(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法及びポリプロピレン系樹脂発泡粒子
(51)【国際特許分類】
C08J 9/18 20060101AFI20230718BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20230718BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230718BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20230718BHJP
C08K 5/3435 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
C08J9/18 CES
C08L23/10
C08K3/04
C08K5/17
C08K5/3435
(21)【出願番号】P 2023505118
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2021047422
(87)【国際公開番号】W WO2022190564
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2021040841
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】野原 徳修
(72)【発明者】
【氏名】大出 康貴
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-162370(JP,A)
【文献】国際公開第2016/111017(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/107847(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/052739(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/119670(WO,A1)
【文献】特開2009-298892(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203876(WO,A1)
【文献】特開2004-263033(JP,A)
【文献】国際公開第2013/094529(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の無機分散剤を含む水性媒体中に、ポリプロピレン系樹脂粒子を分散させる分散工程、
容器内で前記ポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程、及び
発泡剤を含む前記ポリプロピレン系樹脂粒子を水性媒体と共に容器から放出して発泡させる発泡工程を含むポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する方法であって、
前記ポリプロピレン系樹脂粒子が、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする芯層と、前記芯層を被覆する、
ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする融着層とを有し
(ただし、前記ポリオレフィン系樹脂が前記ポリプロピレン系樹脂と同一のポリプロピレン系樹脂である場合を除く)、
前記ポリオレフィン系樹脂は、前記ポリプロピレン系樹脂の融点よりも低い融点または軟化点を示し、
前記ポリプロピレン系樹脂粒子中の前記融着層の割合が0.5重量%以上10重量%以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融着層がカーボンブラック及びNOR型ヒンダードアミンを含み、
前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融着層中のカーボンブラックの配合割合が0.5重量%以上5重量%以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融着層中のNOR型ヒンダードアミンの配合割合が0.03重量%以上0.5重量%以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂の融点が100℃以上150℃以下である、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系樹脂の融点と前記ポリオレフィン系樹脂の融点との差が3℃以上30℃以下である、請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項4】
前記ポリプロピレン系樹脂粒子の前記融着層中の、カーボンブラックの配合割合(重量%)に対する、NOR型ヒンダードアミンの配合割合(重量%)の比が0.01以上0.1以下である、請求項1
から3のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項5】
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が、10kg/m
3以上500kg/m
3以下である、請求項1から
4のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項6】
表面に融着層を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって
、
前記発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子本体と、前記発泡粒子本体を被覆する、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする前記融着層とを有し(ただし、前記ポリオレフィン系樹脂が前記ポリプロピレン系樹脂と同一のポリプロピレン系樹脂である場合を除く)、
前記ポリオレフィン系樹脂は、前記ポリプロピレン系樹脂の融点よりも低い融点または軟化点を示し、
前記発泡粒子中の前記融着層の割合が0.5重量%以上10重量%以下であり、
前記融着層がカーボンブラック及びNOR型ヒンダードアミンを含み、
前記融着層中のカーボンブラックの配合割合が0.5重量%以上5重量%以下であり、
前記融着層中のヒンダードアミンの配合割合が0.03重量%以上0.5重量%以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法及びポリプロピレン系樹脂発泡粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形してなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は、梱包材や自動車部材、建築材料などの種々の用途に使用されている。このような発泡粒子成形体を構成する発泡粒子は、例えば、次のようにして製造される。
【0003】
まず、容器内の無機分散剤を含む水性媒体中に、ポリプロピレン系樹脂粒子を分散させる。次いで、容器内で上記ポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる。次いで、発泡剤を含む当該樹脂粒子(発泡性樹脂粒子)を水性媒体と共に容器から放出して発泡させる。このようにして、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が製造される。
【0004】
上述のように製造される発泡粒子は、発泡粒子本体の表面に、型内成形時の発泡粒子同士の融着性を高めるための融着層が形成される場合がある(例えば、特許文献1)。融着層を有する発泡粒子は、芯層と、当該芯層の表面に設けられた融着層とを有するポリプロピレン系樹脂粒子を準備し、これを発泡させて得られる。この際、融着層として、例えば、芯層を構成するポリプロピレン系樹脂の融点よりも低い融点を有する結晶性ポリオレフィン系樹脂や、芯層を構成するポリプロピレン系樹脂の融点よりも低い軟化点を有する非晶性ポリオレフィン系樹脂等が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のとおり融着層を備える発泡粒子は、型内成形時の発泡粒子同士の融着性が改善される一方、以下の点に関して向上の余地があった。
即ち、芯層に対し相対的に低融点又は低軟化点の樹脂組成物等により構成された融着層を有するポリプロピレン系樹脂粒子は、発泡工程時の発泡条件によっては、発泡粒子同士が合着(ブロッキング)しやすくなる場合があった。より詳しくは、発泡剤が含浸された発泡性樹脂粒子を圧力容器等から水性媒体と共に相対的に圧力の低い環境に放出して発泡させる発泡工程において、発泡粒子同士がブロッキングする場合があった。このようなブロッキングの発生に関する問題を、以下、単に「ブロッキングの問題」ともいう。ブロッキングの問題が生じた発泡粒子を用いて型内成形を行うと、得られる発泡粒子成形体の表面性が低下する虞があった。
【0007】
また別の問題として、融着層を有する発泡粒子を用いて、型内成形により長期的に発泡粒子成形体を生産すると、成形型の形状等によっては、成形型の加熱されやすい箇所等に発泡粒子由来の付着物が蓄積する虞があった。このような成形型への付着物の蓄積の発生に関する問題を、以下、単に「付着物の蓄積の問題」ともいう。付着物の蓄積の問題が発生することにより、製造された発泡粒子成形体の表面性が低下する虞があった。