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特許7314401モータユニットの制御方法およびかかる方法を実施するためのモータユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】モータユニットの制御方法およびかかる方法を実施するためのモータユニット
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/22 20060101AFI20230718BHJP
   H02P 6/16 20160101ALI20230718BHJP
【FI】
H02P6/22
H02P6/16
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022508930
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2020074317
(87)【国際公開番号】W WO2021047949
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】102019213752.0
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519453607
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ジャーマニー ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エトガー イェリヒョウ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヴィンクラー
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-112567(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022170(WO,A1)
【文献】特開平11-341897(JP,A)
【文献】特開2014-180119(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0241173(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/22
H02P 6/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ(4)ステータ(3)および前記ロータ(4)の回転運動のためのモータコントローラ(6)を備えたモータユニット(2)の制御方法であって、当該方法は、
ロータポジションセンサ(5)によりスタートロータポジション(Start-RP)を検出するステップと、
前記スタートロータポジション(Start-RP)からのロータポジション(RP)の許容偏差に対する少なくとも1つの安全上問題のないポジション許容範囲(SB)を特定または設定するステップと、
前記ロータ(4)のための少なくとも1つのポジションオフセット(ΔRP)を、前記ロータ(4)において調整可能な前記ポジションオフセット(ΔRP)が常に前記ポジション許容範囲(SB)内にあるように、特定もしくは設定された前記ポジション許容範囲(SB)に応じて特定または設定するステップと、
前記ロータ(4)のための目標ロータポジション(Soll-RP)を、前記スタートロータポジション(Start-RP)と前記ポジションオフセット(ΔRP)とに基づき特定するステップと、
目標制御パターン(Soll-SM)を、特定された前記目標ロータポジション(Soll-RP)に基づき設定するステップと、
前記目標制御パターン(Soll-SM)によって前記ロータ(4)を設定された前記目標ロータポジション(Soll-RP)に向かって回転させるために、モータ制御パターン(SI-SM)を生成して前記モータユニット(2)に適用するステップと、
前記モータユニット(2)を制御する実際制御パターン(Ist-SM)を、前記モータコントローラ(6)と前記モータユニット(2)との間のインタフェース(SS)において検出するステップと、
前記モータ制御パターン(SI-SM)による前記ロータ(4)の回転から結果として生じた前記ロータ(4)の実際ロータポジション(Ist-RP)を検出するステップと、
検出された前記実際制御パターン(Ist-SM)も、検出された前記実際ロータポジション(Ist-RP)も、それらの検証のためにフィードバックするステップと、
を含
フィードバックされた前記実際制御パターン(Ist-SM)およびフィードバックされた前記実際ロータポジション(Ist-RP)に基づき、安全信号(Safe)および/またはエラー信号(Not-safe)が生成および/または出力および/または伝送される、
モータユニット(2)の制御方法。
【請求項2】
第1の検証段階において、検出された前記実際制御パターン(Ist-SM)を前記目標制御パターン(Soll-SM)と比較し、前記実際制御パターン(Ist-SM)が設定された制御許容範囲(SM-TB)内に位置していれば、安全信号(Safe)として第1の検証信号(VS1)を生成し、そうでなければ該第1の検証信号(VS1)の生成を行わず、または前記エラー信号(Not-safe)を生成する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1の検証段階において、検出された前記実際制御パターン(Ist-SM)を前記目標制御パターン(Soll-SM)と比較し、前記実際制御パターン(Ist-SM)が設定された制御許容範囲または前記制御許容範囲(SM-TB)内に位置していれば、前記モータコントローラ(6)をアクティベートし、またはアクティベートしたままにし、そうでなければ前記モータコントローラ(6)をディアクティベートする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記制御許容範囲(SM-TB)を、前記目標制御パターン(Soll-SM)のための少なくとも1つまたは複数の制御上限値および/または少なくとも1つまたは複数の制御下限値に基づき決定する、請求項または記載の方法。
【請求項5】
第2の検証段階において、検出された前記実際ロータポジション(Ist-RP)を前記目標ロータポジション(Soll-RP)と比較し、検出された前記実際ロータポジション(Ist-RP)が設定された前記目標ロータポジション(Soll-RP)と等しく、かつ/または設定された安全上問題のない前記ポジション許容範囲(SB)内に位置していれば、安全信号(Safe)として第2の検証信号(VS2)を生成し、そうでなければ該第2の検証信号(VS2)の生成を行わず、またはエラー信号(Not-safe)を生成する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
