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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】ドリル
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/06 20060101AFI20230718BHJP
【FI】
B23B51/06 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022542188
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2021017616
(87)【国際公開番号】W WO2022239046
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000103367
【氏名又は名称】オーエスジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174344
【弁理士】
【氏名又は名称】安井 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛広
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/146839(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/199667(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/038841(WO,A1)
【文献】特表2016-514625(JP,A)
【文献】特開2016-64477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00 - 51/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心を中心に回転される棒状の工具本体と、
前記工具本体の先端部から後端部へ向けて外周面に螺旋状に設けられる排出溝と、
前記工具本体の回転方向前方を向く前記排出溝の内面と、前記先端部における逃げ面との稜線部分に形成される切れ刃と、
前記逃げ面に設けられ、前記切れ刃側へ切削液を供給する油穴と、
前記逃げ面との稜線が前記切れ刃の内端から径方向外側に向かって延びると共に前記回転方向前方に向かって円弧状に湾曲し、前記排出溝と接続するギャッシュ部と
を備え、
前記油穴は、
前記工具本体の前記回転方向前方側に位置する前方側内壁面と、
前記工具本体の前記回転方向後方側に位置して前記前方側内壁面と周方向に対向する後方側内壁面と、
前記工具本体の中心線を中心とする前記油穴の外接円の半径に対応する曲率半径の部分円筒面から成る外周側内壁面と、
前記工具本体の前記中心線を中心とする前記油穴の内接円の半径に対応する曲率半径で且つ前記外周側内壁面よりも小さい曲率半径の部分円筒面から成り、前記外周側内壁面と前記径方向に対向する内周側内壁面と
により囲まれた扇状断面を備え、
前記逃げ面において、前記工具本体の前記軸心から前記径方向外側に延びる基準線を第1基準線、前記第1基準線に対して、前記軸心を中心に前記回転方向前方に第1角度回転した基準線を第2基準線、前記第1基準線に対して、前記軸心を中心に前記回転方向後方に前記第1角度回転した基準線を第3基準線、前記内接円と前記第1基準線との交点を中心に前記第1基準線に対して前記回転方向後方に前記第1角度よりも大きい第2角度回転し、前記ギャッシュ部と対向する基準線を第4基準線とした場合、
前記油穴は前記第2基準線と前記第3基準線の間に設けられ、
前記前方側内壁面は前記第2基準線に沿うように配置され、
前記後方側内壁面は、前記第4基準線上に配置され、前記ギャッシュ部から離れた位置で、前記回転方向前方に向かって前記ギャッシュ部と同一方向側に円弧状に湾曲すること
を特徴とするドリル。
【請求項3】
前記後方側内壁面の前記断面における曲率半径は、0.35D以上0.45D以下であること
を特徴とする請求項1に記載のドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
ドリルに採用される油穴の形状には、丸穴と非円穴がある。丸穴は切削油の吐出量を稼げない加工環境や、より高能率な加工環境においては工具性能を十分に発揮できないことが多い。非円穴は、丸穴よりも流量と吐出量を向上することで、潤滑性と冷却性の向上を図る。
