(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
F15B 11/02 20060101AFI20230718BHJP
F15B 11/044 20060101ALI20230718BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
F15B11/02 C
F15B11/044
E02F9/22 R
E02F9/22 L
E02F9/22 E
(21)【出願番号】P 2022511763
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2021009934
(87)【国際公開番号】W WO2021200024
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2020060791
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】今井 勇佑
(72)【発明者】
【氏名】天野 裕昭
(72)【発明者】
【氏名】太田 泰典
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-075358(JP,A)
【文献】特開2001-329883(JP,A)
【文献】特開2004-360898(JP,A)
【文献】特開平09-317703(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0372088(US,A1)
【文献】特開平11-030204(JP,A)
【文献】特開2003-028101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00
F15B 11/02
F15B 11/028
F15B 11/044
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機によって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出される圧油によって駆動される油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを作動させる操作信号を出力する操作レバーと、
前記油圧アクチュエータに対する圧油の給排を制御する制御弁と、
前記油圧アクチュエータから排出される圧油が流れるメータアウト流路から前記制御弁を介さずに作動油タンクに圧油を排出するバイパス油路と、
前記バイパス油路の圧油の流量を制御するバイパス流量制御弁と、
前記油圧ポンプのポンプ圧力が減少するに従って前記油圧ポンプの傾転角を増加させる制御装置とを備えた作業機械において、
前記制御装置は、前記油圧アクチュエータの負荷圧に応じて前記バイパス流量制御弁の開口面積を制御するとともに、前記バイパス流量制御弁の開口面積を変化させた後のポンプ圧力の推定値が低い値になった場合であっても
前記ポンプ圧力の推定値の低下に応じて前記油圧ポンプのトルクの上限値を定めるトルク制限値を低下させることで開口面積を変化させる前の傾転角を保持する
ように制御することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記油圧ポンプから吐出される圧油を前記制御弁に供給する供給油路と作動油タンクとを接続するセンタバイパス油路と、
前記センタバイパス油路に設けられ、開口面積を変えることによって前記センタバイパス油路の圧油の流量を制御するセンタバイパス流量制御弁とを備え、
前記制御装置は、前記ポンプ圧力の推定値に応じて前記センタバイパス流量制御弁の開口面積を制御することを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の作業機械において、
前記油圧アクチュエータとは異なる他の油圧アクチュエータであって、前記油圧ポンプから吐出される圧油によって駆動される第2の油圧アクチュエータと、
前記第2の油圧アクチュエータを作動させる操作信号を出力する第2の操作レバーと、
前記第2の油圧アクチュエータに対する圧油の給排を制御する第2の制御弁とを備え、
前記制御装置は、前記第2の油圧アクチュエータの負荷圧に応じて、前記制御弁又は前記第2の制御弁を制御することを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、作業機械の一つである油圧ショベルは、ブーム、アーム、及び、作業具(例えば、バケットなどのアタッチメント)などから構成される作業装置を備えている。作業装置は、ブームを駆動するブームシリンダ、アームを駆動するアームシリンダ、及び、作業具を駆動する作業具シリンダなどの複数の油圧アクチュエータに油圧ポンプから供給される圧油の方向および流量を複数の制御弁でそれぞれ制御することにより動作を制御される。制御弁は、油圧ポンプから各油圧アクチュエータに供給される圧油の方向および流量を制御するものであり、油圧アクチュエータへ供給される圧油の流量を制御するメータイン絞りと、油圧アクチュエータからタンクへ排出される圧油の流量を制御するメータアウト絞りとを有している。
【0003】
このような作業機械においては、油圧アクチュエータから排出される圧油をタンクへ導くメータアウト流路に、油圧アクチュエータから排出される圧油をメータアウト絞りを介さずに圧油タンクへ直接導くバイパス油路を設けることでメータアウト側の合計開口面積を大きくし、圧力損失の低減を図る技術が知られている。しかしながら、例えば、作業装置が自重落下する方向へ動作する場合においては、油圧アクチュエータに動作方向と同一方向の負荷が作用し、油圧アクチュエータの動作速度が増加する。このとき、油圧アクチュエータのメータイン側の圧油の供給量が不足すると息継ぎ現象(キャビテーション)が発生し、操作性が悪化するおそれがある。
【0004】
このような問題に関して、例えば、特許文献1には、油圧ポンプから吐出される圧油により駆動される油圧アクチュエータと、当該油圧アクチュエータに対する圧油の給排をスプール位置に応じて制御する制御弁と、当該制御弁のスプール位置を操作量及び操作方向に応じて制御する操作装置と、前記油圧アクチュエータから排出される圧油が流れる1つ又は複数のメータアウト流路と、前記1つのメータアウト流路に設けられた少なくとも1つの可変絞り、又は、前記複数のメータアウト流路のそれぞれに少なくとも1つ設けられた可変絞りと、外力により前記油圧アクチュエータに加えられる負荷であって、当該油圧アクチュエータの動作方向と同じ方向の負荷を検出する負荷検出器と、前記可変絞りが1つの場合には当該1つの可変絞りの開口面積を、前記可変絞りが複数の場合には当該複数の可変絞りの開口面積の合計値を、前記負荷検出器により検出される負荷の大きさの増加に応じて低減する制御装置とを備える建設機械の油圧制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、作業機械の油圧システムは、回路内の圧油の圧力が急激に変化することによって油圧アクチュエータの速度が変動する場合がある。例えば、油圧ポンプを含むポンプ装置のトルク制御に起因して回路内の圧油の圧力が変動することが考えられる。
