(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】長鎖分岐プロピレンポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 10/06 20060101AFI20230718BHJP
C08F 8/00 20060101ALI20230718BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20230718BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
C08F10/06
C08F8/00
C08L23/10
C08F4/6592
(21)【出願番号】P 2021578089
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2020067134
(87)【国際公開番号】W WO2021001174
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-02-14
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513276905
【氏名又は名称】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジンボ
(72)【発明者】
【氏名】ガーライトナー マルクス
(72)【発明者】
【氏名】レスキネン パウリ
(72)【発明者】
【氏名】ベルンライトナー クラウス
(72)【発明者】
【氏名】クリムケ カティア エレン
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-532425(JP,A)
【文献】特表2015-522701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 10/06
C08F 8/00
C08L 23/10
C08F 4/6592
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長鎖分岐プロピレンポリマーを有するプロピレンポリマー組成物であって、当該プロピレンポリマー組成物が、
a) プロピレンポリマー組成物の総重量に対して、1.0%未満の量の熱キシレン不溶(XHU)分;
b)
140.0~158.0℃の溶融温度Tm;
c)
116.0~125.0℃の結晶化温度Tc
;
d)
ISO16790:2005に従って測定された、5.0cN以上30.0cN未満のF30溶融強度;
及び
e) プロピレンポリマー組成物の総重量に対して、0.2~2.2wt%の量の冷キシレン可溶(XCS)分;
を有する、プロピレンポリマー組成物。
【請求項2】
190mm/sを超える、より好ましくは200~500mm/s、なおより好ましくは205~400mm/s、最も好ましくは210~250mm/sの
、ISO16790:2005に従って測定されたV30溶融伸展性を有する、請求項1に記載のプロピレンポリマー組成物。
【請求項3】
1.0~6.0g/10min、より好ましくは1.2~5.5g/10min、最も好ましくは1.4~5.0g/10minのメルトフローレートMFR
2(230℃、2.16kg)を有する、請求項1又は2に記載のプロピレンポリマー組成物。
【請求項4】
下記の工程を有する
、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロピレンポリマー組成物の製造方法:
a) シングルサイト触媒系の存在下でプロピレンを重合して、プロピレンポリマーを製造する工程;
b) 上記プロピレンポリマーを回収する工程;
c) 長鎖分岐を上記プロピレンポリマー中に導入するために、過酸化物の存在下で上記プロピレンポリマーを押し出す工程;
d) 上記プロピレンポリマー組成物を回収する工程。
【請求項5】
前記シングルサイト触媒系が
(i) 式(I)のメタロセンコンプレックス:
【化1】
(式中、Mは、Zr又はHfであり;
各Xは、独立に、シグマ供与体リガンドであり;
Lは、-R’
2C-、-R’
2C-CR’
2-、-R’
2Si-、-R’
2Si-SiR’
2-、-R’
2Ge-(各R’は、独立に、水素原子、又は、1若しくは2個以上の周期表の14~16族のヘテロ原子を任意で含むC
1-C
20-ヒドロカルビル基、又は、フッ素原子であるか、又は、任意で2個のR’基は一緒に環を形成することができる。)から選択される2価の架橋であり;
各R
1は、独立に、同じであるか又は異なることができ、水素、直鎖の若しくは分岐したC
1-C
6-アルキル基、C
7-20-アリールアルキル、C
7-20-アルキルアリール基又はC
6-20-アリール基、又は、OY基(YはC
1-10-ヒドロカルビル基である。)であり、任意で、2個の隣接するR
1基は、それらが結合するフェニル炭素を含む環の部分であることができ;
各R
2は、独立に、同じであるか又は異なることができ、CH
2-R
8基であり、R
8は、H、又は、直鎖の若しくは分岐したC
1-6-アルキル基、C
3-8-シクロアルキル基、C
6-10-アリール基であり;
R
3は、直鎖の若しくは分岐したC
1-C
6-アルキル基、C
7-20-アリールアルキル、C
7-20-アルキルアリール基又はC
6-C
20-アリール基であり;
R
4はC(R
9)
3基(R
9は直鎖の又は分岐したC
1-C
6-アルキル基である。)であり;
R
5は、水素、又は、元素周期表の14~16族からの1又は2個以上のヘテロ原子を任意で含む脂肪族C
1-C
20-ヒドロカルビル基であり;
R
6は、水素、又は、元素周期表の14~16族からの1又は2個以上のヘテロ原子を任意で含む脂肪族C
1-C
20-ヒドロカルビル基であり;又は、
R
5及びR
6は、n個の基R
10により任意に置換される、インデニルに縮合した5員環の部分であることができ、nは0~4であり;
各R
10は、同じであるか又は異なり、元素周期表の14~16族に属する1又は2個以上のヘテロ原子を任意で含むC
1-C
20-ヒドロカルビルラジカル又はC
1-C
20-ヒドロカルビル基であってよく;
R
7は、H、又は、直鎖の若しくは分岐したC
1-C
6-アルキル基、又は、6~20個の炭素原子を有し、1~3個の基R
11により任意に置換されたアリール若しくはヘテロアリール基であり;
各R
11は、独立に、同じであるか又は異なることができ、水素、直鎖の若しくは分岐したC
1-C
6-アルキル基、C
7-20-アリールアルキル、C
7-20-アルキルアリール基又はC
6-20-アリール基又はOY基(YはC
1-10-ヒドロカルビル基である。)である。);
(ii) アルミノキサン共触媒を有する触媒系;及び
(iii) シリカ担体;
を有する、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
回収した前記プロピレンポリマーの粒子が、10.0%未満、より好ましくは0.2~9.0%、最も好ましくは0.4~8.0%の空隙率を有する、請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
回収した前記プロピレンポリマーの粒子が、0.12cm
3/g未満、より好ましくは0.10cm
3/g以下、最も好ましくは0.08cm
3/g以下の比細孔容積を有する、請求項4~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
回収した前記プロピレンポリマーの粒子が、150~1000μm、好ましくは200~800μm、最も好ましくは250~600μmのメディアン粒子径d50、及び/又は、500~2500μm、好ましくは550~2000μm、最も好ましくは600~900μmのトップカット粒子径d95を有する、請求項4~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
回収した前記プロピレンポリマーが、プロピレンホモポリマー、又は、プロピレンの、エチレン及び/又は4~12個の炭素原子を有するアルファオレフィンから選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマーであり、コモノマーの量が、上記プロピレンポリマー中のモノマーユニットの総量に対して、最大で0.5wt%、より好ましくは最大で0.3wt%、最も好ましくは最大で0.1wt%である、請求項4~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記プロピレンポリマーと前記過酸化物を、溶融混錬装置内で、160~280℃、より好ましくは170~270℃、最も好ましくは180~235℃の範囲内のバレル温度にて溶融混錬する、請求項4~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記過酸化物が、160から280℃のメルト温度において、6分以下の半減時間(t
1/2)を有し、及び/又は、前記過酸化物が、100重量部のプロピレンポリマー当たり0.1重量部~5.0重量部の量で前記プロピレンポリマーに加えられる、請求項4~10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記プロピレンポリマーに前記長鎖分岐を二官能性長鎖分岐剤の非存在下で導入する、請求項4~11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
工程d)の回収した前記プロピレンポリマー組成物が、工程b)の回収した前記プロピレンポリマーと比べてより低いメルトフローレートMFR
2(230℃、2.16kg)を有する、請求項4~12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1~3のいずれか1項に記載のプロピレンポリマー組成物を有する物品。
【請求項15】
物品の製造のための、
請求項1~3のいずれか1項に記載のプロピレンポリマー組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長鎖分岐プロピレンポリマーを有するプロピレンポリマー組成物、プロピレンポリマーのポストリアクター修飾(post reactor modification)によるかかるプロピレンポリマー組成物の製造方法、かかるプロピレンポリマー組成物を有する物品、物品の製造のためのかかるプロピレンポリマー組成物の使用及びプロピレンポリマー組成物の溶融強度を増大させるための、長鎖分岐プロピレンポリマーを有するプロピレンポリマー組成物を製造するためのそのような方法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレンホモポリマー及びコポリマーは、包装、テキスタイル、自動車、実験用器具及びパイプ等多くの用途に向いている。これらのポリマーは、例えば、高弾性率、引張強さ、剛直性(rigidity)及び耐熱性等の様々な特性を示す。これらの特性により、ポリプロピレンは、例えば、フィルム、発泡体(foams)、成形品又は自動車用途用の物品等の膨大な数の用途において非常に魅力のある材料となっている。
【0003】
これらの用途において軽量構造物は未だに変わらないテーマであり、材料の使用を減らすために、剛性(stiffness)をより高くすることによる解決が模索されている。これはコスト低減のためのみではなく、原材料の消費を減らして環境に対する負荷を軽減するためでもある。材料密度を減らす最も適切なアプローチは発泡成形(foaming)であるが、直鎖構造を有するプロピレンポリマーはこれには適切とは言えない。もう1つの重要な特徴は耐熱性である。多くの用途、特に成形分野においては、熱い食物を物品に入れるために、耐熱性がより高いことが要求される;従って、熱変形温度(HDT)が重要となる。特に包装分野における成形用途に対しては、HDTがより高いことは明らかに有利である。