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、型内成形時における発泡粒子同士の良好な融着性を維持しつつ、ブロッキングの問題及び付着物の蓄積の問題の発生を抑制可能なポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法及びポリプロピレン系樹脂発泡粒子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法は、容器内の無機分散剤を含む水性媒体中に、ポリプロピレン系樹脂粒子を分散させる分散工程、容器内で上記ポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程、及び発泡剤を含む上記ポリプロピレン系樹脂粒子を水性媒体と共に容器から放出して発泡させる発泡工程を含むポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する方法であって、上記ポリプロピレン系樹脂粒子が、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする芯層と、上記芯層を被覆する、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする融着層とを有し(ただし、上記ポリオレフィン系樹脂が上記ポリプロピレン系樹脂と同一のポリプロピレン系樹脂である場合を除く)、上記ポリオレフィン系樹脂は、上記ポリプロピレン系樹脂の融点よりも低い融点または軟化点を示し、上記ポリプロピレン系樹脂粒子中の上記融着層の割合が0.5重量%以上10重量%以下であり、上記ポリプロピレン系樹脂粒子の融着層がカーボンブラック及びNOR型ヒンダードアミンを含み、上記ポリプロピレン系樹脂粒子の融着層中のカーボンブラックの配合割合が0.5重量%以上5重量%以下であり、上記ポリプロピレン系樹脂粒子の融着層中のNOR型ヒンダードアミンの配合割合が0.03重量%以上0.5重量%以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、表面に融着層を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、上記発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子本体と、上記発泡粒子本体を被覆する、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする上記融着層とを有し(ただし、上記ポリオレフィン系樹脂が上記ポリプロピレン系樹脂と同一のポリプロピレン系樹脂である場合を除く)、上記ポリオレフィン系樹脂は、上記ポリプロピレン系樹脂の融点よりも低い融点または軟化点を示し、上記発泡粒子中の上記融着層の割合が0.5重量%以上10重量%以下であり、上記融着層がカーボンブラック及びNOR型ヒンダードアミンを含み、上記融着層中のカーボンブラックの配合割合が0.5重量%以上5重量%以下であり、上記融着層中のヒンダードアミンの配合割合が0.03重量%以上0.5重量%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法では、所定範囲のカーボンブラック及びNOR型ヒンダードアミンを含有する融着層を備えるポリプロピレン系樹脂粒子が用いられる。これにより本発明は、型内成形時における発泡粒子同士の良好な融着性を維持しつつ、ブロッキングの問題及び付着物の蓄積の問題の発生を抑制可能なポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造することができる。本発明の製造方法により製造されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、上記効果を奏する結果、表面性に優れる発泡粒子成形体を安定して製造し得る。また、本発明の製造方法により製造されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、長期的に発泡粒子成形体の製造を行うことを可能とする。
【0012】
また、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、所定範囲のカーボンブラック及びNOR型ヒンダードアミンを含有する融着層を有していることから、製造時の発泡工程におけるブロッキングの問題の影響を受け難い。また本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、かかる融着層を有するために型内成形時において成形型に対する付着物の蓄積の問題の発生が抑制されると共に発泡粒子同士が良好に融着し得る。そのため、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、型内成形に供与されることによって、表面性に優れる発泡粒子成形体を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の製造方法の一実施形態に関し、製造方法の一部を説明する説明図である。
【
図2】実施例における発泡粒子の全融解熱量及び高温ピーク熱量を得るための、JIS K7122:1987年に記載されたプラスチックの転移熱測定方法に従って得たDSC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法及び本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子について順に説明する。尚、以下において本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法を単に、本発明の製造方法という場合がある。
【0015】
[ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法]
本発明の製造方法は、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする芯層と、芯層の表面に設けられた、芯層を被覆する融着層とを有するポリプロピレン系樹脂粒子を用いる。かかるポリプロピレン系樹脂粒子に設けられた融着層は、カーボンブラック及びNOR型ヒンダードアミンを所定の範囲の配合割合で含む。具体的には、本発明の製造方法において、上記融着層中のカーボンブラックの配合割合は、0.5重量%以上5重量%以下であり、上記融着層中のNOR型ヒンダードアミンの配合割合が0.03重量%以上0.5重量%以下である。
本発明の製造方法は、上述する融着層を有するポリプロピレン系樹脂粒子を用い、分散工程、発泡剤含浸工程、発泡工程が実施される。
上記分散工程は、容器内の無機分散剤を含む水性媒体中に、ポリプロピレン系樹脂粒子を分散させる工程である。上記発泡剤含浸工程は、容器内でポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程である。上記発泡工程は、発泡剤を含むポリプロピレン系樹脂粒子(発泡性樹脂粒子)を水性媒体と共に容器から放出して発泡させる工程である。
本発明の製造方法は、これらの工程以外に本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜任意の工程を追加することができる。
【0016】
ところで、一般的に、発泡剤が含浸された発泡性樹脂粒子を水性媒体と共に容器から放出して発泡させることで発泡粒子を製造する場合、所望の発泡倍率となるよう発泡性樹脂粒子を発泡させるために、容器の内容物を加温して、発泡性樹脂粒子を軟化させる。これに加え、発泡時に発泡粒子同士がブロッキングしないよう、通常、水性媒体には無機分散剤が添加される。しかしながら、芯層及び融着層を有する発泡性樹脂粒子は、上述する加温により芯層よりも融着層において軟化が進行する。そのため、無機分散剤が添加されていても発泡時にブロッキングの問題が発生しやすい。特に、高発泡倍率の発泡粒子を得ようとした場合、ブロッキングの問題が発生しやすい傾向にある。
このようなブロッキングの問題が生じた発泡粒子を用いて型内成形を行うと、成形型内への発泡粒子の充填性が低下する。その結果、得られる発泡粒子成形体の表面にボイド、くぼみなどが形成され、成形体の表面性が低下する虞があった。このようなブロッキングの問題の発生を抑制するために、水性媒体に添加する無機分散剤の量を増加させるという考えもある。しかしながら、この場合、発泡工程後において無機分散剤を含む水性媒体の処理が煩雑となる等、発泡工程における生産性が低下する虞がある。また、型内成形時の発泡粒子同士の融着性が大きく低下する場合があった。
上述するブロッキングの問題に加え、一般的に、融着層を有する発泡粒子は、型内成形時に、融着層が成形型に付着しやすい傾向にある。つまり融着層を有する発泡粒子を用いた場合、付着物の蓄積の問題が発生しやすい。特に、成形型の形状等によっては、型内成形時に、成形部位による加熱ムラが生じ、成形型に加熱されやすい部位が生じる場合がある。このような場合において、融着層を有する発泡粒子を用いて型内成形を行うと、融着層の付着による成形型の汚染がより顕著である。成形型に蓄積した付着物の影響により、得られる発泡粒子成形体の表面にボイドやくぼみ等が形成され、成形体の表面性が低下する虞があった。
なお、成形型の形状や、成形条件等にもよるが、例えば、10~30サイクル程度の型内成形を実施する毎に成形型のクリーニングを行うことにより、上記のような付着物の蓄積の問題を抑制することはできる。しかし、成形型のクリーニングの頻度が高くなると、生産性が悪化するため、成形型のクリーニングの頻度は低いことが好ましい。
【0017】
上述するとおり、型内成形時における発泡粒子同士の融着性の改善のために芯層に被覆された融着層は、ブロッキングの問題及び付着物の蓄積の問題の発生の要因となる。型内成形時における発泡粒子同士の融着性の改善と、かかるブロッキングの問題及び付着物の蓄積の問題の改善とは、一般的には相反する事象であって、両方の課題を同時に解決することは従来困難とされてきた。
しかしながら、上述する構成を備える本発明の製造方法によれば、これらの問題を同時に解決するポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造が可能である。また本発明の製造方法により製造されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、従来のように頻繁に成形型のクリーニングを実施することなく、長期間にわたり、型内成形により発泡粒子成形体を成形した場合であっても、付着物の蓄積の問題の発生を抑制することができる。
上述する優れた効果が発揮されることにより、本発明の製造方法により製造されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、表面性に優れる発泡粒子成形体を提供可能である。
【0018】
以下に本発明の製造方法についてさらに詳細に説明する。説明には、適宜、
図1を用いる。
図1は本発明の製造方法の一実施形態に関し、製造方法の一部を説明する説明図である。
本発明の製造方法は、
図1の上段に示すとおり、芯層11と、芯層11を被覆する融着層12とを有するポリプロピレン系樹脂粒子10(以下、樹脂粒子10ともいう)を用い、所定の工程を実施することで、
図1の下段に示すポリプロピレン系樹脂発泡粒子20(以下、発泡粒子20ともいう)を製造する方法である。発泡粒子20は表面に融着層22を備える。融着層22は、芯層11の表面に設けられた融着層12に起因する層である。
なお、
図1は、本発明の製造方法の理解を容易にするために示す概念図であって、樹脂粒子10及び発泡粒子20の粒径や、樹脂粒子10が有する融着層12及び発泡粒子20が有する融着層22の厚み比率などを何ら限定するものではない。また、
図1に示す樹脂粒子10及び発泡粒子20は、粒子の略中心を通った切断面を示すものであるが、これらの粒子は球形であってもよいし、円柱形状などの任意の形状であってもよい。
尚、芯層11の表面に設けられる融着層12は、樹脂粒子を発泡させることにより、発泡粒子20の表面に設けられる融着層22となる。そのため、融着層12を、融着層22に対しプレ融着層と言い換えることもできる。
【0019】
(ポリプロピレン系樹脂粒子)
本発明の製造方法に用いる樹脂粒子10は、芯層11と、芯層11の表面に設けられた、芯層11を被覆する融着層12を有する。融着層12を備える樹脂粒子10を発泡させて得られる発泡粒子20は、表面に融着層22を有し、これによって型内成形時の発泡粒子20同士の融着性が高められる。
【0020】
<芯層>
芯層11は、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材樹脂により構成される。尚、本明細書において基材樹脂の主成分とは、基材樹脂中の重量比率が50重量%以上である成分をいう。
