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特許7314261電子的な制御装置および電子的な制御装置を製造するための方法
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  • 特許-電子的な制御装置および電子的な制御装置を製造するための方法 図1
  • 特許-電子的な制御装置および電子的な制御装置を製造するための方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】電子的な制御装置および電子的な制御装置を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/28 20060101AFI20230718BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
H01L23/28 J
H01L23/36 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021519785
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2019074577
(87)【国際公開番号】W WO2020074214
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】102018217456.3
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519453607
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ジャーマニー ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン シュタイナウ
(72)【発明者】
【氏名】カール マロン
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-172172(JP,A)
【文献】特開2014-112658(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057093(WO,A1)
【文献】特開2004-165406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/28
H01L 23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面側(2.1)および第2の表面側(2.2)と、少なくとも1つの電子部品(3)とを備えたプリント基板(2)を備える電子的な制御装置(1)を製造するための方法であって、前記電子部品(3)を、前記プリント基板(2)の前記表面側(2.1,2.2)のうちの少なくとも一方の表面側に配置し、
前記プリント基板(2)における、前記電子部品(3)と反対に位置している前記表面側(2.1,2.2)に、熱導出のために、少なくとも1つの冷却体(8)を配置し、前記電子部品(3)および前記冷却体(8)を備えた前記プリント基板(2)を、前記冷却体(8)の少なくとも1つの外面が熱硬化性材料(D)から露出したままになるように、該熱硬化性材料(D)から成る被覆体(4)によって取り囲むことを含み、
前記冷却体(8)は、熱伝導性の粒子(P)を備えた熱可塑性材料(T)から形成されており、
前記プリント基板(2)および前記冷却体(8)は、熱硬化性材料(D)から成る前記被覆体(4)の射出工程中に加熱されて軟化し、前記プリント基板(2)は、この射出工程時に液状の熱硬化性材料(D)の静水圧によって、工具内において固定された前記冷却体(8)に押圧されて該冷却体(8)の熱可塑性材料(T)内に部分的に浸漬されるかまたは押し込まれ、これによって前記プリント基板(2)と前記冷却体(8)との間に材料接続的な結合部が形成される、電子的な制御装置(1)を製造するための方法。
【請求項2】
前記熱伝導性の粒子(P)として、グラファイト粒子および/または金属粒子、特にアルミニウム粒子が、前記熱可塑性材料(T)内に含まれている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記冷却体(8)は、前記プリント基板(2)の前記表面側(2.1,2.2)に対して平らに形成されており、反対側に位置するように成形部、特にフィン成形部を備えている、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記冷却体(8)は、前記プリント基板(2)の前記表面側(2.1,2.2)に材料接続的に結合されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記冷却体(8)は、載置点(8.2)を介して少なくとも1つの機械的なインタフェース(9)に載置されており、これによって、1つの機器が形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記被覆体(4)は少なくとも1つの孔(5)を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子的な制御装置および電子的な制御装置を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム薄板ハウジングまたはアルミニウムダイカストハウジングを備えた電子的な制御装置と、このようなハウジングを備えた電子的な制御装置を製造するための方法とは知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の根底にある課題は、従来技術に対して改良された電子的な制御装置と、従来技術に対して改良された、電子的な制御装置を製造するための方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載された特徴を有する電子的な制御装置によって解決される。さらに、この課題は、本発明によれば、請求項9に記載された特徴を有する、電子的な制御装置を製造するための方法によって解決される。
