(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】クロスフローフィルタ装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20230718BHJP
B01D 63/00 20060101ALI20230718BHJP
B01D 63/08 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D63/00 500
B01D63/00 510
B01D63/08
(21)【出願番号】P 2021550097
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2020054265
(87)【国際公開番号】W WO2020173762
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-10-21
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521377638
【氏名又は名称】ザルトリウス・ステディム・ラブ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SARTORIUS STEDIM LAB LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギルバート,アダム
(72)【発明者】
【氏名】パーシャウス,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ベイツ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ビドル,クリス
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,アダム
(72)【発明者】
【氏名】デビッドソン,トーマス
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特公昭59-035631(JP,B1)
【文献】米国特許第05342517(US,A)
【文献】米国特許第06312591(US,B1)
【文献】米国特許第05601727(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0000840(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D24/00-37/04、53/22、61/00-71/82
C02F1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧された供給液体を濾過するためのクロスフローフィルタ装置(17)であって、
前記クロスフローフィルタ装置は、
フィルタ膜(4)と、
前記膜の残余表面上の経路に延在する前記加圧された供給液体のためのフローチャネル(10)であって、前記チャネルにおける流れの方向が前記残余表面に対して接線方向であり、前記供給液体由来の濾液が前記膜を通過して残余液体を前記フローチャネル中に残すような、前記フローチャネル(10)と、
反対側にある前記膜の濾液表面上に形成される前記濾液のための回収チャンバと、を備え、
前記クロスフローフィルタ装置は、前記フローチャネル(10)、前記フィルタ膜(4)および前記回収チャンバをその間に閉じ込める、残余側(1)と濾液側(2)とを有する封止されたハウジングをさらに備え、
前記クロスフローフィルタ装置は、前記ハウジングの前記残余側(1)の内面に設けられたフローチャネルガイド壁(3,3’)をさらに備え、ガイド壁は、前記フィルタ膜(4)と液密封止を形成するように構成され、これにより前記膜の前記残余表面上に前記フローチャネル(10)の前記経路を規定し、
前記ガイド壁(3)は、前記フローチャネル(10)のための前記経路が前記膜(4)の前記残余表面上において行ったり来たりするように往復するように構成され
、弾性変形可能な前記フローチャネルガイド壁(3)は、変形し、前記液密封止を形成するように前記フィルタ膜(4)と封止係合する、クロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項2】
前記ハウジングの前記残余側(1)の前記内面は、前記ガイド壁(3)の線に対応するとともに、前記ガイド壁が前記ハウジングの前記残余側の前記内面と封止係合するように位置する凹部(18)を含む、請求項
1に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項3】
前記ガイド壁(3)は、前記ハウジングの前記残余側へ永続的に共形成される、請求項
1に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項4】
