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特許7314397エラストマーフォーム用シリコーン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】エラストマーフォーム用シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20230718BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230718BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20230718BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CFH
C08K3/013
C08L83/05
C08L83/07
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022504727
(86)(22)【出願日】2020-07-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 FR2020000211
(87)【国際公開番号】W WO2021014058
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】1908451
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507421304
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・フランス・エスアエス
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES France SAS
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィッド・マリオット
(72)【発明者】
【氏名】オーレリ・ペレ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー・デュボワ
(72)【発明者】
【氏名】エステル・デルヴュー-ゴベ
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-088650(JP,A)
【文献】特開2003-226774(JP,A)
【文献】特開平03-009932(JP,A)
【文献】特表2013-536885(JP,A)
【文献】特開昭62-095328(JP,A)
【文献】特開平06-207038(JP,A)
【文献】特開昭63-017822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンフォームMの前駆体であるオルガノポリシロキサン組成物Xであって、
a.1分子あたり、ケイ素に結合した少なくとも2個のC2~C6アルケニル基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンAと、
b.1分子あたり、少なくとも2個のSiH単位を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンBと、
.触媒として有効な量の少なくとも1種のヒドロシリル化触媒Cと、
d.水又は水性エマルジョンである、少なくとも1種の造孔剤Dと、
e.前記組成物Xの総量に対して、少なくとも3重量%の、ヒュームドシリカである少なくとも1種の無機充填剤Eであって、その比表面積が100~300m2/gであるものと、
f.前記組成物Xの総量に対して、少なくとも6重量%の、粉砕石英である少なくとも1種の無機充填剤Fと、
g.少なくとも1種の耐熱添加剤Jと
を含み、前記ヒュームドシリカEに対する前記石英Fの重量比が0.5~4であることを特徴とする、オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のオルガノポリシロキサンBが1分子あたり少なくとも3個のSiH単位を有することを特徴とする、請求項1に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のヒドロシリル化触媒Cが白金族に属する少なくとも1種の金属から誘導される化合物である、請求項1又は2に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
無機充填剤Eの量が、前記組成物Xの3重量%~14重量%である、請求項1に記載のオルガノポリシロキサン組成物X。
【請求項5】
無機充填剤Fの量が、前記組成物Xの6重量%~25重量%である、請求項1に記載のオルガノポリシロキサン組成物X。
【請求項6】
前記ヒュームドシリカEに対する前記石英Fの重量比が1~3.6である、請求項1に記載のオルガノポリシロキサン組成物X。
【請求項7】
ケイ素に結合した少なくとも2個のC2~C6アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンガムGをさらに含む、請求項1に記載のオルガノポリシロキサン組成物X。
【請求項8】
抑制剤Iをさらに含む、請求項1に記載のオルガノポリシロキサン組成物X。
【請求項9】
請求項1に記載のオルガノポリシロキサン組成物Xであって、
a.1分子あたりケイ素に結合した少なくとも2個のC2~C6アルケニル基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンAを40重量%~80重量%、
b.1分子あたり少なくとも2個のSiH単位を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンBを1重量%~20重量%、
c.白金金属を2~400重量ppm、
d.水又は水性エマルジョンである造孔剤Dを0.3重量%~2.5重量%、
e.ヒュームドシリカであり、比表面積が100~300m2/gである少なくとも1種の無機充填剤Eを、前記組成物Xの総量に対して少なくとも3重量%、
f.粉砕石英である少なくとも1種の無機充填剤Fを、前記組成物Xの総量に対して少なくとも6重量%、及び
g.少なくとも1種の耐熱添加剤Jを0.4重量%~5重量%
含むオルガノポリシロキサン組成物X。
【請求項10】