【0007】
ポンプ装置では、油圧ポンプを駆動する原動機であるエンジンのエンストを防止するために、油圧ポンプのトルクがエンジントルクを超えないようにトルク制御を行うことが一般的である。油圧ポンプのトルクはポンプ圧力とポンプ容積の積で表されるため、ポンプ圧力をフィードバックしてポンプ容積を制御することで油圧ポンプのトルクが一定値以下になるように制御する。具体的には、ポンプ圧力が高くなるほどポンプ容積が小さくなるように制御する。
【0008】
上記従来技術においては、例えば、メータアウト流路に接続される可変絞りの開口面積を増加させると、油圧アクチュエータの負荷圧およびポンプ圧力が急激に減少するため、ポンプ容積が急激に増加するような制御がなされることになる。すなわち、油圧ポンプから油圧アクチュエータに供給される圧油の流量が急激に増加するため、操作性が悪化する恐れがある。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、油圧アクチュエータの負荷圧が急激に低下した場合の操作性の悪化を抑制することができる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、原動機によって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出される圧油によって駆動される油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータを作動させる操作信号を出力する操作レバーと、前記油圧アクチュエータに対する圧油の給排を制御する制御弁と、前記油圧アクチュエータから排出される圧油が流れるメータアウト流路から前記制御弁を介さずに作動油タンクに圧油を排出するバイパス油路と、前記バイパス油路の圧油の流量を制御するバイパス流量制御弁と、前記油圧ポンプのポンプ圧力が減少するに従って前記油圧ポンプの傾転角を増加させる制御装置とを備えた作業機械において、前記制御装置は、前記油圧アクチュエータの負荷圧に応じて前記バイパス流量制御弁の開口面積を制御するとともに、前記バイパス流量制御弁の開口面積を変化させた後のポンプ圧力の推定値が低い値になった場合であっても前記ポンプ圧力の推定値の低下に応じて前記油圧ポンプのトルクの上限値を定めるトルク制限値を低下させることで開口面積を変化させる前の傾転角を保持するように制御するものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、油圧アクチュエータの負荷圧が急激に低下した場合の操作性の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す側面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る油圧回路システムのうち、アームシリンダの制御に係る部分を周辺構成とともに抜き出して示す図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る制御装置の処理内容に係る機能を示す機能ブロック図である。
【
図4】バイパス流量制御弁開口面積演算部の処理内容の詳細を示す図である。
【
図5】ポンプ圧力推定値演算部の処理内容の詳細を示す図である。
【
図6】ポンプ容積補正演算部の処理内容の詳細を示す図である。
【
図7】補正演算部の処理内容の詳細を示す図である。
【
図8】駆動制御部の処理内容の詳細を示す図である。
【
図9】第2の実施の形態に係る油圧回路システムのうち、アームシリンダの制御に係る部分を周辺構成とともに抜き出して示す図である。
【
図10】第2の実施の形態に係る制御装置の処理内容に係る機能を示す機能ブロック図である。
【
図11】センタバイパス流量制御弁開口面積補正演算部の処理内容の詳細を示す図である。
【
図13】第2の実施の形態に係る駆動制御部の処理内容の詳細を示す図である。
【
図14】第3の実施の形態に係る油圧回路システムのうち、アームシリンダの制御に係る部分を周辺構成とともに抜き出して示す図である。
【
図15】第3の実施の形態に係る制御装置の処理内容に係る機能を示す機能ブロック図である。
【
図16】第2の制御弁補正演算部の処理内容の詳細を示す図である。
【
図18】第2の実施の形態に係る駆動制御部の処理内容の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、作業機械の一例として油圧ショベルを例示して説明するが、油圧アクチュエータで駆動される作業装置を有する他の作業機械にも本発明を適用することが可能である。
【0014】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を
図1~
図8参照しつつ説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す側面図である。
【0016】
図1において、油圧ショベル100は、油圧ショベルは左右一対の履帯1,2を備えた走行体3と、走行体3の上に取り付けられた旋回体4とからなる車体1Bと、旋回体4の前方中央部に設けられた多関節型の作業装置1Aとから構成されている。
【0017】
作業装置1Aは、一端を旋回体4に回転自在にピン結合されたブーム5と、一端をブーム5の他端に回転自在にピン結合されたアーム6と、アーム6の他端に回転自在にピン結合された作業具(アタッチメント)であるバケット7とを備えている。また、作業装置1Aには、ブーム5を上下方向に揺動駆動する油圧シリンダである左右一対のブームシリンダ13,14と、アーム6をブームに対して上下方向(前後方向)に揺動駆動する油圧シリンダであるアームシリンダ15と、アーム6に対してアタッチメント(ここでは、バケット7)を上下方向(前後方向)に揺動駆動する油圧シリンダであるアタッチメントシリンダ16とが設けられている。すなわち、作業装置1Aは、油圧シリンダ13,14,15,16の伸縮動作により駆動される。なお、
図1においては、左側のブームシリンダ13のみを図示し、右側のブームシリンダ14はその符号を括弧書きで示して図示を省略する。作業装置1Aの先端に設けられる作業具としてはバケット7に限られず、作業内容に応じて、例えば、グラップル、カッタ、ブレーカやその他のアタッチメントのいずれか1つに交換可能である。
【0018】
走行体3には、左右一対の履帯1,2をそれぞれ駆動する走行油圧モータ11,12が設けられている。なお、
図1においては、左側の履帯1及び走行油圧モータ11のみを図示し、右側の履帯2及び走行油圧モータ12はその符号を括弧書きで示して図示を省略する。
【0019】