基材樹脂の主成分であるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体又はプロピレンに由来する構造単位を、50重量%を超えて含むポリプロピレン系共重合体が例示される。
上記ポリプロピレン単独重合体としては、例えばアイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン及びアタクチックポリプロピレン等のプロピレン単独重合体が例示される。
また上記ポリプロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体などのプロピレンとエチレン又は炭素数4以上のαオレフィンとの共重合体や、プロピレン-アクリル酸共重合体、プロピレン-無水マレイン酸共重合体等が例示できる。なお、これらの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよい。また上述する重合体は架橋したものであってもよいが、無架橋のものであることが好ましい。
発泡粒子を型内成形して得られる発泡粒子成形体の剛性、耐熱性等を高める観点から、上記ポリプロピレン系樹脂の融点は、135℃以上であることが好ましく、138℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましい。また、発泡粒子の比較的低い成形圧力での型内成形性を高める観点から、上記ポリプロピレン系樹脂の融点は、160℃以下であることが好ましく、155℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。
ポリプロピレン系樹脂の融点は、JIS K7121:1987に基づいて求めることができる。この際、試験片の状態調節としては、「(2)一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」が採用される。
より具体的には、ポリプロピレン系樹脂あるいは発泡粒子を試験片として、JIS K7121:1987に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで昇温した後に、10℃/分の冷却速度で23℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで昇温した際に得られるDSC曲線により定まる融解ピークの頂点温度をポリプロピレン系樹脂の融点とする。なお、DSC曲線において融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を融点とする。この際、各融解ピークの頂点温度の間に位置するDSC曲線の谷間の温度を境にして各融解ピークを区別して各融解ピークの面積(融解熱量)を比較することで、最も大きな面積を有する融解ピークを判断することができる。DSC曲線の谷間の温度は、DSCの微分曲線(DDSC)を参照して、微分曲線の縦軸の値が0となる温度から判断することができる。
【0021】
芯層11を構成する基材樹脂には、ポリプロピレン系樹脂の他に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、他の樹脂やエラストマー等のその他の重合体が含まれていてもよい。
その他の重合体としては、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びポリエステル系樹脂等のポリプロピレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂、並びにオレフィン系熱可塑性エラストマー、及びスチレン系熱可塑性エラストマー等のエラストマー等から選択される1種又は2種以上の混合材料が例示される。
基材樹脂中におけるポリプロピレン系樹脂の割合は、50重量%以上であり、70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましく、100重量%であることが特に好ましい。
【0022】
芯層11は、任意の添加剤を適宜含有していてもよい。例えば、任意の添加剤としては、難燃剤、難燃助剤、気泡調整剤、滑剤、結晶核剤、着色剤、導電材、帯電防止剤等が挙げられる。また、カーボンブラック及びNOR型ヒンダードアミンの少なくとも一方が芯層11に含まれていることが好ましく、カーボンブラック及びNOR型ヒンダードアミンが芯層11に含まれていることがより好ましい。適宜の量のカーボンブラックが芯層11に含有されることにより、黒色の発泡粒子20を提供可能である。また適宜の量のNOR型ヒンダードアミンが芯層11に含有されることにより、難燃性に優れた発泡粒子20を提供可能である。芯層11に配合されるカーボンブラック及びNOR型ヒンダードアミンとしては、後述する融着層12の説明において例示されるカーボンブラック及びNOR型ヒンダードアミンを好適に使用することができる。
【0023】
発泡粒子20を用いて型内成形された発泡粒子成形体に良好な黒色の外観を付与するという観点からは、樹脂粒子10中のカーボンブラックの配合割合は、0.5重量%以上であることが好ましく、1.0重量%以上であることがより好ましく、1.5重量%以上であることがさらに好ましく、2.0重量%以上であることが特に好ましい。
一方、発泡粒子20を用いて型内成形された発泡粒子成形体の難燃性が損なわれないという観点から、樹脂粒子10中のカーボンブラックの配合割合は、5.0重量%以下であることが好ましく、4.0重量%以下であることがより好ましく、3.5重量%以下であることがさらに好ましく、3.0重量%以下であることが特に好ましい。
【0024】
カーボンブラックを含んでいても、得られる発泡粒子成形体の難燃性が損なわれにくいという観点から、樹脂粒子10中のNOR型ヒンダードアミンの配合割合は、0.03重量%以上であることが好ましく、0.05重量%以上であることがより好ましく、0.06重量%以上であることがさらに好ましい。
一方、得られる発泡粒子成形体の気泡径のバラツキを抑制しやすく、色調等の外観特性に優れる発泡粒子成形体を得やすいという観点から、樹脂粒子10中のNOR型ヒンダードアミンの配合割合は、0.4重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以下であることがより好ましく、0.2重量%以下であることがさらに好ましい。
【0025】
芯層11にNOR型ヒンダードアミンを配合する場合、芯層11に含まれるNOR型ヒンダードアミンの分子量は、概ね300以上3000以下であり、400以上1500以下であることが好ましく、500以上1200以下であることがより好ましく、600以上900以下であることがさらに好ましい。上述の範囲である分子量を示すNOR型ヒンダードアミンを芯層11に用いることで、発泡粒子20のかさ密度が低い場合、あるいは発泡粒子20がカーボンブラックを含む場合であっても、得られる発泡粒子成形体に安定して難燃性を付与することができる。また、上記分子量の範囲であれば、芯層11にカーボンブラック等の着色剤を含む樹脂粒子10から得られる発泡粒子20を用いた場合であっても、得られる発泡粒子成形体の色調のムラの発生を抑制することができる。なお、これらの効果が発現する理由は、定かではないが、以下のことが考えられる。上記範囲の分子量のNOR型ヒンダードアミンは、芯層11を構成する基材樹脂に混ざりやすく、基材樹脂中で凝集しにくい。そのため、基材樹脂中でNOR型ヒンダードアミンの凝集物が生じにくく、凝集物に由来する気泡核の形成が抑制される。これにより、発泡粒子における気泡径のバラツキがより低減され、得られる成形体の気泡膜厚みが均一になりやすいことが考えられる。
かかる観点から、NOR型ヒンダードアミン中の上記分子量のNOR型ヒンダードアミンの割合は、50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。
【0026】
<融着層>
融着層12は、樹脂粒子10の芯層11の表面の一部又は全部を被覆する層である。
融着層12は、単層発泡粒子を型内成形した場合に、単層発泡粒子同士が良好に融着した発泡粒子成形体(良好な単層発泡粒子成形体ともいう)が得られる最低スチーム圧力よりも低いスチーム圧力で、良好な単層発泡粒子成形体と同等の発泡粒子成形体を型内成形可能とする層を意味する。ここで単層発泡粒子とは、本発明の発泡粒子20を得るために用いられる樹脂粒子の芯層のみから構成される、単層の樹脂粒子を発泡させてなる発泡粒子を指す。なお、上記良好な単層発泡粒子成形体の成形に用いられる単層発泡粒子と、上記良好な単層発泡粒子成形体と同等の発泡粒子成形体の成形に用いられる発泡粒子(本発明の発泡粒子20)とは、発泡粒子の発泡倍率や粒子径等の物性が同等であり、融着層12の有無以外は対応するものである。
例えば、融着層12を構成する基材樹脂は、芯層11を構成する基材樹脂の融点よりも低い融点または軟化点を示すものが用いられる。かかる融着層12を有する樹脂粒子10を用いて形成された発泡粒子20は、表面に、芯層11の表面に設けられた融着層12に起因する融着層22を有する。
本発明において、融着層12は、基材樹脂、カーボンブラック、及びNOR型ヒンダードアミンを含む樹脂組成物により構成されることが好ましい。
【0027】
融着層12は、本発明の所期の課題が達成されうる範囲であれば、樹脂粒子10の表面全体に存在していてもよいし、表面の一部に存在していてもよい。典型的な樹脂粒子10の例としては、円柱形や略球形が挙げられる。
【0028】
発泡粒子20の型内成形性を高めるという観点から、樹脂粒子10の全重量に対する融着層12の割合は0.5重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、2重量%以上であることがさらに好ましい。また、型内成形によって得られる発泡粒子成形体の機械的強度を高めるという観点から、樹脂粒子10の全重量に対する融着層12の割合は10重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましく、6重量%以下であることがさらに好ましい。
樹脂粒子10の全重量における融着層12の重量の割合が上記範囲であることにより、これを用いて製造される発泡粒子20の物性を損なうことなく、融着性に優れた発泡粒子を得ることができると共に、本発明の所期の問題を解決することが可能である。換言すると、融着層12を有さない芯層11のみの樹脂粒子を用いて製造された発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体に対して期待される物性は、上記割合の融着層12を有する樹脂粒子10を用いて製造された発泡粒子20を型内成形してなる発泡粒子成形体においても十分に発揮されうる。
【0029】
基材樹脂:
融着層12を構成する基材樹脂の主成分としては、芯層11を構成するポリプロピレン系樹脂の融点よりも低い融点を有する結晶性ポリオレフィン系樹脂や、芯層11を構成するポリプロピレン系樹脂の融点よりも低い軟化点を有する、非晶性ポリオレフィン系樹脂や、ウレタン樹脂などの接着性樹脂などが例示される。
