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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】温調装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/10 20060101AFI20230719BHJP
   F25D 17/02 20060101ALI20230719BHJP
   F25D 13/00 20060101ALI20230719BHJP
   F25D 9/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
F28D7/10 Z
F25D17/02 303
F25D13/00 B
F25D9/00 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019070764
(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公開番号】P2020169760
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】菊地 諒
(72)【発明者】
【氏名】天野 達也
(72)【発明者】
【氏名】徳井 春彦
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-501429(JP,A)
【文献】特開2002-168551(JP,A)
【文献】米国特許第06076597(US,A)
【文献】中国実用新案第203177697(CN,U)
【文献】特開2007-100967(JP,A)
【文献】特開2011-196581(JP,A)
【文献】米国特許第04895203(US,A)
【文献】米国特許第05309987(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 9/00
F25D 17/02
F25D 13/00
F28D 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸点が100℃よりも高い循環液を100℃よりも高い温度に調節して外部の負荷に供給し、該負荷を所定の高温に制御するための温調装置であって、
前記温調装置は、循環液を蓄えていて該循環液を加熱するヒータを備えたタンク部;該タンク部と循環液を前記負荷に対して送り出す循環液吐出口との間を結ぶ吐出流路;循環液を前記タンク部から該吐出流路へと送り出す循環ポンプ;前記負荷から戻された循環液を受け入れる循環液戻り口と前記タンク部との間を結ぶ戻り流路;前記循環液が流れる第1熱交換流路と、該第1熱交換流路の循環液を冷却する冷却液が流れる第2熱交換流路とを有する熱交換器;前記タンク部から循環液を該熱交換器の第1熱交換流路へと供給する冷却用循環往路;該熱交換器で冷却された循環液を前記第1熱交換流路から再びタンク部へと戻す冷却用循環復路;循環液を前記タンク部から前記冷却用循環往路へと送り出す冷却ポンプ;冷却液を前記熱交換器の第2熱交換流路へと導入する冷却液供給路;熱交換後の冷却液を該第2熱交換流路から導出する冷却液排出路;を有しており、
前記熱交換器において、第1熱交換流路は、軸に沿って螺旋状に延びる螺旋状流路部と、該螺旋状流路部の一端に連接されて循環液流入口を備えた流入側流路部と、該螺旋状流路部の他端に連接されて循環液流出口を備えた流出側流路部とによって形成されていて、前記第2熱交換流路は、中空のシェル内に形成された流路空間から成っており、
前記第1熱交換流路の螺旋状流路部が前記シェル内の第2熱交換流路に収容されると共に、前記流入側流路部及び流出側流路部が前記シェル外に導出されていて、前記循環液流入口に前記冷却用循環往路が接続され、前記循環液流出口に前記冷却用循環復路が接続されており、
前記冷却液供給路が、シェルに開設された冷却液流入口を通じて前記第2熱交換流路に連通され、前記冷却液排出路が同じくシェルに開設された冷却液流出口を通じて前記第2熱交換流路に連通され
金属管によって形成された前記第1熱交換流路の流入側流路部及び流出側流路部には、それぞれ金属製の筒状部材が外嵌合されており、
金属製の前記シェルには、前記流入側流路部及び流出側流路部をシェル外に導出すると共に、これら流路部に外嵌合された前記筒状部材をシェルに取り付ける一対の取付用開口部が開設されており、
それら取付用開口部において、前記各筒状部材の外周が前記シェルに対して溶接により固定されている、
