(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】アイボックスを拡張するための動的照明器を有する網膜カメラ
(51)【国際特許分類】
A61B 3/14 20060101AFI20230718BHJP
A61B 3/12 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
A61B3/14
A61B3/12
(21)【出願番号】P 2022502192
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 US2020048782
(87)【国際公開番号】W WO2021055161
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-03-17
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516035068
【氏名又は名称】ヴェリリー ライフ サイエンシズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】グリク,エリエゼル
(72)【発明者】
【氏名】カヴーシ,サム
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0046031(US,A1)
【文献】特開2009-247779(JP,A)
【文献】特開2008-212327(JP,A)
【文献】特開2006-174984(JP,A)
【文献】特開2007-029726(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2012-0115815(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的照明器であって、
中央アパーチャと、
前記中央アパーチャの周りに配置された内側光源リングと、
前記内側光源リングの外側の前記中央アパーチャから半径方向軸に沿って延在する複数の一次照明アレイであって、前記複数の一次照明アレイが、各々、複数の一次光源を含む、複数の一次照明アレイと、
前記内側光源リングの外側の前記中央アパーチャから延在する二次軸に沿って配置された複数の二次照明アレイであって、前記複数の二次照明アレイが、各々、複数の二次光源を含み、前記二次照明アレイの前記二次軸が、前記一次照明アレイのうちの隣接するものの間に角度を付けて配置されており、前記二次光源の各々が、前記一次照明アレイのうちの前記隣接するものにおける前記一次光源の各々の半径方向距離とは異なる、前記中央アパーチャの中心からの半径方向距離を有するように、前記一次光源からオフセットされている、複数の二次照明アレイと、を備える、動的照明器。
【請求項2】
前記一次光源の各々、前記二次光源の各々、および前記内側光源の各々が、可視光源および赤外線光源を含む、請求項1に記載の動的照明器。
【請求項3】
前記中央アパーチャを画定し、かつ前記内側光源リングの半径方向内側に配置された内側バッフルをさらに備える、請求項1に記載の動的照明器。
【請求項4】
前記内側光源リングの半径方向外側に配置され、かつさらに前記内側光源リングと前記一次および二次照明アレイとの間に配置された外側バッフルであって、前記内側バッフルよりも短い、外側バッフル、をさらに備える、請求項3に記載の動的照明器。
【請求項5】
前記二次軸の各々は、前記二次軸が前記中央アパーチャの前記中心から半径方向に沿わないように、前記一次照明アレイの前記半径方向軸のうちの1つに平行であるがそこからオフセットされている、請求項1に記載の動的照明器。
【請求項6】
前記二次軸が、各々、前記中央アパーチャの前記中心から半径方向に延在する、請求項1に記載の動的照明器。
【請求項7】
前記一次照明アレイおよび前記二次照明アレイが、前記中央アパーチャの周りに角度的に等しく離間される、請求項6に記載の動的照明器。
【請求項8】
前記内側光源リングの前記内側光源の各々が、前記一次照明アレイの前記半径方向軸のうちの1つと共通の極角を共有する、請求項1に記載の動的照明器。
【請求項9】
前記内側光源リングが、8つの内側光源を含み、前記一次照明アレイが、8つの一次照明アレイを含み、前記二次照明アレイが、8つの二次照明アレイを含む、請求項1に記載の動的照明器。
【請求項10】
網膜画像化システムであって、
網膜画像を取得するように適合された画像センサと、
動的照明器であって、
前記網膜画像が通って取得される中央アパーチャと、
前記中央アパーチャから半径方向軸に沿って延在する複数の一次照明アレイであって、前記複数の一次照明アレイが、各々、複数の一次光源を含む、複数の一次照明アレイと、
前記中央アパーチャから延在する二次軸に沿って配置された複数の二次照明アレイであって、前記複数の二次照明アレイが、各々、複数の二次光源を含み、前記二次光源が、前記一次照明アレイのうちの隣接するものにおける前記一次光源の各々の半径方向距離とは異なる、前記中央アパーチャの中心からの半径方向距離を有するように、各々、前記一次光源からオフセットされている、複数の二次照明アレイと、
前記画像センサおよび前記動的照明器に結合されたコントローラであって、前記コントローラが、前記コントローラによって実行されると、前記網膜画像化システムに動作を実行させるロジックを含み、前記動作が、
前記網膜画像化システムと眼との間の位置合わせを判定することと、
前記位置合わせに基づいて前記動的照明器から出力される照明パターンを生成することと、
前記照明パターンで前記眼を照明しながら、前記画像センサを用いて前記網膜画像を取得することと、を含む、コントローラと、を備える、網膜画像化システム。
【請求項11】
前記動的照明器が、
前記中央アパーチャの周りに配置された内側光源のリングをさらに備える、請求項10に記載の網膜画像化システム。
【請求項12】
前記複数の一次照明アレイが、前記内側光源リングの外側の前記中央アパーチャから前記半径方向軸に沿って延在し、
前記複数の二次照明アレイが、前記内側光源リングの外側の前記中央アパーチャから延在する前記二次軸に沿って配置されており、
前記二次照明アレイの前記二次軸が、前記一次照明アレイの隣接するものの間に角度を付けて配置されている、請求項11に記載の網膜画像化システム。
