭化水素の一又は複数の濃度を低減させるための方法は、アンモニア、一酸化炭素及び/又は炭化水素を含む排気ガス流を、SCR触媒を含む第一層と、セリウム、コバルト、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニオブ、パラジウム、タングステン、銀及び亜鉛からなる群から選択される金属を含むNOx吸着触媒を含む第二層とを含むアンモニアスリップ触媒であって、第一層が第二層の前で排気ガスに接触するように配される触媒に接触させることを含む。本発明の更に別の態様では、排気ガス流中のアンモニア、一酸化炭素及び炭化水素の一又は複数の濃度を低減させるための方法は、第一層と第二層の配向が、第二層が第一層の前で排気ガスに接触するように配されるものであることを除いて、上述の工程を含む。
【0077】
排気ガス中のアンモニア、NOx、CO及び炭化水素の少なくとも一つを低減させるための方法は、前記ガスを、(a)入口面の端部と出口面と該入口面から該出口面へのガス流の軸を有するウォールフローモノリスと、(b)第一SCR触媒を含む第一層と、セリウム、コバルト、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニオブ、パラジウム、タングステン、銀及び亜鉛からなる群から選択される金属を含むNOx吸着触媒を含む第二層で、第一層が第二層の前に排気ガスに接触するように配されたものと、場合によっては、(c)第二SCR触媒を含む第一層と貴金属を含む第二層を含む第二組成物であって、第一層が、第二層の前に排気ガスと接触するように配され、第一及び第二組成物がウォールフローモノリスの一部内に軸に沿って直列に配され、前記第一組成物が入口面に近接して配され、第二領域が出口面に近接して配されるものを含む触媒物品と、ガス中のNOx、CO及び炭化水素の少なくとも一つのレベルを低減させるのに十分な時間と温度で接触させることを含む。本発明の更に別の態様では、排気ガス流中のアンモニア、一酸化炭素及び炭化水素の一又は複数の濃度を低減させるための方法は、第一層と第二層の配向が、第二層が第一層の前で排気ガスに接触するように配されるものであることを除いて、上述の工程を含む。
【0078】
燃焼源によって生成された排気ガス流中のアンモニア、NOx、CO及びTHCの少なくとも一つの濃度を低減させるための方法は、アンモニア、NOx、CO及びTHCを含む排気ガス流を、上述の触媒物品と、ガス中のアンモニア、NOx、CO及びTHCの少なくとも一つのレベルを低減させるのに十分な時間と温度で接触させることを含む。好ましくは、前記触媒物品は、SCR触媒を含む第一層と、NOx吸着触媒を含む第二層とを含み、前記NOx吸着触媒が金属含有モレキュラーシーブを含み、前記金属がセリウム、コバルト、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、ニオブ、パラジウム、タングステン、銀及び亜鉛からなる群から選択され、前記第一層が前記第二層の前で排気ガスと接触するように配置される。
【0079】
エンジンのコールドスタート中に燃焼源によって生成された排気ガス流中のNOxの濃度を低減させるための方法は、NOxを含む排気ガス流を上述の触媒物品と接触させることを含み、吸蔵されたNOxは炭化水素SCRによって還元される。
【0080】
SCR及びNOx吸着触媒の構成
SCR触媒とNOx吸着触媒は、様々な構成で存在しうる。様々な構成を示す図2A図2Gは、縮尺通りではない。図2Aは、SCR触媒が、下層(下方層)12のNOx吸着触媒上に位置する上層(上方層)10に存在し、下層12が固体担体14上に位置する物品の構成を示している。この構成の変形例では、NOx吸着触媒が、下層(下方層)12のSCR触媒上に位置する上層(上方層)10内に存在する。
【0081】
