(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】電池用非水電解液及びリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20230719BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20230719BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230719BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230719BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230719BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/052
H01M4/525
H01M4/505
(21)【出願番号】P 2019225901
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】須黒 雅博
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄介
(72)【発明者】
【氏名】張 涵
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-066481(JP,A)
【文献】国際公開第2019/039346(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/053644(WO,A1)
【文献】特開2006-049152(JP,A)
【文献】特開2009-054288(JP,A)
【文献】国際公開第2014/088009(WO,A1)
【文献】特開2003-197253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 10/0568
H01M 10/052
H01M 4/525
H01M 4/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサフルオロリン酸リチウムを含む電解質と、
下記式(A1)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤Aと、
ビニレンカーボネートである添加剤Bと、
下記式(C1)で表される化合物及び下記式(C2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤Cと、
を含有する電池用非水電解液。
【化1】
〔式(A1)中、R
a1は、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
式(C1)中、R
c11~R
c14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(a)で表される基、又は式(b)で表される基を表す。式(a)及び式(b)において、*は、結合位置を表す。
式(C2)中、R
c21~R
c24は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のフッ化炭化水素基を表す。〕
【請求項2】
前記添加剤Aの含有量が、非水電解液の全量に対し、0.1質量%以上2.0質量%以下である請求項1に記載の電池用非水電解液。
【請求項3】
前記添加剤Bの含有量が、非水電解液の全量に対し、0.1質量%以上2.0質量%以下である請求項1又は請求項2に記載の電池用非水電解液。
【請求項4】
前記添加剤Cの含有量が、非水電解液の全量に対し、0.1質量%以上2.0質量%以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。
【請求項5】
前記電解質の濃度は、非水電解液の全量に対し、0.1mol/L以上3mol/L以下である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。
【請求項6】
正極活物質を含有する正極活物質層を含む正極と、
負極活物質を含有する負極活物質層を含む負極と、
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の電池用非水電解液と、
を備えるリチウムイオン二次電池。
【請求項7】
前記正極活物質はリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を含む請求項6に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
前記負極活物質は炭素材料を含む請求項6又は請求項7に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項9】
請求項6~請求項8のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池を充放電させて得られたリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池用非水電解液及びリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池は、携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器、或いは電気自動車や電力貯蔵用の電源として広く使用されている。特に最近では、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載可能な、高容量で高出力かつエネルギー密度の高い電池の要望が急拡大している。
リチウムイオン二次電池は、例えば、リチウムを吸蔵放出可能な材料を含有する正極及び負極、並びに、リチウム塩と非水溶媒とを含有する電池用非水電解液を含む。
正極に用いられる正極活物質としては、例えば、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiFePO4のようなリチウム金属酸化物が用いられる。
また、電池用非水電解液としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどのカーボネート類の混合溶媒(非水溶媒)に、LiPF6、LiBF4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2CF2CF3)2のようなLi電解質を混合した溶液が用いられている。
一方、負極に用いられる負極用活物質としては、金属リチウム、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物(金属単体、酸化物、リチウムとの合金など)や炭素材料が知られており、特にリチウムを吸蔵、放出が可能なコークス、人造黒鉛、天然黒鉛を採用したリチウムイオン二次電池が実用化されている。
【0003】
電池用非水電解液を含む電池(例えばリチウムイオン二次電池)の性能を改善するために、電池用非水電解液に対し、種々の添加剤を含有させることが行われている。
電池の充放電特性及び寿命特性を向上させることができる電池用非水電解液として、特定構造のスルトン化合物を含有する電池用非水電解液が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
また、電池の容量維持性能を改善しながら、かつ、電池の充電保存時における開放電圧の低下を抑制できる電池用非水電解液として、特定構造の環状硫酸エステル化合物を含有する電池用非水電解液が知られている(例えば、下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-087437号公報
【文献】国際公開2012/053644号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の電池用非水電解液及び電池に対し、保存後の電池抵抗を更に低減することが求められる場合がある。
従って、本開示の課題は、保存後の電池抵抗を低減できる電池用非水電解液、並びに、この電池用非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>
ヘキサフルオロリン酸リチウムを含む電解質と、下記式(A1)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤Aと、ビニレンカーボネートである添加剤Bと、下記式(C1)で表される化合物、及び下記式(C2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤Cと、
