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特許7314266皮膚表面温度の測定値を使用する線量測定の決定プロセスおよび予測閉ループ制御ならびにそれに関する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】皮膚表面温度の測定値を使用する線量測定の決定プロセスおよび予測閉ループ制御ならびにそれに関する方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/067 20060101AFI20230718BHJP
【FI】
A61N5/067
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021523247
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 US2019057209
(87)【国際公開番号】W WO2020086460
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】62/771,523
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/749,104
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521173878
【氏名又は名称】アキュア アクネ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホフヴァンダー, ヘンリク
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0121631(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0178916(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02499985(EP,A1)
【文献】特開2017-164572(JP,A)
【文献】特表2009-527262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/067
A61B 18/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体内にある発色団を標的とする光熱標的治療システム内で光源を動作させるために適した一組のパラメータの決定方法であって、
第1の患者に治療プロトコルを実施する前に、
前記第1の患者の第1の治療部位における皮膚表面温度を測定するステップと、
前記光熱標的治療システムのコントローラが、前記皮膚表面温度と前記光源を動作させるためのパラメータとを、熱伝達の有限要素モデルおよび生検を使用した臨床実験のうちの少なくとも1つによって確立された相関モデルに当てはめることによって、前記光源を動作させるための前記パラメータと前記第1の治療部位における前記皮膚表面温度との間の関係を推定するステップと、
前記光熱標的治療システムのコントローラが、前記治療プロトコルを実施する際に前記発色団を実効的に標的としながらも前記第1の治療部位における前記媒体に対する熱損傷を回避するために、前記光源を動作させるための前記パラメータの安全な動作範囲を、45℃と55℃との間である前記皮膚表面温度に対応するように、定義するステップと、
)前記治療プロトコルの実施中に、前記第1の治療部位の前記皮膚表面温度を前記温度測定装置を用いて少なくとも1回測定するステップと、
前記光熱標的治療システムのコントローラが、前記治療プロトコルを継続する際に、実効的な光熱標的治療をさらに提供している間、前記第1の治療部位における前記光源の前記パラメータの前記安全な動作範囲を調整するステップと
を含み、
前記皮膚表面温度を測定するステップ1)において測定される前記皮膚表面温度は、前記第1の治療部位に気流を向けて前記第1の治療部位を冷却し、前記光源から予め設定された出力レベルが既知の損傷閾値未満である少なくとも1つのレーザーパルスを前記第1の患者に対して前記第1の治療部位に印加した後の温度であり、
前記推定するステップ)、前記定義するステップ)、前記測定するステップ)、および前記調整するステップ)が前記治療中に継続的に更新される、方法。
【請求項2】
第2の治療部位に前記治療プロトコルを実施する前に、前記第1の患者の前記第2の治療部位にステップ)から)を繰り返すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の患者に前記治療プロトコルを実施する前に、前記第2の患者の前記第1の治療部位にステップ)から)を繰り返すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光熱標的治療システムのコントローラが、前記第1の患者に対して前記第1の治療部位に前記光源を動作させるための前記パラメータの前記安全な動作範囲を前記光熱標的治療システムのメモリに記憶するステップと、
)その後に前記第1の患者に前記治療プロトコルを実施する場合、前記光熱標的治療システムのコントローラが、前記メモリに記憶された前記パラメータを考慮するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
)前記第1の治療部位における前記皮膚表面温度が予め設定された閾値温度に到達すると、前記光熱標的治療システムのコントローラが、前記光源の前記パラメータを調整して、前記第1の治療部位の実効的な入射出力を低下させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記光源の前記パラメータの前記安全な動作範囲を定義するステップが、レーザー出力、パルス幅、パルス間隔、最大出力および皮膚表面冷却機構のうちの少なくとも1つを設定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第2の治療部位に前記治療プロトコルを実施する間に、前記第1の患者に対して前記第2の治療部位にステップ)から)を繰り返すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第2の患者に対して前記治療プロトコルを実施する間に、前記第2の患者に対する第1の治療部位にステップ)から)を繰り返すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記光熱標的治療システムのコントローラが、前記第1の患者に対して前記第1の治療部位に前記光源を動作させるための前記パラメータを前記第2の患者のためにメモリに記憶するステップと、
)その後に前記第2の患者に対して前記治療プロトコルを実施する際に前記光熱標的治療システムのコントローラが、前記メモリに記憶された前記光源を動作させるための前記パラメータを考慮するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
媒体内にある発色団を標的とする光熱標的治療システムであって、
一組のパラメータを使用して動作させたときに、所定範囲の出力レベルにわたってレーザーパルスを供給するように構成された光源であって、前記出力レベルの範囲が、前記発色団および治療部位の既知の損傷閾値を含み、1210nmおよび1720nmからなるグループから前記レーザーバルスの波長が選択される光源と、
