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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】鉄塔基礎構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20230718BHJP
   E04H 12/10 20060101ALI20230718BHJP
   E04H 12/16 20060101ALI20230718BHJP
   E02D 27/01 20060101ALI20230718BHJP
   E02D 27/42 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
E02D27/00 D
E04H12/10 A
E04H12/16
E02D27/01 102Z
E02D27/42 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022065406
(22)【出願日】2022-04-11
【審査請求日】2023-02-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年12月16日、令和3年12月21日 令和4年01月19日、令和4年01月27日 プレキャスト化した逆T字型基礎の耐力確認試験見学会にて公開
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221546
【氏名又は名称】東電設計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 亜理
(72)【発明者】
【氏名】田邉 成
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-018840(JP,A)
【文献】特開2020-094457(JP,A)
【文献】特開2019-112811(JP,A)
【文献】特開2011-106147(JP,A)
【文献】特開平06-316942(JP,A)
【文献】特開2012-246621(JP,A)
【文献】国際公開第2016/171444(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
E04H 12/10
E04H 12/16
E02D 27/01
E02D 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材における当該鉄塔の高さ方向下側の部分を当該高さ方向から見て内周面で囲むように配置されて当該脚材を保持する床板と、
前記床板上に配置され、当該高さ方向から見て前記内周面に沿う筒状とされると共に前記脚材の延在方向と直交するように設けられた支持面を備えたプレキャストコンクリート製の柱体定着部と、
一部が前記柱体定着部に埋め込まれると共に、当該柱体定着部から前記高さ方向上側に前記延在方向に沿うように延出された上側延出部と、当該柱体定着部から当該高さ方向下側に延出されて当該高さ方向から見て前記内周面の内側に配置された下側延出部と、を含む複数の柱体定着筋と、
前記支持面上に前記延在方向に沿うように配置され、当該延在方向から見て当該脚材を囲む円筒状とされると共に、前記上側延出部を挿通可能な複数の定着筋挿通孔部が形成されたプレキャストコンクリート製の下側柱体部と、
前記床板の前記内周面側、前記柱体定着部の前記脚材側及び前記下側柱体部の当該脚材側にコンクリートが充填されることで構成され、前記下側延出部が埋め込まれた接続部と、
前記下側柱体部から前記高さ方向上側に前記延在方向に沿うように延出されると共に、当該延在方向から見て前記定着筋挿通孔部よりも当該下側柱体部の内周側に配置された複数の第1接続筋と、
前記下側柱体部の上面上に前記延在方向に沿うように配置され、前記延在方向から見て前記脚材を囲む円筒状とされると共に、前記第1接続筋を挿通可能な複数の第1接続筋挿通孔部が形成されたプレキャストコンクリート製の中間柱体部と、
前記中間柱体部から前記高さ方向上側に前記延在方向に沿うように延出されると共に、当該延在方向から見て前記第1接続筋挿通孔部よりも当該中間柱体部の内周側に配置された複数の第2接続筋と、
前記中間柱体部の上面上に前記延在方向に沿うように配置され、前記延在方向から見て前記脚材を囲む円筒状とされると共に、前記第2接続筋を挿通可能な複数の第2接続筋挿通孔部が形成されたプレキャストコンクリート製の上側柱体部と、
を有する鉄塔基礎構造。
【請求項2】
鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材における当該鉄塔の高さ方向下側の部分を当該高さ方向から見て囲むように配置されて当該脚材を保持する床板と、
前記床板から前記高さ方向上側に前記脚材の延在方向に沿うように延出された上側延出部と、当該上側延出部から当該高さ方向下側に延出されて当該床板に埋め込まれた下側延出部と、を含む複数の柱体定着筋と、
前記床板上に前記延在方向に沿うように配置され、当該延在方向から見て当該脚材を囲む筒状とされると共に、前記上側延出部を挿通可能な複数の定着筋挿通孔部が形成されたプレキャストコンクリート製の下側柱体部と、
前記床板側及び前記下側柱体部の前記脚材側にコンクリートが充填されることで構成された接続部と、
前記下側柱体部から前記高さ方向上側に前記延在方向に沿うように延出されると共に、当該延在方向から見て前記定着筋挿通孔部よりも当該下側柱体部の内周側に配置された複数の第1接続筋と、
前記下側柱体部の上面上に前記延在方向に沿うように配置され、前記延在方向から見て前記脚材を囲む円筒状とされると共に、前記第1接続筋を挿通可能な複数の第1接続筋挿通孔部が形成されたプレキャストコンクリート製の中間柱体部と、
前記中間柱体部から前記高さ方向上側に前記延在方向に沿うように延出されると共に、当該延在方向から見て前記第1接続筋挿通孔部よりも当該中間柱体部の内周側に配置された複数の第2接続筋と、
前記中間柱体部の上面上に前記延在方向に沿うように配置され、前記延在方向から見て前記脚材を囲む円筒状とされると共に、前記第2接続筋を挿通可能な複数の第2接続筋挿通孔部が形成されたプレキャストコンクリート製の上側柱体部と、
を有する鉄塔基礎構造。
【請求項3】
前記定着筋挿通孔部は、前記延在方向から見て前記中間柱体部の外周に沿うように配置されると共に、一部が当該中間柱体部で覆われている、