1つ以上の相互接続部材(16)さらに備え、前記相互接続部材(16)は、前記ハウジングの前記残余側(1)の前記内面を前記ハウジングの前記濾液側(2)の内面に対して結合するために、前記フローチャネル(10)の前記経路の外側に延在し、これにより前記ハウジングを強化する、請求項
1~
3のいずれか一項に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項5】
前記相互接続部材(16)は、前記膜(4)における開口を貫通する、請求項
4に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項6】
加圧された供給液体を濾過するためのクロスフローフィルタ装置(17)であって、
前記クロスフローフィルタ装置は、
フィルタ膜(4)と、
前記膜の残余表面上の経路に延在する前記加圧された供給液体のためのフローチャネル(10)であって、前記チャネルにおける流れの方向が前記残余表面に対して接線方向であり、前記供給液体由来の濾液が前記膜を通過して残余液体を前記フローチャネル中に残すような、前記フローチャネル(10)と、
反対側にある前記膜の濾液表面上に形成される前記濾液のための回収チャンバと、を備え、
前記クロスフローフィルタ装置は、前記フローチャネル(10)、前記フィルタ膜(4)および前記回収チャンバをその間に閉じ込める、残余側(1)と濾液側(2)とを有する封止されたハウジングをさらに備え、
前記クロスフローフィルタ装置は、前記ハウジングの前記残余側(1)の内面に設けられたフローチャネルガイド壁(3,3’)をさらに備え、ガイド壁は、前記フィルタ膜(4)と液密封止を形成するように構成され、これにより前記膜の前記残余表面上に前記フローチャネル(10)の前記経路を規定し、
前記ガイド壁(3)は、前記フローチャネル(10)のための前記経路が前記膜(4)の前記残余表面上において行ったり来たりするように往復するように構成され、前記ガイド壁(3’)は、前記フィルタ膜(4)に溶接され、前記溶接は、前記液密封止を形成するようにその全体の厚さにわたって前記フィルタ膜を局所的に密集化させる、クロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項7】
前記装置は、前記溶接を支持するために前記ハウジングの前記濾液側(2)の内面から延在する溶接支持部材(20)をさらに備える、請求項
6に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項8】
前記溶接支持部材(20)は、前記フィルタ膜(4)にも溶接される、請求項
7に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項9】
前記ハウジングは、
前記供給液体のための前記フローチャネル(10)への注入口(7)と、
前記残余液体のための前記フローチャネルからの排出口(8)と、
前記濾液のための前記回収チャンバからの排出口(9)と、を含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項10】
前記回収チャンバ内に位置する小孔のある支持体(5)をさらに備え、前記支持体は、前記濾液の比較的妨害されない通過を可能にしながら、前記膜(4)に機械的支持を提供する、請求項1~
9のいずれか一項に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項11】
前記ハウジングは、残余側プレート(1)および濾液側プレート(2)を有し、前記残余側プレート(1)および前記濾液側プレート(2)は、それぞれの封止外周に沿ってともに封止され、前記ガイド壁(3)および前記フィルタ膜(4)が収容される、その間におけるキャビティを形成する、請求項1~1
0のいずれか一項に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項12】
前記装置は、相補的編成(12,13)をさらに備え、前記相補的編成(12,13)は、前記装置の両側に位置し、複数の装置がより大きな群でともに結合可能であるように、装置の一方の側における編成が別の装置の他方の側における前記相補的編成と係合可能であるように構成される、請求項1~1
1のいずれか一項に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項13】
前記装置は、封止された前記ハウジング上に配置される脚(11)をさらに備える、請求項1~1
2のいずれか一項に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野
本開示は、加圧された供給液体を濾過するためのクロスフローフィルタ装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