【0004】
この目的は、ポリプロピレンを例えば高溶融強度(HMS)法等のポストリアクター修飾法に付すことにより達成することができる。この方法はポリプロピレン材料中に分岐を生成させ、長鎖分岐ポリプロピレンとする。長鎖分岐は一般に溶融強度(melt-strength)の向上と関連する。従って、これらの長鎖分岐ポリプロピレンは、多くの場合、発泡体の製造に使用される。
【0005】
現在の長鎖分岐ポリプロピレン及びそれらの組成物の分野における課題は、その製造において一般にゲルが形成されることである。ゲルの形成による望ましくない結果は、ポリプロピレンの溶融強度が低くなり、機械的性能が限定され、そのため物品の外観が不良となることである。ゲルの形成は、いわゆる熱キシレン不溶(XHU)分(xylene hot insoluble(XHU)fraction)に反映する。従って、高い溶融強度を有するポリプロピレンをそのゲル含量について改善するという要求が存在する。かかる改善を行うことにより、そのようなポリプロピレンを使用した場合に得られる物品は、向上した剛性、より高い耐熱性及び優れた外観等の、改善されたはるかに望ましい特性を有することになる。
【0006】
(BOREALIS AG名義の)WO2014/0016205は高溶融強度(HMS)ポストリアクター修飾法を開示しており、過酸化物及びブタジエンを使用して長鎖分岐ポリプロピレン(b-PP)材料を製造している。WO2014/0016205の長鎖分岐ポリプロピレンは、ゲル含量が低下した発泡体の製造に使用される。WO2014/0016205の長鎖分岐ポリプロピレンの製造には、特定のポリプロピレンがベース材料として使用される。
【0007】
EP3018153A1及びEP3018154A1も高溶融強度(HMS)ポストリアクター修飾法を開示しており、過酸化物及びブタジエンを使用して、フィルム及び発泡体用途用の長鎖分岐ポリプロピレン(b-PP)材料を製造している。当該高溶融強度(HMS)ポストリアクター修飾法で修飾されるプロピレンポリマーは、フタレートを含有しない触媒系の存在下で重合される。
【0008】
所望の範囲のメルトフローレート(MFR)を有する長鎖分岐プロピレンポリマー組成物を得るためには、非常に低いMFRを有するベースポリプロピレン材料を用いて長鎖分岐ポリプロピレンを製造しなければならないことが、これらの方法について開示されている。これらの文献に記載される修飾法は一般に、ベースポリプロピレン材料に比して、長鎖分岐プロピレンポリマー組成物のMFRを増大させるからである。この方法の不利な点は、ベースポリプロピレンのMFRが特定の範囲に必然的に限定されること、及び、さらに長鎖分岐ポリプロピレン組成物について所望のMFRを得ることについて制限があることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、長鎖分岐ポリプロピレン材料の特性、より具体的にはそのゲル含量を改善し、得られる長鎖分岐ポリプロピレン組成物の剛性及び耐熱性等の機械的特性を向上させることについてなお需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、改変高溶融強度(HMS)ポストリアクター修飾法を用いることにより、耐熱性及び機械的特性に所望の改善が見られる、長鎖分岐プロピレンポリマーを有するプロピレンポリマー組成物を製造することができることが見出された。好ましくは、注意深く設計し、リアクターにより製造されたプロピレンポリマーを当該改変法に導入することにより、当該特性を有するプロピレンポリマー組成物を得やすくなる場合がある。
【0011】
本発明は、長鎖分岐プロピレンポリマーを有するプロピレンポリマー組成物であって、当該プロピレンポリマー組成物が、
a) プロピレンポリマー組成物の総重量に対して、1.0%未満の量の熱キシレン不溶(XHU)分;
b) 160℃未満の溶融温度Tm;
c) 少なくとも115℃の結晶化温度Tc;及び
d) 5.0cN以上30.0cN未満のF30溶融強度;
を有する、プロピレンポリマー組成物に関する。
【0012】
本発明はさらに、下記の工程を有するプロピレンポリマー組成物の製造方法に関する:
a) シングルサイト触媒系の存在下でプロピレンを重合して、プロピレンポリマーを製造する工程;
b) 上記プロピレンポリマーを回収する工程;
c) 長鎖分岐を上記プロピレンポリマー中に導入するために、過酸化物の存在下で上記プロピレンポリマーを押し出す工程;
d) 上記プロピレンポリマー組成物を回収する工程。
【0013】
なおさらに、本発明は、先に又は以下に定義するプロピレンポリマー組成物を有する物品に関する。
【0014】
加えて、本発明は、物品の製造のための、先に又は以下に定義するプロピレンポリマー組成物の使用に関する。
【0015】
最後に、本発明は、プロピレンポリマー組成物の溶融強度を増大させるための、先に又は以下に定義する方法の使用に関する。
【0016】
定義
本発明によれば、「プロピレンホモポリマー」という表現は、実質的にプロピレン単位からなる、すなわち、少なくとも99.0wt%の、より好ましくは少なくとも99.5wt%の、なおより好ましくは少なくとも99.8wt%の、例えば少なくとも99.9wt%のプロピレン単位からなるポリプロピレンに関する。別の態様において、プロピレン単位のみが検出可能であり、すなわちプロピレンのみが重合されている。
【0017】
本発明によれば、「プロピレンコポリマー」という表現は、プロピレンモノマー単位、及び、コモノマー単位、好ましくはエチレン及びC4-C12アルファ-オレフィンから選択されるコモノマー単位を有するポリプロピレンに関する。プロピレンコポリマー中のコモノマー単位の量は、少なくとも0.1wt%、好ましくは少なくとも0.2wt%である。本発明において、プロピレンコポリマー中のコモノマー単位の量は0.5wt%を超えないことが適切である。
【0018】
プロピレンランダムコポリマーは、プロピレンモノマー単位、及び、コモノマー単位、本発明においては好ましくはエチレン及びC4-C12アルファ-オレフィンから選択されるコモノマー単位のコポリマーであり、コモノマー単位はポリマー鎖にランダムに分散している。プロピレンランダムコポリマーは、炭素原子の量が異なる1又は2種以上のコモノマーに由来するコモノマー単位を有することができる。プロピレンランダムコポリマーは弾性相を含まない。
【0019】
別段の記載がない限り、本明細書において、百分率は通常重量%(wt%)として記載する。
【0020】
本発明の詳細な記述
プロピレンポリマー組成物
本発明は、長鎖分岐プロピレンポリマーを有するプロピレンポリマー組成物であって、当該プロピレンポリマー組成物が、
a) プロピレンポリマー組成物の総重量に対して、1.0%未満の量の熱キシレン不溶(XHU)分;
b) 160℃未満の溶融温度Tm;
c) 少なくとも115℃の結晶化温度Tc;及び
d) 5.0cN以上30.0cN未満のF30溶融強度;
を有する、プロピレンポリマー組成物に関する。
【0021】
上記プロピレンポリマー組成物は、長鎖分岐プロピレンポリマーを、添加剤及び又はポリマーから選択される他の化合物と一緒に有することができる。
【0022】
上記プロピレンポリマー組成物は、好ましくは、唯一のポリマー成分としての長鎖分岐プロピレンポリマー、及び、任意の添加剤を有し、より好ましくは、これらからなる。
【0023】
本発明のプロピレンポリマー組成物に使用される添加剤の例は、酸化防止剤(例えば、立体障害フェノール、ホスファイト/ホスホナイト、硫黄含有酸化防止剤、アルキルラジカル捕捉剤、芳香族アミン、ヒンダードアミン系安定剤、又はそれらのブレンド)、金属不活性化剤(例えばIrganox(登録商標)MD 1024)、又はUV安定剤(例えばヒンダードアミン系光安定剤)等の安定剤を含むが、これらに限定されるものではない。他の典型的な添加剤は、帯電防止剤又は防曇剤(例えば、エトキシ化アミン及びアミド又はグリセロールエステル)、酸捕捉剤(例えばCa-ステアレート)、発泡剤、粘着剤(cling agent)(例えばポリイソブテン)、潤滑剤及び樹脂(例えば、アイオノマーワックス、ポリエチレン-及びエチレンコポリマーワックス、フィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)ワックス、モンタン系ワックス、フッ素系化合物、又は、パラフィンワックス)、核形成剤(例えば、タルク、ベンゾエート、亜リン酸系化合物、ソルビトール、ノニトール系化合物又はアミド系化合物)、並びに、スリップ剤及びブロッキング防止剤(例えば、エルカミド、オレアミド、タルク、天然シリカ及び合成シリカ又はゼオライト)並びにそれらの混合物などの改質剤である。
【0024】
一般に、上記プロピレンポリマー組成物中の添加剤の総量は、プロピレンポリマー組成物の総重量に対して、5.0wt%以下、好ましくは1.0wt%以下、例えば0.005~0.995wt%の範囲内、より好ましくは0.8wt%以下である。
【0025】
本発明のプロピレンポリマー組成物に使用されるポリマーは、好ましくは熱可塑性ポリマーを含む。
【0026】
好ましくは、本発明のプロピレンポリマー組成物中の添加剤、ポリマー及び/又はその組み合わせの総量は、本発明のプロピレンポリマー組成物の総重量に対して、5.0wt%以下、より好ましくは、0.995wt%以下、例えば0.005~1.0wt%の範囲内である。
【0027】
上記プロピレンポリマー組成物は、好ましくは、5.0wt%を超える量で充填剤及び/又は補強剤を含まない。態様の1つにおいて、上記プロピレンポリマー組成物は充填剤及び/又は補強剤を含まない。
【0028】
好ましくはないが、本発明のプロピレンポリマー組成物は充填剤及び/又は補強剤をさらに有することができる。本発明の長鎖分岐ポリプロピレン組成物(b-PP-C)に使用される充填剤の例は、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、クレー、カオリン、シリカ、ガラス、ヒュームドシリカ、マイカ、ウォラストナイト、長石、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ三水和物等のアルミナ水和物、ガラス微小球、セラミック微小球、木粉、大理石粉、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、硫酸バリウム及び/又は二酸化チタンを含むがこれらに限定されるものではない。本発明のプロピレンポリマー組成物に使用される補強剤の例は、鉱物線維、ガラス線維、炭素線維、有機線維及び/又はポリマー線維を含むがこれらに限定されるものではない。
【0029】
好ましくは、本発明のプロピレンポリマー組成物における添加剤、ポリマー、充填剤、補強剤及び/又はその組み合わせの総量は、本発明のプロピレンポリマー組成物の総重量に対して、5.0wt%以下、より好ましくは1.0wt%以下、例えば0.005~0.995wt%の範囲である。
【0030】
上記プロピレンポリマー組成物は、熱キシレン不溶(XHU)分を、プロピレンポリマー組成物の総重量に対して、1.00wt%未満、好ましくは0.95wt%以下、より好ましくは0.90wt%以下、最も好ましくは0.85wt%以下の量で有する。下限として、態様によっては、上記プロピレンポリマー組成物において熱キシレン不溶(XHU)分は検出されない。
【0031】
さらに、上記プロピレンポリマー組成物は、示差走査熱量測定(DSC)により測定される、160.0℃未満、好ましくは140.0~158.0℃、より好ましくは142.0~156.0℃、最も好ましくは145.0~155.0の溶融温度Tmを有する。
