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  • 特許-AIを用いた類似デザイン判定システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】AIを用いた類似デザイン判定システム
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20230718BHJP
   A61B 5/372 20210101ALI20230718BHJP
【FI】
G06N20/00 130
A61B5/372
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022011366
(22)【出願日】2022-01-28
【審査請求日】2022-03-29
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】398009878
【氏名又は名称】有賀 俊二
(72)【発明者】
【氏名】有賀 俊二
【審査官】山本 俊介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-212772(JP,A)
【文献】特開2014-115913(JP,A)
【文献】特開2017-76193(JP,A)
【文献】国際公開第2021/144938(WO,A1)
【文献】株式会社マクニカ,InnerEye Sense I プラットフォーム,[online],2020年11月02日,https://www.macnica.co.jp/business/ai/manufacturers/innereye/products/134586/,[2023年5月30日検索]
【文献】今泉 敏,音声コミュニケーション研究の現在と未来,2017年 春季研究発表会講演論文集CD-ROM,日本,日本音響学会,2017年03月,pp.1381-1384,特に、p.1382 右段 第4-6行
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00 -99/00
A61B 5/055
A61B 5/369-5/386
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視覚認識によるデザインの類似認識時及び非類似認識時の脳波データを教師データとして学習させ、デザインの類似認識と非類似認識の脳波データの特徴量から、デザイン類似性判定モデルを機械学習により生成するモデル生成手段と、元デザインと類似判定用デザインを同時に視覚認識したときの脳波データの入力を受け付ける入力受付手段と、前記のモデル生成手段により生成されたデザイン類似性判定モデルを用いて、前記受付手段が受け付けた前記の脳波データを解析し、前記の元デザインに対して類似判定用デザインが類似かどうかを判定する類似性判定手段と、を備えることを特徴とするAIを用いた類似デザイン判定システム。
【請求項2】
前記の類似認識時の脳波データは、視覚認識により同じデザインと認識したとき及び同じではないがよく似ているデザインと認識したときの2種類の脳波データであることを特徴とする請求項1に記載のAIを用いた類似デザイン判定システム。
【請求項3】
前記の非類似認識時の脳波データは、視覚認識により全く違うデザインと認識したとき及び少し似ているデザインと認識したときの2種類の脳波データであることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかの項に記載のAIを用いた類似デザイン判定システム。
【請求項4】
前記の脳波データの特徴量は、脳波計による波形の特徴であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のAIを用いた類似デザイン判定システム。
【請求項5】
前記の脳波データの特徴量は、感情2次元モデルによる可視化の特徴であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のAIを用いた類似デザイン判定システム。
【請求項6】
前記の視覚認識によるデザインの類似認識が、デザインの形状であることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載のAIを用いた類似デザイン判定システム。
【請求項7】
前記の視覚認識によるデザインの類似認識が、デザインの色であることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載のAIを用いた類似デザイン判定システム。
【請求項8】
前記の視覚認識によるデザインの類似認識が、デザインの模様であることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載のAIを用いた類似デザイン判定システム。
【請求項9】
前記のデザインの類似認識と非類似認識の脳波データの特徴量を数値化して表現することを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載のAIを用いた類似デザイン判定システム。