【請求項13】
前記コントローラが、前記コントローラによって実行されると、前記網膜画像化システムに追加の動作を実行させるさらなるロジックを含み、前記追加の動作は、
前記位置合わせが閾値内の中心にあると判定されたときに前記網膜画像を取得しながら、前記内側光源リングで前記照明パターンを生成して前記眼を照明することと、
前記位置合わせが中心から外れていると判定されたときに前記網膜画像を取得しながら、前記一次または二次照明アレイのうちの少なくとも1つで前記照明パターンを生成して前記眼を照明することと、を含む、請求項11に記載の網膜画像化システム。
【請求項14】
前記位置合わせが前記閾値内の中心にあると判定されたときに、前記照明パターンが、円形照明パターンを含む、請求項13に記載の網膜画像化システム。
【請求項15】
前記動的照明器が、
前記中央アパーチャを画定し、かつ前記内側光源リングの半径方向内側に配置された内側バッフルをさらに備える、請求項11に記載の網膜画像化システム。
【請求項16】
前記動的照明器が、
前記内側光源リングの半径方向外側に配置され、かつさらに前記内側光源リングと前記一次および二次照明アレイとの間に配置された外側バッフルであって、前記内側バッフルよりも短い、外側バッフル、をさらに備える、請求項15に記載の網膜画像化システム。
【請求項17】
前記一次光源および前記二次光源が、各々、赤外線光源および可視光源を含む、請求項10に記載の網膜画像化システム。
【請求項18】
コントローラが、前記コントローラによって実行されると、前記網膜画像化システムにさらなる動作を実行させるさらなるロジックを含み、前記さらなる動作が、
位置合わせに基づいて、前記一次または二次光源のうちの1つ以上の前記赤外線光源で初期照明パターンを生成することと、
赤外線網膜画像をキャプチャすることと、
可視照明で前記網膜画像をキャプチャする前に、前記赤外線網膜画像を分析して、前記照明パターンを調整する必要があるかどうかを判定することと、を含む、請求項17に記載の網膜画像化システム。
【請求項19】
前記二次軸の各々は、前記二次軸が前記中央アパーチャの前記中心から半径方向に沿わないように、前記一次照明アレイの前記半径方向軸のうちの1つに平行であるがそこからオフセットされている、請求項10に記載の網膜画像化システム。
【請求項20】
前記二次軸が、各々、前記中央アパーチャの前記中心から半径方向に延在する、請求項10に記載の網膜画像化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月18日に出願された米国特許仮出願第62/902,286号の利益を主張する、2020年7月30日に出願された米国特許出願第16/943,879号に基づいており、その内容は両方とも参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、網膜画像化技術に関連し、具体的には、排他的ではないが、網膜画像化のための照明技術に関連する。
【背景技術】
【0003】
網膜画像化は、多くの網膜疾患のスクリーニング、現場診断、および進行モニタリングのための、基本的な眼検査の一部である。従来の網膜カメラは、有害な画像アーチファクトをブロックする必要があるため、典型的には、アイボックスが非常に限られている。網膜カメラのアイボックスは、典型的には、網膜カメラの接眼レンズに対して定義される空間内の三次元領域であり、網膜の許容可能な画像を取得するために、眼の瞳孔または角膜の中心がその中に存在する必要がある。従来のアイボックスのサイズが小さいため、網膜カメラの位置合わせが困難である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本発明の非限定的かつ非網羅的な実施形態を以下の図を参照して説明するが、特に指定されない限り、同様の参照番号は、様々な図全体を通して同様の部分を指す。必要に応じて、図面が煩雑にならないように、要素のすべての事例が必ずしも標識されているわけではない。図面は必ずしも縮尺通りではなく、説明されている原理を例解することに重点が置かれている。
【
図1】本開示の実施形態による、動的照明器を有する網膜画像化システムを例解する。
【
図2A】本開示の一実施形態による、互いに平行に延在する一次照明アレイと二次照明アレイを有する動的照明器の様々な図を例解する。
【
図2B】本開示の一実施形態による、互いに平行に延在する一次照明アレイと二次照明アレイを有する動的照明器の様々な図を例解する。
【
図3A】本開示の一実施形態による、中央アパーチャの中心から半径方向に延在する一次照明アレイおよび二次照明アレイを有する動的照明器の様々な図を例解する。
【
図3B】本開示の一実施形態による、中央アパーチャの中心から半径方向に延在する一次照明アレイおよび二次照明アレイを有する動的照明器の様々な図を例解する。
【
図4A】眼の照明およびその結果として得られる入射光を例解する。
【
図4B】眼の照明およびその結果として得られる入射光を例解する。
【
図5A】ユーザの眼の位置決めに基づいてユーザの眼の網膜を適切に照明する動的照明器の例示的な領域と、ユーザの眼の位置決めに基づいて角膜反射からの画像アーチファクトを引き起こす例示的な領域を例解する。
【
図5B】ユーザの眼の位置決めに基づいてユーザの眼の網膜を適切に照明する動的照明器の例示的な領域と、ユーザの眼の位置決めに基づいて角膜反射からの画像アーチファクトを引き起こす例示的な領域を例解する。
【
図6A】本開示の一実施形態による、画像アーチファクトを含む網膜画像を例解する。
【
図6B】本開示の一実施形態による、画像アーチファクトを含む網膜画像を例解する。
【
図7】本開示の実施形態による、網膜画像化システムの動作を例解するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
拡張されたアイボックスを有する動的照明器を有する網膜カメラのシステム、装置、および動作方法の実施形態が、本明細書に記載されている。以下の説明では、多くの具体的な詳細は、実施形態の徹底的な理解を提供するために、記載されている。しかしながら、関連技術の当業者は、本明細書に記載された技術が、具体的な詳細のうちの1つ以上を用いることなく、または他の方法、構成要素、材料などを用いて実施することができることを認識するであろう。他の事例では、周知の構造、材料、または動作は、特定の態様を不明瞭にすることを回避するように、詳細には図示または記載されていない。
