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  • 特許-オートバイ用エアバッグ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】オートバイ用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B62J 27/20 20200101AFI20230718BHJP
   B60R 21/231 20110101ALI20230718BHJP
【FI】
B62J27/20
B60R21/231
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021569829
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2020048311
(87)【国際公開番号】W WO2021140922
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2020003281
(32)【優先日】2020-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】夫馬 真
(72)【発明者】
【氏名】村上 翔
(72)【発明者】
【氏名】石垣 良太
(72)【発明者】
【氏名】土生 優
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特許第4181843(JP,B2)
【文献】特開2005-008055(JP,A)
【文献】特開2010-173480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 27/20
B60R 21/231
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートバイに搭載されるエアバッグ装置であって、
膨張ガスを発生するガス発生器と;
前記膨張ガスによって膨張し、乗員の前方で展開することで、当該乗員の前方への移動を拘束するエアバッグとを備え、
前記エアバッグは、前記乗員側に面する後方パネルと、当該後方パネルと対向する前方パネルと、当該前方パネルと後方パネルの側縁に連結されるサイドパネルとを含み、
前記後方パネル及び前記前方パネルは、前記乗員の頭部を拘束可能な概ね円形のメイン領域と、当該メイン領域から下方に延びる下部領域とを含み、
前記サイドパネルは、展開した状態の前記エアバッグを側方から見た時に、前記下部領域において前方に突出した凸部を含み、当該凸部によって前記オートバイのハンドルトップ周辺の構造部に支持される段差部を形成することを特徴とするオートバイ用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記サイドパネルの凸部は、前記エアバッグの右側に位置する右凸部と左側に位置する左凸部とを含み、
前記エアバッグが展開した時には、前記右凸部と左凸部によって、前記前方パネルが引っ張られて前記段差部が形成されることを特徴とする請求項に記載のオートバイ用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記サイドパネルは、前記前方パネルと後方パネルの外縁の全周に渡って延びることを特徴とする請求項1又は2に記載のオートバイ用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記構造部は、スピードメーター等の計器上面、ハンドルトップ、ヘッドライト上面のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のオートバイ用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートバイに搭載されるオートバイ用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車(4輪)においては、事故発生時に乗員を保護するために、1つまたは複数のエアバッグを装備することは標準的になりつつある。同様に、オートバイ(2輪車)にエアバッグ装置を搭載することが、提案され、実用化されている。
【0003】
自動車に搭載されるエアバッグ装置においては、ステアリングホイールやインストルメントパネル等を支持面(反力面)としてエアバッグが展開するため、エアバッグの展開挙動及び展開姿勢を安定させることが比較的容易である。これに対して、オートバイに搭載されるエアバッグは、展開したエアバッグを支持する部分が少なく、エアバッグの展開挙動、展開姿勢を安定させることが課題である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、展開挙動及び展開姿勢の安定化に寄与する、オートバイ用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、オートバイに搭載されるエアバッグ装置であって、膨張ガスを発生するガス発生器と;前記膨張ガスによって膨張し、前記乗員の前方で展開することで、当該乗員の前方への移動を拘束するエアバッグとを備える。そして、前記エアバッグは、展開時に前方に突出して前記オートバイのハンドルトップ周辺の構造部に支持される段差部を有する。
【0006】
ここで、「乗員の前方への移動を拘束」とは、少なくとも、衝突によって乗員が前方に投げ出されるのを防ぐことと、乗員の頭部がオートバイの前方部分に衝突するのを防ぐことを含む。