【0005】
本発明の好適な構成は、従属請求項の対象である。
【0006】
電子的な制御装置は、本発明によれば、第1の表面側および第2の表面側と、少なくとも1つの電子部品、例えば抵抗、コンデンサまたは誘導素子とを備えたプリント基板を備えている。電子部品は、プリント基板の表面側のうちの少なくとも一方の表面側に配置されている。プリント基板における、電子部品と反対に位置している表面側に、熱導出のために、少なくとも1つの冷却体が配置されている。電子部品および冷却体を備えたプリント基板は、冷却体の少なくとも1つの外面が熱硬化性材料から露出しているように、この熱硬化性材料から成る被覆体によって取り囲まれている。例えば、冷却体は、少なくとも一方の側、特に内側において(プリント基板の方向において)、熱硬化性材料によってカバーされているかまたは被覆されている。代替的に、冷却体は、両側において熱硬化性材料によって被覆されていてもよい。
【0007】
例えば、熱硬化性材料は、被覆体と冷却体との間の間隙形成が存在しないような材料特性を有している。例えば、熱硬化性材料は処理時および取付け時に間隙材料として十分な流動性および伸張性を有しており、かつ相応の熱膨張係数を示している。次いで、硬化状態において、熱硬化性材料は十分な硬度を有している。
【0008】
本発明に係る電子的な制御装置は、熱伝導性の熱可塑性樹脂を冷却体として使用することによって、接着剤またはラミネートフィルムを回避する接合法が使用可能であるという利点を有している。
【0009】
本発明に係る電子的な制御装置の別の利点としては、冷却体を取り付けるための付加的なプロセスステップが回避されるということが挙げられる。なぜなら、接着剤を潰すためのプロセスステップまたはベースプレートまたはプリント基板をラミネートするためのプロセスステップが、これらのプロセスが既にコネクタ取付け時に実施されることによって回避されるからである。
【0010】
さらに、本発明に係る電子的な制御装置は、冷却体の幾何学形状をプリント基板の冷却すべき箇所に適合させることができるという利点を有している。例えば、冷却体が複雑な幾何学形状、特に突出するフィンのような増大部を有することが可能である。
【0011】
本発明に係る、電子的な制御装置を製造するための方法には、この方法が、例えばアルミニウムダイカストハウジングまたは金属薄板ハウジングよりも好適であるという利点がある。
【0012】
1つの発展形態によれば、冷却体は熱可塑性樹脂から形成されている。例えば、熱可塑性樹脂は高い熱伝導性を有している。
【0013】
別の実施形態では、冷却体として使用される熱可塑性樹脂は熱伝導性の粒子を備えている。これによって、例えば、プリント基板の部品が発する熱がプリント基板からより良好に導出される。
【0014】
別の可能な実施形態では、熱伝導性の粒子は、グラファイト粒子および/または金属粒子、特にアルミニウム粒子であることが提案されている。熱伝導性の粒子は、例えば、金属部品の熱伝導性と同等の熱伝導性を有している。金属粒子、特にアルミニウム粒子は、さらに、導電性をも有している。グラファイト粒子は、電気的な絶縁特性を有しており、熱可塑性材料と一緒に電気的な絶縁層を形成している。
【0015】
電子的な制御装置の可能な構成によれば、冷却体は、プリント基板の表面側に対して平らに形成されている。さらに、冷却体は、反対側に位置するように成形部、特にフィン成形部のような面積増大部を備えていてよい。例えば、冷却体は、面状にまたは大面積でプリント基板の表面側に配置されており、フィン成形部は、冷却体の、プリント基板と反対側の表面に配置されている。
【0016】
さらに、本発明が開示している電子的な制御装置では、冷却体は、プリント基板の表面側に、例えば被覆体の被着後に材料接続的に結合されている。
【0017】
1つの発展形態によれば、冷却体は、載置点を介して少なくとも1つの機械的なインタフェース、例えばハウジングに載置されており、これによって、1つの機器、例えばモータまたは液圧要素が形成されている。
【0018】
別の実施形態では、被覆体は少なくとも1つの孔を有している。例えば、固定要素、例えばねじを孔を通して差し込むことができる。これによって、プリント基板は、機械的なインタフェースに、例えばモータのハウジングに固定される。代替的に、プリント基板を付加的な固定要素、例えばクリップによって機器ハウジングに固定することができる。
【0019】
第1の表面側および第2の表面側と、少なくとも1つの電子部品とを備えたプリント基板を備える電子的な制御装置を製造するための方法は、電子部品をプリント基板の表面側のうちの少なくとも一方の表面側に配置し、プリント基板における、電子部品と反対に位置している表面側に、熱導出のために、少なくとも1つの冷却体を配置し、電子部品および冷却体を備えたプリント基板を、冷却体の少なくとも1つの外面が熱硬化性材料から露出したままになるように、この熱硬化性材料から成る被覆体によって取り囲む。
【0020】
例えば、冷却体は、工具内において固定され、例えば工具の閉鎖力によってプリント基板に押圧される。例えば、熱硬化性材料から成る被覆体は、射出工程によって、電子部品および冷却体を備えたプリント基板の両側に被着される。
【0021】
例えば、プリント基板および冷却体は射出工程中に加熱されて軟化する。例えば、プリント基板は射出工程時に、液状の熱硬化性材料の静水圧によって、工具内において固定された冷却体に押圧される。