図2Bは、SCR触媒が、2つの隣接する下層12及び13の上の上層10に存在し、下層の少なくとも一つがNOx吸着触媒を含む構成を示している。他の下層は、SCR触媒、NOx吸着触媒、別の種類の触媒又は担体を含むウォッシュコートを含みうる。下層の双方がNOx吸着触媒を含むことができ、その場合、NOx吸着触媒は異なることが好ましい。排気ガス流の方向はアイテム50で示されている。下層12及び13は固体担体14上に配置されている。この構成の変形例では、NOx吸着触媒は、下層(下方層)12及び/又は13のSCR触媒上に位置する上層(上方層)10に存在する。
【0082】
図2Cは、第一SCR触媒が、第一NOx吸着触媒を含む第一下層12上の第一上層10に存在し、第二SCR触媒が、第二NOx吸着触媒を含む第二下層(13)上の第二上層11に存在し、前記第一SCR触媒が前記第二SCR触媒の上流に位置している構成を示す。排気ガス流の方向はアイテム50で示されている。下層12及び13は固体担体14上に配置されている。
【0083】
図2Dは、SCR触媒を含むSCR層10がNOx吸着触媒を含む下層12の上に配置され、下層12が固体基材14上に配置される構成を示す。図1Aにおいて、SCR層とNOx吸着触媒を含む下層の両方が、基材の軸方向全長にわたって配置される。図2D及び図2Eに示されるように、SCR層10とNOx吸着触媒を含む下層12は、基材の軸方向長さの一部にわたって配置されてもよい。NOx吸着触媒を含む下層12の上にSCR層を配する際に、SCRウォッシュコートの一部が、隣接する下層間の空間の一部又は全部を占めてもよい。図2Fは、隣接する下層間の全空間が一又は複数のSCR触媒を含むものを示す。隣接する下層間の空間は、図2Gに示されるように、下層間の空間をまた満たすSCR被覆層(オーバーレイ)で完全に満たされてもよい。一般に、本発明の触媒層は基材に浸透し、基板の一部、例えば大部分を貫通し、基材の表面を被覆し、又はその組み合わせをなす。基材壁にコーティングする代わりに、触媒は、例えば壁部に浸透する内部コーティングとして高多孔性基材中に導入することができ、又は基材を形成する押出可能なペースト中に導入することができる。
【0084】
次の実施例は、本発明を単に例証するものである;当業者は、本発明の精神及び特許請求の範囲内にある多くの変形例を認識するであろう。
【実施例
【0085】
実施例1 CHAに1重量%の一定のPdと様々なCu添加量の粉末サンプル
銅及び/又はパラジウム含有アルミノシリケートチャバザイト(SAR比25のCHA)を含む一連の触媒を、酢酸銅及び硝酸パラジウム溶液を使用してインシピエントウェットネス含浸法により調製した(銅及びパラジウム添加量は下表に示す)。比較触媒6及び7はそれぞれPd CHA又はCu CHAのみを含む単一成分であった。
【0086】
以下の各触媒8~12は二成分を有し、第一成分は以下に示す量でCu CHAを含み、第二成分は1重量%のPdを含む。最初にCu成分をチャバザイトに含浸させ、か焼した後、与えられた濃度のPd成分を含浸させた。100℃で乾燥させた後、サンプルを500℃でか焼する。ついで、サンプルを、10%HOを含む空気雰囲気中、750℃で水熱的にエージングさせた。
【0087】
これら触媒の受動的NOx吸着(PNA)活性を、200ppmのNO、200ppmのCO、50ppmのC1022、12%のO、5%のCO及び5%のHOを含み残りのガスが窒素であるガス混合物中で、300L・hr-1・g-1のMHSVで2リットル/分の容積ガス流量と250<d<355ミクロンの篩い分けされた粉末触媒0.4gを使用して評価した。系は100℃の初期温度にあった。試験中、ガス混合物は最初の1分間触媒から逸らされた後、その温度で2分間試料を通過するように切り替えられた。この吸着段階の後に、全ての吸蔵されたNOxの触媒を更なる試験のためにパージするために、床温度が約400℃に達するまで、NO含有ガスの存在下で10℃/分の昇温速度で昇温脱離(TPD)が続く。ガス中に存在するNOxの量を、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法を使用して定量した。
【0088】