クロスフロー濾過は、加圧された供給液体が、供給液体から引き出された濾液を透過可能な膜上に接線方向に流されるプロセスである。供給液体が膜の一方の側の上で流れると、濾液は膜の他方の側へ通過し、残余液体を残す。残余液体は、濾液が取り尽くされた供給液体である。したがって、膜を通過しない供給液体における媒体は、残余液体に集中する。
【0003】
典型的には、供給液体は、クロスフローフィルタ装置の中へ、膜上へ、そして再び外へ循環するように流れ、媒体はこのような各循環によって残余液体に集中する。膜を通過した濾液は、膜の反対側における排出口を通って装置から出る。装置内において圧力を作り出すために、残余排出口におけるフローリストリクタが用いられる。
【0004】
例示の装置は、Sartoriusから入手可能である、Vivaflow 500(商標登録)、Vivaflow 50R(商標登録)およびVivaflow 200(商標登録)である。
【0005】
Vivaflow 50R(商標登録)は、硬質で透き通ったプラスチックの残余側プレートと濾液側プレートとを有するカセットとして形成される。これらのプレートは、貫流する液体の圧力によって生じる応力に抵抗するのに十分な厚さを有しており、それらの外周の周りでともにボルト留めされる。このように形成されたカセットハウジングは、供給液体/残余液体のためのフローチャネルと、透過性のある膜と、濾液などの液体の比較的妨害されない通過を可能にしながら膜を支持するプレート状の多孔質支持体とを密封的に含む。カセットは、さらに、フローチャネルへの供給液体のための残余側プレートにおける注入口と、フローチャネルからの残余液体のための残余側プレートにおける排出口と、膜および支持体を通過した濾液のための濾液側プレートにおけるさらなる排出口とを備える。フローチャネルは、膜の残余表面上で行ったり来たりするように往復し、膜の大きな表面領域にすべての供給液体を曝すのに役立つとともに、渦を形成して供給液体の直線流を壊すための回旋状の経路を導入することよりカセットの濾過効率を向上させる。
【0006】
Vivaflow 50R(商標登録)において、フローチャネルは、残余側プレートの内面における凹部として形成される。カセットが組み立てられるとき、残余側プレート、膜、支持体および濾液側プレートは、その順序で積み重ねられ、残余側プレートおよび濾液側プレートは、その後、ともにボルト留めされる。その結果、凹部の外側にある残余側プレートの内面の隆起部分が膜を押し、フローチャネルの前後深さがまさに凹部の深さになる。しかしながら、この配置は、製造に便利であり供給液体の流路をフローチャネルに制限する一方、不完全な封止が残余側プレートの内面の隆起部分と膜との間に形成されることにより、供給液体の一部は往復するフローチャネルを短絡する。このような短絡は、Vivaflow 200(商標登録)の濾過効率を損ねる。
【0007】
Vivaflow 200(商標登録)は、Vivaflow 50R(商標登録)と同様に機能するが、供給注入口が流体を分割し、1つではなく2つの膜の残余表面にわたって方向付ける点において異なる。2つの膜は、多孔質支持体を含む濾液回収チャンバを挟むため、濾液は片側ではなく両側から入る。この利点は、装置全体の大きさを最小化しながら、より大きな膜表面積が達成され、濾過スピードを増加させるということである。
【0008】
Vivaflow 50(商標登録)は、類似するが、Sartoriusから入手可能であるより小さいクロスフローフィルタ装置である。Vivaflow 50R(商標登録)およびVivaflow 200(商標登録)と同じ機能を実行するが、いくつかの構造的相違を有する。たとえば、その残余側プレートおよび濾液側プレートは、ともにそれらをプレスするために厚いプラスチックスリーブの中へ楔留めされて、外周Oリングで互いに封止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような短絡を低減または回避するためのクロスフローフィルタ装置の需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
概要
本発明の第1の局面によれば、加圧された供給液体を濾過するためのクロスフローフィルタ装置であって、
クロスフローフィルタ装置は、
フィルタ膜と、
膜の残余表面上の経路に延在する加圧された供給液体のためのフローチャネルであって、チャネルにおける流れの方向が残余表面に対して接線方向であり、供給液体由来の濾液が膜を通過して残余液体をフローチャネル中に残すような、フローチャネルと、
反対側にある膜の濾液表面上に形成される濾液のための回収チャンバと、を備え、
クロスフローフィルタ装置は、フローチャネル、フィルタ膜および回収チャンバをその間に閉じ込める、残余側と濾液側とを有する封止されたハウジングをさらに備え、
クロスフローフィルタ装置は、ハウジングの残余側の内面に設けられたフローチャネルガイド壁をさらに備え、ガイド壁は、フィルタ膜と液密封止を形成するように構成され、これにより膜の残余表面上にフローチャネルの経路を規定する、クロスフローフィルタ装置が提供される。