【0003】
特許文献1が開示するドリルの切削油供給穴は、扇状断面を有する。扇状断面は、前方側内壁面、後方側内壁面、外周側内壁面、内周側内壁面に囲まれて形成される。前方側内壁面は、ドリルの回転方向前方側に径方向に沿って位置する。前方側内壁面は、ドリルの回転方向後方側に径方向に沿って位置して前方側内壁面と周方向に対向する。前方側内壁面は、ドリルの中心線を中心とする部分円筒面から成る。内周側内壁面は、ドリルの中心線を中心とし且つ外周側内壁面よりも小さい曲率半径の部分円筒面から成り、外周側内壁面と径方向に対向する。上記ドリルは、SUSやTi合金等の粘い被削材や熱伝導率の低い被削材に対して大幅な性能向上が得られる。
【0004】
特許文献2が開示するドリルは、円弧状に湾曲するR部を有するギャッシュ部を備え、比較的硬い被削材も切削可能である。R部の逃げ面との第一稜線は、シンニング刃の径方向内側の端から径方向外側に向かって、回転方向に向けて湾曲して延びる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5926877号公報
【発明の概要】
【0006】
特許文献2に記載のドリルに、特許文献1に記載の切削油供給穴を適用した場合、R部に切削油供給穴が近接することにより、R部と切削油供給穴との間の距離が短い部分に応力集中が生じる可能性があった。故に切削抵抗が大きくなる比較的太いサイズのドリルや高送り加工においては、工具剛性が不足して工具性能が不安定となる可能性があった。
【0007】
本発明の目的は、切削油の吐出量を増大し、且つ工具剛性を確保できるドリルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のドリルは、軸心を中心に回転される棒状の工具本体と、前記工具本体の先端部から基端部へ向けて外周面に螺旋状に設けられる排出溝と、前記工具本体の回転方向前方を向く前記排出溝の内面と、前記先端部における逃げ面との稜線部分に形成される切れ刃と、前記逃げ面に設けられ、前記切れ刃側へ切削油を供給する油穴とを備え、前記油穴は、前記工具本体の前記回転方向前方側に前記径方向に沿って位置する前方側内壁面と、前記工具本体の前記回転方向後方側に前記径方向に沿って位置して前記前方側内壁面と周方向に対向する後方側内壁面と、前記工具本体の中心線を中心とする部分円筒面から成る外周側内壁面と、前記工具本体の前記中心線を中心とし且つ前記外周側内壁面よりも小さい曲率半径の部分円筒面から成り、前記外周側内壁面と前記径方向に対向する内周側内壁面とにより囲まれた扇状断面を備え、前記後方側内壁面は、前記回転方向前方に向かって円弧状に湾曲することを特徴とする。
【0009】
本態様は扇状断面の油穴を備えるので、丸穴に比べて切削油の吐出量を増大できる。本態様は更に、油穴の後方側内壁面が回転方向前方に向かって円弧状に湾曲するので、逃げ面の稜線部分と後方側内壁面との間の距離を広く確保できる。なお、逃げ面の稜線部分とは、工具本体の回転方向後方を向く排出溝の内面と逃げ面との稜線部分である。これにより、本態様は稜線部分と油穴の間の部分にかかる応力を抑制できるので、工具剛性を確保できる。一般的に油穴の断面積を広げると工具剛性は低下するが、本態様のドリルは工具剛性を確保できるので、本態様は高送り加工にも利用可能である。高送り加工とは、工具を高速で移動する加工である。本態様は切削抵抗が大きくなる比較的太いサイズにも有効である。
【0010】
本態様のドリルは、前記逃げ面との稜線が前記切れ刃の内端から前記径方向外側に向かって円弧状に延び、前記排出溝と接続するギャッシュ部を備え、前記後方側内壁面は、前記ギャッシュ部から離れた位置で、前記ギャッシュ部と同一方向側に円弧状に湾曲してもよい。本態様は円弧状のギャッシュ部を備えるが、油穴の後方側内壁面をギャッシュ部と同一側に円弧状に湾曲させることで、逃げ面の稜線部分との間の距離を均等に広く確保できる。
【0011】
本態様のドリルの前記後方側内壁面の前記断面における曲率半径は、0.35D以上0.45D以下であってもよい。これにより、ドリルは、切削油の吐出量を増大でき且つ切削性能を安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ドリル1の側面図である。
図2】ドリル1の先端部の斜視図である。
図3】ドリル1の正面図である。
図4図1に示すI-I線矢視方向断面図である。
図5】従来品A、従来品B、本発明品の夫々の断面積を比較した表である。