図3は、ガス中に存在するNOxの量を時間の関数として示している。該グラフは、NOxの濃度が約1分から約2~3分に減少することを示している。NOx濃度の減少が大きく、減少時間が長いほど、NOx吸着量が多くなる。Pdを含まない触媒は、NOx吸着量が最少であった。1%のPdを含む触媒中のNOx吸着量は、Cuの量が減少するにつれて増加した。Cuを含まない1%のPdのみを有する触媒は、最初の約2分間にわたって最も多いNOx吸着をもたらした。しかしながら、3.3重量%Cu未満のCu添加量を有するPd-Cu/CHA触媒の殆どは、NOx吸着に対して高い親和性を示す。80℃、150℃及び170℃の温度でNOx吸着測定を繰り返し、これらの温度におけるNOx容量を計算した。NOx吸蔵は、3g/inの触媒添加量を含むモノリスに対して触媒1リットル当りに吸蔵されたNOの量として計算した。図4は、g/リットルで示される吸着NO量に対する温度の影響を示す。吸着NO量は、100℃から170℃まで比較的一定であった。1重量%Pd CHAを含む一成分のみを有する比較触媒6は、80℃~170℃の温度で最高のNO2吸着量(0.4~0.45g/リットル)を与えた。1%のPdを含む触媒では、銅の量が増加するにつれて吸着NO量が減少するが、これら混合成分触媒の大部分は、Cu添加量が3.3重量%未満の高いNOx吸蔵容量を有する。しかし、2.5重量%のCu CHAを含む一成分のみを有する比較触媒7は、最も少ないNO吸着量(≦0.01g/リットル)を与えた。該結果は、PdがNOx吸蔵機能に対して重要であることを示している。
【0089】
比較触媒6と触媒8、11及び12について初期温度150℃で吸蔵し毎分10℃の割合で温度を上昇させた後のTPD中のNOX放出特性を図5に示す。TPD中に炭化水素が存在しなかったが吸蔵段階中に同じガス混合物を使用して、触媒12をまた評価した。
【0090】
1重量%Pd CHAを含む一層のみの比較触媒6は最も多い量のNOx放出をもたらした。1%のPdを含むこれらの触媒において銅の量が増加するにつれて、放出されるNOxの量が減少し、これは、図4に示されるように、吸蔵段階中に吸蔵されたNOxの量と部分的に一致する。Cuの存在下では、放出されるNOxの量は吸蔵される量よりも少ないようである。これは、放出されたNOxの一部が、Cuの存在下でHC-SCRによって還元されるためでありうる。このことは、TPDの間にガス混合物中の炭化水素なしでまた評価された、2.5%Cuを含む1%Pd-CHA触媒についても実証された。HCが存在しない場合に有意に多いNOxが放出され、最大濃度はHCあり及びHCなしで、それぞれ約220及び235ppmである。
【0091】
1重量%のPdと様々な量のCuを含むこれらの水熱的にエージングされた触媒のNH SCR活性を、300L・hr-1・g-1のMHSVで2リットル/分で流れる500ppmのNO、500ppmのNH、5%のCO、5%のHO、300ppmのCO、200ppmのC及び12%のOを含むガス混合物においてまた評価した。サンプルの温度は、150℃から550℃までガス混合物中、毎分5℃で上昇させた。図6は、様々なCu添加量を有する触媒のNOx転化%に対する温度の影響を示す。Cuの存在しないPdのみの触媒は、SCR反応に対して低活性である。NHによるNOxの選択的還元のためのこれら触媒の反応性は、Cu添加量と共に増大し、1重量%を超えるCuを含む触媒が高いSCR活性を示す。これらの結果は、活性SCR触媒としてのCuの重要性を証明している。
【0092】
これらの試験は、CuCHA成分とPd成分との組み合わせが、低温での受動的NOx吸着に対して活性であるだけでなく、NHSCR反応によるNOx転化に対して活性で選択的でありうることを実証している。このような混合システムの更なる利点は、排気ガス中のHCをNOx転化プロセスに使用できることである。2.5重量%のCuと1重量%のPdを含む触媒が、高いNH SCR活性と共にNOxに対して最適な活性を有している。
【0093】
実施例2 Cu添加量を固定し、Pdを変化させた粉末サンプル