を含有する電池用非水電解液。
【0007】
【化1】
〔式(A1)中、R
a1は、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
式(C1)中、R
c11~R
c14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(a)で表される基、又は式(b)で表される基を表す。式(a)及び式(b)において、*は、結合位置を表す。
式(C2)中、R
c21~R
c24は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のフッ化炭化水素基を表す。〕
<2>
前記添加剤Aの含有量が、非水電解液の全量に対し、0.1質量%以上2.0質量%以下である<1>に記載の電池用非水電解液。
<3>
前記添加剤Bの含有量が、非水電解液の全量に対し、0.1質量%以上2.0質量%以下である<1>又は<2>に記載の電池用非水電解液。
<4>
前記添加剤Cの含有量が、非水電解液の全量に対し、0.1質量%以上2.0質量%以下である<1>~<3>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液。
<5>
前記電解質の濃度は、非水電解液の全量に対し、0.1mol/L以上3mol/L以下である<1>~<4>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液。
<6>
正極活物質を含有する正極活物質層を含む正極と、
負極活物質を含有する負極活物質層を含む負極と、
<1>~<5>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液と、
を備えるリチウムイオン二次電池。
<7>
前記正極活物質はリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を含む<6>に記載のリチウムイオン二次電池。
<8>
前記負極活物質は炭素材料を含む<6>又は<7>に記載のリチウムイオン二次電池。
<9>
<6>~<8>のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池を充放電させて得られたリチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、保存後の電池抵抗を低減できる電池用非水電解液、並びに、この電池用非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示のリチウムイオン二次電池の一例である、ラミネート型電池の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1に示すラミネート型電池に収容される積層型電極体の、厚さ方向の概略断面図である。
【
図3】本開示のリチウムイオン二次電池の別の一例である、コイン型電池の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0011】
〔電池用非水電解液〕
本開示の電池用非水電解液(以下、単に「非水電解液」ともいう)は、ヘキサフルオロリン酸リチウムを含む電解質と、下記式(A1)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤Aと、ビニレンカーボネートである添加剤Bと、下記式(C1)で表される化合物、及び下記式(C2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤Cと、を含有する。
本開示の非水電解液によれば、電池における保存後の電池抵抗を低減できる。
かかる効果が奏される理由は明らかではないが、以下のように推測される。
本開示の非水電解液は、添加剤A~添加剤Cを含んでおり、これら添加剤の組み合わせにより、保存後の電池特性が改善できると考えられる。
【0012】
<添加剤A>
添加剤Aは、下記式(A1)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0013】
【0014】
式(A1)中、Ra1は、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素オキシ基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
【0015】
Ra1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」は、無置換の炭素数1~6の炭化水素基を表す。
Ra1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」は、直鎖炭化水素基であっても分岐炭化水素基であっても環状炭化水素基であってもよい。
Ra1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」としては、アルキル基、アルケニル基、又はフェニル基が好ましく、アルキル基又はアルケニル基がより好ましく、アルキル基が更に好ましい。
Ra1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」の炭素数は、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0016】
Ra1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、3,3-ジメチルブチル基等のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、イソプロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基等のアルケニル基;等が挙げられる。
【0017】
Ra1で表される「炭素数1~6の炭化水素オキシ基」の構造中の「炭素数1~6の炭化水素基」の具体例及び好ましい態様は、前述した、Ra1で表される「炭素数1~6の炭化水素基」の具体例及び好ましい態様と同様である。
【0018】
Ra1で表される「炭素数1~6のフッ化炭化水素基」の具体例及び好ましい態様は、前述した、式(A1)中のRa1で表される「炭素数1~6のフッ化炭化水素基」の好ましい態様と同様である。
【0019】
式(A1)中、Ra1としては、炭素数1~6の炭化水素基(即ち、無置換の炭素数1~6の炭化水素基)が好ましく、炭素数1~6のアルキル基が特に好ましい。
【0020】
式(A1)で表される化合物としては、
メタンスルホニルフルオリド、エタンスルホニルフルオリド、プロパンスルホニルフルオリド、2-プロパンスルホニルフルオリド、ブタンスルホニルフルオリド、2-ブタンスルホニルフルオリド、ヘキサンスルホニルフルオリド、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド、パーフルオロエタンスルホニルフルオリド、パーフルオロプロパンスルホニルフルオリド、パーフルオロブタンスルホニルフルオリド、エテンスルホニルフルオリド、1-プロペン-1-スルホニルフルオリド、又は2-プロペン-1-スルホニルフルオリドが好ましく、
メタンスルホニルフルオリド、エタンスルホニルフルオリド、プロパンスルホニルフルオリド、2-プロパンスルホニルフルオリド、ブタンスルホニルフルオリド、2-ブタンスルホニルフルオリド、ヘキサンスルホニルフルオリド、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド、パーフルオロエタンスルホニルフルオリド、パーフルオロプロパンスルホニルフルオリド、又はパーフルオロブタンスルホニルフルオリドがより好ましく、
メタンスルホニルフルオリド、エタンスルホニルフルオリド、プロパンスルホニルフルオリド、2-プロパンスルホニルフルオリド、ブタンスルホニルフルオリド、2-ブタンスルホニルフルオリド、又はヘキサンスルホニルフルオリドが更に好ましく、
メタンスルホニルフルオリド、エタンスルホニルフルオリド、又はプロパンスルホニルフルオリドが更に好ましく、
メタンスルホニルフルオリドが特に好ましい。
【0021】
添加剤Aの含有量は、非水電解液の全量に対し、好ましくは0.01質量%~5質量%であり、より好ましくは0.05質量%~3質量%であり、更に好ましくは0.1質量%~2質量%であり、更に好ましくは0.1質量%~1質量%である。
【0022】
<添加剤B>