【0006】
本明細書全体を通して「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。このように、本明細書全体を通して、様々な場所での「一実施形態では」または「実施形態では」という句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な様式で組み合わせることができる。
【0007】
高忠実度の網膜画像は、多くの網膜疾患のスクリーニング、診断、およびモニタリングに重要である。このために、網膜画像の部分を閉塞するか、または別様に害する画像アーチファクトの事例を低減または排除することが望ましい。
【0008】
図1は、本開示の実施形態による、動的照明器を有する網膜画像化システム100を例解する。網膜画像化システム100の例解された実施形態は、動的照明器105、画像センサ110、コントローラ115、ユーザインターフェース120、ディスプレイ125、位置合わせトラッカ130、および光リレーシステムを含む。光リレーシステムの例解された実施形態は、レンズ135、140、145、およびビームスプリッタ150を含む。動的照明器105の例解された実施形態は、中央アパーチャを取り囲む内側バッフル155および照明アレイ165を含む。
【0009】
光リレーシステムは、動的照明器105から出力された照明光180を、眼170の瞳孔を通る照明経路に沿って方向付けて(例えば、通過または反射させて)、網膜175を照明すると同時に、網膜175(すなわち、網膜画像)の画像光185を、画像センサ110への画像経路に沿って方向付けるように機能する。画像光185は、網膜175からの照明光180の散乱反射によって形成される。例解された実施形態では、光リレーシステムは、ビームスプリッタ150をさらに含み、ビームスプリッタ150は、画像光185の少なくとも一部を画像センサ110に通過させると同時に、ディスプレイ125から出力されたディスプレイ光190を眼170に方向付ける。ビームスプリッタ150は、偏光ビームスプリッタ、非偏光ビームスプリッタ(例えば、90%透過および10%反射、50/50ビームスプリッタなど)、ダイクロイックビームスプリッタ、または他のものとして実装され得る。光リレーシステムは、レンズ135、140、および145などのいくつかのレンズを含み、必要に応じて様々な光路に焦点を合わせる。例えば、レンズ135は、動作中にアイレリーフ195だけ眼170の角膜から変位する接眼レンズを集合的に形成する1つ以上のレンズ化要素を含み得る。レンズ140は、画像光185を画像センサ110に焦点を合わせるための1つ以上のレンズ要素を含み得る。レンズ145は、ディスプレイ光190を集束させるための1つ以上のレンズ要素を含み得る。光リレーシステムは、いくつかの様々な光学要素(例えば、レンズ、反射面、回折面など)で実装され得ることを理解されたい。
【0010】
画像センサ110は、可視スペクトルおよび赤外線スペクトルの光を感知し得る。画像センサ110は、別個の可視光および赤外画像センサ、または可視光および赤外光の両方を感知することができる単一の画像センサを含み得る。
【0011】
一実施形態では、ディスプレイ125から出力されるディスプレイ光190は、固視標または他の視覚刺激である。固視標は、患者に視覚的フィードバックを提供することによって網膜画像化システム100と眼170との間の位置合わせを得るのを助けることができるだけでなく、患者が自身の視力に適応させることができる固視標を患者に与え得る。ディスプレイ125は、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)、様々な照明された形状(例えば、照明された十字または同心円)、または他のものを含む様々な技術で実装され得る。
【0012】
コントローラ115は、画像センサ110、ディスプレイ125、動的照明器105、および位置合わせトラッカ130に結合されて、それらの動作を管理する。コントローラ115は、コントローラ115によって実行されると、コントローラ115が画像センサ110、ディスプレイ125、動的照明器105、および位置合わせトラッカ130を制御するようにするロジックを含み得る。
【0013】
コントローラ115は、マイクロコントローラ上で実行されるソフトウェア/ファームウェアロジック、ハードウェアロジック(例えば、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイなど)、またはソフトウェアとハードウェアロジックとの組み合わせを含み得る。
図1は、コントローラ115を異なる機能要素として例解するが、コントローラ115によって実行される論理的機能は、いくつかのハードウェア要素にわたって分散され得る。コントローラ115は、入力/出力(I/Oポート)、通信システム、または他のものをさらに含み得る。コントローラ115は、ユーザインターフェース120に結合されて、ユーザ入力を受信し、網膜画像化システム100に対するユーザ制御を提供する。ユーザインターフェース120は、1つ以上のボタン、ダイヤル、フィードバックディスプレイ、インジケータライトなどを含み得る。
【0014】
画像センサ110は、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)画像センサ、電荷結合素子(CCD)画像センサ、または他のものなどの様々な画像化技術を使用して実装され得る。一実施形態では、画像センサ110は、網膜画像を記憶するためのオンボードメモリバッファまたは付属のメモリを含む。
【0015】
位置合わせトラッカ130は、眼170の注視方向171を含む、網膜画像化システム100と眼170との間の位置合わせを追跡するように動作する。位置合わせトラッカ130は、瞳孔追跡、網膜追跡、虹彩追跡、または他のものを含む、眼170および網膜画像化システム100の相対位置を追跡するための様々な異なる技術を使用して動作し得る。これらの様々な追跡技術は、網膜画像化システム100によって使用されて、網膜画像化システムに対する眼球170の相対位置、ならびに眼球170の注視方向171を判定し得る。一実施形態では、位置合わせトラッカ130は、IR光を介して眼170を追跡するための1つ以上の赤外線(IR)エミッタを含む視線追跡カメラである。
