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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】エチレンポリマーの気相製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/34 20060101AFI20230718BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20230718BHJP
   C08F 2/01 20060101ALI20230718BHJP
   C07C 7/00 20060101ALI20230718BHJP
   C07C 7/163 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
C08F2/34
C08F10/02
C08F2/01
C07C7/00
C07C7/163
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021533719
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2019085422
(87)【国際公開番号】W WO2020127098
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】18213407.2
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500289758
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ペンゾ、ジウスッペ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー、ゲルハーダス
(72)【発明者】
【氏名】シュラー、ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】バイタ、ピエトロ
(72)【発明者】
【氏名】メイ、ジウリア
(72)【発明者】
【氏名】ダム、エルケ
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-528776(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121622(WO,A1)
【文献】特開2013-129606(JP,A)
【文献】特表2004-537617(JP,A)
【文献】特開2017-078171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60、4/60-4/70、
6/00-246/00、301/00
C07C 1/00-409/44
C07B 31/00-61/00、63/00-63/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンポリマーを製造するプロセスであって、前記プロセスは、予備活性化重合触媒の存在下に、重合希釈剤としてプロパンを含む反応ガス中で20~200℃の温度および0.5~10MPaの圧力においてエチレンを単独重合するか、もしくはエチレンと一種以上のC~C12-1-アルケンを共重合することによって、少なくとも1つの気相重合反応器を含む気相重合ユニットでエチレンポリマーを粒子形態で形成することを含み、
少なくとも99mol%のプロパンを含み、100ppm-mol以下のプロピレンを含む精製プロパン供給ストリームが気相重合ユニットに供給され、精製は、炭化水素ストリーム中に含まれるプロピレン、アセチレン、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素および水の少なくとも濃度を減少させる炭化水素精製ユニットを通じて炭化水素ストリームを通過させることによって実行される、プロセス。
【請求項2】
前記気相重合ユニットに供給される精製プロパン供給ストリームは、0.03ppm-mol以下の一酸化炭素、0.4ppm-mol以下の二酸化炭素、2.0ppm-mol以下の酸素、3.0ppm-mol以下のアセチレン、及び2.0ppm-mol以下の水を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記重合触媒の予備活性化は、希釈剤としての液体プロパン中に、固体触媒成分を有機金属化合物及び任意選択的に電子供与体化合物と接触させて予備活性化された重合触媒を形成することで行われ、前記重合触媒の予備活性化のための液体希釈剤として用いられるプロパンは、前記精製プロパン供給ストリームから取り出される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記精製プロパン供給ストリームを製造するための炭化水素精製ユニットの一つは、アルミナ担体上の白金系又はパラジウム系組成物である水素化触媒を含む触媒水素化ユニットである、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記触媒水素化ユニットを通過した炭化水素ストリームの一部は、触媒水素化ユニットの上流位置に再循環され、炭化水素ストリームと混合されて水素化される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記プロパン供給ストリームの精製は、炭化水素ストリームを、先にCu系触媒を含む精製ユニットに通過させてから、引き続き、得られたストリームを触媒水素化ユニットに通過させ、その後、得られたストリームを分離ユニットに通過させ、その後、得られたストリームを乾燥ユニットに通過させることにより行われる、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記精製プロパン供給ストリームを製造するための炭化水素ストリームは、少なくとも99モル%のプロピレンを含む精製プロピレンストリームである、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記エチレンポリマーは、マルチモーダルエチレンポリマーであり、気相重合ユニットは、予備活性化重合触媒が供給される第1の重合反応器を含む2つ以上の気相重合反応器と、以前の反応器で形成されたエチレンポリマー粒子に組み込まれた活性形態の重合触媒を受け取る一つ以上の後続の重合反応器の反応器カスケードと、を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記反応器カスケードの第1の反応器は、流動床反応器であって、排出管の上部から下部に移動するエチレンポリマー粒子の床を含むポリマー排出管を含み、プロパンは、プロパン導入点上のエチレンポリマー粒子の床でプロパンの上向きの流れが誘導される量で排出管に導入される、流動床反応器である、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記後続の重合反応器は、マルチゾーン循環反応器であり、ここで1つの重合ゾーンが上昇管であり、ここで成長中のポリオレフィン粒子が高速流動化または輸送条件下で上方に流れ、かつ他の重合ゾーンが下降管であり、ここで成長中のポリオレフィン粒子が高密度化形態で下方に流れ、上昇管と下降管は相互連結され、上昇管を出たポリオレフィン粒子は、下降管に入り、下降管を出たポリオレフィン粒子は、上昇管に入り、したがって、上昇管と下降管とを通じるポリオレフィン粒子の循環が確立される、請求項8または9に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気相重合反応器におけるエチレンポリマーの製造プロセスを提供する。本開示は、予備活性化重合触媒の存在下に、重合希釈剤としてプロパンを含む反応ガス中で気相重合反応器でエチレンを単独重合するか、もしくはエチレンと一種以上のC~C-1-アルケンを共重合することによって、エチレンポリマーを粒子形態で製造するプロセスをさらに含む。
【背景技術】
【0002】
気相重合工程は、エチレンの単独重合またはエチレンと他のオレフィンとの共重合などのエチレンの重合のための経済的な工程である。これら気相重合を実行するのに適切な反応器は、たとえば、流動床反応器、攪拌気相反応器または2つの異なる相互連結された気相重合ゾーンを有するマルチゾーン循環反応器(multizone circulating reactor)である。これらの工程は、一般にエチレンおよびコモノマーを含み、しばしばさらに、低分子量反応生成物のための分子量調節剤として重合希釈剤、たとえば、窒素またはアルカン、または水素などの他のガス状成分も含む気相で実行される。得られた生成物は、一般に固体触媒成分を含む重合触媒システムによって形成される固体ポリエチレン粒子である。
【0003】
重合が行われる反応ガスの不活性成分は、重合希釈剤として作用して重合速度の制御を可能にする。例えば、WO2006/082007A1は、プロパンを含む反応ガスの存在下に気相反応器で行われるエチレン重合プロセスを開示している。排出されたポリエチレン粒子を脱気するために、すなわち重合反応器から排出された反応ガスに同伴される部分を、ポリエチレン粒子と一緒に粒界ガスまたは溶存炭化水素として除去するために、WO2006/082007A1は、2段階の分離プロセスで反応ガスから分離されたプロパンを用いている。排出されたポリエチレン粒子から分離された反応ガスは、通常収集され、重合圧力に再圧縮されて気相重合反応器へ再循環される。しかし、気相重合反応器で用いられる反応ガスの大部分を再循環することだけが可能であり、一部の損失は避けることができない。かかる損失量は新しい供給物で代替しなければならない。
【0004】
重合希釈剤としてのプロパンを含む反応ガスの存在下で実行される気相重合プロセスにおいて、プロパンは、追加的な目的で用いられることもある。WO2013/083548A2は、例えば、オレフィンの多段重合プロセスであって、ポリオレフィン粒子をガス分配グリッド及び排出管を含む流動床反応器から第2の気相重合反応器に移送し、前記流動床反応器は、分配グリッド内の上部開口と一体化され、排出管の上部から下部に移動するポリオレフィン粒子床を含む、重合プロセスを開示している。ポリオレフィン粒子の移送時に、流動床反応器から第2の気相重合反応器への第1次重合段階の反応ガスのキャリーオーバー(carry-over)を防ぐために、プロパンはプロパンの上向きの流れがプロパン導入点上のポリオレフィン粒子床にて誘導され、ポリオレフィン粒子が排出管の下端部から引き出される量で排出管内に導入される。WO2018/087214A1は、少なくとも一つの気相反応器において、希釈剤としてプロパンの存在下にエチレンポリマーを製造する多段のプロセスであって、第1の気相重合反応器から第2の気相重合反応器への移動が、固体/気体分離機によって起こるプロセスを開示している。EP2803680A1は、このような分離機に排出管を装着することを開示している。このような気相重合プロセスにおけるプロパンの追加の使用は、例えば、WO2013/083548A2にも開示されており、触媒の予備活性化段階で液相としてプロパンを利用するものであり、ここで固体触媒成分は重合段階に導入される前にアルミニウムアルキル化合物、及び、任意選択的に、追加の電子供与体化合物等の助触媒と接触されている。希釈剤としてプロパンを使用した触媒予備活性化は、例えばWO2008/022900A1にも開示されている。