図6】従来品A、従来品B、本発明品のドリル径を変えた場合の夫々の断面積を比較した表である。
図7】評価試験の結果を示す表である。
図8】耐久試験1の結果を示すグラフである。
図9】耐久試験2の結果を示すグラフである。
図10】耐久試験3の結果を示すグラフである。
図11】耐久試験4の結果を示すグラフである。
図12】耐久試験5の結果を示すグラフである。
図13】吐出量試験1の結果を示すグラフである。
図14】吐出量試験2の結果を示すグラフである。
図15】吐出量試験3の結果を示すグラフである。
図16】3枚刃のドリル100(変形例)の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を説明する。本発明は下記の実施形態に限定されず、適宜設計変更が可能である。説明を明瞭とする為、適宜図面において実際の寸法比率とは異なる寸法比率で示す箇所がある。本発明は下記の実施形態の形状に限定して解釈されない。
【0014】
図1図3を参照し、ドリル1の構成を説明する。ドリル1は2枚刃のロングドリルである。ドリル1は、超硬合金、高速度工具鋼(ハイス)等の硬質材料で形成されるとよい。ドリル1は、シャンク2とボディ3とを備える。シャンク2とボディ3は本発明の「工具本体」の一例である。シャンク2は工作機械(図示略)の主軸に装着される。ボディ3は、シャンク2から軸心AXに沿って延びる。ドリル1は、軸心AXを中心に回転することで被削材を切削し、加工穴を形成する。加工時のドリル1の回転方向Tは、ボディ3の先端部側から見て(以下「正面視」という。)反時計回り方向(図3参照)である。
【0015】
ボディ3の外周面31には、2条の排出溝4が設けられる。2条の排出溝4は、ボディ3の先端部において開口する。各排出溝4は、ボディ3の先端部からシャンク2の後端部に向けて正面視時計回り方向に螺旋状に形成される。排出溝4は加工時に切り屑を加工穴から排出する。図2図3に示すように、排出溝4は内面41と内面42を備える。内面41は回転方向T側を向く面である。内面42は回転方向Tとは反対側を向く面である。内面41と外周面31が交差する稜線部分はリーディングエッジ33である。内面42と外周面31が交差する稜線部分はヒール部34である。
【0016】
ボディ3の先端部には、2つの逃げ面6が設けられる。2つの逃げ面6は、軸心AXを中心に互いに対称の位置に設けられる。ボディ3の先端部を正面から見たとき、2つの逃げ面6と2つの排出溝4が周方向に交互に配置される。内面41と逃げ面6が交差する稜線部分には、切れ刃5が設けられる。ボディ3の先端部は、内面41と逃げ面6を2つずつ備えるので、切れ刃5は2枚である。切れ刃5は正面視略S字状に形成され、被削材を切削する。切れ刃5付近の内面41はすくい面であり、切れ刃5によって切削された切り屑をすくい取る。
【0017】
ボディ3の先端部中心には、チゼル9が形成される。チゼル9近傍には、シンニング刃7が設けられる。シンニング刃7は、切れ刃5の内端51からチゼル9側に向けて、回転方向T側に円弧状に湾曲する。シンニング刃7は、シンニング面71と逃げ面6の稜線部分に設けられる。シンニング刃7はシンニング面71を備える。シンニング面71は、シンニング刃7からボディ3の後端部側に延び、回転方向T側を向く。シンニング面71はすくい面である。
【0018】
ボディ3の先端部の内面42には、ギャッシュ部8が設けられる。ギャッシュ部8は、加工時にすくい面によってすくい取られた切り屑をカールさせると共に排出溝4に排出する。ギャッシュ部8は、R部81とストレート部82を備える。R部81と逃げ面6の稜線は、第一稜線811である。ストレート部82と逃げ面6の稜線は、第二稜線821である。
【0019】
第一稜線811は、シンニング刃7の内端72から径方向外側に向かって延び、回転方向T側に円弧状に湾曲する。R部81は、第一稜線811からボディ3の後端部側に延び、且つ回転方向T側に湾曲する曲面状に形成される。R部81は、シンニング刃7によって切削された切り屑のカールを強くする。
【0020】
第二稜線821は、第一稜線811の外端812から径方向外側に向かって直線状に延びる。第二稜線821の外端822は、外周面31よりも径方向内側で排出溝4に接続する。ストレート部82は、第二稜線821からボディ3の後端部側に向かって軸心AXから離れるように延び、内面42に沿って形成される。ストレート部82は、R部81によって巻かれた切り屑を排出溝4に案内する。排出溝4は案内された切り屑をボディ3の後端側に流す。
【0021】