第2の検証段階において、検出された前記実際ロータポジション(Ist-RP)を前記目標ロータポジション(Soll-RP)と比較し、検出された前記実際ロータポジション(Ist-RP)が設定された前記目標ロータポジション(Soll-RP)と等しく、かつ/または設定された前記ポジション許容範囲(SB)内に位置していれば、前記モータコントローラ(6)をアクティベートし、またはアクティベートしたままにし、そうでなければ前記モータコントローラ(6)をディアクティベートし、またはエラー信号(Not-safe)を生成する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記ロータ(4)のために設定される前記ポジション許容範囲(SB)を、少なくとも1つまたは複数のポジション上限値および/または少なくとも1つまたは複数のポジション下限値に基づき、決定および/または設定する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
設定される前記ポジション許容範囲(SB)を決定するとき、および/または前記制御許容範囲(SM-TB)を決定するとき、ロータポジションセンサ(5)の測定公差、前記モータユニット(2)の製造公差、および/または前記ロータ(4)のポジション公差を、少なくとも1つの許容係数によって考慮する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記ロータ(4)の運動方向を周期的に決定する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
モータユニット(2)のモータコントローラ(6)を検査するための、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法の使用。
【請求項11】
モータユニット(2)であって、少なくとも、
ステータ(3)およびロータ(4)と、
ロータポジション(RP)を検出するためのロータポジションセンサ(5)と、
前記ロータ(4)の回転運動のためのモータコントローラ(6)と、
を備えており、
前記モータコントローラ(6)は、モータ制御パターン(SI-SM)の適用により前記モータユニット(2)を制御および駆動し、さらに制御モジュール(7)が設けられており、該制御モジュール(7)は、前記モータコントローラ(6)の前段に接続されているか、または前記モータコントローラ(6)の一部であり、
前記モータコントローラ(6)および前記制御モジュール(7)は、前記モータユニット(2)の動作前または動作後または動作中、前記モータコントローラ(6)を請求項1からまでのいずれか1項記載の方法に従い検査するように、場合によってはアクティベートまたはディアクティベートするように、構成されている、
モータユニット(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータユニットの制御方法およびかかる方法を実施するためのモータユニットに関する。
【0002】
従来技術から、たとえば電気機械の形態のモータユニットが公知である。たとえば電気機械は、アクチュエータおよびステータ-ロータユニットとして構成されている。
【0003】
電気機械、特にモータユニットは、たとえば車両においてその車両を駆動するために使用され、その際にこれを安全関連アプリケーションの一部とすることができる。車両における安全関連アプリケーションは、安全関連の誤動作が発生した場合に、安全な状態に移行させなければならない。たとえばISO規格26262という規格によれば、自動車における安全関連の電気/電子アプリケーションのために、複数の安全要件段階ASIL(Automotive Safety Integrity Levelの略)が明記されている。
【0004】
本発明の基礎とする課題は、モータユニットの安全な制御を実現するモータユニットの新規の制御方法およびこの方法を実施するための改善されたモータユニットを提供することにある。
【0005】
この課題は方法については、本発明によれば請求項1に記載された特徴によって解決される。この課題はモータユニットについては、本発明によれば請求項12または13に記載された特徴によって解決される。
【0006】
従属請求項には本発明の有利な実施形態が記載されている。
【0007】
少なくともロータおよびステータを備えたモータユニットの制御方法において、最初にスタートロータポジションが検出される。次いで、ロータポジションについて少なくとも1つの安全上問題のないポジション許容範囲が設定および/または特定される。さらに、ロータについて少なくとも1つのポジションオフセットが、ポジション許容範囲に応じて設定もしくは特定される。この場合、ポジションオフセットは特に、設定または特定されたポジション許容範囲内で設定および/または特定され、したがってロータにおいて調整可能なポジションオフセットは、常にポジション許容範囲内に位置するようになる。たとえばポジションオフセットとして、角度値および/または方向の向きが設定または特定される。特に、ロータのための一定のポジションオフセットが、等しく維持される角度値および/または等しく維持される方向の向きの形態で設定または特定される。
【0008】
次のステップにおいて、スタートロータポジションとポジションオフセットとに基づき目標ロータポジションが特定され、この目標ロータポジションに基づき目標制御パターンが設定され、この目標制御パターンからモータコントローラによりモータ制御パターンが生成されて、設定された目標ロータポジションに向かってロータを回転させるために、モータユニットに適用される。その際にこの方法によってさらに提案されるのは、モータコントローラとモータユニットとの間のインタフェースのところで、モータユニットを制御している実際制御パターンを検出する、ということである。さらに、実際制御パターンによるロータの回転から結果として生じた実際ロータポジションが検出され、その際、検出された実際制御パターンも検出された実際ロータポジションも、それらの検証のためにモータコントローラにフィードバックされる。
【0009】
本発明による方法によれば、安全上問題のないポジション許容範囲内に位置するロータポジションにロータが常に調整される、ということが安全かつ簡単に実現される。
【0010】
安全上問題のないポジション許容範囲とは特に、ロータについての最大運動範囲またはポジション許容範囲のことであると解され、この範囲内であれば、モータユニットが安全上危険な状態に陥ることなく、特にモータユニットの安全要件に該当する危険な状況を引き起こすことなく、ロータが運動することが許され、相応に制御される。安全上問題のないポジション許容範囲は、スタートロータポジションからのロータポジションの許容偏差に対する最大および最小の閾値または限界値によって明示されている。
【0011】