ことを特徴とする温調装置。
【請求項2】
前記筒状部材が、前記取付用開口部に対して、前記シェルの外側から挿入した状態で取り付けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の温調装置。
【請求項3】
前記流入側流路部及び流出側流路部に外嵌合された筒状部材が、金属製の筒状ボディと、該筒状ボディの内周に配設されてこれら流路部の外周をシールする金属製の環状シール部材とを有しており、前記筒状ボディの外周が前記シェルに対して環状に溶接されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の温調装置。
【請求項4】
前記筒状ボディが、シェルに対して前記溶接により固定された固定用筒状部と、内周に前記環状シール部材が配設されたシール用筒状部とから形成されていて、該シール用筒状部が前記固定用筒状部に対して螺合により締結されており、
前記環状シール部材は、前記固定用筒状部側の先端縁が鋭角に形成されていて、該シール用筒状部を前記固定用筒状部に対して螺合した際に、環状シール部材の前記先端縁が、該シール用筒状部による押圧により、前記流入側流路部及び流出側流路部の各外周に圧接されて食い込んだ状態となるように構成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の温調装置。
【請求項5】
前記シェルにおいて、前記冷却液排出路が接続された冷却液流出口が、軸方向における前記流入側流路部が配された一端部に開設され、前記冷却液供給路が接続された冷却液流入口が、軸方向における前記流出側流路部が配された他端部に開設されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の温調装置。
【請求項6】
前記温調装置は、前記吐出流路に設けられて負荷に対して送り出される循環液の温度を測定する吐出側温度センサと、負荷に対して送り出す循環液の温度を設定する温度設定部を備え、前記吐出側温度センサの測定結果及び前記温度設定部で設定された温度に基づいて、前記循環ポンプ及び冷却ポンプの回転数を制御する制御部とを有しており、
前記循環ポンプが、前記タンク部内において循環液に浸漬されており、
前記制御部は、前記温度設定部で設定された循環液の温度が、所定の閾値温度よりも低い時には、前記循環ポンプの回転数を低回転数に維持し、前記所定の閾値温度よりも高い時には、前記循環ポンプの回転数を高回転数に維持するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の温調装置。
【請求項7】
さらに、前記制御部は、前記温度設定部により設定温度を上げた時には、前記冷却ポンプの回転数を一旦低下させた後に徐々に上昇させ、設定温度を下げた時には、前記冷却ポンプの回転数を一旦上昇させた後に徐々に降下させ、前記吐出側温度センサにより測定された循環液の温度が、前記設定温度と一致した状態においては、その時の回転数を維持するように構成されている、
ことを特徴とする請求項6に記載の温調装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記設定温度を上げる場合には、その設定温度が高いほど、前記冷却ポンプの回転数を一旦低下させた後に徐々に上昇させる時の該回転数変化の傾きをより小さくし、前記設定温度を下げる場合には、その設定温度が低いほど、前記冷却ポンプの回転数を一旦上昇させた後に徐々に降下させる時の該回転数変化の傾きをより小さくするように構成されている、
ことを特徴とする請求項7に記載の温調装置。
【請求項9】
前記冷却液の流路には、そこを流れる冷却液の圧力を調整する圧力調整部が接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の温調装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調節された循環液を負荷に供給することによって、該負荷の温度を所望の温度に制御する温調装置であって、特に、負荷の温度を高温に制御するのに適したものに関する。
【背景技術】
【0002】
温度調節された循環液を負荷に供給することによって、該負荷の温度を所望の温度に制御する温調装置は、例えば特許文献1や特許文献2に開示されているように、既に広く知られている。そして、これら特許文献に開示された温調装置においては、循環液を負荷との間で循環させる循環液回路と、この循環液を冷却する冷却回路とが並列的に設けられており、これら循環液回路と冷却回路とが、タンクやバルブを通じて互いに接続されている。