また、「前方に突出」とは、少なくとも、周辺の他の領域よりも前方に凸状に膨らんでいる状態を意味する。
【0007】
上記のような本発明においては、エアバッグの展開時に前方に突出してオートバイのハンドルトップ周辺の構造部に支持される段差部を設けているため、段差部がエアバッグの展開時に当該構造部から反力を得ることができる。その結果、エアバッグの展開挙動及び展開姿勢が安定し、エアバッグに乗員の頭部が衝突したときにも、エアバッグが前方に倒れたり、大きく変形してしまうようなことがなく、乗員の頭部を確実に拘束することが可能となる。
【0008】
前記構造部は、スピードメーター等の計器上面、ハンドルトップ、ヘッドライト上面のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0009】
本発明は、あらゆるタイプのオートバイに適用可能である。例えば、スクーター、アドベンチャー、ツアラー、スポーツツアラー、スクラブラー、クラシック(レトロ)、アメリカン(クルーザー)、ネイキッド、ストリートファイター、オフロード・スーパーモタード、スーパースポーツ、ストリート、ミニバイク等が含まれる。また、本発明が適用可能なオートバイは、車輪の数に限りは無く、2輪の他、3輪のオートバイ(トライク)や、4輪のバギー等にも適用可能である。
【0010】
特に、スクータータイプのオートバイは、乗員の乗車姿勢が比較的高く、エアバッグも上方に大きく(高く)する必要があり、エアバッグの展開挙動、展開姿勢を安定化させるのが大きな課題となる。
【0011】
前記エアバッグは、前記乗員側に面する後方パネルと、当該後方パネルと対向する前方パネルと、当該前方パネルと後方パネルの外縁の少なくとも一部に連結されるサイドパネルとを含む構造とすることができる。
【0012】
前記サイドパネルは、展開した状態の前記エアバッグを側方から見た時に、前方に突出した凸部を含み、当該凸部によって前記段差部を形成するように構成することができる。
【0013】
前記サイドパネルの凸部は、前記エアバッグの左右両側部に配置される右凸部と左凸部とを含み、前記エアバッグが展開した時には、前記右凸部と左凸部によって、前記前方パネルが引っ張られて前記段差部が形成されるように構成することができる。
【0014】
このように、サイドパネルの形状を工夫することでエアバッグに段差部を形成することができるため、段差部を形成するために、必ずしも、テザーを設けたり、複雑なパネル構造を採用したりする必要が無い。
【0015】
前記サイドパネルは、前記前方パネルと後方パネルの外縁の全周に渡って延びるように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係るオートバイ用エアバッグ装置が作動した状態を示す側面図である。
図2図2は、本発明に係るエアバッグ装置が適用されるオートバイのハンドル周辺の様子を示す上面図である。
図3図3は、本発明の第1実施例に係るエアバッグ装置に採用されるエアバッグのパネル形状を示す平面図である。
図4図4は、本発明の第1実施例に係るエアバッグが展開した様子を示す側面図である。
図5図5は、本発明に適用可能なパネル(メインパネル)の他の態様を示す平面図である。
図6図6(A)は、本発明の第2実施例に係るエアバッグ装置に採用されるエアバッグのサイドパネルの形状を示す平面図であり、図6(B)は、(A)図に示すサイドパネルを使用したエアバッグの展開状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るオートバイ用エアバッグ装置について、添付図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明において、オートバイの進行方向を「前方」、その反対方向を「後方」と称し、座標の軸を示すときは「前後方向」と言う。また、進行方向に対して右側を「右方向」、左側を「左方向」と称し、座標の軸を示すときは「左右方向」と言う。更に、垂直上方を「上方」、垂直下方を「下方」と称し、座標の軸を示すときは「上下方向」と言う。
【0018】
図1は、本発明に係るオートバイ用エアバッグ装置が作動した状態を示す側面図である。図2は、本発明に係るエアバッグ装置が適用されるオートバイのハンドル周辺の様子を示す上面図である。
【0019】
本発明に係るエアバッグ装置は、例えば、スクータータイプのオートバイ1に搭載され、ハンドル20の下方の部分に収容することができる。エアバッグ装置は、膨張ガスを発生するガス発生器10と;膨張ガスによって膨張し、乗員(ライダー)Rの前方で展開することで、当該乗員Rの前方への移動を拘束するエアバッグ12とを備える。そして、エアバッグ12は、乗員Rの正面に位置するメインチャンバ部分と、展開時に前方に突出してオートバイ1のハンドルトップ周辺の構造部18に支持される段差部16とを有する。
【0020】
なお、本発明に係るオートバイ用エアバッグ装置は、スクータータイプのオートバイに限らず、あらゆるタイプのオートバイに適用可能である。例えば、スクーター、アドベンチャー、ツアラー、スポーツツアラー、スクラブラー、クラシック(レトロ)、アメリカン(クルーザー)、ネイキッド、ストリートファイター、オフロード・スーパーモタード、スーパースポーツ、ストリート、ミニバイク等に搭載することができる。
【0021】
図2に示すように、構造部18は、スピードメーター等の計器上面、ハンドルトップ、ヘッドライト上面のうちの少なくとも1つを含むことができる。このように、構造部18は、オートバイのタイプや、大きさ等によって異なる場合がある。
【0022】
