(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】自動車のミラー代替システム用のカメラアーム装置、及び自動車
(51)【国際特許分類】
B60R 1/26 20220101AFI20230718BHJP
【FI】
B60R1/26 200
(21)【出願番号】P 2021553867
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2020057468
(87)【国際公開番号】W WO2020200790
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】102019204418.2
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D-30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス パペ
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】実公昭47-016509(JP,Y1)
【文献】独国特許発明第102017001122(DE,B3)
【文献】実開平02-088855(JP,U)
【文献】特表昭61-502272(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0265015(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(10
)のミラー代替システム(26)用のカメラアーム装置(28)であって、
-前記ミラー代替システム(26)の少なくとも1個のカメラ(30)を有するブーム要素(46)と、
-前記ブーム要素(46)を保持すべく、前記ブーム要素(46)の終端部(48)と協働する筐体(34)を有し、
前記筐体(34)内にガイド溝(38)が設置されていて、前記ガイド溝(38)を貫通して前記ブーム要素(46)が伸長し、前記ガイド溝(38)に沿って前記ブーム要素(46)が移動可能に搭載されており、
前記ブーム要素(46)を動作位置(B)に保持する配置装置(50)をさらに有し、
前記配置装置(50)は、前記ブーム要素(46)を伸長方向(E)に沿って配置するばね(52)と、及び前記ブーム要素(46)を前記伸長方向(E)に垂直に配置するロック機構(56)とを有し、前記ばね(52)のばね力が、前記ブーム要素(46)を、前記自動車(10)の外面(36)から遠ざかるように押すことにより、前記ブーム要素(46)が前記動作位置(B)に保持される、ことを特徴とする、
カメラアーム装置(28)。
【請求項2】
前記筐体(34)が半球状且つ中空に設計されていることを特徴とする、請求項1に記載のカメラアーム装置(28)。
【請求項3】
前記ガイド溝(38)が、筐体表面(44)の上を前記ブーム要素(46)の伸長方向(E)に略垂直に伸長するスロット(40)として設計されていることを特徴とする、請求項1及び2のいずれか1項に記載のカメラアーム装置(28)。
【請求項4】
前記ガイド溝(38)が凹曲率(42)を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のカメラアーム装置(28)。
【請求項5】
前記ブーム要素(46)の終端部(48)に設置され、前記ガイド溝(38)の溝幅(W)より大きい周径(U)を有する脱落防止装置(54)により特徴付けられる、請求項1~4のいずれか1項に記載のカメラアーム装置(28)。
【請求項6】
前記脱落防止装置(54)が前記半球状の筐体(34)の球半径(r)とほぼ一致する球半径(r)を有する半球状に設計されていることを特徴とする、請求項2を引用する請求項5に記載のカメラアーム装置(28)。
【請求項7】
自動車(10
)であって、請求項1~6のいずれか1項に記載のカメラアーム装置(28)により前記自動車(10)に固定された少なくとも1個のカメラ(30)を有するカメラ監視システム(24)をミラー代替システム(26)として有する自動車(10