【0003】
ところで、半導体製造装置においては、例えば特許文献2に示すように、大気圧下における水の沸点(100℃)を大きく超える温度に負荷を制御することが必要とされる場合がある。そして、このような温調装置においては、循環液を温度調節するにあたって、循環液の温度変化幅が非常に大きくなったり、循環液と冷却液との温度差が非常に大きくなったり等するため、循環液を高温で使用することを考慮した設計が為されるべきである。
【0004】
しかしながら、従来の装置においては、このように循環液を高温で使用することに対して必ずしも十分な対策が施されているとはいえず、そのため、負荷を高温に制御するにあたり、循環液の高温での使用に特に適した設計の温調装置の開発が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-251486号公報
【文献】特開2015-148399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、負荷を高温に制御するにあたり、循環液の高温での使用に特に適した設計の温調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を解決するため、本発明に係る温調装置は、沸点が100℃よりも高い循環液を100℃よりも高い温度に調節して外部の負荷に供給し、該負荷を所定の高温に制御するための温調装置であって、前記温調装置は、循環液を蓄えていて該循環液を加熱するヒータを備えたタンク部;該タンク部と循環液を前記負荷に対して送り出す循環液吐出口との間を結ぶ吐出流路;循環液を前記タンク部から該吐出流路へと送り出す循環ポンプ;前記負荷から戻された循環液を受け入れる循環液戻り口と前記タンク部との間を結ぶ戻り流路;前記循環液が流れる第1熱交換流路と、該第1熱交換流路の循環液を冷却する冷却液が流れる第2熱交換流路とを有する熱交換器;前記タンク部から循環液を該熱交換器の第1熱交換流路へと供給する冷却用循環往路;該熱交換器で冷却された循環液を前記第1熱交換流路から再びタンク部へと戻す冷却用循環復路;循環液を前記タンク部から前記冷却用循環往路へと送り出す冷却ポンプ;冷却液を前記熱交換器の第2熱交換流路へと導入する冷却液供給路;熱交換後の冷却液を該第2熱交換流路から導出する冷却液排出路;を有しており、前記熱交換器において、第1熱交換流路は、軸に沿って螺旋状に延びる螺旋状流路部と、該螺旋状流路部の一端に連接されて循環液流入口を備えた流入側流路部と、該螺旋状流路部の他端に連接されて循環液流出口を備えた流出側流路部とによって形成されていて、前記第2熱交換流路は、中空のシェル内に形成された流路空間から成っており、前記第1熱交換流路の螺旋状流路部が前記シェル内の第2熱交換流路に収容されると共に、前記流入側流路部及び流出側流路部が前記シェル外に導出されていて、前記循環液流入口に前記冷却用循環往路が接続され、前記循環液流出口に前記冷却用循環復路が接続されており、前記冷却液供給路が、シェルに開設された冷却液流入口を通じて前記第2熱交換流路に連通され、前記冷却液排出路が同じくシェルに開設された冷却液流出口を通じて前記第2熱交換流路に連通され、金属管によって形成された前記第1熱交換流路の流入側流路部及び流出側流路部には、それぞれ金属製の筒状部材が外嵌合されており、
金属製の前記シェルには、前記流入側流路部及び流出側流路部をシェル外に導出すると共に、これら流路部に外嵌合された前記筒状部材をシェルに取り付ける一対の取付用開口部が開設されており、それら取付用開口部において、前記各筒状部材の外周が前記シェルに対して溶接により固定されていることを特徴としている。
【0008】
このとき、好ましくは、前記筒状部材が、前記取付用開口部に対して、前記シェルの外側から挿入した状態で取り付けられている。より好ましくは、前記流入側流路部及び流出側流路部に外嵌合された筒状部材が、金属製の筒状ボディと、該筒状ボディの内周に配設されてこれら流路部の外周をシールする金属製の環状シール部材とを有しており、前記筒状ボディの外周が前記シェルに対して環状に溶接されている。
【0009】
また、さらに好ましくは、前記筒状ボディが、シェルに対して前記溶接により固定された固定用筒状部と、内周に前記環状シール部材が配設されたシール用筒状部とから形成されていて、該シール用筒状部が前記固定用筒状部に対して螺合により締結されており、前記環状シール部材は、前記固定用筒状部側の先端縁が鋭角に形成されていて、該シール用筒状部を前記固定用筒状部に対して螺合した際に、環状シール部材の前記先端縁が、該シール用筒状部による押圧により、前記流入側流路部及び流出側流路部の各外周に圧接されて食い込んだ状態となるように構成されている。