【請求項10】
前記の脳波データを教師データとして学習させる時及び元デザインと類似判定用デザインを同時に視覚認識したときの脳波データの測定時に音楽を聴かせながら測定することを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載のAIを用いた類似デザイン判定システム。
【請求項11】
前記の脳波データを教師データとして学習させる時及び元デザインと類似判定用デザインを同時に視覚認識したときの脳波データの測定時に背景色を単色とすることを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項に記載のAIを用いた類似デザイン判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AIを用いた類似デザイン判定システムに関し、特に類似の判断を脳波データで行うことを特徴とするAIを用いた類似デザイン判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、デザインなどの類似の判断は、形状と色と模様による類似を判断する方法が用いられていた。
【0003】
特許文献1では、調査対象とする画像データの特徴量を算出し、その特徴量(色,模様,形状,レイアウト)及び調査条件(データ形式,データ容量,データサイズ)に基づいて画像データと一致又は類似する画像データを検索する画像データの適正使用調査サービス提供システムである。
【0004】
特許文献2では、比較する対象物と比較される対象物との画像をモザイク化し、モザイク化された登録対象物の画像に自己組織化学習を行なうクラスタリング処理がされ、その結果を2次元マップ化処理し、クラスターが近接した対象物は類似度が高いと判断される。
【0005】
特許文献3では、画像データに対し周波数変換を行い、画素データの位置データと度数データ(明暗の度数や色の度数)を考慮した上でSOM(自己認識化特徴マップ)を作成し、さらにこのSOM上に配置された複数の周波数変換された画像データに対し、逆周波数変換を行うことでデザインを含んだ画像データに対しても高い精度で類似性解析を行う画像類似性判断機能付きデザイン開発支援ツールである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-38403号公報
【文献】特開2002-109541号公報
【文献】特開2007-65876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の特許文献1では、色、模様、形状、レイアウト等を特徴の要素として、類似性を判断するものであり、類似性を判断する判断者の主観的な要素が多く含まれており、判断者により、その類似性の評価が異なってしまうことは避けられない。
【0008】
特許文献2では、顔認証に用いられている手法であり、画像をモザイク化し、クラスタリング処理するものであり、画像の中の画素データに注目してその位置の違いで類似性を判断するものである。よって、顔認証のように、本物かどうかの判断には適しているが、デザインの判断の場合には、同一性の判断ではなく、類似性の判断が求められるものであり、似ているかどうかは、人間の感性に訴える判断であり、クラスタリング処理では、判断できない。
【0009】
特許文献3では、デザインを含んだ画像データの類似性を判断できるとしている。しかしながら、周波数変換手法を活用しても、画像データの中の画素データの位置と度数を判断するものであり、同一性にプラスして周辺の色彩と明るさとを考慮したものにすぎず、デザインの類似性の判断に重要な人間の感性を考慮する判断ではなく、デザインの類似性を判断しているものではない。
【0010】
本発明の課題は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、類似デザインの判断において、人間の感性を考慮して類似性を判断する事のできるAIを用いた類似デザイン判定システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1は、視覚認識によるデザインの類似認識時及び非類似認識時の脳波データを教師データとして学習させ、デザインの類似認識と非類似認識の脳波データの特徴量から、デザイン類似性判定モデルを機械学習により生成するモデル生成手段と、元デザインと類似判定用デザインを同時に視覚認識したときの脳波データの入力を受け付ける入力受付手段と、前記のモデル生成手段により生成されたデザイン類似性判定モデルを用いて、前記受付手段が受け付けた前記の脳波データを解析し、前記の元デザインに対して類似判定用デザインが類似かどうかを判定する類似性判定手段とを備えることを特徴とするAIを用いた類似デザイン判定システム。
【0012】
該脳波(electroencephalogram:EEG)とは、脳神経細胞の活動に伴って生じる電位変化を多くの場合体表から記録したもので、脳波計は高感度の増幅器であり、数十μVの微小な電位変化を増幅して数mm程度の振れとして記録するものである。脳波により脳の機能、特にその活動性について情報を得ることができるとされている。
【0013】