添加剤Bは、ビニレンカーボネート(以下、「VC」ともいう。)である。
【0023】
添加剤Bの含有量は、非水電解液の全量に対し、好ましくは0.01質量%~5質量%であり、より好ましくは0.05質量%~3質量%であり、更に好ましくは0.1質量%~2質量%であり、更に好ましくは0.1質量%~1質量%である。
【0024】
<添加剤C>
添加剤Cは、下記式(C1)で表される化合物、及び下記式(C2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0025】
式(C1)で表される化合物は以下のとおりである。
【0026】
【0027】
式(C1)中、Rc11~Rc14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(a)で表される基、又は式(b)で表される基を表す。式(a)及び式(b)において、*は、結合位置を表す。
【0028】
式(C1)中、Rc11~Rc14で表される炭素数1~6の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基が好ましく、アルキル基又はアルケニル基がより好ましく、アルキル基が特に好ましい。
式(C1)中、Rc11~Rc14で表される炭素数1~6の炭化水素基の炭素数としては、1又は2が好ましく、1が特に好ましい。
【0029】
式(C1)で表される化合物の具体例としては、下記式(C1-1)~下記式(C1-4)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(C1-1)~化合物(C1-4)ともいう)が挙げられるが、式(C1)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
これらのうち、化合物(C1-1)~化合物(C1-3)が特に好ましい。
【0030】
【0031】
式(C2)で表される化合物は以下のとおりである。
【0032】
【0033】
式(C2)中、Rc21~Rc24は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のフッ化炭化水素基を表す。
【0034】
式(C2)中、Rc21~Rc24は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のフッ化炭化水素基を表す。
【0035】
式(C2)中、Rc21~Rc24で表される炭素数1~3の炭化水素基は、直鎖の炭化水素基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有する炭化水素基であってもよい。
Rc21~Rc24で表される炭素数1~3の炭化水素基としては、アルキル基又はアリール基が好ましく、アルキル基が更に好ましい。
Rc21~Rc24で表される炭素数1~3の炭化水素基の炭素数としては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0036】
式(C2)中、Rc21~Rc24で表される炭素数1~3のフッ化炭化水素基は、直鎖のフッ化炭化水素基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有するフッ化炭化水素基であってもよい。
Rc21~Rc24で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基としては、フッ化アルキル基又はフッ化アリール基が好ましく、フッ化アルキル基が更に好ましい。
Rc21~Rc24で表される炭素数1~3のフッ化炭化水素基の炭素数としては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0037】
式(C2)で表される化合物の具体例としては、下記式(C2-1)~下記式(C2-21)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(C2-1)~化合物(C2-21)ともいう)が挙げられるが、式(C2)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
これらのうち、化合物(C2-1)が特に好ましい。
【0038】
【0039】
添加剤Cの含有量は、非水電解液の全量に対し、好ましくは0.01質量%~5質量%であり、より好ましくは0.05質量%~3質量%であり、更に好ましくは0.1質量%~2質量%であり、更に好ましくは0.1質量%~1質量%である。
【0040】
本開示の非水電解液は、後述する添加剤D~添加剤Hの少なくとも1種を含有してもよい。
【0041】
<添加剤D>
本開示の非水電解液は、式(D1)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤Dを含有してもよい。
【0042】
【0043】
式(D1)中、Rd11~Rd14は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
【0044】
式(D1)中、Rd11~Rd14で表される炭素数1~6の炭化水素基は、直鎖の炭化水素基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有する炭化水素基であってもよい。
Rd11~Rd14で表される炭素数1~6の炭化水素基としては、アルキル基又はアリール基が好ましく、アルキル基が更に好ましい。
【0045】
式(D1)中、Rd11~Rd14で表される炭素数1~6の炭化水素基の炭素数としては、1~3がより好ましく、1又は2が更に好ましく、1が特に好ましい。
【0046】
式(D1)中、Rd11~Rd14で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基は、直鎖のフッ化炭化水素基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有するフッ化炭化水素基であってもよい。
Rd11~Rd14で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基としては、フッ化アルキル基又はフッ化アリール基が好ましく、フッ化アルキル基が更に好ましい。
【0047】
式(D1)中、Rd11~Rd14で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の炭素数としては、1~3がより好ましく、1又は2が更に好ましく、1が特に好ましい。
【0048】
式(D1)で表される化合物の具体例としては、下記式(D1-1)~下記式(D1-9)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(D1-1)~化合物(D1-9)ともいう)が挙げられるが、式(D1)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
これらのうち、化合物(D1-1)又は化合物(D1-2)が特に好ましい。
【0049】
【0050】
本開示の非水電解液が添加剤Dを含有する場合、非水電解液の全量に対する添加剤Dの含有量としては、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.005質量%~5質量%がより好ましく、0.01質量%~2質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
【0051】
<添加剤E>
本開示の非水電解液は、下記式(E1)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤Eを含有してもよい。
【0052】
【0053】
式(E1)中、Re11~Re14は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。但し、Re11~Re14は、同時に水素原子となることはない。
【0054】
式(E1)中、Re11~Re14で表される炭素数1~6の炭化水素基の好ましい態様は、式(D1)中、Rd11~Rd14で表される炭素数1~6の炭化水素基と同様である。
但し、Re11~Re14で表される炭素数1~6の炭化水素基は、アルケニル基であることも好ましい。
Re11~Re14で表される炭素数1~6の炭化水素基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0055】