【0016】
動作中、コントローラ115は、動的照明器105および網膜画像センサ110を動作させて、1つ以上の網膜画像をキャプチャする。動的照明器105は、その照明パターンが静的ではないという点で動的であるが、むしろ、眼170との判定された位置合わせに基づいて、コントローラ115の影響下で動的に変更される(以下で詳細に考察される)。照明光180は、網膜175を照明するために眼170の瞳孔を通るように方向付けられる。網膜175からの散乱反射は、内側バッフル155のアパーチャを通って画像経路に沿って画像センサ110に戻るように方向付けられる。内側バッフル155は、網膜画像を別様に害する有害な反射および光散乱を遮断する一方で、画像光自体を通過させるように動作する。動的照明器105によって出力される照明パターンは、有害な画像アーチファクトを低減するために、現行の位置合わせに基づいて選択される。画像アーチファクトは、眼170内の人間の水晶体による光散乱、角膜/虹彩からの反射、または網膜175からの照明光180の直接鏡面反射からさえ生じ得る。網膜175または角膜/虹彩からの直接鏡面反射は、網膜画像に色あせた領域を生成する可能性がある。動的照明器105から出力される照明パターンの動的変化は、これらの鏡面反射を画像経路から軸外に方向付けるのに役立ち、したがって、内側バッフル155によって遮断される。
【0017】
図2Aおよび2Bは、本開示の実施形態による、互いに平行に延在する一次照明アレイ220および二次照明アレイ230(一部のみがラベル付けされている)を有する動的照明器200の様々な図を例解する。動的照明器200は、
図1に例解される動的照明器105の一例であり得る。
図2Aに例解されるように、動的照明器200は、内側光源リング240、一次照明アレイ220、二次照明アレイ230、内側バッフル212、外側バッフル214、および本体250を含み得る。
【0018】
内側光源リング240、一次照明アレイ220、二次照明アレイ230、内側バッフル212、および外側バッフル214は、本体250に取り付けられるか、またはそうでなければ接続され得る。いくつかの実施形態では、内側光源リング240、一次照明アレイ220、および二次照明アレイ230は、単一の平面で本体250に取り付けられ得る。他の実施形態では、内側光源リング240、一次照明アレイ220、および二次照明アレイ230は、異なる平面で、または異なる平面(眼170からの異なる距離)で個々のLEDを用いて本体250に取り付けられ得る。
【0019】
内側バッフル212は、動的照明器200の中央開口部を画定し得る。外側バッフル214は、内側光源リング240と一次および二次照明アレイ220、230との間に位置し得る。内側光源リング240、一次照明アレイ220、および二次照明アレイ230は、本体250上または本体250内に配置され得る。一実施形態では、本体250は、モノリシックハウジング構造である。他の実施形態では、本体250は、互いに接続する複数の構成要素から製作され得る。本体250は、プラスチック、金属、または他のものから製作され得る。
【0020】
内側バッフル212および外側バッフル214は、戦略的に眼170に影を落として、内側光源リング240からの照明の発散パターンを制限する。眼が完全に位置合わせされているとき、内側バッフル212および外側バッフル214によって落とされた影は、角膜および水晶体での有害な反射を低減するために、角膜面および眼170の水晶体の中心に影を落とす。
【0021】
内側光源リング240は、いくつかの内側光源245を含み得る。例えば、
図2Aに例解されるように、内側光源リング240は、8つの内側光源245を含み得る。他の例示的な実施形態は、4つ以上の内側光源245を含み得る。内側光源245は、内側バッフル212によって画定される中央開口部の周りにリング状に配置され得、各内側光源245は、中央開口部の中心から同じ半径方向距離を有する。内側光源245は、中央開口部の周りに等しく離間され得る。各内側光源245は、可視光源241と、可視光源241のいずれかの側に一対の赤外線光源242とを含み得る。個々の可視光源241および赤外線光源242の個々の制御を含む内側光源リング240の照明は、コントローラ115によって制御され得る。
【0022】
一次照明アレイ220は、一次照明アレイ220が、内側光源リング240の外側の中央アパーチャから放射軸に沿って延在するように、中央アパーチャの周りに配置され得る。
図2Aに例解されるように、動的照明器200は、8つの一次照明アレイ220を含み得る。異なる数の一次照明アレイ220を用いる他の実施形態もまた、可能である。各一次照明アレイ220は、中央アパーチャの中心から半径方向外向きの方向に延在し得、中央アパーチャの中心の周りに等しく離間され得る。内側光源リング240の内側光源245の各々は、一次照明アレイ220の半径方向軸のうちの1つとして共通の極角を共有し得る。
【0023】
各一次照明アレイ220は、複数の一次光源225からなり得る。一次照明アレイ220は、4つの一次光源225を含み得る。他の例示的な実施形態における一次照明アレイ220は、異なる数の一次光源225を含み得る。各一次光源225は、可視光源221と、可視光源221のいずれかの側に一対の赤外線光源222とを含み得る。各一次光源225は、中央アパーチャの中心からの異なる半径方向距離を有し得る。個々の可視光源221および赤外線光源222の個々の制御を含む一次光源225の照明は、コントローラ115によって制御され得る。
【0024】
各二次照明アレイ230は、本体250上の一次照明アレイ220(または近接する一次照明アレイ220)のうちの1つの隣に配置され得る。