【0005】
重合反応のための助触媒として使用できるアルミニウムアルキルなどの有機金属化合物は、重合反応器に持ち込まれることができ、触媒毒として作用され得る極性化合物のスカベンジャーとして用いられることもできると知られている。しかしながら、有機金属化合物と毒性化合物との反応は、エチレン重合のための助触媒として有機金属化合物の可用性を変化させる。これによって反応器の収率及び生成物の特性が変わる。2つ以上の重合反応器を直列に操作し、エチレンポリマー粒子内の活性触媒が一つの反応器から後続の反応器へ流れ、多様な供給ストリームが各反応器に供給される状況は一層厳しくなっている。個々の重合反応器で利用可能な有機金属化合物の量の変化は、最終エチレンポリマーの特性を変化させることができるが、供給ストリームの不純物のレベルの変動は調整を複雑にする可能性がある。
【0006】
モノマー供給ストリームを精製するプロセスは知られている。流動床反応器で不純物又はアセチレン及びエタンのような2次成分を含む「供給エチレン」からポリエチレンを製造するにあたり、WO03/014169 A2は、「供給エチレン」を水素と反応させて触媒水素化によりアセチレンを除去してエチレンを形成し、エチレンの一部をエタンに切り替えるいわゆる水素化段階と、前記水素化段階を離れたエチレンを気相で反応させてポリエチレンを形成するいわゆる重合段階とを含むプロセスであって、前記流動床反応器で使用される流動化ガスは、反応器に入るときに、エチレンと、流動化ガスの全体積を基準として20~70体積%のエタンとを含む、プロセスを開示している。WO2018/022199A1は、MTO装置(メタノールからオレフィンを製造する装置)から製造されたエチレンを精製するプロセスであって、(a)少なくとも99モル%のエチレンを含むオレフィンストリームを硫黄ガード床(guard bed)に通過させて硫黄化合物を除去する段階、(b)(a)からの流出物を水素化触媒と接触させる段階、(c)(b)からの流出物を銅金属含有触媒床に通過させて一酸化炭素及び水素を除去する段階、及び(d)(c)からの流出物を乾燥剤(desiccant)に通過させて極性汚染物を除去し、99.875モル%以上のエチレンを含む精製エチレンストリームを生成する段階、を含むプロセスを開示している。
【0007】
しかし、不純物は、モノマー供給ストリームによって重合反応器に導入されるだけではなく、プロパン供給ストリームなどの他のストリームによって重合プロセスに持ち込まれることもあり得る。重合プロセスにおいて、プロパン損失を代替するために低純度のプロパンを使用すると、極性不純物との反応により助触媒として用いられる有機金属化合物が消費されることができ、その結果、重合反応器内の有機金属化合物の濃度が変動されて反応器の収率及び選択性に悪影響を及ぼす。しかし、プロパン損失を代替するために低純度のプロパンを使用することは、重合反応器(ら)、特に予備活性化段階で触媒成分と極性不純物との副反応により触媒特性にも影響を及ぼす恐れがある。しかし、プロパン供給ストリームと一緒にアルケン等の非極性不純物を重合反応器に導入すると、重合プロセスに悪影響を及ぼす。プロピレンなどの低分子量アルケンは、ポリエチレン鎖にコモノマーとして含まれることができるので、ポリマー特性に悪影響を及ぼすか、または不活性化の目的で用いられるガス組成物が依然として重合性組成物を含む場合、例えば、第1の重合反応器から第2の重合反応器へのポリエチレン粒子の移送時に、シーティング(sheeting)又は塊形成により操作上の問題を起こすことができる。さらに、予備活性化段階でプロピレンなどの低分子量アルケンの存在は、水素の不在下で活性化触媒とアルケンとの制御されない重合によって高分子量ポリマーの形成につながる恐れがある。しかし、このような高分子量ポリマーは、エチレンポリマーとの混和性がなく、たとえばゲルの形成により製造されたポリエチレンの品質を低下させる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、重合希釈剤としてプロパンを含む反応ガスの存在の下に、エチレンポリマーを製造するための、特にマルチモーダルエチレンポリマーを製造するための気相重合プロセスを提供し、これは安定した触媒予備活性化条件を保障し、反応器の収率及び選択性、並びに得られるポリマー特性に対する極性及び非極性不純物の悪影響を最小化し、したがって、ポリマー特性の目指す最終組み合わせを有するエチレンポリマーを安定に得るために、一定した構造及び組成のエチレンポリマーが重合反応器(ら)で製造されることを保障する重合プロセスを提供する必要がある。さらに、本プロセスは、第1の重合反応器から第2の重合反応器へのポリエチレン粒子の移送時に操作上の問題があってはならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、エチレンポリマーを製造するプロセスを提供し、該プロセスは、予備活性化重合触媒の存在下に、重合希釈剤としてプロパンを含む反応ガス中で20~200℃の温度および0.5~10MPaの圧力においてエチレンを単独重合するか、もしくはエチレンと一種以上のC~C12-1-アルケンを共重合することによって、少なくとも1つの気相重合反応器を含む気相重合ユニットでエチレンポリマーを粒子形態で形成することを含み、
少なくとも99mol%のプロパンを含み、100ppm-mol以下のプロピレンを含む精製プロパン供給ストリームが気相重合ユニットに供給され、精製は、炭化水素ストリーム中に含まれるプロピレン、アセチレン、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素および水の少なくとも濃度を減少させる炭化水素精製ユニットを通じて炭化水素ストリームを通過させることによって実行される。
【0010】
いくつかの実施形態において、気相重合ユニットに供給される精製プロパン供給ストリームは、0.03ppm-mol以下の一酸化炭素、0.4ppm-mol以下の二酸化炭素、2.0ppm-mol以下の酸素、3.0ppm-mol以下のアセチレン、および2.0ppm-mol以下の水を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、重合触媒の予備活性化は、希釈剤としての液体プロパン中に、固体触媒成分を有機金属化合物及び任意選択的に電子供与体化合物と接触させて予備活性化された重合触媒を形成することで行われる。
【0012】
いくつかの実施形態において、重合触媒の予備活性化のための液体希釈剤として用いられるプロパンは、精製されたプロパン供給ストリームから取り出される。
【0013】
いくつかの実施形態において、精製プロパンストリームを製造するための炭化水素精製ユニットの一つは、触媒水素化ユニットである。
【0014】
いくつかの実施形態において、触媒水素化ユニットはアルミナ担体上の白金系又はパラジウム系組成物である水素化触媒を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、触媒水素化ユニットを通過した炭化水素ストリームの一部は、触媒水素化ユニットの上流位置に再循環され、炭化水素ストリームと混合されて水素化される。
【0016】
いくつかの実施形態において、プロパン供給ストリームの精製は、先に炭化水素ストリームをCu系触媒を含む精製ユニットに通過させてから、引き続き、得られた流れを触媒水素化ユニットに通過させ、その後、得られたストリームを分離ユニットに通過させ、その後、得られたストリームを乾燥ユニットに通過させることにより行われる。
【0017】
いくつかの実施形態において、精製されたプロパン供給ストリームを製造するための炭化水素ストリームは、少なくとも99モル%のプロピレンを含む精製されたプロピレンストリームである。
【0018】
いくつかの実施形態において、エチレンポリマーはマルチモーダルエチレンポリマーであり、気相重合ユニットは、予備活性化重合触媒が供給される第1の重合反応器を含む2つ以上の気相重合反応器と、以前の反応器で形成されたエチレンポリマー粒子に組み込まれた活性形態の重合触媒を受け取る一つ以上の後続の重合反応器の反応器カスケードと、を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、反応器カスケードの第1の反応器は、流動床反応器である。
【0020】
いくつかの実施形態において、流動床反応器は排出管の上部から下部に移動するエチレンポリマー粒子の床を含むポリマー排出管を含み、プロパンは、プロパン導入点上のエチレンポリマー粒子の床にてプロパンの上向きの流れが誘導される量で排出管に導入される。
【0021】
いくつかの実施形態において、後続の重合反応器は、マルチゾーン循環反応器であり、ここで1つの重合ゾーンが上昇管であり、ここで成長中のポリオレフィン粒子が高速流動化または輸送条件下で上方に流れ、かつ他の重合ゾーンが下降管であり、ここで成長中のポリオレフィン粒子が高密度化形態で下方に流れ、上昇管と下降管は相互連結され、上昇管を出たポリオレフィン粒子は、下降管に入り、下降管を出たポリオレフィン粒子は、上昇管に入り、したがって、上昇管と下降管とを通じるポリオレフィン粒子の循環が確立される。
【0022】
いくつかの実施形態において、エチレンポリマーは、23℃でDIN EN ISO 1183-1:2004によって測定した密度が0.935g/cm~0.970g/cmである高密度ポリエチレンである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示のプロセスにしたがってエチレンポリマーを製造するための重合反応器カスケードのセットアップを概略的に示す。