請求項に記載の鉄塔基礎構造。
【請求項4】
前記第1接続筋挿通孔部は、前記延在方向から見て前記上側柱体部の外周に沿うように配置されると共に、一部が当該上側柱体部で覆われている、
請求項に記載の鉄塔基礎構造。
【請求項5】
前記下側柱体部の外周側に埋め込まれると共に前記延在方向から見て前記複数の定着筋挿通孔部を囲むようにかつ軸方向を当該延在方向とされた状態で配置された第1螺旋筋と、
前記中間柱体部の外周側に埋め込まれると共に前記延在方向から見て前記複数の第1接続筋挿通孔部を囲むようにかつ軸方向を当該延在方向とされた状態で配置された第2螺旋筋と、
前記上側柱体部の外周側に埋め込まれると共に前記延在方向から見て前記複数の第2接続筋挿通孔部を囲むようにかつ軸方向を当該延在方向とされた状態で配置された第3螺旋筋と、
をさらに有する、
請求項~請求項の何れか1項に記載の鉄塔基礎構造。
【請求項6】
前記下側柱体部における前記第1螺旋筋の外周側に埋め込まれると共に前記延在方向から見て円環状とされた補強筋をさらに有する、
請求項に記載の鉄塔基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、鉄塔基礎構造に関する発明が記載されている。この鉄塔基礎構造では、鉄塔の脚材を支持する基礎が、床板及び柱体を含んで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-18840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鉄塔には、鉄塔に懸架された電線等に起因する引き抜き荷重が作用することが考えられる。そして、この引き抜き荷重を支持するのにあたって、脚材と一体的に設けられた床板及び柱体の重量は、大きい方が好ましい。また、施工時間の短縮の観点からは、床板及び柱体にプレキャストコンクリートを用いることが好ましい。
【0005】
しかしながら、鉄塔を山岳地等に建設する場合、運搬可能な材料の重量に制限があるため、床板及び柱体に用いることができるプレキャストコンクリートの重量もまた制限されることとなる。
【0006】
この点、上記特許文献1に係る先行技術では、床板をプレキャストコンクリート製の複数の部材で構成することで、床板の重量を確保しつつ、床板の構築に必要な施工時間を短縮し、さらに床板を構成する材料の運搬を容易なものとしている。
【0007】
一方で、上記特許文献1では、柱体の構成については詳しく説明されていないため、柱体の重量を確保しつつ、柱体の構築に必要な施工時間を短縮し、さらに柱体を構成する材料の運搬を容易にするという点については改善の余地がある。
【0008】
本発明は上記事実を考慮し、鉄塔の基礎部の一部を構成する柱体の重量を確保しつつ、柱体の構築に必要な施工時間を短縮し、さらに柱体を構成する材料の運搬を容易なものとすることができる鉄塔基礎構造を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る鉄塔基礎構造は、鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材における当該鉄塔の高さ方向下側の部分を当該高さ方向から見て内周面で囲むように配置されて当該脚材を保持する床板と、前記床板上に配置され、当該高さ方向から見て前記内周面に沿う筒状とされると共に前記脚材の延在方向と直交するように設けられた支持面を備えたプレキャストコンクリート製の柱体定着部と、一部が前記柱体定着部に埋め込まれると共に、当該柱体定着部から前記高さ方向上側に前記延在方向に沿うように延出された上側延出部と、当該柱体定着部から当該高さ方向下側に延出されて当該高さ方向から見て前記内周面の内側に配置された下側延出部と、を含む複数の柱体定着筋と、前記支持面上に前記延在方向に沿うように配置され、当該延在方向から見て当該脚材を囲む円筒状とされると共に、前記上側延出部を挿通可能な複数の定着筋挿通孔部が形成されたプレキャストコンクリート製の下側柱体部と、前記床板の前記内周面側、前記柱体定着部の前記脚材側及び前記下側柱体部の当該脚材側にコンクリートが充填されることで構成され、前記下側延出部が埋め込まれた接続部と、を有している。
【0010】
第1の態様に係る構造物の鉄塔基礎構造によれば、床板を備えており、この床板は、鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材における鉄塔の高さ方向(以下、単に高さ方向と称する)下側の部分を、その内周面で囲むように配置されており、脚材を保持している。
【0011】
ところで、脚材に作用する引き抜き荷重を支持するのにあたって、脚材と一体的に設けられる柱体の重量は、大きい方が好ましい。また、施工時間の短縮の観点からは、柱体にプレキャストコンクリートを用いることが好ましい。一方で、鉄塔を山岳地等に建設する場合、運搬可能な材料の重量に制限があるため、柱体に用いることができるプレキャストコンクリートの重量もまた制限されることとなる。
【0012】
ここで、本態様では、プレキャストコンクリート製の柱体定着部と、プレキャストコンクリート製の下側柱体部とを備えており、これらで柱体の一部を構成することができる。
【0013】
詳しくは、柱体定着部は、床板上に配置されており、高さ方向から見て床板の内周面に沿う筒状とされている。この柱体定着部には、複数の柱体定着筋の一部が埋め込まれており、この柱体定着筋は、柱体定着部から高さ方向上側に脚材の延在方向(以下、単に延在方向と称する)に沿うように延出された上側延出部と、柱体定着部から高さ方向下側に延出されて高さ方向から見て床板の内周面の内側に配置された下側延出部とを含んで構成されている。
【0014】
また、柱体定着部には、延在方向と直交するように支持面が設けられており、この支持面上には、下側柱体部が配置されている。
【0015】
下側柱体部は、延在方向に沿うように配置されると共に、延在方向から見て脚材を囲む円筒状とされている。また、下側柱体部には、柱体定着筋の上側延出部を挿通可能な複数の定着筋挿通孔部が形成されており、下側柱体部を設置するときに上側延出部を定着筋挿通孔部に挿通させることで、下側柱体部の位置決めを行うことができる。そして、定着筋挿通孔部にモルタルやコンクリートを充填することで、柱体定着部と下側柱体部とを接続することができる。
【0016】