図2Aに例解されるように、動的照明器200は、8つの二次照明アレイ230を含み得る。異なる数の二次照明アレイ230を用いる他の実施形態もまた可能である。二次照明アレイ230は、内側光源リング240の外側の中央アパーチャから延在する二次軸に沿って配置され得る。二次照明アレイ230の二次軸は、一次照明アレイ220の隣接するものの間に角度を付けて配置される。言い換えると、各二次照明アレイ230は、中央アパーチャから離れる方向に、そして近接する一次照明アレイ220に平行に延在し得る。各二次照明アレイは、中央アパーチャから離れて延在し得るが、中央アパーチャの中心から半径方向外向きには延在しない場合がある。二次照明アレイ230は、3つの二次光源235を含み得る。他の例示的な実施形態では、二次照明アレイ230は、異なる数の二次光源235を含み得る。二次光源235の各々は、近接する一次照明アレイ220内の一次光源の各々の半径方向距離とは異なる、中央アパーチャの中心からの半径方向距離を有するように、一次光源225からオフセットされる。したがって、二次光源235は、隣接する一次光源225の間に中間間隔を提供する。この中間間隔は、一次光源225の物理的サイズが別の方法で直線に編成されたときに可能になる場合よりも小さいピッチを有する。そのため、二次光源235は、網膜画像化中に照明の場所を選択するための増加された粒度を提供する。
【0025】
各二次光源235は、可視光源231と、可視光源231のいずれかの側に一対の赤外線光源232とを含み得る。二次照明アレイ230のうちの1つにおける各二次光源235は、中央アパーチャの中心からの異なる半径方向距離を有し得る。二次光源235の各々の中心アパーチャからの半径方向距離は、近接する一次照明アレイ220の一次光源235のうちの2つの間の半径方向距離のうちの2つの間にあり得る。言い換えると、各二次光源235は、近接する一次照明アレイ220内の一次光源225とは異なる、中央アパーチャの中心からの半径方向距離を有し得る。個々の可視光源231および赤外線光源232の個々の制御を含む二次光源235の照明は、コントローラ115によって制御され得る。照明光180は、可視光源221、231、241のいずれか、または可視光源221、231、241の組み合わせから到来し得る。可視光源221、231、241は、白色光LEDであり得る。赤外線光源222、232、242は、赤外線LEDであり得る。
【0026】
図2Bは、異なる視点からの動的照明器200を例解する。例解されるように、外側バッフル214は、内側バッフル212よりも短い。一次および二次光源225、235は、本体250の空洞に配置され得る。これらの空洞はまた、外側バッフル214の外部の各光源の発散パターンを制限するための光バッフルを形成する。
【0027】
図3Aおよび3Bは、本開示の実施形態による、中央アパーチャの中心から半径方向に延在する一次照明アレイ320および二次照明アレイ330を有する動的照明器300の様々な図を例解する。動的照明器300は、
図1に例解される動的照明器115の別の例であり得る。動的照明器300は、二次照明アレイ330が一次照明アレイ320の1つに平行ではなく、中央アパーチャの中心から半径方向に延在することを除いて、動的照明器200と同様である。
【0028】
したがって、本体350、内側バッフル312、および外側バッフル314は、それぞれ、本体250、内側バッフル212、および外側バッフル214と同様であり得る。内側光源リング340、内側光源345、可視光源341および赤外線光源342は、それぞれ、内側光源リング240、内側光源245、可視光源241および赤外線光源242と同様であり得る。一次照明アレイ320、一次光源325、可視光源321、および赤外線光源322は、それぞれ、一次照明アレイ220、一次光源225、可視光源221、および赤外線光源222と同様であり得る。二次照明アレイ330、二次光源335、可視光源331、および赤外線光源332は、本体350上のそれらの場所を除いて、それぞれ、二次照明アレイ230、二次光源235、可視光源231、および赤外線光源232と同様であり得る。
【0029】
二次照明アレイ330は、中央アパーチャの中心から半径方向外向きに二次軸に沿って延在するように配置し得る。各二次照明アレイ330は、一次照明アレイ320のうちの2つ(近接する一次照明アレイ320)の間に等しく離間され得る。言い換えると、一次照明アレイ320および二次照明アレイ330は、中央アパーチャの周りに角度的に等しく離間される。各二次照明アレイ330は、複数の二次光源335からなり得る。各二次光源335は、可視光源331と、可視光源331のいずれかの側に一対の赤外線光源332と、を含み得る。二次照明アレイ320のうちの1つにおける各二次光源335は、中央アパーチャの中心からの異なる半径方向距離を有し得る。二次光源335の各々の中心アパーチャからの半径方向距離は、近接する一次照明アレイ320の一次光源335の半径方向距離のうちの2つの間にあり得る。言い換えると、各二次光源235は、中央アパーチャの中心から、近接する一次照明アレイ320内の一次光源325とは異なる半径方向距離を有し得る。個々の可視光源331および赤外線光源332の個々の制御を含む二次光源335の照明は、コントローラ115によって制御され得る。照明光180は、可視光源321、331、341のいずれか、または可視光源321、331、341の組み合わせから到来し得る。
【0030】
図4Aおよび4Bは、眼170の照明およびその結果として得られる入射光を例解する。
図4Aに例解されるように、網膜を照明するために、照明光405は、角膜面、虹彩面、および水晶体を通過する。画像光403はまた、それが眼170を離れるときに、水晶体、虹彩面、および角膜面を通過する。照明光405が角膜面、虹彩面、および水晶体を通過するとき、有害な反射が生じる可能性がある。これらの有害な反射によって、画像センサ110によってキャプチャされた画像の部分が洗い流されるか、またはそうでなければ使用不可になり得る。角膜面からの反射は、特に懸念され得る。
【0031】
図4Bは、反射407が画像センサ110によって受け取られたときに照明光と重なる場合に、照明光405が、どのように画像光403から画像の一部分を不鮮明にし得る反射407を引き起こし得るかを示している。照明光407が角膜面を通過する角度は、反射407が画像光と重なるかどうかを判定する。
【0032】
図5Aおよび5Bは、ユーザの眼170の位置決めに基づいてユーザの眼の網膜175を適切に照明する動的照明器200の例示的な領域と、ユーザの眼の位置決めに基づいて角膜反射からの画像アーチファクトを引き起こす例示的な領域を例解する。動的照明器200は、例示的な目的のために使用される。動的照明器200の領域の説明は、動的照明器300または他の例示的な実施形態に等しく適用される。