前記少なくとも1種のオルガノポリシロキサンBが1分子あたり少なくとも3個のSiH単位を有することを特徴とする、請求項9に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項11】
請求項1に記載のオルガノポリシロキサン組成物Xであって、
a.1分子あたりケイ素に結合した少なくとも2個のC2~C6アルケニル基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンAを40重量%~80重量%。
b.1分子あたり少なくとも2個のSiH単位を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンBを1重量%~20重量%、
c.白金金属を2~400重量ppm、
d.水又は水性エマルジョンである造孔剤Dを0.3重量%~2.5重量%、
e.ヒュームドシリカであり、比表面積が100~300m2/gである少なくとも1種の無機充填剤Eを3重量%~14重量%、
f.粉砕石英である少なくとも1種の無機充填剤Fを、組成物Xの総量に対して6重量%~25重量%、
g.少なくとも1種の耐熱添加剤Jを0.4重量%~5重量%、
h.架橋抑制剤Iを0~3000重量ppm、及び
i.ケイ素に結合した少なくとも2個のC2~C6アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンガムGを0重量%~4重量%
含むオルガノポリシロキサン組成物X。
【請求項12】
前記少なくとも1種のオルガノポリシロキサンBが1分子あたり少なくとも3個のSiH単位を有することを特徴とする、請求項11に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか記載のオルガノポリシロキサン組成物Xの前駆体であり、請求項1~12のいずれかに記載の成分A、B、C、D、E、F及びJを含む2成分系Pであって、前記2成分系Pは、前記オルガノポリシロキサン組成物Xを形成するために混合されることを目的とする2つの別々の部分P1及びP2で提供され、かつ、前記成分を含み、前記部分P1又はP2の一方が、前記触媒C及び前記造孔剤Dを含み、かつ、前記オルガノポリシロキサンBを含まないことを特徴とする2成分系。
【請求項14】
請求項1~12のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物Xが架橋及び/又は硬化してなるシリコーンフォームM。
【請求項15】
次の段階:
(a)請求項1~12のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物Xの前記成分の全てを含む2成分系P、3成分系T又は多成分系を準備し、
(b)前記2成分系Pの2つの部分又は前記3成分系Tの3つの部分又は多成分系の全ての部分を混合してオルガノポリシロキサン組成物Xを得、及び
(c)前記オルガノポリシロキサン組成物Xを放置して架橋させ及び/又は硬化させてシリコーンフォームMを得ること
を含む、シリコーンフォームMの製造方法。
【請求項16】
建築、輸送、電気絶縁又は家庭用電気器具分野における充填用フォーム又は発泡シールの製造における、請求項1~12のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物X又は請求項14に記載のシリコーンフォームMの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、新規な重付加架橋性オルガノポリシロキサン組成物に関し、この組成物は、低密度、すなわち0.20g/cm3未満のシリコーンエラストマーからなり、良好な物性、機械的性質及び耐火性を示すフォーム(「シリコーンフォーム」という)を生成することを目的とする。
【0002】
用語「シリコーンフォーム」とは、フォーム形態のオルガノポリシロキサン組成物をいう。シリコーンフォームからなる材料は、断熱及び/又は防音、可撓継手の製造、減衰要素としての使用など、様々な用途の分野で知られている。これらの用途には、シリコーンエラストマーの既知の特性、例えば熱安定性、良好な機械的性質、耐火性などが利用されている。
【0003】
輸送産業では、優れた機械的性質及び耐火性を維持しつつ、密度の低いシリコーンフォームが求められている。
【0004】
シリコーンフォームは当該技術分野において周知であり、その製造法は多くの特許文献に記載されている。
【背景技術】
【0005】
従来技術
シリコーンフォームを得るためのいくつかの技術が存在する。ここでは、重付加架橋性シリコーン組成物から得られるシリコーンフォームについて述べる。
【0006】
米国特許第4,189,545号では、シリコーンフォームは、ケイ素に結合したビニル基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素に結合した水素原子を含むオルガノポリシロキサンと、水とを含む重付加架橋性組成物から製造されている。水は、ヒドリド官能基を有するオルガノポリシロキサンと反応することによって、ガス状水素及びシラノールを生成する。次に、シラノールは、ヒドリド官能基を有するオルガノポリシロキサンと脱水縮合反応することによってガス状水素の第2分子を生成する一方で、ケイ素に結合したビニル基を有する別のポリジオルガノシロキサンは、ヒドリド官能基を有する別のポリジオルガノシロキサンとの付加反応により同時に反応することによって、シリコーンフォームのネットワークの構築に関与することになる。この技術による主な貢献は、初期組成物にシラノールを添加することなく、少量の水を加えることでガス状水素を発生させることができる点である。耐火性は石英及びカーボンブラックの使用により改善する。得られるフォームの密度は0.4g/cm3と高いが、機械的性質の測定値はない。
【0007】
米国特許第4,590,222号では、シリコーンフォームは、ケイ素に結合したビニル基を有する直鎖オルガノポリシロキサンと、ケイ素に結合したビニル基を有するオルガノポリシロキサン樹脂と、白金系触媒と、オルガノヒドロシロキサンと、鎖末端単位にヒドロキシル基を有するオルガノポリシロキサンと、充填剤と、有機アルコールとを含む組成物から製造される。その際、ガス状水素は、有機アルコールとオルガノヒドロシロキサンとの反応によって生成される。
【0008】
しかし、アルコール又はヒドロキシル基を有するオルガノポリシロキサンを造孔剤の原料として使用する技術は、多くの用途、例えば輸送産業向けのものに対して高すぎる密度を示すフォームを与える傾向がある。さらに、フォームの密度を下げることに成功した場合には、これは、例えば引張強度や引裂強度などの機械的性質を犠牲にして行われることが多い。
