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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20230718BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20230718BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
E02F3/43 C
E02F9/22 E
E02F9/20 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022578121
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2021045582
(87)【国際公開番号】W WO2022163168
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2021013157
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】金成 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】坂本 博史
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 輝樹
(72)【発明者】
【氏名】楢▲崎▼ 昭広
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-002751(JP,A)
【文献】特開2020-033781(JP,A)
【文献】特開2019-112901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/43
E02F 9/22
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械本体と、
前記機械本体に上下方向に揺動自在に取り付けられた、作業具を有する作業フロントと、
前記作業フロントを駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータを駆動する駆動装置と、
前記アクチュエータの動作を指示する操作入力装置と、
前記機械本体および前記作業フロントの姿勢を検出する姿勢検出装置と、
前記作業具の掘削対象となる目標面を設定する目標面情報設定装置と、
前記作業具が前記目標面に沿って移動するように前記操作入力装置、前記姿勢検出装置、および前記目標面情報設定装置から入力される情報に基づいて、前記アクチュエータの動作指令値を演算し、前記駆動装置に出力するコントローラとを備えた作業機械において、
前記コントローラは、
前記操作入力装置から入力された操作入力量と前記目標面に対する前記作業具の姿勢とに基づいて前記作業具の作業状態を判定すると共に、判定された前記作業状態が維持される前記アクチュエータの動作指令値の範囲を演算し、前記範囲の中で前記アクチュエータの動作指令値を、前記作業具と前記目標面との距離が小さくなるように補正する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、前記作業具と前記目標面との距離が所定値以下となり、かつ、前記操作入力量に基づいて演算した前記作業具の目標速度のうち前記目標面に平行な速度成分が前記目標面に垂直な速度成分よりも大きくなったタイミングで前記作業具の作業状態を判定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、前記目標面に対する前記作業具の姿勢および進行方向に基づいて前記作業具の作業状態を判定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械において、
前記コントローラは、前記作業具上に予め設定された2点と前記目標面との距離に基づいて、前記目標面に対する前記作業具の姿勢を検出する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機械において、
前記作業具はバケットであり、
前記コントローラは、
前記目標面を基準として前記バケットの爪先が前記バケットの後端側よりも下方に位置し、かつ前記バケットの動作速度のうち前記目標面に平行でかつ前記爪先側に向かう速度成分が前記目標面に垂直な速度成分よりも大きい場合は、前記バケットの作業状態を掘削状態と判定し、
前記目標面を基準として前記爪先が前記後端側よりも下方に位置し、かつ前記バケットの動作速度のうち前記目標面に平行でかつ前記後端側に向かう速度成分が前記目標面に垂直な速度成分よりも大きい場合、または、前記目標面を基準として前記後端側が前記爪先よりも下方に位置し、かつ前記バケットの動作速度のうち前記目標面に平行な速度成分が前記目標面に垂直な速度成分よりも大きい場合は、前記バケットの作業状態を擦り付け状態と判定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機械において、
前記コントローラは、
前記バケットの作業状態を掘削状態と判定した場合は、前記目標面を基準として前記爪先が前記後端側よりも下方に位置する状態が維持される動作指令値の範囲内で、前記爪先から前記目標面までの距離が小さくなるように前記アクチュエータの動作指令値を補正し、
前記バケットの作業状態を擦り付け状態と判定した場合は、前記目標面を基準として前記後端側が前記爪先よりも下方に位置する状態が維持される動作指令値の範囲内で、前記爪先から前記目標面までの距離が小さくなるように前記アクチュエータの動作指令値を補正する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項7】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、前記作業具の角度変化量が予め設定された角度補正制限値を超えないように、または、前記作業具の角速度変化量が予め設定された角速度補正制限値を超えないように、前記アクチュエータの動作指令値を補正する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項8】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、