【0022】
例えば、プリント基板および冷却体の軟化によって、コネクタおよび/または部品を備えたまたは備えていないプリント基板の、少なくとも冷却体の方向に向いている表面側は、冷却体の熱可塑性材料内に部分的に浸漬されるかまたは押し込まれる。
【0023】
例えば、これによって、プリント基板および冷却体の冷却後にプリント基板と冷却体との間に材料接続的な結合部が形成される。
【0024】
本発明に係る方法の1つの発展形態によれば、プリント基板の表面側のうちの一方の表面側に冷却体および選択的にプラスチックコネクタが、1回のプロセスステップで熱間かしめ、熱間プレス、冷間プレスまたはスナップ結合によって形状接続的、材料接続的または力接続的に結合される。
【0025】
次に、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】電子的な制御装置を概略的に示す側面図である。
図2】電子的な制御装置およびハウジングを概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
互いに対応する部分には、すべての図において同じ符号が付されている。
【0028】
図1には、電子的な制御装置1が示されており、この電子的な制御装置1は、第1の表面側2.1および第2の表面側2.2と少なくとも1つの電子部品3とを備えたプリント基板2を有しており、電子部品3は、プリント基板2の表面側2.1に配置されている。少なくとも1つの冷却体8が、電子部品3と反対に位置している表面側2.2にプリント基板2に熱導出のために配置されている。電子部品3および冷却体8を備えたプリント基板2は、両側で、熱硬化性材料Dから成る被覆体4によって、冷却体8の少なくとも1つの外面が熱硬化性材料Dから露出しているように取り囲まれている。
【0029】
代替的に、電子部品3および冷却体8を備えたプリント基板2は、片側で被覆体4によって取り囲まれていてもよい(詳しく示されていない)。
【0030】
例えば、熱硬化性材料Dは、被覆体4と冷却体8との間に間隙形成が生じないような材料特性、例えば熱膨張率または剛性を有している。
【0031】
さらに、電子的な制御装置1は、プラスチックコネクタ6およびコネクタ打抜き格子体7を有している。
【0032】
少なくとも1つの電子部品3、例えば抵抗、コンデンサまたは誘導素子が、プリント基板2の表面側2.1に配置されている。
【0033】
冷却体8は、プリント基板2において、電子部品3と反対に位置している表面側2.2に配置されており、このようにして電子部品3の熱を導出する。冷却体8は、プリント基板2の表面側2.2に対して平らに、例えば面状にまたは大面積で形成されており、プリント基板2の表面側2.2と反対側に位置するように例えばフィン8.1を備えている。
【0034】
冷却体8は、熱伝導性の熱可塑性材料Tから形成されていて、熱伝導性の粒子Pを備えており、例えば熱伝導性の粒子Pによって満たされている。例えば、熱伝導性の粒子Pとしては、グラファイト粒子および/または金属粒子、特にアルミニウム粒子が設けられている。例えば、少なくとも金属粒子は、導電性を有している。
【0035】
例えば、冷却体8はプリント基板2に、熱間かしめ、プレス結合またはスナップ結合によって、例えばピンによって形状接続的、材料接続的または力接続的に結合されている。
【0036】
例えば、冷却体8とプラスチックコネクタ6とは、同じプロセスステップにおいてプリント基板2に配置される。
【0037】
また、冷却体8を室温で、プレスまたはスナップ結合によってプリント基板2に結合することも可能である。冷却体8とプリント基板2との結合が、熱硬化性材料Dの射出成形時に行われる場合に、プリント基板2は、熱可塑性材料Tから成る冷却体8内に少なくとも部分的に押し込まれ、このようにすると、プリント基板2と冷却体8との材料接続的な結合部を形成することができる。
【0038】
冷却体8は、特に熱可塑性材料Tから成っており、射出プロセス中に、特に熱硬化性材料Dの被覆工程中に、プリント基板2に材料接続的に結合される。
【0039】
例えば、冷却体8は、少なくとも1つの載置点8.2を有しており、この載置点8.2は、例えばモータまたは液圧要素のハウジングに載置されている。
【0040】
被覆体4は、少なくとも1つの孔5を有しており、熱硬化性材料から形成されている。
【0041】
プラスチックコネクタ6は、プリント基板2に取り付けられており、例えば1つの別の電子部品(図示せず)への接触接続する働きをする。例えば、プラスチックコネクタ6は、プリント基板2に熱間かしめされるかまたはプレスされる。プラスチックコネクタ6は被覆体4から突出しており、例えばコネクタ打抜き格子体7によってプリント基板2に接続されており、かつ/または別の電子部品(図示せず)に接続されている。
【0042】
図2には、図1に示されているような制御装置1が示されており、この制御装置1は、例えば機械的なインタフェース9に、例えばモータまたは液圧ユニットのハウジングに固定されている。
【0043】
例えば、冷却体8の少なくとも1つの載置点8.2は、機械的なインタフェース9に載置されている。
【0044】
制御装置1は、例えば孔5および固定手段10、例えばねじによって機械的なインタフェース9に固定されている。
【0045】
代替的に、電子的な制御装置1は、詳しく示されていないクリップによって機械的なインタフェース9に固定されている。
【符号の説明】
【0046】
1 制御装置
2 プリント基板
2.1 表面側
2.2 表面側
3 電子部品
4 被覆体
5 孔
6 プラスチックコネクタ
7 コネクタ打抜き格子体
8 冷却体
8.1 フィン
8.2 載置点
9 機械的なインタフェース
10 固定手段
D 熱硬化性材料
P 粒子
T 熱可塑性材料
図1
図2