【0033】
上記のように、照明光407が角膜面に入る角度は、反射407が画像光403と重なるかどうかを判定する。照明光407が瞳孔を通過する角度は、網膜175全体が網膜画像化のために十分に照明されているかどうかを判定する。眼170を網膜画像化システム100と位置合わせすると、動的照明器105の特定の領域で可視光源221、231、241から出射された光が網膜175を異なる程度に照明するようになる。例えば、全照明領域504の可視光源221、231、241は、網膜175を完全に照明するが、他の領域の可視光源221、231、241は、網膜175を部分的にのみ照明する。したがって、1つの可視光源221、231、241のみで網膜175を完全に照明することが可能である。眼170が動く場合、全照明領域504は対応する様式で動くことになり、異なる可視光源221、231、241は網膜175を完全に照明することができる。
【0034】
眼170と網膜画像化システム100との位置合わせにより、動的照明器105の特定の領域で可視光源221、231、241から出射される光が、網膜175の部分を不鮮明にする反射を引き起こすことになる。これらの反射は、有害な画像アーチファクトの例である。例えば、反射領域502における可視光源221、231、241は、画像光403と重なる眼170の角膜面からの反射を引き起こし得る。全照明領域504および反射領域502のサイズおよび形状は、眼170の形状およびサイズ、ならびに眼170と網膜画像化システム100との位置合わせによって判定される。
【0035】
図5Aは、眼170が網膜画像化システム100と完全に位置合わせされた場合を例解する。この場合、全照明領域504および反射領域502は、中央アパーチャ内にあり、光源は、網膜175を完全に照明することはできない。しかしながら、内側光源リング240内のすべての可視光源241からの光の組み合わせは、網膜175を一緒に照明することができる。ほぼ完全な位置合わせ(わずかな位置ずれ)の同様の場合、可視光源リング240内の可視光源241は、反射領域502が可視光源241のいずれとも重ならない限り、画像センサ110によってキャプチャされた画像において反射することなく網膜175を一緒に照明することができる。内側バッフル212および外側バッフル214は、一次および二次光源225、235よりも内側光源リング240の反射領域502を小さくする。
【0036】
図5Aに例解されるように、眼170の位置合わせが完全に近いほど、全照明領域504および反射領域502は動的照明器105の中心において同心円になる(中央アパーチャの中心と位置合わせされる)。位置合わせが完全から離れるにつれて、全照明領域504および反射領域502の形状および場所は変化する。
【0037】
位置ずれは、有害な角膜反射、水晶体からの屈折散乱、および撮像アパーチャの閉塞につながる可能性がある。従来の画像化システムは、比較的小さなアイボックスを有しており、画像アーチファクトが画像経路に入るのを回避するために正確な位置合わせが必要である。動的照明器200、300は、2つの異なる照明アーキテクチャを組み合わせている。1つは、眼が眼の光軸または注視方向(内側光源リング240、340)とほぼ位置合わせされている場合であり、1つは、眼が眼の光軸または注視方向(一次および二次照明アレイ220、320、230、330)からオフセットされている場合である。これらの2つの照明アーキテクチャを動的に切り替えることにより、本明細書に記載の網膜画像化システムのアイボックスは、従来のリング照明器の2倍以上拡張することができる。
【0038】
眼170が網膜画像化システム100に対して横方向にシフトするとき、全照明領域504および反射領域502は、横方向にシフトし得る。また、全照明領域504と反射領域502の相対的な動きは、全照明領域504が反射領域502よりも大きくシフトするように異なり得る。このタイプの位置ずれは、網膜画像化システム100を調整することによって、または以下に説明する照明プロセスによって手動で修正し得る。
【0039】
図5Bに例解されるように、眼170が角度的に適所をはずれている場合(瞳孔が正確に中央アパーチャに方向付けられないように)、全照明領域504および反射領域502の形状は、中央アパーチャの中心から離れ、中央アパーチャの中心に向かう方向に垂直な方向に伸び得る。このタイプの位置ずれは、人が単一の場所に眼を集中させようとしているときでさえ、人の眼が絶えず動くので、網膜画像化システム100を手動で調整することによって調整するのが難しい場合がある。
【0040】
一次および二次画像アレイ220、230は、いずれかのタイプの位置ずれ(横方向または角方向)を補償するために使用され得る。一次および二次光源225、235は、瞳孔のサイズが約4~10ミリメートルの眼170の通常の動きによって引き起こされる中程度の位置ずれに対して、反射領域502ではなく、全照明領域504に1つの可視光源221、231を有するために配置される。反射領域502の外側の全照明領域504の領域は、必要な電力レベルで動作するLED間の距離の実際的な制限と比較して、相対的に小さくてもよい。さらに、照明領域は、中央アパーチャの中心に向かう方向に垂直な方向に延在するため、中央アパーチャの中心までの半径方向距離は、光源の半径方向角度よりも重要になる。したがって、第1の光源225および第2の光源235は、中央アパーチャの中心までの異なる半径方向距離を有し、その結果、可視光源221、231のうちの少なくとも1つは、全照明領域504内に、かつ反射領域502の外側にある。
【0041】
図5Bは、第1、第2、第3、および第4の一次光源225A、225B、225C、225D、ならびに第1、第2、および第3の二次光源235A、235B、235Cを含む。
図5Bに例解されるように、第1および第2の一次光源225A、225Bは、反射領域502内にある。第3および第4の一次光源225C、225Dは、全照明領域の外側にあり、網膜175の部分的な照明のみを提供するであろう。しかしながら、第2の二次光源235Bは、全照明領域504にあり、反射領域502にはない。したがって、第2の二次光源235Bからの角膜反射なしに、網膜175の適切な照明を達成することが可能となり得る。したがって、中程度の位置ずれは、第2の二次光源235Bを使用することによって補償され得る。