【0032】
なおさらに、上記プロピレンポリマー組成物は、DSCにより測定される、少なくとも115.0℃、より好ましくは116.0~125.0℃、なおより好ましくは117.0~122.0℃、最も好ましくは117.5~121.0℃の結晶化温度Tcを有する。
【0033】
加えて、上記プロピレンポリマー組成物は、Rheotens法により測定される、5.0cN以上30.0cN未満、好ましくは6.0~28.0cN、より好ましくは7.0~26.0cN、最も好ましくは8.0~21.0cNのF30溶融強度を有する。
【0034】
上記プロピレンポリマー組成物は、好ましくは1.0~6.0g/10min、より好ましくは1.2~5.5g/10min、最も好ましくは1.4~5.0g/10minのメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)を有する。
【0035】
加えて、上記プロピレンポリマー組成物は、DSCにより測定される、好ましくは105J/g以下、より好ましくは85~100J/g、なおより好ましくは88~102J/g、最も好ましくは90~100J/gの融解エンタルピー(melting enthalpy)Hmを有する。
【0036】
さらに、上記プロピレンポリマー組成物は、Rheotens法により測定される、好ましくは190mm/sを超える、より好ましくは200~500mm/s、なおより好ましくは205~400mm/s、最も好ましくは210~250mm/sのV30溶融伸展性(melting extensibility)を有する。
【0037】
なおさらに、上記プロピレンポリマー組成物は、プロピレンポリマー組成物の総重量に対して、好ましくは2.5wt%未満、好ましくは0.2~2.2wt%、より好ましくは0.3~2.0wt%、最も好ましくは0.5~1.8wt%の量の冷キシレン可溶(XCS)分を有する。
【0038】
驚くべきことに、本発明のプロピレンポリマー組成物において、そのF30溶融強度及びV30溶融伸展性から分かる良好な溶融強度、その溶融温度、融解エンタルピー及び結晶化温度から分かる高結晶性、及び、低XCS分量、及び、XHU分の量で示される低ゲル含量の特性が向上したバランスで組み合わせられている。従って、本発明のプロピレンポリマー組成物は、特に軽量用途、自動車用途及び食品包装用途等の包装用途のフィルム、発泡体及び成形品に特に使用することができる。
【0039】
先に又は以下に定義する本発明のプロピレンポリマー組成物は、改変高溶融強度(HMS)ポストリアクター修飾法により製造され、それによりプロピレンポリマー中に長鎖分岐が導入される。
【0040】
プロセス
本発明はさらに、下記の工程を有するプロピレンポリマー組成物の製造方法に関する:
a) シングルサイト触媒系の存在下でプロピレンを重合して、プロピレンポリマーを製造する工程;
b) 上記プロピレンポリマーを回収する工程;
c) 長鎖分岐を上記プロピレンポリマー中に導入するために、過酸化物の存在下で上記プロピレンポリマーを押し出す工程;
d) 上記プロピレンポリマー組成物を回収する工程。
【0041】
従って、当該プロセスから得られるプロピレンポリマー組成物は、好ましくは、先に又は以下に定義する本発明のプロピレンポリマー組成物と定義される。
【0042】
- プロピレンポリマーの重合
プロセス工程a)で重合されるプロピレンポリマーは、プロピレンホモポリマー又はプロピレンのコポリマーであることができる。
プロピレンのコポリマーの場合には、上記プロピレンのコポリマーは、好ましくは、プロピレンの、エチレン及び/又は4~12個の炭素原子を有するアルファオレフィンから選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマーである。
好ましいコモノマーは、エチレン及び/又は4~8個の炭素原子を有するアルファオレフィンから選択されるコモノマーである。特に好ましくは、エチレン、1-ブテン及び1-ヘキセンから選択されるコモノマーである。最も好ましくはエチレンである。
【0043】
上記プロピレンのコポリマー中のコモノマー量は、上記プロピレンコポリマー中のモノマーユニットの総量に対して、好ましくは最大で0.5wt%、より好ましくは最大で0.3wt%、最も好ましくは最大で0.1wt%である。
【0044】
上記プロピレンポリマーは、直列に構成され、異なる反応条件で稼働する複数のリアクターを用いて、逐次工程法(sequential step process)で製造することができる。結果として、特定のリアクターで製造される各フラクションは、製造されるプロピレンポリマーのタイプ(プロピレンホモポリマー又はコポリマー)に応じて、それ自体の分子量分布及び/又はコモノマー含量分布を有する場合がある。最終ポリマーの分子量分布曲線又はコモノマー含量分布曲線を得るために、これらのフラクションからの分布曲線(分子量又はコモノマー含量)を重ね合わせた場合、これらの曲線は、2又はそれより多くの極大値を示すか、又は、個々のフラクションに対する曲線と比較して、少なくとも明らかに幅が広くなっているかもしれない。2又は3以上の直列的な工程で製造されたそのようなポリマーは、工程の数に応じて、バイモーダル又はマルチモーダルと呼ばれる。従って、上記プロピレンホモポリマー又はコポリマーは、製造されるプロピレンポリマーのタイプ(プロピレンホモポリマー又はコポリマー)に応じて、分子量及び/又はコモノマー含量の観点において、マルチモーダル、例えばバイモーダルであってよい。
【0045】
プロピレンコポリマーがマルチモーダル性、例えばバイモーダル性である場合、コモノマー含量の観点からは、個々のフラクションが材料の特性に影響を及ぼす量で存在することが好ましい。従って、これらのフラクションの各々が、プロピレンコポリマーに対して少なくとも10wt%の量で存在することが好ましい。従って、バイモーダル系の場合、特にコモノマー含量の観点から、2つのフラクションの割合は、好ましくは40:60~60:40、例えば大体50:50である。
【0046】
プロピレンポリマーの製造に適切な重合プロセスは当該技術分野において知られており、少なくとも1つの重合段階を有し、この段階で重合は典型的には溶液、スラリー、バルク又は気相中で行われる。通常、重合プロセスはさらなる重合段階又はリアクターを有する。具体的な態様の1つにおいて、上記プロセスは少なくとも1つのバルクリアクターゾーン及び少なくとも1つの気相リアクターゾーンを有し、各ゾーンは少なくとも1つのリアクターを有し、すべてのリアクターは段階的に配置されている。特に好ましい態様の1つにおいて、重合プロセスは、少なくとも1つのバルクリアクター及び少なくとも1つの気相リアクターを、この順序で配置したものを有する。好ましいプロセスのいくつかにおいて、上記プロセスは、1つのバルクリアクター及び少なくとも2つの気相リアクター、例えば2つ又は3つの気相リアクターを有する。上記プロセスは、プレ-及びポスト-リアクターをさらに有してもよい。プレ-リアクターは通常プレ-重合リアクターを有する。この種のプロセスでは、ポリマーの特定の特性を実現するために、より高い重合温度を使用することが好ましい。これらのプロセスの典型的な温度は、70℃又はそれを超える温度、好ましくは80℃又はそれを超える温度、さらには85℃又はそれを超える温度である。前述のより高い重合温度は、リアクターカスケードの反応器のいくつか又は全てにおいて適用することができる。
【0047】
好ましい多段階プロセスは、例えばBorealisが開発した(BORSTAR(登録商標)技術として知られている)「ループ-気相」プロセスであり、例えば、EP0887379、WO92/12182、WO2004/000899、WO2004/111095、WO99/24478、WO99/24479又はWO00/68315等の特許文献に記載されている。さらなる適切なスラリー-気相プロセスは、BasellのSpheripol(登録商標)プロセスである。
【0048】
適切には、特定のタイプのシングルサイト触媒系が上記プロピレンポリマーの重合に使用される。シングルサイト触媒系は、シリカ担持シングルサイト触媒系等の担持シングルサイト触媒系であることが特に好ましい。シングル触媒系は、適切には、特定のクラスのメタロセンコンプレックスをアルミノキサン共触媒及びシリカ担体と組み合わせて有する。
【0049】
メタロセン触媒コンプレックスは対称性又は非対称性である。
非対称性とは単にメタロセンを形成する2つのリガンドが異なることを意味し、すなわち各リガンドが化学的に異なる1組の置換基を担持する。
【0050】
メタロセン触媒コンプレックスは、好ましくは、anti-配置のキラル、ラセミ架橋ビスインデニルメタロセンである。メタロセンは、好ましくは、C2-対称性又はC1-対称性のいずれかである。C1-対称性である場合、それらは(リガンド周辺ではそうではないが)中心金属の極近傍においてC2-対称を維持するため、それらはなお擬C2対称(pseudo-C2-symmetry)を維持している。その化学的性質により、メソ形及びラセミ体エナンチオマーペアの両方(C2-対称性コンプレックスの場合)又はanti及びsynエナンチオマーペア(C1-対称性コンプレックスの場合)が、コンプレックスの合成の際に形成される。従って、下図に示すように、ラセミ-antiは、2つのインデニルリガンドがシクロペンタジエニル-金属-シクロペンタジエニルプレインに対して反対の方向に配向することを意味し、一方、ラセミ-synは、2つのインデニルリガンドがシクロペンタジエニル-金属-シクロペンタジエニルプレインに対して同じ方向に配向することを意味する。
【化1】
【0051】
式(I)及び副次式はsyn-及びanti-配置の両方を包含することを意図している。好ましいメタロセン触媒コンプレックスはanti配置にある。
【0052】
メタロセン触媒コンプレックスは、好ましくは、ラセミ-antiアイソマーとして使用される。従って、理想的には、メタロセン触媒コンプレックスの少なくとも95mol%、例えば少なくとも98mol%、特に少なくとも99mol%がラセミ-antiアイソマー形にある。
【0053】
メタロセン触媒コンプレックスにおいて、下記の好適性が適用される。メタロセン触媒コンプレックスは、好ましくは式(I)のものである:
【化2】
【0054】
Mは、Zr又はHfであり、好ましくはZrである。
各Xは、独立に、シグマ供与体(sigma-donor)リガンドである。
従って、各Xは、同じであっても異なっていてもよく、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、直鎖の若しくは分岐した、環式若しくは非環式C1-20-アルキル若しくは-アルコキシ基、C6-20-アリール基、C7-20-アルキルアリール基又はC7-20-アリールアルキル基;(周期表の14~16族の1又は2個以上のヘテロ原子を任意で有する。)。
【0055】
ハロゲンという用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード基を含み、好ましくはクロロ基である。
【0056】
周期表の14~16族に属するヘテロ原子という用語は、例えばSi、N、O又はSを含む。
【0057】
より好ましくは、各Xは、独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖の若しくは分岐したC1-6-アルキル若しくはC1-6-アルコキシ基、フェニル又はベンジル基である。
なおより好ましくは、各Xは、独立に、ハロゲン原子、直鎖の若しくは分岐したC1-4-アルキル若しくはC1-4-アルコキシ基、フェニル又はベンジル基である。
最も好ましくは、各Xは、独立に、塩素、ベンジル又はメチル基である。
好ましくは、両X基は同じである。
両X基に対する最も好ましい選択肢は、2つのクロリド、2つのメチル又は2つのベンジル基である。