アルミノシリケートチャバザイト(CHA SAR)を含む銅及び/又はパラジウムを含む一連の触媒を、以下の表に示される2.5重量%の固定Cu添加量と0.2重量%~1重量%の間の様々なパラジウム添加量で、実施例2に記載したようにして調製した。上述の比較触媒7は、2.5%Cu CHAを含む単一層であった。以下の触媒13~15の各々は、以下に示されたPd量と共に2.5%Cu CHAを含む。
【0094】
サンプルを、実施例1において上述したように、PNA及びSCR活性について分析した。図7は、経時的にガス中に存在するNOxの量を示す。このグラフは、約1分から約2分までにNOxの濃度が減少することを示している。NOx濃度の低下が大きく減少時間が長いほど、NOx吸着量は多くなる。Pdを含まない触媒でNOx吸着が最も少なかった。2.5%のCuを含む触媒中のNOx吸着量は、Pdの量が増加するにつれて増加した。この試験は、触媒中のPd添加量を調節することによってNOx吸着を制御できることを実証している。
【0095】
図8は、NO吸着量に対する温度の影響をg/リットルで示す。NO吸着量は、100℃から170℃まで比較的一定であった。0.5%又は1%のPdを有する触媒上のNO吸着は、約0.25~0.3g/リットルの量で、同等であった。0.2%のPdを有する触媒では、約0.1~0.15g/リットルの量で、より少ないNO吸着であった。2.5重量%のCu CHAを含む一成分のみの比較触媒7は、最も少ないNO吸着量(≦0.01g/リットル)であった。この結果はNOx貯蔵成分としてのPdの役割を再び証明している。
【0096】
2.5重量%のCuと様々な量のPdを含むこれらの水熱的にエージングさせた触媒のNH3 SCR活性を、300L・hr-1・g-1のMHSVで2リットル/分で流れる500ppmのNO、500ppmのNH、5%のCO、5%のHO、300ppmのCO、200ppmのC及び12%のOを含むガス混合物中でまた評価した。サンプルを150℃から550℃までガス混合物中で5℃/分で上昇させた。図9は、Cuは2.5重量%の一定量で、様々なPd添加量を有する触媒のNOx転化率(%)に対する温度の影響を示す。これらの触媒は、高いSCR活性を示すが、1重量%の最も多いPd添加量の触媒では高い反応温度で選択率が僅かに低下する。これらの結果は、記載された濃度のPdNOx吸蔵成分を、その活性と選択性に有意に影響を及ぼすとなく、Cu SCR触媒と組み合わせることができることを示している。
【0097】
実施例3 コーティングモノリス
25のSARを有する銅又はパラジウム含有アルミノシリケートチャバザイト(CHA)を含む一連の触媒を調製した。Cu添加量は2.5重量%であり、Pd添加量は1重量%であった。各触媒を500℃でか焼し、ついで約5μmのD90まで粉砕した。ついで、粉砕したサンプルをスラリー化してウォッシュコートにした後、触媒3~5に対して以下の表に示したウォッシュコート添加量で、Pd CHAを下層として、Cuチャバザイトを上層として、モノリス基材上にコーティングした。比較触媒1は、2.5重量%の添加量と2.5g inのウォッシュコート添加量でCuCHAを含む単一層であった。比較触媒2は、2.5g inのウォッシュコート添加量でCu CHAを含む上層と2g/inの添加量でZnOを含む下層を含む2層触媒であった。ついで、サンプルを500℃で空気中でか焼した。
【0098】
500ppmのNO、750ppmのアンモニア、350ppmのCO、10%の酸素、8%のCO、及び5%のHOを含み残りが窒素であるガスを、触媒(60K SV、ANR 1.5)上を通過させ、触媒への暴露の前後に存在しているNOx及びアンモニアの量を測定することによって、これらの触媒のNHSCR活性を150℃と600℃との間で測定した。ガス中に存在するNOx及びアンモニアの量を、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法を使用して定量した。図10は、150℃から600℃までの温度での各触媒によるNOx転化率(%)を示す。NOx転化率は、5つの触媒全てにおいて同様であり、Pd下層の存在がCu-ゼオライト触媒のSCR活性に有害ではないことを再び実証している。