融着層12の基材樹脂の主成分がポリオレフィン系樹脂である場合、成形型への融着層の付着が抑制されやすくなる観点からは、芯層11を構成するポリプロピレン系樹脂の融点と、融着層12を構成するポリオレフィン系樹脂の融点との差は、30℃以下であることが好ましく、25℃以下であることがより好ましく、20℃以下であることがさらに好ましい。一方、発泡粒子同士の融着性を高め、低い成形圧力条件での型内成形性をより高める観点からは、芯層11を構成するポリプロピレン系樹脂の融点と、融着層12を構成するポリオレフィン系樹脂の融点との差は、3℃以上であることが好ましく、5℃以上であることがより好ましく、8℃以上であることがさらに好ましい。
また、上記ポリオレフィン系樹脂の融点は、100℃以上150℃以下であることが好ましく、110℃以上140℃以下であることがより好ましく、120℃以上135℃以下であることがさらに好ましい。
なお、融着層12を構成するポリオレフィン系樹脂の融点は、芯層11を構成するポリプロピレン系樹脂の融点と同様に、JIS K 7121:1987に基づいて求めることができる。また、樹脂の軟化点(ビカット軟化温度)は、JIS K7206:2016年のA50法に基づいて測定される。また、樹脂の融点は、JIS K7121:1987年に基づいて測定される。融着層12の基材樹脂の主成分としては、芯層11を構成する基材樹脂として例示されたポリプロピレン系樹脂を好ましく用いることができる。これらの中でも、機械的強度に優れる発泡粒子成形体を安定して得ることができる観点からは、融着層12の基材樹脂の主成分が、ポリプロピレン系共重合体であることが好ましく、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体及びプロピレン-エチレン-ブテン共重合体から選択される1種又は2種以上のポリプロピレン系共重合体であることがさらに好ましい。
融着層12を構成する基材樹脂中における主成分の割合は、50重量%以上であり、70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましく、100重量%であることが特に好ましい。
【0030】
本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、融着層12には、他の樹脂やエラストマー等のその他の重合体が含まれていてもよい。上記その他の重合体の例は、上述する芯層11におけるその他の重合体と同様である。
【0031】
カーボンブラック:
本発明は、所期の課題を解決するために融着層12にカーボンブラックを含有させる。一般的に、樹脂粒子あるいは発泡粒子に含有されるカーボンブラックは、黒色を付するための着色剤として使用されている。しかし、本発明によって、カーボンブラックが、後述するNOR型ヒンダードアミンと共に融着層12に所定範囲の量で配合されることによって、発泡粒子成形体の融着性の改善、並びにブロッキングの問題及び付着物の蓄積の問題の改善という、相反する事象を同時に解決可能であることが明らかにされた。
融着層12に含まれるカーボンブラックとしては、例えば、チャンネルブラック、ローラーブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等を使用することができる。中でも、ファーネスブラックは、ポリプロピレン系樹脂への分散性と材料コストとのバランスに優れるため、本発明に用いられるカーボンブラックとして好ましい。
【0032】
本発明において、融着層12中のカーボンブラックの配合割合は、0.5重量%以上5重量%以下である。
融着層が後述するNOR型ヒンダードアミンを所定の範囲で含んでいても、当該融着層に含まれるカーボンブラックの配合割合が上記範囲から大きく外れた場合、望ましい発泡粒子を提供できない虞がある。即ち、融着層におけるカーボンブラックの配合割合が少なすぎる場合(0重量%である場合を含む)、型内成形時において、発泡粒子の表面が成形型に付着しやすくなり、成形型が汚染されやすくなる虞や、得られる発泡粒子成形体の表面性が低下する虞がある。一方、融着層におけるカーボンブラックの配合割合が多すぎる場合、得られる発泡粒子成形体が燃えやすくなる虞がある。
型内成形時における成形型への融着層22の付着を抑制しやすく、かつ、色調のむらの発生を抑制して良好な外観を有する発泡粒子成形体を提供しやすくするという観点から、融着層12におけるカーボンブラックの配合割合は、1.0重量%以上であることが好ましく、1.5重量%以上であることがより好ましく、2.0重量%以上であることがさらに好ましい。一方、発泡粒子20の型内成形性を高めると共に、得られる発泡粒子成形体を燃えにくくするという観点から、融着層12におけるカーボンブラックの配合割合は、4.0重量%以下であることが好ましく、3.5重量%以下であることがより好ましく、3.0重量%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
NOR型ヒンダードアミン:
融着層12は、所定の範囲の量のNOR型ヒンダードアミンを含む。
具体的には、融着層12におけるNOR型ヒンダードアミンの配合割合は0.03重量%以上0.5重量%以下である。NOR型ヒンダードアミンの配合割合が上記範囲から大きく外れた場合、望ましい発泡粒子を提供できない虞がある。即ち、融着層におけるNOR型ヒンダードアミンの配合割合が低すぎる場合(0重量%である場合を含む)、発泡工程時に発泡粒子同士がブロッキングしやすくなる虞がある。一方、融着層におけるNOR型ヒンダードアミンの配合割合が大きすぎる場合、型内成形により得られた発泡粒子成形体の融着性が大きく低下する虞がある。
発泡粒子20同士のブロッキングがより良好に抑制されると共に、カーボンブラックを含んでいても、得られる発泡粒子成形体を燃えにくくするという観点から、融着層12中のNOR型ヒンダードアミンの配合割合は、0.05重量%以上であることが好ましく、0.06重量%以上であることがより好ましい。一方、発泡粒子20の型内成形性を高めるという観点から、融着層12中のNOR型ヒンダードアミンの配合割合は、0.3重量%以下であることが好ましく、0.2重量%以下であることがより好ましい。
【0034】
本発明に関し、NOR型ヒンダードアミンとは、N-アルコキシル基等の[>N-OR]の構造を有する化合物である。NOR型ヒンダードアミンとしては、例えば、下記一般式(1)の骨格を少なくとも1つ備える化合物が挙げられる。一般式(1)におけるRには、任意の構造が結合する。例えば、一般式(1)におけるRとして、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基等が例示される。また、一般式(1)におけるORとしては、シクロヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等が例示される。
【化1】
【0035】
本発明に用いられるNOR型ヒンダードアミンの好ましい例としては、例えば下記化学式(2)~化学式(4)で示される化合物などが挙げられる。
化学式(2)は、商品名NOR116(分子量2261、BASF社製)、化学式(3)は、商品名FP-T80(分子量681、株式会社ADEKA製)、化学式(4)は、商品名Tinuvin123(分子量737、BASF社製)である。
【化2】
【化3】
【化4】
【0036】
尚、融着層12は、1種のNOR型ヒンダードアミンを含んでもよいし、2種以上のNOR型ヒンダードアミンを含んでもよい。また、融着層12は、NOR型ヒンダードアミンに加えて、NOR型ヒンダードアミン以外の他のヒンダードアミンを含んでいても良い。
融着層12中に、一般式(1)で表されるNOR型ヒンダードアミン以外の他のヒンダードアミンが含まれる場合、他のヒンダードアミンの配合割合は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で調整されればよい。
【0037】
上述のとおり、本発明では、融着層12に含まれるヒンダードアミンとして、NOR型ヒンダードアミンを用いる。これにより、本発明の所期の課題であるブロッキングの問題及び付着物の蓄積の問題を良好に解決することができる。この理由は定かではないが、NOR型ヒンダードアミンは、水性分散媒中で無機分散剤を適度に引き付けやすく、これによって表面に無機分散剤が適度に付着した発泡粒子が製造されるためではないかと推察される。
【0038】
本発明の所期の課題が解決されると共に、融着層12を構成する基材樹脂との相溶性に優れ、基材樹脂中でより凝集しにくいという観点からは、上記NOR型ヒンダードアミンは、分子量が300以上3000以下であるNOR型ヒンダードアミンを含むことが好ましい。この場合、NOR型ヒンダードアミン中の上記分子量のNOR型ヒンダードアミンの割合が、50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。また、上記NOR型ヒンダードアミンの分子量は、400以上1500以下であることが好ましく、500以上1200以下であることがより好ましく、600以上900以下であることがさらに好ましい。
【0039】
尚、上述するNOR型ヒンダードアミンの分子量は、当該NOR型ヒンダードアミンを構成する原子の原子量の合計である。
【0040】
上述する樹脂粒子10の融着層12中の、カーボンブラックの配合割合(重量%)に対する、NOR型ヒンダードアミンの配合割合(重量%)の比は、0.01以上0.1以下であることが好ましく、0.02以上0.08以下であることがより好ましい。融着層12におけるカーボンブラックとNOR型ヒンダードアミンとの配合割合の比を上述の範囲に調整することによって、これを用いて発泡粒子20を製造した際に、融着性を維持しつつ、ブロッキングの問題及び付着物の蓄積の問題をより良好に抑制しやすい。その結果、型内成形性に優れる発泡粒子20を得やすい。
【0041】
その他の添加剤:
本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、融着層12を構成する樹脂組成物は、その他の添加剤を1種以上含んでいても良い。その他の添加剤としては、例えば難燃剤、難燃助剤、滑剤、結晶核剤、導電材、帯電防止剤等が例示される。
【0042】
樹脂粒子の造粒方法:
樹脂粒子10の造粒方法は、特に限定されず、上述する芯層11及び融着層12を備える構成が実現される範囲において適宜の方法を採用可能である。
【0043】
例えば、樹脂粒子10の造粒方法として、押出機を用いた共押出により、芯層11の表面に融着層12が積層された樹脂粒子10を得る方法が挙げられる。共押出により芯層11の表面に融着層12を積層する方法は、樹脂粒子10における融着層12の割合を調整しやすい点や、比較的厚みの均一な融着層12を、樹脂粒子10に生産性良く形成できる点で好ましい。上記方法は具体的には、まず、芯層11を形成するための基材樹脂と、必要に応じて添加される気泡調整剤等とを芯層形成用押出機に供給し、該押出機内で基材樹脂を溶融させると共に混練することにより、芯層形成用溶融混練物を得る。一方、融着層12を形成するための基材樹脂、カーボンブラック、NOR型ヒンダードアミン等を融着層形成用押出機に供給し、該押出機内で基材樹脂を溶融させると共に混練することにより、融着層形成用溶融混練物を得る。次いで、芯層形成用押出機の下流側に設けられた共押出用ダイ内で芯層形成用溶融混練物と、融着層形成用溶融混練物とを合流させ、芯層形成用溶融混練物の外周に、融着層形成用溶融混練物を積層して押し出すことにより、多層構造のストランドを形成する。次いで、ペレタイザー等によりストランドを所望の寸法に切断することにより、多層構造の樹脂粒子10が得られる。ストランドは、押出方向に直交する断面の形状が円形状等の積層体である。このようにして得られた樹脂粒子10は、例えば、円柱状などの柱状を呈し、芯層11が中心に設けられると共に、両端面には融着層12を有さず、両端面以外の外周面に融着層12が設けられる。このように、樹脂粒子10の一部において芯層11が露出していてもかまわない。