【0058】
Lは、-R’2C-、-R’2C-CR’2-、-R’2Si-、-R’2Si-SiR’2-、-R’2Ge-(各R’は、独立に、水素原子、又は、周期表の14~16族の1若しくは2個以上のヘテロ原子を任意で含むC1-C20-ヒドロカルビル基、又は、フッ素原子であるか、又は、任意で2個のR’基は一緒に環を形成することができる。)から選択される2価の架橋である。
【0059】
周期表の14~16族に属するヘテロ原子という用語は、例えばSi、N、O又はSを含む。
【0060】
好ましくは、Lは、-R’2Si-、エチレン又はメチレンである。
【0061】
式-R’2Si-において、各R’は、好ましくは独立にC1-C20-ヒドロカルビル基である。従って、C1-20-ヒドロカルビル基という用語は、C1-20-アルキル、C2-20-アルケニル、C2-20-アルキニル、C3-20-シクロアルキル、C3-20-シクロアルケニル、C6-20-アリール基、C7-20-アルキルアリール基又はC7-20-アリールアルキル基、又は、当然のことながらこれらの基が混合した基、例えばアルキルで置換されたシクロアルキルを含む。別段の記載がない限り、好ましいC1-20-ヒドロカルビル基は、C1-20-アルキル、C4-20-シクロアルキル、C5-20-シクロアルキル-アルキル基、C7-20-アルキルアリール基、C7-20-アリールアルキル基又はC6-20-アリール基である。
【0062】
好ましくは、両R’基は同じである。R’は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tertブチル、イソブチル、C3-8-シクロアルキル、シクロヘキシルメチル、フェニル若しくはベンジル等のC1-C10-ヒドロカルビル又はC6-C10-アリール基であることが好ましく、より好ましくは両R’は、C1-C6-アルキル、C5-6-シクロアルキル又はC6-アリール基であり、最も好ましくは両R’がメチルであるか、又は、一方がメチルで他方がシクロヘキシルである。最も好ましくは、上記架橋は-Si(CH3)2-である。
【0063】
各R1は、独立に、同じであるか又は異なることができ、水素、直鎖の若しくは分岐したC1-C6-アルキル基、C7-20-アリールアルキル、C7-20-アルキルアリール基又はC6-20-アリール基、又は、OY基(YはC1-10-ヒドロカルビル基である。)であり、任意で、2個の隣接するR1基は、それらが結合するフェニル炭素を含む環の部分であることができる。
【0064】
好ましくは、各R1は、独立に、同じであるか又は異なることができ、水素又は直鎖の若しくは分岐したC1-C6-アルキル基、例えばメチル又はtert.-ブチルである。
【0065】
例えば、C4-フェニル環は、未置換であるか(すなわち、すべての3つのR1は水素である。)、又は、パラ位においてのみ置換されるか(例えば、4’-tert.-ブチルフェニル)、又は、2個の置換基により3’及び5’位において置換される(例えば、3’,5’-ジメチルフェニル又は3’,5’-ジtert.-ブチルフェニル)ことが可能である。
【0066】
さらに、両フェニル環は、同じ置換パターンを有し、又は、2つのフェニル環は異なる置換パターンを有することが可能である。
【0067】
各R2は、独立に、同じであるか又は異なることができ、CH2-R8基であり、R8は、H、又は、直鎖の若しくは分岐したC1-6-アルキル基、C3-8-シクロアルキル基、C6-10-アリール基である。
【0068】
好ましくは、両R2は同じであり、CH2-R8基(R8は、H又は直鎖の若しくは分岐したC1-C4-アルキル基である。)であり、より好ましくは、両R2は同じであり、CH2-R8基(R8は、H又は直鎖の若しくは分岐したC1-C3-アルキル基である。)である。最も好ましくは、両R2はメチルである。
【0069】
R3は、直鎖の若しくは分岐したC1-C6-アルキル基、C7-20-アリールアルキル、C7-20-アルキルアリール基又はC6-C20-アリール基である。
【0070】
R3は、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec.-ブチル及びtert.-ブチル等の、直鎖の若しくは分岐したC1-C6-アルキル基又はC6-20-アリール基であり、好ましくは直鎖のC1-C4-アルキル基、より好ましくはC1-C2-アルキル基、最も好ましくはメチルである。
【0071】
R4はC(R9)3基(R9は直鎖の又は分岐したC1-C6-アルキル基である。)である。
【0072】
好ましくは、各R9は同じであるか又は異なり、直鎖の又は分岐したC1-C4-アルキル基であり、より好ましくはR9は同じであり、C1-C2-アルキル基である。最も好ましくはR4はtert.-ブチル基であり、従ってすべてのR9基はメチルである。
【0073】
態様の1つにおいて、R5及びR6は、独立に、同じであるか又は異なることができ、水素、又は、アルキル若しくはアルコキシ基等の元素周期表の14~16族からの1又は2個以上のヘテロ原子を任意で含む脂肪族C1-C20-ヒドロカルビル基であり、例えばC1-C10-アルキル又は-アルコキシ基である。
【0074】
好ましくは、R5及びR6は、独立に、同じであるか又は異なることができ、水素又は直鎖の若しくは分岐したC1-C6アルキル基又はC1-C6-アルコキシ基である。
より好ましくは、R5及びR6は、独立に、同じであるか又は異なることができ、水素又は直鎖の若しくは分岐したC1-C4-アルキル基又はC1-C4-アルコキシ基である。
【0075】
別の態様において、R5及びR6は、n個の基R10により任意に置換される、インデニル環に縮合した5員環の部分であることができ、nは、0~4、好ましくは0又は2、より好ましくは0であり;
各R10は、同じであるか又は異なることができ、元素周期表の14~16族に属する1又は2個以上のヘテロ原子を任意で含むC1-C20-ヒドロカルビルラジカル又はC1-C20-ヒドロカルビル基であってよく;好ましくは、直鎖の又は分岐したC1-C6-アルキル基である。
【0076】
R7は、H、又は、直鎖の若しくは分岐したC1-C6-アルキル基、又は、1~3個の基R11により任意に置換され、6~20個の炭素原子を有するアリール若しくはヘテロアリール基である。
好ましくは、R7は、H、又は、1~3個の基R11により任意に置換され、6~10個の炭素原子を有するアリール基であり;より好ましくは、R7は、H、又は、1~3個の基R11により任意に置換されたフェニル基である。
【0077】
R7が、例えばフェニル等の、6~10個の炭素原子を有する、任意に置換されたアリール基である場合には、各R11は、独立に、同じであるか又は異なることができ、水素、直鎖の若しくは分岐したC1-C6-アルキル基、C7-20-アリールアルキル、C7-20-アルキルアリール基又はC6-20-アリール基又はOY基(YはC1-10-ヒドロカルビル基である。)である。
【0078】
好ましくは、各R11は、独立に、同じであるか又は異なることができ、水素、直鎖の若しくは分岐したC1-C6-アルキル基又はC6-20-アリール基又はOY-基(YはC1-4-ヒドロカルビル基である。)である。より好ましくは、各R11は、独立に、同じであるか又は異なることができ、水素又は直鎖の若しくは分岐したC1-C4-アルキル基又はOY-基(YはC1-4-ヒドロカルビル基である。)である。なおより好ましくは、各R11は、独立に、同じであるか又は異なることができ、水素、メチル、エチル、イソプロピル、tert.-ブチル又はメトキシ、特に水素、メチル又はtert.-ブチルである。
【0079】
アリール基、例えばフェニル基が置換されている場合には、好ましくは1又は2個のR11基により置換される。より好ましくは、フェニル基は2個の基R11により置換され、なおより好ましくは、両R11基が同じであり、例えば3’,5’-ジメチルである。
【0080】
特に好ましい本発明のコンプレックスは下記のものを含む:
rac-ジメチルシランジイル-ビス-[2-メチル-4-(3’5’ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(4’-tert.-ブチルフェニル)-インデン-1-イル][2-メチル-4-(4’-tert.-ブチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(4’-tert.-ブチルフェニル)-インデン-1-イル][2-メチル-4-フェニル-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(3’,5’-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(4’-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジtert-ブチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
又はこれらのHf-アナログ。
【0081】
疑義を避けるために、先に記載した置換基のより狭い定義は、他の置換基のいずれかの広い又はより狭い定義のいずれかと組み合わせることができる。
上記の開示を通して、ある置換基のより狭い定義が示されている場合には、そのより狭い定義は、本出願の他の置換基のすべてのより広い及びより狭い定義と組み合わせて開示されているものとする。
【0082】
上記コンプレックスの形成に必要なリガンド、従って触媒は任意の方法で合成することができ、通常の知識を有する有機化学者は、必要なリガンド物質の製造のための種々の合成プロトコルを案出することができるであろう。例えば、WO2007/116034は必要とされる化学を開示する。合成プロトコルは概してWO2002/02576、WO2011/135004、WO2012/084961、WO2012/001052、WO2011/076780、WO2015/158790及びWO2018/122134中にも見出すことができる。実施例の項においても当業者に十分な情報が提供されている。
【0083】
活性な触媒種を形成するためには、通常、当該技術分野においてよく知られているように、共触媒を用いることが必要である。
好ましいシングルサイト触媒系においては、アルミノキサン共触媒を有する共触媒系が、先に定義したメタロセン触媒コンプレックスと組み合わせて使用される。
【0084】
アルミノキサン共触媒は式(II)のものであることができる:
【化3】
【0085】
(式中、nは6~20であり、Rは下記の意味を有する。)。
【0086】
アルミノキサンは、有機アルミニウム化合物、例えば式AlR3、AlR2Y及びAl2R3Y3(Rは、例えば、C1-C10-アルキル、好ましくはC1-C5-アルキル、又は、C3-C10-シクロアルキル、C7-C12-アリールアルキル若しくは-アルキルアリール及び/又はフェニル若しくはナフチルであることができ、Yは、水素、ハロゲン、好ましくは塩素若しくは臭素、又は、C1-C10-アルコキシ、好ましくはメトキシ若しくはエトキシ、であることができる。)の有機アルミニウム化合物の部分加水分解により形成される。得られた酸素含有アルミノキサンは、一般に純粋な化合物ではなく、式(II)のオリゴマーの混合物である。
【0087】
好ましいアルミノキサンはメチルアルミノキサン(MAO)である。
【0088】
本発明従って共触媒として使用されるアルミノキサンは、その製造態様のために純粋な化合物ではないため、以下において、アルミノキサン溶液のモル濃度はそれらのアルミニウム含量に基づく。
【0089】
共触媒系は、ボロン含有共触媒をアルミノキサン共触媒と組み合わせて有することもできる。
【0090】
関心の対象であるボロン含有共触媒は、式(III)のものを含む。
BY3 (III)