式(E1)中、Re11~Re14で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の好ましい態様は、式(D1)中、Rd11~Rd14で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の好ましい態様と同様である。
但し、Re11~Re14で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基は、フッ化アルケニル基であることも好ましい。
Re11~Re14で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0056】
式(E1)で表される化合物の具体例としては、下記式(E1-1)~下記式(E1-5)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(E1-1)~化合物(E1-5)ともいう)が挙げられるが、式(E1)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
これらのうち、化合物(E1-1)又は化合物(E1-2)が特に好ましい。
【0057】
【0058】
本開示の非水電解液が添加剤Eを含有する場合、非水電解液の全量に対する添加剤Eの含有量としては、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.005質量%~5質量%がより好ましく、0.01質量%~2質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
【0059】
<添加剤F>
本開示の非水電解液は、下記式(F1)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤Fを含有してもよい。
【0060】
【0061】
式(F1)中、Rf11~Rf13は、それぞれ独立に、フッ素原子又は-OLi基を表し、Rf11~Rf13の少なくとも1つが-OLi基である。
【0062】
式(F1)で表される化合物の具体例としては、下記式(F1-1)及び下記式(F1-2)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(F1-1)及び化合物(F1-2)ともいう)が挙げられるが、式(F1)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
【0063】
【0064】
本開示の非水電解液が添加剤Fを含有する場合、非水電解液の全量に対する添加剤Fの含有量としては、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.005質量%~5質量%がより好ましく、0.01質量%~2質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
【0065】
<添加剤G>
本開示の非水電解液は、下記式(G1)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤Gを含有してもよい。
【0066】
【0067】
式(G1)中、Rg11~Rg16は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のフッ化炭化水素基を表す。
【0068】
式(G1)中、Rg11~Rg16で表される炭素数1~3の炭化水素基の好ましい態様は、炭素数が1~3であることを除けば、式(D1)中、Rd11~Rd14で表される炭素数1~6の炭化水素基の好ましい態様と同様である。
Rg11~Rg16で表される炭素数1~3の炭化水素基の炭素数としては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0069】
式(G1)中、Rg11~Rg16で表される炭素数1~3のフッ化炭化水素基の好ましい態様は、炭素数が1~3であることを除けば、式(D1)中、Rd11~Rd14で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の好ましい態様と同様である。
Rg11~Rg16で表される炭素数1~3のフッ化炭化水素基の炭素数としては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0070】
式(G1)で表される化合物の具体例としては、下記式(G1-1)~下記式(G1-21)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(G1-1)~化合物(G1-21)ともいう)が挙げられるが、式(G1)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
これらのうち、化合物(G1-1)が特に好ましい。
【0071】
【0072】
本開示の非水電解液が添加剤Gを含有する場合、非水電解液の全量に対する添加剤Gの含有量としては、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.005質量%~5質量%がより好ましく、0.01質量%~2質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
【0073】
<添加剤H>
本開示の非水電解液は、下記式(H1)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤Hを含有してもよい。
【0074】
【0075】
式(H1)中、Mは、アルカリ金属を表し、Yは、遷移元素、又は周期律表の13族、14族もしくは15族元素を表し、bは1~3の整数、mは1~4の整数、nは0~8の整数、qは0又は1を表す。Rh11は、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のハロゲン化アルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリーレン基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、またqが1でmが2~4の場合にはm個のRh11はそれぞれが結合していてもよい。)を表し、Rh12は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン化アリール基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、また、nが2~8の場合はn個のRh12はそれぞれが結合して環を形成していてもよい。)、又は-X3Rh13を表す。X1、X2及びX3は、それぞれ独立に、O、SまたはNRh14を表し、Rh13およびRh14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリール基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、Rh13またはRh14が複数個存在する場合はそれぞれが結合して環を形成してもよい。)を表す。
【0076】
式(H1)において、Mは、アルカリ金属であり、Yは、遷移金属、又は周期表の13族、14族もしくは15族元素である。Yとしては、このうちAl、B、V、Ti、Si、Zr、Ge、Sn、Cu、Y、Zn、Ga、Nb、Ta、Bi、P、As、Sc、Hf又はSbであることが好ましく、Al、BまたはPであることがより好ましい。YがAl、BまたはPの場合には、アニオン化合物の合成が比較的容易になり、製造コストを抑えることができる。アニオンの価数およびカチオンの個数を表すbは1~3の整数であり、1であることが好ましい。bが3より大きい場合は、アニオン化合物の塩が混合有機溶媒に溶解しにくくなる傾向があるので好ましくない。また、定数m、nは、配位子の数に関係する値であり、Mの種類によって決まってくるものであるが、mは1~4の整数、nは0~8の整数である。定数qは、0または1である。qが0の場合には、キレートリングが五員環となり、qが1の場合にはキレートリングが六員環となる。
【0077】