【0099】
図11は、CO転化率(%)を示す。実施例3~5の触媒の各々は、約150℃から約600℃まででより高いレベルのCO転化率をもたらす。例えば、約220℃において、実施例3~5の触媒の各々は、約50%のCO転化率をもたらしたが、比較例1及び2は約2%未満の転化率であった。実施例3~5は、約320℃~400℃の間で少なくとも90%のCO転化率を示したが、比較例1及び2は、この温度範囲にわたって約10~20%の転化率しかもたらさなかった。従って、実施例3~5の触媒は、比較例1及び2の触媒を使用して観察されるよりも遙かに広い温度範囲にわたって大きく増加したCO転化率をもたらす。
【0100】
実施例4-MVEG試験
2.2LのLDDユーロ5エンジンを使用するMVEG試験を使用して、上述の触媒物品を使用して現在使用されているDOC+SCRFシステムをSCR/PNA+CSFと比較した。これらのシステムにおいて、DOCは80 2:1g/ftのPGM添加量と2.3g/inのウォッシュコート添加量の標準的Pt-Pd触媒であり、SCRFは88.6g/ftのCu添加量と1.9g/inのウォッシュコート添加量のCu-CHA触媒である。SCR/PNAシステムは、上の実施例3と同様の層状触媒であり、下層は60g/ftのPGM添加量と1.0g/inのウォッシュコート添加量で、上層は120g/ftのCu添加量と2.4g/inのウォッシュコート添加量である。CSFは、20 10:1g/ftの添加量でPt-Pd PGMを含み、1.5g/inのウォッシュコート添加量を有する。以下のグラフの幾つかは、2箇所の位置でなされた様々なパラメータの測定の値を示す:エンジンを出るとき(エンジンアウト)と、触媒システムを出るとき、特にSCR/PNA後又はSCRF後の何れか。
【0101】
図12は、試験中の様々な時間におけるSCR前又はSCRF前の温度を示す。SCR/PNA+CSFシステムにおけるSCR/PNAの温度は、DOC/SCRFシステムにおけるSCRFの温度よりも高かった。SCR/CSFシステムにおけるSCRの温度上昇は、DOC/SCRFシステムと比較して早期の還元剤添加を可能にする。
【0102】
図13及び14は、MVEG試験中のSCRF前及びSCR/PNA前NO/NOx比を示す。SCR/PNAシステムは、試験サイクルの最初の部分において特に低温でDOC+SCRFシステムより高いNO/NOx比を有していた。これは、エンジンアウトNOがDOC+SCRFシステムのDOCよりもHC又はCOによってNOに還元されることによるものである可能性がある。
【0103】
図15は、SCR/PNA後及びDOC-SCRF後の2つのシステムによる全炭化水素除去の累積量を示す。エンジンは、MVEG試験中に約2.2gのTHCを生成し、DOC+Cu SCRFシステムは約(0.25g)のTHCを排出し、SCR/PNAシステムは約1.3g未満のTHCを排出した。予想通り、DOC+SCRFは、DOCの高い活性のためにSCR/PNAに対してより少ないHC排出量であったが、この実施例では、PNA/SCR単独システムがエンジンアウトHCの約80%を除去することができる。HC排出の更なる削減は、CSF後の完全なシステムで達成されうる。
【0104】
図16は、尿素注入前のMVEG試験の最初の250秒にわたってエンジンによって生成されたNOxの累積量とPNA/SCR及びDOC+Cu SCRF処理システム後のNOx排出量を示す。DOC+Cu SCRFシステムは、試験サイクルの低温部分の間に生成されたNOxの累積量に殆ど影響を与えなかった。しかしながら、Pdゼオライト下層を有するPNA/Cu SCRシステムは、MVEG試験において最初の250秒間に生成されたNOxの累積量を60%以上減少させた。図18は、250秒後の尿素注入を伴う完全な試験サイクルに対するPNA/SCR及びDOC+Cu SCRF処理システム後のNOx排出量を示す。
【0105】