【0009】
別の技術は、シリコーンマトリックスに添加される造孔剤又は添加剤を使用することからなり、この造孔剤又は添加剤は、熱の作用下で、次のいずれかによって材料を膨張させる:
・ガスの放出に伴う分解;特にアゾ系の誘導体、例えばアゾジカルボンアミドの場合、窒素、二酸化炭素ガス及びアンモニアを放出することが可能になる。このタイプの造孔剤は、他の材料に広く使われているにもかかわらず、深刻な毒性の問題(ヒドラジンの放出)がある;又は
・特に低沸点溶剤の場合には、相変化(液体から気体へ)。
【0010】
最後に、別の技術は、シリコーンマトリックスにガス(例えば窒素)を機械的に加圧導入し、その後ダイナミックミキサーに通すことからなり、これによって良好な特性を有するフォームを得ることができるが、これには嵩高で高価な装置が必要となる。
【0011】
米国特許第4,418,157号に記載される別のアプローチには、シリコーンフォームの前駆体である、「MQ」型のシリコーン樹脂(例えば、Walter Noll,「Chemistry and Technology of Silicones」,Academic Press,1968,第2版,第1~9頁に記載のシリコーン類の命名規則)を含み、任意にビニル官能基及び水を含む重付加架橋性組成物が記載されている。この特定の樹脂を添加することにより、得られるフォームの密度を低くすることが可能となる。しかし、この種の樹脂は高価な出発材料であり、その工業的合成には嵩高で高価な装置が必要となる。得られるフォームの密度は、0.25g/cm3を超える。
【0012】
良好な耐火性を示すシリコーンフォームの前駆体組成物の一例が、米国特許第6,084,002号に記載されている。記載された組成物は、重付加反応により架橋するシリコーンベースと、造孔剤としてヒドロキシル基を有する化合物と、ウォラストナイトとを含む。実施例で作製された組成物の粘度はいずれも190000mPa・sを超え、得られたフォームの密度は0.20g/cm3~0.25g/cm3である。
【0013】
従来技術のフォームで遭遇する別の問題は、シリコーンフォームからなる材料の気泡のサイズ及びその分布に関するものである。気泡が大きすぎる場合には、測定点に応じた物性の異方性をもたらすからである。用語「物性の異方性」とは、シリコーンフォームの測定点に応じた測定値のばらつきを意味するものと解される。
【0014】
シリコーンフォームについて、用語「小型気泡」とは、幅(又は直径)が約1mm以下である気泡を意味すると解され、用語「中型気泡」とは、幅(又は直径)が1~1.5mmである気泡を意味すると解されるのに対し、「大型気泡」については、その幅(又は直径)は1.5mmよりも大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】米国特許第4,189,545号明細書
【文献】米国特許第4,590,222号明細書
【文献】米国特許第4,418,157号明細書
【文献】米国特許第6,084,002号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
技術的課題
上記の多数の技術が存在するにもかかわらず、産業、特に輸送産業には、低密度のシリコーンフォーム、すなわち0.20g/cm3未満のシリコーンフォームを提供することが依然として必要とされている。さらに、これらのシリコーンフォームは、発泡材料内の気泡のサイズが均一に分布して外観が均一であり、良好な機械的性質と優れた耐火性を示し、燃焼中に有毒ガスを発生させないことが必要である。
【0017】
発明の概要
したがって、本発明の目的は、架橋及び/又は硬化後に、低密度のシリコーンフォーム、すなわち、密度が0.20g/cm3未満のシリコーンフォームを、気泡の幅又は直径が約2mm以下である気泡のサイズ及び材料内の気泡サイズの均一な分布で生成することを目的とした新規なオルガノポリシロキサン組成物を提供することである。また、当該シリコーンフォームは、良好な機械的性質及び優れた耐火性を示し、燃焼時に有毒ガスを発生させないものである。
【0018】
また、本発明の主題は、オルガノポリシロキサン組成物の前駆体であり、その架橋及び/又は硬化後にシリコーンフォームを生成することができる、貯蔵時に良好な安定性を示す2成分系、3成分系又は多成分系に関するものでもある。
【0019】
本発明の他の主題は、密度が0.2g/cm3未満であるにもかかわらず良好な機械的性質及び耐火性を示すオルガノポリシロキサン組成物の架橋及び/又は硬化によって得ることのできるシリコーンフォームである。
【0020】
本発明の別の主題は、シリコーンフォームの製造方法である。
【0021】
本発明の最後の主題は、建築、輸送、電気絶縁又は家庭用電気器具分野における充填用フォーム又は発泡シールの製造における、本発明に係るシリコーンフォームの使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
したがって、本発明の主題は、シリコーンフォームMの前駆体であるオルガノポリシロキサン組成物Xであって、
a.1分子あたり、ケイ素に結合した少なくとも2個のC2~C6アルケニル基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンAと、
b.1分子あたり、少なくとも2個のSiH単位、好ましくは少なくとも3個のSiH単位を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンBと、
c.好ましくは白金族に属する少なくとも1種の金属から誘導される化合物である、触媒として有効な量の少なくとも1種のヒドロシリル化触媒Cと、
d.水又は水性エマルジョンである、少なくとも1種の造孔剤Dと、
e.前記組成物Xの総量に対して、少なくとも3重量%の、ヒュームドシリカである少なくとも1種の無機充填剤Eであって、その比表面積が100~300m2/gであるものと、
f.前記組成物Xの総量に対して、少なくとも6重量%の、粉砕石英である少なくとも1種の無機充填剤Fと、
g.少なくとも1種の耐熱添加剤Jと
を含み、前記ヒュームドシリカEに対する前記石英Fの重量比が0.5~4であることを特徴とする、オルガノポリシロキサン組成物である。
【0023】