旋回体4には、オペレータが搭乗する運転室8と、原動機(例えば、エンジン17(後述))や油圧ポンプ18(後述)などを格納する機械室9と、旋回体4の後方に設けられたカウンタウェイト10と、走行体3に対して旋回体4を旋回駆動する旋回油圧モータ(図示せず)とが設けられている。運転室8には、油圧ショベル100の各油圧アクチュエータ、すなわち、ブームシリンダ13,14、アームシリンダ15、バケットシリンダ16などの作業装置1Aの油圧アクチュエータや、走行油圧モータ11,12や旋回油圧モータ(図示せず)などを作動させる操作信号を出力する操作レバーが設けられている。
【0020】
図2は、油圧ショベルに備えられる油圧回路システムのうち、アームシリンダの制御に係る部分を周辺構成とともに抜き出して示す図である。
【0021】
図2において、本実施の形態に係る油圧回路システムは、エンジンや電動モータなどの原動機(ここでは、エンジン17)と、原動機であるエンジン17によって駆動される可変容量型の油圧ポンプ18と、油圧ポンプ18の吐出ライン(供給油路)に接続され、油圧ポンプ18から油圧アクチュエータ(ここでは、アームシリンダ15)に供給される圧油の給排(流量および方向)を制御する制御弁27(流量制御弁)と、アームシリンダ15から作動油タンク30に排出される圧油が流れるメータアウト流路から制御弁27を介さずに作動油タンク30に圧油を排出するバイパス油路33と、バイパス油路33の圧油の流量を制御するバイパス流量制御弁32と、パイロット圧を生成するパイロットポンプ28と、油圧回路システムを含む油圧ショベル100全体の動作を制御する制御装置19とから概略構成されている。
【0022】
パイロットポンプ28は油圧機器の制御に用いられるパイロット圧を生成する固定容量型の油圧ポンプである。パイロットポンプ28からパイロット回路に吐出された圧油は、パイロットリリーフ弁29を介して作動油タンク30に戻されるようになっており、パイロット回路の圧力はパイロットリリーフ弁29の設定圧力に保持されるように構成されている。
【0023】
油圧ポンプ18は可変容量型であり、制御装置19からの制御信号によって電子式のポンプレギュレータ20を制御して油圧ポンプ18の容量を変える制御、すなわち、油圧ポンプ18の傾転角を変える制御を行う構成となっている。ポンプレギュレータ20は、油圧ポンプ18の吐出流量が制御装置19から制御信号として送信される目標値(後述するレギュレータ指令電流値41)となるように油圧ポンプ18のポンプ容量(ポンプ容積)を制御する。油圧ポンプ18の供給油路には、油圧ポンプ18からの吐出圧を検出する圧力センサ34が設けられている。圧力センサ34の検出結果(以降、ポンプ圧力34と称する)は、制御装置19に送信される。
【0024】
制御弁27は、油圧ポンプ18の供給油路に接続されており、制御装置19によって制御される電磁比例弁31a,31bを介して受圧部に導かれる制御信号(パイロット圧)で駆動されることにより、アームシリンダ15に供給される圧油の方向および流量を制御する。
【0025】
例えば、制御弁27が電磁比例弁31aからのパイロット圧によって一方(例えば、
図1における右側)に駆動されると、油圧ポンプ18から吐出された圧油が制御弁27を介してアームシリンダ15のボトム側の油室に供給され、ロッド側の油室から排出された圧油が制御弁27を介して作動油タンク30に導かれる。すなわち、制御弁27とアームシリンダ15のボトム側の油室とを接続する油路がメータイン流路となり、アームシリンダ15のロッド側の油室と制御弁27とを接続する油路がメータアウト油路となる。このとき、アームシリンダ15は伸長駆動され、アームクラウド動作がなされる。
【0026】
また、制御弁27が電磁比例弁31bからのパイロット圧によって他方(例えば、
図1における左側)に駆動されると、油圧ポンプ18から吐出された圧油が制御弁27を介してアームシリンダ15のロッド側の油室に供給され、ボトム側の油室から排出された圧油が制御弁27を介して作動油タンク30に導かれる。すなわち、制御弁27とアームシリンダ15のロッド側の油室とを接続する油路がメータイン流路となり、アームシリンダ15のボトム側の油室と制御弁27とを接続する油路がメータアウト油路となる。このとき、アームシリンダ15は縮退駆動され、アームダンプ動作がなされる。
【0027】
アームシリンダ15のボトム側とロッド側の油室に接続される油路には、それぞれ、圧力センサ35a,35bが設けられている。圧力センサ35aは、アームシリンダ15のボトム側の圧力(以降、ボトム圧力35aと称する)を、圧力センサ35bはロッド側の圧力(以降、ロッド圧力35bと称する)をそれぞれ検出し、制御装置19に送信する。
【0028】
操作レバー26は、オペレータの操作入力の方向及び操作量に応じて、操作信号26a,26bを制御装置19に出力する。操作信号26aは、油圧アクチュエータ(アームシリンダ15)の伸長を指示するものであり、操作信号26bは油圧アクチュエータ(アームシリンダ15)の縮退を指示するものである。制御装置19は、操作レバー26からの操作信号26a,26bに応じて、電磁比例弁31a,31bを制御する制御信号を生成することにより、制御弁27を駆動する制御信号(パイロット圧)を生成する。すなわち、操作レバー26は、油圧アクチュエータ(アームシリンダ15)を作動させる操作信号を制御装置19に出力し、制御装置19は、操作レバー26からの操作信号に基づいて、油圧アクチュエータ(アームシリンダ15)を駆動させる。
【0029】
バイパス油路33に設けられたバイパス流量制御弁32は、制御装置19によって制御される電磁比例弁31cを介して受圧部に導かれる制御信号(バイパス流量制御弁指令指令圧力)で駆動されることにより、バイパス油路33の圧油の流量を制御する。バイパス流量制御弁指令圧力は、バイパス制御パイロット配管201に設けられた圧力センサ200により検出され、制御装置19に送信される。
【0030】
図3は、制御装置の処理内容に係る機能を示す機能ブロック図である。
【0031】
図3に示すように、制御装置19は機能部として、負荷演算部21と、バイパス流量制御弁開口面積演算部22と、ポンプ圧力推定値演算部23と、ポンプ容積補正演算部24と、駆動制御部25とを有している。
【0032】
負荷演算部21は、アームシリンダ15のボトム圧力(圧力センサ35aの検出値)及びロッド圧力(圧力センサ35bの検出値)に基づいてアームシリンダ15の負荷(負荷圧)であるアームシリンダ負荷36を演算する。すなわち、負荷演算部21において、アームシリンダ負荷F(アームシリンダ負荷36)は、予め記憶されたアームシリンダボトム面積A_Btm及びロッド面積A_Rod、アームシリンダボトム圧力P_Btm(アームシリンダボトム圧力35a)、ロッド圧力P_Rod(アームシリンダロッド圧力35b)を用いて下記の(式1)により求められる。
【0033】
【0034】