(式中、Yは、同じであるか又は異なり、水素原子、1~約20個の炭素原子のアルキル基、6~約15個の炭素原子のアリール基、アルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキル又はハロアリール(それぞれが、上記アルキル基中に1~10個の炭素原子を有し、上記アリール基中に6-20個の炭素原子を有する。)、又は、臭素、塩素、臭素若しくはヨウ素である。)。Yの好ましい例は、臭素、トリフルオロメチル、p-フルオロフェニル、3,5-ジフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、3,4,5-トリフルオロフェニル及び3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル等の芳香族含フッ素基である。好ましい選択肢は、トリフルオロボラン、トリス(4-フルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,6-トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタ-フルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン及び/又はトリス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボランである。
トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが特に好ましい。
【0091】
しかしながら、ボレート、すなわちボレートを含有する化合物を使用することが好ましい。
これらの化合物は一般に下式のアニオンを含有する:
(Z)4B- (IV)
(式中、Zは置換されていてもよいフェニル誘導体であり、当該置換基は、ハロ-C1-6-アルキル又はハロ基である。)。好ましい選択肢はフルオロ又はトリフルオロメチルである。最も好ましくは、フェニル基は全フッ素置換(perfluorinated)されている。
【0092】
そのようなイオン性共触媒は、好ましくは、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート又はテトラキス(3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート等の弱く配位したアニオンを含有する。適切な対イオンは、メチルアンモニウム、アニリニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、N-メチルアニリニウム、ジフェニルアンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリ-n-ブチルアンモニウム、メチルジフェニルアンモニウム、ピリジニウム、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリニウム又はp-ニトロ-N,N-ジメチルアニリニウム等のプロトン化アミン又はアニリン誘導体である。
【0093】
本発明に従って使用することができる好ましいイオン性化合物は下記のものを含む:
トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(4-フルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジ(プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジ(シクロヘキシル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
又は、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート。
好ましくは、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又は、
N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0094】
驚くべきことに、特定のボロン含有共触媒が特に好ましいことが見出された。従って、好ましいボレートは、トリチル(trityl)、すなわちトリフェニルカルベニウム、イオンを有する。従って、Ph3CB(PhF5)4及びそのアナログを使用することが特に好ましい。
【0095】
共触媒の適切な量は当業者に周知であろう。
好ましくは、共触媒の量は以下に規定するモル比が得られるように選択される。
アルミノキサンからのAlのメタロセンの金属イオン(M)(好ましくはジルコニウム)に対するモル比Al/Mは、1:1~2000:1mol/mol、好ましくは10:1~1000:1、より好ましくは50:1~600:1mol/molの範囲内であってよい。
【0096】
任意のボロン(B)のフィード量のメタロセンの金属イオン(M)(好ましくはジルコニウム)に対するモル比、ボロン/Mは、0.1:1~10:1mol/mol、好ましくは0.3:1~7:1、特に0.3:1~5:1mol/molの範囲内であってよい。
なおより好ましくは、任意のボロン(B)のフィード量のメタロセンの金属イオン(M)(好ましくはジルコニウム)に対するモル比、ボロン/Mは、0.3:1~3:1である。
【0097】
上記のメタロセンコンプレックスは、上記の適切な共触媒の組み合わせと組み合わせて使用される。
好ましい触媒系は担持形態で使用される。使用される具体的な担持物質は、シリカ又はシリカ-アルミナ等の混合酸化物であり、特にシリカである。
シリカ担体の使用が好ましい。メタロセン触媒の担持に必要な手順は当業者に既知である。
【0098】
コンプレックスを担体の細孔内に(例えばWO94/14856、WO95/12622、WO2006/097497及びEP18282666に記載のものと類似の方法を用いて)ロードすることができるように、担体は多孔質材料であることが特に好ましい。
【0099】
シリカ担体の平均粒子径は通常10~100μmであることができる。しかしながら、担体が15~80μm、好ましくは18~50μmの平均粒子径を有する場合に、特に有利であることがわかった。
シリカ担体の平均細孔径は10~100nmの範囲内であることができ、細孔容積は1~3mL/gであることができる。
適切な担持物質の例は、例えば、PQ Corporationにより製造・販売されるES757、Graceにより製造・販売されるSylopol 948、又は、AGC Si-Tech Coにより製造されるSUNSPERA DM-L-303シリカである。触媒製造に使用する前に担体を任意で焼成して、シラノール基含量を最適化してもよい。
これらの担体の使用は当該技術分野においてルーティーンである。
【0100】
触媒は、シリカ1g当たり10~100μmolの遷移金属及びシリカ1g当たり3~15mmolのAlを含むことができる。
【0101】
製造工程:
工程a)
工程a)において、シリカ担体をアルミノキサン共触媒と反応させる。
好ましくは、上記反応は、3~12mmol Al/g SiO2の範囲のアルミノキサン中のAlのシリカ担体に対する合成化学量論量で行われる。
好ましくは、シリカ担体を工程a)の前に焼成し、その表面から水分を除く。焼成温度は通常200~800℃の範囲内、好ましくは400~650℃の範囲内である。
次いで、シリカ担体をトルエン等の適切な炭化水素溶媒中に懸濁する。懸濁は、不活性ガス雰囲気下、例えば窒素下で15℃~25℃の温度で行われる。
シリカ/溶媒、好ましくはシリカ/トルエン懸濁液は、何分間かの間、好ましくは5~60分間、より好ましくは10~30分間撹拌される。
【0102】
次いで、アルミノキサン共触媒、好ましくはMAO(例えば、トルエン中の30wt%溶液として)を、好ましくは3~12mmol Al/g SiO2の化学量論量で、シリカ/トルエン懸濁液に加える。
すべてのアルミノキサン共触媒を工程a)において加えるのではなく、アルミノキサン共触媒の総量の大部分を加えることが好ましい。従って、アルミノキサン共触媒の総量の75.0~97.0wt%、好ましくは77.0~95.0wt%、より好ましくは85.0~92.0wt%を工程a)において加える。
【0103】
アルミノキサン共触媒を加えた後、シリカ/溶媒/アルミノキサン混合物を、80℃~120℃、好ましくは95℃~115℃、より好ましくは100℃~110℃の範囲の温度まで加熱する。
混合物を、数分間から数時間まで、好ましくは60分間から5時間まで、より好ましくは90分間から3時間までこの温度で撹拌する。
【0104】
撹拌を停止した後、このようにして得られたスラリーを沈降させ、母液を例えばろ過又はデカンテーションにより除く。
その後、残ったアルミノキサン共触媒処理シリカ担体を、好ましくは1又は2以上の回数、例えば1又は2回、より好ましくは2回、トルエンで、任意でヘプタンでもう1回、70℃~115℃、好ましくは80℃~110℃、より好ましくは90℃~100℃の範囲内の高温で洗浄する。
【0105】
好ましくは、その後、アルミノキサン共触媒処理シリカ担体を、好ましくは、最初は適切な温度、例えば40~80℃、好ましくは50~70℃、より好ましくは58~62℃にて窒素雰囲気下で、その後真空下で乾燥する。
【0106】
工程b)
工程b)では、先に定義した式(I)のメタロセンコンプレックスをアルミノキサン共触媒とトルエン等の適切な炭化水素溶媒中で反応させる。
好ましくは、工程a)と同じ炭化水素溶媒を使用する。
【0107】
この工程において、アルミノキサン共触媒、好ましくはMAO(例えば、トルエン中の30wt%溶液として)の残りの部分、すなわち、アルミノキサン共触媒の総量の3.0~25.0wt%、好ましくは5.0~23.0wt%、より好ましくは8.0~13.0wt%を、工程b)において式(I)のメタロセンコンプレックスに加え、このようにして得られた溶液を、何分間かの間、好ましくは10~120分間、より好ましくは20~100分間、なおより好ましくは40~80分間撹拌する。撹拌は室温で、例えば15℃~25℃、好ましくは18℃~22℃の温度で行う。
【0108】
任意の工程c)
メタロセン/アルミノキサン共触媒の適切な炭化水素溶媒中の、好ましくはトルエン中の(工程bで調製した)溶液に、任意で、(シングルサイト触媒系中に存在する場合には)ボロン含有共触媒、例えばボレート共触媒を加えて、式(I)のメタロセンコンプレックス、ボロン含有共触媒及びアルミノキサン共触媒の適切な炭化水素溶媒中の、好ましくはトルエン中の溶液を得る。
【0109】
ボロン含有共触媒は、フィード量のボロン/Mモル比が0.1:1~10:1の範囲内になるような量で加える。好ましくは、フィード量のモル比 ボロン/Mは、0.3:1~7:1、より好ましくは0.3:1~5.0:1、最も好ましくは0.3:1~3:1の範囲内である。MはHf又はZr、好ましくはZrである。
【0110】
このようにして得られた溶液を何分間かの間、好ましくは10~120分間、より好ましくは20~100分間、なおより好ましくは40~80分間さらに撹拌する。撹拌は15℃~25℃、好ましくは18℃~22℃の温度で行う。
【0111】
任意の工程d)
次いで、工程c)で得られた溶液を、工程a)で得られたアルミノキサン共触媒処理担体に加えて、担持触媒系を得る。
【0112】
工程c)及びd)は、アルミノキサン共触媒に加えてボロン含有共触媒を有する共触媒系を有するシングルサイト触媒系に適用される。アルミノキサン共触媒のみを有する共触媒系を有するシングルサイト触媒系については、工程c)及びd)は省略される。
【0113】
工程e)
最後の工程では、任意で、このようにして得られた担持触媒系をトルエン又はヘプタン等の適切な炭化水素溶媒で洗浄し、次いで、乾燥、好ましくは真空下で乾燥することができ、流動性粉末(free flowing powder)を得る。