R部81の内端とシンニング面71の内端との接続部分には、円弧溝10が設けられる。円弧溝10はチゼル9から排出溝4へ向けて延び、径方向内側に向けて円弧状に湾曲する。円弧溝10は、シンニング面71によりすくい取られた切り屑をギャッシュ部8へ円滑に流す。
【0022】
ボディ3の先端部において、2つの逃げ面6には、油穴12が夫々設けられる。油穴12は、シャンク2の後端からボディ3の先端部に向けて、排出溝4と略平行に螺旋状に延び、対応する逃げ面6において開口する。油穴12は被削材の加工部位に向けて切削油を供給する。ボディ3の先端部の表面には、DLC(Diamond-Like Carbo)が被覆されている。
【0023】
図4を参照し、油穴12の形状について説明する。図4は、ドリル1の軸心AXに直交する断面図であり、一方の油穴12付近において、ギャッシュ部8の第一稜線811を二点鎖線で仮想的に示す。油穴12は非円穴であり、扇状断面を有する。扇状断面とは、油穴12の軸心AXに直交する断面が略扇状であることを意味する。油穴12の扇状断面は、前方側内壁面121、後方側内壁面122、外周側内壁面123、内周側内壁面124に囲まれて形成され、4つの角部R1~R4を備える。
【0024】
前方側内壁面121は、回転方向Tの前方側に径方向に沿って位置する平面である。後方側内壁面122は、回転方向Tの後方側に径方向に沿って位置し、前方側内壁面121と周方向に対向する。後方側内壁面122は、第一稜線811の湾曲する方向と略同一方向に円弧状に湾曲する。外周側内壁面123は、軸心AXを中心とする曲率半径D1の部分円筒面から成る。半径D1は、油穴12の外接円C1の半径に相当する。内周側内壁面124は、軸心AXを中心とする曲率半径D2の部分円筒面から成り、外周側内壁面123と径方向に対向する。曲率半径D2は曲率半径D1よりも小さい。半径D2は、油穴12の内接円C2の半径に相当する。2つの油穴12は、軸心AXを中心とする半径D3のピッチ円C3上において等間隔で並び、軸心AXを基準に互いに点対称の形状である。
【0025】
角部R1は、前方側内壁面121と内周側内壁面124とが円弧状に互いに接続する部分である。角部R2は、前方側内壁面121と外周側内壁面123とが円弧状に互いに接続する部分である。角部R3は、後方側内壁面122と内周側内壁面124とが円弧状に互いに接続する部分である。角部R4は、後方側内壁面122と外周側内壁面123とが円弧状に互いに接続する部分である。
【0026】
逃げ面6の周方向の中央部において、軸心AXから径方向外側に延びる基準線をB1とする。基準線B1に対して、軸心AXを中心に回転方向T側に角度A1だけ回転した基準線をB2とする。基準線B1に対して、軸心AXを中心に回転方向Tとは反対側に角度A1だけ回転した基準線をB3とする。内接円C2と基準線B1の交点を中心に、基準線B1に対して、回転方向Tとは反対側に角度A2だけ回転した基準線をB4とする。角度A2は角度A1よりも大きい。基準線B4は、第一稜線811に対向するように角度A2を決めるのがよい。角度A1の一例は20°、角度A2の一例は44°である。
【0027】
ドリル1は、油穴12が上記の扇状断面を備えるので、チゼル9付近の心厚を確保できる。故にドリル1は工具剛性を保持できる。油穴12は非円穴なので、従来の丸穴に比べて断面積を大きくできる。故にドリル1は丸穴と比較して切削油の吐出量を増大できる。例えば、同じ断面積の従来の丸穴と比較した場合、油穴12の外周側ほど周方向の長さが大きくなり且つ遠心力に基づく圧力が高くなる。故にドリル1は切削油の供給圧を高くしなくても油穴12内の切削油の速度を高速化でき、ドリル1の回転に伴う遠心力を利用して切削油の供給量を増大できる。
【0028】
前方側内壁面121は、基準線B2に沿うように配置される。後方側内壁面122は、基準線B4上に配置され、且つ第一稜線811の湾曲する方向と略同一側に円弧状に湾曲する。図3に示すように、ボディ3の先端部において、後方側内壁面122は、介在壁部16を介して第一稜線811と対向する。介在壁部16は、油穴12と第一稜線811の間の壁部である。
【0029】
例えば、後方側内壁面が直線状である従来の扇状断面を有する油穴においては、第一稜線811の頂点が後方側壁面に近接することで、加工時に応力が集中する。これに対し、本実施形態の油穴12は、後方側内壁面122と第一稜線811は介在壁部16を間に挟む略平行な曲線である。故にドリル1は加工時において介在壁部16に応力が集中するのを効果的に抑制できる。また、後述のように、φ6以上の比較的太い径のドリル1は、従来の扇状断面を有する油穴と比較した場合、油穴12の断面積を小さくできる。故にドリル1は、従来の扇状断面を有する油穴と比較して工具剛性を向上できるので、剛性不足による突発折損を防止できる。なお、後方側内壁面122の曲率半径は、0.35D以上0.45D以下であるのが好ましい。