図17は、エンジンから排出された後(エンジンアウト)と、(a)DOC+Cu SCRFを通過した後;又は(b)MVEG実施中に経時的に尿素を添加すると共にパラジウム細孔ゼオライト下層を有する銅SCRを通過した後に測定された累積NOx生成量(g)を示す。
【0106】
図18は、2つの異なる触媒系を使用するアンモニアスリップ量を示す。DOC+SCRFの使用は、約100ppmの最大濃度でアンモニアスリップをもたらした。Cu SCRとPd細孔ゼオライト下層の組み合わせは、アンモニアスリップの最大量を5ppm未満に減少させた。
【0107】
図19は、PNA/SCR及びDOC+Cu SCRF処理システム後のCO排出の累積量を示す。PNA/SCRシステムは、CO排出のかなりの部分を減少させることができるが、DOC+Cu SCRFほど効果的ではない。CO排出の更なる削減は完全システムでCSF後に達成することができる。
【0108】
上記の図は、ここに記載の触媒物品と排気物品を含む排気システムが、2.2LのLDD Euro5エンジンを使用して試験された場合、
(a)MVEG試験の最初の250秒にわたって生成されたNOxの累積量の少なくとも50%の低減;(b)MVEG試験の最初の1100秒にわたって生成されたNOx累積量の少なくとも50%の低減;(c)MVEG試験の1200秒にわたって生成されたCOの累積量の少なくとも75%の低減;及び(d)MVEG試験の1200秒にわたって生成されたTHCの累積量の少なくとも75%の低減の2つ以上をもたらし;
(a)MVEG試験の最初の250秒にわたって生成されたNOxの累積量の少なくとも50%の低減;(b)MVEG試験の最初の1100秒にわたって生成されたNOx累積量の少なくとも50%の低減;(c)MVEG試験の1200秒にわたって生成されたCOの累積量の少なくとも75%の低減;及び(d)MVEG試験の1200秒にわたって生成されたTHCの累積量の少なくとも75%の低減の3つ以上をもたらし;
(a)MVEG試験の最初の250秒にわたって生成されたNOxの累積量の少なくとも50%の低減;(b)MVEG試験の最初の1100秒にわたって生成されたNOx累積量の少なくとも50%の低減;(c)MVEG試験の1200秒にわたって生成されたCOの累積量の少なくとも75%の低減;及び(d)MVEG試験の1200秒にわたって生成されたTHCの累積量の少なくとも75%の低減をもたらし;
(a)MVEG試験の最初の250秒にわたって累積的に生成される約0.35g未満のNOx;(b)MVEG試験の最初の1100秒にわたって累積的に生成される約1.3g未満のNOx;(c)MVEG試験の1200秒にわたって累積的に生成される約7.5g未満のCO;及び(d)MVEG試験の1200秒にわたって累積的に生成される約0.6g未満のTHCの2つ以上をもたらし;
(a)MVEG試験の最初の250秒にわたって累積的に生成される約0.35g未満のNOx;(b)MVEG試験の最初の1100秒にわたって累積的に生成される約1.3g未満のNOx;(c)MVEG試験の1200秒にわたって累積的に生成される約7.5g未満のCO;及び(d)MVEG試験の1200秒にわたって累積的に生成される約0.6g未満のTHCの3つ以上をもたらし;
(a)MVEG試験の最初の250秒にわたって累積的に生成される約0.35g未満のNOx;(b)MVEG試験の最初の1100秒にわたって累積的に生成される約1.3g未満のNOx;(c)MVEG試験の1200秒にわたって累積的に生成される約7.5g未満のCO;及び(d)MVEG試験の1200秒にわたって累積的に生成される約0.6g未満のTHCをもたらす
ことができることを証明している。転化されるNOx、HC及びCOの量は、エンジンアウト条件に依存しうる。
【0109】
本発明は、特定の実施態様を参照してここに例示され記載されているが、本発明は、示された詳細に限定されることは意図されない。むしろ、本発明から逸脱することなく、特許請求の範囲の範囲及び均等物の範囲内の細部に様々な修正を加えることができる。
図1
図2A-C】
図2D-G】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19