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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】空気調和機の室内ユニット
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0011 20190101AFI20230718BHJP
   F24F 13/06 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
F24F1/0011
F24F13/06 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022509880
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013337
(87)【国際公開番号】W WO2021192093
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 哲朗
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/142026(WO,A1)
【文献】実開平04-117338(JP,U)
【文献】特開平08-200785(JP,A)
【文献】特開2020-041756(JP,A)
【文献】特開2000-230748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/06
F24F 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と、
前記熱交換器を収容し、前記熱交換器と対向する開口を有する筐体と、
前記熱交換器で熱交換された空気の気流を発生させるファンと、
前記気流を室内空間に吹き出す吹出口を有し、前記開口側から前記吹出口側まで連続して前記気流が通過する風路を構成する筒部材と、
前記吹出口から吹き出される前記気流の傾きを調整する風向板と、
前記風向板を所定の傾きに回動させる駆動機構と、を備え、
前記筒部材は、前記風路の前記吹出口側の断面積を前記開口側の断面積よりも前記風路の差渡し方向の両側からそれぞれ狭める一対の絞り部を有し、
一対の前記絞り部のうち、少なくとも一方は、前記風路に張り出すように前記筒部材の外周面から凹んだ凹部を有し、
前記駆動機構は、前記凹部に配置されている
空気調和機の室内ユニット。
【請求項2】
一対の前記絞り部は、前記風路の差渡し方向の両側から前記風路の前記吹出口側の断面積を平行に狭める直線状の部位を有する
請求項1に記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項3】
一対の前記絞り部は、前記風向板が取り付けられる平坦状の取付面を有し、
前記取付面は、前記直線状の部位を一辺として含む
請求項2に記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項4】
前記吹出口の中心軸を中心として前記筒部材を回動可能に保持する保持機構を備え、
一対の前記絞り部のうち、少なくとも一方は、前記筒部材を回動させる力が作用される入力部を有する
請求項1に記載に空気調和機の室内ユニット。
【請求項5】
前記筒部材の外周面側を覆うカバーと、
前記気流を整流する整流板と、を備え、
前記筒部材、前記風向板、前記整流板、および前記カバーは、少なくとも雰囲気に曝される部位が結晶性樹脂でそれぞれ形成されている
請求項1からのいずれか一項に記載の空気調和機の室内ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和機の室内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気調和機の室内ユニットは、空気の吸込口と、空気の吹出口と、熱交換器と、吸込口から熱交換器を経て吹出口に至る気流を発生させるファンとを備えている。
【0003】