【0011】
有利には、フィルタ膜と液密封止を形成するように構成されるガイド壁を設けることによって、ガイド壁は、フローチャネルの縁部の周りに効果的な封止を提供することができ、これにより供給液体によるフローチャネルの短絡を実質的になくす。
【0012】
第1の局面のクロスフローフィルタ装置は、以下の選択的な構成のいずれか1つまたはいずれかの組み合わせを有してもよい。
【0013】
1つの手法によれば、フローチャネルガイド壁は、弾性変形可能であってもよい。それらは、変形し、液密封止を形成するようにフィルタ膜と封止係合することができる。有利には、変形し、フィルタ膜と接触して封止係合するガイド壁を設けることによって、ガイド壁は、異なるタイプの膜が同じ基本装置において用いられることができるように、異なるタイプの膜に適応し、異なるタイプの膜に対して封止してもよい。
【0014】
好都合には、弾性変形可能なフローチャネルガイド壁は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、天然ゴム、シリコーンゴム、ポリシロキサンまたはラテックスなどのエラストマで形成されてもよい。ガイド壁は、単一成分構造、または多成分構造、たとえば、先述のエラストマとは異なるものなど、異なる材料で形成された層を有する多層構造を有していてもよい。
【0015】
弾性変形可能なガイド壁は、ハウジングとは別個の装置の要素であってもよいため、装置の組立ての際にそこに正しく提供されなければならない。好都合には、ハウジングの残余側の内面は、ガイド壁の線に対応するとともに、弾性変形可能なガイド壁がその内面と封止係合するように位置する凹部を含んでもよい。凹部は、装置の組立ての際に、ガイド壁を正しく位置決めするのに役立ち得る。特にガイド壁が凹部内にぴったり嵌められている場合、それはガイド壁とハウジングの残余側の内面との間における封止を改善するのにも役立ち得る。
【0016】
しかしながら、別の選択肢は、弾性変形可能なガイド壁が、装置のこれらの部品の製造の間に、ハウジングの残余側へ永続的に共形成されることである。この方法では、ガイド壁は、ハウジングと一体的になり、ガイド壁をハウジングの残余側に封止するという問題が回避される。
【0017】
弾性変形可能なガイド壁を備えるクロスフローフィルタ装置は、1つ以上の相互接続部材をさらに備えてもよく、相互接続部材は、ハウジングの残余側の内面をハウジングの濾液側の内面に結合するために、好ましくはフローチャネルの経路の外側に延在し、これによりハウジングを強化する。相互接続部材は、膜における開口を貫通してもよく、小孔のある支持体(以下で議論される)を備える装置において、支持体における開口を貫通してもよい。相互接続部材は、貫流する液体の圧力に対抗してハウジングを強化することができるため、ハウジングの厚さを低減させることができる。これは、同様に、製造コストを低減するのに役立ち得る。
【0018】
相互接続部材は、たとえば、ハウジングの残余側および濾液側の一方の内面からの突出部として一体的に形成されてもよい。それらは、超音波溶接などの任意の好都合なプロセスを用いて他方の側の内面に結合され得る。しかしながら、別の選択肢は、相互接続部材がハウジングの残余側および濾液側それぞれの内面からの一対の突出部として一体的に形成されることであり、各対の突出部は膜に接する。この場合、相互接続部材は膜における開口を貫通する必要はなく、すなわち、各相互接続部材は所与の対の突出部およびその間に閉じ込められた膜の小領域によって形成され得る。
【0019】
別の手法によれば、ガイド壁は、フィルタ膜に溶接されてもよく、溶接は、液密封止を形成するようにその全体の厚さにわたってフィルタ膜を局所的に密集化させる。たとえば、溶接は、超音波溶接によって形成されてもよい。膜が溶接によって密集化されることが可能である限り、この選択肢は、異なるタイプの膜が同じ基本装置においても用いられることができるように、ガイド壁を異なるタイプの膜に対して封止することを可能にする。
【0020】
ガイド壁がフィルタ膜に溶接されるとき、装置は、溶接を支持するためにハウジングの濾液側の内面から延在する溶接支持部材をさらに備えてもよい。特に、溶接支持部材は、フィルタ膜にも溶接されてもよい。溶接されたガイド壁および溶接支持部材は、液密封止を形成するとともに、上述の相互接続部材のようにハウジングを強化するのにも役立ち得る。小孔のある支持体(以下で議論される)を備える装置において、溶接支持部材は、支持体における開口を貫通してもよい。好都合には、ガイド壁はハウジングの残余側と一体的に形成されてもよく、および/または、溶接支持部材はハウジングの濾液側と一体的に形成されてもよい。
【0021】
ガイド壁は、フローチャネルのための経路が膜の残余表面上において行ったり来たりするように往復するように構成されてもよい。これは、すべての供給液体を膜の大きな領域にわたって通過させることにより濾過効率を向上させ、渦および乱流を形成して直線的な流れを壊すのに役立つ。