なお、上記共押出において、多層構造の樹脂粒子10を得る際に、融着層12の基材樹脂の種類や、樹脂粒子10における融着層12の割合、押出条件や切断条件等を調整するとよい。そして、例えば、ストランドが十分に軟化した状態で、ストランドを切断する方法等を採用することにより、芯層11の略全面が融着層12により覆われた樹脂粒子10を得ることができる。また、円柱状の樹脂粒子10を、分散媒中で、芯層11を構成する基材樹脂の融点以上で所定時間加熱する等して、樹脂粒子10に球形化処理を施すことにより、略球状の樹脂粒子10を得ることができる。
【0044】
また樹脂粒子10の異なる造粒方法として、予め粒子状に形成された芯層11と、融着層12を構成するための樹脂組成物とを混合させ、芯層11の表面に融着層12を形成する方法が挙げられる。かかる造粒方法の一例としては、まず、粒子状に形成された芯層11を混合機能及び加熱機能を有する混合装置に投入して芯層11の表層部を加熱する。次いで融着層12を構成するための樹脂組成物を上記混合装置等に投入し、加熱された芯層11と樹脂組成物とを混合することで、芯層11の表面に上記樹脂組成物を被覆させる。このようにして、融着層12を備える多層構造の樹脂粒子10が得られる。かかる造粒方法は、芯層11の表面全面に融着層12を形成しやすい点で好ましい。
【0045】
(分散工程)
次に本発明の製造方法における分散工程について説明する。
分散工程は、容器内に入れられた水性媒体中に、上述する樹脂粒子10を分散させる工程である。上記水性媒体には、無機分散剤が含まれる。また、上記水性媒体は、無機分散剤以外の任意の添加剤を適宜含有していてもよい。
【0046】
水性媒体:
水性媒体は、樹脂粒子10を容器内において分散させるための媒体である。水性媒体として、水、アルコール類、グリコール類、グリセリン等が挙げられ、中でも水が一般的である。樹脂粒子10の分散性及び発泡粒子20の生産性を良好にするという観点からは、水性媒体に対する樹脂粒子10の添加量は、水性媒体100重量部に対して、10重量部以上100重量部以下であることが好ましく、20重量部以上80重量部以下であることがより好ましい。
【0047】
無機分散剤:
無機分散剤は、水性媒体中で樹脂粒子10を良好に分散させると共に、発泡工程時において発泡粒子20同士のブロッキングを抑制するために用いられる。
発泡粒子20の型内成形性を維持しつつ、発泡粒子20同士のブロッキングを抑制しやすくするという観点から、無機分散剤の添加量は、水性媒体100重量部に対して、0.01重量部以上0.5重量部以下であることが好ましく、0.03重量部以上0.4重量部以下であることがより好ましく、0.05重量部以上0.3重量部以下であることがさらに好ましい。
【0048】
無機分散剤としては、例えば、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ等の無機微粒子を使用することができる。これらの無機微粒子は、単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。これらの中でも、融着層12に含まれるNOR型ヒンダードアミンとの相性がよく、またブロッキングの抑制効果に優れることから、カオリンを用いることが好ましい。
【0049】
任意の添加剤:
水性媒体は、無機分散剤に加え、さらに分散助剤及び界面活性剤等の任意の添加剤を1種以上含んでいてもよい。分散助剤としては、例えば、硫酸アルミニウム等が挙げられる。また、界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
(発泡剤含浸工程)
次に発泡剤含浸工程について説明する。
発泡剤含浸工程は、容器内で水性媒体中に分散した樹脂粒子10に発泡剤を含浸させ発泡性樹脂粒子を得る工程である。発泡剤含浸工程は、上述する分散工程の後実施されてもよいし、工程の一部又は全部が分散工程と重なって実施されてもよい。
発泡剤含浸工程は、一般的な発泡粒子製造方法において樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程から適宜選択して実施される。例えば、樹脂粒子10が入った密閉容器を密封し、密閉容器内に発泡剤を加える。これにより発泡剤を樹脂粒子10に含浸させて発泡性樹脂粒子を得ることができる。
密閉容器内への物理発泡剤の添加は、樹脂粒子を発泡させる前の任意のタイミングで行われればよい。固体状態の発泡剤を分散工程時に樹脂粒子10と共に水性媒体に添加し、その後、加温などにより気体状態となった発泡剤を樹脂粒子10に含浸させてもよい。また、分散工程と並行して、又は分散工程終了後に、密閉容器に気体である発泡剤を圧入して樹脂粒子10に含浸させてもよい。例えば物理発泡剤として二酸化炭素を使用する場合、分散工程時、ドライアイスの形態である発泡剤を樹脂粒子10と共に水性媒体に添加してもよく、あるいは、分散工程時又は分散工程終了後、気体状態である二酸化炭素を密閉容器内に圧入してもよい。
樹脂粒子10に対し発泡剤を含浸させる際、密閉容器内を加熱及び/又は加圧することにより、樹脂粒子10への発泡剤の含浸を促進することができる。
【0051】
また、得られる発泡粒子20の結晶状態を調整するために、上述する分散工程及び/又は発泡剤含浸工程において、密閉容器の昇温速度の調整や、密閉容器を所定の温度で所定時間保持するなどの調整を行っても良い。例えば、熱流束示差走査熱量測定により得られるDSC曲線において、発泡粒子20の本体を構成する基材樹脂の主成分の吸熱ピーク(固有ピーク)よりも高温側に吸熱ピーク(高温ピーク)が現れるよう、調整することが可能である。このように高温ピークを示す発泡粒子20は、良好な発泡粒子成形体を得ることができる成形条件範囲がより広いという観点から好ましい。上述する高温ピークを得るための調整は、例えば特許第4077745号において参照される。
なお、得られる発泡粒子20における全融解熱量は、40J/g以上90J/g以下であることが好ましく、50J/g以上80J/g以下であることがより好ましい。また、得られる発泡粒子20における高温ピークの吸熱量(高温ピーク熱量)は、5J/g以上50J/g以下であることが好ましく、8J/g以上40J/g以下であることがより好ましく、10J/g以上30J/g以下であることがさらに好ましい。
発泡粒子20における全融解熱量及び高温ピーク熱量は、JIS K7122:1987に基づいて、発泡粒子1~3mgを試験片とし、10℃/分の加熱速度で23℃から試験片の融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱して得られるDSC曲線から求められる。
【0052】
発泡剤:
本発明に用いられる発泡剤は、一般的な発泡粒子を得るために用いられる発泡剤の中から適宜選択される。
例えば物理発泡剤は本発明における発泡剤として好ましい。物理発泡剤としては、具体的には、無機物理発泡剤及び/又は有機物理発泡剤を使用できる。無機物理発泡剤としては、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン、水等が挙げられる。有機物理発泡剤としては、プロパン、ブタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、及び、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
【0053】
これらの物理発泡剤は、単独で用いられてもよいし、二種以上併用して用いられてもよい。これらの発泡剤のうち、好ましくは、二酸化炭素、窒素、空気等の無機物理発泡剤を主成分とする発泡剤が用いられ、より好ましくは、二酸化炭素が用いられる。本発明において、上記無機物理発泡剤を主成分とするとは、物理発泡剤が無機物理発泡剤を50モル%以上含有していることを意味する。物理発泡剤が無機物理発泡剤を70モル%以上含有していることが好ましく、90モル%以上含有していることがより好ましく、物理発泡剤が無機物理発泡剤のみからなることがさらに好ましい。
【0054】
物理発泡剤の添加量は、樹脂粒子10を構成する基材樹脂の種類や発泡剤の種類、目的とする発泡粒子20のかさ密度等に応じて適宜決定される。特に、所望とするかさ密度に応じて物理発泡剤の添加量を決定するとよい。例えば、物理発泡剤として二酸化炭素を用いた場合、二酸化炭素の添加量は、樹脂粒子10、100重量部に対して好ましくは0.1重量部以上30重量部以下、より好ましくは0.5重量部以上15重量部以下、さらに好ましくは1重量部以上10重量部以下である。
【0055】
(発泡工程)
上述する発泡剤含浸工程により発泡性樹脂粒子が得られた後、発泡工程が実施される。
発泡工程は、発泡剤を含む樹脂粒子10(発泡性樹脂粒子)を水性媒体と共に容器から放出して発泡させて発泡粒子20を得る工程である。より具体的には、発泡性樹脂粒子を水性媒体と共に密閉容器の内部圧力よりも低い圧力下に放出することにより、発泡性樹脂粒子を発泡させる。かかる発泡方法は、かさ密度の低い発泡粒子20を容易に得られやすく、好ましい。
【0056】
ただし、融着層を備える樹脂粒子を用いて上述する発泡工程を実施すると、従来は、発泡粒子同士が合着しやすく、ブロッキングの問題が発生する虞があった。これに対し、本発明の製造方法は、カーボンブラック及びNOR型ヒンダードアミンを所定の範囲で含有する融着層12を備える樹脂粒子10を用いることで、上述するブロッキングの発生を十分に抑制することができる。
【0057】
かさ密度の調整:
発泡粒子20のかさ密度は、例えば、発泡工程において、密閉容器の内容物を放出する際の、密閉容器内の温度や圧力などの発泡条件の適宜の変更によって調整可能である。
また、よりかさ密度の低い発泡粒子20を所望する場合、以下に示す二段発泡工程のように、発泡粒子を多段的に発泡させる工程を実施してもよい。二段発泡工程は、まず、上述のとおり得られた発泡粒子20を加圧可能な密閉容器に貯留し、空気などの気体を該密閉容器内に圧入することにより加圧処理をして発泡粒子20の気泡内の圧力を高める操作を行う。その後、該発泡粒子20を密閉容器から取り出し、これをスチームや熱風を用いて加熱することにより、該発泡粒子20を発泡させることで二段発泡工程が実施される。かかる二段発泡工程を実施することにより、より低いかさ密度である発泡粒子20(二段発泡粒子)を得ることが可能である。
また、一度の発泡工程で低いかさ密度の発泡粒子20を得るのに比べ、二段発泡工程を実施して低いかさ密度の発泡粒子20を得る方が、最終的に得られる発泡粒子20の気泡径を大きくしやすい。二段発泡工程を実施して得た発泡粒子20を用いて製造された発泡粒子成形体は、色調のむらの発生がより効果的に抑制され得る。