【0114】
シリカ担体、アルミノキサン、好ましくはMAO、任意のボロン含有共触媒及びメタロセンの量は、先に定義した比率の所望の値に依存する(Al/M、Al/SiO2、M/SiO2、任意のボロン/M(MはHf又はZr、好ましくはZrである。))。
【0115】
- 回収プロピレンポリマー
本発明の製法(プロセス)の工程b)における重合工程から回収されるプロピレンポリマーは、本明細書において、「回収プロピレンポリマー」又は単に「プロピレンポリマー」と記載する。
【0116】
プロピレンポリマーは、好ましくは、先述のプロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーである。
プロピレンホモポリマーである場合には、プロピレンホモポリマーが94%を超える、より好ましくは95~99%のペンタッドアイソタクティシティー(pentad isotacticity)を有することがさらに好ましい。プロピレンホモポリマーは、さらに好ましくは、0.2~2.0mol%の範囲内、より好ましくは0.4~1.6mol%の範囲内の含量の2,1レギオ欠陥を有する。
【0117】
好ましくは、プロピレンポリマーは、プロピレンポリマーの総重量に対して、ISO16152(25oC)に従って測定した、2.5wt%未満、より好ましくは0.5~2.3wt%、なおより好ましくは0.6~2.1wt%の量の冷キシレン可溶(XCS)分を有する。
【0118】
さらに、プロピレンポリマーは、好ましくは、0.5~10.0g/10min、より好ましくは0.8~8.0g/10min、なおより好ましくは1.0~7.5g/10min、最も好ましくは1.5~7.0g/10minのメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)を有する。
【0119】
本発明のプロピレンポリマーの空隙率(porosity)及び比細孔容積(specific pore volume)は、DIN66137-2に従うヘリウム密度測定と組み合わせたDIN66133に従う水銀圧入法(mercury porosimetry)により測定される。空隙率は等式(II)により下記のように算出される:
【数1】
【0120】
本発明のプロピレンポリマーの空隙率は、10.0%未満、好ましくは0.2~9.0%の範囲内、より好ましくは0.4~8.0%の範囲内である。本発明のプロピレンポリマーの比細孔容積は一般に、0.12cm3/g未満、好ましくは0.10cm3/g未満、より好ましくは0.08cm3/g未満である。態様によっては、比細孔容積は検出不可能である。
【0121】
本発明によれば、プロピレンポリマーのメディアン(median)粒子径d50及びトップカット(top-cut)粒子径d95は、ISO3310に従うふるい分析により測定され、ISO9276-2に従って評価される。メディアン粒子径d50は、150~1000μm、好ましくは200~800μm、なおより好ましくは250~600μm、最も好ましくは260~500μmの範囲内である。トップカット粒子径d95は、500~2500μm、好ましくは550~2000μm、なおより好ましくは600~1500μm、最も好ましくは650~900μmの範囲内である。
【0122】
プロピレンポリマーは、分子量分布の観点及び/又はコモノマー含量分布の観点において(後者はプロピレンコポリマーの場合のみ)、ユニモーダル又はマルチモーダルであることができる。
【0123】
プロピレンポリマーが分子量分布及び/又はコモノマー含量に関してユニモーダルである場合には、単一段階プロセス、例えば、それぞれスラリー又は気相リアクター内のスラリー又は気相法で製造してよい。
【0124】
好ましくは、ユニモーダルプロピレンポリマーはスラリーリアクター内で製造される。
あるいは、ユニモーダルプロピレンポリマーは、類似のポリマー特性が得られるプロセス条件を各段階で用いて、多段階プロセスで製造してよい。
【0125】
本明細書で使用される「マルチモーダル」又は「バイモーダル」という表現は、ポリマーのモダリティ(modality)を意味し、すなわち、
- 分子量の関数としての分子量画分のグラフ表示であるポリマーの分子量分布曲線の形状
又は、
- ポリマーフラクションの分子量の関数としてのコモノマー含量のグラフ表示であるコポリマーのコモノマー含量分布曲線の形状、
である。
【0126】
先に説明されるように、プロピレンポリマーのポリマーフラクションは、直列に構成され、異なる反応条件で作動するリアクターを用いて、逐次工程プロセスで製造することができる。結果的に、特定のリアクターで製造される各フラクションは、製造されるプロピレンポリマーのタイプ(プロピレンホモポリマー又はコポリマー)に応じて、それ自体の分子量分布及び/又はコモノマー含量分布を有する。最終ポリマーの分子量分布曲線又はコモノマー含量分布曲線を得るために、これらのフラクションの分布曲線(分子量又はコモノマー含量)を重ね合わせると、これらの曲線は、2又はそれより多くの極大値を示すか、又は、個々のフラクションに対する曲線と比較して、少なくとも明らかに幅が広くなっているかもしれない。2又は3以上の直列的な工程で製造されたそのようなポリマーは、工程の数に応じて、バイモーダル又はマルチモーダルと呼ばれる。従って、上記プロピレンポリマーは、製造されるプロピレンポリマーのタイプ(プロピレンホモポリマー又はコポリマー)に応じて、分子量及び/又はコモノマー含量の観点において、マルチモーダル、例えばバイモーダルであってよい。
【0127】
プロピレンコポリマーがマルチモーダル性、例えばバイモーダル性である場合、コモノマー含量の観点からは、個々のフラクションが材料の特性に影響を及ぼす量で存在することが好ましい。従って、これらのフラクションの各々が、プロピレンコポリマーに対して少なくとも10wt%の量で存在することが好ましい。従って、バイモーダル系の場合、特にコモノマー含量の観点から、2つのフラクションの割合は、好ましくは40:60~60:40、例えば大体50:50である。
【0128】
プロピレンポリマーは、過酸化物の存在下で、押出工程の間に修飾され、本発明の製法のプロセス工程c)において長鎖分岐がプロピレンポリマー中に導入される。
【0129】
- 押出工程における長鎖分岐の導入
プロピレンポリマーの反応性修飾(reactive modification)により長鎖分岐をプロピレン中に導入する。この反応性修飾プロセスもまた本発明の一部である。長鎖分岐プロピレンポリマーを製造するための反応性修飾は、好ましくは、プロピレンポリマーの熱分解フリーラジカル発生剤(thermally decomposing free radical-forming agent)との反応により行われる。
【0130】
反応性修飾には、
a) 少なくとも1種の二官能性不飽和モノマー及び/又はポリマー、又は、
b) 少なくとも1種の多官能性不飽和モノマー及び/又はポリマー、又は、
c) (a)と(b)の混合物
から選択される官能性不飽和化合物が存在しないことが特に好ましい。上記の「二官能性不飽和又は多官能性不飽和」は、それぞれ2又は3種以上の非芳香性二重結合の存在を意味する。例は、例えば、ジビニルベンゼン、シクロペンタジエン又はポリブタジエンである。
【0131】
長鎖分岐プロピレンポリマーの製造のための反応性修飾工程は、好ましくは、本発明の製法のプロセス工程b)で回収されたプロピレンポリマーを溶融混錬装置内に導入し、さらに過酸化物等の熱分解フリーラジカル発生剤を当該溶融混錬装置内に導入し、プロピレンポリマーと熱分解フリーラジカル発生剤を当該溶融混錬装置内で160~280℃、より好ましくは170~270℃、最も好ましくは180~235℃の範囲内のバレル温度にて溶融混錬する工程を有する。
【0132】
当該溶融混錬装置としては、例えば、単軸スクリュー押出機、同方向回転二軸スクリュー押出機又は同方向回転ニーダー等の連続溶融混錬装置が適切である。好ましくは、溶融混錬装置は、フィードゾーン、混錬ゾーン及びダイゾーンを有する。より好ましくは、溶融混錬装置のスクリューに沿って、フィードゾーンにおける初期温度T1、混錬ゾーンにおける中間温度T2及びダイゾーンにおける最終温度T3を有する特定の温度プロファイルが維持され、すべての温度はバレル温度として定義される。(フィードゾーンにおける)バレル温度T1は、好ましくは160~220℃の範囲内である。(混錬ゾーンにおける)バレル温度T2は、好ましくは180~260℃の範囲内である。(ダイゾーンにおける)バレル温度T3は、好ましくは210~270℃の範囲内である。溶融混錬装置のスクリュースピードは材料特性に応じて調節することができる。当業者はこの点に精通しており、適切なスクリュースピードを容易に決定することができる。一般に、スクリュースピードは、100~750回転/分(rpm)の範囲、好ましくは150~650回転/分の範囲(rpm)の範囲に調節することができる。溶融混錬工程に続いて、得られた長鎖分岐プロピレンホモポリマー又はコポリマーメルトは、例えば、水中ペレタイザー内で、又は、1又は2以上のストランドをウォーターバス内で固化した後、ストランドペレタイザー内でペレット化することができる。
【0133】
プロピレンポリマーと熱分解フリーラジカル発生剤は、溶融混錬装置内に導入する前に、予備混合工程において低温で予備混合しないことが特に好ましい。さらに、上記の官能性不飽和化合物を溶融混錬装置に加えないことが特に好ましい。
【0134】
長鎖分岐プロピレンポリマーの製造のための反応性修飾において、プロピレンポリマーは、100重量部のプロピレンポリマー当たり0.10~5.00重量部(ppw)の過酸化物と、好ましくは100重量部のプロピレンポリマー当たり0.30~3.50重量部(ppw)の過酸化物と、より好ましくは100重量部のプロピレンポリマー当たり0.50~3.00重量部(ppw)の過酸化物の存在下で、最も好ましくは100重量部のプロピレンポリマー当たり0.70~2.00重量部(ppw)の過酸化物の存在下で、混合されることが適切である。
【0135】
熱分解フリーラジカル発生剤は通常は過酸化物である。
【0136】
本発明の製法において、過酸化物は、好ましくは、先に規定した160から280℃のバレル温度において、6分以下の半減時間(t1/2)を有するものが選択される。ここで、半減時間は、所定の温度で、組成物の最初の過酸化物含量を50%減少させるのに必要な時間であり、当該過酸化物の反応性を示す。
【0137】
好ましい過酸化物は、ジアルキルペルオキシジカーボネート等のジアルキルペルオキシドの群から選択される。ジアルキルペルオキシジカーボネートの適切な例は、ジ-(C2-20)-アルキルペルオキシジカーボネート、好ましくはジ-(C4-16)-アルキルペルオキシジカーボネート、より好ましくはジ-(C8-14)-アルキルペルオキシジカーボネートである。特に好ましくは、ジ-(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート及びジミリスチルペルオキシカーボネートである。とりわけ好ましくはジセチルペルオキシジカーボネートである。
【0138】
押出及び修飾工程c)においては、上記の添加剤及び/又はポリマー性化合物等の他の成分も溶融混錬装置に加えることができる。これらの任意成分は溶融混錬装置内に例えばサイドフィーダーを介して導入することができる。
【0139】
先に記載し又は以下に記載するように、当該押出及び修飾工程c)からプロピレンポリマー組成物が回収される。
【0140】
- 回収プロピレンポリマー組成物
本発明の製法のプロセス工程d)の回収プロピレンポリマー組成物は、好ましくは、プロセス工程b)の回収プロピレンポリマーと比べて低いメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)を有する。