前記作業フロントの動作速度に基づいて前記作業具の角度補正制限値または角速度補正制限値を演算し、
前記作業具の角度変化量が前記角度補正制限値を超えないように、または、前記作業具の角速度変化量が前記角速度補正制限値を超えないように、前記アクチュエータの動作指令値を補正する
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路工事、建設工事、土木工事、浚渫工事、解体工事等に使用される作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
道路工事、建設工事、土木工事、浚渫工事等に使用される作業機械として、動力系により走行する走行体の上部に旋回体を旋回自在に取り付けた作業機械本体に多関節型の作業フロントを上下方向に揺動自在に取り付け、作業フロントを構成する各フロント部材をシリンダにて駆動するものが知られている。その一例にブーム、アーム、バケット等から構成される作業フロントを有する、いわゆる油圧ショベルがある。
【0003】
この種の油圧ショベルには、掘削する施工目標面を予め設定し、バケットが施工目標面に沿って掘削できるように、オペレータのアーム動作の操作に応じてブーム動作を自動で制御する、いわゆるマシンコントロールを行うものがある。
【0004】
ところで、この種の油圧ショベルでは、バケットの動作を自動的に制御するショベルが広く知られている。ところが、オペレータの作業意図に反したバケット角度の自動制御が行われると、オペレータは意図したバケット作業ができないため油圧ショベルの作業性が低下してしまうことがある。
【0005】
例えば特許文献1には、オペレータによるバケットの操作状態とバケットと施工目標面との距離に応じてバケットの角度を一定に維持するバケット制御を行うことで、オペレータの意図に即したバケット制御を行う建設機械の制御装置及び建設機械の制御方法に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/086488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いわゆるマシンコントロールを行うショベルでは、施工目標面にバケットを正確に追従させることが重要である。ところで、アームとブームの動作に加えてバケットと施工目標面の距離が小さくなるようにバケットの動作を制御すれば、より正確にバケットを施工目標面に追従させることができる。
【0008】
ところが、バケットの爪先が施工目標面に常に近づくようにバケット動作を制御すると、オペレータが意図するバケット作業状態から逸脱するおそれがある。例えば、バケットの爪先側で掘削中に、施工目標面に対してバケットの爪先と反対のバケット底面の後端側がバケットの爪先側より下方に位置してしまうと、バケットの底面が地面に接してしまってバケットの爪先側で掘削作業を継続することができない。また反対に、バケット底面の後端側で地面への擦り付け作業を行っているときに、施工目標面に対してバケットの爪先側がバケットの後端側より下方に位置してしまうと、バケットの爪先側で地面を掘削してしまうためバケットでの擦り付け作業ができない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、作業具を施工目標面に追従させるマシンコントロールにおいて、オペレータの意図に即した作業具の作業状態を維持することにより、作業性を向上させることが可能な作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、機械本体と、前記機械本体に上下方向に揺動自在に取り付けられた、作業具を有する作業フロントと、前記作業フロントを駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータを駆動する駆動装置と、前記アクチュエータの動作を指示する操作入力装置と、前記機械本体および前記作業フロントの姿勢を検出する姿勢検出装置と、前記作業具の掘削対象となる目標面を設定する目標面情報設定装置と、前記作業具が前記目標面に沿って移動するように前記操作入力装置、前記姿勢検出装置、および前記目標面情報設定装置から入力される情報に基づいて、前記アクチュエータの動作指令値を演算し、前記駆動装置に出力するコントローラとを備えた作業機械において、前記コントローラは、前記操作入力装置から入力された操作入力量と前記目標面に対する前記作業具の姿勢とに基づいて前記作業具の作業状態を判定すると共に、判定された前記作業状態が維持される前記アクチュエータの動作指令値の範囲を演算し、前記範囲の中で前記アクチュエータの動作指令値を、前記作業具と前記目標面との距離が小さくなるように補正するものとする。
【0011】
以上のように構成した本発明によれば、作業具を施工目標面に追従させるマシンコントロールにおいて、オペレータの意図に即した作業具の作業状態を維持することにより、作業機械の作業性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、作業具を施工目標面に追従させるマシンコントロールにおいて、オペレータの意図に即した作業具の作業状態を維持することにより、作業機械の作業性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態における油圧ショベルの側面図である。
図2図1に示す油圧ショベルの制御システムの構成を示す図である。
図3図2に示す情報処理装置の機能ブロック図である。
図4】マシンコントールによる作業フロントの動作を示す図である。
図5】マシンコントロールで達成しようとするバケットの動作軌跡を示す図である。
図6】マシンコントロールによる実際のバケットの動作軌跡を示す図である。
図7】掘削作業中のバケットの目標動作軌跡を示す図である。
図8】擦り付け作業中のバケットの目標動作軌跡を示す図である。
図9】法面バケットの側面図である。