本発明によれば、気泡のサイズが均一に分散したシリコーンフォームMの前駆体であるオルガノポリシロキサン組成物Xを開発することによって、上記目的、すなわち密度が0.20g/cm3以下であり、耐火性に優れ、引張強度又は引裂強度などの機械的性質が良好であることを達成することができた。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
特に、1分子あたり、ケイ素に結合した少なくとも2個のC2~C6アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンAは、特に、
次式の少なくとも2個のシロキシル単位:
【数1】
(式中、
・YはC2~C6アルケニル、好ましくはビニルであり、
・R1は、1~12個の炭素原子を有する一価の炭化水素基であり、好ましくは、メチル、エチル又はプロピル基などの1~8個の炭素原子を有するアルキル基、3~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基及び6~12個の炭素原子を有するアリール基から選択され、
・a=1又は2、b=0、1又は2であり、合計a+b=2又は3である。)、及び
任意に次式の単位:
【数2】
(式中、R1は上記と同じ意味であり、c=2又は3である。)
から形成できる。
【0025】
好ましくは、前記オルガノポリシロキサンAは、25℃における動粘度が100~100000mPa・s、好ましくは100~80000mPa・s、より好ましくは1000~50000mPa・sのオイルである。
【0026】
特に断らない限り、本発明に関連する全ての粘度は、「ニュートン」と呼ばれる25℃での動粘度量、すなわち、それ自体公知の方法で、測定される粘度が速度勾配から独立するのに十分に低いせん断速度勾配でブルックフィールド粘度計を用いて測定される動粘度に相当する。
【0027】
これらのオルガノポリシロキサンAは、Y2SiO2/2、YR1SiO2/2及びR1 2SiO2/2シロキシル単位よりなる群から選択される「D」シロキシル単位と、YR1 2SiO1/2、Y21SiO1/2及びR1 3SiO1/2シロキシル単位よりなる群から選択される末端「M」シロキシ単位とから本質的になる直鎖構造を有する。なお、記号Y及びR1は上記の通りである。
【0028】
末端「M」単位の例としては、トリメチルシロキシ基、ジメチルフェニルシロキシ基、ジメチルビニルシロキシ基又はジメチルヘキセニルシロキシ基が挙げられる。
【0029】
「D」単位の例としては、ジメチルシロキシ、メチルフェニルシロキシ、メチルビニルシロキシ、メチルブテニルシロキシ、メチルヘキセニルシロキシ、メチルデセニルシロキシ又はメチルデカジエニルシロキシ基が挙げられる。
【0030】
本発明に係る不飽和化合物Aであることができる直鎖オルガノポリシロキサンの例としては、以下のものが挙げられる:
・ジメチルビニルシリル末端を含むポリ(ジメチルシロキサン);
・ジメチルビニルシリル末端を含むポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルフェニルシロキサン);
・ジメチルビニルシリル末端を含むポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルビニルシロキサン);
・トリメチルシリル末端を含むポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルビニルシロキサン);及び
・環状ポリ(メチルビニルシロキサン)。
【0031】
好ましくは、オルガノポリシロキサン化合物Aは、アルケニル単位の含有量が0.001重量%~30重量%、好ましくは0.01重量%~10重量%、好ましくは0.02重量%~5重量%である。
【0032】
最も推奨される形態では、オルガノポリシロキサンAは末端ジメチルビニルシリル単位を含み、さらに好ましくは、オルガノポリシロキサンAはジメチルビニルシリル末端を含むポリ(ジメチルシロキサン)である。
【0033】
オルガノポリシロキサン組成物Xは、好ましくは40重量%~80重量%のオルガノポリシロキサンAを含み、より好ましくは50重量%~70重量%のオルガノポリシロキサンAを含む。
【0034】
一実施形態によれば、オルガノポリシロキサン組成物Xは、分岐オルガノポリシロキサン又はC2~C6アルケニル単位を含む樹脂を含まない。
【0035】
化合物Bは、1分子あたり少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個のヒドロシリル官能基又はSi-H単位を含むオルガノハイドロポリシロキサン化合物である。
【0036】
オルガノヒドロポリシロキサンBは、有利には、少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個の次式のシロキシル単位:
【数3】
(式中、
・R2基は、同一であり又は異なり、1~12個の炭素原子を有する一価基を表し、
・d=1又は2、e=0、1又は2、d+e=1、2又は3である。)、及び
任意に、次式の他の単位:
【数4】
(式中、R2は上記と同一の意味を有し、f=0、1、2又は3である。)
を含むオルガノポリシロキサンとすることができる。
【0037】
上記式[数3]及び[数4]において、複数のR2基が存在する場合には、これらは互いに同一であっても異なっていてもよいものとする。好ましくは、R2は、塩素又はフッ素などの少なくとも1個のハロゲン原子によって置換されていてよい1~8個の炭素原子を有するアルキル基、3~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基及び6~12個の炭素原子を有するアリール基よりなる群から選択される一価基を表すことができる。R2は、有利には、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニルよりなる群から選択できる。
【0038】
式[数3]において、記号dは1に等しいことが好ましい。
【0039】
オルガノヒドロポリシロキサンBは、直鎖、分岐又は環状の構造を有することができる。重合度は、2以上が好ましく、一般的には5000以下である。
【0040】
直鎖重合体に関する場合には、次式Dの単位:R2 2SiO2/2又はD’:R2HSiO2/2から選択されるシロキシル単位、及び次式M:R2 3SiO1/2又はM’:R2 2HSiO1/2の単位から選択される末端シロキシル単位から本質的に形成され、上記式中、R2は上記と同じ意味である。