図2】気相重合ユニットに供給されるプロパン供給ストリームを精製するための炭化水素精製ユニットと、重合反応器から排出される反応ガスの成分を回収するためのプロパン及びモノマーワークアップユニットの概略的なセットアップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、エチレンを単独重合させるかまたは重合触媒の存在下でエチレンをコモノマーとして1つ以上の他のオレフィンと共重合させることを含むエチレンポリマーの製造プロセスを提供する。エチレンの他に本開示のプロセスにおいて使用され得るオレフィンとして、特に1-オレフィン、すなわち、末端二重結合を有する炭化水素があるが、これに限定されない。非極性オレフィン系化合物が好ましい。特に好ましい1-オレフィンは、直鎖状もしくは分岐状のC~C12-1-アルケン、特に1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセンなどの直鎖状C~C10-1-アルケン、または4-メチル-1-ペンテンなどの分岐状C~C10-1-アルケン、1,3-ブタジエン、1,4-ヘキサジエンまたは1,7-オクタジエンなどの共役および非共役ジエンである。適切なオレフィンは、二重結合が1つ以上の環系を有することができる環状構造の一部であるものをさらに含む。その例としては、シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロドデセンまたはメチルノルボルネンまたはジエン、たとえば、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ノルボルナジエンまたはエチルノルボルナジエンがある。2種以上のオレフィンの混合物をエチレンと共重合することも可能である。エチレン重合におけるコモノマーとして、20重量%以下、より好ましくは0.01重量%~15重量%、特に0.05重量%~12重量%のC~C-1-アルケン、特に1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンおよび/または1-オクテンを使用するのが好ましい。エチレンが0.1重量%~12重量%の1-ヘキセン及び/または1-ブテンと、そして特に0.1重量%~12重量%の1-ヘキセンと共重合されるプロセスが特に好ましい。
【0025】
気相重合プロセスは、一つ又は複数のモノマーを含む気相から固体ポリマーが得られるプロセスである。かかるプロセスは、固体の予備活性化重合触媒を気相重合反応器に供給することで行われ、ポリマーはこのような粒子上で成長する。生成されたポリエチレン粒子は、多少規則的な形態と大きさを有するが、それは触媒形態と大きさ、ならびに重合条件によって決まる。典型的に得られたポリエチレン粒子の平均粒径は約500~3000μmの範囲である。
【0026】
エチレンの単独重合または共重合は、すべての通常的なオレフィン重合触媒を使用して実施することができる。これは、酸化クロムベースのフィリップス触媒を使用するか、チーグラーまたはチーグラーナッタ触媒を使用するか、またはシングルサイト触媒を使用して重合を実施できることを意味する。本開示の目的のために、シングルサイト触媒は、化学的に均一な遷移金属配位化合物に基づく触媒である。さらに、オレフィンの重合のために、これら触媒のうちの2つ以上の混合物を使用することもできる。このような混合触媒は、ハイブリッド触媒と呼ばれることが多い。オレフィン重合用のこれら触媒の製造及び使用は、一般に知られている。
【0027】
好ましい触媒は、チーグラー型であり、好ましくは担体材料としてチタニウムまたはバナジウムの化合物、マグネシウムの化合物及び任意選択で電子供与体化合物及び/または粒子状無機酸化物を含む。本開示の特に好ましい実施形態において、気相アルファ-オレフィン重合プロセスは、マグネシウムハライド上に担持されたチタン化合物とアルミニウムアルキルとの反応生成物を含むチーグラー型触媒の存在下で実施される。
【0028】
チタン化合物としては、一般に、3価または4価チタンのハロゲン化物またはアルコキシドが使用され、チタンアルコキシハロゲン化合物または様々なチタン化合物の混合物も可能である。適切なチタン化合物の例は、TiBr、TiBr、TiCl、TiCl、Ti(OCH)Cl、Ti(OC)Cl、Ti(O-i-C)Cl、Ti(O-n-C)Cl3、Ti(OC)Br、Ti(O-n-C)Br、Ti(OCHCl、Ti(OCl2、Ti(O-n-Cl2、Ti(OCBr、Ti(OCHCl、Ti(OCCl、Ti(O-n-CCl、Ti(OCBr、Ti(OCH、Ti(OCまたはTi(O-n-Cである。ハロゲンとして塩素を含むチタン化合物を使用するのが好ましい。同様に、チタン以外にハロゲンのみを含むハロゲン化チタン、これらの中でも特に塩化チタンおよび特に四塩化チタンが好ましい。バナジウム化合物の中で、バナジウムハライド、バナジウムオキシハライド、バナジウムアルコキシドおよびバナジウムアセチルアセトネートを特に挙げることができる。3~5の酸化状態を有するバナジウム化合物が好ましい。
【0029】
固体成分の製造において、少なくとも1種のマグネシウム化合物を追加で使用するのが好ましい。この種の適当な化合物は、ハロゲン化マグネシウムのようなハロゲン含有マグネシウム化合物、特に塩化物または臭化物およびマグネシウム化合物であり、上記ハロゲン化マグネシウムは、慣用の方法、たとえば、ハロゲン化剤との反応によって得ることができる。本開示の目的のために、ハロゲンは塩素、臭素、ヨウ素若しくはフッ素、または2個以上のハロゲンの混合物であり、好ましくは塩素または臭素および特に塩素である。
【0030】
可能なハロゲン含有マグネシウム化合物は、特に塩化マグネシウムまたは臭化マグネシウムである。ハロゲン化物を得ることができるマグネシウム化合物は、たとえば、マグネシウムアルキル、マグネシウムアリール、マグネシウムアルコキシ化合物またはマグネシウムアリールオキシ化合物またはグリニャール化合物である。適切なハロゲン化剤は、たとえば、ハロゲン、ハロゲン化水素、SiClまたはCClであり、好ましくは塩素または塩化水素である。
【0031】
適したハロゲンフリーマグネシウム化合物の例は、ジエチルマグネシュム、ジ-n-プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジ-n-ブチルマグネシウム、ジ-sec-ブチルマグネシウム、ジ-tert-ブチルマグネシウム、ジアミルマグネシュム、n-ブチルエチルマグネシウム、n-ブチル-sec-ブチルマグネシウム、n-ブチルオクチルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジ-n-プロピルオキシマグネシウム、ジイソプロピルオキシマグネシウム、ジ-n-ブチルオキシマグネシウム、ジ-sec-ブチルオキシマグネシウム、ジ-tert-ブチルオキシマグネシウム、ジアミルオキシマグネシウム、n-ブチルオキシエトキシマグネシウム、n-ブチルオキシ-sec-ブチルオキシマグネシウム、n-ブチルオキシオクチルオキシマグネシウム及びジフェノキシマグネシウムである。これらの中で、n-ブチルエチルマグネシウムまたはn-ブチルオクチルマグネシウムを使用するのが好ましい。
【0032】
グリニャール化合物の例は、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムヨージド、n-プロピルマグネシウムクロリド、n-プロピルマグネシウムブロミド、n-ブチルマグネシウムクロリド、n-ブチルマグネシウムブロミド、sec-ブチルマグネシウムクロリド、sec-ブチルマグネシウムブロミド、tert-ブチルマグネシウムクロリド、tert-ブチルマグネシウムブロミド、ヘキシルマグネシウムクロリド、オクチルマグネシウムクロリド、アミルマグネシウムクロリド、イソアミルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムクロリドおよびフェニルマグネシウムブロミドである。
【0033】
固体触媒成分を製造するためのマグネシウム化合物としては、マグネシウムジクロリドまたはマグネシウムジブロミドとは別に、ジ(C~C10-アルキル)マグネシウム化合物を使用するのが好ましい。好ましくは、チーグラーまたはチーグラーナッタ触媒は、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロムから選択された遷移金属を含む。
【0034】
チーグラー型触媒を製造するために適した電子供与体化合物は、たとえば、アルコール、グリコール、エステル、ケトン、アミン、アミド、ニトリル、アルコキシシランおよび脂肪族エーテルである。これらの電子供与体化合物は、単独でまたは互いに混合して使用することができ、追加の電子供与体化合物と混合しても使用することができる。
【0035】
好ましいアルコールは、式ROHのものであり、式中、R基はC~C20炭化水素基である。好ましくは、RはC~C10アルキル基である。具体例は、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびn-ブタノールである。好ましいグリコールは、50未満の総炭素原子数を有するものである。これらの中で、25未満の総炭素原子数を有する1,2または1,3グリコールが特に好ましい。具体例は、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコールおよび1,3-プロピレングリコールである。好ましいエステルは、C~C20脂肪族カルボン酸のアルキルエステルおよび特に酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチルのような脂肪族モノカルボン酸のC-Cアルキルエステルである。好ましいアミンは、式NR のものであり、式中、R基は独立的に水素またはC~C20炭化水素基であり、但し、R基は同時に水素ではない。好ましくは、RはC~C10アルキル基である。具体例は、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミンおよびトリエチルアミンである。好ましいアミドは、式RCONR のものであり、式中、RおよびRは、独立的に水素またはC~C20炭化水素基である。具体例は、ホルムアミドおよびアセトアミドである。好ましいニトリルは、式RCNのものであり、式中、Rは上記と同じ意味を有する。具体例は、アセトニトリルである。好ましいアルコキシシランは、式R Si(ORのものであり、式中、a及びbは0~2の整数であり、cは1~4の整数であり、合計(a+b+c)は4であり;R、R、及びR7は、任意選択でヘテロ原子を含む1~18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリールラジカルである。aが0または1であり、cが2または3であり、Rが任意選択でヘテロ原子を含むアルキルまたはシクロアルキル基であり、Rがメチルであるケイ素化合物が特に好ましい。このような好ましいケイ素化合物の例は、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン及びt-ブチルトリメトキシシランである。
【0036】
好ましい電子供与体化合物は、アミド、エステル、およびアルコキシシランからなる群から選択される。
【0037】
チーグラー型の触媒は、通常的に助触媒としての有機金属化合物の存在下で重合される。好ましい助触媒は、元素周期律表の1、2、12、13または14族の金属の有機金属化合物、特に13族の金属の有機金属化合物及び特に有機アルミニウム化合物である。好ましい助触媒は、例えば、有機金属アルキル、有機金属アルコキシド、または有機金属ハライドである。
【0038】