また、床板の内周面側、柱体定着部の脚材側及び下側柱体部の脚材側にコンクリートが充填されることで、柱体定着筋の下側延出部が埋め込まれた接続部が構成されている。そして、接続部によって、脚材、柱体定着部及び下側柱体部が一体化されることで、柱体の一部が構成される。
【0017】
このように、本態様では、柱体を構成する部材を分割して運搬することができ、その結果、鉄塔を山岳地等に建設する場合であっても、柱体の重量を確保することができる。
【0018】
第2の態様に係る鉄塔基礎構造は、鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材における当該鉄塔の高さ方向下側の部分を当該高さ方向から見て囲むように配置されて当該脚材を保持する床板と、前記床板から前記高さ方向上側に前記脚材の延在方向に沿うように延出された上側延出部と、当該上側延出部から当該高さ方向下側に延出されて当該床板に埋め込まれた下側延出部と、を含む複数の柱体定着筋と、前記床板上に前記延在方向に沿うように配置され、当該延在方向から見て当該脚材を囲む筒状とされると共に、前記上側延出部を挿通可能な複数の定着筋挿通孔部が形成されたプレキャストコンクリート製の下側柱体部と、前記床板側及び前記下側柱体部の前記脚材側にコンクリートが充填されることで構成された接続部と、を有している。
【0019】
第2の態様に係る鉄塔基礎構造によれば、床板を備えており、この床板は、鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材における高さ方向下側の部分を囲むように配置されており、脚材を保持している。そして、床板には、複数の柱体定着筋の一部が埋め込まれている。
【0020】
詳しくは、柱体定着筋は、上側延出部と下側延出部とを含んで構成されている。そして、上側延出部は、床板から高さ方向上側に延在方向に沿うように延出されており、下側延出部は、上側延出部から高さ方向下側に延出されると共に、床板に埋め込まれている。
【0021】
ここで、本態様では、床板上にプレキャストコンクリート製の下側柱体部が配置されており、この下側柱体部で柱体の一部を構成することができる。
【0022】
詳しくは、下側柱体部は、延在方向に沿うように配置されると共に、延在方向から見て脚材を囲む円筒状とされている。また、下側柱体部には、柱体定着筋の上側延出部を挿通可能な複数の定着筋挿通孔部が形成されており、下側柱体部を設置するときに上側延出部を定着筋挿通孔部に挿通させることで、下側柱体部の位置決めを行うことができる。そして、定着筋挿通孔部にモルタルやコンクリートを充填することで、床板と下側柱体部とを接続することができる。
【0023】
また、床板側及び下側柱体部の脚材側にコンクリートが充填されることで、接続部が構成されている。そして、接続部によって、脚材及び下側柱体部が一体化されることで、柱体の一部が構成される。
【0024】
このように、本態様では、柱体を構成する部材を床板を構成する部材とは別に運搬することができ、その結果、鉄塔を山岳地等に建設する場合であっても、柱体の重量を確保することができる。
【0025】
第3の態様に係る鉄塔基礎構造は、第2の態様に係る鉄塔基礎構造において、前記下側柱体部から前記高さ方向上側に前記延在方向に沿うように延出されると共に、当該延在方向から見て前記定着筋挿通孔部よりも当該下側柱体部の内周側に配置された複数の第1接続筋と、前記下側柱体部の上面上に前記延在方向に沿うように配置され、前記延在方向から見て前記脚材を囲む円筒状とされると共に、前記第1接続筋を挿通可能な複数の第1接続筋挿通孔部が形成されたプレキャストコンクリート製の中間柱体部と、前記中間柱体部から前記高さ方向上側に前記延在方向に沿うように延出されると共に、当該延在方向から見て前記第1接続筋挿通孔部よりも当該中間柱体部の内周側に配置された複数の第2接続筋と、前記中間柱体部の上面上に前記延在方向に沿うように配置され、前記延在方向から見て前記脚材を囲む円筒状とされると共に、前記第2接続筋を挿通可能な複数の第2接続筋挿通孔部が形成されたプレキャストコンクリート製の上側柱体部と、をさらに有している。
【0026】
第3の態様に係る鉄塔基礎構造によれば、複数の第1接続筋が、下側柱体部から高さ方向上側に延在方向に沿うように延出されている。そして、これらの第1接続筋は、延在方向から見て下側柱体部に設けられた定着筋挿通孔部よりも当該下側柱体部の内周側に配置されている。
【0027】
一方、下側柱体部の上面上には、プレキャストコンクリート製の中間柱体部が配置されている。この中間柱体部は、延在方向から見て脚材を囲む円筒状とされており、延在方向に沿うように配置されている。そして、中間柱体部には、第1接続筋を挿通可能な複数の第1接続筋挿通孔部が形成されている。
【0028】
これにより、中間柱体部を下側柱体部上に設置するときに第1接続筋を第1接続筋挿通孔部に挿通させることで、中間柱体部の位置決めを行うことができる。そして、第1接続筋挿通孔部にモルタルやコンクリートを充填することで、中間柱体部と下側柱体部とを接続することができる。
【0029】
また、中間柱体部からは、複数の第2接続筋が、高さ方向上側に延在方向に沿うように延出されている。そして、これらの第2接続筋は、延在方向から見て中間柱体部に設けられた第1接続筋挿通孔部よりも当該中間柱体部の内周側に配置されている。
【0030】
一方、中間柱体部の上面上には、プレキャストコンクリート製の上側柱体部が配置されている。この上側柱体部は、延在方向から見て脚材を囲む円筒状とされており、延在方向に沿うように配置されている。そして、上側柱体部には、第2接続筋を挿通可能な複数の第2接続筋挿通孔部が形成されている。
【0031】
これにより、上側柱体部を中間柱体部上に設置するときに第2接続筋を第2接続筋挿通孔部に挿通させることで、上側柱体部の位置決めを行うことができる。そして、第2接続筋挿通孔部にモルタルやコンクリートを充填することで、上側柱体部と中間柱体部とを接続することができる。
【0032】
このように、本態様では、下側柱体部上に、上側柱体部及び中間柱体部が設置されることで柱体が構成される。このため、本態様では、柱体の大きさに応じて柱体を構成する部材の分割数を設定し、当該部材の重量が大きくなることを抑制することができる。
【0033】
第4の態様に係る鉄塔基礎構造は、第3の態様に係る鉄塔基礎構造において、前記定着筋挿通孔部は、前記延在方向から見て前記中間柱体部の外周に沿うように配置されると共に、一部が当該中間柱体部で覆われている。
【0034】