【0022】
装置は、
供給液体のためのフローチャネルへの注入口と、
残余液体のためのフローチャネルからの排出口と、
濾液のための回収チャンバからの排出口と、をさらに含む。使用において、たとえば外部ポンプが供給液体および残余液体を装置に循環可能であるように、注入口および排出口において、外部チューブが典型的には装置に取り付けられる。好都合には、フローチャネルへの注入口およびフローチャネルからの排出口はハウジング残余側に形成されてもよく、回収チャンバからの排出口はハウジングの濾液側に形成されてもよい。
【0023】
注入口および排出口の1つ以上は、それぞれの外部チューブへの接続のために、それぞれの回転ルアーカフを含んでもよい。
【0024】
装置は、回収チャンバ内に位置する小孔のある支持体をさらに備え、支持体は、たとえば濾液排出口への濾液の比較的妨害されない通過を可能にしながら、膜に機械的支持を提供する。支持体は、たとえば、多孔質プラスチックで作製されてもよい。焼結プラスチック微粒子で製造されてもよい。しかしながら、他の材料および/または製造プロセスが用いられてもよい。このような支持体の代替として、ハウジングと一体的に形成される突起が膜を支持するためにハウジングの濾液側の内面から突出してもよく、突起は濾液のその間における比較的妨害されない通過を可能にする。
【0025】
ハウジングは、透明な材料で形成されてもよい。これにより、装置の動作は使用者によって視覚的に監視されることができる。好都合には、それは、プラスチック材料で形成され得る。
【0026】
しかしながら、ハウジングのために、ガラス、セラミックまたは金属などの他のタイプの材料が用いられてもよい。
【0027】
ハウジングの残余側および濾液側は、その間にフローチャネルガイド壁、フィルタ膜および小孔のある支持体(存在する場合)を挟むそれぞれのプレートとして形成されてもよい。特に、ハウジングは、残余側プレートおよび濾液側プレートを有してもよく、残余側プレートおよび濾液側プレートは、それぞれの封止外周に沿ってともに封止され、ガイド壁、フィルタ膜および小孔のある支持体(存在する場合)が収容される、その間におけるキャビティを形成する。封止外周の周りには、その間における封止を完璧にするために、Oリングが設けられてもよい。プレートは、たとえば、超音波溶接、ヒートステーキング、接着または機械的干渉など、様々な手段によってともに封止され得る。プレートの結合は、機械的固定具(たとえば、ねじ、ボルト、ステープル、クランプなど)、一体型スナップフィットコネクタ、および/またはウェッジフィット機構によって実行または補完されてもよい。別の選択肢は、封止されたハウジングが、ともに枠を結合する成形またはオーバーモールドされた囲みをさらに含むことである。
【0028】
装置は、相補的編成をさらに備えてもよく、相補的編成は、装置の両側に位置し、複数の装置がより大きな群でともに結合可能であるように、装置の一方の側における編成が別の装置の他方の側における相補的編成と係合可能であるように構成される。たとえば、相補的編成は、レールまたは溝などの一対の雄・雌編成を含んでもよい。このようなより大きな群の装置は、並列または直列に流体接続されて、より大きな体積の供給液体を処理し得る。
【0029】
装置は、ハウジングの濾液側から突出する外部支持フィート(脚)をさらに備えてもよい。作業面(たとえば、実験室ベンチ)上にフィートが配置されたとき、装置は、これにより、面から持ち上げられ、その注入口および排出口、特に任意の回転ルアーカフへの改善されたアクセスを与える。ハウジングの濾液側から突出するフィートを有することによって、回収チャンバはフィルタ膜の下方にあることとなり、重力が膜を通る濾液の通過を助け得る。
【0030】
装置は、たとえば少なくとも10-3、このましくは少なくとも10-6の滅菌保証レベルまで滅菌されてもよい。装置を滅菌するための典型的な方法は、エチレンオキシドガスおよび放射線を含む。滅菌保証レベルは、エチレンオキシドガスについてのISO11135:2014および放射線についてのISO11137:2006などの適切な規格にしたがって検証され得る。有利には、装置は、捕捉領域を減らし、特に注入口および排出口の領域において選択された滅菌プロセスの有効性を向上させるように構成され得る。装置の部品を結合するために超音波溶接を用いることは、一般に、滅菌を促進するのにも有利である。なぜなら、この結合プロセスは、取付具、固定具、接着剤または他の滅菌を危うくする部品の使用を要求しないためである。
【0031】
装置は、回収チャンバの反対側における、第2のフィルタ膜、ならびに対応するフローチャネルおよびフローチャネルガイドを有する二重膜装置であってもよい。すなわち、回収チャンバは、第1のフィルタ膜と第2のフィルタ膜との間に挟まれ、濾液は回収チャンバへ膜の各々を通る。したがって、封止されたハウジングの残余側は第1の残余側となるとともに、ハウジングの濾液側は第2の残余側となる。典型的には、小孔のある支持体は、このような装置の回収チャンバ内に位置する。