【0030】
次に、本発明品と従来品の油穴の形状と断面積について比較を行った。図5に示すように、従来品Aは、円形状の丸穴を備えた従来のドリルである。従来品Bは、後方側内壁面が直線状の扇状断面を有する油穴を備えた従来のドリルである。本発明品は、本実施形態の油穴12を備えたドリル1である。ドリル径Dは何れもφ3.2である。従来品Aの油穴の断面積は0.126mm、従来品Bの油穴の断面積は0.297mm、本発明品の油穴12の断面積は0.321mmであった。従来品Aの油穴の断面積を100%とした場合、従来品Bの油穴の断面積は236%、本発明品の油穴の断面積は255%であった。これにより、φ3.2において、本発明品は、従来品Aと2に比べて油穴の断面積を増大できることが分かった。
【0031】
次に、本発明品と従来品とでドリル径に応じて変化する油穴の断面積について比較を行った。図6に示すように、従来品A、従来品B、本発明品の夫々のドリル径を変えて、油穴の断面積を測定した。従来品A、従来品B、本発明品の基本的形状は、上記と同じである。比較したドリル径は、φ3、φ4、φ5、φ6、φ8、φ10、φ12、φ16、φ20の9種類である。
【0032】
従来品Aにおいて、φ3の油穴の断面積は0.126mm、φ4の油穴の断面積は0.126mm、φ5の油穴の断面積は0.385mm、φ6の油穴の断面積は0.385mm、φ8の油穴の断面積は0.785mm、φ10の油穴の断面積は1.539mm、φ12の油穴の断面積は1.539mm、φ16の油穴の断面積は2.405mm、φ20の油穴の断面積は3.142mmであった。
【0033】
従来品Bにおいて、φ3の油穴の断面積は0.15mm、φ4の油穴の断面積は0.297mm、φ5の油穴の断面積は0.489mm、φ6の油穴の断面積は0.89mm、φ8の油穴の断面積は1.575mm、φ10の油穴の断面積は2.462mm、φ12の油穴の断面積は3.546mm、φ16の油穴の断面積は6.313mm、φ20の油穴の断面積は9.079mmであった。
【0034】
従来品Aの断面積を100%とした場合、従来品Bのφ3の油穴の断面積は119%、φ4の油穴の断面積は236%、φ5の油穴の断面積は127%、φ6の油穴の断面積は231%、φ8の油穴の断面積は201%、φ10の油穴の断面積は160%、φ12の油穴の断面積は230%、φ16の油穴の断面積は262%、φ20の油穴の断面積は289%であった。以上のことから、従来品Bの油穴は、従来品Aの油穴に比べてドリルの直径φに関わらず、断面積を増大できることが分かった。
【0035】
本発明品において、φ3の油穴12の断面積は0.183mm、φ4の油穴12の断面積は0.32mm、φ5の油穴12の断面積は0.504mm、φ6の油穴12の断面積は0.731mm、φ8の油穴12の断面積は1.293mm、φ10の油穴12の断面積は2.021mm、φ12の油穴12の断面積は2.912mm、φ16の油穴12の断面積は5.184mm、φ20の油穴12の断面積は7.316mmであった。
【0036】
従来品Aの断面積を100%とした場合、本発明品のφ3の油穴12の断面積は145%、φ4の油穴12の断面積は254%、φ5の油穴12の断面積は131%、φ6の油穴12の断面積は190%、φ8の油穴12の断面積は165%、φ10の油穴12の断面積は131%、φ12の油穴12の断面積は189%、φ16の油穴12の断面積は216%、φ20の油穴12の断面積は233%であった。
【0037】
以上のことから、本発明品は、従来品Aの油穴に比べてドリル径に関わらず、油穴12の断面積を増大できることが分かった。また、従来品Bとの関係で、φ3~5の比較的小径のドリルにおいては、従来品Bよりも断面積を増大できることが分かった。よって、φ3~5の比較的小径の本発明品では、従来品Bよりも切削油の吐出量を増大できることが分かった。
【0038】
一方、φ6~20の比較的太い径のドリルは、小径のドリルに比べて回転時の慣性力が大きいことから工具剛性が必要である。本発明品の油穴の断面積は、φ6~20のドリルにおいては、従来品Aの油穴の断面積よりは大きいが、従来品Bの油穴の断面積よりも小さい。よって、φ6~20の比較的太い径の本発明品では、従来品Aよりも切削油の吐出量を増大でき、且つ従来品Bよりも工具剛性を向上できることが分かった。