第4の態様に係る鉄塔基礎構造によれば、下側柱体部に設けられた定着筋挿通孔部が、延在方向から見て中間柱体部の外周に沿うように配置されると共に、定着筋挿通孔部の一部が中間柱体部で覆われている。このため、定着筋挿通孔部へのモルタルやコンクリートの充填が中間柱体部で阻害されることを抑制しつつ、中間柱体部の外径を確保することができる。
【0035】
第5の態様に係る鉄塔基礎構造は、第4の態様に係る鉄塔基礎構造において、前記第1接続筋挿通孔部は、前記延在方向から見て前記上側柱体部の外周に沿うように配置されると共に、一部が当該上側柱体部で覆われている。
【0036】
第5の態様に係る鉄塔基礎構造によれば、中間柱体部に設けられた第1接続筋挿通孔部が、延在方向から見て上側柱体部の外周に沿うように配置されると共に、第1接続筋挿通孔部の一部が上側柱体部で覆われている。このため、第1接続筋挿通孔部へのモルタルやコンクリートの充填が上側柱体部で阻害されることを抑制しつつ、上側柱体部の外径を確保することができる。
【0037】
第6の態様に係る鉄塔基礎構造は、第3の態様~第5の態様の何れか1態様に係る鉄塔基礎構造において、前記下側柱体部の外周側に埋め込まれると共に前記延在方向から見て前記複数の定着筋挿通孔部を囲むようにかつ軸方向を当該延在方向とされた状態で配置された第1螺旋筋と、前記中間柱体部の外周側に埋め込まれると共に前記延在方向から見て前記複数の第1接続筋挿通孔部を囲むようにかつ軸方向を当該延在方向とされた状態で配置された第2螺旋筋と、前記上側柱体部の外周側に埋め込まれると共に前記延在方向から見て前記複数の第2接続筋挿通孔部を囲むようにかつ軸方向を当該延在方向とされた状態で配置された第3螺旋筋と、をさらに有している。
【0038】
第6の態様に係る鉄塔基礎構造によれば、下側柱体部の外周側に第1螺旋筋が埋め込まれており、この第1螺旋筋は、延在方向から見て下側柱体部に設けられた複数の定着筋挿通孔部を囲むようにかつ軸方向を延在方向とされた状態で配置されている。このため、下側柱体部に発生する曲げモーメントに対する下側柱体部の剛性を確保することができる。
【0039】
また、本態様では、中間柱体部の外周側に第2螺旋筋が埋め込まれており、この第2螺旋筋は、延在方向から見て中間柱体部に設けられた複数の第1接続筋挿通孔部を囲むようにかつ軸方向を延在方向とされた状態で配置されている。このため、中間柱体部に発生する曲げモーメントに対する中間柱体部の剛性を確保することができる。
【0040】
さらに、本態様では、上側柱体部の外周側に第3旋筋が埋め込まれており、この第3螺旋筋は、延在方向から見て上側柱体部に設けられた複数の第2接続筋挿通孔部を囲むようにかつ軸方向を延在方向とされた状態で配置されている。このため、上側柱体部に発生する曲げモーメントに対する上側柱体部の剛性を確保することができる。
【0041】
第7の態様に係る鉄塔基礎構造は、第6の態様に係る鉄塔基礎構造において、前記下側柱体部における前記第1螺旋筋の外周側に埋め込まれると共に前記延在方向から見て円環状とされた補強筋をさらに有している。
【0042】
第7の態様に係る鉄塔基礎構造によれば、下側柱体部における第1螺旋筋の外周側に、延在方向から見て円環状とされた補強筋が埋め込まれており、この補強筋によって、下側柱体部に発生する曲げモーメントに対する下側柱体部の剛性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0043】
以上説明したように、本発明に係る鉄塔基礎構造は、鉄塔の基礎部の一部を構成する柱体の重量を確保しつつ、柱体の構築に必要な施工時間を短縮し、さらに柱体を構成する材料の運搬を容易なものとすることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の構成を模式的に示す斜視図である。
図2】実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の定着ピースの構成を模式的に示す斜視図である。
図3】本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の柱体の構成を模式的に示す平面図である。
図4】本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の下側ピースの構成を模式的に示す平面図である。
図5】本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の下側ピースの構成を模式的に示す側面図である。
図6】本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の下側ピースに埋め込まれた配筋の構成を模式的に示す断面図である。
図7】本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の中間ピースの構成を模式的に示す平面図である。
図8】本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の中間ピースの構成を模式的に示す側面図である。
図9】本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の中間ピースに埋め込まれた配筋の構成を模式的に示す断面図である。
図10】本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の上側ピースの構成を模式的に示す平面図である。
図11】本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の上側ピースに埋め込まれた配筋の構成を模式的に示す断面図である。
図12】本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の構成を模式的に示す断面図である。
図13】本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された鉄塔の構成を模式的に示す側面図である。
図14】本実施形態の変形例に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の床板周辺の構成を模式的に示す側面図である。
図15】本実施形態の変形例に係る鉄塔基礎構造が適用された基礎の下側ピースの構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図1図13を用いて、本発明に係る鉄塔基礎構造の実施形態の一例について説明する。