【0041】
好ましくは、オルガノヒドロポリシロキサンBの粘度は、1~5000mPa・s、より好ましくは1~2000mPa・s、さらに好ましくは5~1000mPa・sである。
【0042】
ケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を含む本発明に係る化合物Bとすることができるオルガノヒドロポリシロキサンの例としては、次のものが挙げられる:
・ヒドロジメチルシリル末端を含むポリ(ジメチルシロキサン);
・トリメチルシリル末端を含むポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルヒドロシロキサン);
・ヒドロジメチルシリル末端を含むポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルヒドロシロキサン);
・トリメチルシリル末端を含むポリ(メチルヒドロシロキサン);及び
・環状ポリ(メチルヒドロシロキサン)。
【0043】
オルガノヒドロポリシロキサンBが分岐構造を示す場合、次式のシリコーン樹脂よりなる群から選択されることが好ましい:
・M’Q(ここで、ケイ素原子に結合した水素原子はM基によって保持される)、
・MM’Q(ここで、ケイ素原子に結合した水素原子はM単位の一部によって保持される)、
・MD’Q(ここで、ケイ素原子に結合した水素原子はD基によって保持される)、
・MDD’Q(ここで、ケイ素原子に結合した水素原子はD基の一部によって保持される)、
・MM’TQ(ここで、ケイ素原子に結合した水素原子はM単位の一部によって保持される)、
・MM’DD’Q(ここで、ケイ素原子に結合した水素原子はM及びD単位の一部によって保持される)、及び
・それらの混合物。
ここで、M、M’、D及びD’は上で定義した通りであり、Tは式R2 3SiO1/2のシロキシル単位であり、Qは式SiO4/2のシロキシル単位であり、式中、R2は上記と同じ意味である。
【0044】
好ましくは、オルガノヒドロポリシロキサン化合物Bは、0.2重量%~91重量%、より好ましくは3重量%~80重量%、さらに好ましくは15重量%~70重量%のヒドロシリルSi-H官能基含有量を有する。
【0045】
有利には、化合物Aのアルケン官能基に対する化合物BのヒドロシリルSi-H官能基のモル比は、5~100、好ましくは10~90、より好ましくは15~65、さらに好ましくは20~55である。
【0046】
オルガノヒドロポリシロキサンBのヒドロシリル官能基の一部は、水と反応してガス状水素を形成し、組成物の良好な発泡を可能にする。
【0047】
オルガノポリシロキサン組成物Xは、好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは3重量%~15重量%のオルガノヒドロポリシロキサンBを含む。
【0048】
ヒドロシリル化触媒Cは、特に、白金及びロジウム化合物から選択できるのみならず、国際公開第2015/004396号及び国際公開第2015/004397号に記載のものなどのケイ素化合物、国際公開第2016/075414号に記載のものなどのゲルマニウム化合物又は国際公開2016/071651号、国際公開第2016/071652号及び国際公開2016/071654号に記載のものなどのニッケル、コバルト又は鉄錯体から選択できる。触媒Cは、白金族に属する少なくとも1種の金属から誘導される化合物であることが好ましい。これらの触媒は周知である。特に、米国特許第3,159,601号、米国特許第3,159,602号及び米国特許第3,220,972号並びに欧州特許第0057459号、欧州特許第0188978号及び欧州特許第0190530号に記載の白金と有機生成物との錯体、又は米国特許第3,419,593号、米国特許第3,715,334号、米国特許第3,377,432号及び米国特許第3,814,730号に記載の白金とビニル化オルガノシロキサンとの錯体などを使用することが可能である。
【0049】
好ましくは、触媒Cは、白金から誘導される化合物である。この場合、白金金属の重量として算出される触媒Cの重量基準の量は、組成物Xの総重量を基準として、概して2~400重量ppm、好ましくは5~200ppmである。
【0050】
好ましくは、触媒Cは、カールシュテッド白金触媒である。
【0051】
シリコーンフォームMの前駆体であるオルガノポリシロキサン組成物Xは、造孔剤Dとして水又は水性エマルジョンを含む。水は、組成物Xに直接添加できる。有利には、水は、水性エマルジョン、例えば連続シリコーン油性相、水性相及び安定化剤を含む直接水中油型シリコーンエマルジョン又は逆油中水型シリコーンエマルジョンの形態で導入できる。
【0052】
一実施形態によれば、水は、およそ60重量%の含水量を有する水中シリコーン油型のエマルジョンを介して導入される。水がエマルジョンを介してオルガノポリシロキサン組成物Xに導入されると、組成物Xにおける水の分散性及び保存時の安定性が向上する。
【0053】
好ましくは、オルガノポリシロキサン組成物Xは、0.5重量%~2.5重量%の造孔剤Dを含む。
【0054】
好ましくは、オルガノポリシロキサン組成物Xは、0.3重量%~1.2重量%の水を含み、より好ましくは0.4重量%~1重量%の水を含む。
【0055】
無機充填剤は、比表面積が100~300m2/gであるフュームドシリカEである。有利には、ヒュームドシリカの表面は、予め疎水性になるように処理されている。この処理は、この用途に一般に採用されている様々な有機ケイ素化合物を用いて実施できる。このような有機ケイ素化合物は、有機クロロシラン、ジオルガノシクロポリシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、ヘキサオルガノジシラザン、ジオルガノポリシロキサン又はジオルガノシクロポリシラザンとすることができる(仏国特許第1126884号、仏国特許第1136885号、仏国特許第1236505号、英国特許第1024234号)。
【0056】
好ましい実施形態によれば、シリカEは、in situプロセスに従って、オルガノポリシロキサンAの全部又は一部との混合中に処理される。
【0057】
有利な実施形態によれば、シリカEは、1種以上のヘキサオルガノジシラザンで処理される。より好ましくは、シリカEは、ヘキサメチルジシラザン単独で又はヘキサメチルジシラザンとジビニルテトラメチルジシラザンとの混合物として処理される。