前記治療部位における皮膚表面温度を測定するための温度測定装置と、
前記治療部位に向けて気流を生じさせる冷却システムであって、前記気流を-22℃まで冷却する冷却システムと、
前記光源および前記温度測定装置を制御するためのコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記治療部位に気流を向けて前記治療部位を前記冷却システムを用いて冷却し、
前記光源から予め設定された出力レベルが既知の損傷閾値未満である少なくとも1つのレーザーパルスが前記治療部位に印加された後に、前記治療部位における皮膚表面温度を測定し、
前記皮膚表面温度と前記光源を動作させるためのパラメータとを、熱伝達の有限要素モデルおよび生検を使用した臨床実験のうちの少なくとも1つによって確立された相関モデルに当てはめることによって、前記光源のパラメータと前記治療部位における前記皮膚表面温度との間の関係を推定し、
治療プロトコルを実施する際に前記発色団を実効的に標的としながらも前記治療部位における前記媒体に対する熱損傷を回避するために、前記光源の一組のパラメータの安全な動作範囲を、45℃と55℃との間である前記皮膚表面温度に対応するように、定義し、
前記安全な動作範囲内で前記レーザーパルスを実施するように前記光源を設定するように構成されている、システム。
【請求項11】
治療部位の媒体内にある発色団を標的とする光熱標的治療システムであって、
一組のパラメータを使用して動作させたときに、所定範囲の出力レベルにわたってレーザーパルスを供給するように構成された光源であって、前記出力レベルの範囲が、前記レーザーパルスが照射される媒体内の発色団および治療部位の既知の損傷閾値を含み、1210nmおよび1720nmからなるグループから前記レーザーバルスの波長が選択されるむ光源と、
前記治療部位における皮膚表面温度を測定するための温度測定装置と、
前記治療部位に向けて気流を生じさせる冷却システムであって、前記気流を-22℃まで冷却する冷却システムと、
前記光源および前記温度測定装置を制御するためのコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記治療部位に気流を向けて前記治療部位を前記冷却システムを用いて冷却し、
前記光源から予め設定された出力レベルが既知の損傷閾値未満である少なくとも1つのレーザーパルスが前記治療部位に印加された後に、前記第1の治療部位における皮膚表面温度を測定し、
前記皮膚表面温度と前記光源を動作させるためのパラメータとを、熱伝達の有限要素モデルおよび生検を使用した臨床実験のうちの少なくとも1つによって確立された相関モデルに当てはめることによって、前記光源のパラメータと前記治療部位における前記皮膚表面温度との間の関係を推定し、
前記光源のパラメータと推定された前記皮膚表面温度との間の関係に基づいて、前記治療部位における将来の皮膚表面温度を予測し、
前記皮膚表面温度の将来の測定値が規定値を超えないように、前記光源のパラメータのうちの少なくとも1つを調整するように構成されている、システム。
【請求項12】
前記光源のパラメータが、レーザー出力、パルス幅、パルス数のうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光熱標的治療に関し、より具体的には、媒体に埋め込まれた特定の発色団を標的とする光誘起熱治療のための正確な線量測定を決定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真皮などの媒体に埋め込まれた発色団は、レーザーなどの標的光源で発色団を加熱することによって熱的に損傷され得る。しかし、発色団を損傷するのに十分な熱エネルギーの適用はまた、周囲の真皮および上にある表皮に損傷を与える可能性があるため、表皮および真皮の損傷ならびに患者の疼痛になる。この問題は、皮脂などの発色団を使用して標的を十分に高い温度に加熱して標的に損傷を与える皮脂腺などの標的にも当てはまる。
【0003】
表皮および真皮の損傷ならびに患者の疼痛を防止するための以前のアプローチには、
【0004】
1.表皮を予備冷却し、次いで光熱治療を適用するステップと、
【0005】
2.表皮を予備冷却し、また予備加熱プロトコルで表皮および真皮を予備調整(すなわち予備予熱)し、次いで別の治療プロトコルで光熱治療を適用するステップとが含まれる。特定の場合には、予備加熱プロトコルと治療プロトコルとは同じレーザーで行われるが、2つのプロトコルは異なるレーザー設定とアプリケーションプロトコルとを含むため、治療プロトコルおよび装置がさらに複雑になる。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記載される実施形態によれば、媒体に埋め込まれた発色団を標的とする光熱標的治療システム内で光源を動作させるために適した一組のパラメータの決定方法が開示される。本方法は、第1の患者に治療プロトコルを実施する前に、1)予め設定された出力レベルが既知の損傷閾値未満である少なくとも1つのレーザーパルスを第1の治療部位に実施するステップを含む。本方法はまた、2)少なくとも1つのレーザーパルスの実施後に、第1の治療部位における皮膚表面温度を測定するステップを含む。本方法は、3)光源を動作させるためのパラメータと第1の治療部位における皮膚表面温度との間の関係を推定するステップと、4)治療プロトコルを実施する際にさらに発色団を実効的に標的としながら第1の治療部位における媒体に対する熱損傷を回避するために、光源を動作させるためのパラメータの安全な動作範囲を定義するステップとをさらに含む。
【0007】
一実施形態では、第2の治療部位で治療プロトコルを実施する前に、第1の患者の第2の治療部位にステップ1)から4)が繰り返される。別の実施形態では、第2の患者に治療プロトコルを実施する前に、第2の患者の第1の治療部位にステップ1)から4)が繰り返される。さらに別の実施形態では、本方法は、5)第1の患者に対して第1の治療部位に光源を動作させるためのパラメータの安全な動作範囲を光熱標的治療システムのメモリに記憶するステップと、6)その後に第1の患者に治療プロトコルを実施する際にメモリにそのように記憶されたパラメータを考慮するステップとをさらに含む。
【0008】
別の実施形態では、媒体に埋め込まれた発色団を標的とする光熱標的治療システムが開示される。本システムは、一組のパラメータを使用して動作させたときに、ある範囲の出力レベルにわたってレーザーパルスを供給するように構成された光源を含み、出力レベルの範囲が、発色団および治療部位に対する既知の損傷閾値を含む。本システムはまた、治療部位の皮膚表面温度を測定するための温度測定装置と、光源および温度測定装置を制御するためのコントローラとを含む。コントローラは、光源のパラメータと治療部位の皮膚表面温度との間の関係を推定し、治療プロトコルを実施する際に発色団を実効的に標的としながらも治療部位における媒体の熱損傷を回避するために、光源の一組のパラメータの安全な動作範囲を定義し、安全な動作範囲内でレーザーパルスを実施するように光源を設定するように構成されている。
【0009】