【0058】
発泡粒子のかさ密度:
本発明の製造方法において製造される発泡粒子20のかさ密度は特に限定されず、これを用いて成形される発泡粒子成形体の用途等を勘案して適宜決定することができる。例えば発泡粒子成形体の軽量性を図るという観点からは、発泡粒子20のかさ密度は、500kg/m3以下であることが好ましく、100kg/m3以下であることがより好ましく、50kg/m3以下であることがさらに好ましく、40kg/m3以下であることが特に好ましい。
発泡粒子20のかさ密度は、発泡粒子成形体の剛性をより高めるという観点からは、10kg/m3以上であることが好ましく、15kg/m3以上であることがより好ましく、18kg/m3以上であることがさらに好ましい。
【0059】
従来の融着層を有する発泡粒子は、かさ密度が低いもの(例えば、かさ密度が100kg/m3以下である発泡粒子)ほどブロッキングの問題が生じやすかった。
これに対し本発明の製造方法によれば、かさ密度の低い発泡粒子を得る場合であっても、融着層22を有しつつブロッキングの問題が抑制された発泡粒子20を製造することができる。その結果、融着性及び表面性に優れると共に軽量化が図られた発泡粒子成形体を提供可能である。
【0060】
かさ密度の測定方法:
上述する発泡粒子のかさ密度は、以下の方法により測定される。まず、測定に供する発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境中で24時間以上放置する。このようにして得られた重量W(g)の発泡粒子群をメスシリンダー内に充填し、メスシリンダー底面で床面を数度、軽く叩くことにより、メスシリンダー内の発泡粒子群の充填高さを安定させる。メスシリンダーの目盛りが指す発泡粒子群のかさ体積V(L)を読み取り、発泡粒子群の重量Wを発泡粒子群のかさ体積Vで除す(W/V)。これにより求められる値をkg/m3に単位換算することにより、発泡粒子のかさ密度(kg/m3)を得ることができる。
【0061】
[ポリプロピレン系樹脂発泡粒子]
次に本発明のポリプロピレン樹脂発泡粒子について説明する。本発明のポリプロピレン樹脂発泡粒子の製造方法は限定されないが、上述する本発明の製造方法により容易に製造することができる。本発明のポリプロピレン樹脂発泡粒子は、表面に融着層22を有する発泡粒子20であって、融着層22がカーボンブラック及びNOR型ヒンダードアミンを含み、融着層22中のカーボンブラックの配合割合が0.5重量%以上5重量%以下であり、融着層中のヒンダードアミンの配合割合が0.03重量%以上0.5重量%以下である。
図1の下段に示す発泡粒子20は、本発明のポリプロピレン樹脂発泡粒子として理解される。
【0062】
上述する本発明の発泡粒子20は、カーボンブラック及びNOR型ヒンダードアミンを所定の範囲の配合割合で含む融着層22を備えるため、ブロッキングの問題および付着物の蓄積の問題が良好に抑制される。そのため、本発明の発泡粒子20は型内成形性が良好であり、かつ発泡粒子20を用いて型内成形された発泡粒子成形体は、融着性および表面性に優れる。
なお、発泡粒子20における融着層22に配合されるカーボンブラック及びNOR型ヒンダードアミンとしては、前述した製造方法におけるカーボンブラック及びNOR型ヒンダードアミンの記載を適宜参照することができる。
【0063】
発泡粒子20の融着層22中のカーボンブラックの配合割合:
型内成形時における成形型への融着層22の付着を抑制しやすく、かつ、色調のむらの発生を抑制して良好な外観を有する発泡粒子成形体を提供しやすくするという観点から、融着層22におけるカーボンブラックの配合割合は、1.0重量%以上であることが好ましく、1.5重量%以上であることがより好ましく、2.0重量%以上であることがさらに好ましい。一方、発泡粒子20の型内成形性を高めると共に、得られる発泡粒子成形体を燃えにくくするという観点から、融着層22におけるカーボンブラックの配合割合は、4.0重量%以下であることが好ましく、3.5重量%以下であることがより好ましく、3.0重量%以下であることがさらに好ましい。
【0064】
発泡粒子20の融着層22中のNOR型ヒンダードアミンの配合割合:
発泡粒子20同士のブロッキングがより良好に抑制されると共に、カーボンブラックを含んでいても、得られる発泡粒子成形体を燃えにくくするという観点から、融着層22中のNOR型ヒンダードアミンの配合割合は、0.05重量%以上であることが好ましく、0.06重量%以上であることがさらに好ましい。一方、発泡粒子20の型内成形性を高めるという観点から、融着層22中のNOR型ヒンダードアミンの配合割合は、0.3重量%以下であることが好ましく、0.2重量%以下であることがより好ましい。
【0065】
発泡粒子20中のカーボンブラックの配合割合:
発泡粒子20を用いて型内成形された発泡粒子成形体に良好な黒色の外観を付与するという観点からは、発泡粒子20におけるカーボンブラックの配合割合は、0.5重量%以上であることが好ましく、1.0重量%以上であることがより好ましく、1.5重量%以上であることがさらに好ましく、2.0重量%以上であることが特に好ましい。
一方、発泡粒子20を用いて型内成形された発泡粒子成形体の難燃性が損なわれにくいという観点から、発泡粒子20におけるカーボンブラックの配合割合は、5.0重量%以下であることが好ましく、4.0重量%以下であることがより好ましく、3.5重量%以下であることがさらに好ましく、3.0重量%以下であることが特に好ましい。
【0066】
発泡粒子20中のNOR型ヒンダードアミンの配合割合:
カーボンブラックを含んでいても、得られる発泡粒子成形体の難燃性が損なわれないという観点から、発泡粒子20におけるNOR型ヒンダードアミンの配合割合は、0.03重量%以上であることが好ましく、0.05重量%以上であることがより好ましく、0.06重量%以上であることがさらに好ましい。
一方、得られる発泡粒子成形体の外観特性を高めるという観点から、発泡粒子20におけるNOR型ヒンダードアミンの配合割合は、0.4重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以下であることがより好ましく、0.2重量%以下であることがさらに好ましい。
【0067】
発泡粒子20の融着層22におけるカーボンブラックの配合割合は、発泡粒子20の製造に用いられる樹脂粒子10の融着層12におけるカーボンブラックの配合割合と同程度の量となる。また発泡粒子20におけるカーボンブラックの配合割合は、発泡粒子20の製造に用いられる樹脂粒子10におけるカーボンブラックの配合割合と同程度の量となる。そのため、融着層22あるいは発泡粒子20におけるカーボンブラックの配合割合は、樹脂粒子10の製造に用いた材料から適宜算出することができる。
なお、融着層22あるいは発泡粒子20中のカーボンブラックの配合割合を、融着層22から切り出された試験片あるいは発泡粒子20から直接測定してもよい。測定方法としては、熱重量示差熱分析装置(つまり、TG-DTA)を用いて、上記試験片又は発泡粒子20に対して、JIS K7120:1987年に基づいた測定を行い、得られるTG曲線における400℃から1000℃までの質量減少率に基づいて、含有されるカーボンブラックの配合割合を求めることができる。
【0068】
発泡粒子20の融着層22または発泡粒子20におけるNOR型ヒンダードアミンの配合割合は、例えば、発泡粒子20を製造するために用いた樹脂粒子10の製造に用いられた材料の配合割合から適宜算出することができる。
具体的には、樹脂粒子10の製造における、樹脂粒子10の融着層12へのNOR型ヒンダードアミンの配合割合から、発泡粒子20の融着層22におけるNOR型ヒンダードアミンの配合割合を算出することができる。
また樹脂粒子10の製造における、樹脂粒子10の芯層11と樹脂粒子10の融着層12との重量比、樹脂粒子10の芯層11へのNOR型ヒンダードアミンの配合割合、及び樹脂粒子10の融着層12へのNOR型ヒンダードアミンの配合割合の関係から、発泡粒子20中のNOR型ヒンダードアミンの配合割合を算出することができる。
また別の方法として、融着層22あるいは発泡粒子20中のNOR型ヒンダードアミンの配合割合を、融着層22から切り出された試験片あるいは発泡粒子20から直接測定してもよい。測定方法は特に限定されないが、例えば上記試験片又は発泡粒子20を、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)等に供することにより、含有されるNOR型ヒンダード
アミンの配合割合を求めることができる。
なお、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)により、NOR型ヒンダードアミンの配合
割合を求める場合、例えば以下の方法を採用することができる。
まず、上記試験片あるいは冷凍粉砕した発泡粒子に対して、溶媒としてクロロホルムを用いてソックスレー抽出を行い、クロロホルム不溶部である重合体成分などを除去する。次いで、ソックスレー抽出で得られたクロロホルム可溶部をアセトンと混合し、アセトン不溶部を除去する。アセトン可溶部から溶媒を除去して得られた固体を測定試料として用い、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)による測定を行う。この測定結果と、濃度既知
の標準品(内部標準試料)の測定結果との関係から、融着層22あるいは発泡粒子20中のNOR型ヒンダードアミンの配合割合を求めることができる。
プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)による測定を行うための装置としては、たとえば
、日本電子株式会社製AL-400型を使用することができる。また、溶媒:CDCl3
、内部標準試料:テトラクロロエタン(TCE)という測定条件を採用することができる。
【0069】
尚、発泡粒子20の表面に存在する融着層22は、樹脂粒子10における融着層12に由来する層である。融着層22は、発泡層であってもよいし、非発泡層であってもよい。また、融着層22は部分的に発泡していてもよい。
また、発泡粒子20中の融着層22の割合は、0.5重量%以上10重量%以下であることが好ましく、1重量%以上8重量%以下であることがより好ましく、2重量%以上6重量%以下であることがさらに好ましい。発泡粒子20の全重量における融着層22の重量の割合が上記範囲であることにより、物性を損なうことなく、融着性に優れた成形体を得ることができると共に、本発明の所期の問題を解決することが可能である。
なお、発泡粒子20中の融着層22の割合は、発泡粒子20を製造するために用いた樹脂粒子10の製造に用いられた材料の配合割合から適宜算出することができる。
【0070】
本発明の発泡粒子20は、上述する本発明の製造方法により製造することができる。そのため上述する本発明の製造方法に関する説明は、適宜、本発明の発泡粒子20の説明として参照される。
【0071】
[発泡粒子成形体]
本発明の発泡粒子20を用いて型内成形することにより、発泡粒子成形体を得ることができる。例えば発泡粒子成形体は、次のようにして製造される。まず、所望する発泡粒子成形体の形状に対応したキャビティを有する成形型内に発泡粒子20を充填し、スチームなどの加熱媒体により成形型内に充填された発泡粒子20を加熱する。キャビティ内の発泡粒子20は、加熱によって軟化し、相互に融着する。これにより、発泡粒子20同士が一体化し、キャビティの形状に応じた発泡粒子成形体が得られる。