空調対象の室内空間は、温調されて吹出口から吹き出される気流(以下、吹出風という)によって最適な温度に調整される。室内空間の温度を効率よく調整するためには、例えば吹出風の到達距離は長く、風量は多い方が好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/142026号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、吹出風の到達距離の延長と風量増を効率よく両立させることが可能な空気調和機の室内ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る空気調和機の室内ユニットは、熱交換器と、筐体と、ファンと、筒部材と、風向板と、駆動機構とを備えを備えている。前記筐体は、前記熱交換器を収容し、前記熱交換器と対向する開口を有する。前記ファンは、前記熱交換器で熱交換された空気の気流を発生させる。前記風向板は、前記吹出口から吹き出される前記気流の傾きを調整する。前記筒部材は、前記気流を室内空間に吹き出す吹出口を有し、前記開口側から前記吹出口側まで連続して前記気流が通過する風路を構成しており、前記風路の前記吹出口側の断面積を前記開口側の断面積よりも前記風路の差渡し方向の両側からそれぞれ狭める一対の絞り部を有する。一対の前記絞り部のうち、少なくとも一方は、前記風路に張り出すように前記筒部材の外周面から凹んだ凹部を有する。前記駆動機構は、前記凹部に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る室内ユニットの概略的な斜視図である。
図2図2は、図1におけるII-II線に沿う室内ユニットの概略的な断面図である。
図3図3は、図1におけるIII-III線に沿う室内ユニットの概略的な断面図である。
図4図4は、吹出口カバーを取り外した室内ユニットの概略的な斜視図である。
図5図5は、回動ユニットの概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る室内ユニット1の概略的な斜視図である。この室内ユニット1は、冷媒を圧縮する圧縮機および室外熱交換器などを含む室外ユニットと冷媒配管にて接続される。室内ユニット1、室外ユニットおよび冷媒配管などにより、冷凍サイクルを備えた空気調和機が構成される。空気調和機は、例えば冷房運転と暖房運転を切り替えることが可能である。ただし、空気調和機は、冷房運転または暖房運転のみ実行可能であってもよい。
【0009】
本実施形態においては、図1に示すようにX方向、Y方向およびZ方向を定義する。これらX方向、Y方向およびZ方向は互いに直交する。Z方向は、鉛直方向と平行である。以下の説明においては、Z方向を上方と呼び、その反対方向を下方と呼ぶことがある。
【0010】
室内ユニット1は、筐体2と、先端に吹出口3を有する吹出口ユニット4とを備えている。筐体2は、前面板20と、前面板20の上方に配置された前面カバー21と、前面板20および前面カバー21に対向する背面板22と、互いに対向する一対の側面板23,24と、底面板25と、底面板25に対向する上面板26とを備えている。室内ユニット1は、一台のみで設置されてもよいし、例えば建物の柱や壁面に沿って配置されたフレームに背面板22を連結することで、Z方向に複数段に積み重なった状態で設置されてもよい。また、複数の室内ユニット1がX方向に並べられてもよいし、互いに離れた位置に設置されてもよい。
【0011】
前面板20、前面カバー21および背面板22は、X方向およびZ方向によって規定されるX-Z平面と平行である。側面板23,24は、Y方向およびZ方向によって規定されるY-Z平面と平行である。底面板25および上面板26は、X方向およびY方向によって規定されるX-Y平面と平行である。図1に示す例において、筐体2は、X方向およびZ方向における幅よりもY方向における幅が十分に小さい扁平な直方体状である。ただし、筐体2の形状はこの例に限られない。
【0012】
前面カバー21は、Z方向において前面板20と上面板26の間に配置されている。前面カバー21は、ねじ211によって前面板20に取り付けられている。また、例えば前面カバー21の裏面に一対の爪部が設けられており、これら爪部が側面板23,24に設けられた取付孔に引っ掛けられている。このような構造においては、ねじ211を外すことにより前面カバー21が筐体2の他の部分に対して着脱可能となる。なお、前面カバー21を着脱可能とするための構造は、ここで例示したものに限られない。
【0013】
吹出口ユニット4は、吹出口3に向けて先細る円筒状のカバー(以下、吹出口カバーという)40を備えている。吹出口カバー40は、後述する第1筒部材92および第2筒部材31の外周面側を覆い、吹出口3を含む吹出口ユニット4の構成部材(後述する整流板94、第1筒部材92、および第2筒部材31など)を保護するとともに、外観のデザイン性を向上させる。吹出口カバー40は、少なくともねじ41によって前面板20に取り付けられている。図1に示す例においては、吹出口カバー40の外周面に凹部42が設けられ、この凹部42の筐体2側の端面が有する貫通孔にねじ41が通されている。吹出口カバー40の外郭線は、湾曲線状をなしている。
【0014】