【0058】
有利には、オルガノポリシロキサン組成物Xは、3重量%~14重量%のシリカE、好ましくは3重量%~12重量%、より好ましくは4重量%~9重量%のシリカを含む。シリカの含有量が3重量%未満であると、良好な機械的性質を得ることができない。シリカEの含有量が14重量%よりも多いと、組成物Xは高い粘度を示し、フォームMの密度が大きくなる。
【0059】
本発明による組成物Xは、石英Fである少なくとも1種の他の無機充填剤も含む。これら2種の充填剤の組み合わせは、所望の特性を有するフォームMを得るために必要である。
【0060】
石英Fとしては、平均粒径が10μm未満の天然石英を粉砕したものを使用することが好ましい。石英Fは、オルガノポリシロキサンとの相溶性を向上させるために、任意に処理してもよい。
【0061】
有利には、オルガノポリシロキサン組成物Xは、6重量%~25重量%の石英F、好ましくは10重量%~22重量%、より好ましくは13重量%~20重量%の石英Fを含む。石英の含有量が6重量%未満であると、良好な耐火性を有するフォームを得ることができない。石英Fの含有量が25%を超えると、架橋後に得られるフォームMの機械的性質が悪化する。
【0062】
所望の特性を有するフォームMを得るためのオルガノポリシロキサン組成物Xの重要なパラメータは、石英/シリカ重量比である。
【0063】
所望の特性の妥協点、すなわち、密度が0.20g/cm3未満であり、耐火性に優れ、引張強度又は引裂強度などの機械的性質が良好なシリコーンフォームMを得るためには、組成物X中のフュームドシリカEに対する石英Fの重量比が0.5~4であることが必要である。
【0064】
有利には、組成物X中におけるヒュームドシリカEに対する石英Fの重量比は、1~3.6、より有利には1.5~3.2、より有利には1.5~2.8である。
【0065】
本発明に係る組成物Xは、少なくとも1種の耐熱性添加剤Jを含む。これらの耐熱性添加剤Jは当業者に周知である。これらのものは、有利には、鉄、チタン、アルミニウム、ニッケル及び銅などの金属の塩、酸化物及び水酸化物;セリウム及びランタンなどの希土類金属の塩、水酸化物及び酸化物;有機リン化合物、白金誘導体、カーボンブラック、ならびに例えばマイカ及びウォラストナイトなどのケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム及び/又はケイ酸カリウムよりなる群から選択できる。
【0066】
好ましくは、耐熱添加剤Jは、鉄、チタン又はアルミニウムの塩、酸化物及び水酸化物、セリウム及びランタンの塩、水酸化物及び酸化物、カーボンブラック、マイカ及びウォラストナイトよりなる群から選択される。
【0067】
さらに好ましくは、耐熱添加剤は、チタン塩、酸化物及び水酸化物、セリウム塩、水酸化物及び酸化物、カーボンブラック、マイカ及びウォラストナイトよりなる群から選択される。
【0068】
好ましくは、本発明に係る組成物Xは、0.4重量%~5重量%、より好ましくは0.5重量%~3重量%の耐熱添加剤Jを含む。
【0069】
一実施形態によれば、本発明に係る組成物Xは、ケイ素に結合した少なくとも2個のC2~C6アルケニル基を含むジオルガノポリシロキサンガムGも含む。ジオルガノポリシロキサンガムGは、25℃で1000Pa・sを超える、好ましくは2000Pa・sを超える粘度を有する高分子量の直鎖重合体であり、そのジオルガノポリシロキサン鎖は、式R2Si2/2の単位から本質的になり、式R3SiO1/2の単位によって各末端でブロックされ、R基は1~8の炭素原子又は2~6の炭素原子を有するアルキル基を表す。ただし、ジオルガノポリシロキサン鎖に沿って、R2Si2/2以外の少量の単位、例えばRSi3/2及びSiO4/2の単位が存在することは、R2Si2/2単位の数に対して多くとも2%の割合で除外されない。
【0070】
有利には、ジオルガノポリシロキサンガムGは、0.3重量%を超える、好ましくは0.5重量%を超えるビニル単位の含有量を有する。好ましくは、ジオルガノポリシロキサンガムGは、0.5重量%~6重量%、より好ましくは0.5重量%~4重量%、さらに好ましくは1重量%~3.5重量%のビニル単位の含有量を有する。
【0071】
一実施形態によれば、本発明に係る組成物Xは、0重量%~4重量%のジオルガノポリシロキサンガムG、より好ましくは0.5重量%~3重量%のジオルガノポリシロキサンガムGを含む。
【0072】
また、本発明に係る組成物Xは、他の成分、例えば、
・トリオルガノシロキシ単位によってその鎖の各末端でブロックされたジオルガノポリシロキサンオイルHであって、そのケイ素原子に結合した有機基が、1~8個の炭素原子を有するアルキル基から選択されるもの、
・架橋抑制剤I、
・着色基剤、及び
・他の充填剤
を含むこともできる。
【0073】
架橋抑制剤I(又は付加反応の遅延剤)は、その部分について、以下の化合物から選択できる:
・オルガノポリシロキサン、有利には少なくとも1個のアルケニルによって置換された環状オルガノポリシロキサン、テトラメチルビニルテトラシロキサンが特に好ましい、
・ピリジン
・有機ホスフィン及びホスファイト、
・不飽和アミド、
・マレイン酸アルキル、及び
・アセチレン系アルコール。
【0074】
有利には、抑制剤Iは、次式のアセチレン系アルコールである:
(R1)(R2)C(OH)-C≡CH
式中、
・R1は、直鎖若しくは分岐のアルキル基又はフェニル基であり、
・R2は、水素原子、直鎖若しくは分岐のアルキル基、又はフェニル基であり、
・R1及びR2基と、三重結合に対してα位に位置する炭素原子とは、任意に環を形成することが可能であり、
・R1及びR2に含まれる炭素原子の総数は5以上、好ましくは9~20である。
【0075】
前記アルコールは、好ましくは250℃を超える沸点を示すものから選択される。例えば、商業的に入手可能な以下の製品が挙げられる:
・1-エチニル-1-シクロヘキサノール、
・3-メチル-1-ドデシン-3-オール、
・3,7,11-トリメチル-1-ドデシン-3-オール、
・1,1-ジフェニル-2-プロピン-1-オール、
・3-エチル-6-エチル-1-ノニン-3-オール、及び
・3-メチル-1-ペンタデシン-3-オール。
【0076】
シリコーンフォームMを製造するために採用されるプロセスに応じて、抑制剤の存在は必須であっても必須でなくてもよい。必要であれば、このような架橋抑制剤は、オルガノポリシロキサン組成物Xの総重量に対して、多くとも3000ppmの割合で、好ましくは100~2000ppmの割合で存在する。