バイパス流量制御弁開口面積演算部22は、操作レバー26からのアームダンプ動作に係る操作信号(レバー操作量26b)と、負荷演算部21からのアームシリンダ負荷36とに基づいて、バイパス流量制御弁開口面積目標値37を演算する。
【0035】
図4は、バイパス流量制御弁開口面積演算部の処理内容の詳細を示す図である。
【0036】
図4に示すように、バイパス流量制御弁開口面積演算部22は、アクチュエータ負荷36とバイパス流量制御弁開口面積目標値37との関係を予め定めたテーブルに基づいて、バイパス流量制御弁開口面積目標値37を演算する。バイパス流量制御弁開口面積演算部22で用いるテーブルでは、アームシリンダ負荷36がf2(正の値)以上の場合にはバイパス流量制御弁開口面積目標値37が全閉となるように設定されている。また、アームシリンダ負荷36がf2以下では、アームシリンダ負荷36が小さくなるにしたがって、レバー操作量26bごとに予め定めた最大値に向かってバイパス流量制御弁開口面積目標値37が大きくなるように設定されている。ここで、バイパス流量制御弁開口面積目標値37の最大値は、レバー操作量が大きくなるほど大きくなるように定められている。さらに、アームシリンダ負荷36がf1(負の値)以下では、バイパス流量制御弁開口面積目標値37が最大値を維持するように設定されている。
【0037】
ポンプ圧力推定値演算部23は、バイパス流量制御弁開口面積演算部22からのバイパス流量制御弁開口面積目標値37と、操作レバー26からの操作信号(レバー操作量26b)と、圧力センサ35aからの検出結果(アームシリンダ15のボトム圧力35a)と、圧力センサ35bからの検出結果(アームシリンダ15のロッド圧力35b)と、圧力センサ34の検出結果(油圧ポンプ18のポンプ圧力34)と圧力センサ200の検出結果(バイパス流量制御弁指令圧力)とに基づいて、バイパス流量制御弁32を開口した後の油圧ポンプ18の吐出圧の推定値(ポンプ圧力推定値38)を演算する。
【0038】
図5は、ポンプ圧力推定値演算部の処理内容の詳細を示す図である。
【0039】
図5に示すように、ポンプ圧力推定値演算部23は、流量制御弁開口面積演算部42と、アームシリンダボトム圧力推定値演算部44と、アームシリンダロッド圧力推定値演算部46と、ポンプ圧力推定値演算部50とを有している。
【0040】
流量制御弁開口面積演算部42は、レバー操作量26bと制御弁27のメータアウト流路の開口面積である流量制御弁開口面積43との関係を予め定めたテーブルに基づいて、流量制御弁開口面積43を演算する。ポンプ圧力推定値演算部23で用いるテーブルは、レバー操作量26bが大きくなるにしたがって、流量制御弁開口面積43が大きくなるように定められている。
【0041】
バイパス流量制御弁開口演算部210は、バイパス流量制御弁指令圧力(圧力センサ200により検出)と開口面積の関係を予め定めたテーブルに基づいて、現在のバイパス流量制御弁開口面積220を演算する。
【0042】
アームシリンダボトム圧力推定値演算部44は、バイパス流量制御弁開口面積目標値37と、流量制御弁開口面積43と、アームシリンダボトム圧力35aとに基づいて、アームシリンダボトム圧力推定値45を演算する。すなわち、アームシリンダボトム圧力推定値演算部44において、アームシリンダボトム圧力推定値P’_Btm(アームシリンダボトム圧力推定値45)は、バイパス流量制御弁開口面積目標値A’_BP(バイパス流量制御弁開口面積目標値37)、流量制御弁27のメータアウト開口面積A_MO(流量制御弁開口面積43)、アームシリンダボトム圧力P_Btm(アームシリンダボトム圧力35a)、現在のバイパス流量制御弁開口面積A_BP(220)を用いて下記の(式2)により求められる。
【0043】
【0044】
アームシリンダロッド圧力推定値演算部46は、予め記憶されているアームシリンダボトム面積47及びアームシリンダロッド面積48と、アームシリンダボトム圧力35aと、アームシリンダロッド圧力35bと、アームシリンダボトム圧力推定値45とに基づいて、アームシリンダロッド圧力推定値49を演算する。すなわち、アームシリンダロッド圧力推定値演算部46において、アームシリンダロッド圧力推定値P’_Rod(アームシリンダロッド圧力推定値49)は、予め記憶されたアームシリンダボトム面積A_Btm(アームシリンダボトム面積47)及びアームシリンダロッド面積A_Rod(アームシリンダロッド面積48)、アームシリンダボトム圧力P_Btm(アームシリンダボトム圧力35a)、アームシリンダロッド圧力P_Rod(アームシリンダロッド圧力35b)を用いて下記の(式3)により求められる。
【0045】
【0046】
ポンプ圧力推定値演算部50は、ポンプ圧力34と、アームシリンダロッド圧力35bと、アームシリンダロッド圧力推定値49とに基づいて、ポンプ圧力推定値P’_Pmp(ポンプ圧力推定値38)を演算する。すなわち、ポンプ圧力推定値演算部50において、ポンプ圧力推定値P’_Pmp(ポンプ圧力推定値38)は、ポンプ圧力P_Pmp(ポンプ圧力34)、アームシリンダロッド圧力P_Rod(アームシリンダロッド圧力35b)、アームシリンダロッド圧力推定値P’_Rod(アームシリンダロッド圧力推定値49)を用いて下記の(式4)により求められる。
【0047】
【0048】
ポンプ容積補正演算部24は、レバー操作量26bと、ポンプ圧力34と、ポンプ圧力推定値38とに基づいて、補正後のポンプ容積目標値39を演算する。
【0049】
図6は、ポンプ容積補正演算部の処理内容の詳細を示す図である。
【0050】
図6に示すように、ポンプ容積補正演算部24は、ポンプ容積演算部51と、補正演算部53とを有している。
【0051】
ポンプ容積演算部51は、レバー操作量26bとポンプ容積目標値q(ポンプ容積目標値52)との関係を予め定めたテーブルに基づいて、ポンプ容積目標値52を演算する。ポンプ容積演算部51で用いるテーブルは、レバー操作量26bが大きくなるにしたがって、ポンプ容積qが大きくなるように定められている。
【0052】
補正演算部53は、ポンプ容積目標値52と、ポンプ圧力34と、ポンプ圧力推定値38とに基づいて、補正後のポンプ容積目標値39を演算する。
【0053】
図7は、補正演算部の処理内容の詳細を示す図である。
【0054】
図7に示すように、補正演算部53は、ポンプ容積制限値演算部54と、最小値選択部56とを有している。
【0055】
ポンプ容積制限値演算部54は、まず、ポンプ圧力P_Pmp(ポンプ圧力34)と、ポンプ圧力推定値P’_Pmp(ポンプ圧力推定値38)と、予め設定されている油圧ポンプ18のトルク制限値Tとを用いて、バイパス流量制御弁開口後のトルク制限値T’を下記の(式5)により求める。
【0056】
【0057】
そして、バイパス流量制御弁開口後は、トルク制限値Tをトルク制限値T’に置き換え、このときのポンプ容積制限値q(ポンプ容積制限値55)を出力する。これにより、バイパス開口前後でポンプ圧力P_Pmpの変動に依存するポンプ容積qの変化を抑制することができる。