脳波の測定法には、単極導出法と双極導出法がある。単極導出法は、国際10-20法に従い頭皮上に活動電極を装着し、同側の耳朶に基準電極を装着し、電位差をみる。双極導出法は、2つの頭皮上活動電極間の電位差をみる。
【0014】
脳波の分類は、以下の通りである。
δ(デルタ)波:0.5~4Hz未満 徐波
θ(シータ)波:4~8Hz未満 (slow wave)
α(アルファ)波:8~13Hz未満
β(ベータ)波:13Hz以上 速波(fast wave)
【0015】
実際には、これらの脳波が混ざり合っているとされるが、覚醒中の場合には、β(ベータ)波が多いとなれている。
【0016】
脳波による感情の可視化システム(竹内俊文他 FIT(情報科学技術フォーラム)2002)も開発されているが、これは、快音・不快音刺激下における被験者の感情を可視化したものである。
【0017】
該視覚認識によるデザインの類似認識時の脳波データは、ほぼ類似する2つのデザインを同時に見た時の脳波を測定するものである。
【0018】
該視覚認識によるデザインの非類似認識時の脳波データは、全く類似しない2つのデザインを同時に見た時の脳波を測定するものである。
【0019】
該デザインの類似認識と非類似認識の脳波データの特徴量とは、脳波の波形の特徴、2次元、3次元の感情要素のモデルの位置など脳波計で測定されたデータを用いた表現方法であればいずれでも良い。
【0020】
該デザイン類似性判定モデルは、デザインの類似認識と非類似認識の脳波データの特徴量を機械学習したAIが見つけ、生成した学習済みモデルのことである。
【0021】
大人数のデザインの類似認識と非類似認識の脳波データを学習することで、類似認識に反応するニューロンができ、重み付け係数が最適化され、ニューラルネットワークの学習済みモデルが生成される。
【0022】
該類似性判定手段は、前記のデザイン類似性判定モデルにより、類似するか類似しないかの判定を表示するものである。類似性のレベルを数値や色、グラフ、音などで表示するものでも良い。
【0023】
本発明の請求項2は、前記の類似認識時の脳波データは、視覚認識により同じデザインと認識したとき及び同じではないがよく似ているデザインと認識したときの2種類の脳波データであることを特徴とする請求項1に記載のAIを用いた類似デザイン判定システムである。
【0024】
本発明の請求項3は、前記の非類似認識時の脳波データは、視覚認識により全く違うデザインと認識したとき及び少し似ているデザインと認識したときの2種類の脳波データであることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかの項に記載のAIを用いた類似デザイン判定システムである。
【0025】
本発明の請求項4は、前記の脳波データの特徴量は、脳波計による波形の特徴であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のAIを用いた類似デザイン判定システムである。
【0026】
該波形の特徴は、形状、色、振幅、サイクル等でも良い。
【0027】
本発明の請求項5は、前記の脳波データの特徴量は、感情2次元モデルによる可視化の特徴であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のAIを用いた類似デザイン判定システムである。
【0028】
該感情2次元モデルは、Russellの円環構造モデルであり、感情は、「ポジティブ・ネガティブ」を表す横軸と「活性・不活性」の縦軸で表されるグラフ上に点として表示される。
【0029】
本発明の請求項6は、前記の視覚認識によるデザインの類似認識が、デザインの形状であることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載のAIを用いた類似デザイン判定システム。
【0030】
本発明の請求項7は、前記の視覚認識によるデザインの類似認識が、デザインの色であることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載のAIを用いた類似デザイン判定システム。
【0031】
本発明の請求項8は、前記の視覚認識によるデザインの類似認識が、デザインの模様であることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載のAIを用いた類似デザイン判定システム。
【0032】
本発明の請求項9は、前記のデザインの類似認識と非類似認識の脳波データの特徴量を数値化して表現することを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載のAIを用いた類似デザイン判定システム。
【0033】
本発明の請求項10は、記の脳波データを教師データとして学習させる時及び元デザインと類似判定用デザインを同時に視覚認識したときの脳波データの測定時に音楽を聴かせながら測定することを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載のAIを用いた類似デザイン判定システム。
【0034】