【0077】
有利には、架橋抑制剤Iは、1-エチニル-1-シクロヘキサノールである。
【0078】
他の充填剤として、オルガノポリシロキサン組成物Xに対して、難燃性を向上させるために、例えば、水和無機充填剤、カルシウム又はマグネシウムの酸化物又は炭酸塩などの難燃性無機充填剤を添加することが可能である。好ましくは、水和無機充填剤は、カルシウム、マグネシウム又はアルミニウムをベースとし、例えば、水酸化マグネシウムMg(OH)2、水酸化アルミニウムAl(OH)3、実験式Mg5(CO3)(OH)42Oのヒドロマグネサイト、水酸化カルシウムなどである。別の実施形態によれば、オルガノポリシロキサン組成物Xに中空ガラス微小球を添加することが可能である。
【0079】
一実施形態によれば、オルガノポリシロキサン組成物Xは、
a.1分子あたりケイ素に結合した少なくとも2個のC2~C6アルケニル基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンAを40重量%~80重量%、
b.1分子あたり少なくとも2個のSiH単位、好ましくは少なくとも3個のSiH単位を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンBを1重量%~20重量%、
c.白金金属を2~400重量ppm、
d.水又は水性エマルジョンである造孔剤Dを0.3重量%~2.5重量%、
e.ヒュームドシリカであり、比表面積が100~300m2/gである少なくとも1種の無機充填剤Eを、前記組成物Xの総量に対して少なくとも3重量%、
f.粉砕石英である少なくとも1種の無機充填剤Fを、前記組成物Xの総量に対して少なくとも6重量%、及び
g.少なくとも1種の耐熱添加剤Jを0.4重量%~5重量%
含む。
【0080】
別の実施形態によれば、オルガノポリシロキサン組成物Xは、
a.1分子あたりケイ素に結合した少なくとも2個のC2~C6アルケニル基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンAを40重量%~80重量%。
b.1分子あたり少なくとも2個のSiH単位、好ましくは少なくとも3個のSiH単位を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンBを1重量%~20重量%、
c.白金金属を2~400重量ppm、
d.水又は水性エマルジョンである造孔剤Dを0.3重量%~2.5重量%、
e.ヒュームドシリカであり、比表面積が100~300m2/gである少なくとも1種の無機充填剤Eを3重量%~14重量%、
f.粉砕石英である少なくとも1種の無機充填剤Fを、組成物Xの総量に対して6重量%~25重量%、
g.少なくとも1種の耐熱添加剤Jを0.4重量%~5重量%、
h.架橋抑制剤Iを0~3000重量ppm、及び
i.ケイ素に結合した少なくとも2個のC2~C6アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンガムGを0重量%~4重量%
含む。
【0081】
本発明の別の主題は、請求項のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物Xの前駆体であり、請求項のいずれかに記載の成分A、B、C、D、E、F及びJを含む2成分系Pであって、前記2成分系Pは、前記オルガノポリシロキサン組成物Xを形成するために混合されることを目的とする2つの別々の部分P1及びP2で提供され、かつ、前記成分を含み、前記部分P1又はP2の一方が、前記触媒C及び前記造孔剤Dを含み、かつ、前記オルガノポリシロキサンBを含まないことを特徴とする2成分系である。
【0082】
また、本発明の主題は、請求項のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物Xの前駆体であり、請求項のいずれかに記載の成分A、B、C、D、E、F及びJを含む3成分系Tであって、前記3成分系Tが、前記オルガノポリシロキサン組成物Xを形成するために混合されることを目的とする3つの別々の部分T1、T2及びT3として提供され、かつ、前記成分を含み、
・部分T1、T2又はT3のうちの1つが触媒Cを含み、かつ、造孔剤D又はオルガノポリシロキサンBを含まず、
・T1、T2又はT3のうちの一つが造孔剤Dを含み、かつ、触媒C又はオルガノポリシロキサンBを含まず、
・T1、T2、T3のうちの一つがオルガノポリシロキサンBを含み、かつ、触媒C又は多孔質化剤Dを含まない
ことを特徴とする3成分系である。
【0083】
貯蔵寿命を向上させるため、及び/又は各成分の粘度を最適化するために、他の多成分系を提供することも可能である。一実施形態によれば、耐熱添加剤Jを他の成分から、特に触媒Cから分離することが有利な場合がある。
【0084】
有利には、本発明に係るオルガノポリシロキサン組成物Xの粘度は50000mPa・s未満、好ましくは40000mPa・s未満である。この組成物は充填剤を含む組成物であるため、組成物Xの粘度は次の方法に従って測定される。粘度測定は、1°の角度、20mmの直径の円錐板型ローターを備えたHaakeレオメーターを用いて、25℃で実施される。コーンとプレートとの隙間は0.053mmである。数滴の製品サンプルをプレート上に堆積させた後、120秒で0から20s-1まで、その後120秒で20から0s-1まで変動するせん断応力の増加に供する。せん断応力が減少する間に10s-1で粘度を読み取る。
【0085】
本発明の別の主題は、次の段階を含むシリコーンフォームMの製造方法に関する:
(a)上記オルガノポリシロキサン組成物Xの前記成分の全てを含む2成分系P、3成分系T又は多成分系を準備し、
(b)前記2成分系Pの2つの部分又は前記3成分系Tの3つの部分又は多成分系の全ての部分を混合してオルガノポリシロキサン組成物Xを得、及び
(c)前記オルガノポリシロキサン組成物Xを放置して架橋させ及び/又は硬化させてシリコーンフォームMを得ること。
【0086】
段階(b)中において、混合は周囲温度に近い温度、すなわち10~40℃で行われる。この段階(b)の間に、ミキサーのタイプ及び加えられるせん断に応じて組成物Xの温度の上昇が観察される場合がある。
【0087】
シリコーンフォームMの架橋又は硬化を促進することが望ましい場合には、段階(b)をさらに高い温度、有利には40~70℃で実施することが可能である。
【0088】