)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のミラー代替システム用のカメラアーム装置、及びそのようなカメラアーム装置をミラー代替システムに備えた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に関して、自動車の運転者は自身の眼では直接視認できない間接的な領域の視野を常に視認可能でなければならないとする法律条項がある。この目的のため、自動車は従来、例えば後方視認性を保証すべくバックミラーを備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなバックミラーは特に、自動車の外側領域にも搭載され、例えば商用車の場合は比較的大きい寸法を有している。その結果かなりの風圧抵抗が生じ、自動車の燃費に悪影響を及ぼす。後方視認性はさらに、自動車のサイドウインドウ及びバックミラーに雨や埃等の外部影響によっても損なわれる可能性がある。さらに、従来のミラー原理は知的機能の実行に適していない。
【0004】
従って、例えばバックミラー等の自動車に搭載されているミラー装置は、ミラー代替システムとしてカメラ監視システムにより段階的に代替又は補強されつつあり、自動車の外部に搭載されたカメラが自動車を囲む領域の画像を記録して、運転者が視認できるように例えば自動車の内部に搭載可能なモニタ上に画像を表示する。
【0005】
このように従来のバックミラーをデジタルミラー代替システムに置き換えるためには、カメラを自動車の外部に搭載する必要があり、当該カメラは、例えば商用車の運転席に固定されなければならない。カメラが自動車の外部に固定されるため、周囲の障害物又は他の交通関係者と衝突する恒常的なリスクがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、外部からの様々な力の影響を回避可能な自動車のミラー代替システム用のカメラアーム装置を提案することである。
【0007】
前記目的は、請求項1に記載の特徴の組み合わせを有する自動車のミラー代替システム用のカメラアーム装置により実現される。
【0008】
ミラー代替システムとしてそのようなカメラアーム装置を含むカメラ監視システムを有する自動車が更なる独立請求項の主題である。
【0009】
本発明の有利な構成が従属請求項の主題である。
【0010】
特に商用車であってよい自動車のミラー代替システム用のカメラアーム装置は、ミラー代替システムの少なくとも1個のカメラを有するブーム要素と、ブーム要素を保持すべくブーム要素の終端部と協働する筐体を有している。筐体内にガイド溝が設置されていて、当該ガイド溝を貫通してブーム要素が伸長し、当該ガイド溝に沿ってブーム要素が移動可能に搭載されている。
【0011】
従って、筐体によりブーム要素を商用車に固定しながらも、ブーム要素が筐体に沿って移動可能であることを保証することが可能である。ブーム要素が障害物に衝突した場合、筐体上をガイド溝に沿って移動することにより、障害物を回避することが可能である。
【0012】
有利な構成において、筐体は半球状且つ中空に設計されている。
【0013】
更に、ガイド溝は有利に、筐体表面上をブーム要素の伸長方向に略垂直に伸長する溝として設計されている。
【0014】
従って、商用車又は自動車のブーム要素が障害物に衝突した場合、ブーム要素は半球状の筐体の上をガイド溝に沿って誘導され、従って自動車に接触配置される。筐体が中空な場合、ブーム要素はカメラマウントとしての機能を実行すべく、後方又は内側から筐体に挿入され、次いで自動車から遠ざかる方向に筐体から外側に伸長することができる。
【0015】
有利な構成において、ガイド溝は凹曲率を有している。或いは、代替的に、ガイド溝が凸に湾曲している可能性もある。ガイド溝の更なる外形も考えられるため、ブーム要素を回避させる様々な外形が、例えば水平及び垂直方向に同時に形成される。ブーム要素は、ガイド溝の形式に応じて、異なる、例えばサイクロイドの軌道を辿ることができるため、異なる回避動作が考えられる。
【0016】
特に好適には、カメラアーム装置は、ブーム要素を動作位置に保持する配置装置を有している。従ってカメラが周囲の画像を確実に記録できる所定位置が確保される。
【0017】
例えば、ブーム要素を伸長方向に沿って配置するばね、及びブーム要素を伸長方向に垂直に配置するロック機構を提供することができる。
【0018】