好ましい有機金属化合物は、リチウムアルキル、マグネシウムまたは亜鉛アルキル、マグネシウムアルキルハライド、アルミニウムアルキル、シリコンアルキル、シリコンアルコキシド及びシリコンアルキルハライドを含む。より好ましくは、有機金属化合物は、アルミニウムアルキル及びマグネシウムアルキルを含む。さらに好ましくは、有機金属化合物は、アルミニウムアルキル、最も好ましくはトリアルキルアルミニウム化合物またはアルキル基がハロゲン原子、例えば、塩素または臭素で置換されているこの類型の化合物を含む。そのようなアルミニウムアルキルの例は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-イソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウムまたはジエチルアルミニウムクロリドまたはそれらの混合物である。
【0039】
本開示によるエチレンポリマーの製造プロセスは、予備活性化重合触媒の存在下で実行される。重合触媒の予備活性化は、液体プロパン中に、希釈剤として固体触媒成分を、有機金属化合物及び任意選択的に電子供与体化合物と接触させて予備活性化重合触媒を形成することにより実行することが好ましい。触媒予備活性化は、単一の予備活性化容器又は一連の2つ以上の触媒予備活性化容器で行われることができ、ここで触媒成分の接触は、好ましくは-20℃~60℃、より好ましくは20℃~50℃の温度で生じる。固体触媒成分は、好ましくは触媒予備活性化容器又は一連の触媒予備活性化容器の第1容器に連続的に導入される。
【0040】
本開示のプロセスは、少なくとも一つの気相重合反応器を含む気相重合ユニットで行われる。適切な気相重合反応器は、たとえば、攪拌気相反応器、マルチゾーン気相反応器または気相流動床反応器である。これらのタイプの反応器は、一般に当業者に公知されている。攪拌気相反応器は、たとえば、水平または垂直に攪拌され得る。好ましくは、気相重合ユニットは2つ以上の気相重合反応器の反応器カスケードを含む。気相重合ユニットは、例えば重合触媒の供給、予備活性化及び/又は予備重合のための装置をさらに含むことができる。気相重合ユニットは、重合反応器から排出されるエチレンポリマー粒子を処理する装置及び/又は重合反応器からエチレンポリマー粒子と一緒に同時に排出される反応ガスの成分を回収する装置を含むことができる。
【0041】
好ましい反応器は、流動床反応器、すなわち、下部からガスを導入することによって流動化された状態に維持されるポリオレフィン粒子を重合する床を含む反応器である。次いで、このようなガスは、一般に反応器の上端で排出され、冷却されて重合熱が除去された後、下端で反応器へ再循環される。
【0042】
好ましい反応器は、さらにはマルチゾーン循環反応器であり、マルチゾーン循環反応器は、たとえば、国際公開WO97/04015号および国際公開WO00/02929号に記載されており、2つの相互連結された重合ゾーン、すなわち、成長中のポリオレフィン粒子が高速流動化または輸送条件下で上方に流れる上昇管、および成長中のポリオレフィン粒子が重力の作用下で、高密度化形態で流れる下降管を有する。上昇管を出たポリオレフィン粒子は下降管に入り、下降管を出たポリオレフィン粒子は上昇管に再導入され、それにより2つの重合ゾーンの間でポリマーの循環が確立され、ポリマーはこれらの2つのゾーンを通して交互に複数回通過する。さらに、上昇管および下降管で異なる重合条件を設定することにより、異なる重合条件を有する1つのマルチゾーン循環反応器の2つの重合ゾーンを作動させることも可能である。このために、上昇管を出てポリオレフィン粒子と同伴するガス混合物が下降管に流入することを部分的にまたは完全に防止することができる。これは、例えば、ガスおよび/または液体混合物形態のバリア流体(barrier fluid)を下降管に、好ましくは下降管の上部に供給することによって達成され得る。バリア流体は、上昇管に存在するガス混合物とは異なる適切な組成を有するべきである。バリア流体の添加量は、ポリオレフィン粒子の流れに対して向流のガスの上向きの流れが、特にその上部で生じて上昇管から来る粒子の中に同伴されたガス混合物に対するバリアとして作用するように調整することができる。このように、1つのマルチゾーン循環反応器で2つの異なるガス組成ゾーンを得ることができる。さらに、メーキャップ(makeーup)モノマー、コモノマー、水素などの分子量調節剤および/または不活性流体を下降管の任意の点で、好ましくはバリア供給点の下で導入することもできる。したがって、また下降管に沿ってモノマー、コモノマーおよび水素濃度を様々に変化させることにより、重合条件を容易にさらに差別化することもできる。
【0043】
本開示の気相重合は20~200℃、好ましくは30~160℃、特に65~125℃の温度で行われる。エチレンポリマーの製造のための重合圧力は、0.5MPa~10MPa、好ましくは1.0MPa~8MPa、特に1.5MPa~4MPaの圧力において作動してよく、これらの圧力は、本開示で提供されるすべての圧力として、絶対圧力、すなわち、寸法MPa(abs)を有する圧力であると理解するべきである。
【0044】
本開示のプロセスは、重合希釈剤としてのプロパンを含む反応ガスの存在下で実行される。反応器内の反応ガス混合物は、重合されるオレフィン、すなわちエチレン及び1つ以上の選択的なコモノマーをさらに含む。本開示の好ましい実施形態において、反応ガス混合物は、30~99体積%、より好ましくは50~95体積%、特に60~90体積%の不活性成分の含有量を有する。反応ガス混合物は、水素のような分子量調節剤または帯電防止剤などの追加成分をさらに含むことができる。反応ガス混合物の成分は、気相重合反応器にガス状で供給されるか、または反応器内で気化する液体として供給される場合がある。重合はまた、凝縮または超凝縮モードにおいても実行することができ、かかるモードにおいて、循環ガスの一部が露点以下まで冷却され、反応ガスを冷却させるために気化エンタルピーをさらに利用するために、液相及び気相として別々に、または二相混合物として一緒に反応器に戻る。
【0045】
本開示の好適な実施形態において、本プロセスは、予備活性化重合触媒が供給される第1の重合反応器を含む2つ以上の気相重合反応器と、以前の反応器で形成されたエチレンポリマー粒子を組み込まれた活性形態の第1の重合触媒を受け取る一つ以上の後続の重合反応器の反応器カスケードとで行われる。反応器カスケードのさらなる気相重合反応器は、水平または垂直撹拌式気相反応器、マルチゾーン循環反応器、または流動床反応器のような任意の種類の気相重合反応器であり得る。反応器カスケードの気相重合反応器は、同一の類型のものであり得るか、もしくは、反応器カスケードが異なる類型の気相重合反応器を含むことも可能である。いくつかの実施形態において、反応器カスケードでの気相重合は、予備重合段階前に実行することができ、これは好ましくはループ反応器で懸濁重合により実行することが好ましい。本開示の特に好適な実施形態において、重合は流動床反応器を第1の反応器として含み、その下流に配置されたマルチゾーン循環反応器を含む反応器カスケードで行われる。
【0046】
本開示のプロセスを実行するための反応器カスケードにおいて、第1の重合反応器として用いられる好適な流動床反応器は、流動床反応器からエチレンポリマー粒子を排出するための排出管が装着されている。排出管は、その上部開口が分配グリッドに一体化されるように配置されるのが好ましく、排出管は実質的に垂直に配列されるのが好ましい。かかる排出管が装着された流動床反応器は、例えば、WO2013/083548A2に開示されている。このような流動床反応器において、流動床から出るエチレンポリマー粒子は重力により排出管へ落下し、その内部にエチレンポリマー粒子の高密度床を形成する。排出管の下端部において、エチレンポリマー粒子は引き出されて後続の気相反応器に移送される。その結果、排出管内のエチレンポリマー粒子は重力により排出管の上部から下部へと下向きに移動する。好ましくは、エチレンポリマー粒子は、排出管の上部から下部へとプラグフローとして移動する。その下端部には、エチレンポリマー粒子が排出管から引き出される排出バルブが備えられている。プロパンは、プロパン導入点上のエチレンポリマー粒子の床においてプロパンの上向きの流れが誘導される量で排出管に供給される。好ましくは、プロパンは排出管の下部の1/3、特に排出管の下端付近の位置に導入される。排出管の内部に一つ以上の箇所でプロパンを供給することもできる。好ましくはプロパンは、プロパン導入点上の領域で排出管の断面全体に亘って分配される方式で供給される。プロパンは、ガス形態で排出管に供給されることが好ましい。したがって、導入されたプロパンは流動床反応器の反応ガスに代えてバリアとして作用し、これは流動床反応器の反応ガスが第2の重合反応器に移送されることを防止する。プロピレンなどの不飽和成分を極少量のみを含有する精製プロパンを用いることで、排出管で及び/又は流動床反応器から第2の気相重合反応器への移送ラインで顕著な重合が起こり、そこで排出管及び/又はエチレンポリマー移送ラインの詰まりなど、第1の重合反応器から第2の重合反応器へのポリエチレン粒子の移動時に排出管の操作上の問題を引き起こすことが防止される。
【0047】
本開示のプロセスで得られるエチレンポリマーは、マルチモーダルであることが好ましい。本開示の目的上、用語「マルチモーダル(multimodal)」は、得られたポリマーが複数のポリマー成分を含み、各成分が別途の反応器又は反応器ゾーンで生成され、コモノマーの種類及び/又は量、あるいは分子量分布の面で他の成分(ら)と異なることを意味する。本明細書にて使用される用語「マルチモーダル」はまた「バイモーダル(bimodal)」を含む。
【0048】
マルチモーダルエチレンポリマーは、好ましくは、相異なる重合条件下で操作される重合反応器または反応器ゾーンのカスケードで製造され、最終ポリマーはそれぞれの反応器または反応器ゾーンで製造された相異なるポリマーの混合物である。触媒とポリマーとは、反応器から反応器へと直列に移送される。図1に示したように、予備活性化触媒は、エチレン、プロパン、助触媒として有機金属化合物、及び任意選択的に水素及び/又はコモノマーとともに2つの気相反応器のカスケードの第1の反応器に供給される。第1の反応器からのポリマーの抜き出しは、該反応器内の触媒活性と選択性に起因し、これは存在する有機金属化合物の有効量、反応器の温度、圧力、及び供給物の濃度に関連する。しかし、第1の反応器での触媒活性及び選択性は、触媒、有機金属化合物の助触媒、及び存在するかもしれない触媒毒の相互作用により影響を受ける。触媒毒が例えば、プロパン供給ストリームと一緒に反応器に入ると、該毒が有機金属化合物と化学的に反応して、存在する有機金属化合物の有効量が変わってしまう。これは次に触媒系の活性及び選択性を変化させることができる。
【0049】
第2の反応器及び後続の反応器において、新しい有機金属化合物と追加の重合触媒が添加されないことを除き、プロパン、ポリマー中の活性触媒、及び有機金属化合物の助触媒と一緒に流入される不純物の間に同一の相互作用が発生する。代わりに、反応器はエチレンポリマー粒子内の活性触媒と以前の反応器の助触媒を受け取る。したがって、マルチ反応器カスケードシステムにおいては、ポリマーを製造するためのそれぞれの専用反応器でエチレンの重合が起こることになり、それぞれは自分の分子量を有するとともに、触媒の活性及び有機金属化合物の助触媒の濃度は各反応器内で、かつ反応器毎に変化する。このようなシステムの複雑性は、反応器の数が増えることに伴い、明らかに増加する。単一反応器で製造されるポリエチレングレードとは異なり、マルチ反応器重合ユニットの重合生成物は、各反応器または反応器ゾーンで個々のポリマーを対象とする少なくとも2つの重合の結果であり、最終ポリマーに設定された所望の最終産物の特性セットを達成する。特に、すべての重合反応器または反応器ゾーンで互いに異なるエチレンポリマーが生成されるマルチモーダルエチレンポリマーを製造する場合、個別重合反応器または反応器ゾーンで製造されたエチレンポリマー分画の構造及び組成の小さな差は、最終エチレンポリマーの生成物の特性に顕著な差をもたらすことができる。