Rh11は、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のハロゲン化アルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基又は炭素数6~20のハロゲン化アリーレン基を表す。これらのアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基又はハロゲン化アリーレン基はその構造中に置換基、ヘテロ原子を含んでいてもよい。具体的には、これらの基の水素原子の代わりに、ハロゲン原子、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホニル基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、アシル基、アミド基、又は水酸基を置換基として含んでいてもよい。また、これらの基の炭素元素の代わりに、窒素原子、硫黄原子、又は酸素原子が導入された構造であってもよい。また、qが1でmが2~4のときには、m個のRh11はそれぞれが結合していてもよい。そのような例としては、エチレンジアミン四酢酸のような配位子を挙げることができる。
【0078】
Rh12は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン化アリール基又は-X3Rh13(X3、Rh13については後述する。)を表す。
Rh12におけるこれらのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基又はハロゲン化アリール基は、Rh11と同様に、その構造中に置換基、ヘテロ原子を含んでいてもよく、また、nが2~8のときにはn個のR12は、それぞれ結合して環を形成してもよい。R92としては、電子吸引性の基が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。
【0079】
X1、X2及びX3は、それぞれ独立に、O、SまたはNRh14を表す。つまり、配位子はこれらヘテロ原子を介してYに結合することになる。
【0080】
Rh13及びRh14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素集6~20のハロゲン化アリール基を表す。これらのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、又はハロゲン化アリール基は、Rh11と同様に、その構造中に置換基、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、Rh13及びRh14は複数個存在する場合にはそれぞれが結合して環を形成してもよい。
【0081】
Mで表されるアルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。このうち、リチウムが特に好ましい。
nとしては、0~4の整数が好ましい。
【0082】
式(H1)で表される化合物としては、下記式(H1-1)で表される化合物、下記式(H1-2)で表される化合物、下記式(H1-3)で表される化合物、下記式(H1-4)で表される化合物、及び下記式(H1-5)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0083】
【0084】
式(H1-1)~式(H1-5)中、Mは、式(H1)におけるMと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0085】
式(H1)で表される化合物として、特に好ましくは、式(H1-1)で表される化合物であってMがリチウムである化合物、又は、式(H1-4)で表される化合物であってMがリチウムである化合物である。
【0086】
本開示の非水電解液が添加剤Hを含有する場合、非水電解液の全量に対する添加剤Hの含有量としては、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.005質量%~5質量%がより好ましく、0.01質量%~2質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
【0087】
<電解質>
本開示の非水電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(「LiPF6」ともいう。)を含む電解質を含有する。
電解質中に占めるLiPF6の比率は、好ましくは10質量%~100質量%、より好ましくは50質量%~100質量%、さらに好ましくは70質量%~100質量%である。
【0088】
本開示の非水電解液における電解質の濃度は、0.1mol/L~3mol/Lが好ましく、0.5mol/L~2mol/Lがより好ましい。
また、本開示の非水電解液におけるLiPF6の濃度は、0.1mol/L~3mol/Lが好ましく、0.5mol/L~2mol/Lがより好ましい。
【0089】
電解質は、LiPF6以外の化合物を含んでいてもよい。
LiPF6以外の化合物としては;
(C2H5)4NPF6、(C2H5)4NBF4、(C2H5)4NClO4、(C2H5)4NAsF6、(C2H5)4N2SiF6、(C2H5)4NOSO2CkF(2k+1)(k=1~8の整数)、(C2H5)4NPFn[CkF(2k+1)](6-n)(n=1~5の整数、k=1~8の整数)などのテトラアルキルアンモニウム塩;
LiBF4、LiClO4、LiAsF6、Li2SiF6、LiOSO2CkF(2k+1)(k=1~8の整数)、LiPFn[CkF(2k+1)](6-n)(n=1~5の整数、k=1~8の整数)、LiC(SO2R7)(SO2R8)(SO2R9)、LiN(SO2OR10)(SO2OR11)、LiN(SO2R12)(SO2R13)(ここでR7~R13は互いに同一でも異なっていてもよく、フッ素原子又は炭素数1~8のパーフルオロアルキル基である)等のリチウム塩(即ち、LiPF6以外のリチウム塩);
等が挙げられる。
【0090】
<非水溶媒>
本開示の非水電解液は、非水溶媒を含有し得る。
非水溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
非水溶媒としては、種々公知のものを適宜選択することができる。
非水溶媒としては、例えば、特開2017-45723号公報の段落0069~0087に記載の非水溶媒を用いることができる。
【0091】
非水溶媒は、環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物を含むことが好ましい。
この場合、非水溶媒に含まれる環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物は、それぞれ、1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
【0092】
環状カーボネート化合物としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート等が挙げられる。
これらのうち、誘電率が高い、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートが好適である。黒鉛を含む負極活物質を使用した電池の場合は、非水溶媒は、エチレンカーボネートを含むことがより好ましい。
【0093】
鎖状カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、エチルペンチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルヘプチルカーボネート、エチルヘプチルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、メチルヘキシルカーボネート、エチルヘキシルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、メチルオクチルカーボネート、エチルオクチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、等が挙げられる。
【0094】
環状カーボネートと鎖状カーボネートの組み合わせとして、具体的には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネートなどが挙げられる。
【0095】
環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物の混合割合は、質量比で表して、環状カーボネート化合物:鎖状カーボネート化合物が、例えば5:95~80:20、好ましくは10:90~70:30、更に好ましくは15:85~55:45である。このような比率にすることによって、非水電解液の粘度上昇を抑制し、電解質の解離度を高めることができるため、電池の充放電特性に関わる非水電解液の伝導度を高めることができる。また、電解質の溶解度をさらに高めることができる。よって、常温または低温での電気伝導性に優れた非水電解液とすることができるため、常温から低温での電池の負荷特性を改善することができる。