【0046】
図13に示されるように、本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された「鉄塔10」は、山岳地に建設されていると共に、複数の主柱材12、複数の水平材14、複数の斜材16及び主柱材12と斜材16とに架け渡された複数の主柱材用補助材18を含んで構成されており、4本の「鉄骨脚部20」を備えている。そして、それぞれの鉄骨脚部20に対して基礎部22が設けられている。なお、以下では、特にことわりのない限り、鉄塔10の高さ方向を単に高さ方向と称することとする。
【0047】
図12に示されるように、基礎部22は、鉄骨脚部20の一部を構成する「脚材24」を地盤26に対して支持すると共に、内側ピース28、「床板30」、床板螺旋筋32、柱体34及び「接続部36(図1参照)」を含んで構成されている。
【0048】
脚材24は、図1にも示されるように、山形鋼で構成された本体部38と、本体部38の下端部に設けられると共に平型鋼で構成された図示しない基部とが、溶接等による図示しない接合部で接合されることでその主な部分が構成されている。
【0049】
より詳しくは、本体部38は、高さ方向下側の部分が内側ピース28に埋設されており、高さ方向上側の部分が内側ピース28から露出されて鉄塔10の頂部に向かって延びている。つまり、脚材24(本体部38)の延在方向は、高さ方向に対して傾いている。なお、以下では、特にことわりのない限り、脚材24の延在方向を単に延在方向と称することとする。
【0050】
なお、本体部38には、延在方向に沿って山形鋼で構成された図示しない複数の支圧板が取り付けられている。また、脚材24の基部における高さ方向下側には、図示しない平板状の支持板部が配置されており、この支持板部は、地盤26上に設置されている。
【0051】
一方、内側ピース28は、脚材24の高さ方向下側の端部と一体的に設けられている。この内側ピース28は、プレキャストコンクリート製とされており、高さ方向に延在する角柱状に構成されている。そして、内側ピース28の外周側には、床板螺旋筋32が配置されている。なお、鉄塔10の仕様等に応じて脚材24に内側ピース28を設けないような構成も採り得る。
【0052】
床板螺旋筋32は、異形棒鋼で構成されており、高さ方向から見て円環状とされると共に、軸方向を高さ方向とされた螺旋状とされている。なお、床板螺旋筋32は、丸鋼で構成されていてもよい。
【0053】
床板30は、図1にも示されるように、全体では、高さ方向から見て中央部に円形の貫通部40が形成された円盤状とされており、貫通部40の内側には、内側ピース28及び床板螺旋筋32が配置されている。つまり、床板30は、高さ方向から見て、その「内周面30A」で脚材24の高さ方向下側の部分を囲むように配置されている。
【0054】
この床板30は、その高さ方向上側の部分を構成する複数の上側床板ブロック42と、その高さ方向下側の部分を構成する複数の下側床板ブロック44とを含んで構成されている。なお、上側床板ブロック42及び下側床板ブロック44は、何れもプレキャストコンクリート製とされている。
【0055】
詳しくは、上側床板ブロック42は、床板螺旋筋32における高さ方向上側の部分の外周側に床板螺旋筋32の周方向に沿うように連なって配置されており、隣接する上側床板ブロック42は、互いに当接された状態となっている。また、上側床板ブロック42には、異形棒鋼で構成された上側補強筋46が設けられており、この上側補強筋46には、床板螺旋筋32の高さ方向上側の部分が係止されている。
【0056】
一方、下側床板ブロック44は、床板螺旋筋32における高さ方向下側の部分の外周側に床板螺旋筋32の周方向に沿うように連なって配置されており、隣接する下側床板ブロック44は、互いに当接された状態となっている。また、下側床板ブロック44には、異形棒鋼で構成された下側補強筋47が設けられており、この下側補強筋47には、床板螺旋筋32の高さ方向下側の部分が係止されている。
【0057】
ここで、本実施形態では、図1に示されるように、延在方向に延在する柱体34が、その主な部分をプレキャストコンクリートで構成された複数の部品、すなわち定着ピース48、下側ピース50、中間ピース52及び上側ピース54で構成されている点に特徴がある。以下、これらの部品の構成について詳細に説明することとする。
【0058】
定着ピース48は、図2に示されるように、「柱体定着部56」と、複数の「柱体定着筋58」とを含んで構成されている。柱体定着部56は、プレキャストコンクリート製とされると共に、床板30の高さ方向上側に配置されている。
【0059】
この柱体定着部56は、高さ方向から見て、その内周が床板30の内周面30Aに沿う円形とされると共に延在方向から見て外径がD1の筒状又はリング状に形成されている。そして、柱体定着部56の下面56Aは、上側床板ブロック42の上面42Aに当接された水平面とされており、柱体定着部56の支持面としての「上面56B」は、延在方向に対して直交している。
【0060】
一方、柱体定着筋58は、異形棒鋼で構成されており、その一部が柱体定着部56に埋め込まれると共に、柱体定着部56の周方向に互いに対して間隔をあけて配置されている。この柱体定着筋58は、柱体定着部56の高さ方向上側に延在方向に沿うように延出された「上側延出部58A」と、柱体定着部56の高さ方向下側に延出された「下側延出部58B」とを含んで構成されている。そして、上側延出部58Aは、延在方向から見て直径D2の円周上に配置されている。
【0061】
そして、上側延出部58Aには、後述するように、下側ピース50が取り付けられている。一方、下側延出部58Bは、床板螺旋筋32の内周側に配置されると共に(図12参照)、後述するように、接続部36に埋め込まれている。
【0062】
図4図6に示されるように、下側ピース50は、「下側柱体部60」と、複数の第1接続筋としての「接続筋62」と、第1螺旋筋としての「螺旋筋64」と、一対の「補強筋66」とを含んで構成されている。
【0063】
下側柱体部60は、プレキャストコンクリート製とされており、柱体定着部56の上面56B上に延在方向に沿うように配置されている(図1参照)。詳しくは、下側柱体部60は、図3にも示されるように、延在方向から見て、脚材24を囲む円筒状とされており、その外径がD1とされると共にその延在方向の長さがL1とされている。
【0064】