吹出口ユニット4は、吹出口3に設けられたルーバー5をさらに備えている。図1に示す例において、ルーバー5は、回動可能な三つの風向板51,52,53によって構成されている。風向板の数は三つに限定されず、ルーバー5は二つ以下または四つ以上の風向板によって構成されてもよい。風向板51,52,53は、吹出口3から吹き出される気流の傾きを調整する。
【0015】
図2から図4には、室内ユニット1の概略的な構成を示す。図2は、図1におけるII-II線に沿う断面図であり、図3は、図1におけるIII-III線に沿う断面図である。図4は、吹出口カバー40を取り外した室内ユニット1の概略的な斜視図である。
図2および図3に示すように、筐体2の内部には熱交換器6が配置されている。熱交換器6は、X方向に延びる複数の伝熱管60と、伝熱管60に連結された複数のフィン61とを備えている。複数のフィン61は、図2に示すようにZ方向に長尺な形状を有し、X方向に間隔を空けて並んでいる。
【0016】
背面板22には、室外ユニットと接続するための冷媒配管の接続口62,63と、熱交換器6と対向する吸込口27とが設けられている。例えば、接続口62には各伝熱管60で構成される流路の入口が接続され、接続口63には当該流路の出口が接続される。
【0017】
熱交換器6の下方には、熱交換器6で生じる結露水を受けるためのドレンパン64が配置されている。ドレンパン64に溜まった結露水は、図示しない配管を通じて筐体2の外部に排出される。
【0018】
熱交換器6の上方には、X-Z平面と平行な取付板70が配置されている。取付板70は、前面カバー21および背面板22と対向している。取付板70の下端には、X-Y平面と平行な仕切板71が接続されている。仕切板71と熱交換器6の間には、断熱材65が配置されている。取付板70と仕切板71は、1枚の板材をL字型に曲げることにより一体的に形成されてもよいし、別々の板材であってもよい。取付板70、仕切板71、前面カバー21および上面板26により、制御部8を収容するための空間S1が形成されている。
【0019】
制御部8は、制御基板80や各種の電子部品81を含む。制御基板80は、取付板70に取り付けられている。各電子部品81は、前面カバー21と対向する制御基板80の一面に実装されている。制御部8には、室内ユニット1の外部に設置されたリモートコントローラ、室外ユニット、他の室内ユニットなどと通信するための通信線や、電源線が接続されている。これら通信線および電源線は、例えば背面板22に設けられた挿通口を通じて室内ユニット1の外部に延出している。
【0020】
前面板20は、Y方向において熱交換器6と重なる開口29を有している。吹出口カバー40の内側には、開口29を通じて熱交換器6と対向するファン9が配置されている。ファン9は、熱交換器6で熱交換により温調された空気の気流を発生させる。ファン9は、例えば軸流ファンであり、ファンモータ90と、ファンモータ90によって軸AXを中心に回転する複数の羽根91とを備えている。本実施形態において、軸AXはY方向と平行である。
【0021】
ファン9は、軸AXと同軸の第1筒部材92の内部に配置されている。第1筒部材92は、筐体2の外側かつ吹出口カバー40の内側において開口29を囲っている。第1筒部材92の外周面の少なくとも一部は、断熱材93によって覆われている。
【0022】
ルーバー5は、軸AXと同軸の第2筒部材31の端部に配置されている。ルーバー5の風向板51,52,53は、例えばモータ34を含む駆動機構(以下、ルーバー駆動機構という)33によって回動される。ただし、風向板51,52,53は、手動で回動可能であってもよい。
【0023】
第2筒部材31の外周面31aの少なくとも一部は、断熱材32によって覆われている。吹出口3は、第2筒部材31の先端側の開口に相当する。図2および図3に示す例において、吹出口3の中心は軸AX上にある(吹出口3の中心軸と軸AXが一致している)。
【0024】
図3および図4に示すように、第2筒部材31の外周面31a(後述する凹部310)には、ルーバー駆動機構33が設けられている。ルーバー駆動機構33は、モータ34の駆動力により風向板51,52,53の角度を変更するためのギアなどを含み、風向板51,52,53を所定の傾きに回動させる。
【0025】
ルーバー5、第2筒部材31、断熱材32、ルーバー駆動機構33およびモータ34は、回動ユニット30を構成する。回動ユニット30は、保持機構10により軸AXを中心として回動可能に保持されている。
【0026】
具体的には、保持機構10は、第2筒部材31を第1筒部材92に対して回動可能に、両者を接続している。保持機構10は、例えば第2筒部材31の端部(後述する基端部31b)に設けられた環状のギアを含み、このギアをモータ11によって軸AXを中心とした円周方向に送ることで第2筒部材31を第1筒部材92に対して回動させる。第2筒部材31は、手動で回動可能であってもよい。この場合、例えば軸AXを中心とする円周方向に等間隔で三つの歯車を配置してギアに噛合させることで、第2筒部材31を第1筒部材92に対して回動可能に支持すればよい。