さらに別の実施形態では、第1の治療部位で第1の患者に治療プロトコルの実施中に、媒体に埋め込まれた発色団を標的とする光熱標的治療システム内で光源を動作させるために適した一組のパラメータの調整方法が開示される。本方法は、1)第1の治療部位における皮膚表面温度を少なくとも1回測定するステップと、2)治療プロトコルが第1の患者に対して第1の治療部位に実施されるときに皮膚温度を予測するステップと、3)第1の治療部位における皮膚表面温度の将来の測定値が規定値を超えないように、光源を動作させるためのパラメータのうちの少なくとも1つを調整するステップとを含む。皮膚温度の予測は、熱伝達モデルおよび一連の実験結果のうちの少なくとも1つを考慮する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態による、例示的な光熱標的治療システムを示す図である。
図2】一実施形態による、光熱標的治療システムとともに使用するための例示的なスキャナー装置を示す図である。
図3】一実施形態による、統合予備調整/光治療プロトコルとしての使用に適した例示的な一組の光パルスの概略図を示す図である。
図4】一実施形態による、治療光パルスが皮膚表面に印加されるときに皮膚表面で測定された温度を時間の関数として示す図である。
図5】測定された皮膚表面温度を分析し、後続のレーザーパルスおよび/または追加の冷却が実施されるときに皮膚の温度を予測し、次いで、それに応じて治療プロトコルを修正するための例示的なプロセスを示すフローチャートを示す図である。
図6】2人の異なる個人に対する同様の治療部位への種々の印加レーザーパルス出力について測定された皮膚表面温度を示す図である。
図7】一実施形態による、リアルタイムの皮膚表面温度測定値に基づくレーザーシステムパラメータの閉ループ制御のための例示的なプロセスを示すフローチャートを示す図である。
図8】一実施形態による、後続のパルス印加による患者の皮膚温度上昇を予測するためのデータとして使用される、治療部位への4つのパルスの印加から生じる測定された皮膚表面温度、ならびに得られたカーブフィッティングおよび実際の温度測定値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態が示される添付図面を参照して、本発明がより完全に説明される。しかし、本発明は、多くの種々の形態で具体化されてもよく、本明細書に記載された実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が十分かつ完全になるように提供され、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるであろう。図面では、層および部位の大きさおよび相対的な大きさが、明確にするために誇張されている。同じ番号は全体を通して同じ要素を指す。
【0012】
第1、第2、第3などの用語は、種々の要素、部品(components)、部位、層および/または部分を説明するために本明細書で使用され得るが、これらの要素、部品(components)、部位、層および/または部分は、これらの用語によって限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、ある要素、部品(components)、部位、層または部分を別の部位、層または部分と区別するためにのみ使用される。したがって、以下に説明される第1の要素、部品(components)、部位、層または部分を、本発明の教示から逸脱することなく、第2の要素、部品(components)、部位、層または部分と称することができる。
【0013】
「下(beneath)」、「下(below)」、「下(lower)」、「下(under)」、「上(above)」、「上(upper)」などの空間的に相対的な用語は、本明細書では、説明を容易にするために、1つの要素または特徴の、図に示されるような別の要素または特徴との関係を説明するために使用されてもよい。空間的に相対的な用語は、図に示される向きに加えて、使用または動作中の装置の異なる向きを包含することを意図することを理解されたい。例えば、図中の装置が裏返されると、他の要素または特徴の「下(below)」または「下(beneath)」または「下(under)」として記載される要素は、他の要素または特徴の「上(above)」を向いている。したがって、例示的な用語「下(below)」および「下(under)」は、上(above)および下(below)の両方の向きを包含することができる。装置は、別に向いていてもよく(90度回転していてもよく、他の向きであってもよい)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述語は、それに応じて解釈される。さらに、層が2つの層の「間」にあるといわれる場合、それは、2つの層の間の唯一の層であってもよく、または1つ以上の介在層が存在してもよいことも理解されたい。
【0014】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。さらに、「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」という用語は、本明細書で使用される場合、所定の特徴、整数、ステップ、動作、要素および/または部品(components)の存在を規定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、部品(components)および/またはそのグループの存在または追加を排除しないことを理解されたい。本明細書で使用されるように、用語「および/または」は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上の一切の組合せを含み、「/」と省略され得る。
【0015】
要素または層が、別の要素または層「の上に」、「に接続されて」、「に結合されて」、または「に隣接して」あるといわれる場合、それは、他の要素または層の上に直接、接続されて、結合されて、結合されて、または隣接していてもよく、あるいは介在する要素または層が存在してもよいことを理解されたい。対照的に、要素が、別の要素または層「の上に直接」ある、「に直接接続されている」、「に直接結合されている」、または「に直接隣接している」といわれる場合、介在する要素または層は存在しない。同様に、光が1つの要素から「受け取られる」または「供給される」場合、光は、その要素から、または介在する要素から直接受け取られ得、または供給され得る。一方、光が1つの要素「から直接」受け取られるまたは供給される場合、介在する要素は存在しない。
【0016】
本発明の実施形態は、本発明の理想化された実施形態(および中間構造)の概略図である断面図を参照して本明細書で説明される。このように、例えば、製造技術および/または公差の結果としての図の形状からの変形例が期待されるべきである。したがって、本発明の実施形態は、本明細書で示される部位の特定の形状に限定されるものと解釈されるべきではなく、例えば、製造から生じる形状の偏差を含むべきである。したがって、図に示される部位は、本質的に概略的なものであり、それらの形状は、装置の部位の実際の形状を示すことを意図するものではなく、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0017】