【0050】
重合プロセスにより製造されたエチレンポリマーは、0.935g/cm~0.970g/cm範囲内の密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂であることが好ましい。密度は0.940g/cm~0.970g/cmの範囲であることがより好ましい。密度は0.945g/cm~0.965g/cmの範囲であることが最も好ましい。密度は、DIN EN ISO 1183-1:2004、方法A(液浸)に従って、規定された熱履歴:180℃、20MPaで8分間加圧し、続いて30分間沸騰水で結晶化することで製造した2mm暑さの圧縮成形プラークを用いて測定した。
【0051】
好ましくは、HDPE樹脂はメルトフローレートMRF21.6が1g/10分~100g/分、より好ましくは1.5g/10分~50g/10分、最も好ましくは2g/10分~35g/10分である。MFR21.6は、21.6kgの荷重下で、190℃の温度でDIN EN ISO 1133:2005、条件Gに従って測定した。
【0052】
重合プロセスにより製造されたエチレンポリマーは、特にフィルム、パイプ、または小型ブロー成形や大型ブロー成形のポリエチレン製品を製造するのに好適である。かかるフィルム、パイプ、または小型ブロー成形や大型ブロー成形のポリエチレン製品は、本開示のプロセスに従うプロセスによって製造されたエチレンポリマーを、フィルム、パイプ、または小型ブロー成形や大型ブロー成形のポリエチレン製品に切り替えることで製造することができる。
【0053】
図1は、本開示のプロセスを実施するための流動床反応器及びマルチゾーン循環反応器を含む重合反応器カスケードの構成を概略的に示す。
【0054】
第1の気相反応器、流動床反応器(1)は、ポリエチレン粒子の流動床(2)、ガス分配グリッド(3)及び減速ゾーン(4)を含む。減速ゾーン(4)は、一般に反応器の流動床部分の直径と比較して増加した直径を有する。ポリエチレン床は、反応器(1)の底部に配置されたガス分配グリッド(3)を通して供給されるガスの上向きの流れによって流動化状態に維持される。再循環ライン(5)を介して減速ゾーン(4)の上部を出る反応ガスのガス状流は、圧縮機(6)によって圧縮され、熱交換器(7)へ移送され、ここで冷却された後、位置(8)のガス分配グリッド(3)の下の点で流動床反応器(1)の下部へ再循環される。メーキャップモノマー、分子量調節剤、およびプロパンは、たとえば、圧縮機(6)の上流にあるライン(9)を介して様々な位置で反応器(1)に供給され得る。
【0055】
本開示の重合プロセスに用いられる重合触媒系を活性化するために、固体触媒成分、アルミニウムアルキル化合物などの助触媒、及び任意選択的に外部電子供与体化合物は、液体希釈剤としてプロパンと一緒に一つ以上のライン(11)を介して連続的に操作する第1の撹拌タンク(12)に供給され、ここで前記これらの成分が接触することになる。撹拌タンク(12)の内容物はライン(13)を介して連続的に操作される第2の撹拌タンク(14)に移送される。例えば、追加のプロパンなどの追加の成分を一つ以上のライン(15)を介して第2の撹拌タンク(14)に追加することも可能である。しかし、予備重合を実行するために、エチレンまたはエチレンと一つ以上の1-オレインの混合物を第2の撹拌タンク(14)にさらに導入することもできる。第2の撹拌タンク(14)の内容物はライン(16)を介して流動床反応器(1)に移送される。
【0056】
流動床反応器(1)は、ガス分配グリッド(3)内に上部開口と一体化され、望ましくは実質的に垂直に配列される排出管(20)をさらに含む。排出管(20)は、均一な直径になっていてもよく、また、好ましくは、下向きに直径が減少するもっと多くのセクションを含んでいてもよい。ガス分配グリッド(3)は、平坦であってよいが、排出管(20)に向かう下向傾斜が重力によって排出管(20)にポリエチレン粒子の進入を促進するように円錐形状を有するようにすることが好ましい。排出管(20)の上部開口は、ガス分配グリッド(3)に対して中央位置に配置されることが好ましい。
【0057】
流動床反応器(1)の作動中に、排出管(20)は、排出管の上部から下部に移動するポリエチレン粒子の床を含む。ポリエチレン粒子は、上部開口を通じて排出管(20)に入り、ポリエチレン粒子は、好ましくはセグメントボールバルブである排出バルブ(21)を通じて連続的に引き出される。
【0058】
プロパンは、ライン(22)を介して排出管(20)へ、好ましくはポリエチレン粒子の床においてプロパンの上向きの流れが誘導される量で排出管の下端付近の箇所で供給される。排出バルブ(21)は、ポリエチレン粒子を第2の気相反応器に移送するための移送ライン(23)上に配置される。
【0059】
第2の気相反応器は、ポリエチレン粒子によって繰り返して通過される上昇管(32)及び下降管(33)の2つの反応区域を備えるマルチゾーン循環気相反応器(31)である。上昇管(32)内において、ポリエチレン粒子は、矢印(34)の方向に沿って高速流動化条件下で上方に流れる。下降管(33)内において、ポリエチレン粒子は、重力の作用下で矢印(35)の方向に沿って下方に流れる。上昇管(32)と下降管(33)は、相互連結屈曲部(36)と(37)によって適切に相互連結されている。
【0060】
上昇管(32)を通って流れた後、ポリエチレン粒子およびガス状混合物は上昇管(32)を出て、固体/ガス分離ゾーン(38)に運ばれる。このような固体/ガス分離は、例えば、サイクロンのような遠心分離器などの従来の分離手段を使用して実施することができる。分離ゾーン(38)からポリエチレン粒子は、下降管(33)に入る。
【0061】
分離ゾーン(38)を出たガス状混合物は、圧縮機(40)および熱交換器(41)が具備された再循環ライン(39)によって上昇管(32)に再循環する。熱交換器(41)の下流で、再循環ライン(39)が分離され、ガス状混合物は3つの分離されたストリームに分割され:ライン(42)は再循環ガスの一部を相互連結屈曲部(37)に運搬する一方、ライン(43)は再循環ガスの別の部分を上昇管(32)の底部に運搬し、その中で高速流動化条件を確立し、再循環ガスのさらなる部分を、流動床反応器(1)で得られたポリエチレン粒子をマルチゾーン循環気相反応器(31)内に移送するために移送ライン(23)を通じて運ぶ。を介して第1の気相反応器から来るポリエチレン粒子は、位置(44)の相互連結屈曲部(37)でマルチゾーン循環気相反応器(31)に入る。
【0062】
メーキャップモノマー、メーキャップコモノマー及び任意選択的に不活性ガス又はプロセス添加剤は、ガス再循環ライン(39)または下降管(33)のいずれの箇所でも好適に配置される、一つ又は2つ、あるいはそれ以上のライン(45)または(46)を介してマルチゾーン循環反応器(31)に供給されることができる。帯電防止剤などのプロセス添加剤を供給するための好ましい経路は、ライン(47)を介して添加剤をさらに供給することである。
【0063】
分離ゾーン(38)を出たガス状混合物の一部は、圧縮機(40)の後に再循環ライン(39)を出て、ライン(48)を通って熱交換器(49)に送られ、ここでモノマーおよび選択的な不活性ガスが部分的に凝縮する温度まで冷却される。分離容器(50)は、熱交換器(49)の下流に配置されている。分離されたガス混合物は、ライン(51)を介して再循環ライン(39)に再循環され、分離された液体はポンプ(53)によってライン(52)を介して下降管(33)に供給される。
【0064】
マルチゾーン循環反応器(31)で得られたポリエチレン粒子は、排出管(54)を介して下降管(33)の底部から連続的に排出される。
【0065】
本開示のプロセスにおいて、排出されたエチレンポリマー粒子の脱気は、粒界ガス又は溶解炭化水素としてエチレンポリマー粒子と一緒に重合反応器から排出される、反応ガスに同伴される部分を除去するためにガスとしてプロパンを使用する第1段階で起こるのが好ましい。プロパンを用いたこのような第1の脱気は、通常的に第1の脱気容器で行われる。同時に排出される反応ガスの主要部分からの重合反応器から排出されたエチレンポリマー粒子の分離は、時間的又は空間的側面で、エチレンポリマー粒子の第1の脱気段階と一緒に、あるいはそれと別途に行われることができる。これは、好適な実施形態において、反応ガスの主要部分からの固体エチレンポリマー粒子の分離は、通常的に重合反応器内の圧力と、第1の脱気容器内の圧力との間の圧力で操作される、分離容器で行われ、その後ポリオレフィン粒子はプロパンストリームと接触するために第1の脱気容器に移送される。本発明の他の好適な実施形態において、エチレンポリマー粒子は、第1の脱気容器に直接排出され、ここでエチレンポリマー粒子は同時に排出される反応ガスの主要部分から同時に分離されてプロパンストリームと接触する。
【0066】
好適な実施形態において、未反応器のエチレン及びコモノマー、オリゴマー、及びその他の炭化水素に富む第1の脱気容器から引き出されたプロパンストリームは、プロパン及びモノマーワークアップユニットに運搬され、ここでガス混合物はワークアップ形態で重合プロセスに容易に再循環できる分画に分離される。エチレンポリマー粒子を第1の脱気容器に移送する前に、同時に排出される反応ガスの主要部分からエチレンポリマー粒子を先に分離してエチレンポリマー粒子の排出を実行する場合、分離容器から引き出されたガスストリームは、好ましくは第1の脱気容器から引き出されたプロパンストリームと組み合わせられ、組み合わせられたストリームは、プロパン及びモノマーワークアップユニットに運搬される。このような脱気及びワークアッププロセスは、例えばWO2006/082007A1、WO2014/090860A1または国際出願番号PCT/EP2018/071031号に開示されている。
【0067】