【0096】
非水溶媒は、環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物以外のその他の化合物を含んでいてもよい。
この場合、非水溶媒に含まれるその他の化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
その他の化合物としては、環状カルボン酸エステル化合物(例えばγブチロラクトン)、環状スルホン化合物、環状エーテル化合物、鎖状カルボン酸エステル化合物、鎖状エーテル化合物、鎖状リン酸エステル化合物、アミド化合物、鎖状カーバメート化合物、環状アミド化合物、環状ウレア化合物、ホウ素化合物、ポリエチレングリコール誘導体、等が挙げられる。
これらの化合物については、特開2017-45723号公報の段落0069~0087の記載を適宜参照できる。
【0097】
非水溶媒中に占める、環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物の割合は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上である。
非水溶媒中に占める、環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物の割合は、100質量%であってもよい。
【0098】
非水電解液中に占める非水溶媒の割合は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。
非水電解液中に占める非水溶媒の割合の上限は、他の成分(電解質、添加剤等)の含有量にもよるが、上限は、例えば99質量%であり、好ましくは97質量%であり、更に好ましくは90質量%である。
【0099】
〔リチウムイオン二次電池〕
本開示のリチウムイオン二次電池は、
正極活物質を含有する正極活物質層を含む正極と、
負極活物質を含有する負極活物質層を含む負極と、
前述した本開示の電池用非水電解液と、
を備える。
本開示のリチウムイオン二次電池は、保存後の電池特性の低下が低減される。
かかる効果は、非水電解液中に含まれる添加剤A~添加剤Cの組み合わせによってもたらされる効果である。
【0100】
<正極>
正極は、正極活物質を含有する正極活物質層を含む。正極活物質として、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を含むことが好ましい。リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物としては、下記式(P1)で表される化合物が好ましい。
【0101】
LiNixMnyCozO2 … (P1)
〔式(P1)中、x、y及びzは、それぞれ独立に、0超1.00未満であり、かつ、x、y及びzの合計は、0.99~1.00である。〕
【0102】
式(P1)中、xは、好ましくは0.10~0.90であり、より好ましくは0.30~0.90であり、更に好ましくは0.50~0.90であり、更に好ましくは0.50超0.90以下であり、更に好ましくは0.55~0.90であり、更に好ましくは0.60~0.80である。
式(P1)中、yは、好ましくは0.10~0.90であり、より好ましくは0.10~0.50であり、更に好ましくは0.20~0.40である。
式(P1)中、zは、好ましくは0.10~0.90であり、より好ましくは0.10~0.50であり、更に好ましくは0.10~0.30である。
【0103】
式(P1)で表される化合物としては、LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、又はLiNi0.8Mn0.1Co0.1O2が好ましく、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、又はLiNi0.8Mn0.1Co0.1O2がより好ましく、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2又はLiNi0.8Mn0.1Co0.1O2が更に好ましい。
【0104】
正極は、正極活物質として、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物以外の成分を含んでいてもよい。
リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物以外の成分としては;
MoS2、TiS2、MnO2、V2O5などの遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物;
LiCoO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiNiXCo(1-X)O2〔0<X<1〕、LiFePO4、LiMnPO4などの、リチウムと遷移金属とからなる複合酸化物(但し、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を除く);
ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアセン、ジメルカプトチアジアゾール、ポリアニリン複合体などの導電性高分子材料;
等が挙げられる。
【0105】
正極活物質中に占めるリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物の割合は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
正極活物質中に占めるリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物の割合は、100質量%であってもよいし、100質量%未満であってもよい。
【0106】
正極は、好ましくは、正極活物質を含む正極活物質層を備える。
正極活物質層は、正極活物質以外の成分を含んでいてもよい。
正極活物質以外の成分としては、導電性助剤、バインダー、等が挙げられる。
導電性助剤としては、カーボンブラック(例えばアセチレンブラック)、アモルファスウィスカー、グラファイトなどの炭素材料が挙げられる。
バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0107】
正極活物質層は、正極活物質と溶媒とを含む正極合剤スラリーを、後述する正極集電体上に塗布し、乾燥させることによって形成され得る。
正極合剤スラリーは、正極活物質以外の成分(例えば、導電性助剤、バインダー等)を含んでいてもよい。
正極合剤スラリーにおける溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン等の有機溶剤が挙げられる。
【0108】
正極活物質層の全固形分に占める正極活物質の割合は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
正極活物質層の全固形分に占める正極活物質の割合は、100質量%であってもよい。
ここで、正極活物質層の全固形分とは、正極活物質層に溶媒が残存している場合には、正極活物質層から溶媒を除いた全量を意味し、正極活物質層に溶媒が残存していない場合には、正極活物質層の全量を意味する。
【0109】
正極活物質層の全固形分に占めるリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物の割合は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
正極活物質層の全固形分に占めるリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物の割合は、100質量%であってもよいし、100質量%未満であってもよい。
【0110】
正極は、好ましくは正極集電体を含む。
正極集電体の材質には特に制限はなく、公知のものを任意に用いることができる。
正極集電体の具体例としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、タンタルなどの金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパーなどの炭素材料;等が挙げられる。
【0111】
<負極>
負極は、負極活物質を含有する負極活物質層を含む。
負極活物質としては、例えば、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