【0058】
最小値選択部56は、ポンプ容積制限値演算部54で演算されたポンプ容積制限値55、すなわち、トルク制限値がT’の場合のポンプ容積qと、オペレータのレバー操作に応じたポンプ容積目標値52とのの最小値を選択して補正後のポンプ容積目標値39として出力する。言い換えると、最小値選択部56は、バイパス流量制御弁32の開口面積を変化させた後のポンプ圧力の推定値が低い値になった場合であっても、補正後のポンプ容積目標値を出力して、油圧ポンプ18のポンプ圧力(油圧ポンプ18の吐出圧)が低下する前の油圧ポンプ18の傾転角を保持させる。
【0059】
駆動制御部25は、バイパス流量制御弁開口面積目標値37と、補正後のポンプ容積目標値39とに基づいて、電磁比例弁31cの指令電流値40と、ポンプレギュレータ20の指令電流値41とを演算し、出力する。
【0060】
図8は、駆動制御部の処理内容の詳細を示す図である。
【0061】
図8に示すように、駆動制御部25は、電磁比例弁指令電流演算部58と、レギュレータ指令電流演算部59とを有している。
【0062】
電磁比例弁指令電流演算部58は、バイパス流量制御弁開口面積目標値37と電磁比例弁指令電流値40との関係を予め定めたテーブルに基づいて、電磁比例弁31cの電磁比例弁指令電流値40を演算する。電磁比例弁指令電流演算部58で用いるテーブルでは、バイパス流量制御弁開口面積目標値37が0(ゼロ)の場合には電磁比例弁指令電流値40は0(ゼロ)であり、バイパス流量制御弁開口面積目標値37が大きくなるにしたがって電磁比例弁指令電流値40が大きくなるように設定されている。
【0063】
レギュレータ指令電流演算部59は、ポンプ容積目標値39とレギュレータ指令電流値41との関係を予め定めたテーブルに基づいて、ポンプレギュレータ20の制御信号(レギュレータ指令電流値41)を演算する。レギュレータ指令電流演算部59で用いるテーブルでは、ポンプ容積目標値39が0(ゼロ)の場合にはレギュレータ指令電流値41は0(ゼロ)であり、ポンプ容積目標値39が大きくなるにしたがってレギュレータ指令電流値41が大きくなるように設定されている。
【0064】
上記した本実施形態の動作をアームの動作に対応づけて説明する。
【0065】
アーム6がクラウド状態からダンプ操作されて自重方向(自重落下する方向)にアーム6が動作される場合には、アームシリンダ15に作用する負荷はアームシリンダ15の動作する方向と同じ方向に作用するため、アームシリンダ15が縮む速度が増加する。このとき、バイパス流量制御弁32の開口面積は小さく制御され作動油タンク30へ通じるバイパス油路33が絞られることによりアームシリンダ15の縮む速度が抑えられる。一方、アーム6がダンプ操作されて自重に反する方向にアーム6が動作される場合には、アームシリンダ15に作用する負荷がアームシリンダ15の動作する方向とは反対方向に作用するため、バイパス流量制御弁32の絞り作用によって圧力損失が発生する。このとき、バイパス流量制御弁32の開口面積は大きく制御され圧力損失を低減しようとして、バイパス流量制御弁32の開口面積の増大に伴い油圧ポンプ18の圧力が下がる(
図7のポンプ圧力P’参照)。ポンプ圧力が下がると通常制御では、油圧ポンプ18の傾転角は増加され、吐出流量を増やすように制御されるが、本願発明では、通常制御において油圧ポンプ18の傾転角が増加するように制御されることに替えて、油圧ポンプ18の傾転角が保持されるように制御される。結果として、オペレータの意図しないアームシリンダ15の速度の上昇が抑えられる。
【0066】
以上のように構成した本実施の形態の作用効果を説明する。
【0067】
従来技術においては、例えば、メータアウト流路に接続される可変絞りの開口面積を増加させると、油圧アクチュエータの負荷圧およびポンプ圧力が急激に減少するため、ポンプ容積が急激に増加するような制御がなされることになる。すなわち、油圧ポンプから油圧アクチュエータに供給される圧油の流量が急激に増加するため、操作性が悪化する恐れがある。
【0068】
これに対して、本実施の形態においては、原動機によって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出される圧油によって駆動される油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータを作動させる操作信号を出力する操作レバーと、油圧アクチュエータに対する圧油の給排を制御する制御弁と、油圧アクチュエータから排出される圧油が流れるメータアウト流路から制御弁を介さずに作動油タンクに圧油を排出するバイパス油路と、バイパス油路の圧油の流量を制御するバイパス流量制御弁と、油圧アクチュエータの負荷圧に応じてバイパス流量制御弁の開口面積を制御するとともに、バイパス流量制御弁の開口面積を変化させた後のポンプ圧力の推定値が低い値になった場合であっても開口面積を変化させる前の傾転角を保持する制御を行う制御装置とを備えるように構成したので、油圧アクチュエータの負荷圧が急激に低下した場合の操作性の悪化を抑制することができる。
【0069】
すなわち、本実施の形態においては、バイパス流量制御弁の開口変化に対するポンプ容積の変化を予測し、その変化に応じてポンプ容積目標値39(油圧ポンプ18のポンプレギュレータ20への指令値であるレギュレータ指令電流値41の元となる値)を算出するので、操作性の悪化を抑制することができる。
【0070】
特に、バイパス流量制御弁の開口変化が大きい場合には、操作対象の油圧アクチュエータの負荷圧が急激に減少し、その変化量も大きいため、従来技術においてはポンプレギュレータによって制御される油圧ポンプの吐出流量(吐出圧)が急激に大きくなるよう制御され、操作性の悪化がより大きくなると考えられるが、本実施の形態においては、バイパス流量制御弁の開口変化が大きい場合であっても、開口の変化量に応じて油圧ポンプ18の吐出圧(ポンプ容積)を制御して操作性の悪化を抑制することができるので、より高い効果を得ることができる。
【0071】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を
図9~
図13を参照しつつ説明する。本実施の形態では第1の実施の形態との相違点についてのみ説明するものとし、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付して説明を省略する。
【0072】
本実施の形態は、センタバイパス型の油圧回路システムに本願発明を適用する場合を示すものである。
【0073】
図9は、本実施の形態に係る油圧回路システムのうち、アームシリンダの制御に係る部分を周辺構成とともに抜き出して示す図である。
【0074】