図10A】従来技術におけるマシンコントロールによるバケットの動作軌跡を示す図である。
図10B】本発明の実施形態におけるマシンコントロールによるバケットの動作軌跡を示す図である。
図11】本発明の実施形態における情報処理装置の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態における作業機械として油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【0015】
<油圧ショベル>
図1は、本実施形態における油圧ショベルの側面図である。図1に示すように、油圧ショベル1は、作業フロント2と、機械本体を構成する旋回体3と、走行体4とを備えている。
【0016】
作業フロント2は旋回体3に対して、旋回体3は走行体4に対して、それぞれ連結部分を中心に回動する構成となっている。作業フロント2は、一端が旋回体3に連結されたブーム20と、一端がブーム20に連結されたアーム21と、一端がアーム21に連結されたバケット22と、両端がブーム20と旋回体3にそれぞれ連結されたブームシリンダ20Aと、両端がアーム21とブーム20にそれぞれ連結されたアームシリンダ21Aと、一端がアーム21に連結された第1リンク22Bと、一端がバケット22に連結された第2リンク22Cと、一端が第1リンク22Bおよび第2リンク22Cの他端に連結され、他端がアーム21に連結されたバケットシリンダ22Aとを備えている。これらの部材はそれぞれ連結部分を中心に、上下方向に回動するように構成されている。走行体4は、走行用モータ41と、履帯45とを備えている。
【0017】
ブームシリンダ20A、アームシリンダ21A、およびバケットシリンダ22Aは、油圧によりそれぞれ伸縮する構造となっており、伸縮によりそれぞれブーム20、アーム21、およびバケット22を回動させることができる。バケット22は、グラップル、ブレーカ、リッパ、マグネット等の図示しないアタッチメントに任意に交換可能である。
【0018】
ブーム20には、ブーム20の姿勢を検出するためのブームIMU(Inertial Measurement Unit)20Sが取り付けられている。アーム21には、アーム21の姿勢を検出するためのアームIMU21Sが取り付けられている。第1リンク22Bには、バケット22の姿勢を検出するためのバケットIMUが取り付けられている。ブームIMU20S、アームIMU21S、およびバケットIMU22Sは、それぞれ角速度センサと加速度センサで構成される。
【0019】
旋回体3は、旋回体IMU30S、メインフレーム31、運転室32、情報処理装置34、駆動装置35、原動装置36、カウンタウェイト37、および旋回用モータ38を備えている。旋回体IMU30S、運転室32、情報処理装置34、駆動装置35、原動装置36、カウンタウェイト37、および旋回用モータ38は、メインフレーム31上に配置されている。旋回体IMU30Sは、加速度センサと角速度センサとを備えており、旋回体3の傾斜角度を検出することができる。
【0020】
運転室32には、操作入力装置33、目標面情報設定装置100、および表示設定装置110が配置されている。操作入力装置33は、操作レバー33aとオペレータによる操作レバー33aの操作量を検出する操作入力量センサ33b(いずれも図2に示す)により構成されている。操作入力量センサ33bは、操作レバー33aの操作量を検出することで、オペレータが要求する各可動部の目標動作をそれぞれ電気信号に変換することができる。なお、操作入力装置33は、油圧パイロット方式や遠隔地から操作できる方式のものでもよい。目標面情報設定装置100は、作業フロント2が掘削する目標となる施工目標面を設定することができる。
【0021】
表示設定装置110は、表示モニタとタッチパネルで構成され、油圧ショベル1の姿勢、施工目標面の情報、施工目標面と作業フロント2の位置関係や距離などを表示したり、作業フロント2の各種寸法や質量を設定できる。また、バケット22の角度保持に関する作動モードを設定することができる。
【0022】
情報処理装置34については、後に図3を参照して説明する。
【0023】
駆動装置35は、油圧ポンプ35a、方向切替弁35b、および電磁制御弁35cで構成される。油圧ポンプ35aは、油圧ショベル1の運転に必要な油圧を発生させる。電磁制御弁35cは、情報処理装置34から入力された動作指令値に従って方向切替弁35bを駆動する。方向切替弁35bは、油圧ポンプ35aからアクチュエータであるブームシリンダ20A、アームシリンダ21A、バケットシリンダ22A、旋回用モータ38、および走行用モータ41に供給される圧油の流量と方向を制御する。
【0024】
原動装置36は、油圧ポンプ35aの動力源であり、エンジン36aで構成される。
【0025】
走行体4は、トラックフレーム40と、走行用モータ41と、履帯45とを備えている。履帯45は、走行用モータ41によりトラックフレーム40を周回できるように設置されている。オペレータは、操作入力装置33を操作して走行用モータ41の回転速度を変化させることにより、油圧ショベル1の走行速度を調整することができる。走行体4は、履帯45を備えたものに限定されることなく、走行輪や脚を備えたものであってもよい。
【0026】
<制御システムの構成>
図2に油圧ショベル1の制御システムの構成を示す。図2において、制御システム10は、操作入力装置33、姿勢検出装置30、目標面情報設定装置100、表示設定装置110、情報処理装置34、駆動装置35、および原動装置36により構成される。
【0027】
操作入力装置33は、操作レバー33aと操作入力量センサ33bとで構成される。操作レバー33aの操作量は、操作入力量センサ33bにより電気信号に変換され、情報処理装置34に入力される。
【0028】
姿勢検出装置30は、角速度センタ30aと加速度センサ30bとを備えており、作業フロント2の各部材と旋回体3の角度を計測できる。
【0029】
目標面情報設定装置100は、目標面情報設定用コントローラ100aを備えており、施工目標面を設定し管理することができる。
【0030】