プロパンおよびモノマーのワークアップユニットは、重合ユニットへ再循環される少なくとも1つの液体ストリームを生成するように指定され得る。好ましい実施形態において、プロパンおよびモノマーのワークアップユニットは、ガス混合物を加工することにより、1つ以上の液体ストリームおよび1つ以上のガス状流を生成する。重合ユニットへ再循環される1つ以上の液体ストリームは、重合ユニットへ再循環される前に蒸発され得る。プロパンおよびモノマーのワークアップユニットは、高分子量または低分子量成分からプロパンを分離するための任意の適切な方法を使用することができる。使用され得る分離技術の例は、蒸留による分離または凝縮による分離である。蒸留による分離が好ましい。好ましくは、プロパンおよびモノマーのワークアップユニットは、2つの分離段、すなわち、主に高分子量ガス成分からプロパンを分離するための1つの分離段および主に低分子量ガス成分からプロパンを分離するための1つの分離段を含む。高分子量ガス成分の例は、ブタン、ヘキサンまたはオクタンなどの高分子量アルカン、または1-ブテン、1-ヘキセンまたは1-オクテンなどの高分子量オレフィンである。低分子量ガス成分の例は、エタン、エチレン、水素または窒素である。ガスストリームは、まず高分子量ガス成分からプロパンを分離するための分離段を通過することができるか、またはガスストリームは、まず低分子量ガス成分からプロパンを分離するための分離段を通過することができる。好ましくは、ガスストリームは、まず高分子量ガス成分からプロパンを分離するための分離段を通過する。
【0068】
たとえば、帯電防止剤のように溶解された形態で重合プロセスに添加される添加剤の溶媒は、プロパン及びモノマーワークアップユニットから受け取られた液体プロパンである。
【0069】
かかるプロパン及びモノマーワークアップユニットは、ガス混合物の成分を回収し、これらの成分を気相重合ユニットに再循環するように設計されているが、重合に使用された反応ガスの大部分を再循環することだけが可能であり、一部の損失を避けることはできない。かかる損失量は新しい供給物で代替しなければならない。
【0070】
重合ユニットからのプロパンの損失を代替するために、新鮮なプロパンの供給ストリームが気相重合ユニットに供給される。技術的に使用される全ての供給ストリームと同様に、重合希釈剤として用いられるプロパンも不純物を含有することができる。未精製のプロパンストリームは、通常多くの不純物を含有している。プロパンの供給源によって、精製前のプロパン供給物の品質は、不純物の量と組成によって異なることができる。さらに品質は時間によって変化することができ、これは例えばプロパン供給源の変化やプロパン製造プロセスの変動によって発生することができる。
【0071】
未精製プロパンの一般的な不純物は、水素;酸素;一酸化炭素;二酸化炭素;例えばアルコール、グリコール、フェノール、エテール等の含酸素官能基を有する炭化水素、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、エステル又は脂肪酸等のカルボニル化合物;水;例えば二酸化硫黄及び三酸化硫黄、硫化水素(HS)、硫化カルボニル(COS)又はメルカプタン等の含硫化合物;アンモニア、アミンまたは亜硝酸塩などの窒素系分子;またはアルシン;又はこれらの混合物が挙げられる。追加の不純物は、メタン、エタンまたはブタンなどの飽和炭化水素;プロピレンなどのアルケン;アセチレンなどのアルキン;または1,3-ブタジエンまたはプロパジエンなどのジエンが挙げられる。
【0072】
本開示のプロセスによれば、重合ユニットからのプロパンの損失を代替するため供給ストリームは、精製プロパンストリームであり、精製は、炭化水素ストリーム中に含まれるプロピレン、アセチレン、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素および水の少なくとも濃度を減少させる炭化水素精製ユニットを通じて炭化水素ストリームを通過させることによって実行される。かかる精製されたプロパンストリームは、少なくとも99モル%のプロパン及び100ppm-mol以下のプロピレン、好ましくは0.01~75ppm-molのプロピレンを含む。
【0073】
本開示の好適な実施形態において、気相重合ユニットに供給される精製プロパン供給ストリームは、0.03ppm-mol以下の一酸化炭素、および好ましくは0.01ppm-mol以下の一酸化炭素、0.4ppm-mol以下の二酸化炭素、および好ましくは0.2ppm-mol以下の二酸化炭素、2.0ppm-mol以下の酸素、および好ましくは1.0ppm-mol以下の酸素、3.0ppm-mol以下のアセチレン、および好ましくは1.0ppm-mol以下のアセチレン、及び2.0ppm-mol以下の水、および好ましくは1.0ppm-mol以下の水を含む。
【0074】
プロパン供給ストリームを炭化水素精製ユニットに通過させることにより、ストリーム中の不純物の総量が減少するのみならず、重合に投入される不純物のレベルが一定に維持されることが保障される。これによって、触媒予備活性化のための安定した条件及び重合反応器内の安定した条件が提供され、特に触媒感度の制御できない変動をもたらす、重合反応器(ら)内の有機金属化合物の濃度の制御できない変動を回避する。
【0075】
本開示の好適な実施形態において、精製プロパンストリームを製造するための炭化水素精製ユニットの一つは、触媒水素化ユニットである。触媒水素化は、水素化触媒の存在下でプロピレンなどの不飽和化合物が水素と反応して、プロパンなどの飽和化合物になる化学的反応である。触媒としては、好ましくは、水素化に通常の触媒、例えば白金、パラジウム、ロジウム、またはモリブデン、タングステン、クロムまたは鉄などの遷移金属、コバルト、銅及びニッケルに基づく触媒を使用することができ、これらは個別にまたは混合物として使用することができ、一般にアルミナ、シリカ-アルミナ、活性炭、またはセラミックなどの担体に適用することができる。好適な実施形態において、水素化触媒はアルミナ担体上の白金系又はパラジウム系組成物であり、特にアルミナ上の白金又はパラジウムが好ましい。特に好ましい触媒は、アルミナ担体上に0.01~2重量%のパラジウムを含む組成物である。
【0076】
触媒水素化ユニットでプロピレンからプロパンへの切り替えのような不飽和化合物のほぼ完全な切り替えを達成するために、水素化されるストリーム中のプロピレン及びその他の不飽和成分の濃度は臨界濃度未満であることが必要であり得る。よって、本開示の好適な実施形態において、触媒水素化ユニットを通過した水素化ストリームの一部は、触媒水素化ユニット上流位置に再循環され、前記ストリームと混合され、該ストリームを希釈するために水素化される。プロピレンを含む新しいストリームと、触媒水素化ユニットを既に通過した再循環ストリームの割合を好適にすることで、触媒水素化ユニットに入るストリームにおける不飽和成分の濃度を調整することができる。
【0077】
好ましくは、プロパン供給ストリームの精製は、引き続き、多様な精製ユニットを通過させることで発生する。精製ユニットの数と順序は異なることができる。好ましくは、精製ユニットの一つは、触媒水素化ユニットである。順次通過精製ユニットで精製される炭化水素供給ストリームは、好ましく液体形態で提供される。
【0078】
本開示の好適な実施形態において、プロパン供給ストリームの精製は、精製ストリームを気相重合ユニットに供給する前に、引き続き炭化水素ストリームを4つの精製ユニットに通過させることで発生する。第1の精製ユニットは、好ましくは、炭化水素ストリームからCOS、HS、及びアルシンを除去するのに適したCu系触媒と炭化水素ストリーム中の不純物とを反応させるユニットである。第2の精製ユニットは、好ましくは、第1の精製ユニットから出るストリームを触媒的に水素化するためのユニットである。第3の精製ユニットは、好ましくは、高分子量又は低分子量成分からプロパンを分離するためのユニットである。第4の精製ユニットは、好ましくは、乾燥ユニットである。
【0079】
第1の精製ユニットに用いられる触媒は、好ましくは、Cu及びZn、及び任意選択的に促進剤及び担体を含む触媒である。還元形態の触媒(すなわち、銅は金属形態で少なくとも部分的に存在する)は、下記を含む触媒を水素で、好ましくは水素雰囲気下で、80~180℃の温度及び1~50bar圧力で処理して得られる。
25~50重量%、好ましくは35~45重量%のCuO;
30~65重量%、好ましくは35~45重量%のZnO;
5~40重量%、好ましくは20~30重量%のAl、SiO、TiO、MgO、酸化鉄またはこれらの混合物;及び
0~5重量%、より好ましくは0~1重量%の促進剤。
好適な促進剤は、カリウム、ナトリウム、マンガン、クロム、コバルト、タングステン、モリブデン、ニッケル、鉄、マグネシウム、カルシウム、及びこれらの混合物であることができる。触媒の還元形態はまた、インシチュで、すなわち精製対象モノマーストリームに十分な量の水素を混合することで得られる。
【0080】
第2の精製ユニットは、好ましくは、第1の精製ユニットから出るストリームを触媒的に水素化するためのユニットである。
【0081】
第3の精製ユニットは、好ましくは、第2の精製ユニットから出るプロパンストリームから高分子量又は低分子量成分を分離するための分離ユニットであり、さらに好ましくは蒸留ユニットである。好ましくは、第3の精製ユニットは、2つの分離段、すなわち、主に高分子量ガス成分からプロパンを分離するための1つの分離段および主に低分子量ガス成分からプロパンを分離するための1つの分離段を含む。高分子量ガス成分の例は、ブタン、ヘキサンまたはオクタンなどの高分子量アルカンである。低分子量ガス成分の例は、エタン、エチレン、水素または窒素である。プロパン流は、まず高分子量ガス成分からプロパンを分離するための分離段を通過することができるか、またはガスストリームは、まず低分子量ガス成分からプロパンを分離するための分離段を通過することができる。好ましくは、ガスストリームは、まず低分子量ガス成分からプロパンを分離するための分離段を通過する。
【0082】
第4の精製ユニットは、好ましくは、乾燥剤に吸着させて水及び残留極性不純物を除去する乾燥ユニットである。このような水還元触媒は、好ましくは、モレキュラーシーブから選択される。モレキュラーシーブは、アルカリ金属アルミノ珪酸塩の結晶形態である合成ゼオライトであり、高い構造的整合性を有する。これらは水和水を除去することにより活性化されて吸着剤特性を得ることができる。得られた物質は、特定のガス及び液体に強い親和性を有し、多孔性が高い。第4の精製ユニットにおいて、好ましくは残留極性不純物が両者ともモレキュラーシーブと反応し、ここで前記水と残留極性不純物はモレキュラーシーブによって吸着される。第4の精製ユニットは、第4の精製ユニットの生成物ストリームの温度及び圧力と整合する材料で構成され、水還元触媒を収容し、水還元触媒との良好な接触を達成するために、第4の精製ユニット生成物ストリームの流れを分配するように配置されている、密閉容器を含むことが好ましい。プロパンストリームは、ストリームが容器を介して進められることにつれ、水の濃度及び残留極性不純物の濃度が枯渇する。
【0083】
本開示の好適な実施形態において、プロパン供給ストリームの精製は、精製ストリームを気相重合ユニットに供給する前に、引き続き、炭化水素ストリームを4つの精製ユニットの他の組み合わせに通過させることで起こる。第1の精製ユニットは、好ましくは、還元されたCu系触媒により炭化水素ストリームから酸素および一酸化炭素を除去するユニットである。第2の精製ユニットは、好ましくは、乾燥ユニットである。第3の精製ユニットは、好ましくは、第2の精製ユニットから出るストリームからCu系触媒によって、COS、HS及びアルシンを除去するユニットである。第4の精製ユニットは、好ましくは、第3の精製ユニットから出るストリームを触媒的に水素化するユニットである。