【0032】
上述された選択的な構成は、この二重膜装置の対応する構成にも関係する。好都合には、装置が1つ以上の相互接続部材を備えるとき、これらは第1の膜および第2の膜、ならびに典型的には小孔のある支持体における開口を貫通する。供給液体のための注入口は、液体を両方のフローチャネルに供給する単一の注入口であり得る。残余側液体のための排出口は、両方のフローチャネルから残余液体を受容する単一の排出口であり得る。
【0033】
図面の簡単な説明
ここで、本開示の実施形態が、添付の図面を参照して、例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】クロスフローフィルタ装置の封止されたハウジングの斜視図である。
【
図2】
図1のクロスフローフィルタ装置の第1の分解図である。
【
図3】
図1のクロスフローフィルタ装置の第2の分解図である。
【
図4】
図1のクロスフローフィルタ装置の第3の分解図である。
【
図5】
図1のクロスフローフィルタ装置の平面図である。
【
図6】変形例のクロスフローフィルタ装置の平面図である。
【
図7】
図6の線X-Xに沿った変形例の装置の断面を示す図である。
【
図8】第2の変形例のクロスフローフィルタ装置の一部の断面を示す図である。
【
図9】第3の変形例のクロスフローフィルタ装置の一部の断面を示す図である。
【
図10】
図9の第3の変形例のクロスフローフィルタ装置の側部プレートのうちの1つの内面の詳細等角図である。
【
図11】フローディストリビュータおよびチャネルガイド壁の一部が側部プレート上に位置する、
図10の詳細等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
図1は、クロスフローフィルタ装置17の封止されたハウジングの斜視図を示す。ハウジングは、その間にキャビティを規定する、残余側プレート1および濾液側プレート2を備える。残余側プレート1にはキャビティの中へ供給液体を流すための注入口7が形成され、残余側プレート1にはキャビティの外へ残余液体8を流すための排出口8が形成され、濾液側プレート2にはキャビティの外へ濾液を流すための排出口9が形成される。
【0036】
供給液体注入口7は雌型ルアー接続を有する一方、残余液体排出口8および濾液排出口9は各々、それぞれの回転ルアーカフ6との雄型ルアー接続を有する。ルアー接続は、外部チューブコネクタが装置17に取り付けられることを可能にする。
【0037】
図2~
図4は、
図1のクロスフローフィルタ装置17のそれぞれの分解図である。
図2および
図4は濾液側プレート2の内面を見えるようにするが、
図3は残余側プレート1の内面を見えるようにする。ハウジングプレート1,2は、それぞれ正方形のプレートとして形成され、その間に、残余側から濾液側の順に、弾性変形可能なフローチャネルガイド壁3と、フィルタ膜4と、小孔のある支持体5とを挟む。プレート1,2は、以下でより詳細に議論されるように、それらのそれぞれの外周の周りでともに結合されて、封止されたモジュールを形成する。好都合には、プレート1,2は、硬質の透明なプラスチック材料で形成され得る。
【0038】
ガイド壁3(
図2に最もよく示される)は、一方の側において残余側プレート1の内面と係合され他方の側においてフィルタ膜4と係合されるとき、注入口7から排出口8まで膜4の残余表面上で行ったり来たりするように往復するフローチャネル10の経路を規定する、単一片のエラストマ成形品として形成される。装置17におけるガイド壁3の正確な配置を助けるために、残余側プレート1の内面は、ガイド壁3の線に対応するとともに壁が嵌められ得る、そこに形成される凹部18(
図3に示される)を有する。代替的には、ガイド壁3は、2つの部品が永続的に一体化されるように、残余側プレート1に共成形されてもよい。
【0039】
ガイド壁3は、浸食に対して高い耐性を有する、TPU、天然ゴム、シリコーンゴム、ポリシロキサンまたはラテックスなどの医学的に安全なエラストマで作製される。これは、装置17を通って流れる濾液および供給液体/残余物の汚染のリスクを低減または回避する。ガイド壁3は、弾性的に柔順であり、フィルタ膜4の残余表面における不規則性に適合および適応し、フローチャネル10の縁部のまわりに良好な封止を形成する。したがって、それらは、実質的に、注入口7から排出口8までの流路10上における液体によるフローチャネル10の短絡を防止する。加えて、それらは、異なるタイプの膜4(ポリエーテルスルホン膜、再生セルロース膜、またはアセチルセルロース膜など)に適合可能であり、膜4の表面処理(膜に取り付けられる特化されたレセプタなど)へのダメージを防止するのに役立ち得る。したがって、単に膜のタイプを変更することによって、同じ基本のフィルタ装置が多くの異なる用途で用いられることができる。特に、装置17は、たとえば抗体などの生物製剤の製造のための、規模拡大または規模縮小された実験室ベンチ濾過に用いられることができる。