表示設定装置110は、表示モニタ110aとタッチパネル110bとを備えており、油圧ショベル1の姿勢、目標面情報設定装置100で設定した施工目標面の領域情報、作業フロント2と施工目標面までの距離などをオペレータに向けて表示できる。表示設定装置110は、また、正確なマシンコントロールを実施するために、ブーム20、アーム21、およびバケット22の各寸法を設定することができる。表示設定装置110は、さらに、バケット22の角度制御に関して、施工目標面に対するバケット22の角度を自動的に維持するモード、アーム21とブーム20の動作に合わせて旋回体3の旋回平面に対するバケット22の角度を自動的に維持するモード、アーム21に対するバケット22の角度を維持するモードなどを選択することができる。
【0031】
情報処理装置34は、情報処理用コントローラ34aを備えており、各装置からの制御信号や検出信号を処理する。操作入力装置33、姿勢検出装置30、目標面情報設定装置100、および表示設定装置110は、情報処理装置34に接続されている。また、情報処理装置34は、駆動装置35に油圧ショベル1を駆動させるための指令を出力する。
【0032】
駆動装置35は、油圧ポンプ35a、方向切替弁35b、および電磁制御弁35cにより構成される。油圧ポンプ35aは、油圧シリンダ20A,21A,22Aおよび油圧モータ38,41を駆動するために必要な圧油を生成する。方向切替弁35bは、油圧ポンプ35aから供給される圧油の流量と方向を調整することにより、油圧シリンダ20A,21A,22Aおよび油圧モータ38,41を駆動する。駆動装置35は、また、上記に含まれないアタッチメントや機器を駆動することができる。
【0033】
原動装置36は、エンジン36aにより構成されている。エンジン36aは、油圧ポンプ35aを駆動する。原動装置36はこの構成に限らず、電動モータなどの他の動力源を用いてもよい。
【0034】
<操作入力装置>
油圧ショベル1は一般に、操作レバー33aの操作量が大きくなると、アクチュエータの動作速度が速くなるように構成されている。オペレータは、操作レバー33aの操作量を調節することにより、各アクチュエータ20A,21A,22A,38,41の動作速度を変化させることができる。
【0035】
操作入力装置33は、操作レバー33aの操作量(操作入力量)を電気的に検出する操作入力量センサ33bを備えており、オペレータが要求するアクチュエータの目標動作を情報処理装置34に送信することができる。操作入力量センサ33bは、操作レバー33aの操作量を直接検出するものに限らず、操作パイロット圧を検出する方式であってもよい。
【0036】
<姿勢検出装置>
姿勢検出装置30は、旋回体IMU30S、ブームIMU20S、アームIMU21S、およびバケットIMU22Sにそれぞれ角速度センサと加速度センサとを備える。これらのIMUによりそれぞれの位置における角速度と加速度情報を得ることができる。ブーム20、アーム21、バケット22、ブームシリンダ20A、アームシリンダ21A、バケットシリンダ22A、第1リンク22B、第2リンク22C、および旋回体3は、それぞれ揺動できるように取り付けられているので、機械的なリンク関係から、ブーム20、アーム21、バケット22、および旋回体3の姿勢を推定することができる。なお、ここで示した姿勢の検出方法は一例であり、作業フロント2の各部の相対角度を直接計測するものや、ブームシリンダ20A、アームシリンダ21A、バケットシリンダ22Aのストロークを検出して油圧ショベル1の各部の姿勢を算出してもよい。
【0037】
<目標面情報設定装置>
目標面情報設定装置100は、作業フロント2が掘削目標とする施工目標面を設定することができる。施工目標面は単一な平面に加え、複数の平面を持つように設定してもよく、作業フロント2が掘削可能な範囲を設定できるようにしてもよい。施工目標面は、作業機械1を基準とする座標系で設定してもよいし、地球を基準とする座標系で設定してもよい。施工目標面の設定方法は、3Dデータなどのモデルデータを読み込ませることでもよい。
【0038】
<駆動装置>
駆動装置35は、油圧ポンプ35aと、方向切替弁35bと、電磁制御弁35cとにより構成され、情報処理装置34から入力された動作指令値に従って、油圧ショベル1の各部を駆動するアクチュエータ(油圧シリンダ20A,21A,22Aおよび油圧モータ38,41)に供給される作動油(圧油)の流量を制御する。情報処理装置34から入力された動作指令値は電磁制御弁35cによってパイロット圧に変換され、このパイロット圧によって方向切替弁35bが駆動される。方向切替弁35bは、アクチュエータ20A,21A,22A,38,41に供給される作動油の流量を調整することにより、アクチュエータ20A,21A,22A,38,41の動作速度を制御する。
【0039】
<情報処理装置>
図3は情報処理装置34の機能ブロック図である。図3に示すように、情報処理装置34は、姿勢検出装置30と、操作入力装置33と、目標面情報設定装置100と、表示設定装置110と、駆動装置35とに接続されている。情報処理装置34は、姿勢演算部210と、目標面距離演算部220と、目標速度演算部310と、バケット角度制御決定部410と、バケット進行方向判定部420と、バケット作業状態判定部430と、バケット補正制限値演算部440と、バケット目標速度補正部450と、動作指令値演算部610とにより構成される。
【0040】
姿勢演算部210は、姿勢検出装置30が検出した信号を基に作業フロント2と旋回体3の姿勢を演算する。姿勢演算部210の演算結果は、目標面距離演算部220、バケット角度制御決定部410、および目標速度演算部310に出力される。
【0041】
目標面距離演算部220は、目標面情報設定装置100と姿勢演算部210の演算結果に基づいて、バケット22上に設定された任意の複数点と施工目標面との距離を演算する。目標面距離演算部220の演算結果は、表示設定装置110、バケット角度制御決定部410、目標速度演算部310、バケット進行方向判定部420、バケット作業状態判定部430、バケット補正制限値演算部440、およびバケット目標速度補正部450に出力される。
【0042】