【0042】
図6Aおよび6Bは、本開示の一実施形態による、画像アーチファクトを含む網膜画像を例解する。
図6Aは、画像アーチファクト605を有する可視光源221、231、241のうちの1つを用いて可視光で撮影された例示的な網膜画像601を例解する。画像アーチファクト605は、網膜画像化システムと眼との間の位置ずれにより、迷光と照明源221、231、241からの有害な反射とが画像経路に入り、最終的に網膜画像光で画像センサによってキャプチャされるときに発生し得る。
【0043】
図6Bは、画像アーチファクト607を伴う
図6Aからの可視光源221、231、241と同じ光源からの一対の赤外線光源222、232、242を用いて赤外線で撮影された例示的な赤外線網膜画像602を例解する。見てわかるように、赤外線網膜画像602のアーチファクト607は、網膜画像601のアーチファクト605とほぼ同じ赤外線画像602の領域にある。したがって、赤外線網膜画像602のアーチファクト607の場所は、アーチファクト605が可視光の網膜画像601のどこに現れ得るか(赤外線網膜画像602のアーチファクト607の間)を示す。
【0044】
赤外線は人間の眼には見えない。したがって、眼は可視光と同じようには赤外線に反応(例えば、まぶたを閉じる、瞳孔のサイズを制限する、または眼をそらす)しない。したがって、可視光源221、231、241、321、331、341を使用して適切な照明でかつ有害な画像アーチファクトを伴わない可視光で網膜175を画像化し得るかどうかを、迅速な画像処理と組み合わせた赤外光で網膜画像を撮影することを使用して判定し得る。
【0045】
図7は、本開示の実施形態による、網膜画像化システム100の動作のためのプロセス700を例解するフローチャートである。プロセスブロックの一部または全部がプロセス700に現れる順序は、限定的なものとみなされるべきではない。むしろ、本開示の利益を有する当業者は、プロセスブロックの一部が、例解されていない様々な順序で、または並列でも実行され得ることを理解するであろう。プロセス700は、コントローラ115によって制御され得る。
【0046】
プロセスブロック705において、網膜画像化プロセスが開始される。開始は、ユーザがユーザインターフェース120から電源ボタンを選択することを含み得る。プロセスブロック710において、位置合わせトラッカ130は、網膜カメラシステム100と眼170との間の位置合わせの追跡および判定を開始する。特に、追跡は、接眼レンズ135と眼170の瞳孔、虹彩、または網膜との間の相対的な測定値として判定され得る。瞳孔追跡、虹彩追跡、網膜追跡、試行錯誤などを含む様々な異なる位置合わせ追跡技術を実装し得る。位置合わせ追跡は、画像取得中に網膜175を照明するために照明スキームのうちのどれを使用すべきかを判定するために使用される。これらの照明スキーム間の遷移は、相対的な位置合わせが中央の位置合わせとオフセットの位置合わせとの間をふらつくため、急に起こるかまたはその間でスムーズにフェードし得る。
【0047】
決定ブロック715において、網膜カメラシステム100が、定義された閾値内で注視方向171(例えば、眼170の光軸)と中央に位置合わせされていると判定された場合、プロセス700は、プロセスブロック720に続く。位置合わせは、位置合わせトラッカを使用して眼170の全体的な位置合わせを判定することによって、および/または赤外線光源242、342を使用して網膜175を照明する赤外線画像をキャプチャすることによって、中央に位置合わせされていると判定され得る。画像の画像分析が、網膜175が有害な介在物なしに完全に照明されていることを示す場合、コントローラ115は、網膜カメラシステム100が注視方向171と中央に位置合わせされていると判定し得る。
【0048】
プロセスブロック720において、動的照明器105は、コントローラ115によって動作し、内側光源リング240、340の内側光源245、345のすべてをオンすることによって、眼170の瞳孔を通して網膜175を照明するための円形照明パターンを生成する。
【0049】
可視光源241、341の出射発散パターンは、内側および外側バッフル212、312、214、314、ならびに内側バッフル212、312によって落とされる影によって制限および制御される。内側バッフル212、312は、眼170において有害な散乱を引き起こすであろう可視光源241、341から出力された照明光の一部を遮断するのに役立つ。内側バッフル305は、反射(角膜面および水晶体の垂直部分)によって画像センサ110によってキャプチャされた画像アーチファクトを低減させる眼の構造に戦略的に照明の影を落とす。
【0050】
プロセスブロック730において、網膜像は、内側バッフル212、312によって画定された中央アパーチャを通過する一方で、内側バッフル212、312は、有害な反射および他の漂遊屈折をさらに遮断する。次に、プロセスブロック740において、画像センサ110は、網膜画像を形成する画像光185を取得する。プロセスブロック720、730、および740の動作は、数回実行され得る。または、言い換えると、いくつかの網膜画像がすばやく連続してキャプチャされ得る。眼170が可視光源の明るいフラッシュに反応する前に、一般に、6~20の画像をキャプチャすることができる。したがって、プロセスブロック720、730、および740の動作は、連続して約20回まで実行され得る。
【0051】
プロセスブロック750において、コントローラは、網膜画像(または複数の網膜画像)を処理して、適切な画質を確保し得る。例えば、網膜の適切な照明および有害な画像アーチファクトに対するチェックを行うために、画像処理が行われ得る。画像処理中に、網膜画像を組み合わせて(例えば、画像スタッキング)、網膜画像から有害な画像の介在物を除外し得る。
【0052】
決定ブロック715に戻ると、網膜カメラシステム100は、定義された閾値(中程度の位置ずれ)によって注視方向171からオフセットされていると判定された場合、プロセス700は、プロセスブロック760に続く。プロセスブロック760において、オフセットの方向および量は、赤外線光源222、232、322、332を使用して推定される。オフセットの方向および量は、いくつかの異なる方式で推定され得る。