【0040】
小孔のある支持体5は、膜4と濾液側プレート2の内面との間におけるハウジングキャビティの一部によって形成される、濾液のための回収チャンバを埋める。支持体5は、実質的にその全体領域にわたって膜4を物理的に支持し、膜4にわたって圧力差が確立されてそこを通る濾液の流れを動かすことを可能にする。本体5上のフォーラムは、濾液が回収チャンバを介して膜4から排出口9まで、途中、比較的妨害されずに通過可能であるように形成される。好都合には、本体5は、焼結プラスチック微粒子によって形成される多孔質プラスチック体であり得る。
【0041】
使用中、供給液体注入口7および残余液体排出口8に取り付けられる外部チューブは、外部ポンプに結合される。さらに、外部チューブは、濾液排出口9に付着し、回収ベッセルへと延びる。ポンプは、供給液体を、注入口7を介して装置の中へ、ガイド壁3によって規定されるフローチャネル10に沿って、および排出口8から残余液体としてポンプに戻すように、連続的に循環させる。フローチャネル10における液体の流れの方向は膜4の残余表面に対して接線方向であり、膜4を横切る圧力差は膜4を通った供給液体由来の濾液の流れを動かす。装置17内において圧力を生み出すために、残余排出口9におけるフローリストリクタ(図示せず)が用いられる。
【0042】
フローチャネル10の行ったり来たりの往復は、供給液体のすべてを、膜4の残余表面の大きい表面領域にわたって通過させる。それは、また、供給液体において渦および乱流を形成してその直線的な流れを壊す。より具体的には、フローチャネル10の経路は、膜4の幅に及ぶとともに連続する180°度ターンによって接続される、一連の連続的な逆平行直線流で構成される。
図5は、クロスフローフィルタ装置17の平面図であり、内部構成が点線によって示され、フローチャネル10の経路を最もよく示す。
【0043】
したがって、装置を動作させる結果として、ポンプが供給液体を循環させると、供給液体由来の濾液が小孔のある支持体を通過して、濾液排出口9に取り付けられた回収ベッセルに集まり、膜4を通過しない供給液体における媒体は残余液体に集中する。
【0044】
ハウジングを形成するために、ハウジングプレート1,2は、プレートのうちの一方(この例においては、
図2および
図4に示されるように、濾液側プレート2)の外周溝14および他方のプレート(この例においては、
図3に示されるように、残余側プレート1)の対応する外周リッジ15に沿ってともに封止され得る。リッジ15は、溝14の中に嵌まり、プレート1,2がそれらの外周の周りにおいてともに超音波溶接されることを可能にするエネルギディレクタとして作用する。これは、ガイド壁3がフィルタ膜4および残余側プレート1の内面と適切に係合するように、ガイド壁3、フィルタ膜4および支持体5がプレート1,2間において好適に離間されて位置する、キャビティを封止する。ガイド壁3は、それらの変形能によって、フィルタ膜4と残余側プレート1の内面との間で離隔している変形例を可能にする。
【0045】
しかしながら、動作中に経験する圧力に対抗してハウジングを強化しながらこの離隔を制御するためには、プレート1,2の内面を物理的に繋げるために、相互接続部材16が設けられ得る。相互接続部材16は、フローチャネル10の経路の外側に、膜4および支持体5における専用の開口部を通って貫通する。たとえば、相互接続部材16は、プレートのうちの一方(この例においては、残余側プレート1)の内面からの突出部として形成されてもよく、装置17の組立ての際、好適な結合プロセスによって、他方のプレート(この例においては、濾液側プレート2)の内面に結合され得る。好都合には、相互接続部材16は、さらなるエネルギディレクタとして作用することができ、それらを他のプレートに対して超音波溶接することを可能にする。ハウジングを強化することによって、それらは、ハウジングプレートを、そうでない場合よりも薄い材料から製造することを可能にする。
【0046】
濾液側プレート2は、その角部の各々に外部フィート11(
図3および
図4に示される)を有し、その上に装置17が位置し得る。フィート11が作業面上に配置されるとき、回収チャンバが膜4の直下に位置するように装置17は支持される。これは、重力が膜4を通る濾液の流れを助けることを可能にする。加えて、フィート11は装置全体の高さを上げるため、排出口9のためのルアーカフ6は妨害されることなく回転可能となる。
【0047】
ハウジングの両縁部は、それぞれ、取付溝12および取付レール13を有する。これらは、1つの装置17の取付溝12が第2の装置17の取付レール13と係合可能であるように構成され、多数の装置17がより大きな群でともに結合されて、直列または並列に流体接続されることを可能にし、より大きな体積を濾過する能力を増大させる。取付溝12およびレール13の各々は、プレート1,2の一方によって、および部分的に他方のプレート1,2によって、部分的に形成される。