バケット角度制御決定部410は、表示設定装置110に設定されたバケット22の角度制御に関して、操作入力装置33からの操作入力量と、姿勢演算部210および目標面距離演算部220の演算結果とに基づいて、バケット22の角度制御に関する制御状態を決定し、その結果を目標速度演算部310、バケット作業状態判定部430、およびバケット目標速度補正部450に出力する。
【0043】
目標速度演算部310は、操作入力装置33の操作量情報、目標面距離演算部220が演算したバケット22と施工目標面の距離、バケット角度制御決定部410の演算結果、および姿勢演算部210の演算結果に基づいて、作業フロント2を駆動するアクチュエータ20A,21A,22Aの目標速度を演算する。目標速度演算部310の演算結果は、バケット進行方向判定部420、バケット目標速度補正部450、および動作指令値演算部610に出力される。
【0044】
バケット進行方向判定部420は、目標面距離演算部220と目標速度演算部310の演算結果に基づいて、バケット22が進行する方向、すなわち、バケット22の爪先側に進行するか、爪先と反対側(後端側)に進行するかを判定し、その結果をバケット作業状態判定部430に出力する。
【0045】
バケット作業状態判定部430は、目標面距離演算部220、バケット角度制御決定部410、およびバケット進行方向判定部420の演算結果に基づいて、バケット22の作業状態、すなわち、バケット22の爪先側で掘削している状態(掘削状態)、バケット22の爪先と反対側で擦り付けしている状態(擦り付け状態)、バケット22の爪先側で擦り付けしている状態(擦り付け状態)のいずれかであるかを判定し、その結果をバケット補正制限値演算部440に出力する。
【0046】
バケット補正制限値演算部440は、目標面距離演算部220、およびバケット作業状態判定部430の演算結果に基づいて、バケット22の作業状態が維持される角度補正量の上限値(バケット補正制限値)を演算する。また、バケット補正制限値演算部440は、オペレータに違和感を与えないバケット22の角速度補正量の上限値(バケット補正制限値)を演算する。バケット補正制限値演算部440の演算結果(バケット補正制限値)は、バケット目標速度補正部450に出力される。
【0047】
バケット目標速度補正部450は、バケット角度制御決定部410、目標面距離演算部220、バケット補正制限値演算部440、および目標速度演算部310の演算結果に基づいて、バケット22の目標速度を補正する。
【0048】
動作指令値演算部610は、目標速度演算部310、およびバケット目標速度補正部450の演算結果に基づいて、駆動装置35を制御するのに必要な動作指令値を演算し、駆動装置35に出力する。
【0049】
<マシンコントロールの動作>
図4にマシンコントールによる作業フロント2の動作を示す。図4に示すように、マシンコントロールでは設定された施工目標面に沿ってバケット22が動作するように、アーム21の動作速度に応じてブーム20を自動的に制御する。例えば、図4に示す状態においてオペレータがアーム21のクラウド操作を行うと、バケット22の爪先が施工目標面に沿って移動するように、ブーム20が自動的に上昇または下降する。これによりオペレータは、熟練の操作を要することなく施工目標面に沿って掘削作業を行うことができる。
【0050】
図5にマシンコントロールで達成しようとするバケット22の動作軌跡(目標動作軌跡)を示す。図5に示すように、マシンコントロールではバケット22の角度制御を自動で行うことができる。バケット22の角度制御には、施工目標面に対してバケット22の角度を一定に保つようにバケット22の動作を制御するもの、ブーム20とアーム21の動作に合わせてバケット22の角度を旋回体3の旋回平面に対して一定に保つようにバケット22の動作を制御するもの、アーム21に対するバケット22の角度を一定に保つようにバケット22の動作を制御するものがある。これらのバケット22の角度制御は、オペレータの選択操作に応じて切り替えたり、オペレータのバケット22の操作量、バケット22と施工目標面の距離、施工目標面に対するバケット22の姿勢などに基づいて自動的に切り替えることができる。例えば本実施形態では、通常時はアーム21に対するバケット22の角度を一定に保つようにバケット22の動作を制御するようにしておき、オペレータが表示設定装置110を介してバケット22の角度を保持するモードに設定し、マシンコントロールが要求するバケット22の動作速度よりオペレータが要求するバケット22の動作速度が小さい場合は、バケット22と施工目標面の距離が所定値より小さく、かつ施工目標面に対してバケット22の底面が平行になったら、バケット22の角度を旋回体3の旋回平面に対して一定に保つようにバケット22の動作を制御する。
【0051】
<バケットの動作軌跡>
図6にマシンコントロールによる実際のバケット22の動作軌跡を示す。一般に油圧ショベル1では、強度の観点から作業フロント2は重厚に作られているため質量が比較的大きく、慣性が大きい。また、油圧システムの場合、作業フロント2を駆動する作動油が圧縮性のある流体であるため、作業フロント2の動作を正確に制御することは難しい。そのため、実際にアーム21とブーム20の動作を制御してバケット22を施工目標面に追従させようとすると、図6に示すようにバケット22と施工目標面には偏差が生じる。その結果、掘削した地面に凹凸が生じてしまう。なお、図6の動作軌跡は説明用のイメージであり、実際の縮尺とは異なる。
【0052】
<バケットの作業状態>
図7に掘削作業中のバケット22の目標動作軌跡を示し、図8に擦り付け作業中のバケット22の目標動作軌跡を示す。図7および図8に示すように、バケット22が広く一般に用いられる掘削用バケットの場合、バケット22の先端側にはツースと呼ばれる爪が取り付けられており、地面を掘削しやすくなっている。バケット22の下部には鉄板が取り付けられており、地面を締め固めたり、バケット22の底面や後端側を地面に擦り付けることで地面を滑らかに均す際に使用される。マシンコントロールで作業するときのバケット22の作業状態としては、図7に示すようにバケット22の爪先側で掘削する状態(掘削状態)と、図8に示すようにバケット22の爪先と反対の後端側で擦り付けする状態(擦り付け状態)とがある。マシンコントロールによるバケット22の作業(掘削作業または擦り付け作業)は作業フロント2の一連の動作により行われるため、その間はバケット22の作業状態を維持する必要がある。