【0084】
本開示の好適な実施形態において、気相重合ユニットに供給されるプロパン供給ストリームは、炭化水素精製ユニットを通過するだけでなく、重合反応器のうち少なくとも一つにコモノマーとして供給されるエチレン及びC-C12-1-アルケンは、重合ユニットへ供給される前に、先に炭化水素精製ユニットを通過して、少なくともオレフィンに含有された一酸化炭素、二酸化炭素、酸素、アセチレン、及び水の濃度を減少させる。
【0085】
図2は、重合ユニットからのプロパンの損失を代替するための気相重合ユニット及び重合反応器から排出された反応ガスの成分を回収するためのプロパン及びモノマーワークアップユニットに供給される、プロパン供給ストリームを精製するための炭化水素精製ユニットのセットアップを概略的に示す。
【0086】
プロパン及び不純物を含む液体ストリームは、Cu、Zn、及びプロパンストリームから不純物を含有する硫黄を除去するための担体物質を含む触媒を含んでなる第1のプロパン精製容器(102)にライン(101)を介して供給される。得られたストリームは、プロピレンなどの不飽和化合物をプロパンなどの飽和化合物に水素化するための触媒的水素化触媒を含む第2のプロパン精製容器(104)にライン(103)を介して移送される。水素化に必要な水素は、ライン(105)を介して追加される。水素化されたプロパンストリームは、ライン(106)を介して第2のプロパン精製容器(104)の底部から引き出され、ポンプ(107)によって第1の分離カラム(108)に移送される。第2のプロパン精製容器(104)内部の温度を保つことができるようにするため、第2のプロパン精製容器(104)に入るストリームにおけるプロピレン及びその他の不飽和成分の濃度を、ライン(109)を介して第2のプロパン精製容器(104)から引き出された水素化プロパンストリームの一部を再循環させ、この再循環部分を第1のプロパン精製容器(102)から出るプロパンストリームと組み合わせることで減少させることができる。
【0087】
第1の分離カラム(108)において、低分子量成分はカラム(108)に入るプロパンストリームから分離され、ライン(110)を介してカラム(108)の上部から引き出される。第2のプロパン精製容器(104)を通過した未反応水素を含むライン(110)を介して引き出された前記ガスは、ライン(111)を介して第2のプロパン精製容器(104)に再循環できるか、またはライン(112)を介してオフガス(off-gas)としてパージできる。低分子量ガス成分が除去されたプロパンストリームは、ライン(113)を介して第2の分離カラム(114)に移送される。第2の分離カラム(114)において、高分子量成分はカラム(114)に入るプロパンストリームから分離され、ライン(115)を介してカラム(114)の底部から引き出される。高分子量のガス成分を含むライン(115)を介して回収された前記液体は蒸発後オフガスとしてパージできる。高分子量成分を除去したプロパンストリームは、液化のために熱交換器(116)を通過し、水及び残留極性不純物を除去するための乾燥剤を含む第3のプロパン精製容器(118)の底部にライン(117)を介して移送される。精製プロパンストリームは、第3のプロパン精製容器(118)の上部から引き出されライン(119)を介して貯蔵タンク(120)に移送される。
【0088】
重合反応器または重合反応器の組み合わせから排出される反応ガスから、及び/または第1の脱気容器から出るガス混合物からプロパン、エチレン、及びコモノマーを回収するために、図2は、2つのプロパン蒸留塔(131)及び(132)を含むプロパン及びモノマーワークアップユニットを示す。重合反応器(ら)から排出されるガスと、第1の脱気容器から出るガスとの組み合わせストリームは、ライン(133)を介して第1のプロパン蒸留塔(131)に流入し、カラム(131)に入るプロパンストリームから高分子量成分が分離される。重合に用いられるコモノマーを含む高分子量成分は、ライン(134)を介して第1のプロパン蒸留塔(131)の底部から液体形態で引き出され、ポンプ(135)によって重合ユニットに再びポンプされることができる。高分子量成分を除去したガスストリームは、ライン(136)を介して第1のプロパン蒸留塔(131)の上部から排出され、第2のプロパン蒸留塔(132)に移送される。エチレンを含む第2のプロパン蒸留塔(132)に導入されるガスの低分子量成分は、ライン(137)を介して第2のプロパン蒸留塔(132)の上部から引き出され、重合プロセスに再循環できるか、またはオフガスとしてパージできる。低分子量成分及び高分子量成分を除去した回収プロパンは、第2のプロパン蒸留塔(132)からライン(138)を介して液体形態で引き出される。第2のプロパン蒸留塔(132)からライン(138)を介して引き出されたプロパンは、ライン(140)を介して液体形態又は熱交換器(141)で蒸発された後、ライン(142)を介して、ポンプ(139)によって重合プロセスに再び容易に移送され得る。
【0089】
貯蔵タンク(120)に収集された精製された新鮮なプロパンは、ライン(121)を介して重合プロセスに、例えば気相重合ユニットの専用位置に直接移送できるか、または精製された新鮮なプロパンはライン(122)を介して第2のプロパン蒸留塔(132)に移送されることでプロパン及びモノマーワークアップユニットで得られた回収パロパンと組み合わせることができる。
【0090】
本開示の好適な実施形態において、重合触媒を予備活性化するために液体希釈剤として使用されるプロパンは精製プロパン供給ストリームから取り出される。重合ユニットからのプロパンの損失を代替するためにすべての精製プロパン供給ストリームを予備活性化容器(ら)に供給することができる。好ましくは、精製プロパン供給ストリームの一部は、重合触媒を予備活性化するための液体希釈剤として予備活性化容器に移送され、精製プロパン供給ストリームの残りは、一つ以上の異なる位置で気相重合ユニットに流入する。好適な実施形態において、精製プロパン供給ストリームの残りは、気相重合ユニットに流入するためにプロパン及びモノマーワークアップユニットに移送される。
【0091】
本開示の好適な実施形態において、気相重合ユニットに供給されるプロパン供給ストリームの精製は、気相重合ユニットにプロパンを供給する前に直接起こる。かかる実施形態において、炭化水素精製ユニットは、気相重合ユニットと同一の場所に設置される。このようなセットアップのため未精製プロパン又は不十分に精製されたプロパンを購買することがあり得、この場合に気相重合ユニット及び炭化水素精製ユニットは通常、同一のオペレータによって操作されるため、気相重合ユニットのオペレータにプロパン精製の完全な制御を提供する。したがって、かかる実施形態は、幅広いロジスティックな努力を要することなく経済的に遂行することができる。
【0092】
本開示の他の好適な実施形態において、プロパンの精製及びエチレン重合又は共重合は、局部的にかつ時間的に分離されている。このようなセットアップでは、少なくとも99モル%のプロパンと100ppm-mol以下のプロピレンを含み、炭化水素精製ユニットを通過した市販の高純度プロパンであって、炭化水素精製ユニットを通過する炭化水素ストリームのうちの少なくともプロピレン、アセチレン、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素、及び水の濃度を減少させる高純度プロパンは、気相重合ユニットのサイトに供給される。このようなセットアップは気相重合ユニットのオペレータのための炭化水素精製ユニットの構成を節約することができるが、パイロットプラントよりも大きい重合ユニットで重合する場合、高純度プロパンの供給はロジスティック地点での多くの努力が必要であり、重合プロセスの経済性に悪影響を及ぼす。
【0093】
本開示の他の好適な実施形態において、精製プロパンストリームを製造するための炭化水素ストリームは、少なくとも99モル%のプロピレンを含む精製プロピレンストリームである。本実施形態において、プロピレンの精製及び水素化は、別の段階で発生する。かかる実施形態は、エチレンポリマーの製造が、プロピレン精製ユニットが装着されたプロピレン重合ユニットの近くで発生する場合、経済的に有意義であることができる。このような一つの精製ユニットの組み合わせ使用、若しくは2つの重合ユニットに対する2つの精製ユニットの一つの組み合わせは、プロピレン精製時に規模の経済を実現でき、反面、エチレンポリマーの製造のために気相重合ユニットに含まれた触媒水素化ユニットは、重合プロセスでプロパン損失を代替するための精製プロパンストリームの必要な量によって設計できる。
実施例
【0094】
メルトフローレートMFR21.6は、21.6kgの荷重下で、190℃の温度でDIN EN ISO 1133-1:2012-03に従って測定した。
【0095】
メルトフローレートMFRは、5kgの荷重下で、190℃の温度でDIN EN ISO 1133-1:2012-03に従って測定した。
【0096】
メルトフローレートMFR2.16は、2.16kgの荷重下で、190℃の温度でDIN EN ISO 1133-1:2012-03に従って測定した。
【0097】
流量比FRRは、MFR21.6/MFRの比である。
【0098】
密度は、DIN EN ISO 1183-1:2004、方法A(液浸)に従って2mm厚さの圧縮成形プラークで測定した。圧縮成形プラークは、規定された熱履歴で製造した:180℃、20MPaで8分間加圧し、続いて30分間沸騰水で結晶化した。
【0099】
膨潤比は、ダイ出口から78mmの距離に配置されたレーザダイオードを用いて、190℃の温度で円錐形の入口(角度=20゜、D=2mm、L=2mm、全長=30mm)を有する30/2/2/20円形穿孔ダイにおいて1440s-1の剪断速度で高圧キャピラリーレオメーター(Rheograph25,Gottfert Werkstoff-Prufmaschinen GmbH、Buchen,Germany)で測定した。ピストンがダイ入口から96mmの位置に到逹した瞬間に、押出物をダイ出口から150mmの距離で(Gottfertの自動切断装置により)切断した。膨潤比(SR)[%]は、dで分けた差(dmax-d)×100をdで割った値として定義され、ここで、dmaxはストランドの最大直径であり、dはダイの直径である;SR=(dmax-d)100%/d
【0100】
コモノマー含有量はBrukerのFT-IR分光光度計Tensor27を使用してASTM D 6248 98にしたがってIRで測定して、コモノマーとして1-ブテンまたは1-ヘキセンそれぞれに対してPE内のエチル-またはブチル-測鎖を測定するためのケモメトリックモデルを使用して較正した。結果は重合プロセスのマスバランス(mass-balance)から由来された予測されたコモノマー含有量と比較して一致することが確認された。
【0101】