上記のような本発明においては、エアバッグ12の展開時にハンドルトップ周辺の構造部18に支持される段差部16を設けているため、段差部16が当該構造部18から反力を得ることができる。その結果、エアバッグ12の展開挙動及び展開姿勢が安定し、エアバッグ12に乗員Rの頭部が衝突したときにも、エアバッグ12が前方に倒れたり、大きく変形してしまうようなことがなく、乗員Rの頭部を確実に拘束することが可能となる。
【0023】
本発明は、特に、スクータータイプのオートバイにおいて有用である。スクータータイプのオートバイは、乗員Rの乗車姿勢が比較的高く、エアバッグ12も上方に大きく(高く)する必要があり、エアバッグ12の展開挙動、展開姿勢を安定化させるのが困難だからである。
【0024】
(第1実施例)
図3は、本発明の第1実施例に係るエアバッグ装置に採用されるエアバッグのパネル形状を示す平面図である。図4は、本発明の第1実施例に係るエアバッグが展開した様子を示す側面図である。
【0025】
エアバッグは、乗員R側に面する後方パネル30と、当該後方パネル30と対向する前方パネル32と、前方パネル32と後方パネル30の外縁の少なくとも一部に連結されるサイドパネル40L,40Rとによって構成することができる。
【0026】
後方パネル30は、エアバッグ展開時に乗員Rの正面に位置する概ね円形のメイン領域30aと、メイン領域30aの下方に連続する概ね矩形の下部領域30bとを含んでいる。一方、前方パネル32は、後方パネル30のメイン領域30aに対向する(重ね合わされる)概ね円形のメイン領域32aと、メイン領域32aの下方に連続する概ね矩形の下部領域32bとを含んでいる。ここで、前方パネル32の下部領域32bは、後述するようにサイドパネル40L,40Rを連結するため、後方パネル30の下部領域30bよりも長く成形されている。
【0027】
図3に示すように、サイドパネル40L,40Rは、概ね三角形状で同一形状(対称)となっている。そして、サイドパネル40Lの辺44,46が前方パネル32の下部領域32bの左側辺(斜線で示す)に縫製又は接着される。また、サイドパネル40Lの辺42が後方パネル30の下部領域30bの左側辺(斜線で示す)に縫製又は接着される。同様に、サイドパネル40Rの辺50,52が前方パネル32の下部領域32bの右側辺(斜線で示す)に縫製又は接着される。また、サイドパネル40Rの辺48が後方パネル30の下部領域30bの右側辺(斜線で示す)に縫製又は接着される。
【0028】
また、図4に示すように、後方パネル30と前方パネル32において、サイドパネル40L,40Rと連結されない部分は、互いの縁部が縫製又は接着によって連結される。
【0029】
なお、サイドパネル40L,40Rの凸部47,49は、エアバッグ12の左右両側部に配置されており、エアバッグ12が展開した時には、これら凸部47,49によって、前方パネル32が引っ張られて段差部16が、前方パネル32の幅方向全域に渡って形成されることになる。そして、図4に示すように、エアバッグ12が展開したときに、段差部16の下面が構造部18に当接するようになっている。
【0030】
このように、サイドパネル40L,40Rの形状を工夫することでエアバッグ12に段差部16を形成することができ、必ずしもテザーを設けたり、複雑なパネル構造を採用したりする必要が無い。
【0031】
図5は、本発明に適用可能なパネル(メインパネル)の他の態様を示す平面図である。図5に示したパネル130は、基本的には図3に示した前方パネル32と後方パネル32とを縦につなげた構造となっている。パネル130は、概ね円形の前方メイン領域132Fと、後方メイン領域132Rと、概ね矩形の前方下部領域134Fと、後方下部領域134Rとから構成される。そして、前方下部領域134Fと後方下部領域134Rの側辺に図3に示したものと同様のサイドパネル(40L,40R)を連結するようになっている。
【0032】
図5に示すようなパネル130を採用することにより、パネル枚数を最小限にすることができる。
【0033】
(第2実施例)
図6(A)は、本発明の第2実施例に係るエアバッグ装置に採用されるエアバッグ212のサイドパネル(240L,240R)の形状を示す平面図である。一方、図6(B)は、図6(A)に示すサイドパネル(240L,240R)を使用したエアバッグ212の展開状態を示す側面図である。
【0034】
本実施例においては、左側のサイドパネル240Lは、概ね三角形状に突出した凸部242と、帯状部244とを備えている。同様に、右側のサイドパネル240Rは、概ね三角形状に突出した凸部246と、帯状部248とを備えている。そして、図6(B)に示すように、サイドパネル240L,240Rは、前方パネル232と後方パネル230との境界部分に縫製又は接着によって接合される。
【0035】
本実施例においても、上述した第1実施例と同様に、サイドパネル240L,240Rの凸部242,246によって、前方パネル232が引っ張られて段差部1216が、前方パネル232の幅方向全域に渡って形成されることになる。そして、エアバッグ212が展開したときに、段差部216の下面が構造部18に当接するようになっている。
【0036】
本実施例においては、エアバッグ212の下端部付近においては、左右のサイドパネル240L,240R同士が直接接合される。なお、前方パネル232と後方パネル232の外縁の全周に渡って延びるような構造のサイドパネルを採用することもできる。
【0037】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲に示された技術的思想の範疇において変更可能なものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6