発泡粒子20を用いて製造された発泡粒子成形体は、本発明の効果を享受し、融着性及び表面特性に優れ、また見掛け密度を適宜の範囲に調整可能である。そのため、梱包材や自動車部材、建築材料などの種々の用途に好適に使用することができる。
【0072】
見掛け密度:
発泡粒子20を用いて得られる発泡粒子成形体の見掛け密度は特に限定されないが、軽量性と剛性等の機械的物性とのバランスに優れる観点からは、10kg/m3以上500kg/m3以下であることが好ましく、15kg/m3以上100kg/m3以下であることがより好ましい。発泡粒子成形体の見掛け密度は、発泡粒子成形体の重量を寸法に基づいて算出される体積で除することにより算出される。
【実施例】
【0073】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。尚、以下のとおり実施された各実施例及び各比較例に関し、発泡粒子のかさ密度等を測定すると共に、型内成形時の生産性評価、及び発泡粒子を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の成形体評価を行った。測定結果及び評価結果は、表1及び表2に示す。また上記かさ密度等の測定方法及び上記評価の方法は、後述する。表中、カーボンブラックはCBと記載する。
また、発泡粒子における融着層中のNOR型ヒンダードアミンの配合割合、及び発泡粒子における融着層中のカーボンブラックの配合割合は、樹脂粒子の製造に用いた各材料の配合割合から算出し表に示した。尚、発泡粒子中のNOR型ヒンダードアミンの配合割合および発泡粒子中のカーボンブラックの配合割合も、樹脂粒子の製造に用いた各材料の配合割合から適宜算出される。
【0074】
<実施例1>
(樹脂粒子の調製)
内径50mmの芯層形成用押出機、該芯層形成用押出機の下流側に付設された多層ストランド形成用ダイ及び内径30mmの被覆層形成用押出機を備える製造装置を準備した。なお、製造装置は、被覆層形成用押出機の下流側と、多層ストランド形成用ダイとが接続されており、ダイ内で各層を形成するための溶融混練物の積層が可能であると共に、共押出が可能な構成とした。
芯層を構成する基材樹脂として、プロピレン-エチレンランダム共重合体を用いた。上記プロピレン-エチレンランダム共重合体として、JIS K7121:1987年に基づいて測定された融点(融解ピーク温度)が143℃、JIS K7210-1:2014年に基づいて、230℃、荷重2.16kgの条件で測定されたメルトマスフローレイトが8g/10分であるポリプロピレン系樹脂を用いた。芯層を構成する芯層成形材料として、上述する基材樹脂に加え、気泡調整剤としてホウ酸亜鉛を芯層成形材料100重量部に対して0.1重量部用いると共に、カーボンブラック(ファーネスブラック)及びNOR型ヒンダードアミン(BASF社製、商品名NOR116(分子量2261))を表1に示す配合割合で用い、これらを芯層形成用押出機に供給し溶融混練した。
融着層を構成する基材樹脂として、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体を用いた。上記プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体として、JIS K7121:1987年に基づいて測定され融点(融解ピーク温度)が133℃、JIS K7210-1:2014年に基づいて、230℃、荷重2.16kgの条件で得られたメルトマスフローレイトが6g/10分であるポリプロピレン系樹脂を用いた。融着層を構成する融着層形成材料として、上記基材樹脂に加え、カーボンブラック(ファーネスブラック)、及びNOR型ヒンダードアミン(BASF社製、商品名NOR116(分子量2261))を表1に示す配合割合で用い、これらを被覆層形成用押出機に供給して溶融混練した。
上述のとおり溶融混練して得られた各層形成用の溶融混練物を、多層ストランド形成用ダイに導入してダイ内で合流させ、ダイの下流側に取り付けた口金の細孔から、2層構造(融着層/芯層構造)を有する多層ストランドを押出した。押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーにて切断し、1個当たりの平均重量が1.0mgの樹脂粒子を得た。
【0075】
(発泡粒子の調製)
得られた樹脂粒子1kgを、水性分散媒である水3Lと共に、内容量5Lの密閉容器内に供給した。また、樹脂粒子100重量部に対して、無機分散剤としてカオリン0.3重量部、界面活性剤(商品名:ネオゲン、第一工業製薬株式会社製、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.004重量部(有効成分として)をそれぞれ密閉容器内に添加した。
次いで、密閉容器内に発泡剤として二酸化炭素を圧入し、ゲージ圧で2.0MPa(G)となるまで加圧した。尚、(G)を付した圧力は、ゲージ圧、つまり、大気圧を基準とした圧力の値である。その後、密閉容器内を撹拌しながら2℃/分の昇温速度で、発泡温度(149.5℃)になるまで加熱昇温し、同温度で15分間保持した。これにより、得られる発泡粒子のDSC測定による吸熱曲線に高温ピークが現れるよう調整した。
その後、密閉容器の内容物(樹脂粒子及び水)を大気圧下に放出して、かさ密度60kg/m3の発泡粒子(一段発泡粒子)を得た。なお、上述する工程と同様の工程を数サイクル繰り返して後述する評価に供する発泡粒子を確保した。
【0076】
上述のとおり得た一段発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境に24時間放置して養生を行った。そして加圧可能な密閉容器に養生後の一段発泡粒子を充填し、当該密閉容器内の圧力を常圧から上昇させて発泡粒子を加圧した。発泡粒子を加圧した状態を所定時間維持して空気を発泡粒子の気泡内に含浸させた。その後、密閉容器から一段発泡粒子を取り出し、発泡粒子の気泡内の圧力が0.5MPa(G)である一段発泡粒子を得た。その後、この一段発泡粒子を二段発泡装置に供給した。該装置内にスチームを供給して一段発泡粒子を発泡させて、かさ密度27kg/m3の発泡粒子を得た。二段発泡により得られた当該発泡粒子を以下の測定や発泡粒子成形体の製造等に用いた。
【0077】
(発泡粒子のかさ密度)
測定に供する発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境中で24時間以上放置して養生した。養生後の発泡粒子群(重量W;30g)を、メスシリンダー内に充填し、メスシリンダー底面で床面を数度、軽く叩くことにより、メスシリンダー内の発泡粒子群の充填高さを安定させた。メスシリンダーの目盛りが指す発泡粒子群のかさ体積V(L)を読み取った。そして上記発泡粒子群の重量Wをかさ体積Vで除した(W/V)。これにより求められた値をkg/m3に単位換算することにより、発泡粒子のかさ密度(kg/m3)を算出した。
【0078】
(発泡粒子の全融解熱量及び高温ピーク熱量)
約2mgの発泡粒子を試験片とした。JIS K7122:1987年に記載されたプラスチックの転移熱測定方法に従って試験片を加熱溶融させ、この際のDSC曲線を得た。測定温度範囲は23℃から試験片の融解ピーク終了時よりも30℃高い温度までとし、加熱時の昇温速度は10℃/分とした。
このようにして得られたDSC曲線を
図2に示す。当該DSC曲線において、DSC曲線上における80℃に相当する点Iと、発泡粒子の融解終了温度に相当する点IIとを結ぶ直線を引いた。なお、融解終了温度は、高温ピークbにおける高温側の端点であり、DSC曲線における、高温ピークbと、高温ピークbよりも高温側のベースラインとの交点である。
図2に示すとおり、点Iと点IIとを結ぶ直線を引いた後、固有ピークaと高温ピークbとの間に存在する極大点IIIを通りグラフの縦軸に平行な直線と、点Iと点IIとを結んだ直線との交点をIVとした。
そして、点Iと点IVを結ぶ直線、点IIIと点IVとを結ぶ直線、および点Iと点IIIとを結ぶDSC曲線の面積を固有ピークaの面積とした。また点IVと点IIとを結ぶ直線、点IIIと点IVとを結ぶ直線、及び点IIIと点IIとを結ぶDSC曲線によって囲まれる部分(斜線部分)の面積を高温ピークbの面積とした。上述のとおり求めた固有ピークaの面積と高温ピークbの面積との合計から発泡粒子の全融解熱量を算出し、高温ピークbの面積から発泡粒子の高温ピーク熱量を算出とした。
【0079】
(発泡粒子成形体の製造)
得られた発泡粒子を、加圧可能な密閉容器に充填し、当該密閉容器内の圧力を常圧から上昇させて発泡粒子を加圧した。発泡粒子を加圧した状態を所定時間維持して空気を発泡粒子の気泡内に含浸させた。その後、密閉容器から発泡粒子を取り出し、発泡粒子の気泡内の圧力が0.1MPa(G)である発泡粒子を得た。この発泡粒子を、縦200mm×横150mm×高さ50mm、底壁及び側壁の厚みが10mmの箱状の成形体を成形可能な成形キャビティを有する成形型(金型)に充填して以下の加熱方法で加熱を行った。加熱方法は、金型の両面に設けられたドレン弁を開放した状態で当該金型にスチームを供給して予備加熱(排気工程)を行った。その後、金型の一方側からスチームを供給して加熱し、さらに金型の他方側からスチームを供給して加熱を行った。続いて、0.26MPa(G)の成形加熱スチーム圧力で、金型の両側からスチームを供給して加熱した。加熱終了後、放圧し、金型の成形面に生じる圧力が0.04MPa(G)になるまで水冷したのち、金型を開放し発泡粒子成形体を取り出した。得られた発泡粒子成形体を80℃のオーブンにて12時間養生した後、室温まで徐冷して上部開口の箱状の発泡粒子成形体を得た。当該発泡粒子成形体は、外寸が縦200mm×横150mm×高さ50mmであり、底壁及び側壁の厚みが10mmの上部開口の箱体であり、縦200mm×横150mmの面を下面としたときに、上面側が開口する形状である。
【0080】
<実施例2>
融着層形成材料に添加するNOR型ヒンダードアミンの配合割合を表1に示す数値に替えたこと以外は実施例1と同様の操作により樹脂粒子を調製した。この樹脂粒子を用い、実施例1と同様の方法で発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
【0081】
<実施例3>
融着層形成材料に添加するNOR型ヒンダードアミン及びカーボンブラックの配合割合を表1に示す数値に替えたこと以外は実施例1と同様の操作により樹脂粒子を調製した。この樹脂粒子を用い、実施例1と同様の方法で発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
【0082】
<実施例4,5>
芯層形成材料および融着層形成材料に添加するNOR型ヒンダードアミンの種類を替えたこと以外は実施例1と同様の操作により樹脂粒子を調製した。この樹脂粒子を用い、実施例1と同様の方法で発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