【0039】
図7を参照し、後方側内壁面122の曲率半径の評価試験について説明する。本試験では、油穴12の後方側内壁面122の曲率半径を変えた8種類のドリル1を作製し、切削油吐出量、ギャッシュ部8との距離、切削性能安定性の3項目について評価した。ギャッシュ部8との距離は、介在壁部16の幅(長さ方向に直交する方向の長さ)である。
【0040】
加工条件について説明する。ドリル径はφ3とした。被削材は炭素鋼鋼材のS50Cを使用した。切削速度は100m/minとした。送り量は0.18mm/revとした。被削材の加工深さは15mmに設定した。切削油は水溶性を使用した。クーラント圧は1MPaとした。
【0041】
評価方法について説明する。切削油吐出量は、従来品Bの油穴における切削油吐出量と比較して、少ない場合は×、同程度であれば△、多い場合は〇と判定した。ギャッシュ部8との距離については、排出溝4を加工する際の油穴12の位置合わせの精度や、ドリル1製造時の2つの油穴12の対称度のばらつき等も含めて総合的に評価して、〇、△、×の3段階で判定した。切削性能安定性は、上記の加工条件で被削材に穴を繰り返し切削したときのドリルの耐久性、安定性を総合的に評価し、〇、△、×の3段階で判定した。
【0042】
図7を参照して、結果について説明する。曲率半径=0.20Dのドリルについて、切削液吐出量は×、ギャッシュ部との距離は〇、切削性能安定性は×であった。曲率半径=0.25Dのドリルについて、切削液吐出量は×、ギャッシュ部との距離は〇、切削性能安定性は△であった。曲率半径=0.30Dのドリルについて、切削液吐出量は△、ギャッシュ部との距離は〇、切削性能安定性は〇であった。曲率半径=0.35Dのドリルについて、切削液吐出量は〇、ギャッシュ部との距離は〇、切削性能安定性は〇であった。曲率半径=0.40Dのドリルについて、切削液吐出量は〇、ギャッシュ部との距離は〇、切削性能安定性は〇であった。曲率半径=0.45Dのドリルについて、切削液吐出量は〇、ギャッシュ部との距離は〇、切削性能安定性は〇であった。曲率半径=0.50Dのドリルについて、切削液吐出量は〇、ギャッシュ部との距離は△、切削性能安定性は△であった。曲率半径=0.55Dのドリルについて、切削液吐出量は〇、ギャッシュ部との距離は×、切削性能安定性は×であった。
【0043】
以上の結果より、切削液吐出量、ギャッシュ部との距離、切削性能安定性が全て〇であった曲率半径は、0.35D、0.40D、0.45Dであった。従って、後方側内壁面122の曲率半径の最適範囲は、0.35D~0.45Dであることが実証された。
【0044】
図8図12を参照し、ドリル1の耐久性比較試験について説明する。耐久性比較試験は、耐久試験1~5で構成される。耐久試験1~5では、本発明品、従来品A、従来品Bの3種類で、加工条件を変えて被削材に穴空け加工を繰り返し行ったときの加工穴数と工具の状態を調べた。従来品A、従来品B、本発明品の基本的形状は、上記と同じである。耐久試験1~5の加工条件は、以下の通りである。
【0045】
(耐久試験1)
・ドリル径D=φ8.5
・被削材=S50C
・切削速度=100m/min
・送り量=0.255mm/rev
・穴深さ=42.5mm
(耐久試験2)
・ドリル径D=φ6.8
・被削材=S50C
・切削速度=120m/min
・送り量=0.27mm/rev
・穴深さ=25mm(被削材を貫通)
(耐久試験3)
・ドリル径D=φ6.8
・被削材=SCM440(30HRC)
・切削速度=70m/min
・送り量=0.27mm/rev
・穴深さ=25mm(被削材を貫通)
(耐久試験4)
・ドリル径D=φ6.8
・被削材=SUS304
・切削速度=80m/min
・送り量=0.27mm/rev
・穴深さ=25mm(被削材を貫通)
(耐久試験5)
・ドリル径D=φ3.4
・被削材=51CrV4
・切削速度=64m/min
・送り量=0.09mm/rev
・穴深さ=17mm
【0046】
図8を参照し、耐久試験1の結果について説明する。従来品Aの加工穴数は1,122穴でドリルは折損した。従来品Bの加工穴数は818穴でドリルは折損した。本発明品の加工穴数は1,685穴でドリルは一部欠損したが、折損はしなかった。従来品Bの加工穴数が従来品Aの加工穴数よりも少なかった理由は、油穴の断面積が大きくなり、工具剛性が低下したことが原因と推測される。本発明品は、従来品A,Bよりも加工穴数が増加した。以上の結果より、耐久試験1の加工条件において、本発明品の耐久性能は、従来品A,Bに比較して向上することが分かった。