段階(b)は、低圧ダイナミックミキサーによって直接型内又は撹拌容器内で実施でき、その後、得られた組成物Xを型に注入することができる。その後、架橋及び硬化が行われる型を閉じてもよいし、閉じなくてもよい。
【0089】
良好な機械的性質を有する均質なシリコーンフォームMを得るためには、混合品質が良好であることが重要である。
【0090】
段階(c)は、組成物X及び段階(b)の温度に応じて変動してよい持続時間を有することができる。一般に、良好な特性を有するシリコーンフォームMは、温度ならびに組成物X中の触媒及び阻害剤の濃度に応じて数分後又は数時間後に得られる。
【0091】
有利には、このプロセス中の水素の放出に関連するリスクを回避するために、フォームMの製造のための全プロセスは、空気又は窒素でフラッシングしながら行われる。
【0092】
任意に、段階(c)で得られたフォームMは、アニーリング段階を受けることができる。これは、50~200℃、好ましくは100~150℃の温度で、1~数時間、好ましくは1~4時間の持続時間を有する熱処理からなる。このアニーリング段階により、必要に応じて、シリコーンフォームMの耐火性及び機械的性質を向上させることが可能となる。
【0093】
本発明の別の主題は、上記オルガノポリシロキサン組成物Xを架橋及び/又は硬化させて得られるシリコーンフォームMである。
【0094】
また、本発明は、建築、輸送、電気絶縁又は家庭用電気器具分野における充填用又は漏れ防止用フォーム、また発泡シールの製造における、上記オルガノポリシロキサン組成物X又は上記シリコーンフォームMの使用に関するものでもある。
【0095】
輸送、特に鉄道の分野では、このシリコーンフォームMを座席のパッド材として使用できる。
【実施例
【0096】

出発物質:
例では以下の化合物を使用した。
【0097】
ビニル化オルガノポリシロキサン
全ての例において、記号Viはビニル基を示す。
a1:(CH32ViSiO1/2単位でブロックされたポリジメチルシロキサンの混合物であり、その粘度は25℃で3500~20000mPa・sである。
【0098】
オルガノヒドロポリシロキサン
b1:(CH33SiO1/2単位でブロックされたポリメチルヒドロシロキサンオイルであり、その粘度は25℃で30mPa・sである。
【0099】
c1:カールシュテッド白金触媒。
【0100】
d1:水を約59.5重量%含むシリコーンエマルジョン。
【0101】
フュームドシリカ
f1:ヘキサメチルジシラザンとジビニルテトラメチルジシラザンとの混合物で処理された比表面積300m2/gのフュームドシリカ。
f2:ヘキサメチルジシラザンで処理された比表面積300m2/gのヒュームドシリカ。
【0102】
石英
q1:Sikron E600(登録商標)石英:石英の粉砕品で、粒子の半分が4μm以下である。
【0103】
オルガノポリシロキサンガム
g1:ジメチルシロキサン単位と2.4重量%のビニル単位を含むメチルビニルシロキサン単位とから本質的になるジオルガノポリシロキサンガム。
【0104】
i1:酸化チタンと、マイカと、水酸化セリウムとの混合物を含む耐熱・耐火添加剤の混合物。
【0105】
抑制剤j:(CH32(Vi)SiO1/2単位でブロックされたポリジメチルシロキサンオイル中に1%のエチニルシクロヘキサノールを含有し、25℃で600mPa・sの粘度を有する溶液。
【0106】
試験した組成物を以下の表1に記載する。
【0107】
試験の進行の説明:
全ての試験において、シリカを、ビニル化オルガノポリシロキサンの一部と予め混合させる。ヘキサメチルジシラザン、任意にジビニルテトラメチルジシラザン及び水をこの混合物に添加する。このようにして得られた混合物を高温条件下で2時間混合した後、脱揮を行う。これは、いわゆるシリカのin situ疎水化処理として知られているものである。
【0108】
その後、以下の表1に記載の配合を完了させるための各種成分を添加し、常温で混合させる。機械式ミキサーを備えたドリルを使用して23℃で約30秒間にわたって手動で混合させた後に、急速に発泡が始まる。続いて、この混合物を型に流し込む。
【0109】
いくつかの試験では、140℃で2時間のアニーリング段階を実施する。
【0110】
得られたフォームについて、後述する試験に従って特性評価を行う。
【0111】
本明細書において、略号「TeS」、「EB」、「TrS」は、それぞれ、AFNOR NF T 46002規格に準拠した引張強度(MPa)、破断点伸び(%)、引裂強度(MPa)を表す。
【0112】
限界酸素指数LOIの測定:
この指数は、ロウソクのように、試料の燃焼を下向きに維持するのに必要な分子状酸素(O2)の最小割合に相当し、(O2+N2)試験混合物の%として表される。
【0113】
常温で、試験用煙突内の混合ガスの流れに浸された試料を炎に接触させる。LOIに相当する臨界値が得られるまで、O2含有量を減少させる。標準大気には約21%のO2が含まれている。LOIがこの値より大きいと自己消火性、逆に小さいと可燃性ということになる。この試験により、異なるシリコーンフォームの耐火性を比較することができる。LOIが高く、耐火性の良好なシリコーンフォームを得ることが望ましい。
【0114】
得られた様々なシリコーンフォームの特性を以下の表2に示す。
【0115】
【表1】
n.d:決定されず
【0116】
【表2】
n.d:決定されず
【0117】
気泡のサイズについて、1~5の値で特性評価する。1は最も小さな気泡のサイズに相当し、5は最も大きなサイズに相当する。用語「小型気泡」とは、気泡の幅又は直径が約1mm以下(上記の表では等級が2又は3)であるのに対し、「大型気泡」については、幅又は直径が約1.5mm(等級が5)であるものを意味するものとする。
【0118】
実施した比較試験から次のことが示される:
・石英の非存在下では、耐熱添加剤が存在するにもかかわらず、得られたシリコーンフォームの耐火性は低く、引裂強度は0.3MPa未満である(比較例1)。
・シリカの非存在下では、組成物の架橋及び発泡が正常に生じない。フォームが裂け、測定を実施するのに十分な均質部分が存在しない(比較例3)。
・石英/シリカの重量比が4を超えると、機械的性質が弱くなり、引裂強度が0.3MPa未満となる(比較例2)。
【0119】
実施例1~5は、本発明に係る組成物によって、完全に満足できる特性の妥協点、すなわち低密度と、良好な機械的性質と、良好な耐火性とを有するシリコーンフォームMを得ることが可能になることを示す。