なお、NOR型ヒンダードアミンとして、実施例4では「株式会社ADEKA製、商品名FP-T80(分子量681)」を用い、実施例5では「BASF社製、商品名Tinuvin123(分子量737)」を用いた。
【0083】
<実施例6>
実施例1と同様に発泡粒子(一段発泡粒子)を得た。かかる発泡粒子を用い、実施例1と同様の手順にて、表1に示すかさ密度となるよう二段発泡を行い、実施例1とは発泡倍率の異なる発泡粒子を調製した。この発泡粒子を用い、実施例1と同様の方法で発泡粒子成形体を得た。
【0084】
いずれの実施例においても、ブロッキングの問題および付着物の蓄積の問題が生じず、表面性に優れた発泡粒子成形体が製造された。またより分子量の小さいNOR型ヒンダードアミンを用いた実施例4、5では、色調のむらが良好に抑制され、特に外観が優れる発泡粒子成形体が製造された。
【0085】
<比較例1>
融着層形成材料にNOR型ヒンダードアミンとカーボンブラックを添加しなかったこと以外は実施例1と同様の操作により樹脂粒子を調製した。この樹脂粒子を用い、実施例1と同様の方法で発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
比較例1において調製された樹脂粒子における融着層は、NOR型ヒンダードアミンとカーボンブラックが添加されていないことから、これを用いて発泡工程を実施した際、発泡粒子同士のブロッキングが発生した。また比較例1において調製された発泡粒子を用いて同一金型で繰り返し型内成形を実施した際、融着層の一部が金型の内面に付着して蓄積した。その結果、得られた発泡粒子成形体の表面性が損なわれた。
【0086】
<比較例2>
融着層形成材料にNOR型ヒンダードアミンを添加せず、かつカーボンブラックの配合割合を4重量%にしたこと以外は実施例1と同様の操作により樹脂粒子を調製した。この樹脂粒子を用い、実施例1と同様の方法で発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
比較例2において調製された樹脂粒子における融着層は、NOR型ヒンダードアミンが添加されていないことから、これを用いて発泡工程を実施した際、発泡粒子同士のブロッキングが発生した。また比較例2において調製された発泡粒子を用いて同一金型で繰り返し型内成形を実施した際、融着層の一部が金型の内面に付着して蓄積した。その結果、得られた発泡粒子成形体の表面性が損なわれた。
【0087】
<比較例3>
融着層形成材料にカーボンブラックを添加しなかったこと以外は実施例1と同様の操作により樹脂粒子を調製した。この樹脂粒子を用い、実施例1と同様の方法で発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
比較例3において調整された樹脂粒子における融着層は、カーボンブラックが添加されていないことから、これを用いて調製された発泡粒子を用いて同一金型で繰り返し型内成形を実施した際、融着層の一部が金型の内面に付着して蓄積した。その結果、得られた発泡粒子成形体の表面性が損なわれた。
【0088】
<比較例4>
融着層形成材料に対するNOR型ヒンダードアミンの配合割合を表2に示す数値に替えたこと以外は実施例1と同様の操作により樹脂粒子を調製した。この樹脂粒子を用い、実施例1と同様の方法で発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
比較例4において調整された樹脂粒子における融着層は、本発明において特定されるNOR型ヒンダードアミンの配合割合の範囲を超えた。そのため、これを用いて調製された発泡粒子を用いて型内成形を実施して得られた発泡粒子成形体は融着性が不良であった。
【0089】
<比較例5,6>
融着層形成材料に対しNOR型ヒンダードアミン以外のヒンダードアミンを添加したこと以外は実施例1と同様の操作により樹脂粒子を調製した。この樹脂粒子を用い、実施例1と同様の方法で発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。なお、比較例5では、NR型ヒンダードアミンとして、「BASF社製、商品名Tinuvin622」を用い、比較例6では、NH型ヒンダードアミンとして、「BASF社製、商品名Tinuvin770」を用いた。
比較例5、6において調整された樹脂粒子における融着層は、NOR型ヒンダードアミンを含まず、当該NOR型ヒンダードアミン以外のヒンダードアミンを含む。そのため、これを用いて調製された発泡粒子を用いて同一金型で繰り返しに型内成形を実施した際、融着層の一部が金型の内面に付着して蓄積した。その結果、得られた発泡粒子成形体の表面性が損なわれた。
【0090】
<生産性評価>
発泡工程時のブロッキングの有無:
発泡粒子をφ6mm、ピッチ8mm、開口率35%のパンチングスクリーンで篩い、スクリーン上に残った発泡粒子の重量を測定した。篩にかけた全発泡粒子の重量に対する、スクリーン上に残った発泡粒子の重量の割合を算出し、以下の基準で評価した。
無:スクリーン上に残った発泡粒子の重量の割合が5重量%未満であった。
有:スクリーン上に残った発泡粒子の重量の割合が5重量%以上であった。
【0091】
型内成形を繰り返し行った際の、金型への樹脂付着の有無:
同一金型、同一成型条件で、30サイクル分の型内成形を連続的に行った。成形終了後の金型に樹脂が付着しているか否かを目視で観察し、以下の基準で評価した。
○(Good):付着が認められなかった。
×(Bad):部分的に付着が認められた。
【0092】
<成形体評価>
発泡粒子成形体の見掛け密度:
発泡粒子成形体の重量を、寸法に基づいて算出される体積で除した値を発泡粒子成形体の見掛け密度(kg/m3)とした。
【0093】
融着性:
発泡粒子成形体の融着性を、発泡粒子成形体を破断した際の破断面に露出した発泡粒子のうち、材料破壊した発泡粒子の数の割合に基づいて求めた。具体的には、まず、発泡粒子成形体から試験片(縦100mm×横100mm×厚み:成形体の厚み)を切り出し、カッターナイフで各試験片の厚み方向に約5mmの切り込みを入れた後、切り込み部から試験片を破断させた。次に、発泡粒子成形体の破断面に存在する発泡粒子の個数(n)と、材料破壊した発泡粒子の個数(b)を測定し、(b)と(n)の比(b/n)を百分率で表して融着率(%)とし、以下のとおり評価した。
〇(Good):融着率が80%以上。
△(Normal):融着率が80%未満40%以上。
×(Bad):融着率が40%未満。
【0094】
表面性:
30サイクル分の型内成形を連続的に行った。30サイクル目に得られた発泡粒子成形体の表面に設計上意図しないくぼみ(金型の付着物の影響により生じたと思われるくぼみ)及び発泡粒子間の間隙が見られるか否かを目視で観察し、以下の基準で評価した。
〇(Good):発泡粒子成形体の表面に、間隙及び/又はくぼみがほぼ見られない。
×(Bad):発泡粒子成形体の表面に、間隙及び/又はくぼみが散見される。
なお、上記×(Bad)評価において、上記くぼみや間隙は、主に、箱状の発泡粒子成形体の底壁部に生じていた。
【0095】
色調のむら(外観):
箱状の発泡粒子成形体の縦200mm×横150mmの面を下面とし、開口部が上面となるよう配置した際の横側面から、無作為に30か所の測定位置を設定した。分光測色計(コニカミノルタジャパン株式会社製「CM-5」)を用いてこれらの測定位置の色調を測定し、CIE 1976 L*a*b*色空間における色座標を取得した。なお、色調の取得は反射測定で行い、測定径はφ8mmとし、測定方式はSCE方式とした。前述した30か所の測定位置において得られた色座標におけるL*値の最大値と最小値との差を以下の基準で評価した。
◎(Very Good):L*値の最大値と最小値との差が5未満。
〇(Normal):L*値の最大値と最小値との差が5以上。
なお、L*値は明るさの指標であり、値が大きくなるほど明るいことを示す。L*値の最大値と最小値との差が小さいほど明るさの差が小さく、色むらが小さいことを意味する。
また、各比較例における発泡粒子成形体は、いずれも融着性及び表面性の一方が不良であったため、色調のむらについては評価しなかった。
【0096】
【0097】
【0098】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)容器内の無機分散剤を含む水性媒体中に、ポリプロピレン系樹脂粒子を分散させる分散工程、
容器内で前記ポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程、及び
発泡剤を含む前記ポリプロピレン系樹脂粒子を水性媒体と共に容器から放出して発泡させる発泡工程を含むポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する方法であって、
前記ポリプロピレン系樹脂粒子が、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする芯層と、前記芯層を被覆する融着層とを有し、
前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融着層がカーボンブラック及びNOR型ヒンダードアミンを含み、
前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融着層中のカーボンブラックの配合割合が0.5重量%以上5重量%以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融着層中のNOR型ヒンダードアミンの配合割合が0.03重量%以上0.5重量%以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(2)前記ポリプロピレン系樹脂粒子の前記融着層中の、カーボンブラックの配合割合(重量%)に対する、NOR型ヒンダードアミンの配合割合(重量%)の比が0.01以上0.1以下である、上記(1)に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(3)前記ポリプロピレン系樹脂粒子中の前記融着層の割合が0.5重量%以上10重量%以下である、上記(1)又は(2)に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(4)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のかさ密度が、10kg/m3以上500kg/m3以下である、上記(1)から(3)のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(5)表面に融着層を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって
前記融着層がカーボンブラック及びNOR型ヒンダードアミンを含み、
前記融着層中のカーボンブラックの配合割合が0.5重量%以上5重量%以下であり、
前記融着層中のヒンダードアミンの配合割合が0.03重量%以上0.5重量%以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【符号の説明】
【0099】
10・・・ポリプロピレン系樹脂粒子
11・・・芯層
12・・・融着層
20・・・ポリプロピレン系樹脂発泡粒子
22・・・融着層