【0053】
バケット22の作業状態の判定は、施工目標面に対するバケット22の姿勢および進行方向に基づいて行うことができる。本実施形態では、バケット22の爪先側と施工目標面の距離と、バケット22の爪先側と反対の後端側と施工目標面の距離を演算し、これらの距離の大小関係とバケット22の進行方向とに基づいて掘削状態か擦り付け状態かを判定している。バケット22の進行方向は、アーム21とブーム20の目標速度から施工目標面に平行な方向成分を抽出することで演算することができる。図7および図8に示す作業フロント2の構成では、アーム引き動作によってバケット22は爪先側に進行し、アーム押し動作によってバケット22は爪先と反対の後端側に進行する。
【0054】
以下、掘削状態または擦り付け状態と判定するための条件の一例を示す。
(i)掘削状態と判定するための条件
施工目標面を基準としてバケット22の爪先側が後端側より下方に位置する状態でバケット22が爪先側に進行するとき。
(ii)擦り付け状態と判定するための条件
施工目標面を基準としてバケット22の後端側が爪先側より下方に位置する状態でバケット22が爪先側に進行するとき。または、施工目標面を基準としてバケット22の後端側が爪先側より下方に位置しする状態でバケット22が後端側に進行するとき。
【0055】
なお、バケット22の作業状態を判定するための条件は上記に限られず、例えばバケット22の底面と施工目標面のなす角度に基づいて掘削状態か擦り付け状態かを判定してもよい。また、バケット22が後端側にエッジを有する法面バケット(図9に示す)の場合は、バケット22の後端側で地面を掘削することもあるため、後端側が爪先側より下方に位置する姿勢でバケット22が後端側に進行する状態を掘削状態と判定してもよい。
【0056】
<バケット目標速度の補正方法>
マシンコントロール作業をしている際にバケット22と施工目標面の距離を小さくするようにバケット22の目標速度を補正するときの補正方法について説明する。バケット22の目標速度の補正は、バケット22の作業状態と、バケット22と施工目標面の距離に基づいて行う。本実施形態では、バケット22の爪先側が後端側より下方にある状態でバケット22が爪先側に進行するときに、バケット22の爪先と施工目標面の距離が零になるようにバケットシリンダ22Aの変位を演算し、この変位を所定時間で除算して目標速度演算部310で演算されていたバケットシリンダ22Aの目標速度に加算する。ここでいう所定時間は、バケット22の爪先と施工目標面の距離が零になるのに要する時間であり、油圧ショベル1の特性などを考慮して実験等により適切な値に決定される。
【0057】
バケット22の後端側が爪先側より下方にある状態でバケット22が爪先側に進行するときは、バケット22の後端と施工目標面の距離が零になるようにバケットシリンダ22Aの変位を演算し、前記所定時間で除算して目標速度演算部310で演算されていたバケットシリンダ22Aの目標速度に加算する。バケット22の後端側が爪先側より下方にある状態でバケット22が後端側に進行するときは、バケット22の後端と施工目標面の距離が零になるようにバケットシリンダ22Aの変位を演算し、前記所定時間で除算して目標速度演算部310で演算されていたバケットシリンダ22Aの目標速度に加算する。バケット22の爪先側が後端側より下方にある状態でバケット22が後端側に進行するときは、バケット22の爪先と施工目標面の距離が零になるようにバケットシリンダ22Aの変位を演算し、前記所定時間で除算して目標速度演算部310で演算されていたバケットシリンダ22Aの目標速度に加算する。
【0058】
以上により、バケット22を動作することでバケット22と施工目標面の距離を小さくし、バケット22を施工目標面により追従させることができるが、実際のマシンコントロール作業では地面を掘削したり擦り付けて転圧したりするため、図6に示すように、バケット22の爪先が施工目標面から離れたり施工目標面より下方に食い込むことで、掘削した地面に凹凸が生じる。そこで、従来のマシンコントロールでは、図10Aに示すように、バケット22の爪先が施工目標面より下方に位置したときにバケット22の爪先側が上方を向くようにバケット22の動作指令値を補正することで、それ以上地面を深く掘り下げることを防いでいる。しかし、その結果、オペレータが掘削を意図した操作を行っているにも関わらず、その意図に反してバケット22の掘削状態が解除され、掘削作業ができない区間が生じてしまう。
【0059】
<バケット目標速度補正の制限方法>
図10Aに示す「掘削作業ができない区間」においてバケット22の掘削状態を維持するためには、施工目標面を基準としてバケット22の後端が爪先より上方に位置している必要がある。そこで、図10Bに示すように、施工目標面を基準としてバケット22の爪先が後端より上方に位置しないようにバケットシリンダ22Aの動作指令値を補正する。これにより、施工目標面を基準としてバケット22の後端が爪先より下方に位置することを無くなるため、バケット22の掘削状態を維持することができる。なお、擦り付け状態を維持する場合は、バケット22の後端と爪先の上下関係を逆にして上記と同様の処理を行えばよい。
【0060】
上記とは別に、バケット22の角度がバケット作業を開始するときの角度(初期角度)から大幅に変化してしまうと、オペレータに違和感を与えるおそれがある。そこで、予めバケット22の初期角度に対する角度補正に制限値を設けておくことで、オペレータの違和感を小さくして、作業性を良くすることができる。また、バケット22の角度が急峻に変わってしまう場合も、オペレータに違和感を与えるおそれがある。そこで、予めバケットシリンダ22Aの動作速度または角速度に上限値を設定しておいてもよい。さらに、作業フロント2の動作速度に応じてバケットシリンダ22Aの動作速度の上限値を変更するようにしてもよい。これらの値は、オペレータの違和感に関するものであるため、実験等により決定することが望ましい。
【0061】