この下側柱体部60には、柱体定着筋58の上側延出部58Aを挿通可能な定着筋挿通孔部としての「挿通孔部68」が、複数(柱体定着筋58の本数と同じ数)形成されている。そして、これらの挿通孔部68は、その中心が、延在方向から見て下側柱体部60の中心を中心とするD1よりも小さい直径D2の円周上に位置するように当該円周方向に所定の間隔で配置されている。
【0065】
接続筋62は、異形棒鋼で構成されており、その一部が下側柱体部60に埋め込まれると共に、下側柱体部60から高さ方向上側に延在方向に沿うように延出されている。これらの接続筋62は、延在方向から見て下側柱体部60の中心を中心とするD2よりも小さい直径D3の円周に沿って所定の間隔で配置されている。
【0066】
螺旋筋64は、異形棒鋼で構成されており、延在方向から見て円環状とされると共に、軸方向を延在方向とされた螺旋状とされている。この螺旋筋64は、下側柱体部60の外周側に埋め込まれると共に延在方向から見て複数の挿通孔部68を囲むように配置されている。また、本実施形態では、一例として螺旋筋64の巻き数が、15に設定されている。なお、螺旋筋64は、丸鋼で構成されていてもよい。
【0067】
補強筋66は、螺旋筋64よりも太い異形棒鋼で構成されており、延在方向から見て円環状に曲げられると共に、その端部同士が溶接等による図示しない接合部で接合されている。この補強筋66は、下側柱体部60の延在方向一方側の端部と他方側の端部とのそれぞれにおいて、下側柱体部60における螺旋筋64の外周側に埋め込まれている。なお、補強筋66は、丸鋼で構成されていてもよい。
【0068】
図7図9に示されるように、中間ピース52は、「中間柱体部70」と、複数の第2接続筋としての「接続筋72」と、第2螺旋筋としての「螺旋筋74」とを含んで構成されている。
【0069】
中間柱体部70は、プレキャストコンクリート製とされており、下側柱体部60の「上面60A」上に延在方向に沿うように配置されている。詳しくは、中間柱体部70は、延在方向から見て、脚材24を囲む円筒状とされており、その外径がD2とされると共にその延在方向の長さがL1よりも長いL2とされている。
【0070】
この中間柱体部70には、接続筋62を挿通可能な第1接続筋挿通孔部としての「挿通孔部76」が、複数(接続筋62の本数と同じ数)形成されている。そして、これらの挿通孔部76は、その中心が、延在方向から見て中間柱体部70の中心を中心とする直径がD2よりも小さいD3の円周上に位置するように当該円周方向に所定の間隔で配置されている。
【0071】
接続筋72は、異形棒鋼で構成されており、その一部が中間柱体部70に埋め込まれると共に、中間柱体部70から高さ方向上側に延在方向に沿うように延出されている。これらの接続筋72は、延在方向から見て中間柱体部70の中心を中心とする直径がD3よりも小さいD4の円周に沿って所定の間隔で配置されている。
【0072】
螺旋筋74は、異形棒鋼で構成されており、延在方向から見て円環状とされると共に、軸方向を延在方向とされた螺旋状とされている。この螺旋筋74は、中間柱体部70の外周側に埋め込まれると共に延在方向から見て複数の挿通孔部76を囲むように配置されている。また、本実施形態では、一例として螺旋筋74の巻き数が、螺旋筋64の巻き数と同じ15に設定されている。つまり、螺旋筋の配筋密度を比較すると、下側ピース50の方が、中間ピース52よりも高くなっている。なお、螺旋筋74は、丸鋼で構成されていてもよい。
【0073】
図10及び図11に示されるように、上側ピース54は、「上側柱体部78」と、第3螺旋筋としての「螺旋筋80」とを含んで構成されている。
【0074】
上側柱体部78は、プレキャストコンクリート製とされており、中間柱体部70の「上面70A」上に延在方向に沿うように配置されている。詳しくは、上側柱体部78は、延在方向から見て、脚材24を囲む円筒状とされており、その外径がD3とされると共にその延在方向の長さがL1よりも長いL3とされている。
【0075】
この上側柱体部78には、接続筋72を挿通可能な第2接続筋挿通孔部としての「挿通孔部82」が、複数(接続筋72の本数と同じ数)形成されている。そして、これらの挿通孔部82は、その中心が、延在方向から見て上側柱体部78の中心を中心とする直径がD3よりも小さいD4の円周上に位置するように当該円周方向に所定の間隔で配置されている。
【0076】
螺旋筋80は、異形棒鋼で構成されており、延在方向から見て円環状とされると共に、軸方向を延在方向とされた螺旋状とされている。この螺旋筋80は、上側柱体部78の外周側に埋め込まれると共に延在方向から見て複数の挿通孔部82を囲むように配置されている。また、本実施形態では、一例として螺旋筋80の巻き数が、螺旋筋74の巻き数と同じ15に設定されている。つまり、螺旋筋の配筋密度を比較すると、下側ピース50の方が、上側ピース54よりも高くなっている。なお、螺旋筋80は、丸鋼で構成されていてもよい。
【0077】
このように構成された定着ピース48、下側ピース50、中間ピース52及び上側ピース54は、図3に示されるように、延在方向に積み重ねられている。詳しくは、下側ピース50は、上側延出部58Aが挿通孔部68に挿通された状態で、柱体定着部56の上面56B上に配置されており、中間ピース52は、接続筋62が挿通孔部76に挿通された状態で、下側柱体部60の上面60A上に配置されており、上側ピース54は、接続筋72が挿通孔部82に挿通された状態で、中間柱体部70の上面70A上に配置されている。
【0078】
そして、上記のように定着ピース48、下側ピース50、中間ピース52及び上側ピース54が積み重ねられた状態において、下側柱体部60の挿通孔部68が延在方向から見て中間柱体部70の外周に沿うように配置されると共に、一部が中間柱体部70で覆われた状態となっており、中間柱体部70の挿通孔部76が延在方向から見て上側柱体部78の外周に沿うように配置されると共に、一部が上側柱体部78で覆われた状態となっている。
【0079】
また、下側柱体部60の挿通孔部68、中間柱体部70の挿通孔部76及び上側柱体部78の挿通孔部82には、モルタルやコンクリートが充填されている。
【0080】
そして、接続部36は、定着ピース48、下側ピース50、中間ピース52及び上側ピース54の内周側並びに内側ピース28と床板30との間にコンクリートが充填されることで構成されている。また、図12に示されるように、上記のように構成された接続部36には、脚材24の高さ方向下側の部分、床板螺旋筋32、上側補強筋46、下側補強筋47及び柱体定着筋58の下側延出部58Bが埋め込まれた状態となっている。なお、図12には、床板30等の構成を理解し易くするため、接続部36を図示していない。