【0027】
第1筒部材92および第2筒部材31は、風路ADを構成する。風路ADは、熱交換器6で熱交換(温調)された空気がファン9の回転により気流となって通過する流路である。風路ADの中心軸は、軸AXと一致している。風路ADにおいて、ファン9とルーバー5の間には整流板94が配置されている。整流板94は、第1筒部材92によって支持され、ファン9によって発生した直後の乱れた気流を軸AXと略平行に整える。整流板94は、例えば六角形の多数の開口が配列されたハニカム構造を有しているが、この例に限られない。第1筒部材92、第2筒部材31、および整流板94は、吹出口ユニット4の構成部材に含まれる。
【0028】
ファン9が回転すると、吸込口27、熱交換器6、整流板94および吹出口3を順に通る気流が発生する。冷房運転時には熱交換器6が蒸発器として機能し、吸込口27から吸い込まれた空気が冷やされる。暖房運転時には熱交換器6が凝縮器として機能し、吸込口27から吸い込まれた空気が暖められる。温調された気流は、整流板94で整流され、ルーバー5の風向板51,52,53の角度に応じた方向へ吹出口3から室内空間に吹き出される。
【0029】
制御部8は、外部から入力される情報や室内ユニット1が備える温度センサによって検出される吸込温度および吹出温度等に基づいてファン9の回転数を制御する。また、制御部8は、外部から入力される風向きの設定情報に基づいて保持機構10やルーバー5を制御する。保持機構10により回動ユニット30を回動させ、かつルーバー5の風向板51,52,53の角度を変更することで、様々な方向への送風が可能となる。
【0030】
続いて、第1筒部材92とともに風路ADを構成する第2筒部材31の構造について説明する。
図2および図3に示すように、第1筒部材92は、風路ADの上流部分に相当し、前面板20の開口29から整流板94までの風路(以下、第1風路AD1という)を構成する。これに対し、第2筒部材31は、風路ADの下流部分に相当し、整流板94から吹出口3までの風路(以下、第2風路AD2という)を構成する。第1風路AD1と第2風路AD2は、整流板94を介して連通している。第2風路AD2において、気流は、ルーバー5の風向板51,52,53の角度に応じた方向に偏向される。
【0031】
図5は、回動ユニット30の概略的な斜視図である。図5には、回動ユニット30が備える要素のうち、ルーバー5および第2筒部材31が示されている。図5に示す例では、ルーバー5の風向板51,52,53は軸AXと平行に開いた状態となっている。
【0032】
第1風路AD1は、X-Z平面(軸AXに垂直な面)での断面積がほぼ一定のストレート状に構成されている。すなわち、第1風路AD1の開口29側の断面積(開口面積)と整流板94側の断面積とは、ほぼ同一とされている。これに対し、第2風路AD2は、X-Z平面での断面積が下流へ向かって狭まる(徐変する)先細り状に構成されている。すなわち、第2風路AD2の吹出口3側の断面積は、整流板94側の断面積、端的には第1風路AD1の断面積よりも縮小されている。
【0033】
したがって図2図3、および図5に示すように、第2筒部材31は、整流板94側の基端部31bが大径部、吹出口3側の先端部31cが小径部となっており、これらの中間部31dが基端部31bから先端部31cまで徐々に内径が縮小する縮径部となっている。
【0034】
基端部31bは、フランジ311を有している。フランジ311は、第2筒部材31の大径側に位置するフランジであり、保持機構10の一部をなす。フランジ311の外周縁には、全周に亘って複数の噛合歯312が形成されている。これら複数の噛合歯312は、環状のギアを構成しており、モータ11の噛合歯(図示省略)と噛み合うようになっている。
【0035】
先端部31cは、フランジ313を有している。フランジ313は、第2筒部材31の小径側に位置するフランジであり、先端部31cの外周縁の全周に亘って拡径方向に延在している。フランジ313の外径寸法は、第2筒部材31を第1筒部材92に対して回動させる際に支障がないように、吹出口カバー40の先端部40aの内径寸法よりも若干小さい。ただし、室内ユニット1を前方からみたときに、フランジ313と吹出口カバー40の先端部40aとの間に目立った隙間のないように、フランジ313の外径寸法が設定されている。
【0036】