図9において、本実施の形態に係る油圧回路システムは、エンジンや電動モータなどの原動機(ここでは、エンジン17)と、原動機であるエンジン17によって駆動される可変容量型の油圧ポンプ18と、油圧ポンプ18の吐出ライン(供給油路)に接続され、油圧ポンプ18から油圧アクチュエータ(ここでは、アームシリンダ15)に供給される圧油の給排(流量および方向)を制御するセンタバイパス型の制御弁27A(流量制御弁)と、アームシリンダ15から作動油タンク30に排出される圧油が流れるメータアウト流路から制御弁27Aを介さずに作動油タンク30に圧油を排出するバイパス油路33と、バイパス油路33の圧油の流量を制御するバイパス流量制御弁32と、油圧ポンプ18から吐出される圧油を制御弁27Aに供給する供給油路と作動油タンク30とを接続するセンタバイパス油路60と、センタバイパス油路60の制御弁27Aよりも下流側に設けられ、開口面積を変えることによってセンタバイパス油路60を介して作動油タンク30に導かれる圧油の流量を制御するセンタバイパス流量制御弁61と、パイロット圧を生成するパイロットポンプ28と、油圧回路システムを含む油圧ショベル100全体の動作を制御する制御装置19Aとから概略構成されている。
【0075】
センタバイパス油路60に設けられたセンタバイパス流量制御弁61は、制御装置19Aによって制御される電磁比例弁62を介して受圧部に導かれる制御信号(パイロット圧)で駆動されることにより、センタバイパス油路60の圧油の流量を制御する。
【0076】
図10は、本実施の形態に係る制御装置の処理内容に係る機能を示す機能ブロック図である。
【0077】
図10に示すように、制御装置19Aは機能部として、負荷演算部21と、バイパス流量制御弁開口面積演算部22と、ポンプ圧力推定値演算部23と、ポンプ容積補正演算部24と、駆動制御部25Aと、センタバイパス流量制御弁開口面積補正演算部63とを有している。
【0078】
センタバイパス流量制御弁開口面積補正演算部63は、レバー操作量26bと、ポンプ圧力34と、ポンプ圧力推定値38とに基づいて、補正後のセンタバイパス流量制御弁開口面積目標値64を演算する。
【0079】
図11は、センタバイパス流量制御弁開口面積補正演算部の処理内容の詳細を示す図である。
【0080】
図11に示すように、センタバイパス流量制御弁開口面積補正演算部63は、センタバイパス流量制御弁開口面積演算部66と、補正演算部68とを有している。
【0081】
センタバイパス流量制御弁開口面積演算部66は、レバー操作量26bとセンタバイパス流量制御弁開口面積目標値A_CB(センタバイパス流量制御弁開口面積目標値67)との関係を予め定めたテーブルに基づいて、センタバイパス流量制御弁開口面積目標値67を演算する。センタバイパス流量制御弁開口面積演算部66で用いるテーブルは、レバー操作量26bが0(ゼロ)から大きくなるにしたがって、センタバイパス流量制御弁開口面積目標値67が急峻に小さくなり、その後、レバー操作量26bの増加にともなって緩やかに小さくなるように定められている。
【0082】
補正演算部68は、センタバイパス流量制御弁開口面積目標値67と、ポンプ圧力34と、ポンプ圧力推定値38とに基づいて、補正後のセンタバイパス流量制御弁開口面積目標値64を演算する。具体的には、補正演算部68は、タンク圧を0(ゼロ)MPaとし、センタバイパス流量制御弁開口面積目標値A_CB(センタバイパス流量制御弁開口面積目標値67)と、ポンプ圧力P_Pmp(ポンプ圧力34)と、ポンプ圧力推定値P’_Pmp(ポンプ圧力推定値38)とを用いて、補正後のセンタバイパス流量制御弁開口面積目標値A’_CB(センタバイパス流量制御弁開口面積目標値64)を下記の(式6)により求める。
【0083】
【0084】
図12は、上記の(式6)をテーブルとして示したものである。
【0085】
図12に示すテーブルによっても、補正後のセンタバイパス流量制御弁開口面積目標値A’_CB(センタバイパス流量制御弁開口面積目標値64)を求めることができる。
【0086】
駆動制御部25Aは、バイパス流量制御弁開口面積目標値37と、補正後のポンプ容積目標値39と、補正後のセンタバイパス流量制御弁開口面積目標値64とに基づいて、電磁比例弁31cの指令電流値40と、ポンプレギュレータ20の指令電流値41と、電磁比例弁62の指令電流値65とを演算し、出力する。
【0087】
図13は、本実施の形態に係る駆動制御部の処理内容の詳細を示す図である。
【0088】
図13に示すように、駆動制御部25Aは、電磁比例弁指令電流演算部58(電磁比例弁31c用)と、レギュレータ指令電流演算部59と、電磁比例弁指令電流演算部69(電磁比例弁62用)とを有している。
【0089】
電磁比例弁指令電流演算部64は、センタバイパス流量制御弁開口面積目標値64と電磁比例弁指令電流値40との関係を予め定めたテーブルに基づいて、電磁比例弁62の電磁比例弁指令電流値65を演算する。電磁比例弁指令電流演算部69で用いるテーブルでは、センタバイパス流量制御弁開口面積目標値64が0(ゼロ)の場合には電磁比例弁指令電流値65は0(ゼロ)であり、センタバイパス流量制御弁開口面積目標値64が大きくなるにしたがって電磁比例弁指令電流値65が大きくなるように設定されている。
【0090】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0091】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0092】
また、本実施の形態では、センタバイパス型の油圧回路システムにおいて、油圧ポンプ18のポンプ容積だけではなく、センタバイパス流量制御弁61の制御に補正を加えることで、アームシリンダ15とセンタバイパス油路60の圧油の分流バランスの変化を抑制するように構成したので、操作性の悪化を抑制することができる。
【0093】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態を
図14~
図18を参照しつつ説明する。本実施の形態では第1の実施の形態との相違点についてのみ説明するものとし、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付して説明を省略する。
【0094】
本実施の形態は、油圧ポンプによって複数の油圧アクチュエータを駆動する場合の油圧回路システムに本願発明を適用する場合を示すものである。
【0095】
図14において、本実施の形態に係る油圧回路システムは、エンジンや電動モータなどの原動機(ここでは、エンジン17)と、原動機であるエンジン17によって駆動される可変容量型の油圧ポンプ18と、油圧ポンプ18の吐出ライン(供給油路)に接続され、油圧ポンプ18から油圧アクチュエータ(ここでは、アームシリンダ15)に供給される圧油の給排(流量および方向)を制御する制御弁27(流量制御弁)と、油圧ポンプ18から他の油圧アクチュエータ(ここでは、シリンダ70:第2の油圧アクチュエータ)に供給される圧油の給排(流量および方向)を制御する制御弁71(流量制御弁:第2の制御弁)と、アームシリンダ15から作動油タンク30に排出される圧油が流れるメータアウト流路から制御弁27を介さずに作動油タンク30に圧油を排出するバイパス油路33と、バイパス油路33の圧油の流量を制御するバイパス流量制御弁32と、パイロット圧を生成するパイロットポンプ28と、油圧回路システムを含む油圧ショベル100全体の動作を制御する制御装置19Bとから概略構成されている。