環境応力亀裂抵抗は、界面活性剤水溶液中で国際標準ISO 16770:2004に従ったフル-ノッチクリープテスト(FNCT)によって決定された。ポリマーサンプルから、厚さ10mmの圧縮成形シートを製造した。正方形断面(10×10×100mm)を有するバー(bar)は、応力方向に対して垂直に4つの側面にかみそりの刃を使用してノッチを入れた。M.Fleissner in Kunststoffe 77(1987),pp.45に記載されているようなノッチ装置は、深さ1.6mmの鋭いノッチのために使用した。加えられた荷重は、初期靱帯面積で割った引張力から計算した。靭帯面積は、残りの面積=試料の総断面積からノッチ面積を引いたものである。FNCT試料の場合:10×10mm-台形ノッチ面積の4倍=46.24mm(破損プロセス/亀裂伝播のための残りの断面積)。試験片は、ARKOPAL N100の2重量%の水溶液中、50℃で6MPaの一定荷重で、ISO 16770で提示されているような標準条件を使用して負荷された。試験片の破断までの経過時間を検出した。
【0102】
キャストフィルムを製造し、光学走査装置によってフィルムの欠陥を分析し、それらの大きさ(円直径)にしたがってフィルム欠陥を分類しかつ計数することによってゲル数を決定した。フィルムの製造は150mmのスリットダイ幅とともに20mmスクリュー直径および25Dのスクリュー長さを有するOCS押出機類型ME 202008-V3上で実施した。キャストラインには冷却ロールおよびワインダー(モデルOCS CR-9)が装備される。光学機器は26μm×26μmの解像度を有するOSCフィルム表面分析カメラ、モデルFTA-100(フラッシュカメラシステム)で構成される。押出条件を安定化させるために最初に樹脂を1時間パージングした後、検査および値記録を30分間行う。樹脂を220℃で約2.7m/分の引取速度で押出し、50μmの厚さのフィルムを生成させる。冷却ロール温度は70℃であった。表面分析カメラによる製造したフィルムの検査は、ゲルの総含量および、直径が700μmを超過するゲルの含量を提供した。
実施例1
【0103】
重合プロセスは図1に示すように直列に連結された2つの気相反応器、反応器カスケードの第1の反応器としての流動床反応器、および後続の重合反応器としての上昇管と下降管とを含むマルチゾーン循環反応器を含む重合ユニットで連続条件下で行われた。
プロパン精製
【0104】
重合プロセスでプロパン損失を代替するためのプロパン供給ストリームは、気相重合ユニットの近傍に設置された4つの順次に配置された精製ユニットに、表1に示したプロパンと不純物を含む液体プロパンストリームを通過させて得た精製プロパンストリームである。第1のユニットには、COS、HS、酸素、一酸化炭素、及び二酸化炭素を除去するためのCuO/ZnO触媒(ドイツのルートヴィヒスハーフェン、BASF SE社製PuriStar(登録商標)R3-12 T5x3)の床が含まれていた。第2のユニットはプロピレンをプロパンに水素化するためのパラジウム系触媒(ドイツのルートヴィヒスハーフェン、BASF SE社製PuriStar R0-20 K2-4)を含む触媒水素化ユニットであった。第3のユニットは、プロパンから高分子量又は低分子量成分を分離するための2段階の蒸留ユニットであり、第4のユニットは、水を除去するための0.3nmモレキュラーシーブを含むものであった。気相重合ユニットに直接移送された、得られた精製液体プロパンは表1に示した組成を有した。
触媒製造
【0105】
固体触媒成分の製造のために、米国特許第4,399,054号の実施例2に記載されている方法にしたがうが、しかし10000RPMの代わりに2000RPMで操作して約3モルのアルコールを含む塩化マグネシウムとアルコールの付加物を調製した。付加物を窒素流下で50~150℃の温度範囲にわたって25%のアルコールの重量含量に達するまで熱処理にかけた。
【0106】
窒素でパージした2Lの4口丸底フラスコ中に1LのTiClを0℃において導入した。次いで、同一の温度において上記のように調製した25重量%のエタノールを含む70gの球状MgCl/EtOH付加物を撹拌下で加えた。温度を2時間で140℃に昇温し、120分間保持した。次いで、撹拌を停止して固体生成物を沈降させて上澄液を吸い出した。次いで、固体残渣を80℃でヘプタンで1回、25℃でヘキサンで5回洗浄し、真空下で30℃において乾燥した。
【0107】
攪拌機が備えられた260cmのガラス反応器に、20℃で351.5cmのヘキサンを添加し、上記のように製造した7gの触媒成分を20℃で攪拌しながら導入した。内部温度を一定に保持しながら、ヘキサン中5.6cmのトリ-n-オクチルアルミニウム(TNOA)(約370g/l)および例えばTNOA/CMMSモル比が50になる量のシクロヘキシルメチル-ジメトキシシラン(CMMS)を反応器に徐々に導入し、温度を10℃にした。10分間攪拌した後、4時間にかけて同一の温度で10gのプロピレンを注意深く反応器に導入した。反応器でプロピレンの消費をモニタリングし、触媒1g当たりポリマー1gの理論的転換率に達したと考えられるときに重合を停止した。その後、内容物全体を濾過し、30℃(50g/l)の温度でヘキサンで3回洗浄した。乾燥後、得られた予備重合触媒(A)を分析して、初期触媒1g当たり1.05gのポリプロピレン、2.7%のTi、8.94%のMgおよび0.1%のAlを含有することが明らかになった。
【0108】
内部電子供与体を予備重合触媒に担持するために、上記のように製造された約42gの固体予備重合触媒成分を窒素でパージングしたガラス反応器に入れ、50℃で0.8Lのヘキサンで懸濁した。
【0109】
その後、エチルアセテートを予備重合触媒のMgと有機ルイス塩基との間に1.7のモル比を有するようにする量で注意深く(10分後)滴下した。
【0110】
懸濁液を内部温度として50℃を有するようにしながら2時間攪拌下に保持させた。
【0111】
その後、攪拌を止めて固体を沈降させた。最終触媒を回収して乾燥させる前に室温で1回ヘキサン浄を行った。
重合
【0112】
前述したように製造された電子供与体/Tiのモル供給比が8である13.8g/hの固体触媒成分を、前述の4つの順序配列の精製ユニットから入来する1kg/hの精製液体プロパンを使用して第1攪拌予備活性化容器に供給した。トリイソブチルアルミニウム(TIBA)、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)および電子供与体テトラヒドロフラン(THF)をまた第1の撹拌予備活性化容器に投入した。トリイソブチルアルミニウム対ジエチルアルミニウムクロリドの重量比は7:1であった。アルミニウムアルキル(TIBA+DEAC)対固体触媒成分の比は5:1であった。アルキル対THFの重量比は70であった。第1の予備活性化容器を50℃で滞留時間30分に維持させた。第1の予備活性化容器の触媒懸濁液を第2の撹拌予備活性化容器に連続的に移し、これを滞留時間30分で操作し、また、50℃に維持させた。触媒懸濁液を、ライン(10)を介して流動床反応器(FBR)(1)に連続的に移した。
【0113】
第1反応器で、分子量調節剤としてHを使用し、不活性希釈剤としてプロパンの存在下でエチレンを重合した。エチレン50kg/h及び水素200g/hを、ライン9を介して第1の反応器に供給した。第1反応器にはいかなるコモノマーも供給しなかった。
【0114】
重合温度80℃において、かつ圧力2.9MPaにおいて重合を実施した。第1反応器で得られたポリマーをライン(11)を介して不連続的に排出し、ガス/固体分離器(12)でガスから分離し、ライン(14)を介して第2気相反応器に再導入した。
【0115】
第1反応器で生成されたポリマーのメルトフローレートMFR2.16は81g/10分、密度は0.969kg/dmであった。
【0116】
第2重合反応器を約80℃、圧力2.5MPaの重合条件下で操作した。上昇管は内径200mm、長さ19mであった。下降管は全長18m、内径300mmを有する上部5m及び内径150mmを有する下部13mを有する。上昇管(32)と下降管(33)内でモノマー及び水素濃度の異なる条件が確立されるように第2反応器を操作した。これはライン(52)を介して下降管(33)の上部に330kg/hの液体ストリーム(液体バリア)を供給することによって達成される。前記液体ストリームは上昇管に存在するガス混合物の組成とは異なる組成を有する。ライン(52)の液体ストリームは47℃で2.5MPaの作動条件下で行われた凝縮器(49)の凝縮ステップから得られ、凝縮器では再循環流れの一部が冷却および部分的に凝縮される。5kg/hのプロパン、50.8kg/hのエチレン及び28g/hの水素を、ライン(45)および(46)を通して第2の反応器に供給した。また、0.20kg/hの1-ヘキセンは、バリアの真下に配置された位置で下降管(33)に導入された。最終エチレンポリマーはライン(54)を介して不連続的に排出された。第2の反応器から排出された最終エチレンポリマーのうち、約49重量%が第1の反応器で生成された(分割49:51)。
【0117】
重合反応器での追加の重合条件及び最終エチレンポリマーの特性は、表2に示す。
実施例2
【0118】
しかし、プロパン生産者によって精製された、少なくとも99.95体積%のプロパン含量を有する精製プロパンを用いて実施例1の重合を繰り返した。プロパンは、ドイツのハンブルクからGHC Gerling,Holz & Co. Handels GmbH社製を購入し、表1に示した組成を有した。プロパンは、0.85MPa(abs)の圧力でシリンダーに供給され、メンブレンポンプを用いて第1の予備活性化容器に供給された。
【0119】
実施例1と同一の反応器条件下で重合を実行することができた。重合反応器での追加の重合条件及び最終エチレンポリマーの特性は、表2に示す。
比較例A
【0120】
実施例2の重合を繰り返したが、少なくとも99.5体積%のプロパン含量を有するプロパンを使用した。プロパンは、ドイツのハンブルクからGHC Gerling,Holz & Co. Handels GmbH社製を購入し、表1に示した組成を有した。プロパンは、0.85MPa(abs)の圧力でシリンダーに供給され、メンブレンポンプを用いて第1の予備活性化容器に供給された。
【0121】
反応器カスケードの一定の処理量を維持するためには、触媒供給を固体触媒成分の17.3g/hに増加させることが必要であった。電子供与体/Tiのモル供給比は8に維持されたし、一方、撹拌された第1の予備活性化容器への液体プロパンの供給は、1kg/hに維持された。最終エチレンポリマーの設計密度を達成するためには、バリアの真下に配置された下降管(33)に供給される1-ヘキセンの量を0.15kg/hに減らす必要があった。重合反応器での追加の重合条件及び最終エチレンポリマーの特性を、表2に示す。
【表1】
【表2】
【0122】
実施例1及び2の比較は、高純度のプロパンを購入する場合、気相重合ユニットに供給する直前に不純物を含有するプロパンストリームを精製すると、高い触媒生産性と一緒に優れた特性の組み合わせを有するエチレンポリマーを製造することができることを立証している。
【0123】
実施例2と比較例Aとを比較すると、プロピレン及び極性不純物の含量の高いプロパンを使用することにより、環境応力亀裂抵抗が減少し、ゲル数が増加し触媒の生産性が低下することが分かる。

図1
図2