また、施工目標面に対するバケット22の角度を一定に保持しようとしているときは、バケット22の目標保持角度に対して前述の角度制限や角速度の制限を設けることで、施工目標面に対するバケット22の角度を一定範囲内に保ちつつ、バケット22と施工目標面の距離を小さくすることができる。
【0062】
<バケットの動作軌跡>
従来技術におけるマシンコントロールを用いた場合、図10Aに示すように、施工目標面に対するバケット22の姿勢を考慮せずにバケット22の爪先が施工目標面に追従するようにバケット22の動作が補正されるため、作業フロント2の一連の動作の途中でバケット22の作業状態が変化してしまうことがある。例えば、図10Aのように掘削状態で作業を開始したにもかかわらず、一連の動作の途中でバケット22の後端が爪先より下方に位置してしまうと、バケット22の爪先による掘削作業ができなくなる。また、擦り付け状態で作業を開始したにもかかわらず、一連の動作の途中でバケット22の爪先が後端より下方に位置してしまうと、バケット22の後端による擦り付け作業ができなくなる。
【0063】
一方、本実施形態におけるマシンコントロールを用いた場合は、図10Bに示すように、バケット22の爪先が施工目標面よりも下方に進入したときに、バケット22の底面が爪先より下方に位置しないようにバケット22の動作が制限された上でバケット22の爪先が施工目標面に近づくようにバケット22の動作が補正される。これにより、作業フロント2の一連の動作において、オペレータの意図に即したバケット22の作業状態を維持しつつバケット22を施工目標面に追従させることできるため、油圧ショベル1の作業性が向上する。
【0064】
なお、図10Aおよび図10B中のバケット22の大きさとバケット軌跡の関係は説明用のイメージであり、実際のスケール感とは異なる。
【0065】
<制御手順>
図11は、情報処理装置34の処理内容を示すフローチャートである。以下、各ステップを順に説明する。
【0066】
ステップS110では、姿勢検出装置30から得られた信号を基に作業フロント2と旋回体3の姿勢を演算する。
【0067】
ステップS120では、バケット22と施工目標面との距離を演算する。
【0068】
ステップS130では、作業フロント2と旋回体3の姿勢、バケット22と施工目標面との距離、および操作入力装置33からの操作入力量に基づいて、作業フロント2の目標速度を演算する。
【0069】
ステップS140では、作業フロント2と旋回体3の姿勢、バケット22と施工目標面との位置関係、および操作入力装置33からの操作入力量に基づいて、バケット角度保持条件に成立しているかを判定する。ここでいうバケット角度保持条件とは、施工目標面に対してバケット22の角度を保持する必要があるかを判定するための条件であり、例えば、バケット22と施工目標面との距離が所定値以下でかつ作業フロント2の動作が指示された場合である。バケット角度保持条件が成立していればステップS150に進み、バケット角度保持条件が成立していなければステップS185に進む。
【0070】
ステップS150では、作業フロント2の目標速度と目標面情報とに基づいてバケット22の進行方向を判定する。具体的には、バケット22の目標速度のうち施工目標面に平行でかつ爪先側に向かう速度成分が施工目標面に垂直な速度成分よりも大きい場合にバケット22の進行方向を爪先側と演算し、バケット22の目標速度のうち施工目標面に平行でかつ後端側に向かう速度成分が施工目標面に垂直な速度成分よりも大きい場合にバケット22の進行方向を後端側と演算する。
【0071】
ステップS160では、ステップS120で演算したバケット22と施工目標面との距離と、ステップS150で判定したバケット22の進行方向とに基づいて、バケット22の作業状態を判定する。バケット22の作業状態が掘削状態であればステップS170に進み、擦り付け状態であればステップS175に進む。
【0072】
ステップS170では、バケット22の掘削状態を維持するためのバケット補正制限値を演算する。
【0073】
ステップS175では、バケット22の擦り付け状態を維持するためのバケット補正制限値を演算する。
【0074】
ステップS180では、バケット22の動作補正量がステップS170またはステップS175で演算したバケット補正制限値を超えない範囲内で、バケット22と施工目標面の距離が小さくなるようにバケット22の目標速度を補正する。
【0075】
ステップS185では、バケット22の目標速度を補正しない。
【0076】
ステップS190では、操作入力装置33からの操作入力量に応じたバケット22の目標速度がステップS180またはステップS185で演算した目標速度より小さいかを判定する。操作入力装置33からの操作入力量がステップS180またはステップS185で演算した目標動作より小さい場合はステップS210に進み、操作入力装置33からの操作入力量に応じた目標速度がステップS180またはステップS185で演算した目標速度以上である場合はステップS200に進む。
【0077】
ステップS200では、操作入力装置33からの操作入力量に基づいてバケット22の目標速度を補正する。
【0078】
ステップS210では、バケット22の目標速度に基づいて動作指令値を演算し、駆動装置35に出力する。
【0079】
(まとめ)
本実施形態では、機械本体3と、機械本体3に上下方向に揺動自在に取り付けられた、作業具22を有する作業フロント2と、作業フロント2を駆動するアクチュエータ20A,21A,22Aと、アクチュエータ20A,21A,22Aを駆動する駆動装置35と、アクチュエータ20A,21A,22Aの動作を指示する操作入力装置33と、機械本体3および作業フロント2の姿勢を検出する姿勢検出装置30と、作業具22の掘削対象となる目標面を設定する目標面情報設定装置100と、作業具22が前記目標面に沿って移動するように操作入力装置33、姿勢検出装置30、および目標面情報設定装置100から入力される情報に基づいて、アクチュエータ20A,21A,22Aの動作指令値を演算し、駆動装置35に出力するコントローラ34aとを備えた作業機械1において、コントローラ34aは、操作入力装置33から入力された操作入力量と前記目標面に対する作業具22の姿勢とに基づいて作業具22の作業状態を判定すると共に、判定された前記作業状態が維持されるアクチュエータ20A,21A,22Aの動作指令値の範囲を演算し、前記範囲の中で前記アクチュエータの動作指令値を、作業具22と前記目標面との距離が小さくなるように補正する。なお、本実施形態では、バケット22の目標速度を補正することによりアクチュエータ20A,21A,22Aの動作指令値を間接的に補正する構成としたが、アクチュエータ20A,21A,22Aの動作指令値を直接補正してもよい。