本発明の請求項11は、前記の脳波データを教師データとして学習させる時及び元デザインと類似判定用デザインを同時に視覚認識したときの脳波データの測定時に背景色を単色とすることを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項に記載のAIを用いた類似デザイン判定システム。
【発明の効果】
【0035】
本発明の効果は、以下の通りである。
【0036】
(1)外観の形状、色、模様では類似判断が難しいデザインの類似判定を脳波データの解析により、的確に判断することができ、人間の感性を考慮したデザイン類似性の判定システムを実現できる。
【0037】
(2)AIを用いたデザインの類似判定システムを提供できる。
【0038】
(3)視覚認識によるデザインの類似認識時及び非類似認識時の脳波データによるデザイン類似性判定モデルを提供できる。
【0039】
(4)複数種類の脳波データによるデザイン類似性判定モデルを提供できる。
【0040】
(5)脳波計による波形の特徴を脳波データの特徴量とするデザイン類似性判定モデルを提供できる。
【0041】
(6)感情2次元モデルによる可視化の特徴を脳波データの特徴量とするデザイン類似性判定モデルを提供できる。
【0042】
(7)視覚認識によるデザインの類似認識が、デザインの形状であるデザイン類似性判定モデルを提供できる。
【0043】
(8)視覚認識によるデザインの類似認識が、デザインの色であるデザイン類似性判定モデルを提供できる。
【0044】
(9)視覚認識によるデザインの類似認識が、デザインの模様であるデザイン類似性判定モデルを提供できる。
【0045】
(10)脳波データの測定時に音楽を聴かせながら測定するデザイン類似性判定モデルを提供できる。
【0046】
(11)脳波データの測定時に背景色を単色とするデザイン類似性判定モデルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明によるAIを用いた類似デザイン判定システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明による一実施形態である、AIを用いた類似デザイン判定システムの実施の形態について図面を用いて説明する。
【0049】
図1は、本発明によるAIを用いた類似デザイン判定システムの構成図である。
【0050】
本発明のAIを用いた類似デザイン判定システム1は、判定するデザインの視覚認識による脳波データの入力を受け付ける入力受付手段2と、デザイン類似認識時の脳波データ3とデザイン非類似認識時の脳波データ4を機械学習させた学習済みモデル(デザイン類似性判定モデル6)の生成手段5と、類似性判定手段7と、類似性の判定結果を表示する類似性判定結果表示手段8で構成される。
【0051】
以下に本発明のAIを用いた類似デザイン判定システム1の機能について説明する。
【0052】
1)教師データの機械学習による学習済みモデルの生成
視覚認識によるデザインの類似認識時の脳波データ3と、視覚認識によるデザインの非類似認識時の脳波データ4を教師データとして、学習済みモデル性手段5で学習させて、デザインの類似認識時の脳波データの特徴量であるの類似性特徴波形と、デザインの非類似認識時の脳波データの特徴量であるの非類似性特徴波形を見つけ、デザイン類似性判定モデル6を生成する。
【0053】
2)判定用データの入力受付
入力受付手段2より、元デザインと類似判定用デザインを同時に視覚認識したときの脳波データ9を入力する。
【0054】
3)類似性の判定
入力受付手段2より入力された判定用脳波データ9をデザイン類似性判定モデル6を用いて、類似性判定手段7により、類似判定用デザインの類似性を判定する。
【0055】
4)判定結果の表示
類似性判定手段7の判定結果を類似性判定結果表示手段8に表示する。
【0056】
本発明によれば、類似デザインの判断において、人間の感性を考慮して類似性を判断する事のできるAIを用いた類似デザイン判定システムを実現できるものである。
【符号の説明】
【0057】
1 類似デザイン判定システム
2 入力受付手段
3 デザインの類似認識時の脳波データ
4 デザインの非類似認識時の脳波データ
5 学習済みモデル性手段
6 デザイン類似性判定モデル
7 類似性判定手段
8 類似性判定結果表示手段
9 判定用脳波データ(元デザインと類似判定用デザインを同時に視覚認識したときの脳波データ)
【要約】
【課題】 類似デザインの判断において、人間の感性を考慮して類似性を判断する事のできるAIを用いた類似デザイン判定システムを提供することを課題とする。

【解決手段】 視覚認識によるデザインの類似認識時及び非類似認識時の脳波データを教師データとして学習させ、デザインの類似認識と非類似認識の脳波データの特徴量から、デザイン類似性判定モデルを機械学習により生成するモデル生成手段と、元デザインと類似判定用デザインを同時に視覚認識したときの脳波データの入力を受け付ける入力受付手段と、前記のモデル生成手段により生成されたデザイン類似性判定モデルを用いて、前記受付手段が受け付けた前記の脳波データを解析し、前記の元デザインに対して類似判定用デザインが類似かどうかを判定する類似性判定手段と、を備えることを特徴とするAIを用いた類似デザイン判定システムである。
【選択図】 図1
図1