リチウム(又はリチウムイオン)との合金化が可能な金属もしくは合金としては、シリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金などを挙げることができる。
リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物としては、チタン酸リチウム、酸化シリコン(好ましくはSiOx(Xは、0.5以上1.6未満を表す)、より好ましくはSiO)などを挙げることができる。
これらの中でも、リチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料が好ましい。
このような炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛材料(人造黒鉛、天然黒鉛)、非晶質炭素材料、等が挙げられる。上記炭素材料の形態は、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状のいずれの形態であってもよい。
【0112】
上記非晶質炭素材料として具体的には、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)などが例示される。
上記黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが用いられる。また、黒鉛材料としては、ホウ素を含有するものなども用いることができる。また、黒鉛材料としては、金、白金、銀、銅、スズなどの金属で被覆したもの、非晶質炭素で被覆したもの、非晶質炭素と黒鉛を混合したものも使用することができる。
【0113】
これらの炭素材料は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
上記炭素材料としては、特にX線解析で測定した(002)面の面間隔d(002)が0.340nm以下の炭素材料が好ましい。また、炭素材料としては、真密度が1.70g/cm3以上である黒鉛又はそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料も好ましい。以上のような炭素材料を使用すると、電池のエネルギー密度をより高くすることができる。
【0114】
負極活物質中に占める炭素材料(好ましくは黒鉛材料)の割合は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
負極活物質中に占める炭素材料(好ましくは黒鉛材料)の割合は、100質量%であってもよいし、100質量%未満であってもよい。
【0115】
負極は、好ましくは、負極活物質を含む負極活物質層を備える。
負極活物質層は、負極活物質以外の成分を含んでいてもよい。
負極活物質以外の成分としては、バインダーが挙げられる。
バインダーとしては、カルボキシメチルセルロース、SBRラテックス等が挙げられる。
【0116】
負極活物質層は、負極活物質と溶媒とを含む負極合剤スラリーを、後述する負極集電体上に塗布し、乾燥させることによって形成され得る。
負極合剤スラリーは、負極活物質以外の成分(例えばバインダー)を含んでいてもよい。
負極合剤スラリーにおける溶媒としては、例えば、水が挙げられる。
【0117】
負極活物質層の全固形分に占める負極活物質の割合は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
負極活物質層の全固形分に占める負極活物質の割合は、100質量%であってもよい。
ここで、負極活物質層の全固形分とは、負極活物質層に溶媒が残存している場合には、負極活物質層から溶媒を除いた全量を意味し、負極活物質層に溶媒が残存していない場合には、負極活物質層の全量を意味する。
【0118】
負極活物質層の全固形分に占める炭素材料(好ましくは黒鉛材料)の割合は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
負極活物質層の全固形分に占める炭素材料(好ましくは黒鉛材料)の割合は、100質量%であってもよい。
【0119】
負極は、好ましくは負極集電体を含む。
負極集電体の材質には特に制限はなく、公知のものを任意に用いることができる。
負極集電体の具体例としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられる。中でも、加工しやすさの点から特に銅が好ましい。
【0120】
<セパレータ>
本開示のリチウムイオン二次電池は、負極と正極との間にセパレータを備えることが好ましい。
セパレータは、正極と負極とを電気的に絶縁し且つリチウムイオンを透過する膜であって、多孔性膜や高分子電解質が例示される。
多孔性膜としては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等が例示される。
特に、多孔性ポリオレフィンが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、又は多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの多層フィルムを例示することができる。多孔性ポリオレフィンフィルム上には、熱安定性に優れる他の樹脂がコーティングされてもよい。
高分子電解質としては、リチウム塩を溶解した高分子や、電解液で膨潤させた高分子等が挙げられる。
本開示の非水電解液は、高分子を膨潤させて高分子電解質を得る目的で使用してもよい。
【0121】
<電池の構成>
本開示のリチウムイオン二次電池は、種々公知の形状をとることができ、円筒型、コイン型、角型、ラミネート型、フィルム型その他任意の形状に形成することができる。しかし、電池の基本構造は、形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更を施すことができる。
【0122】
本開示のリチウムイオン二次電池の例として、ラミネート型電池が挙げられる。
図1は、本開示のリチウムイオン二次電池の一例であるラミネート型電池の一例を示す概略斜視図であり、
図2は、
図1に示すラミネート型電池に収容される積層型電極体の厚さ方向の概略断面図である。
図1に示すラミネート型電池は、内部に非水電解液(
図1中では不図示)及び積層型電極体(
図1中では不図示)が収納され、且つ、周縁部が封止されることにより内部が密閉されたラミネート外装体1を備える。ラミネート外装体1としては、例えばアルミニウム製のラミネート外装体が用いられる。
ラミネート外装体1に収容される積層型電極体は、
図2に示されるように、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介して交互に積層されてなる積層体と、この積層体の周囲を囲むセパレータ8と、を備える。正極板5、負極板6、セパレータ7、及びセパレータ8には、本開示の非水電解液が含浸されている。正極板5は、正極集電体及び正極活物質層とを含む。負極板5は、負極集電体及び負極活物質層とを含む。
上記積層型電極体における複数の正極板5は、いずれも正極タブを介して正極端子2と電気的に接続されており(不図示)、この正極端子2の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(
図1)。ラミネート外装体1の周端部において正極端子2が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
同様に、上記積層型電極体における複数の負極板6は、いずれも負極タブを介して負極端子3と電気的に接続されており(不図示)、この負極端子3の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(
図1)。ラミネート外装体1の周端部において負極端子3が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
なお、上記一例に係るラミネート型電池では、正極板5の数が5枚、負極板6の数が6枚となっており、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介し、両側の最外層がいずれも負極板6となる配置で積層されている。しかし、ラミネート型電池における、正極板の数、負極板の数、及び配置については、この一例には限定されず、種々の変更がなされてもよいことは言うまでもない。
【0123】
本開示のリチウムイオン二次電池の別の一例として、コイン型電池も挙げられる。
図3は、本開示のリチウムイオン二次電池の別の一例であるコイン型電池の一例を示す概略斜視図である。