【0047】
図9を参照し、耐久試験2の結果について説明する。従来品Aの加工穴数は6,000穴でドリルは一部欠損した。従来品Bの加工穴数は1,578穴でドリルは折損した。本発明品の加工穴数は6,000穴でドリルは一部欠損したが、以後も穴加工の継続は可能であった。耐久試験1と比べて、従来品Bの加工穴数が従来品Aの加工穴数よりもさらに少なかった理由は、耐久試験1よりも切削速度と送り量が速くなったことで、従来品Bのドリルが切削時の応力に耐え切れなかったからと推測される。以上の結果より、耐久試験2の加工条件においても、本発明品の耐久性能は、従来品A,Bに比較して向上することが分かった。
【0048】
図10を参照し、耐久試験3の結果について説明する。従来品Aの加工穴数は1,500穴でドリルは一部欠損した。従来品Bの加工穴数は447穴でドリルは折損した。本発明品の加工穴数は1,800穴でドリルは一部欠損した。耐久試験3では、被削材をSCM440に代えて加工を行ったが、比較試験1,2と同様に、本発明品の加工穴数は、従来品A,Bの加工穴数よりも増加した。以上の結果より、耐久試験3の加工条件においても、本発明品の耐久性能は、従来品A,Bに比較して向上することが分かった。
【0049】
図11を参照し、耐久試験4の結果について説明する。従来品Aの加工穴数は4,000穴でドリルの摩耗が大きかった。従来品Bの加工穴数は658穴でドリルは折損した。本発明品の加工穴数は5,000穴でドリルの摩耗が大きかった。耐久試験4では、被削材をSUS304に代えて加工を行ったが、比較試験1~3と同様に、本発明品の加工穴数は、従来品A,Bの加工穴数よりも増加した。以上の結果より、耐久試験4の加工条件においても、本発明品の耐久性能は、従来品A,Bに比較して向上することが分かった。
【0050】
図12を参照し、耐久試験5の結果について説明する。従来品Aの加工穴数は5,000穴でドリルの摩耗が大きかった。従来品Bの加工穴数は3,500穴でドリルは一部欠損した。本発明品の加工穴数は6,000穴で、以後も穴加工の継続は可能であった。耐久試験5では、被削材を51CrV4に代えて加工を行ったが、比較試験1~3と同様に、本発明品の加工穴数は、従来品A,Bの加工穴数よりも増加した。以上の結果より、耐久試験5の加工条件においても、本発明品の耐久性能は、従来品A,Bに比較して向上することが分かった。
【0051】
図13図15を参照し、ドリル1の吐出量比較試験について説明する。耐久性比較試験は、吐出量試験1~3で構成される。吐出量試験1~3では、本発明品、従来品A、従来品Bの3種類で、切削油の種類、ドリル径、クーラント圧を変えて、単位時間あたりの切削油の吐出量を調べた。従来品A、従来品B、本発明品の基本的形状は、上記と同じである。吐出量試験1は、不水溶性の切削油を使用し、ドリル径はφ3.4、クーラント圧は1.5MPa、測定時間は1分とした。吐出量試験2は、水溶性の切削油を使用し、ドリル径はφ3.4、クーラント圧は1MPaと3MPaの2パターン、測定時間は1分とした。吐出量試験3は、水溶性の切削油を使用し、ドリル径はφ6.8、クーラント圧は1.5MPa、測定時間は30秒とした。なお、吐出量試験1と2において、従来品Aの油穴はφ0.4とした。吐出量試験3において、従来品Aの油穴はφ1とした。
【0052】
図13を参照し、吐出量試験1の結果について説明する。従来品Aの吐出量は110ml/min、従来品Bの吐出量は220ml/min、本発明品の吐出量は220ml/minであった。以上の結果より、本発明品はφ3.4の細径で不水溶性の切削油を使用した場合、従来品Aよりも多く且つ従来品Bと同等の吐出量を確保できることが分かった。
【0053】
図14を参照し、吐出量試験2の結果について説明する。クーラント圧=1Paの場合、従来品Aの吐出量は295ml/min、従来品Bの吐出量は540ml/min、本発明品の吐出量は562ml/minであった。クーラント圧=3Paの場合、従来品Aの吐出量は547ml/min、従来品Bの吐出量は930ml/min、本発明品の吐出量は972ml/minであった。以上の結果より、本発明品はφ3.4の細径で水溶性の切削油を使用した場合、従来品A,Bよりも吐出量を増大できることが分かった。
【0054】