別に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当該技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、一般に使用される辞書で定義されるような用語は、関連技術および/または本明細書の文脈では、それらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的にそのように定義されない限り、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されないことを理解されたい。
【0018】
図1は、標的を標的とする例示的な光熱標的治療システムを示しており、標的は、媒体に埋め込まれた特定の発色団を含み、周囲の媒体を損傷することなく標的を損傷するように標的を十分に高い温度に加熱する。本システムは、例えば、皮脂が、皮脂腺に埋め込まれた発色団である一方、標的皮脂腺を取り囲む表皮および真皮を残す標的方法で皮脂腺の光熱除去のために使用され得る。
【0019】
さらに図1を参照すると、光熱標的治療システム100は、冷却ユニット110および光治療ユニット120を含む。冷却ユニット110は、治療部位、すなわち、標的皮脂腺の上にある外皮層部位に、接触または直接空冷によるなどの冷却効果のための冷却機構を備える。冷却ユニット110は、光治療ユニット120内のコントローラ122と接続されている。コントローラ122は、図1の光治療ユニット120内に収容されるように示されているが、コントローラは、冷却ユニット110および光治療ユニット122の両方の外側に、または冷却ユニット110内にさえ位置することができることに留意されたい。
【0020】
コントローラ122は、さらに、レーザー124、ディスプレイ126、温度監視ユニット、足踏みスイッチ130、ドアインターロック132、および緊急オン/オフスイッチなどの光治療ユニット120内の他の部品(components)を制御する。レーザー124は、光治療プロトコルのためのレーザー出力を供給し、コントローラ122は、出力およびパルス時間設定などのレーザーのための特定の設定を調節する。レーザー124は、単一のレーザーであっても、または2つ以上のレーザーの組合せであってもよい。2つ以上のレーザーが使用される場合、レーザー出力は、1つのより強力なレーザーとして機能するように光学的に結合される。ディスプレイ126は、冷却ユニット110の動作状態、レーザー124および他のシステムの状態などの情報を含むことができる。温度監視ユニット128は、例えば、治療部位内の皮膚表面の温度を監視するために使用され、治療部位の測定された皮膚表面温度は、光治療プロトコルを調整するためにコントローラ122によって使用される。コントローラ122はまた、レーザー124および/または冷却ユニット110を遠隔でオンまたはオフするための足踏みスイッチ130と接続される。さらに、ドアインターロック132は、治療室へのドアが半開きであるときに、ドアインターロック132がその状態を検出し、光治療ユニット120または少なくともレーザー124の動作を許可しないようにコントローラ122に指示するように追加の安全対策として使用することができる。さらに、緊急時に光熱標的治療システム100を迅速にシャットダウンするために、緊急オン/オフスイッチ134を設けることができる。別の変形例では、追加のフォトダイオードまたは他のセンサーを追加して、レーザー124から放射されるエネルギーの出力レベルを監視することができる。
【0021】
引き続き図1を参照すると、光熱標的治療システム100は、患者に治療プロトコルを実施する際にユーザーが手で持てる装置の一部であるスキャナー160をさらに含む。スキャナーは、ユーザーによる取り扱いを容易にするために、例えば、銃状または棒状の形状に形成することができる。スキャナー160は、スキャナー160を使用して冷却プロトコルを実施できるように、冷却接続部162を介して冷却ユニット110と接続されている。さらに、レーザー124からの出力は、スキャナー160を使用して光治療プロトコルを実施できるように、光ファイバー受渡部164を介してスキャナー160に接続されている。スキャナー160は、例えば、治療部位の皮膚温度をコントローラ122にフィードバックするように、温度接続部166を介して温度監視ユニット128に接続されている。
【0022】
図2は、一実施形態によるスキャナー160のさらなる詳細を示している。冷却接続部162は、冷却機構(例えば、冷気流)を治療部位に引き渡すように構成されている冷却受渡ユニット202と接続されている。レーザー124からの光ファイバー受渡部164は、光熱治療プロトコルのための光エネルギーを治療部位に伝えるための光学部品を含むレーザーエネルギー受渡ユニット204と接続されている。最後に、温度接続部166は、コントローラ122にフィードバックするために治療部位の温度を測定する温度センサー206と接続されている。さらに、スキャナー160は、オン/オフスイッチ210(例えば、レーザー124をオン/オフするためのトリガースイッチ)と、オプションで、レーザーが作動しているかどうかなどスキャナー160の動作状態を示す状態表示器212とを含む。スキャナー160は、図2ではボックスとして概略的に示されているが、実際の形状は、使い易いように構成されている。例えば、スキャナー160は、ハンドル、ピストル形状、またはユーザーが照準および制御を容易にするための別の適切な形状を有するノズルとして成形することができる。
【0023】
例示的な使用シナリオでは、治療されるべき皮脂腺の上にある全治療部位が冷却される。冷却プロトコルは、例えば、10秒など所定の期間、治療部位にわたる冷気流の実施を含むことができる。予備冷却に続いて、冷却機構(例えば、冷気流または接触冷却)の動作を継続し、光治療プロトコルが治療部位に実施される。一実施形態では、正方形の「フラットトップ」ビームのパルスをスキャナー装置と組み合わせて使用して、治療部位にレーザーパルスを順次印加する。例えば、光治療プロトコルは、設定された数の光パルスを治療部位の各セグメントに実施することを含むことができ、セグメントは、レーザーパルスによって順次照射される。別の実施形態では、セグメントは、ランダムに照射される。
【0024】
一実施形態による、調整/光治療プロトコルに適した一組のパルスの一例を図3に示している。シーケンス300は、治療部位に実施される光パルス322、324、326、328、330、332および334を含む。一実施形態では、7つの光パルスのすべてが等しい出力であり、均一なパルス間隔(両矢印342によって表される)によって分離され、同じパルス持続時間(ギャップ344によって表される)を有する。一例では、パルス持続時間344は150ミリ秒であり、パルス間隔は2秒であり、2秒のパルス間隔は、例えば、それに対する損傷を防止するように、ブロック内の表皮および真皮を冷却させる。パルス間隔期間中にレーザー使用効率を高めるように、治療部位内の種々のセグメントに対して全面にレーザーを走査することができる。図3は、縮尺通りでないことに留意されたい。
【0025】
図4は、一実施形態による、図3に示されるような光パルスが治療部位に印加されるときに測定された皮膚表面温度を示している。図4に示される例では、治療部位は、7秒間の直接空冷によって予備冷却され、次いで、22ワット出力および150ミリ秒の持続時間で1720nmの波長のレーザーからの光パルスが、冷却がオンのままである間に、2秒の周期で印加されている。この特定の例では、冷却のため、かつ治療の間に使用される直接空冷が、-22℃まで冷却された高速空気柱をもたらし、結果として皮膚と空気との間の熱伝達係数が約350W/m2Kとなる。ビームサイズは、一実施形態では、4.9平方ミリメートルである。正確なビームサイズは、治療部位のサイズ、レーザーの出力プロファイル、身体の治療部位の位置および他の要因に応じて、例えば、コリメート光学系を使用して調整することができる。