【0081】
(本実施形態の作用及び効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0082】
本実施形態では、図12に示されるように、床板30を備えており、この床板30は、鉄塔10の鉄骨脚部20の一部を構成する脚材24における高さ方向下側の部分を、その内周面で囲むように配置されており、接続部36を介して脚材24を保持している。
【0083】
ところで、脚材24に作用する引き抜き荷重を支持するのにあたって、脚材24と一体的に設けられる柱体の重量は、大きい方が好ましい。また、施工時間の短縮の観点からは、柱体にプレキャストコンクリートを用いることが好ましい。一方で、鉄塔10を山岳地等に建設する場合、運搬可能な材料の重量に制限があるため、柱体に用いることができるプレキャストコンクリートの重量もまた制限されることとなる。
【0084】
ここで、本実施形態では、プレキャストコンクリート製の柱体定着部56と、プレキャストコンクリート製の下側柱体部60とを備えており、これらで柱体34の一部を構成することができる。
【0085】
詳しくは、柱体定着部56は、床板30上に配置されており、高さ方向から見て床板30の内周面30Aに沿う筒状とされている。この柱体定着部56には、複数の柱体定着筋58の一部が埋め込まれており、この柱体定着筋58は、柱体定着部56から高さ方向上側に延在方向に沿うように延出された上側延出部58Aと、柱体定着部56から高さ方向下側に延出されて高さ方向から見て床板30の内周面30Aの内側に配置された下側延出部58Bとを含んで構成されている。
【0086】
また、柱体定着部56には、延在方向と直交するように上面56Bが設けられており、この上面56B上には、図1に示されるように、下側柱体部60が配置されている。
【0087】
下側柱体部60は、図3にも示されるように、延在方向に沿うように配置されると共に、延在方向から見て脚材24を囲む円筒状とされている。また、下側柱体部60には、図4にも示されるように、柱体定着筋58の上側延出部58Aを挿通可能な複数の挿通孔部68が形成されており、下側柱体部60を設置するときに上側延出部58Aを挿通孔部68に挿通させることで、下側柱体部60の位置決めを行うことができる。そして、挿通孔部68にモルタルやコンクリートを充填することで、柱体定着部56と下側柱体部60とを接続することができる。
【0088】
また、図1及び図12に示されるように、床板30の内周面30A側、柱体定着部56の脚材24側及び下側柱体部60の脚材24側にコンクリートが充填されることで、柱体定着筋58の下側延出部58Bが埋め込まれた接続部36が構成されている。そして、接続部36によって、脚材24、柱体定着部56及び下側柱体部60が一体化されることで、柱体34の一部が構成される。
【0089】
このように、本実施形態では、柱体34を構成する部材を分割して運搬することができ、その結果、鉄塔10を山岳地等に建設する場合であっても、柱体34の重量を確保することができる。
【0090】
また、本実施形態では、図3図5に示されるように、複数の接続筋62が、下側柱体部60から高さ方向上側に延在方向に沿うように延出されている。そして、これらの接続筋62は、延在方向から見て下側柱体部60に設けられた挿通孔部68よりも下側柱体部60の内周側に配置されている。
【0091】
一方、下側柱体部60の上面60A上には、プレキャストコンクリート製の中間柱体部70が配置されている。この中間柱体部70は、図7及び図8に示されるように、延在方向から見て脚材24を囲む円筒状とされており、延在方向に沿うように配置されている。そして、中間柱体部70には、接続筋62を挿通可能な複数の挿通孔部76が形成されている。
【0092】
これにより、中間柱体部70を下側柱体部60上に設置するときに接続筋62を挿通孔部76に挿通させることで、中間柱体部70の位置決めを行うことができる。そして、挿通孔部76にモルタルやコンクリートを充填することで、中間柱体部70と下側柱体部60とを接続することができる。
【0093】
また、中間柱体部70からは、複数の接続筋72が、高さ方向上側に延在方向に沿うように延出されている。そして、これらの接続筋72は、延在方向から見て中間柱体部70に設けられた挿通孔部76よりも中間柱体部70の内周側に配置されている。
【0094】
図3に戻り、中間柱体部70の上面70A上には、プレキャストコンクリート製の上側柱体部78が配置されている。この上側柱体部78は、図10及び図11にも示されるように、延在方向から見て脚材24を囲む円筒状とされており、延在方向に沿うように配置されている。そして、上側柱体部78には、接続筋72を挿通可能な複数の挿通孔部82が形成されている。
【0095】
これにより、上側柱体部78を中間柱体部70上に設置するときに接続筋72を挿通孔部82に挿通させることで、上側柱体部78の位置決めを行うことができる。そして、挿通孔部82にモルタルやコンクリートを充填することで、上側柱体部78と中間柱体部70とを接続することができる。
【0096】
このように、本実施形態では、下側柱体部60上に、上側柱体部78及び中間柱体部70が設置されることで柱体34が構成される。このため、本実施形態では、柱体34の大きさに応じて柱体34を構成する部材の分割数を設定し、当該部材の重量が大きくなることを抑制することができる。
【0097】
また、本実施形態では、図3に示されるように、下側柱体部60に設けられた挿通孔部68が、延在方向から見て中間柱体部70の外周に沿うように配置されると共に、挿通孔部68の一部が中間柱体部70で覆われている。このため、挿通孔部68へのモルタルやコンクリートの充填が中間柱体部70で阻害されることを抑制しつつ、中間柱体部70の外径を確保することができる。
【0098】
また、本実施形態では、中間柱体部70に設けられた挿通孔部76が、延在方向から見て上側柱体部78の外周に沿うように配置されると共に、挿通孔部76の一部が上側柱体部78で覆われている。このため、挿通孔部76へのモルタルやコンクリートの充填が上側柱体部78で阻害されることを抑制しつつ、上側柱体部78の外径を確保することができる。
【0099】