【0096】
制御弁71は、油圧ポンプ18の供給油路に接続されており、制御装置19Bによって制御される電磁比例弁72a,72bを介して受圧部に導かれる制御信号(パイロット圧)で駆動されることにより、シリンダ70に供給される圧油の方向および流量を制御する。
【0097】
例えば、制御弁71が電磁比例弁72aからのパイロット圧によって一方(例えば、
図1における右側)に駆動されると、油圧ポンプ18から吐出された圧油が制御弁71を介してシリンダ70のボトム側の油室に供給され、ロッド側の油室から排出された圧油が制御弁71を介して作動油タンク30に導かれる。すなわち、制御弁71とシリンダ70のボトム側の油室とを接続する油路がメータイン流路となり、シリンダ70のロッド側の油室と制御弁71とを接続する油路がメータアウト油路となる。このとき、シリンダ70は伸長駆動される。
【0098】
また、制御弁71が電磁比例弁72bからのパイロット圧によって他方(例えば、
図1における左側)に駆動されると、油圧ポンプ18から吐出された圧油が制御弁71を介してシリンダ70のロッド側の油室に供給され、ボトム側の油室から排出された圧油が制御弁71を介して作動油タンク30に導かれる。すなわち、制御弁71とシリンダ70のロッド側の油室とを接続する油路がメータイン流路となり、シリンダ70のボトム側の油室と制御弁71とを接続する油路がメータアウト油路となる。このとき、シリンダ70は縮退駆動される。
【0099】
シリンダ70のボトム側とロッド側の油室に接続される油路には、それぞれ、圧力センサ74a,74bが設けられている。圧力センサ74aは、シリンダ70のボトム側の圧力を、圧力センサ74bはロッド側の圧力をそれぞれ検出し、制御装置19Bに送信する。
【0100】
操作レバー73(第2の操作レバー)は、オペレータの操作入力の方向及び操作量に応じて、操作信号73a,73bを制御装置19Bに出力する。操作信号73aは、油圧アクチュエータ(シリンダ70)の伸長を指示するものであり、操作信号73bは油圧アクチュエータ(シリンダ70)の縮退を指示するものである。制御装置19Bは、操作レバー73からの操作信号73a,73bに応じて、電磁比例弁72a,72bを制御する制御信号を生成することにより、制御弁71を駆動する制御信号(パイロット圧)を生成する。すなわち、操作レバー73は、油圧アクチュエータ(シリンダ70)を作動させる操作信号を制御装置19Bに出力し、制御装置19Bは、操作レバー73からの操作信号に基づいて、油圧アクチュエータ(シリンダ70)を駆動させる。
【0101】
図15は、本実施の形態に係る制御装置の処理内容に係る機能を示す機能ブロック図である。
【0102】
図15に示すように、制御装置19Bは機能部として、負荷演算部21と、バイパス流量制御弁開口面積演算部22と、ポンプ圧力推定値演算部23と、ポンプ容積補正演算部24と、駆動制御部25Bと、第2の制御弁補正演算部75とを有している。
【0103】
第2の制御弁補正演算部75は、ポンプ圧力推定値38と、ポンプ圧力34と、操作レバー73(第2の操作レバー)のレバー操作量73bと、シリンダ70(第2の油圧アクチュエータ)のロッド圧力74bとに基づいて、制御弁71(第2の制御弁)のメータイン開口面積目標値76を演算する。
【0104】
図16は、第2の制御弁補正演算部の処理内容の詳細を示す図である。
【0105】
図16に示すように、第2の制御弁補正演算部75は、第2の制御弁メータイン開口面積演算部78と、補正演算部80とを有している。
【0106】
第2の制御弁メータイン開口面積演算部78は、第2の操作レバーのレバー操作量73bと第2の制御弁メータイン開口面積目標値A_MI2(第2の制御弁メータイン開口面積目標値79)との関係を予め定めたテーブルに基づいて、第2の制御弁メータイン開口面積目標値79を演算する。第2の制御弁メータイン開口面積演算部78で用いるテーブルは、レバー操作量73bが0(ゼロ)から大きくなるにしたがって、第2の制御弁メータイン開口面積目標値79が大きくなるように定められている。
【0107】
補正演算部80は、第2の制御弁メータイン開口面積目標値79と、ポンプ圧力34と、ポンプ圧力推定値38と、第2のシリンダのロッド圧力74bとに基づいて、補正後の第2の制御弁メータイン開口面積目標値76を演算する。具体的には、補正演算部80は、第2の制御弁メータイン開口面積目標値A_MI2(第2の制御弁メータイン開口面積目標値79)と、ポンプ圧力P_Pmp(ポンプ圧力34)と、ポンプ圧力推定値P’_Pmp(ポンプ圧力推定値38)と、第2シリンダロッド圧力P_Rod2(第2のシリンダのロッド圧力74b)とを用いて、第2の制御弁メータイン開口面積目標値A’_MI2(第2の制御弁メータイン開口面積目標値76)を下記の(式7)により求める。
【0108】
【0109】
図17は、上記の(式7)をテーブルとして示したものである。
【0110】
図17に示すテーブルによっても、補正後の第2の制御弁メータイン開口面積目標値A’_MI2(第2の制御弁メータイン開口面積目標値76)を求めることができる。
【0111】
駆動制御部25Bは、バイパス流量制御弁開口面積目標値37と、補正後のポンプ容積目標値39と、補正後の第2の制御弁メータイン開口面積目標値76とに基づいて、電磁比例弁31cの指令電流値40と、ポンプレギュレータ20の指令電流値41と、電磁比例弁72bの指令電流値77とを演算し、出力する。
【0112】
図18は、本実施の形態に係る駆動制御部の処理内容の詳細を示す図である。
【0113】
図18に示すように、駆動制御部25Bは、電磁比例弁指令電流演算部58(電磁比例弁31c用)と、レギュレータ指令電流演算部59と、電磁比例弁指令電流演算部81(電磁比例弁72b用)とを有している。
【0114】
電磁比例弁指令電流演算部81は、第2の制御弁メータイン開口面積目標値76と電磁比例弁指令電流値77との関係を予め定めたテーブルに基づいて、電磁比例弁72bの電磁比例弁指令電流値77を演算する。電磁比例弁指令電流演算部81で用いるテーブルでは、第2の制御弁メータイン開口面積目標値76が0(ゼロ)の場合には電磁比例弁指令電流値77は0(ゼロ)であり、第2の制御弁メータイン開口面積目標値76が大きくなるにしたがって電磁比例弁指令電流値77が大きくなるように設定されている。
【0115】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0116】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0117】