【0026】
得られた皮膚表面温度の変化がグラフ400に示されており、ピーク422は、図3に示されるように印加光パルス322に対応し、ピーク424、426、428および430についても同様である。図4に示される例では、スポットあたり平均出力は22W×0.15s/2s=1.65Wである。例えば、2秒のパルス間隔で100ミリ秒間、33ワットでパルス化することによって、または1.9秒のパルス間隔で125ミリ秒間25.1Wでパルス化することによって、スポットあたり同じ平均出力を実現することができる。さらに、面積あたりの平均レーザー出力は、冷却システムによって実現される熱除去とバランスさせるべきである。
【0027】
患者の最小限の不快感で特定の発色団の光熱標的治療を成功させるための要件は、1)表皮温存、すなわち、皮膚表面の最高温度が約55℃未満であることを確認すること、2)真皮温存、すなわち、治療パルスの最高出力および平均出力と冷却システムの熱除去とをバランスさせることによって真皮の過熱を回避すること、および3)皮脂腺治療のための55℃を超える最高温度などの、発色団および発色団を含む標的の局部加熱を行うことを含む。55℃の最高温度は、特定の治療プロトコルに大きく依存し、周囲の真皮および表皮の損傷を回避するための安全な動作範囲内に留まるように他の温度に調整可能であることに留意されたい。
【0028】
表皮および真皮の厚さなどの組織パラメータは、身体上の異なる皮膚位置間で異なるだけでなく、年齢、性別および民族性などの要因によって個人間で異なることが文献で知られている。例えば、額は、同じ個人に対してさえ、背中とは異なる組織特性を有しているため、異なる治療部位に対して異なる治療パラメータ設定を必要とする。特定の治療プロトコルを決定する際の組織特性のこのような変動の考慮は、ざ瘡のレーザーベースの治療にとって重要である。さらに、例えば、製造のバラツキおよび動作状態により、特定のレーザーシステム間の正確なレーザー出力、スポットサイズおよび冷却能力にバラツキがある場合がある。実際に、システムごとの製造のバラツキは、種々のレーザー治療システム間で15%以上の影響変動をもたらす可能性がある。さらに、治療を届けるユーザーによって使用される個々の技術は、例えば、皮膚表面に実施される種々の圧力によって治療に影響を及ぼすこともでき、これは、次に、例えば、治療部位の血液潅流に影響を及ぼす。
【0029】
ざ瘡のレーザー治療では、動作熱範囲は、一般に、表皮および真皮損傷閾値温度を上限とし、皮脂腺をその損傷閾値温度にするのに必要な温度を下限とするように制限される。現在、治療プロトコルによって標的とされている皮脂腺の温度を直接測定する良好な方法はないが、皮膚表面温度は、皮脂腺温度の指標であり得る。次いで、皮脂腺温度と皮膚表面温度との間の対応を提供する相関モデルを使用して、表皮の損傷閾値未満に留まりながら皮脂腺損傷を実効的に標的とするように、皮膚表面温度測定値を使用する実際の治療プロトコルを調整することができる。相関モデルは、例えば、分析的熱伝達モデルを使用して、または特定の治療プロトコルの実施を前提として皮膚表面温度を皮脂腺損傷に相関させる臨床データ(例えば、生検による)を使用することによって、開発することができる。
【0030】
臨床データに基づいて、例えば図3および図4に示される治療プロトコルを使用して、末端皮膚表面温度で表されるざ瘡治療のための動作温度範囲は、約45℃から55℃である。45℃未満の皮膚表面温度では、皮脂腺に損傷がないことが分かっている。皮膚表面温度が45℃から55℃の場合、皮脂腺損傷の程度は様々であり、表皮損傷はない。55℃を超えると、皮脂腺の損傷に加えて表皮の損傷がある。
【0031】
しかし、臨床データはまた、末端皮膚表面温度が、特定の個人の特定の治療部位の組織パラメータに強い依存性を有することを示している。既存の治療プロトコルは、アプローチの「1つの治療が全てに適合する」タイプに基づいているが、より低いレーザー出力での末端皮膚温度および/または治療の初期部分の間に到達した皮膚表面温度および/または以前の治療の間に到達した末端皮膚表面温度の測定値から外挿する個別に調整された治療パラメータを直接決定し、表皮損傷を回避しながら皮脂腺損傷を実効的に引き起こすように、革新的な分析プロトコルを本治療方法に組み込むことができる。このように、治療プロトコルは、特定の個人の特定の治療部位にカスタマイズすることができ、また、特定の機械のレーザー出力の変動、ならびに周囲の湿度および温度などの治療条件の変動によって引き起こされる可能性がある治療変動を軽減する。したがって、標的組織成分(例えば、皮脂腺)を実効的に治療しながらも、望ましくない組織損傷を引き起こさないように、異なる患者および同じ患者の異なる組織部位に対してさえ、治療プロトコルを最適化することが望ましい。
【0032】
例えば、図3の最初の4つのパルスの間に皮膚表面温度を直接測定することによって、後続のパルスの印加後の最高表皮表面温度を高精度に予測することができる。この予測は、印加されるパルスの数を減らすこと、パルス幅を調整すること、または後続のパルスのためのレーザー出力を修正することなど、皮膚の特定の部位のための特定の治療プロトコルのリアルタイム修正のために使用することができる。レーザーシステムが、十分に迅速に反応できる冷却システムを組み込んでいる場合、冷却は、治療システムパラメータのリアルタイム修正の一部としても調整可能である。このカスタマイズプロセスは、治療手順中の患者の快適性および安全性を大幅に向上させる。
【0033】
この分析プロトコルは、例えば、治療を患者に実施するために医療専門家によって保持されるスキャナー(例えば、図2の温度センサー206を参照)に組み込むことができる市販の既製の低コストカメラを使用する、または別の市販の既製の単一ピクセルまたは複数ピクセルの熱測定装置を使用する温度測定を組み込むことによって行うことができる。予測プロセスは、高度に局在したレベルで行うことができるため、治療マトリックス中の個々のスポットごとにプロトコルを調整することさえも、実行中または治療開始前に治療プロトコルを調整することができる。このように、治療プロトコルは、表皮および真皮損傷閾値温度未満に留まりながら必要な治療レーザー出力を供給するように規定することができる。
【0034】
図5を参照すると、一実施形態による、分析プロトコルの例示的なプロセスを示すフローチャートが示されている。分析プロトコルは、標的(例えば、皮脂腺)の最高表皮温度および損傷閾値温度が既知であると仮定する。さらに、皮膚表面温度と標的(例えば、皮脂腺)との間の相関モデルは、例えば、熱伝達の有限要素モデリングなどの計算解析を使用して、または生検を使用する臨床実験によって確立されている。したがって、分析プロトコルについて、末端皮膚表面温度の目標値の知識が仮定される。一例として、先に図3および図4で説明された治療プロトコルでは、目標最高皮膚表面温度は51℃であることが知られている。
【0035】