図3に示すコイン型電池では、円盤状負極12、非水電解液を注入したセパレータ15、円盤状正極11、必要に応じて、ステンレス、又はアルミニウムなどのスペーサー板17、18が、この順序に積層された状態で、正極缶13(以下、「電池缶」ともいう)と封口板14(以下、「電池缶蓋」ともいう)との間に収納される。正極缶13と封口板14とはガスケット16を介してかしめ密封する。
この一例では、セパレータ15に注入される非水電解液として、本開示の非水電解液を用いる。円盤状正極11は、正極集電体及び正極活物質層を含む。円盤状負極12は、負極集電体及び負極活物質層を含む。
【0124】
なお、本開示のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、本開示の非水電解液と、を備えるリチウムイオン二次電池(充放電前のリチウムイオン二次電池)を、充放電させて得られたリチウムイオン二次電池であってもよい。
即ち、本開示のリチウムイオン二次電池は、まず、正極と、負極と、本開示の非水電解液と、を備える充放電前のリチウムイオン二次電池を作製し、次いで、この充放電前のリチウムイオン二次電池を1回以上充放電させることによって作製されたリチウムイオン二次電池(充放電されたリチウムイオン二次電池)であってもよい。
【0125】
本開示のリチウムイオン二次電池の用途は特に限定されず、種々公知の用途に用いることができる。例えば、ノート型パソコン、モバイルパソコン、携帯電話、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、電子手帳、電卓、ラジオ、バックアップ電源用途、モーター、自動車、電気自動車、バイク、電動バイク、自転車、電動自転車、照明器具、ゲーム機、時計、電動工具、カメラ等、小型携帯機器、大型機器を問わず広く利用可能なものである。
【実施例】
【0126】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例によって制限されるものではない。
以下の実施例において、「添加量」は、最終的に得られる非水電解液中における含有量(即ち、最終的に得られる非水電解液全量に対する量)を意味する。
また、「wt%」は、質量%を意味する。
【0127】
〔実施例1〕
以下の手順にて、リチウムイオン二次電池であるコイン型電池(試験用電池)を作製した。
<負極の作製>
アモルファスコート天然黒鉛(97質量部)、カルボキシメチルセルロース(1質量部)及びSBRラテックス(2質量部)を水溶媒で混練してペースト状の負極合剤スラリーを調製した。
次に、この負極合剤スラリーを厚さ10μmの帯状銅箔製の負極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して負極集電体と負極活物質層からなるシート状の負極を得た。このときの負極活物質層の塗布密度は12mg/cm2であり、充填密度は1.5g/mlであった。
【0128】
<正極の作製>
LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2(90質量部)、アセチレンブラック(5質量部)及びポリフッ化ビニリデン(5質量部)を、N-メチルピロリジノンを溶媒として混練してペースト状の正極合剤スラリーを調製した。
次に、この正極合剤スラリーを厚さ20μmの帯状アルミ箔の正極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して正極集電体と正極活物質層とからなるシート状の正極を得た。このときの正極活物質層の塗布密度は22mg/cm2であり、充填密度は2.5g/mlであった。
【0129】
<非水電解液の調製>
非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とをそれぞれ30:35:35(質量比)の割合で混合し、混合溶媒を得た。
得られた混合溶媒中に、電解質としてのLiPF6を、最終的に調製される非水電解液中における電解質濃度が1モル/リットルとなるように溶解させた。
得られた溶液に対して、添加剤として、式(A1)で表される化合物の具体例であるMSF(メタンスルホニルフルオリド)、ビニレンカーボネート(VC)、及び式(C1-1)で表される化合物(以下、「化合物(C1-1)」ともいう)をそれぞれ、最終的に調製される非水電解液全質量に対する含有量が、0.5質量%、0.2質量%、及び0.5質量%となるように添加し、非水電解液を得た。
【0130】
<コイン型電池の作製>
上述の負極を直径14mmで、上述の正極を直径13mmで、それぞれ円盤状に打ち抜き、コイン状の負極及びコイン状の正極をそれぞれ得た。また、厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムを直径17mmの円盤状に打ち抜き、セパレータを得た。
得られたコイン状の負極、セパレータ、及びコイン状の正極を、この順序でステンレス製の電池缶(2032サイズ)内に積層し、次いで、この電池缶内に、上述の非水電解液20μLを注入し、セパレータと正極と負極とに含漬させた。
次に、正極上にアルミニウム製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)及びバネを乗せ、ポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶蓋をかしめることにより電池を密封した。
以上により、直径20mm、高さ3.2mmの
図3で示す構成を有するコイン型電池(即ち、コイン型のリチウムイオン二次電池)を得た。
【0131】
<評価>
得られたコイン型電池について、以下の評価を実施した。
評価結果を表1に示す。
表1では、各例で得られたコイン型電池の、初期抵抗(すなわち、保存前の抵抗)、保存後の抵抗、及び、保存時の抵抗上昇率(単に「上昇率」ともいう。)を示す。
【0132】
以下において、
「コンディショニング」とは、コイン型電池を、恒温槽内で25℃にて、2.75Vと4.25Vとの間で充放電を三回繰り返すことを意味し、
「保存」とは、コイン型電池を、恒温槽内で、60℃で10日間保存する操作を意味する。
以下、直流抵抗は25℃の温度条件にて測定した。
【0133】
(初期抵抗の測定)
コンディショニング後のコイン型電池のSOC(State of Charge)を50%に調整し、次いで、以下の方法により、コイン型電池の初期(即ち、保存前)のDCIR(Direct current internal resistance;直流抵抗)を測定した。
上述のSOC50%に調整されたコイン型電池を用い、放電レート0.2C~5CでCC放電をそれぞれ10秒間行った。
ここで、CC10s放電とは、定電流(Constant Current)にて10秒間放電することを意味する。
上記「放電レート0.2C~5CでCC放電」における、各電流値(即ち、放電レート0.2C~5Cに相当する電流値)と、各電流値に対応する各電圧低下量(=放電開始前の電圧-放電開始後10秒目の電圧)と、に基づき直流抵抗(Ω)を求めた。得られた直流抵抗(Ω)を、初期抵抗(即ち、保存前の抵抗)(Ω)とした。結果を表1に示す。
【0134】
(保存後の抵抗の測定)
コンディショニング後であってSOCを50%に調整する前のコイン型電池に対し、恒温槽内で充電レート0.2Cで4.25VまでCC-CV充電し、次いで上記条件の「保存」を施す操作を追加したこと以外は前述の初期抵抗の測定と同様にして、保存後の抵抗(Ω)を測定した。結果を表1に示す。
ここで、CC-CV充電とは、定電流定電圧(Constant Current - Constant Voltage)を意味する。
【0135】
(保存時の抵抗上昇率の算出)
下記式により、保存時の抵抗上昇率を算出した。
保存時の抵抗上昇率
=((保存後の抵抗(Ω)/初期抵抗(Ω))×100)
【0136】
表1に、保存時の抵抗上昇率(単に「上昇率」ともいう。)を示す。
ここで、上昇率とは、値が100を超える場合は、保存後の電池の直流抵抗は初期抵抗に比べて上昇したことを意味し、100未満の場合は、保存後の電池の直流抵抗は初期抵抗に比べて減少したことを意味する。
【0137】
〔実施例2~6、比較例1~5〕
非水電解液中に含まれる各添加剤の種類及び添加量の組み合わせを、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
なお、表1中、「-」は、該当する添加剤を含有しないことを意味する。
【0138】
【0139】
表1に示すように、非水電解液中に添加剤A~添加剤Cを全て含有する実施例1~6では、比較例1~5に比べ、保存による電池抵抗の上昇が低減(表1の「上昇率」を参照)されていた。