図15を参照し、吐出量試験3の結果について説明する。従来品Aの吐出量は1,600ml/30s、従来品Bの吐出量は2,800ml/30s、本発明品の吐出量は2,200ml/30sであった。以上の結果より、本発明品はφ6.8の太い径で水溶性の切削油を使用した場合、従来品Bよりも吐出量は少ないが、従来品Aよりも吐出量を増大できることが分かった。
【0055】
以上の吐出量試験1~3の結果より、本発明品は、水溶性と不水溶性の切削油、並びにドリル径に関わらず、切削油の吐出量を少なくとも従来品Aより増大できることが分かった。また、比較的細い径においては、従来品Bよりも吐出量を増大できることが分かった。
【0056】
以上説明したように、本実施形態のドリル1は、ボディ3、シャンク2、排出溝4、切れ刃5,油穴12を備える。ボディ3とシャンク2は、軸心AXを中心に回転される棒状である。排出溝4は、ボディ3の先端部からシャンク2の後端部へ向けて外周面31に螺旋状に設けられる。切れ刃5は、ボディ3の回転方向Tの前方を向く排出溝4の内面41と、先端部における逃げ面6との稜線部分に形成される。油穴12は、逃げ面6に設けられ、切れ刃5側へ切削液を供給する。油穴12は扇状断面を備える。扇状断面は、前方側内壁面121、後方側内壁面122、外周側内壁面123、内周側内壁面124により囲まれて形成される。前方側内壁面121は、回転方向Tの前方側に径方向に沿って位置する。後方側内壁面122は、回転方向Tの後方側に径方向に沿って位置して前方側内壁面121と周方向に対向する。外周側内壁面123は、軸心AXを中心とする部分円筒面から成る。内周側内壁面124は、軸心AXを中心とし且つ外周側内壁面123よりも小さい曲率半径の部分円筒面から成り、外周側内壁面123と径方向に対向する。油穴12の後方側内壁面122は、回転方向Tの前方に向かって円弧状に湾曲する。
【0057】
ドリル1は扇状断面の油穴12を備えるので、丸穴に比べて切削液の吐出性能が高い。ドリル1は更に、油穴12の後方側内壁面122が回転方向Tの前方に向かって円弧状に湾曲するので、逃げ面6の稜線部分と後方側内壁面122との間の距離を広く確保できる。なお、逃げ面6の稜線部分とは、ボディ3の回転方向Tの後方を向く排出溝4の内面41と逃げ面6との稜線部分である。これにより、ドリル1は稜線部分と油穴12との間の部分にかかる応力を抑制できるので、切削液の吐出性能を向上でき、且つ工具剛性を確保できる。工具剛性が向上するので、ドリル1は高送り加工にも利用可能である。高送り加工とは、工具を高速で移動する加工である。ドリル1は切削抵抗が大きくなる比較的太いサイズにも有効である。
【0058】
ドリル1は、ギャッシュ部8を更に備える。ギャッシュ部8は、逃げ面6との稜線が切れ刃5の内端から径方向外側に向かって円弧状に延び、排出溝4と接続する。後方側内壁面122は、ギャッシュ部8から離れた位置で、ギャッシュ部8と同一方向側に円弧状に湾曲する。ドリル1は円弧状のギャッシュ部8を備えるが、油穴12の後方側内壁面122をギャッシュ部8と同一方向側に円弧状に湾曲させることで、逃げ面6の稜線部分との間の距離を均等に広く確保できる。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。ドリル1は2枚刃であるが、3枚刃でもよく、それ以上であってもよい。例えば図16に示すドリル100は3枚刃である。詳述しないが、ドリル100は、上記実施形態のドリル1の形状を基本的に備え、3条の排出溝40、3枚の切れ刃50、3つのシンニング刃70、3つのギャッシュ部80,3つの逃げ面60、3つの油穴120等を備える。油穴120は、上記実施形態と同一の扇状断面を有し、後方側内壁面はギャッシュ部8の第一稜線811と同一の回転方向T側に円弧状に湾曲する。故にドリル100も2枚刃のドリル1と同様の効果を得ることができる。
【0060】
油穴12はシャンク2の後端部からボディ3の先端部に向けて螺旋状に延びる、螺旋状でなくてもよく、例えば直線状でもよい。ボディ3の先端部には3つの円弧溝10が設けられるが、円弧溝10は省略してもよい。ドリル1はロングドリルであるが、一般的なドリルでもよい。ドリル1の材質は限定しない。ボディ3の少なくとも先端部の表面には、DLCが被覆されているが、外周面31にも被覆されてもよい。ボディ3にDLCが被覆されていなくてもよい。シンニング刃7が形成されていなくてもよい。ギャッシュ部8は円弧状であるが、直線状であってもよい。シンニング刃7、ギャッシュ部8は省略してもよい。油穴12の扇状断面において、前方側内壁面121は直線状であるが、直線でなくてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16