動作位置において、ブーム要素は、商用車の表面から離れる方向に略垂直に伸長する。ここで充分な距離を確保すべく、又は動作位置を安定させるべくばねが設けられており、当該ばねがブーム要素に掛ける圧力を蓄積してブーム要素を内側から筐体に押し付ける。ブーム要素はこれにより半径方向に、すなわち自動車及び筐体から離れる方向に固定される。ブーム要素がガイド溝に沿って不要に移動するのを防止すべく有利な特徴として、ブーム要素の伸長方向に垂直に、すなわちガイド溝にほぼ沿って、ロック機構が設けられている。ブーム要素がロック機構を乗り越えてガイド溝を介して誘導されて筐体の表面上を移動するのは、衝突した障害物によりブーム要素に充分な力が掛かった場合だけである。ロック機構はこのように所定の動作位置を安定させることができる。
【0019】
ブーム要素の終端部に設置され、ガイド溝の溝幅よりも大きい周径を有する脱落防止装置が好適に設けられている。ブーム要素が後側から筐体に挿入されて、次いで例えばばねにより筐体に押し付けられた場合、脱落防止装置の周径がガイド溝よりも大きいためガイド溝から脱落できず、従って脱落が機械的に防止される。
【0020】
脱落防止装置は好適には、半球状の筐体の球半径とほぼ一致する球半径を有する球状に設計されている。脱落防止装置は従って、内側から筐体に合わさることができ、衝突の際にブーム要素の移動も妨げない。
【0021】
様々な方向から掛かる機械的影響からブーム要素の保護を確かなものとするシステムは従って、殻を形成する筐体、及び1個以上のばね要素、並びに多くの場合棒状に設計されていて、カメラ及び任意の更なるセンサが固定されたブーム要素をも実質的に含んでいる。ブーム要素は、後側から筐体又は殻の内側に挿入され、ばねのばね力により所定位置に保持される。信頼性が高い動作位置がロック機構を介して保証される。衝突に際して、ブーム要素は筐体内のガイド溝に沿って自動車の外形に接触配置される。その結果、機械的応力に起因する危険な状況において、カメラ及びブーム要素に設置された更なる要素の損傷を回避するべく、ブーム要素は動作位置から出て保護位置まで移動する。
【0022】
有利な自動車、特に商用車は、ミラー代替システムとして、上述のカメラ装置により自動車に固定された少なくとも1個のカメラを有するカメラ監視システムを有している。
【0023】
本発明の有利な実施形態は、添付の図面に基づいて以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】カメラが固定されたカメラアーム装置を有するカメラ監視システムを有する自動車、すなわちトラックの透視図を示す。
【
図2】
図1のカメラアーム装置を動作位置で拡大表示した平面図である。
【
図4】
図1のカメラアーム装置を保護位置で拡大表示した平面図である。
【
図6】
図1のカメラアーム装置の異なる位置における
図3、5に垂直な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に、自動車10、すなわちトラクタ部14及びトレーラ16を有するトラックの形式の商用車12の透視図を示す。トラクタ部14には、自動車10の動作中に通常は運転者が座る運転席18が設置されていて、運転者は自動車10の動作中、可能な限り周囲領域20を視認可能とする。特に、運転者は法律が要求する視野を視認可能でなければならない。
【0026】
これを可能にすべく、一方では外部ミラー22がトラクタ部14に設置されており、当該外部ミラーにより運転者は後方、すなわちトレーラ16に向かう方向の周囲領域20を見ることができる。また、自動車10は、カメラ監視システム24を有して、当該システムはミラー代替システム26として設計されており、従ってトラクタ部14の法律が要求するミラーを代替することができる。
【0027】
この目的のため、ミラー代替システム26は、運転席18の外側のトラクタ部14に搭載され、自動車10の周囲の領域20の画像を記録して、運転席18にいる運転者がカメラ30の画像を直接視認できるように運転席18の内側に設置されたモニタ32に転送するカメラ30を有するカメラアーム装置28を有している。
【0028】
カメラ30は従って、カメラアーム装置28を介して運転席18に固定されており、カメラアーム装置28は一方で、カメラ30及び追加的なセンサを保持及び配置する機能を実行し、他方で当該要素を外部環境の影響、例えば衝突から保護する機能を含んでいる。