たとえば危険な状況によって、モータユニットまたはたとえばモータユニットのスイッチング素子など少なくとも個々の部品の故障、あるいは短絡が引き起こされるおそれがある。その際に不所望な大電流が流れ、それによってモータユニットの部品の加熱に至る可能性があり、その結果、モータユニットが損傷してしまうおそれがある。本発明による方法によって、かかる状況を十分に低減することができ、またはそれどころか回避することができる。かくして車両動作中の走行安全性の上昇が実現されている。さらに、危険な状況によってある変速段に意図せずに入ってしまったり、またはクラッチが不所望に閉じてしまったりする可能性があり、このようなこともこの方法によって低減することができ、またはそれどころか回避することができる。
【0012】
この場合、限界値をスタートロータポジションから対称または非対称に離れるようにすることができる。たとえばスタートロータポジションから対称に離れるようにする場合には、等しい大きさの最小および最大の限界値を設定または特定することができる。択一的に非対称に離れるようにする場合には、それぞれ異なる大きさの最小および最大の限界値を設定または特定することができる。該当するモータユニットのための安全上問題のないポジション許容範囲は、特にその限界値は、たとえばメモリに格納されている。
【0013】
1つの可能な実施形態によれば、ロータのために設定されるポジション許容範囲が、少なくとも1つまたは複数のポジション上限値および/または少なくとも1つまたは複数のポジション下限値に基づき、決定および/または設定される。たとえば、設定されるポジション許容範囲および/または制御許容範囲を決定するときに、ロータポジションセンサの測定公差、モータユニットの製造公差、および/またはロータのポジション公差が、少なくとも1つの許容係数によって考慮される。
【0014】
これに加えて提案されているのは、ロータの運動および/または運動方向が継続的に決定されることである。たとえば、実際ロータポジションも目下の実際ロータ運動の実際の方向の向きも継続的に、特に周期的に、たとえば10ms間隔または50ms間隔で、検出または特定される。ロータポジション値として、特に角度値および/または角度範囲値が特定される。たとえば2つのロータポジションの差異または偏差から、ロータの個々の運動方向、特に回転方向、が特定される。差異または偏差としてたとえば、スタートロータポジションと実際ロータポジションとの間の、および/または目標ロータポジションと実際ロータポジションとの間の、および/または2つの実際ロータポジションの間の、差分たとえば角度差分および/または距離差分が特定される。規定された最大回転数によって個々の逆方向が排除される。
【0015】
さらに本発明による方法によれば、モータユニットを稼働開始するたびに、機能の診断もしくは検査を実施することができる。特にモータユニットを稼働開始するたびに、ロータポジションを新たに特定する必要があり、その理由はたとえば、一定のロータ終了ポジションが規定されておらず、または規定することができないからである。
【0016】
スタートロータポジションを、たとえばモータユニットの始動前またはモータユニットの静止状態中またはモータユニットの動作状態中、ロータポジションセンサによって検出することができる。
【0017】
これに加えモータユニットは、少なくとも1つのモータコントローラを含む。モータコントローラは特に制御装置またはマイクロコンピュータであって、これはたとえばセンサ信号、アナログ信号、ディジタル信号などの入力信号を検出し、かつ/またはこれにそのような入力信号が供給され、その際、入力信号はモータコントローラによって、位置信号、情報信号、安全信号および/または閉ループ制御信号といった出力信号となるよう処理される。
【0018】
したがってモータコントローラおよび/またはモータコントローラの適応型制御モジュールには、入力信号としてたとえば少なくとも、検出されたスタートロータポジションと、特定または設定された安全上問題のないポジション許容範囲とが供給される。安全上問題のないポジション許容範囲および/または検出されたスタートロータポジションに基づき、モータコントローラによってロータのために、安全上問題のないポジション許容範囲内に位置するポジションオフセット、特に最大可能な正または負のポジションオフセット、が特定または設定される。この目的で制御モジュールが設けられており、このモジュールをモータコントローラの一部とすることができ、またはこのモジュールはモータコントローラの前段に適応的に接続されている。
【0019】
スタートロータポジションとポジションオフセットとに基づき、モータコントローラによって目標ロータポジションが特定され、これに基づき、ロータを制御するために関連づけられた目標制御パターンが生成され、その際、目標制御パターンによってロータが能動的に、設定された目標ロータポジションに向かって制御され動かされる。この場合に少なくとも、ロータの運動方向と、安全上問題のないポジション許容範囲の遵守とを監視することができる。特に、ロータポジション推移を監視することができる。ロータの制御はたとえば、モータユニットに組み込まれたステータの制御を介して実施される。
【0020】
たとえばモータユニットは、電気モータまたはアクチュエータ装置である。本発明による方法を用いることで、モータユニットにおいて誤りのあるまたは機能を果たさない制御を、たとえば規格ISO26262に従い、確実かつ早期に識別することができる。1つの実施形態によれば、モータユニットは三相交流モータである。択一的な実施形態によれば、モータユニットは直流モータ、特にいわゆるブラシレス直流モータ、である。
【0021】
1つの実施形態によれば、ロータポジションセンサはたとえば慣用の回転センサであり、たとえばロータリーエンコーダ、角度センサ、角度および/または方向を検出する角度発生器などである。
【0022】
本発明による方法を用いることで、モータユニットの制御を監視、診断することができ、モータユニットが常に安全な動作状態を遵守するように導くことができる。さらにこの方法によって、安全関連の誤動作のときにモータユニットを能動的にコントロールしながら、安全な動作状態に導くもしくは移行させることができる。特にこれによって、規格ISO26262の安全要件段階をASIL Cの段階まで満たすことができる。安全な動作状態は、安全上問題のないポジション許容範囲内で設定された目標ロータポジションに向かってロータが動かされる、特に移動させられ回転される、というようにして達成される。
【0023】
たとえばモータユニットの稼働開始時すなわち始動時、および/またはモータユニットの動作中、ロータ運動が監視される。この場合、本発明による方法を用いることで、モータユニットの安全な動作がスタートロータポジションおよび初期ロータ運動もしくはその後のロータ運動に応じて可能であるか否か、が有利には早期に識別される。
【0024】