【0053】
第1の実施例として、位置合わせトラッカ130は、ユーザの注視のオフセットの方向を検出し得る。次に、検出されたオフセット方向の一次および二次光源225、325、235、335の赤外線光源222、322、232、332を使用して、赤外線網膜画像をキャプチャして、一次および二次光源225、325、235、335のうちのどれが視覚スペクトルに有害な画像アーチファクトなしに網膜175の適切な照明を提供し得るかを判定し得る。
【0054】
第2の実施例として、プロセスブロック710で撮影された赤外線網膜画像を使用して、網膜画像の照明パターンを分析することによってオフセットの方向を判定し得る。次に、判定されたオフセット方向の一次および二次光源225、325、235、335の赤外線光源222、322、232、332を使用して、赤外線網膜画像をキャプチャして、一次および二次光源225、325、235、335のうちのどれが視覚スペクトルに有害な画像アーチファクトのない網膜175の適切な照明を提供し得るかを判定し得る。
【0055】
第3の実施例として、一次および二次光源225、325、235、335の赤外線光源222、322、232、332を使用して推測およびチェックする方法を使用して、オフセットの方向および量を推定し得る。
【0056】
プロセスブロック770において、キャプチャされた赤外線網膜画像は、一次および二次光源225、325、235、335のどの可視光源221、321、231、331が視覚スペクトルに有害な画像アーチファクトのない網膜175の適切な照明を提供し得るかを判定するために、コントローラ115によって処理され得る。一次光源および二次光源225、325、235、335の同じものに対しても、赤外線光源222、322、232、332および可視光源221、321、231、331を使用してキャプチャされた網膜画像の間には、照明および画像アーチファクトにいくつかの違いが存在する。また、上記のように、人間の眼は常に動く。さらに、上記のように、眼が可視光に反応する前に、一般に、6~20の網膜画像を可視光でキャプチャし得る。したがって、コントローラ115は、一次および二次光源225、325、235、335のうちの1つからの可視光照明を使用して網膜画像を最初にキャプチャすることを決定し得る。コントローラ115はまた、後続の画像を迅速に連続してキャプチャするために、どの他の一次および二次光源225、325、235、335を使用するかを判定し得る。例えば、コントローラ115は、一次照明アレイ220、320のうちの1つにおける一次光源225、325の各々、および二次照明アレイ230、330のうちの1つにおける二次光源235、335の各々から網膜画像をキャプチャすることを決定し得る。コントローラ115はまた、一次および二次光源225、325、235、335のうちの1つを使用して複数の網膜画像をキャプチャすることを決定し得る。
【0057】
代替的または追加的に、コントローラ115は、一次および二次光源225、325、235、335のうちの複数を使用して網膜画像をキャプチャすることを決定し得る。例えば、異なる一次および二次照明アレイ220、320、230、330の一次および二次光源225、325、235、335のうちの複数を使用して、単一の一次または二次光源225、325、235、335からの網膜の不十分な照明を補償し得る。言い換えると、コントローラ115は、網膜画像をキャプチャしながら網膜175を照明するために、一次光源225、325、235、335の組み合わせを使用することを決定し得る。
【0058】
プロセスブロック780において、動的照明器105は、コントローラ115によって動作して、眼170の瞳孔を通して網膜175を照明するための照明パターン(一次および二次光源225、325、235、335のうちの1つ以上を使用して)を生成する。次に、画像光は、プロセスブロック730で中央アパーチャを通過する。プロセスブロック740において、画像センサ110はまた、網膜画像をキャプチャするためにコントローラ115によって制御される。複数の網膜画像がすばやく連続してキャプチャされ得る。
【0059】
プロセスブロック750で、コントローラ115は、網膜画像を処理して、網膜画像のいずれかが、有害な画像アーチファクトのない網膜の適切な照明を有するかどうかを判定し得る。コントローラ115はまた、網膜画像を一緒に組み合わせて、有害な画像アーチファクトを除去するか、または不十分な照明による網膜画像の領域を埋め得る。
【0060】
上記で説明したプロセスは、コンピュータソフトウェアおよびハードウェアの観点から説明されている。説明された技術は、機械によって実行されると、説明された動作を機械に実行させる、有形のまたは非一時的な機械(例えば、コンピュータ)可読記憶媒体内で具現化される機械実行可能命令を構成し得る。さらに、プロセスは、特定用途向け集積回路(「ASIC」)または他のものなどのハードウェア内に具現化され得る。
【0061】
有形の機械可読記憶媒体は、機械(例えば、コンピュータ、ネットワークデバイス、個人情報端末、製造ツール、1つ以上のプロセッサのセットを有する任意のデバイスなど)がアクセス可能な非一時的形態の情報を提供(すなわち、記憶)する任意のメカニズムを含む。例えば、機械可読記憶媒体は、記録可能/記録不可能な媒体(例えば、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光学記憶媒体、フラッシュメモリデバイスなど)を含む。
【0062】
要約中に記載されているものを含む、本発明の例解された実施形態の上記の説明は、網羅的であること、または本発明を開示された正確な形態に限定することを意図していない。本発明の特定の実施形態、およびその実施例は、例解目的のために本明細書に記載されているが、当業者が認識するように、本発明の範囲内で様々な修正が可能である。
【0063】
これらの修正は、上記の詳細な説明に照らして、本発明に対して行うことができる。以下の特許請求の範囲で使用される用語は、本発明を本明細書に開示された特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって完全に決定されるべきであり、それらは、特許請求項解釈の確立された原則に従って解釈されるべきである。