【0029】
これらの保護機能のうちの1つは、水平方向前方及び後方からの力、全水平方向、つまり前方、後方、及び側面からの更なる機械的衝撃及び衝撃応力などの機械的影響に対する保護に関する。
【0030】
図2は、
図1のカメラアーム装置28を動作位置Bで拡大表示した平面図である。
図3は
図2のカメラアーム装置28の同じ動作位置Bにおける断面図である。
【0031】
カメラアーム装置28は、
図2及び3に見られるように、殻と同様に半球状且つ中空に設計され、自動車10の外面36に固定された筐体34を有している。筐体34内に、スロット40として設計され、筐体34の筐体表面44の上を凹曲率42で伸長するガイド溝38が挿入されている。本実施形態において、ガイド溝38の曲率42は凹であるように設計されているが、ガイド溝38を他の外形とすることも可能である。
【0032】
筐体34に加え、カメラアーム装置28は更に、動作位置Bにおいて自動車10の外面36から遠ざかる方向に伸長するブーム要素46を有している。動作位置Bにおいてモニタ32に表示すべく自動車10の周囲領域20を捕捉可能であるカメラ30がブーム要素46に設置されている。
【0033】
ブーム要素46は、動作位置Bにおいて、自動車10の移動方向Rに略垂直に設置されている。ブーム要素46は、自動車10の外面36から伸長方向Eに遠ざかる方向に伸長する。
【0034】
ブーム要素46は、ブーム要素46の終端部48と協働する筐体34により保持される。ブーム要素46の終端部48は従って筐体34の内部にある一方で、ブーム要素46の残りはガイド溝38を通って筐体34の外部まで伸長する。
【0035】
ブーム要素46を動作位置Bに保持すべく、配置装置50が提供される。配置装置は一方の側が自動車10の外面36に固定され、反対側が終端部48に固定されたばね52を有している。ブーム要素46は従って、ばね52のばね力により自動車10の外面36から遠ざかる方向に押される。筐体34の内部で、脱落防止装置54がブーム要素46に設置されており、その周径Uはガイド溝38の溝幅Wよりも大きい。ばね52は従って、内側から脱落防止装置54を筐体34に押し付けて、ブーム要素46をブーム要素46の伸長方向Eにおいて動作位置Bに保持する。
【0036】
障害物が自動車10の移動方向Rに現れてブーム要素46と衝突した場合、ブーム要素46がガイド溝38に移動可能に搭載されているため障害物を回避することができる。すなわち、ブーム要素46はガイド溝38又は筐体34に静止的に固定されていない。衝突が起きた場合、ブーム要素46は動作位置Bから移動し、従ってカメラ30を損傷する恐れがある過剰な力がカメラ30に作用するのを防止する。ガイド溝38の外形は従って回避外形を画定する。
図2及び3に示す実施形態において、ブーム要素46は
図4及び5に示す保護位置Sに到達するまで上方向且つ後方に回避することができる。当該保護位置Sにおいて、ブーム要素46は、自動車10に接触配置されて機械の影響から保護される。
【0037】
自動車10の通常動作中に移動方向Rに作用する力が小さい場合でもブーム要素46を動作位置Bに確実に保持するためにロック機構56が設けられていて、ブーム要素46が伸長方向Eに垂直に当該ロック機構と係合する。
【0038】
ブーム要素46はガイド溝38に沿って、すなわち伸長方向Eと略垂直に保護位置Sまで移動するのは、衝突の結果、ブーム要素46に掛かる力がロック機構56の保持力を上回った場合だけである。
【0039】
保護位置Sへの上述の移動が妨げられないように、脱落防止装置54は有利な特徴として同様に半球状に設計されていて、半球状の筐体34の球半径rとほぼ一致する球半径rを有している。脱落防止装置54は従って、ブーム要素46が移動した場合、内側から筐体34に良好に合わさり、且つ筐体34の内面に沿ってスライドすることができる。
【0040】
既に上で述べたように、
図2及び3はブーム要素46を動作位置Bで異なる視点から描いた図であるのに対し、
図4及び
図5はブーム要素46を保護位置Sで異なる視点から描いた図である。
【0041】
図6において、
図5及び
図3のビューに対して90°回転した断面図を追加的に示し、ブーム要素46を異なる位置、すなわち動作位置B、保護位置S及び中間位置Zで示している。