さらなる態様によって提案されるのは、フィードバックされた実際制御パターンおよび/またはフィードバックされた実際ロータポジションに基づき、モータユニットのための安全信号が生成および/または出力および/または伝送される、ということである。安全信号はたとえば、警告信号、特に光学的および/または音響的な警告信号、工場への情報信号、および/またはモータコントローラのための制御信号であり、この制御信号によってたとえば、危険なロータポジションおよび/またはロータ制御が検出されたときにはモータコントローラがディアクティベートされ、または安全なロータポジションおよび/またはロータ制御が検出されたときにはモータコントローラがアクティベートおよび維持される。
【0025】
たとえば、目下のロータ運動が安全上問題ない目標ポジション許容範囲(目標ロータ運動範囲とも称する)を越えたことが特定され、それが場合によっては許容できないケースであれば、ロータの制御を安全信号によって中断することができる。つまり目標制御パターンにより設定されている要求された目標ロータ運動からの初期ロータ運動または実際ロータ運動の逸脱が特定されたならば、ロータの制御が中断される。かくして、安全上問題のないポジション許容範囲内に位置する目標ロータポジションによって、安全上問題のない検証され検査されコントロールされたポジションにロータがセットされる。さらなる誤動作が検出されなければ、ロータもしくはモータユニットを駆動することができ、その際にロータポジションは目標ロータポジションにセットされる。特に目標ロータポジションは、たとえばモータユニットの稼働開始時または動作中、ロータを制御するために特定された最適なロータポジションである。
【0026】
さらなる実施形態によれば、第1の検証段階において、検出された実際制御パターンが目標制御パターンと比較され、実際制御パターンが設定された制御許容範囲内に位置していれば、安全信号として第1の検証信号が生成され、そうでなければこの第1の検証信号の生成が行われない。
【0027】
第1の検証信号はたとえば、ロータの制御をアクティベートするアクティベーション信号である。第1の検証信号の生成が行われないことによって、ロータがディアクティベートされ、またはロータがディアクティベートされたままであることが保証される。エラー信号を生成することもできる。
【0028】
制御許容範囲はたとえば、制御パターンまたは制御プロフィルに対するスイッチング/ハードウェア/動作許容範囲であり、どのような公差(たとえば+/-1%から+/-3%まで)で制御信号/パルスを生成することが許されているのか、を記述している。制御許容範囲は安全上問題のない制御範囲であり、この制御範囲によって、生成された制御信号または制御パルスが上または下に向かう方向で(最大下方偏差および/または最大上方偏差により)制限される。制御許容範囲はたとえば、目標制御パターンのための少なくとも1つまたは複数の制御上限値および/または少なくとも1つまたは複数の制御下限値に基づき決定される。制御限界値はたとえば、モータコントローラのソフトウェア/ハードウェア公差、たとえば電子コンポーネントのスイッチング公差など、に依存する。
【0029】
択一的または付加的に、第1の検証段階において、または上述の第1の検証段階において、検出された制御パターンが目標制御パターンと比較され、その際、実際制御パターンが、設定された制御許容範囲内または上述の設定された制御許容範囲内に位置していれば、モータコントローラ、特に目標制御パターン、がアクティベートされるかまたはアクティベートされたままにされ、そうでなければモータコントローラ、特に目標制御パターン、がディアクティベート(たとえば中断)され、もしくはディアクティベートされたままにされる。
【0030】
さらなる態様によって提案されるのは、第2の検証段階において、検出された実際ロータポジションが目標ロータポジションと比較され、その際、検出された実際ロータポジションが設定された目標ロータポジションと等しく、かつ/または設定された安全上問題のないポジション許容範囲内に位置していれば、安全信号として第2の検証信号が生成され、そうでなければこの第2の検証信号の生成が行われず、またはエラー信号が生成される、ということである。
【0031】
第2の検証信号をたとえば同様に、ロータの制御をアクティベートするアクティベーション信号とすることができる。第2の検証信号の生成が行われないことによって、ロータをディアクティベートすることができ、またはロータがディアクティベートされたままであることを保証することができる。
【0032】
択一的または付加的に、第2の検証段階において、検出された実際ロータポジションが目標ロータポジションと比較され、その際、検出された実際ロータポジションが設定された目標ロータポジションと等しければ、かつ/または設定されたポジション許容範囲内に位置していれば、モータコントローラがアクティベートされ、またはアクティベートされたままにされ、特に目標制御パターンがアクティベートされ、またはアクティベートされたままにされ、そうでなければモータコントローラ、特に目標制御パターン、がディアクティベート(たとえば中断)され、もしくはディアクティベートされたままにされる。
【0033】
この方法のさらなる実施形態によれば、モータコントローラの機能が適用された制御パターンのフィードバック測定を介して検査される。特に制御パターンがフィードバック測定により検証される。モータコントローラ、特にその周辺装置、の適正な機能が、モータ終段で生じた制御パターンのフィードバック測定によって検査される。
【0034】
この方法の1つの実施形態によれば、制御パターンに応じてロータが能動的に制御された後、その結果として生じたロータの目下の動作実際ポジションが検出され、その際にこのポジションが特定された目標ロータポジションと比較される。センサ公差を考慮に入れて、実際ロータポジションと目標ロータポジションとの一致が特定されたならば、モータコントローラは検証済みと見なされる。
【0035】
モータユニットの上述の制御方法は特に、モータユニットの始動中、動作中または動作後、モータユニットのモータコントローラを検査および/または監視するために用いられる。
【0036】
特に、ロータの実際ロータポジションおよび実際制御パターンのフィードバック測定を介して、ロータの適正な運動実施が検査および監視される。実際ロータポジションは、制御パターンに相応するロータポジションであり、このポジションは、制御パターンに応じてステータを制御することによって達成される。実際ロータポジションは、ロータポジションセンサによって伝達される新たなセンサ信号をもたらし、したがってこれは新たなロータポジションに相応する。たとえば実際ロータポジションとは、適用された目標制御パターンに応じて制御された後にロータがとるポジションのことであると解される。ロータが目標ロータポジションに接近し、最初に特定されたポジション許容範囲内に存在するならば、運動実施はエラーなしと評価され、つまりは適正であると評価される。
【0037】