図5に示されるように、分析プロトコル500は、ステップ512では、治療部位に低出力レーザーパルスを印加することによって始まる。レーザー出力は、表皮損傷の損傷閾値未満の値に設定されるべきである。次いで、ステップ514では、治療部位の皮膚表面温度が測定される。温度測定は、例えば、低速赤外線カメラまたは同様の装置を使用して行うことができる。次いで、判定516では、収集されたデータを事前に確立された相関モデルに適合させるのに十分なデータが収集されたかどうか判定される。判定516に対する答えがNOであると、プロセスはステップ512に戻り、このステップでは、異なる、低出力設定のレーザーパルスが治療部位に印加され、印加されたレーザー出力と表皮温度との間の追加の相関データを収集する。
【0036】
判定516に対する答えがYESであると、分析プロトコル500は、ステップ518において、測定された皮膚表面温度データを確立された相関モデルに適合させるように進行する。次いで、ステップ520では、特定の個人の特定の治療部位のための適切なレーザーパラメータが決定される。最後に、ステップ522では、特定の個人の特定の治療部位のために使用されるべき正確な治療プロトコルが、ステップ520で発見された適切なレーザーパラメータに従って修正される。
【0037】
引き続き図5を参照すると、オプションで、分析プロトコル500は、実際の治療プロトコル中に継続することができる。例示的な実施形態では、ステップ522におけるレーザーパラメータの設定に続いて、ステップ530において、適切なレーザーパラメータを用いた治療プロトコルが開始される。次いで、ステップ532では、プロセスは、治療部位の皮膚表面温度を引き続き測定する。測定された皮膚表面温度は、ステップ534において、相関モデル計算を更新するために使用され、ステップ536では、治療プロトコルのためのレーザーパラメータが、更新された計算に基づいて更新される。次いで、治療プロトコル(すなわち、治療部位に印加されるレーザーパルスの数)が完了したかどうか判定するために、判定538が行われる。判定538に対する答えがNOであると、分析プロトコルは、ステップ532に戻り、皮膚表面温度を引き続き測定する。判定538に対する答えがYESであると、治療プロトコルは、ステップ540で終了する。
【0038】
すなわち、治療プロトコルが完了するまで、分析プロトコル500は、実際の治療プロトコル中であってもレーザーパラメータを引き続き調整するために、オプションのステップ530から540を実施することができる。実際に、同じ患者の同じ治療部位の以前の治療からのレーザー設定など、患者に関する他の関連データが存在する場合、それらは、レーザーパラメータのさらなる精緻化のためにモデル計算に提供することもできる。
【0039】
次に、図6を参照すると、一実施形態による、分析プロトコルおよび後続の治療プロトコルの一例が示されている。グラフ600は、「C Carlton」および「S Carlton」と識別される、2人の異なる患者に一連のレーザーパルスを印加する間のレーザー出力と最高皮膚表面温度との間の関係を示している。大ドット612、614および616は、患者「C Carlton」に印加される最初の3つの低出力レーザーパルスを示しており、その後、上記の分析プロトコルは、IRカメラによって測定される最高皮膚表面温度を予測するために使用されるため、水平破線618および垂直破線620で示されるような安全な動作範囲を定義する。ドット622、624および626は、同じ患者「C Carlton」で、わずかに高いレーザー出力設定で取られたデータを示している。
【0040】
引き続き図6を参照すると、異なる患者に対する同じ線量測定決定プロセスの適用可能性を判定するために、ドット630で示されるような類似の開始温度から始めて、同じ出力のレーザーパルスを第2の患者「S Carlton」に印加した。第2の患者「S Carlton」では、ドット632、634および636で示されるように、レーザー出力を高める治療プロトコルがより低温で線量測定プロトコルを実施することなく直接実施された。第2の患者「S Carlton」についての実際に測定された表皮温度は、第1の患者「C Carlton」のものとは異なるが、グラフ600は、破線618および620で示される安全な動作範囲が、第2の患者「S Carlton」についても実施可能であったことを示している。このように、上記の分析プロトコルは、特定の個人の特定の治療部位のための治療プロトコルを調整する際に、これらの個人差を考慮する。分析プロトコルの有効性は、生体データで検証されている。
【0041】
分析プロトコルは、実際の治療セッション前に、例えば、患者が予約または治療前セッションで登録されているときに行うことができる。低出力が使用されるため、分析プロトコルは局所麻酔を必要とせずに、分析プロトコルの実施中に生じる表皮損傷または真皮損傷を事実上生じさせることなく行うことができる。例えば、治療に備えて、訓練されたオペレーターは、種々の治療部位を迅速に予備測定し、皮膚位置あたり1回のスキャンで、個別化治療プロトコルを開発することができる。
【0042】
特定の患者および/または特定の皮膚位置および/または特定のレーザー装置について、レーザー出力と得られた皮膚表面温度との間の関係が確立されると、図6のドット612、614、616、622、624および626を接続する線の傾きで示されるこの関係を使用して、将来の治療を連続的に調整することができる。さらに、治療スケジュールが進行するにつれて、治療データのすべてを、皮膚表面対出力の相関を確立するための基礎に追加することができる。このように、治療プロトコルが開始された後でも、相関関係は、絶えず更新され、洗練される。例えば、レーザー出力と、特定の治療部位で到達した結果として生じる皮膚表面温度との間の既知の関係に基づいて、レーザー出力などのレーザーパラメータを調整するための示唆を、手動調整のために皮膚科医に与えることができ、または、装置は、次の治療部位のために、例えばレーザー出力を自動的に調整することができる。
【0043】
上記の分析プロトコルの概念は、閉ループ制御プロセスを使用する治療プロトコルのリアルタイム調整に拡張することができる。皮膚の表面温度は、例えば、赤外線(IR)カメラまたは他の温度測定機構を使用して測定することができる。測定された温度を皮膚組織の数学モデルに適合させることによって、例えば、測定された皮膚表面温度は、直接測定することができない皮脂腺などの標的成分の温度と相関させることができる。
【0044】
それは、別の実施形態にしたがう、特定の部位のための治療の初期部分の間の皮膚表面の温度測定が、この特定の部位の皮膚表面の将来の温度を予測するために使用されるシステムである。そのように予測された将来の温度は、レーザーによって伝えられる熱エネルギーを調整するために、レーザー出力、パルス幅、パルス数、およびレーザーによって伝えられる熱エネルギーに影響を及ぼす他のものなどの1つ以上のパラメータを調整することによって、または特定の部位の皮膚表面の将来の温度、ひいては直接的には容易に測定することができない組織の下にある部位および成分の温度が、目標値に到達するか、または規定値を超えないように気流などの冷却システムの1つ以上のパラメータを調整することによって、使用される。
【0045】