また、バイパス流量制御弁32の開口の変化によりアームシリンダ15の圧力が低下した場合のポンプ容積の変動、およびアームシリンダ15と第2の油圧アクチュエータ(シリンダ70)との分流バランスの変化を抑制することができ、アームシリンダ15の流量の変動による操作性の悪化を抑制することができる。
【0118】
なお、本実施の形態においては、操作レバー73をシリンダ70の縮退方向へ操作した場合を例示して説明したが、操作レバー73をシリンダ70の伸長方向に操作した場合においても本発明を適用することが可能である。
【0119】
また、第2の油圧アクチュエータとしてシリンダ70を例示して説明したが、これに限られず、例えば、油圧モータのような他の油圧アクチュエータを第2の油圧アクチュエータとした場合においても本発明を適用することが可能である。
【0120】
また、制御弁71のメータイン開口を補正することで複数の油圧アクチュエータへの圧油の分流バランスを維持する場合を例示して説明したが、制御弁27のメータイン開口を補正して分流バランスを維持するように構成してもよい。
【0121】
次に上記の各実施の形態の特徴について説明する。
【0122】
(1)上記の実施の形態では、原動機(例えば、エンジン17)によって駆動される可変容量型の油圧ポンプ18と、前記油圧ポンプから吐出される圧油によって駆動される油圧アクチュエータ(例えば、アームシリンダ15)と、前記油圧アクチュエータを作動させる操作信号を出力する操作レバー26と、前記油圧アクチュエータに対する圧油の給排を制御する制御弁27と、前記油圧アクチュエータから排出される圧油が流れるメータアウト流路から前記制御弁を介さずに作動油タンクに圧油を排出するバイパス油路33と、前記バイパス油路の圧油の流量を制御するバイパス流量制御弁32と、前記油圧アクチュエータの負荷圧に応じて前記バイパス流量制御弁の開口面積を制御するとともに、前記バイパス流量制御弁の開口面積を変化させた後のポンプ圧力の推定値が低い値になった場合であっても開口面積を変化させる前の傾転角を保持する制御を行う制御装置19とを備えたものとする。
【0123】
これにより、油圧アクチュエータの負荷圧が急激に低下した場合の操作性の悪化を抑制することができる。
【0124】
(2)また、上記の実施の形態では、(1)の作業機械において、前記油圧ポンプ18から吐出される圧油を前記制御弁27に供給する供給油路と作動油タンク30とを接続するセンタバイパス油路60と、前記センタバイパス油路に設けられ、開口面積を変えることによって前記センタバイパス油路の圧油の流量を制御するセンタバイパス流量制御弁61とを備え、前記制御装置19Aは、前記ポンプ圧力の推定値に応じて前記センタバイパス流量制御弁の開口面積を制御するものとする。
【0125】
(3)また、上記の実施の形態では、(1)の作業機械において、前記油圧アクチュエータ(例えば、アームシリンダ15)とは異なる他の油圧アクチュエータであって、前記油圧ポンプ18から吐出される圧油によって駆動される第2の油圧アクチュエータ(例えば、シリンダ70)と、前記第2の油圧アクチュエータを作動させる操作信号を出力する第2の操作レバー73と、前記第2の油圧アクチュエータに対する圧油の給排を制御する第2の制御弁71とを備え、前記制御装置19Bは、前記第2の油圧アクチュエータの負荷圧に応じて、前記油圧アクチュエータ又は前記第2の油圧アクチュエータの制御弁を制御するものとする。
【0126】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。
【0127】
例えば、上記の各実施の形態においては、電気方式の操作レバーを用いた場合を例示して説明したが、これに限られず、例えば、油圧方式の操作レバーおよび操作圧力の検出器を備え、検出器で検出した圧力をコントローラへ送信する構成としてもよい。
【0128】
また、上記の各実施の形態においては、アームシリンダ15を駆動させた場合における操作性の悪化を抑制する場合について説明したが、これに限られず、例えば、負荷が支持対象物の重量や姿勢によって変化する油圧アクチュエータを駆動させる場合にも本願発明を適用することが可能である。
【0129】
また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0130】
1,2…履帯、1A…作業装置、1B…車体、3…走行体、4…旋回体、5…ブーム、6…アーム、7…バケット、8…運転室、9…機械室、10…カウンタウェイト、11,12…走行油圧モータ、13,14…ブームシリンダ、15…アームシリンダ、16…バケットシリンダ、17…エンジン、18…油圧ポンプ、19,19A,19B…制御装置、20…ポンプレギュレータ、21…負荷演算部、22…バイパス流量制御弁開口面積演算部、23…ポンプ圧力推定値演算部、24…ポンプ容積補正演算部、25,25A,25B…駆動制御部、26…操作レバー、26a,26b…操作信号、27,27A…制御弁、28…パイロットポンプ、29…パイロットリリーフ弁、30…作動油タンク、31a,31b,31c…電磁比例弁、32…バイパス流量制御弁、33…バイパス油路、34…圧力センサ、35a,35b…圧力センサ、36…アームシリンダ負荷、37…バイパス流量制御弁開口面積目標値、38…ポンプ圧力推定値、39…ポンプ容積目標値、40…電磁比例弁指令電流値、41…レギュレータ指令電流値、42…流量制御弁開口面積演算部、43…流量制御弁開口面積、44…アームシリンダボトム圧力推定値演算部、45…アームシリンダボトム圧力推定値、46…アームシリンダロッド圧力推定値演算部、47…アームシリンダボトム面積、48…アームシリンダロッド面積、49…アームシリンダロッド圧力推定値、50…ポンプ圧力推定値演算部、51…ポンプ容積演算部、52…ポンプ容積目標値、53…補正演算部、54…ポンプ容積制限値演算部、55…ポンプ容積制限値、56…最小値選択部、58…電磁比例弁指令電流演算部、59…レギュレータ指令電流演算部、60…センタバイパス油路、61…センタバイパス流量制御弁、62…電磁比例弁、63…センタバイパス流量制御弁開口面積補正演算部、64…電磁比例弁指令電流演算部、64…センタバイパス流量制御弁開口面積目標値、65…電磁比例弁指令電流値、66…センタバイパス流量制御弁開口面積演算部、67…センタバイパス流量制御弁開口面積目標値、68…補正演算部、69…電磁比例弁指令電流演算部、70…シリンダ、71…第2の制御弁、72a,72b…電磁比例弁、73…第2の操作レバー、73a,73b…操作信号、74a,74b…圧力センサ、75…第2の制御弁補正演算部、76…第2の制御弁メータイン開口面積目標値、77…電磁比例弁指令電流値、78…第2の制御弁メータイン開口面積演算部、79…第2の制御弁メータイン開口面積目標値、80…補正演算部、81…電磁比例弁指令電流演算部、100…油圧ショベル、200…バイパス流量制御弁指令圧力センサ