これは驚くべきことと言える。なぜならば、EP3018153A1及びEP3018154A1に記載される高溶融強度(HMS)ポストリアクター修飾法においては、リアクターベースのプロピレンポリマーと比べて、得られたプロピレンポリマー組成物のメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)の増大が観察されているからである。この驚くべき知見により、プロセス工程b)の回収プロピレンポリマーはより広いMFR範囲を有することが可能となり、結果として、より高いMFRを有するプロピレンポリマーを使用できることにより、より温和な溶融混錬条件が可能となる。
【0141】
回収プロピレンポリマー組成物は、プロセス工程c)において長鎖分岐したプロピレンポリマーを、少なくとも95.0wt%、より好ましくは少なくとも99.0wt%、最も好ましくは少なくとも99.005wt%有することが好ましい。
好ましくは、本発明の製法のプロセス工程d)の回収プロピレンポリマー組成物は、先に記載し又は以下に記載するすべての特性を有する本発明のプロピレンポリマー組成物を意味する。
【0142】
物品
本発明はさらに、先に又は以下に定義するプロピレンポリマー組成物を有する物品に関する。
【0143】
物品は、好ましくは、フィルム、発泡体及び成形品から、特に軽量用途、自動車用途及び食品包装用途等の包装用途のフィルム、発泡体及び成形品から選択される。
【0144】
好ましくは、本発明の物品は、少なくとも70.0wt%、より好ましくは少なくとも80.0wt%、最も好ましくは少なくとも90.0wt%、なお最も好ましくは少なくとも95.0wt%の本発明のプロピレンポリマー組成物を有する。上記の重量(wt%)は、上記物品に含まれる熱可塑性物質の合計に基づいて算出される。好ましい態様において、物品は本発明のプロピレンポリマー組成物からなる。
【0145】
本発明のプロピレンポリマー組成物を有するフィルム、発泡体及び成形品を製造する方法は、当該技術分野において周知である。
【0146】
使用
本発明はさらに、物品の製造のための、先に又は以下に定義するプロピレンポリマー組成物の使用に関する。
当該物品は、先に又は以下に記載したように、好ましくは、フィルム、発泡体及び成形品から、特に軽量用途、自動車用途及び食品包装用途等の包装用途のフィルム、発泡体及び成形品から選択される。
【0147】
最後に、本発明は、プロピレンポリマー組成物の溶融強度を増大させるための、先に又は以下に定義する製法の使用に関する。
好ましくは、当該プロピレンポリマー組成物は、先に記載し又は以下に記載するすべての特性を有する本発明のプロピレンポリマー組成物を意味する。
【実施例】
【0148】
1. 測定方法
a) メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)はISO1133に従って測定し、g/10minで示す。MFRは流動性の指標であり、従ってポリマーの加工性の指標である。メルトフローレートが高い程、ポリマーの粘度は低くなる。ポリプロピレンのMFR2は、230℃の温度及び2.16kgの負荷の下で測定される。
【0149】
b) 粒子径/粒子径分布
ISO3310に従うふるい分析をポリマー試料に対して行った。ふるい分析には下記のサイズの金網ふるい(wire mesh screen)を有するふるいの入れ子構造になったカラムを用いた:>20μm、>32μm、>63μm、>100μm、>125μm、>160μm、>200μm、>250μm、>315μm、>400μm、>500μm、>710μm、>1mm、>1.4mm、>2mm、>2.8mm。試料を最大サイズの篩目を有する一番上のふるいに注いだ。カラム中の下側のふるいの各々は、その上のふるいよりも小さな篩目を有する(上記のサイズを参照されたい。)。底部には受器がある。カラムをメカニカルシェイカー内に置いた。カラムをシェイカーにより振動させた。振動完了後、各ふるい上の物質を重量計測した。次いで、各ふるいの試料の重量を総重量で割って、各ふるい上に保持された百分率を求めた。粒子径分布及び特徴的なメディアン粒子径d50並びにトップカット粒子径d95を、ISO9276-2に従ってふるい分析の結果から決定した。
【0150】
c) XHU分。ゲル含量
熱キシレン不溶(XHU)分はEN579に従って測定する。約2.0gのポリマー(mp)を重量計測し、重量計測した金網内に入れる。総重量は(mp+m)で表される。金網内のポリマーをソックスレー抽出器(soxhlet apparatus)内で沸騰キシレンにより5時間抽出する。次いで、溶出液を新しいキシレンで置き換え、さらに1時間沸騰を続ける。続いて、金網を乾燥し、再度重量計測する(mXHU+m)。式mXHU+m-mm=mXHUにより得られた熱キシレン不溶物の量(mXHU)のポリマーの重量(mp)に対する割合を求め、キシレン不溶分mXHU/mpを得る。
【0151】
d) F
30
溶融強度及びv
30
溶融伸展性
本明細書に記載する試験はISO16790:2005に従う。ひずみ硬化挙動は、論文「Rheotens-Mastercurves and Drawability of Polymer Melts」、M.H.Wagner、Polymer Engineering and Sience、Vol.36、925~935頁に記載の方法により測定する。ポリマーのひずみ硬化挙動はRheotens装置(Goettfert、Siemensstr.2、74711 ブーヒェン、ドイツの製品)を用いて分析し、つまり溶融ストランドを既定の加速で引き出すことにより伸長させる。Rheotens実験は工業的スピニング及び押出プロセスを模倣するものである。原理的には、メルトを丸ダイス(round die)を通して押圧又は押し出し、得られるストランドを引っ張る。押出成形物の応力をメルト特性及び測定パラメータの関数として記録する(特に、アウトプットと引張速度の比、実際には伸び率に対する測定値)。
【0152】
実験用押出機、HAAKE Polylabシステム及び筒状ダイ(cylindrical die)(L/D=6.0/2.0mm)を備えたギヤポンプを用いて材料を押し出した結果を以下に記載する。ギヤポンプを5mm/sのストランド押出速度に予め調整し、メルト温度を200℃に設定した。ダイとRheotensホイールの間のスピンライン長(spinline length)は80mmであった。実験の開始時に、Rheotensホイールの巻き取り速度を押し出されるポリマーストランドの速度に調節した(引っ張り力0)。次いで、Rheotensホイールの巻き取り速度をポリマーフィラメントが破断するまでゆっくりと増大させることにより実験を開始した。ホイールの加速は十分に小さく、ほぼ定常的な条件下で引っ張り力を測定した。溶融ストランド引き出しの加速は120mm/sec2である。RheotensはPCプログラムEXTENSと組み合わせて作動させた。これはリアルタイムデータ取得プログラムであり、引っ張り力及び引き出し速度の測定データを表示し保存する。Rheotens曲線のエンドポイント(力対プーリ回転速度)をF30溶融強度及び伸張性値とする。
【0153】
e) 冷キシレン可溶分(XCS、wt%)
キシレン中へのポリマー可溶物の量は、25.0℃でISO16152;第5版;2005-07-01に従って測定する。
【0154】
f) 溶融温度
溶融温度Tmは、RSC冷凍装置及びデータステーションを備えたTA-Instruments 2920 Dual-Cellを用いて、ISO11357-3に従って示差走査熱量定(DSC)により測定される。+23から+210℃の間の加熱/冷却/加熱サイクルにおいて、10℃/分の加熱及び冷却速度を適用する。結晶化温度(Tc)は冷却工程から決定し、溶融温度(Tm)及び融解エンタルピー(Hm)は第2加熱工程において決定される。
【0155】
g) 空隙率及び比細孔容積
ポリマーの空隙率及び比細孔容積は、DIN66137-2に従うヘリウム密度測定と組み合わせたDIN66133に従う水銀圧入法により測定される。まず最初に試料を加熱キャビネット内で70℃にて3時間乾燥し、次いで測定まで乾燥器内に保存した。試料の純粋密度をQuantachrome Ultrapyknometer 1000-T内で破砕粉末(milled powder)についてヘリウムを用いて25℃にて測定した(DIN66137-2)。水銀圧入法をQuantachrome Poremaster 60-GT内でDIN66133に従って非破砕粉末について行った。
【0156】
【0157】
h) NMR分光法による微細構造の定量
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を使用して、プロピレンホモポリマーのアイソタクティシティ及びレギオ規則性(regio-regularity)を定量した。
1H及び13Cについてそれぞれ400.15MHz及び100.62MHzで動作するBruker Advance III 400NMR分光器を使用して、定量的13C{1H}NMRスペクトルを溶液状態で記録した。13Cに最適化された動作温度範囲の広い10mmのプローブヘッドを使用して、125℃で、すべてのガス流に窒素ガスを使用して、すべてのスペクトルを記録した。
【0158】
プロピレンホモポリマーについては、約200mgの材料を、1,2-テトラクロロエタン-d2(TCE-d2)中に溶解させた。確実に均質な溶液とするために、ヒートブロックにおいて初期試料を調製した後、NMRチューブを回転炉内で少なくとも1時間、さらに加熱した。マグネット内に挿入後速やかにチューブを10Hzで回転させた。主に、タクティシティ分布定量に必要な高分解能を得るためにこの構成を選択した(Busico、V.、Cipullo、R.、Prog.Polym.Sci.26(2001)443;Busico、V.;Cipullo、R.、Monaco、G.、Vacatello、M.、Segre、A.L.、Macromolecules 30(1997)6251)。NOE及びバイレベルWALTZ16デカップリング法を使用して、標準的なシングルパルス励起を用いた(Zhou、Z.、Kuemmerle、R.、Qiu、X.、Redwine、D.、Cong、R.、Taha、A.、Baugh、D.Winniford、B.、J.Mag.Reson.187(2007)225;Busico、V.、Carbonniere、P.、Cipullo、R.,Pellecchia、R.、Severn、J.、Talarico、G.、Macromol.Rapid Commun.2007、28、11289)。1スペクトル当たり合計8192(8k)の過渡応答が得られた。
【0159】
定量的13C{1H}NMRスペクトルを処理し、積分し、独自開発したコンピュータプログラムを使用して積分値から関連する定量的特性を決定した。
プロピレンホモポリマーに関して、すべての化学シフトは、内部標準として21.85ppmのメチルアイソタクティックペンタッド(mmmm)を基準とする。
【0160】
レギオ欠陥に対応する特徴的シグナル(Resconi,L.、Cavallo,L.、Fait,A.、Piemontesi,F.、Chem.Rev.2000、100、1253;Wang,W-J.、Zhu,S.、Macromolecules 33(2000)、1157;Cheng,H.N.、Macromolecules 17(1984)、1950)又はコモノマーを観測した。
【0161】
23.6ppm~19.7ppmの間のメチル領域の積分によりタクティシティ分布を定量し、目的の立体シーケンスに関連しない部位を補正した(Busico,V.、Cipullo,R.、Prog.Polym.Sci.26(2001)443;Busico,V.、Cipullo,R.、Monaco,G.、Vacatello,M.、Segre,A.L.、Macromoleucles 30(1997)6251)。
【0162】