すなわち、患者に実施される線量測定(例えば、レーザー光源の出力設定を含む光治療の設定)は、予測制御プロセスを使用することによって、リアルタイムで調整することができる。例えば、図3に示されるパルス322、324および326の間に皮膚温度を直接測定することによって、後続のパルスの印加後の予測最高表皮表面温度を高精度に計算することができる。この予測は、例えば、3つまたは4つの治療パルスの印加後に、測定された表皮表面温度に数学関数を適合させることによって実現される。次に、適切な数学関数は、治療プロトコルで使用されるパルス方式の知識に基づいて選択される。例えば、図3に示される治療プロトコルでは、単一の指数関数は、後続の治療パルス印加後の皮膚表面温度の正確なモデルを提供することができる。次いで、この予測は、皮膚の特定の部位のための特定の治療プロトコルをリアルタイムで修正する際に使用することができる。例えば、ユーザーは、印加される追加のパルスの数、ならびに後続のパルスのパルス幅およびレーザー出力のうちの1つ以上を修正することができる。さらに、光治療システムが十分に応答する冷却ユニットを含む場合、治療部位に実施される冷却も、治療システムパラメータのリアルタイム修正の一部として調整可能である。このカスタマイズプロセスは、治療手順中の患者の快適性および安全性を大幅に向上させる。
【0046】
予測制御プロセスで使用するための分析は、温度測定装置、例えば、スキャナーに組み込まれた市販の既製の低コストカメラ(例えば、図2の温度センサー206)を使用することにより、または単一ピクセルまたは複数ピクセルの熱撮像装置などの別の熱測定装置を使用することにより行うことができる。標的治療部位のサイズを制御し、特に標的治療部位の皮膚表面温度を測定することによって、予測プロセスを高度に局在したレベルで行うことができるため、治療プロトコルを実施する医療専門家が、治療プロトコルの開始前に、治療中にリアルタイムで、または治療マトリックス内の個々のスポットごとにさえ、調整を行うことを可能にする。このように、治療プロトコルは、表皮損傷閾値温度未満かつ真皮損傷閾値温度未満に維持しながら必要な治療レーザー出力を供給するために、高度にカスタマイズ可能な様式で実施することができる。
【0047】
例えば、アレニウス損傷関数により、標的損傷が最高温度に対して指数関数的に関連し、次いで、皮膚表面の最高温度が標的成分の最高温度に相関する。一例では、温度上昇は、150msのパルスを有する5mm×5mmのスポットにわたる22Wレーザーによる照射に対して約180℃/秒であり、この場合、温度測定が治療プロトコルのための制御入力として使用されるために、皮膚表面測定値は、約2.5msごとに、または400Hzで更新されるべきである。このような高速温度測定法により、測定された皮膚表面温度が設定閾値に到達するときにレーザーを遮断することができる。
【0048】
あるいは、低速温度測定装置を使用して、治療プロトコルの初期パルス印加中の温度上昇および降下挙動を測定することによって、最高温度を予測することができる。皮膚表面温度は、治療部位に印加された最初のいくつかのレーザーパルスの間に測定することができ、温度測定値は、後続のパルスのエネルギープロファイルをそれに応じて調整することができるように、後続のパルス印加の間に予想される皮膚表面温度を外挿するために使用される。例えば、周囲の媒体に対する損傷を回避しながら標的発色団に適切な量のエネルギーを伝えるために、レーザーパルス持続時間、出力およびパルス間隔などのレーザーパラメータを調整することができる。
【0049】
図7に示されるフローチャートは、一実施形態による、リアルタイム皮膚表面温度測定値に基づくレーザーシステムパラメータの閉ループ制御のための例示的なプロセスを示している。プロセス700は、治療設定(すなわち、治療レベルの出力、パルス幅など)に設定されたレーザーシステムを用いたレーザー治療プロトコルの初期化から始まる。ステップ712では、治療プロトコルに従って治療部位にレーザーパルスが印加される。治療プロトコルは、例えば、順次増大する出力のパルス、または治療部位に繰り返し印加される実質的に同一の出力設定のパルスの印加を含むことができる。例示的な治療プロトコルは、5ミリメートル×5ミリメートルのスポットサイズおよび150ミリ秒の持続時間を有する22Wレーザーからのレーザーパルスの反復印加を含む。
【0050】
引き続き図7を参照すると、ステップ714では、各レーザーパルスの印加中に、治療部位の皮膚表面温度が測定される。オプションで、皮膚表面温度は、パルス間の冷却期間中に測定される。測定は、例えば、25Hzリフレッシュレート赤外線カメラによって行うことができる。400Hzリフレッシュレート温度測定装置などのより高速な装置を使用して、レーザーパルスの印加時および印加後の皮膚表面温度をより正確に測定することができる。
【0051】
次いで、判定716では、カーブフィッティングのために十分な皮膚表面温度データが収集されたかどうか判定される。判定716に対する答えがNOであると、プロセスは、別のレーザーパルスの印加のためにステップ712に戻る。判定716に対する答えがYESであると、ステップ718では、測定された皮膚表面温度データが予測モデルに適合される。ステップ718の間に、最高およびオプションで最小限の皮膚表面温度のカーブフィッティングが生成される。予測モデルは、例えば、臨床設定における被験者に対するレーザーパルスの印加に対応する多数の温度測定値をコンパイルすることによって、または組織の分析的モデリングによって生成することができる。
【0052】
ステップ718で生成されたカーブフィッティングに基づいて、ステップ720では、治療されるべき個人の特定の治療部位のための適切なレーザーパラメータの決定が行われる。例えば、カーブフィッティングが、皮膚表面温度が45℃などの所定の閾値温度を超えて上昇することを予測すると、レーザーパラメータは、レーザー出力を低下させるよう調整される。この場合、皮膚表面温度測定値は、患者の特定の治療部位がレーザーパルスエネルギー吸収に特に敏感であることを示すことができる。あるいは、カーブフィッティングが標的発色団損傷に対する55℃などの目標温度を予測する場合、現在のレーザーパルス出力設定では到達しないであろうから、レーザーパラメータを調整して、必要な治療出力を供給することができる。このような状況は、表皮および真皮の特徴が、特定の治療部位がレーザーパルスエネルギーを容易に吸収しないようなものである場合に起こり得る。
【0053】
図8は、一実施形態による、測定された皮膚表面温度結果に基づく例示的な予測閉ループ制御プロセスを示している。図8のグラフ800は、図7に図示されるような、予測閉ループ制御プロセスで使用される種々の温度測定値および時間の関数として計算されたカーブを示している。図8では、時間ゼロは、約15秒の空冷(すなわち、時間-15からゼロまで)が先行する最初のレーザーパルス(この場合、150m秒パルスおよび5ミリメートル×5ミリメートル正方形スポットの22Wレーザーからのレーザーパルス)の印加の瞬間に対応する。本例では、空冷は、レーザーパルス印加全体を通して治療部位に印加される。皮膚表面温度は、本例では、25Hz更新レート赤外線カメラを使用して測定されるが、他の温度測定装置の使用も考えられる。
【0054】
引き続き図8を参照すると、初期冷却中に測定された皮膚表面温度がカーブ810で示されている。レーザーパルスの印加中に測定された皮膚表面温度が、カーブ812で示されている。標的皮膚表面温度は、ここでは45.5℃で示される破線816によって示されている。
【0055】