加えて、図2図3および図5示すように、第2筒部材31は、第2風路AD2の断面積をさらに狭める絞り部31eを有している。絞り部31eは、第2筒部材31の内周面31fの一部から第2風路AD2内に張り出した部分であり、張出量だけ第2風路AD2を狭めている。絞り部31eにより、第2風路AD2の吹出口3側の断面積が整流板94側、端的には開口29側の断面積よりも狭まる。本実施形態において、絞り部31eは、軸AXに対して点対称の位置に一対をなして配され、第2風路AD2を差渡し方向(径方向)の両側から平行に狭めている。軸AXは、第2風路AD2のX-Z平面での断面の中心軸に相当する。
【0037】
一対の絞り部31eは、第1辺e1、第2辺e2、第3辺e3、第4辺e4、第5辺e5、第6辺e6によってその形態が規定されている。
第1辺e1は、室内ユニット1を前方からみたとき、吹出口3の輪郭を規定する円周上の二点を直線状に繋ぐ辺部である。一対の絞り部31eの第1辺e1は、これら絞り部31eの直線状の部位となっている。第2辺e2は、第1辺e1の一端から軸AXと平行に内周面31fと接する辺部である。第3辺e3は、第1辺e1の他端から軸AXと平行に内周面31fと接する辺部であり、第2辺e2と平行をなす。第4辺e4は、第2辺e2および第3辺e3の第1辺e1との連続端とは反対側の端同士を結んだ辺部であり、第1辺e1と平行をなす。第5辺e5は、第4辺e4の一端から内周面31fに沿って連続する辺部である。第6辺e6は、第4辺e4の他端から内周面31fに沿って連続する辺部である。
【0038】
第1から第4辺e1~e4は、平坦面315を規定する。換言すれば、平坦面315は、第1から第4辺e1~e4を含む。平坦面315は、第2風路AD2へ向けて四辺形状に張り出す面部、換言すれば第2筒部材31の外周面31aを四辺形状に凹ませる面部である。平坦面315は、風向板51,52,53を取り付けるための一対の取付面315a,315bとされている。取付面315a,315bは、風向板51,52,53の配列方向と交差する方向(図5に示す例ではX方向)において対向する。例えば、取付面315a,315bは風向板51,52,53の配列方向に並ぶ三つの取付孔(図示省略)を有した平面である。取付孔には、風向板51,52,53の軸部54がそれぞれ挿入される。軸部54は、風向板51,52,53からX方向の両側へ一つずつそれぞれ突出するように設けられている。
上述したように、ルーバー駆動機構33は、第2筒部材31の外周面31aに設けられているが、その位置は絞り部31eに対応している。具体的には、絞り部31eの外周面31a側、つまり外周面31aから凹んだ部分(以下、凹部310という)にルーバー駆動機構33が配置されている。すなわち、絞り部31eは、凹部310を有して構成されている。本実施形態において、凹部310は、第2風路AD2内に張り出した絞り部31eを外周面31a側からみた部分であり、第2筒部材31において両者は実質的に一致する部分に当たる。
【0039】
図4に示す例では、取付面315bの背面側の凹部310にルーバー駆動機構33が配置されているが、取付面315aの背面側の凹部310にルーバー駆動機構33が配置されていてもよい。なお、凹部310は、一対の絞り部31eの一方のみが有していてもよい。一方の凹部310を省略する場合、絞り部31eは、凹部310に相当する部分が第2筒部材31の基材で埋められた形態とすればよい。図3に示すように、凹部310とルーバー駆動機構33の間には断熱材32が介在している。
【0040】
フランジ313の一部および絞り部31eの前面31sには、前方に突出する突起314が設けられている。絞り部31eの前面31sは、吹出口3の周縁と第1辺e1で囲まれた面部である。突起314は、軸AXに対して点対称の位置に一対をなして配置されている。ただし、突起314の数は、特に限定されない。図1図3から図5に示す例のように二つであってもよいし、三つ以上、あるいは一つのみであってもよい。例えば、突起は、一対の絞り部31eの一方にのみ設けられていてもよい。
【0041】
突起314は、第2筒部材31を第1筒部材92に対して手動で回動させる際、第2筒部材31を回動させる力が作用される入力部であり、取っ手として機能する。第2筒部材31を回動させる際には、突起314をつまんで、軸AXを中心として周方向へ所望量だけ第2筒部材31を回動させればよい。図1図3から図5に示す例では、突起314は吹出口3の径方向に直線状に伸びた形態をなしているが、図示形態に限られない。例えば、突起の形態は、柱状(ボス)などであってもよい。あるいは、第2筒部材31を回動させることが可能であれば、突起ではなく穴や溝などの凹状の形態であってもよい。この場合、これらの穴や溝などに指や治具などを引っ掛けて第2筒部材31を回動させる。
【0042】