特に本発明による方法によれば、モータユニット全体の、特にモータコントローラ全体の、いわゆるイン・ザ・ループ・チェック(In-The-Loop-Check)が実施可能である。さらに、適用された実際制御パターンのフィードバック測定によって、目標制御パターンの要求を満たすことができるか否か、が検査される。
【0038】
たとえば、目標ロータポジションおよび/または目標制御パターンなどの目標値、および/またはポジション許容範囲および/または制御許容範囲は、モータユニットに結合されたモータコントローラ内および/または診断ユニット内に格納されている。モータコントローラはこのために適切なソフトウェアを有することができ、すなわちポジション許容範囲、目標ロータポジション、目標制御パターンおよび/または制御許容範囲を生成するために適切なアプリケーションプログラムを有することができる。
【0039】
特にソフトウェアは、この方法を実施するようにコンフィギュレーションされている。ソフトウェアは、モータコントローラによって実施されるロータの制御を監視するように構成されている。特にソフトウェアは、モータコントローラ全体の制御、特にコントロール、を実施するように構成されている。ソフトウェアは、モータコントローラの周辺装置を介して、目標制御パターンをモータ端子に伝達し、ロータの実際運動方向ならびにポジション許容範囲の遵守を監視する。
【0040】
この方法の1つの可能な実施形態によって提案されるのは、目標ロータポジションとして角度値、特にたとえば+30°または+60°の角度値、が特定または設定され、ポジション許容範囲として角度範囲値、特に±30°~±35°の角度範囲値、が特定または設定される、ということである。たとえば角度範囲値は、ロータの検出されたスタートロータポジションを基準として±30°~35°の値となり、特に±15°~25°、好ましくは±20°の値となる。たとえば、ロータの検出されたスタートロータポジションに基づき、1本の軸線が直線形状などで形成され、この軸線を中心に、ポジション許容範囲および/または目標ロータポジションを定義するための角度範囲が決定される。たとえば、スタートロータポジションの軸線は対称軸線を成している。
【0041】
この方法のさらなる実施形態によれば、特定された目標ロータポジションが、ロータを制御する目標制御パターンを特定するための基準ポジションとして用いられる。たとえば目標制御パターンは、ロータユニットを駆動するための制御情報を提供するコントロールスキーマである。この場合、制御情報は出力信号として、特に制御パルスとして、モータユニットに伝達される。かくしてロータを、目標制御パターンの設定に従い駆動することができる。たとえばステータはモータコントローラと結合されており、その際、モータコントローラはステータを制御する。
【0042】
目標制御パターンの特定およびその結果として生じた適用すべきモータ制御パターン(制御信号、制御パルス)の生成は、たとえばモータコントローラ内に組み込まれたソフトウェアによって実施される。特にソフトウェアは格納されたアルゴリズムを含み、その目的は、格納および/または特定された基準値、閾値または限界値および/または目標値を、たとえばポジションオフセットの値、ポジション許容範囲の限界値、この範囲内にある目標ロータポジションおよび/またはその結果として得られる目標制御パターンなどを、供給することである。
【0043】
この方法の1つの実施例によれば、ロータを制御するために、目標制御パターンがモータユニットのモータコントローラに伝送される。たとえばモータコントローラは、モータユニットを駆動するように構成された複数のハードウェア構成要素を含む。
【0044】
1つの実施形態によれば、目標制御パターンを用いて、動作電圧および/または電流の流れおよび/または回転数および/または回転速度および/または回転角度に関して、少なくとも1つのモータ制御パターンが、特に制御信号パターン/制御パルスパターンが、ロータを制御するために設定される。その際、モータ制御パターンに関する最大値および/または最小値といった範囲値を、つまりはモータユニットを駆動するための個々の要求を、設定することができる。この場合、最大限に許容される回転速度および/または動作電圧など、モータユニットの種々のパラメータが考慮される。たとえばロータの最適化された制御によって、モータユニットの効率、動作コスト、場合によっては生じる動作ノイズ、耐用年数およびエネルギー消費に作用が及ぼされる。たとえばステータ、たとえばそのステータ巻線、特にコイル、は最大許容電流で駆動され、またはそれには動作電圧が印加される。また、適用すべき動作電圧を特定するときには、ロータの回転速度も考慮することができる。特に制御パターンによって、ステータのための適切な電流の流れが、基準ポジションとして特定された目標ロータポジションに応じて調整される。
【0045】
さらに本発明は、上述の方法を実施するためのモータユニットに関する。特にこのモータユニットは車両の一部である。本発明によるモータユニットは少なくとも、ステータおよびロータと、ロータポジションを検出するためのロータポジションセンサと、ロータの回転運動のためのモータコントローラとを含み、その際にモータコントローラは、制御パターンの適用によりモータユニットを制御および駆動し、さらに制御モジュールが設けられており、この制御モジュールは、モータコントローラの前段に接続されているか、またはモータコントローラの一部であり、モータコントローラおよび制御モジュールは、モータユニットの動作前または動作後または動作中、モータコントローラを検査するように、場合によってはアクティベートまたはディアクティベートするように、構成されている。
【0046】
1つの発展形態によれば、モータユニットは制御モジュールを特に、少なくともロータに該当する動作状態を特定するための診断ユニットとして、含むことができる。診断ユニットはたとえば、ロータを制御する際にロータポジション推移を監視する目的で設けられている。
【0047】
1つの発展形態によれば、モータユニットは、いわゆるイン・ザ・ループ・チェック(In-The-Loop-Check)を実施するように構成されている。
【0048】
次に、本発明の実施例について図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】少なくともロータおよびステータならびにモータコントローラおよび制御モジュールを含むモータユニットを備えた車両の1つの実施例を概略的に示す図である。
図2】モータユニットの1つの実施例を種々の可能なロータポジションにあるロータと共に概略的に示す図である。
図3】モータユニットの制御方法について概略的に示すブロック図である。
図4】モータユニットを駆動するための方法の時間的な流れを示す図である。
【0050】
互いに対応する部分には、すべての図面において同じ参照番号が付されている。
【0051】
図1には、モータユニット2を備えた車両1の実施例が概略的に示されている。