時間ゼロから始めて、最初の4つのパルス(円形ドットで示される)の後の最初の温度測定値が予測モデルに適合される。具体的には、図8に示される例では、最高温度ならびに次のパルス印加の直前の冷却温度が、臨床的に生成された予測モデルに適合される。最高温度ピーク822、824、826および828、ならびに最低温度底823、825、827および829は、最高温度カーブ830および最低温度カーブ832(破線カーブとして示される)を生成するためにカーブフィッティングされる。オプションで、レーザーパルス印加間の冷却期間中に行われる温度測定は、最高温度ピークならびに最低温度底の測定精度を向上させるために使用される。
【0056】
皮膚表面温度は、カーブ812で示されるように、後続のレーザーパルス印加中に測定される。最高温度カーブ830および最低温度カーブ832は、測定された皮膚表面温度(すなわち、カーブ812のピーク842、844、846および848、ならびに底843、845および847)を正確に追跡していることが分かる。予測温度上昇(すなわち、破線カーブ830)および実際に測定された温度(具体的には、ピーク846および848)は、45.5℃の目標温度がパルス6および7の印加によって実現されたことを示しているため、レーザー治療プロトコルは、第8のパルスの印加なく停止されることに留意されたい。
【0057】
25Hzリフレッシュ赤外線カメラなどの比較的遅い温度測定装置を用いても、レーザーパルス印加間の冷却期間中の温度データを適合させることにより、各パルス印加で実現される迅速な温度上昇を良好に推定することができる。より高速な温度測定装置(例えば、400Hzリフレッシュレート以上)が使用されると、温度プロファイルをリアルタイムで直接測定することができる。
【0058】
上記は、本発明を例示するものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。本発明のいくつかの例示的な実施形態が説明されたが、当業者は、本発明の新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの修正が可能であることを容易に理解するであろう。例えば、約1210nmなどの他の波長を有するレーザーを使用することができる。あるいは、上記の治療前分析法は、SakamotoらのWIPO特許出願WO/2018/076011およびMcDanielのWIPO特許出願WO/2003/017824に記載されているような他の治療プロトコルとともに使用することができる。実際に、本方法は、システム、ユーザー、大気条件および治療ごとの他のバラツキに左右され得る装置を含む任意の熱治療プロトコルに適用可能である。
【0059】
したがって、多くの種々の実施形態が、上記の説明および図面から生じる。これらの実施形態のあらゆる組合せおよび部分的組合せを文字どおりに説明し例示することは、過度にくどく分かりにくいことを理解されたい。このように、図面を含む本明細書は、本明細書に記載の実施形態のすべての組合せおよび部分的組合せ、ならびにそれらを作成および使用する方法およびプロセスの完全な書面による説明を構成すると解釈されるべきであり、あらゆるこのような組合せまたは部分的組合せに対する特許請求の範囲を支持するものとする。
【0060】
例えば、以下のような実施形態が考えられる:
【0061】
1.媒体に埋め込まれた発色団を標的とする光熱標的治療システム内の光源に適した一組のパラメータの決定方法であって、治療プロトコルを実施する前に、1)治療部位に、設定出力レベルが既知の損傷閾値未満である少なくとも1つのレーザーパルスを実施するステップと、2)少なくとも1つのレーザーパルスの実施後に、治療部位における皮膚表面温度を測定するステップと、3)光源のパラメータと皮膚表面温度との間の関係を推定するステップと、4)治療部位の熱損傷を回避するために、光源のパラメータの安全な動作範囲を定義するステップとを含む方法。
【0062】
2.第1の治療部位に第1の患者にステップ1)から4)が行われ、次いで、第1の患者の第2の治療部位にステップ1)から4)が繰り返される、項目1に記載の方法。
【0063】
3.ステップ1)から4)が、第1の患者に対して治療部位に行われ、次いで、前記ステップ1)から4)が、第2の患者に対してその治療部位に繰り返される、項目1に記載の方法。
【0064】
4.同じ患者に対する以前の治療からの治療データを考慮するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
【0065】
5.実際の治療プロトコルが前記患者に行われている間にステップ2)から4)が繰り返される、項目1に記載の方法。
【0066】
6.特定の部位のための治療の初期部分の間の皮膚表面の温度測定値が、この特定の部位における皮膚表面の将来の温度を予測するために使用されるシステム。そのように予測された将来の温度は、レーザー出力、パルス幅、および1つ以上のレーザーによって伝えられる熱エネルギーに影響を及ぼす他のパラメータなどの1つ以上のパラメータを調整することによって、または特定の部位における皮膚表面の将来の温度、ひいては直接的には容易に測定することができない組織の下にある部位および成分の温度が目標値に到達するように気流などの冷却システムの1つ以上のパラメータを調整することによって、1つ以上のレーザーによって伝えられる熱エネルギーを調整するために使用される。
【0067】
7.この特定の部位の皮膚表面の将来の温度を予測するために、1つ以上の隣接部位の治療中に取られた皮膚表面の温度測定値が使用されるシステム。そのように予測された将来の温度は、レーザー出力、パルス幅、および1つ以上のレーザーによって伝えられる熱エネルギーに影響を及ぼす他のパラメータなどの1つ以上のパラメータを調整することによって、または特定の部位の将来の皮膚表面温度、ひいては直接的には容易に測定することができない組織の下にある部位および成分の温度が目標値に到達するように空気流などの冷却システムの1つ以上のパラメータを調整することによって、1つ以上のレーザーによって伝えられる熱エネルギーを調整するために使用される。
【0068】
本明細書では、本発明の実施形態が開示されており、特定の用語が使用されているが、それらは、一般的かつ説明的な意味でのみ使用されており、限定のためにではない。本発明のいくつかの例示的な実施形態が説明されるが、当業者は、本発明の新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの修正が可能であることを容易に理解するであろう。したがって、すべてのこのような修正は、特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内に含まれることが意図される。したがって、上記は、本発明を例示するものであり、開示された特定の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではなく、開示された実施形態、ならびに他の実施形態に対する修正は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。本発明は、以下の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の均等物がその中に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8