詳細には、タクティシティ分布の定量に対するレギオ欠陥及びコモノマーの影響は、立体シーケンスの特定の積分領域から代表的なレギオ欠陥及びコモノマー積分値を減算することにより補正した。
【0163】
アイソタクティシティをペンタッドレベルで決定し、すべてのペンタッドシーケンスに対するアイソタクティックペンタッド(mmmm)シーケンスの百分率としてレポートした:
[mmmm]%=100*(mmmm/すべてのペンタッドの合計)
【0164】
2,1エリスロレギオ欠陥(erythro regio defect)の存在は、17.7ppm及び17.2ppmの2つのメチル部位の存在により示され、他の特徴的部位により確認された。他のタイプのレギオ欠陥に対応する特徴的シグナルは観測されなかった(Resconi,L.、Cavallo,L.、Fait,A.、Piemontesi,F.、Chem.Rev.2000、100、1253)。
【0165】
2,1エリスロレギオ欠陥の量は、17.7ppm及び17.2ppmの2つの特徴的メチル部位の平均積分値を使用して定量した:
P21e=(Ie6+Ie8)/2
【0166】
1,2一次挿入された(primary inserted)プロペンの量をメチル領域に基づいて定量し、一次挿入(primary insertion)に関連しないこの領域中に含まれる部位について、及びこの領域から除外される一次挿入部位について補正を行った:
P12=ICH3+P12e
【0167】
一次挿入プロペン及びすべての他の存在するレギオ欠陥の合計として、プロペンの全量を定量した:
Ptotal=P12+P21e
【0168】
すべてのプロペンに関して2,1エリスロレギオ欠陥のモルパーセントを定量した:
[21e]mol%=100*(P21e/Ptotal)
【0169】
2. プロピレンポリマーの製造
a)
シングルサイト触媒系1の製造
- 触媒コンプレックス
本発明実施例IE1~IE3並びに比較例CE1で使用したプロピレンホモポリマーの重合プロセスで使用した触媒コンプレックスは下記のものである:
【化4】
【0170】
メタロセン(MC1)(rac-anti-ジメチルシランジイル(2-メチル-4-フェニル-5-メトキシ-6-tert-ブチル-インデニル)(2-メチル-4-(4-tert-ブチルフェニル)インデニル)ジルコニウムジクロリド)は、WO2013/007650、E2に記載の通りに合成した。
【0171】
触媒系は、メタロセンMC1及びMAOの共触媒系を用いて製造した。触媒はシリカに担持させた。
【0172】
- MAO-シリカ担体の製造
メカニカルスターラー及びフィルターネットを備えたスティールリアクターを窒素でフラッシュし、リアクター温度を20℃に設定した。次に、600℃で予備焼成したAGC Si-Tech CoのシリカグレードDM-L-303(7.4kg)を供給ドラムから加え、次いで、手動バルブを用いて窒素で注意深く加圧及び減圧を行った。次に、トルエン(32.2kg)を加えた。混合物を15分間撹拌した(40rpm)。次に、Lanxessのトルエン(17.5kg)中のMAOの30wt%溶液を、リアクター頂部の12mmラインを介して70分以内に加えた。次いで、反応混合物を90℃まで加熱し、90℃にてさらに2時間撹拌した。スラリーを沈降させ、母液をろ過した。MAO処理シリカ担体を、トルエン(32.2kg)で2回、90℃で洗浄し、次いで沈降させ、ろ過した。リアクターを60℃に冷却し、固形物をヘプタン(32.2kg)で洗浄した。最後にMAO処理SiO2を、2kg/hの窒素流、0.3bargの圧力の下で60℃にて2h、次いで真空下(-0.5barg)で5rpmで撹拌しながら5時間乾燥した。MAO処理担体を流動性白色粉末として集め、12.7重量%のAlを含むことがわかった。
【0173】
- シングルサイト触媒系1の製造:
窒素を充填したグローブボックス内で、乾燥トルエン(1mL)中のMAOの溶液0.25mL(トルエン中30%wt、AXION 1330 CA Lanxess)を、メタロセンMC1のアリコート(30.0mg、38μmol)に加えた。混合物を室温で60分間撹拌した。次に、溶液を上記のように製造した1.0gのMAO処理シリカにゆっくりと加え、それをガラスフラスコ内に置いた。混合物を一晩静置し、5mLのトルエンで洗浄し、次いで1時間真空乾燥してピンク色の流動性粉末とし、1.1gの触媒をピンク色の流動性粉末として得た。
【0174】
触媒系1は、12.5wt%のAl含量、0.248wt%のZr含量及び170mol/molのAl/Zrモル比を有する。
【0175】
b) Ziegler-Natta触媒系2の製造
比較例CE2で使用したプロピレンホモポリマーの重合プロセスで使用したZiegler-Natta触媒系は下記の通りに製造した:
【0176】
3.4リットルの2-エチルヘキサノール及び810mlのプロピレングリコールブチルモノエーテル(モル比4/1で)を、20lリアクターに加えた。次いで、Crompton GmbHにより供給された、トルエン中のBEM(ブチルエチルマグネシウム)の20%溶液7.8リットルを、よく撹拌したアルコール混合物中にゆっくりと加えた。添加中の温度を10℃に維持した。添加後、反応混合物の温度は60℃に上昇し、混合をこの温度で30分間続けた。最後に、室温に冷ました後、得られたMg-アルコキシドを保存容器に移した。
【0177】
上記で製造した21.2gのMgアルコキシドを、4.0mlのビス(2-エチルヘキシル)シトラコネートと5分間混合した。混合後、得られたMgコンプレックスを速やかに触媒成分の製造に使用した。
【0178】
19.5mlの四塩化チタンを、メカニカルスターラーを備えた300mlリアクター内に25℃にて入れた。混合速度を170rpmに調整した。上記で製造したMg-コンプレックス26.0gを、温度を25℃に保ちながら30分以内に加えた。3.0mlのViscoplex(登録商標)1-254、及び、2mgのNecadd 447(商標)を含む1.0mlのトルエン溶液を加えた。次いで、24.0mlのヘプタンを加えて、乳濁液を形成させた。混合を25℃で30分間続け、その後リアクター温度を30分以内に90℃に上昇させた。反応混合物を90℃でさらに30分間撹拌した。その後に撹拌を停止し、反応混合物を90℃で15分間沈降させた。固形物質を5回洗浄した:洗浄は、撹拌下、80℃で30分間、170rpmで行った。撹拌を停止した後、反応混合物を20~30分間沈降させ、次いでサイフォンで吸引した。
【0179】
洗浄1:洗浄を100mlのトルエンと1mlの供与体の混合物で行った。
洗浄2:洗浄を30mlのTiCl4と1mlの供与体の混合物で行った。
洗浄3:洗浄を100mlのトルエンで行った。
洗浄4:洗浄を60mlのヘプタンで行った。
洗浄5:10分間の撹拌中に洗浄を60mlのヘプタンで行った。
【0180】
その後、撹拌を停止し、温度を70℃に下げながら反応混合物を10分間沈降させ、次いでサイフォンで吸引し、その後N2スパージングを20分間行い、空気感受性の粉末を得た。
【0181】
c) プロピレンポリマーPP-1の重合
プロピレンポリマーPP-1を、撹拌器、モノマー及び水素用のライン、排出ライン、及び、触媒及び捕捉剤のフィードシステムを備えた5リットルのジャケット付ステンレスリアクター内で製造した。
【0182】
触媒フィーダーは直列に2つのステンレスシリンダーを有する。グローブボックス内で、所望の量の触媒をフィーダーの下側スティールシリンダー内に投入し、5mlの乾燥ペンタンを含む第2シリンダーを上に取り付けた。捕捉剤フィーダーのスティールシリンダーを250μlのトリエチルアルミニウム(Lanxessから購入;商品名TEA-S)及び5mlの乾燥ペンタン(Scharlauから購入;試薬グレード≧99%)で充填した。グローブボックスの外において、フィードシリンダーをリアクターに取り付け、接続部を窒素でフラッシュした。リアクター温度は20℃に制御した。捕捉剤フィーダーの内容物を、圧力をかけて窒素を用いてリアクター内にフラッシュした。次いで、所望の量の水素(25mmol)、次いで1400gの液体プロピレンをリアクター内に供給した。撹拌速度は400rpmに設定した。リアクター温度を20℃に安定化させ、少なくとも5分経過した後に、触媒を以下に記載するようにリアクター内に注入することにより重合を開始した。触媒フィーダーの2つのシリンダーの間のバルブを開け、次いで、速やかに触媒を、圧力をかけて窒素を用いてリアクター内にフラッシュした。フィーダーを窒素で3回加圧し、リアクター内にフラッシュした。
【0183】
20℃で5分間予備重合を行った後、リアクター温度を15~18分間にわたって70℃に上昇させた。重合を70℃で60分間続け、次いで、リアクターを常圧に開放することにより停止した。リアクターを窒素で数回フラッシュした後にポリマーを集め、一晩放置して乾燥させ、次いで重量測定して収量を記録した。
【0184】
d) プロピレンホモポリマーPP-2の重合
プロピレンポリマーPP-2を、予備重合リアクター、1つのスラリーループリアクター及び1つの気相リアクターを有するパイロットプラント内で製造した。上記のZiegler-Natta触媒系2を、共触媒としてのトリエチル-アルミニウム(TEAL)及び外部供与体としてのジシクロペンチルジメトキシシラン(D-供与体)とともに使用した。供与体に対する共触媒の比、チタンに対する共触媒の比及び重合条件を表1に示す。
【0185】
【0186】
e) PP-1及びPP-2のポリマー粉末の特性
リアクターで製造したポリマー粉末並びにPP-1及びPP-2のポリマーは、以下の表2に開示する下記の特性を有する。
【0187】
【0188】
3. 反応性修飾
発明実施例IE1、IE2及びIE3並びに比較例CE2のプロピレンポリマー組成物の製造ために、Perkadox 24L(ジセチルペルオキシジカーボネート、AkzoNobel Polymer Chemistryから市販)を過酸化物として用いて、プロピレンポリマーPP-1及びPP-2を反応性修飾に付した。例えばEP3018153A1及びEP3018154A1に開示するように、二官能性剤をプロピレンポリマーに予備混合しなかった。代わりに、プロピレンポリマーと過酸化物を、酸化防止剤Irganox B215(BASF SEから市販)及びステアリン酸カルシウム及び酸捕捉剤ADK STAB HT(Adeka Palmaroleから市販)の添加剤パッケージとともに、18mmのバレル直径及び40のL/D比を有し、2つの混錬ゾーン及び真空脱気設備を有する高強度混合スクリューを備えたCoperion ZSK18型の同方向回転二軸スクリュー押出機内で、溶融混錬工程において混合した。フィードゾーンにおける初期温度T1=180℃、最終混錬ゾーンにおける中間温度T2=200℃及びダイゾーンにおける最終温度T3=230℃を有する溶融温度プロファイルを選択し、すべての温度はバレル温度と定義される。スクリュースピードは400rpmに設定した。
【0189】
比較例CE1のプロピレンポリマー組成物の製造においては、プロピレンポリマーPP-1を反応性修飾なしで上記のように溶融混錬した。
【0190】
溶融混錬工程に続いて、得られたポリマーメルトを、ウォーターバス内でストランドを固化した後、ストランドペレタイザー内で40℃の水温でペレット化した。反応条件及び得られたプロピレンポリマー組成物の特性を表3に要約する。
【0191】
【0192】
簡易化反応性修飾プロセスにより、長鎖分岐プロピレンホモポリマーを有するプロピレンポリマー組成物を得ることができ、それは低溶融及び結晶化温度並びに高溶融強度について、特性のバランスが改善されていることがわかる。反応性修飾プロセスはプロピレンポリマー組成物のメルトフローレートを減少させ、このことは成形用途に特に有益である。なぜならば、より高いメルトフローレートを有するプロピレンベースポリマーの使用を可能にするからである。