【0080】
以上のように構成した本実施形態によれば、作業具22を施工目標面に追従させるマシンコントロールにおいて、オペレータの意図に即した作業具22の作業状態を維持することにより、油圧ショベル1の作業性を向上させることが可能となる。
【0081】
また、本実施形態におけるコントローラ34aは、作業具22と前記目標面との距離が所定値以下となり、かつ、前記操作入力量に基づいて演算した作業具22の目標速度のうち前記目標面に平行な速度成分が前記目標面に垂直な速度成分よりも大きくなったタイミングで作業具22の作業状態を判定する。これにより、作業具22による作業を開始するタイミングで作業具22の作業状態を判定することが可能となる。
【0082】
また、本実施形態におけるコントローラ34aは、前記目標面に対する作業具22の姿勢および進行方向に基づいて作業具22の作業状態を判定する。これにより、作業具22の作業状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0083】
また、本実施形態におけるコントローラ34aは、作業具22上に予め設定された2点(爪先側の点および後端側の点)と前記目標面との距離に基づいて、前記目標面に対する作業具22の姿勢を検出する。これにより、施工目標面に対する作業具22の姿勢を簡易的に検出することが可能となる。
【0084】
また、本実施形態における作業具22はバケットであり、コントローラ34aは、前記目標面を基準としてバケット22の爪先がバケット22の後端側よりも下方に位置し、かつバケット22の目標速度のうち前記目標面に平行でかつ前記爪先側に向かう速度成分が前記目標面に垂直な速度成分よりも大きい場合は、バケット22の作業状態を掘削状態と判定し、前記目標面を基準として前記爪先が前記後端側よりも下方に位置し、かつバケット22の目標速度のうち前記目標面に平行でかつ前記後端側に向かう速度成分が前記目標面に垂直な速度成分よりも大きい場合、または、前記目標面を基準として前記後端側が前記爪先よりも下方に位置し、かつバケット22の目標速度のうち前記目標面に平行な速度成分が前記目標面に垂直な速度成分よりも大きい場合は、バケット22の作業状態を擦り付け状態と判定する。これにより、作業具としてバケット22を装着した油圧ショベル1において、バケット22の作業状態が掘削状態および擦り付け状態のいずれであるかを的確に判定することが可能となる。
【0085】
また、本実施形態におけるコントローラ34aは、バケット22の作業状態を掘削状態と判定した場合は、前記目標面を基準として前記爪先が前記後端側よりも下方に位置する状態が維持される動作指令値の範囲内で、前記爪先から前記目標面までの距離が小さくなるようにアクチュエータ20A,21A,22Aの動作指令値を補正し、バケット22の作業状態を擦り付け状態と判定した場合は、前記目標面を基準として前記後端側が前記爪先よりも下方に位置する状態が維持される動作指令値の範囲内で、前記爪先から前記目標面までの距離が小さくなるようにアクチュエータ20A,21A,22Aの動作指令値を補正する。これにより、バケット22を施工目標面に追従させるマシンコントロールにおいて、オペレータの意図に即したバケット22の作業状態(掘削状態または擦り付け状態)を維持することにより、油圧ショベル1の作業性を向上させることが可能となる。
【0086】
また、本実施形態におけるコントローラ34aは、作業具22の角度変化量が予め設定された角度補正制限値を超えないように、または、作業具22の角速度変化量が予め設定された角速度補正制限値を超えないように、アクチュエータ20A,21A,22Aの動作指令値を補正する。これにより、作業中の作業具22の姿勢の変動幅が一定以下に抑えられるため、オペレータに与える違和感を小さくすることが可能となる。
【0087】
また、本実施形態におけるコントローラ34aは、作業フロント2の動作速度に基づいて作業具22の角度補正制限値または角速度補正制限値を演算し、作業具22の角度変化量が前記角度補正制限値を超えないように、または、作業具22の角速度変化量が前記角速度補正制限値を超えないように、アクチュエータ20A,21A,22Aの動作指令値を補正する。これにより、作業中の作業具22の姿勢の変動幅が作業フロント2の動作速度に応じて抑えられるため、オペレータに与える違和感をさらに小さくすることが可能となる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0089】
1…油圧ショベル(作業機械)、2…作業フロント、3…旋回体(機械本体)、4…走行体、10…制御システム、20…ブーム、20A…ブームシリンダ(アクチュエータ)、20S…ブームIMU、21…アーム、21A…アームシリンダ(アクチュエータ)、21S…アームIMU、22…バケット(作業具)、22A…バケットシリンダ(アクチュエータ)、22B…第1リンク、22C…第2リンク、22S…バケットIMU、30S…旋回体IMU、31…メインフレーム、32…運転室、33…操作入力装置、34…情報処理装置、35…駆動装置、36…原動装置、37…カウンタウェイト、38…旋回用モータ(アクチュエータ)、40…トラックフレーム、41…走行用モータ(アクチュエータ)、45…履帯、100…目標面情報設定装置、100a…目標面情報設定用コントローラ、110…表示設定装置、110a…表示モニタ、110b…タッチパネル、210…姿勢演算部、220…目標面距離演算部、310…目標速度演算部、410…バケット角度制御決定部、420…バケット進行方向判定部、430…バケット作業状態判定部、440…バケット補正制限値演算部、450…バケット目標速度補正部、610…動作指令値演算部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11