【0052】
モータユニット2は、車両1を駆動するように、または少なくとも個々の車両構成要素を駆動するように、構成されている。たとえばモータユニット2は電気モータユニットである。たとえばモータユニット2はアクチュエータユニットまたは電気モータであり、特に直流モータである。
【0053】
モータユニット2は、ステータ3およびステータ3と結合されたロータ4を含む。特にステータ3およびロータ4は互いに磁気的に結合されており、その際にロータ4はステータ3の給電によって制御可能である。特に、ステータ3に電気エネルギーを印加したときに磁界が生成され、それによってロータ4を、相互の磁気的な吸引力と反発力とに基づき運動状態に移行させることができる。
【0054】
モータユニット2はさらにロータポジションセンサ5を含み、このセンサはロータポジションRP、たとえばスタートロータポジションStart-RPおよび/または実際ロータポジションIst-RP、を検出する。
【0055】
しかもモータユニット2は、モータコントローラ6および制御モジュール7を含み、制御モジュール7は、モータコントローラ6の前段に接続されているか、またはこれと適応的に結線されており、またはモータコントローラ6内に実装されている。
【0056】
モータコントローラ6および特に適応型制御モジュール7は、以下で説明するモータユニット2の制御方法を実施するように構成されている。
【0057】
この場合、最初に少なくとも1つの安全上問題のないポジション許容範囲SBが設定または特定される。特定もしくは設定されたポジション許容範囲SBに応じて、ロータ4のための少なくとも1つのポジションオフセットΔRPが決定または設定される。
【0058】
次いで、スタートロータポジションStart-RPとポジションオフセットΔRPとに基づき、ロータ4のための適応型制御モジュール7によって目標ロータポジションSoll-RPが特定され、これに基づき目標制御パターンSoll-SMが決定され、これがモータコントローラ6に供給される。モータコントローラ6によって、目標ロータポジションSoll-RPと目標制御パターンSoll-SMとに基づき、モータユニット2のためのモータ制御パターンSI-SMが生成され、ロータ4を設定された目標ロータポジションSoll-RPに向かって回転させるために、モータユニット2に適用される。
【0059】
その後、次のステップにおいて、モータユニット2を制御している実際制御パターンIst-SMと、この実際制御パターンIst-SMによるロータ4の回転とから結果として生じた、ロータ4の実際ロータポジションIst-RPとが検出され、その検証のために適応型制御モジュール7にフィードバックされる。
【0060】
図2には、互いに磁気的に結合されているロータ4およびステータ3の1つの実施例が概略的に示されている。
【0061】
図示の実施例の場合、モータユニット2はたとえば直流モータである。たとえばモータユニット2はブラシレス直流モータである。特にモータユニットは三相で設計されている。
【0062】
ステータ3は、電気的にそれぞれ120°ずつずらされた3つのコイル3.1を備えたコイル装置を含む。ステータ3の内側に回転可能なロータ4が配置されている。たとえばロータ4は永久磁石4.1を含み、これは個々のコイル3.1の制御に応じて自身のロータ軸Xを中心に回転する。
【0063】
さらにモータユニット2は、ロータ4の静止位置または始動位置ではロータ4のスタートロータポジションStart-RP、またはロータ4の動作中には実際ロータポジションIst-RPといったような、ロータポジションRPのうちの1つを検出するために、1つまたは複数のロータポジションセンサ5を含む。
【0064】
これに加え図2には、スタートロータポジションStart-RPおよび実際ロータポジションIst-RPと対比させて、目標ロータポジションSoll-RPが示されており、これはスタートロータポジションStart-RPとポジションオフセットΔRPとに基づき特定され、設定または特定された安全上問題のないポジション許容範囲SB内にある。
【0065】
図3には、モータユニット2を駆動するための、特に開ループ制御および/または閉ループ制御するための、方法についてのブロック回路図が概略的に示されており、図4には、モータユニット2を駆動するための、特に開ループ制御および/または閉ループ制御するための、方法の時間的な流れTが示されている。
【0066】
モータユニット2を駆動するための、特に開ループ制御および/または閉ループ制御するための、方法について、以下で詳しく説明する。
【0067】
モータユニット2は、モータユニット2を駆動するための、特に開ループ制御および/または閉ループ制御するための、モータコントローラ6を含む。特に、ステータ3を介してロータ4を制御するために、モータコントローラ6が設けられている。特にモータコントローラ6は、ステータ3およびロータ4を制御するように構成された複数の慣用のハードウェア構成要素を含み、たとえばパルス発生器と、半導体、特にトランジスタ段のようなドライバ段とを含む。特にステータ3のコイル3.1は、ロータ4を動かすように駆動され、たとえば電流信号によって励磁される。
【0068】
これに加えモータユニット2は、図示されているように、モータコントローラ6の前段に適応的に接続可能な制御モジュール7を含む。つまり制御モジュール7は、モータユニット2とモータコントローラ6との間に信号技術的に接続されている。択一的に制御モジュール7を、ソフトウェアモジュールとして、または電子回路として、モータコントローラ6内に実装することができる(詳しくは図示せず)。
【0069】
制御モジュール7は、モータコントローラ6を診断もしくは監視するための診断および/または監視ユニットとして形成されており、それ相応に構成されている。
【0070】
制御モジュール7はたとえば、モータコントローラ6に対する目標値設定のための信号処理装置7.1と、モータユニット2が安全な動作状態にあるのかまたは危険な動作状態にあるのか、モータユニット2の目下の状態を検証するための検証装置7.2とを含む。
【0071】
信号処理装置7.1は、入力側で少なくともロータポジションセンサ5およびメモリユニット8および/または入力ユニット9と結合されており、出力側でモータコントローラ6および検証装置7.2と結合されている。
【0072】
モータユニット2の安全な動作のために、モータユニット2の稼働開始前または始動前に、ロータ4のスタートロータポジションStart-RPが検出される。この目的で、ロータポジションセンサ5、たとえばホールセンサ、が、第1のステップS1においてスタートロータポジションStart-RPを測定し、これを信号処理装置7.1に供給する。メモリユニット8内に、たとえば安全上問題のないポジション許容範囲SBが格納されており、これは結合部を介して信号処理装置7.1に供給される。択一的にまたは付加的に、安全上危険のないポジション許容範囲SBを、入力ユニット9を介して設定し、信号処理装置7.1に供給することもできる。