また、本実施形態では、図6に示されるように、下側柱体部60の外周側に螺旋筋64が埋め込まれており、この螺旋筋64は、延在方向から見て下側柱体部60に設けられた複数の挿通孔部68を囲むようにかつ軸方向を延在方向とされた状態で配置されている。このため、下側柱体部60に発生する曲げモーメントに対する下側柱体部60の剛性を確保することができる。
【0100】
また、本実施形態では、図9に示されるように、中間柱体部70の外周側に螺旋筋74が埋め込まれており、この螺旋筋74は、延在方向から見て中間柱体部70に設けられた複数の挿通孔部76を囲むようにかつ軸方向を延在方向とされた状態で配置されている。このため、中間柱体部70に発生する曲げモーメントに対する中間柱体部70の剛性を確保することができる。
【0101】
さらに、本実施形態では、図11に示されるように、上側柱体部78の外周側に螺旋筋80が埋め込まれており、この螺旋筋80は、延在方向から見て上側柱体部78に設けられた複数の挿通孔部82を囲むようにかつ軸方向を延在方向とされた状態で配置されている。このため、上側柱体部78に発生する曲げモーメントに対する上側柱体部78の剛性を確保することができる。
【0102】
また、本実施形態では、図6に示されるように、下側柱体部60における螺旋筋64の外周側に、延在方向から見て円環状とされた補強筋66が埋め込まれており、この補強筋66によって、下側柱体部60に発生する曲げモーメントに対する下側柱体部60の剛性をより高めることができる。
【0103】
以上、説明したように、本実施形態に係る鉄塔基礎構造によれば、鉄塔10の基礎部22の一部を構成する柱体34の重量を確保しつつ、柱体34の構築に必要な施工時間を短縮し、さらに柱体34を構成する材料の運搬を容易なものとすることができる。
【0104】
<変形例>
以下、図14及び図15を用いて、本実施形態の変形例に係る鉄塔基礎構造について説明する。なお、上述した実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0105】
本変形例に係る基礎部22では、柱体34が定着ピース48を備えておらず、下側ピース50が床板30に柱体定着筋58を介して取り付けられている。
【0106】
詳しくは、本変形例において、柱体定着筋58の下側延出部58Bは、床板30の上側床板ブロック42に埋め込まれており、柱体定着筋58の上側延出部58Aは、床板30の高さ方向上側に延在方向に沿うように延出されている。
【0107】
また、下側柱体部60は、床板30上に延在方向に沿うように配置されており、高さ方向から見て、その内周が円形とされると共に延在方向から見て外径がD1の筒状又はリング状に形成されている。そして、下側柱体部60の下面60Bは、上側床板ブロック42の上面42Aに当接された水平面とされており、下側柱体部60の上面60Aは、延在方向に対して直交している。
【0108】
上記変形例では、柱体定着筋58の上側延出部58Aが、床板30から高さ方向上側に延在方向に沿うように延出されており、下側延出部58Bは、上側延出部58Aから高さ方向下側に延出されると共に、床板30に埋め込まれている。
【0109】
また、下側柱体部60を設置するときには、上述した実施形態と同様に、上側延出部58Aを挿通孔部68に挿通させることで、下側柱体部60の位置決めを行うことができる。そして、挿通孔部68にモルタルやコンクリートを充填することで、床板30と下側柱体部60とを接続することができる。
【0110】
また、床板30側及び下側柱体部60の脚材24側にコンクリートが充填されることで、接続部36が構成されている。そして、接続部36によって、脚材24及び下側柱体部60が一体化されることで、柱体34の一部が構成される。
【0111】
このように、本変形例では、基本的に上述した実施形態と同様の作用並びに効果を奏する。また、鉄塔10の仕様等に応じて柱体34の構成を簡略化することができる。
【0112】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、柱体34の主な部分が、4つのプレキャストコンクリート製の部材すなわち柱体定着部56、下側柱体部60、中間柱体部70及び上側柱体部78で構成されていたが、これに限らない。すなわち、柱体34の大きさに応じて、柱体34を構成するプレキャストコンクリート製の部材の個数を適宜変更することが可能である。
【0113】
(2) また、上述した実施形態では、下側柱体部60、中間柱体部70及び上側柱体部78のそれぞれに螺旋筋が埋め込まれていたが、これらの螺旋筋の代わりに複数のフープ筋を設けるような構成を採用してもよい。また、柱体34に発生する曲げモーメントの大きさ等に応じて、柱体34の一部を構成するプレキャストコンクリート製の部材に埋め込まれる配筋の太さや本数等を適宜変更してもよい。
【0114】
(3) また、上述した実施形態では、下側の柱体部に設けられた挿通孔部の一部が、上側の柱体部で覆われていたが、これに限らない。すなわち、柱体34を構築する工程や柱体34に必要な剛性等に応じて、下側に柱体部に設けられた挿通孔部の全部が、上側の柱体部で覆われるような構成を採用することも可能である。
【0115】
(4) 加えて、上述した実施形態では、脚材24の延在方向が高さ方向に対して傾いていたが、鉄塔10の仕様等に応じて脚材24の延在方向が高さ方向と同一方向となるような構成、すなわち柱体34の延在方向が高さ方向となるような構成も採り得る。
【符号の説明】
【0116】
10 鉄塔
20 鉄骨脚部
24 脚材
30 床板
30A 内周面
36 接続部
56 柱体定着部
56B 上面
58 柱体定着筋
58A 上側延出部
58B 下側延出部
60 下側柱体部
60A 上面
62 接続筋(第1接続筋)
64 螺旋筋(第1螺旋筋)
66 補強筋
68 挿通孔部(定着筋挿通孔部)
70 中間柱体部
70A 上面
72 接続筋(第2接続筋)
74 螺旋筋(第2螺旋筋)
76 挿通孔部(第1接続筋挿通孔部)
78 上側柱体部
82 挿通孔部82(第2接続筋挿通孔部)
【要約】
【課題】鉄塔の基礎部の一部を構成する柱体の重量を確保しつつ、柱体の構築に必要な施工時間を短縮し、さらに柱体を構成する材料の運搬を容易なものとすることができる鉄塔基礎構造を提供する。
【解決手段】鉄塔10は、プレキャストコンクリート製の柱体定着部56と、プレキャストコンクリート製の下側柱体部60とを備えており、これらで柱体34の一部が構成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15