【0048】
装置は、滅菌性として製造されてもよく、典型的な滅菌方法は、エチレンオキシドガスおよび放射性核種放射、X線放射または電子ビーム放射を含む。
【0049】
図6は、クロスフローフィルタ装置17の変形例の平面図を示し、点線によって内部構成が示される。
図7は、線X-Xに沿った変形例の装置の断面を示す。変形例の装置と
図1~
図5の装置とに共通する構成は、同じ参照番号を有する。
【0050】
弾性変形可能なフローチャネルガイド壁3の代わりに、変形例の装置は、フローチャネル10の経路を規定するための硬質なプラスチックのガイド壁3’を有する。壁は、残余側プレート1も形成する成形品の一部であり、フィルタ膜4に永続的に超音波溶接される。この溶接は、注入口7から排出口8までの流路10上の液体によるフローチャネル10の短絡を防止する液密封止を形成するように、その全体の厚さにわたって膜を局所的に密集化する。
【0051】
溶接を支持するために、回収チャンバを横切って濾液側プレート2の内面から支持壁20が突出し、ガイド壁3’の線を反映する。好都合には、これらの支持壁は、濾液側プレートも形成する成形品の一部である。支持壁は、支持体5における対応する開口を貫通し、また、超音波溶接によってフィルタ膜4に永続的に結合される。
図7は、溶接の1つにおける断面の拡大
図Aを示す。
【0052】
有利には、支持壁20は、ガイド壁3’との組み合わせで、
図1~
図5の装置の相互接続部材16と同様に、ハウジングを強化する。
【0053】
図8~
図11は、第2および第3の変形例のクロスフローフィルタ装置の一部の断面図および等角図を示す。前記と同様、第2および第3の変形例の装置と
図1~
図7の装置とに共通する構成は同じ参照番号を有する。
【0054】
図8の変形例は、第1および第2のフィルタ膜4が支持体5の両側を挟む、二重膜装置である。この方法においては、同様の全体の装置のサイズを基本的に維持しながら、濾過スピードを増加させるために、濾液が片側ではなく両側から回収チャンバに入る。
【0055】
好都合には、二重装置は、両方の膜4のフローチャネル10に液体を供給する単一の注入口7(および対応する単一の残余排出口-図示せず)を有する。注入口7は、ハウジング側部プレート1のうちの一方から装置の平面に延在する。また、注入口から支持体5のいずれかの側におけるフローチャネルまで液体を運ぶために、両方のハウジング側部プレート1,2の中には、通路19が成形される。注入口を有しない側部プレート2の成形中に通路19を形成することを容易にするために、その通路19がプレートの外面に対して開かれている状態でプレート2は成形される。通路は、その後、別個に成形されるカバー片30の下、外面において塞がれる。
【0056】
図9~
図11の変形例は、さらなる二重膜装置である。それは、注入口7がハウジング側部プレート1のうちの一方から装置の平面に対して垂直に延在する点において、
図8の装置と異なる。また、注入口から両方の膜4のフローチャネル10まで液体を運ぶために、両方の側部プレート1,2には、通路19が形成される。しかしながら、この変形例では、通路は、
図10に示されるように、両方の側部プレートの内面において合致する凹部25を成形し、これらの凹部と位置合わせされる膜4および支持体5における開口部を提供することによって形成される。ディストリビュータ本体21は、開口部を通って、かつ、合致する凹部の中へ各端部において延在する。この本体は、液体が一側から他側へ装置にわたって通過することを可能にする軸孔を備える中央軸受22を有し、軸受の両側における封止キャップ23も有する。封止キャップ23は、それぞれのフィルタ膜4に対するディストリビュータ本体の各側を封止して、位置合わせされた膜開口部を通って液体が漏出することを防止することにより膜自体にバイパスする。
【0057】
通路19は、軸受22の軸孔の端部とフローチャネル10との間における流体連通を提供するために、凹部25の基部に形成される中央壁27から外方向に放射するスリット26のそれぞれのアレイによって形成される。ディストリビュータ21の封止キャップ23は、凹部25の基部間に挟まれて、所定位置に本体を保持する。軸受22および封止キャップ23のうちの1つ(たとえば、
図11に示される)は、共成形によって形成されてもよい。しかしながら、他の封止キャップ23(
図11において図示せず)が、膜4および支持本体5の位置合わせされた開口部を通って挿入された後で軸受に嵌合されるのみであってもよい。
【0058】
本発明は上述された実施形態に限定されず、本明細書に記載される概念から逸脱することなく様々な修正および改良がなされ得ることが理解される。相互に排他的であるものを除き、構成のうちの任意のものが、別個にまたは任意の他の構成との組み合わせで用いられてもよく、本開示は、本明細書に記載の1つ以上の構成のすべての組み合わせおよびサブコンビネーションにまで拡大し、それらを含む。