また、本実施形態において、吹出口ユニット4のうち、少なくとも雰囲気(外気)に曝される部位は結晶性樹脂で形成されている。一例として、吹出口ユニット4を構成する各部材、具体的には吹出口カバー40、風向板51,52,53、整流板94、第1筒部材92、および第2筒部材31は、いずれも結晶性樹脂で形成されている。結晶性樹脂としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが適用可能であるが、これらの例に限定されない。なお、上記の各部材に加えて、ファン9の羽根91、ファンモータ90のケースなども結晶性樹脂で形成してもよい。あるいは、これら各部材の基体を結晶性樹脂とは別の素材で形成し、該基体を結晶性樹脂でコーティングしてもよい。
【0043】
以上説明した室内ユニット1の構造であれば、温調されて風路ADを通過し、吹出口3から吹き出される気流(以下、吹出風という)の風量の低下を抑えつつ、吹出風の到達距離を伸ばすことができる。
【0044】
すなわち、本実施形態において、風路ADのうち、第1風路AD1を構成する第1筒部材92は、X-Z平面(軸AXに垂直な面)での断面積がほぼ一定のストレート状に構成されている。これに対し、第2風路AD2を構成する第2筒部材31は、中間部31dが縮径部となっており、X-Z平面での断面積が下流へ向かって狭まる(徐変する)先細り状に構成されている。このため、第1風路AD1の開口29側の断面積(開口面積)を所望の大きさとして吹出風の風量を確保することができる。併せて、第1風路AD1と連通する第2風路AD2の吹出口3側の断面積を、第1風路AD1の断面積よりも縮小させることができるため、吹出風の到達距離を延長させることができる。
【0045】
加えて、第2筒部材31は、先細り状の第2風路AD2の断面積をさらに狭める絞り部31eを有しているため、吹出風の到達距離をより一層延長させることができる。これにより、吹出風の到達距離の延長と風量増を効率よく両立させることが可能となる。したがって、空調対象の室内空間の温度を効率よく調整することができる。
【0046】
また、絞り部31eを有することで、第2筒部材31には凹部310が形成され、凹部310にはルーバー駆動機構33が配置されている。このため、凹部310がデッドスペースとならずに済み、適切なルーバー駆動機構33の配置スペースを確保することができる。これにより、第2筒部材31の外周面31aと吹出口カバー40との間に余計なスペースを確保することなく、ルーバー駆動機構33を配置できる。
【0047】
さらに、ルーバー駆動機構33が第2風路AD2内に出っ張ることもないため、ルーバー駆動機構33が吹出風の通風を妨げずに済む。したがって、ルーバー駆動機構33が吹出風の通風抵抗となって到達距離および風量に影響を与えることを防止できる。
【0048】
フランジ313の一部には突起(取っ手)314が設けられているが、該取っ手314は絞り部31eまで延在している。このため、取っ手314を配置するための専用スペースを別途設けることなく、操作しやすい大きな取っ手314を配置可能となる。したがって、第2筒部材31をスムーズに回動させることができ、操作性の向上を図ることができる。これにより、ルーバー駆動機構33による傾きの偏向のみならず、軸AXを中心とするルーバー5(風向板51,52,53)の周方向位置も変更可能となり、空調対象の室内空間の最適な方向へ吹出風を吹き出させることができる。
【0049】
本実施形態において、吹出口ユニット4を構成する吹出口カバー40、風向板51,52,53、整流板94、第1筒部材92、および第2筒部材31は、いずれも結晶性樹脂で形成されている。これらの各部材は、例えばポリプロピレンなどの結晶性樹脂で構成されるため、加工が容易で量産性の向上を図ることができる。また、結晶性樹脂は、オイルミストや塗装溶剤などに対する耐性が高いため、これらの成分が雰囲気中に含まれる環境下であっても、吹出口ユニット4、ひいては室内ユニット1を長期に亘って使用することが可能となる。
【0050】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1…室内ユニット、2…筐体、3…吹出口、4…吹出口ユニット、5…ルーバー、6…熱交換器、8…制御部、9…ファン、10…保持機構、30…回動ユニット、31…第2筒部材、31a…外周面、31b…基端部、31c…先端部、31d…中間部、31e…絞り部、31f…内周面、31s…前面、310…凹部、311…フランジ、312…噛合歯、313…フランジ、314…突起(取っ手)、315…平坦面、316a,316b…取付面、32…断熱材、33…ルーバー駆動機構、34…モータ、40…吹出口カバー、40a…先端部、51,52,53…風向板、90…ファンモータ、91…羽根、92…第1筒部材、94…整流板、AD…風路、AD1…第1風路、AD2…第2風路、AX…軸。
図1
図2
図3
図4
図5