【0073】
第2のステップS2において、ロータ4のロータポジションRPについての安全上問題のないポジション許容範囲SBに応じて、信号処理装置7.1によって、可能なポジションオフセットΔRPが特定される。これに加え、特定されたポジションオフセットΔRPと検出されたスタートロータポジションStart-RPとに基づき、信号処理装置7.1によって目標ロータポジションSoll-RPが特定され、検証装置7.2およびモータコントローラ6に供給される。このため信号処理装置7.1が、出力側でモータコントローラ6および検証装置7.2と結合されている。
【0074】
目標ロータポジションSoll-RPに基づき信号処理装置7.1によって、さらに第2のステップS2において目標制御パターンSoll-SMが特定され、これに基づきモータ制御パターンSI-SMがモータコントローラ6によって生成され、ロータ4を設定された目標ロータポジションSoll-RPに向かって回転させるために、モータユニット2に適用される。
【0075】
モータ制御パターンSI-SMによって、ロータ4は設定された目標ロータポジションSoll-RPに向かって能動的に制御され、その際にロータ4の少なくとも1つの運動方向およびポジション許容範囲SBの遵守が監視される。モータ制御パターンSI-SMはモータユニット2の相ごとに、該当する磁界について該当するコイル3.1を制御するために関連づけられた制御パターンを含む。
【0076】
これに加え、モータコントローラ6を診断および監視するために、目標ロータポジションSoll-RPおよび目標制御パターンSoll-SMが、検証装置7.2に供給される。
【0077】
図示の実施例によれば、ロータ4の運動方向、特に回転方向R、が図2および図3において矢印によって示されている。
【0078】
第3のステップS3において、モータコントローラ6とモータユニット2との間のインタフェースSSのところで、モータユニット2を制御している実際制御パターンIst-SMが検出される。しかも、制御を行っている実際制御パターンIst-SMに基づきロータ4の回転から結果として生じた実際ロータポジションIst-RPが、ロータポジションセンサ5によって検出される。
【0079】
モータコントローラ6および/またはモータユニット2の目下の状態を検証するために、検出された実際ロータポジションIst-RPおよび実際制御パターンIst-SMが、第3のステップS3においてフィードバックされ、このフィードバックは、それらが第3のステップS3において、たとえば検証装置7.2に、またはモータコントローラ6の相応のモジュールに、供給されるようにして行われる。
【0080】
特に、ロータ4を目標制御パターンSoll-SMによって制御することで、ロータポジション推移が監視され、その際、ポジション許容範囲SBの許容できない超過が目前に迫っていることが特定されたならば、ロータ4の制御が中断される。したがってたとえばモータユニット2の稼働開始時に、モータユニット2の始動を監視することができる。しかもロータ運動をモータユニット2の動作中も継続的に、ポジション許容範囲SBの遵守について監視することができる。
【0081】
第4のステップS4においてたとえば、フィードバックされた実際制御パターンIst-SMおよび/またはフィードバックされた実際ロータポジションIst-RPに基づき、安全信号Safe、Not-safeが生成および/または出力および/または伝送される。
【0082】
この目的でたとえば、第1の検証段階において検証装置7.2によって、検出されフィードバックされた実際制御パターンIst-SMが目標制御パターンSoll-SMと比較され、その際、実際制御パターンIst-SMが設定された制御許容範囲SM-TB内に位置していれば、安全信号Safeとして第1の検証信号VS1が生成され、そうでなければ第1の検証信号VS1の生成が行われず、またはエラー信号Not-safeが生成される。
【0083】
第1の検証信号VS1はたとえば、ロータ4の制御をアクティベートするアクティベーション信号である。第1の検証信号VS1の生成が行われない、またはエラー信号Not-safeが生成されることによって、ロータ4がディアクティベートされ、またはロータ4がディアクティベートされたままであることが保証される。
【0084】
制御許容範囲SM-TBはたとえば、モータ制御パターンSI-SMまたは制御プロフィルに対するスイッチング/ハードウェア/動作許容範囲であり、慣用のパルス発生器によりどのような公差(たとえば+/-1%から+/-3%まで)で制御信号/パルスを生成することが許されているのか、を記述している。よって、制御許容範囲SM-TBは安全上問題のない制御範囲であり、この制御範囲によって、生成された制御信号または制御パルスが上または下に向かう方向で(最大下方偏差および/または最大上方偏差により)制限される。
【0085】
択一的にまたは付加的に検証装置7.2を、第4のステップS4において、特に第1の検証段階において、検出されフィードバックされた実際制御パターンIst-SMを目標制御パターンSoll-SMと比較するように構成することができ、その際、実際制御パターンIst-SMが制御許容範囲SM-TB内に位置していれば、モータコントローラ6がアクティベートされるかまたはアクティベートされたままにされ、そうでなければモータコントローラ6がディアクティベート(たとえば中断)される。
【0086】
上述の概要説明部分ですでに説明したように、制御許容範囲SM-TBを、目標制御パターンSoll-SMのための少なくとも1つまたは複数の制御上限値および/または少なくとも1つまたは複数の制御下限値に基づき、決定することができる。
【0087】
これに加え第4のステップS4において、検証装置7.2によって第2の検証段階が実施され、この段階において、検出されフィードバックされた実際ロータポジションIst-RPが目標ロータポジションSoll-RPと比較され、その際、検出された実際ロータポジションIst-RPが設定された目標ロータポジションSoll-RPと等しく、かつ設定された安全上問題のないポジション許容範囲SB内に位置していれば、安全信号Safeとして第2の検証信号VS2が生成され、そうでなければ第2の検証信号VS2の生成が行われず、またはエラー信号Not-safeが生成される。
【0088】
択一的にまたは付加的に検証装置7.2を、第4のステップS4において、特に第2の検証段階において、検出された実際ロータポジションIst-RPを目標ロータポジションSoll-RPと比較するように構成することができ、その際、検出された実際ロータポジションIst-RPが設定された目標ロータポジションSoll-RPと等しく、かつ設定されたポジション許容範囲SB内に位置していれば、モータコントローラ6がアクティベートされるかまたはアクティベートされたままにされ、そうでなければモータコントローラ6がディアクティベート(たとえば中断)され、またはエラー信号Not-safeが生成される。
【0089】
ロータ4の常に安全な運動のために設定されるポジション許容範囲SBをたとえば、少なくとも1つまたは複数のポジション上限値および/または少なくとも1つまたは複数のポジション下限値に基づき、決定および/または設定することができる。設定されるポジション許容範囲SBを決定するときにも、制御許容範囲SM-TBを決定するときにも、ロータポジションセンサ5の測定公差、モータユニット2の製造公差、および/またはロータ4のポジション公差を、少なくとも1つの許容係数によって考慮することができる。
【0090】
ポジション許容範囲SBによってたとえば、ロータ4の安全上問題のない運動範囲が定義され、その際、ロータ4は、たとえば規格ISO26262による安全要件に該当する危険な状況を引き起こすことなく、ポジション許容範囲SB内において運動可能である。特にポジション許容範囲SBは、稼働開始時、始動時および/または動作中にロータ4が運動可能な運動許容範囲を表している。ポジション許容範囲SBは、たとえば角度範囲として定義されている。
【0091】
ロータ4の目下の運動、特に変位および回転について、同じことが当てはまる。つまり本発明による方法によって保証されるのは、ロータ4の目下の変位はポジション許容範囲SB内でのみ実施されることが許される、ということである。これに加え本発明によって提案されるのは、ポジション許容範囲SBの許容できない超過が目前に迫っていることが特定されたときにはロータ4の制御が停止される、ということである。
【0092】
これに対し検証装置7.2によって、目下の実際ロータポジションIst-RPがポジション許容範囲SB内に位置していることが特定されたならば、場合によってはセンサ公差、製造公差、および/または制御公差も考慮しながら、目標制御パターンSoll-SMに従って実施されるロータ4の制御が、安全であると検証されたものと見なされる。モータユニット2は、安全関連システムとして引き続き動作させることが許される。
【0093】
これに加えこの方法によって提案されるのは、ロータ4の運動方向を継続的に決定することである。運動方向を決定できるよう、特にロータポジションRP、特に実際ロータポジションIst-RPが継続的に検出される。2つの実際ポジションIst-RPの差異から、ロータ4の個々の運動方向、特に回転方向、を特定することができる。
【0094】
たとえば、スタートロータポジションStart-RPにおけるロータ4の角度位置ψは、250°と等しい値となる。
【0095】
これに加え、ロータ4のための安全上問題のないポジション許容範囲SBが決定される。たとえば安全上問題のないポジション許容範囲SBは、たとえば220°~280°の角度範囲値内で設定される。
【0096】
安全上問題のないポジション許容範囲SBと検出されたスタートロータポジションStart-RPとに基づき、たとえば+20°といった可能なポジションオフセットΔRPが決定される。
【0097】
スタートロータポジションStart-RPと特定されたポジションオフセットΔRPとから、ロータ4が安全にとり得る目標ロータポジションSoll-RPが特定され、これはたとえば
Soll-RP=Start-RP+ΔRP
=250°+20°
Soll-RP=270°
に従い270°の値となる。
【0098】
目下の実際ロータポジションIst-RPのフィードバックに基づき、ポジション許容範囲SB外のロータポジションRPが特定され、それによってモータコントローラ6がディアクティベートされる。これに対し、目下の実際ロータポジションIst-RPがポジション許容範囲SB内に位置しているならば、モータコントローラ6がアクティベートされ、またはアクティベートのまま維持され、ロータ4を変位させることができる。
【0099】
モータコントローラ6は、詳しくは図示されていない態様で慣用のパルス幅変調ユニットを含む。たとえばパルス幅変調ユニットは、モータコントローラ6のハードウェア構成要素を制御するように構成されている。たとえばモータ制御パターンSI-SMは、パルス幅変調ユニットを介してモータコントローラ6のハードウェア構成要素に伝達される。ハードウェアは、設定されたモータ制御パターンSI-SMに基づき、モータユニット2の制御を実施する。
【0100】
さらにモータユニット2は、慣用のモータ制御器、特にPI制御器、を含み、これは比例積分制御器としても知られている。PI制御器を、モータコントローラ6の一部とすることができ、または信号処理装置7.1の一部とすることもでき、さらにPI制御器は、出力調整量としてロータ4の実際回転数を含み、基準量として目標回転数を含む。本発明による方法は、モータ制御器およびモータコントローラ6の前段に適応的に接続されており、モータコントローラ6の危険な状態が実際制御パターンIst-SMのフィードバックを介して特定されると、かつ/またはモータユニット2の危険な状態が実際ロータポジションIst-RPのフィードバックを介して特定されると、モータ制御器およびモータコントローラ6をディアクティベートする。
【0101】
1つの発展形態によって提案されるのは、実際制御パターンIst-SMおよび/または実際ロータポジションIst-RPのフィードバックを介して、ロータ4の稼働開始時または動作中または動作後、適正な運動の実施について検査され、その際、目標制御パターンSoll-SMに応じたロータ4の制御後、結果として生じたロータ4の目下の実際ロータポジションIst-RPが検出され、これが特定された目標ロータポジションSoll-RPと比較される、ということである。つまりモータ制御パターンSI-SMの適用後にロータポジションセンサ5が検出した実際ロータポジションIst-RPのフィードバックおよび特にフィードバック測定を介して、たとえばコイル3.1の適正な制御、特に給電、に応じたモータユニット2の適正な運動の実施について、検査することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 車両
2 モータユニット
3 ステータ
3.1 コイル
4 ロータ
4.1 永久磁石
5 ロータポジションセンサ
6 モータコントローラ
7 制御モジュール
7.1 信号処理装置
7.2 検証装置
8 メモリユニット
9 入力ユニット
ΔRP ポジションオフセット
Ist-SM 実際制御パターン
Ist-RP 実際ロータポジション
Not-Safe エラー信号
R 回転方向
RP ロータポジション
Safe 安全信号
SB [安全上問題のない]ポジション許容範囲
SI-SM [適用された]モータ制御パターン
SM-TB 制御許容範囲
Soll-SM 目標制御パターン
Soll-RP 目標ロータポジション
Start-RP スタートロータポジション
SS インタフェース
S1~S4 ステップ
T 時間推移
VS1 第1の検証信号
VS2 第2の検証信号
図1
図2
図3
図4