また、本発明に係る温調装置において、好ましくは、前記シェルにおいて、前記冷却液排出路が接続された冷却液流出口が、軸方向における前記流入側流路部が配された一端部に開設され、前記冷却液供給路が接続された冷却液流入口が、軸方向における前記流出側流路部が配された他端部に開設されている。
【0010】
さらに、本発明に係る温調装置において、好ましくは、前記温調装置は、前記吐出流路に設けられて負荷に対して送り出される循環液の温度を測定する吐出側温度センサと、負荷に対して送り出す循環液の温度を設定する温度設定部を備え、前記吐出側温度センサの測定結果及び前記温度設定部で設定された温度に基づいて、前記循環ポンプ及び冷却ポンプの回転数を制御する制御部とを有しており、前記循環ポンプが、前記タンク部内において循環液に浸漬されており、前記制御部は、前記温度設定部で設定された循環液の温度が、所定の閾値温度よりも低い時には、前記循環ポンプの回転数を低回転数に維持し、前記所定の閾値温度よりも高い時には、前記循環ポンプの回転数を高回転数に維持するように構成されている。
【0011】
より好ましくは、前記制御部は、前記温度設定部により設定温度を上げた時には、前記冷却ポンプの回転数を一旦低下させた後に徐々に上昇させ、設定温度を下げた時には、前記冷却ポンプの回転数を一旦上昇させた後に徐々に降下させ、前記吐出側温度センサにより測定された循環液の温度が、前記設定温度と一致した状態においては、その時の回転数を維持するように構成されている。
また、さらに好ましくは、前記設定温度を上げる場合には、その設定温度が高いほど、前記冷却ポンプの回転数を一旦低下させた後に徐々に上昇させる時の該回転数変化の傾きをより小さくし、前記設定温度を下げる場合には、その設定温度が低いほど、前記冷却ポンプの回転数を一旦上昇させた後に徐々に降下させる時の該回転数変化の傾きをより小さくするように構成されている。
なお、前記冷却液の流路には、そこを流れる冷却液の圧力を調整する圧力調整部が接続されていても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、循環液を冷却するための熱交換器として、中空のシェル内の流路空間により形成されて冷却水が流れる第2熱交換流路内に、循環液が流れる第1熱交換流路の螺旋状流路部を収容したものを使用している。また、その好ましい形態では、前記第1熱交換流路における螺旋状流路部の両端に連接された流入側流路部及び流出側流路部にそれぞれ筒状部材を外嵌合し、該筒状部材を熱交換器のシェルに対して溶接により固定した。そのため、熱交換器の構造を簡易化して溶接部分を最小限に留めることができ、循環液と冷却液との温度差によって溶接部分にクラック等の不具合が生じるのを、可及的に抑制することができる。その結果、高温の循環液の使用に対する温調装置の耐久性を向上させることができる。
また、本発明の好ましい他の形態では、循環ポンプがタンク部内において循環液に浸漬されていて、循環液の設定温度が所定の閾値温度よりも高い時に、前記循環ポンプの回転数を高回転数に維持するため、循環液の温度を、循環ポンプの発熱をも利用して効率良く設定温度に上昇させ保持することができる。
【0013】
そして、本発明のより好ましい他の形態においては、循環液の設定温度を前記閾値温度よりも高い温度から低い温度に設定した時に、循環ポンプの回転数が低回転数に降下して維持されると同時に、冷却ポンプの回転数が上昇するため、循環ポンプからの発熱が抑制されると同時に、熱交換器による循環液の冷却が促進され、それにより、循環液の温度を効率良く設定温度に下降させることができる。
さらに、本発明の好ましいその他の形態においては、冷却液の流路に圧力調整部を接続したため、冷却液が、高温の循環液との間で熱交換を行った結果、たとえ沸騰等により膨張したとしても、この圧力調整部で冷却液の圧力を調整することにより、流路に破損等の不具合が生じるのを防止することができる。
このように、本発明及び本発明の各好ましい形態によれば、負荷を高温に制御するにあたり、高温の循環液の使用に特に適した設計の温調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る温調装置の概略的な回路図である。
図2】本発明に係る温調装置に使用した熱交換器の概略的な断面構造を示している。
図3図2の一点鎖線で囲んだ要部を拡大した部分断面図である。
図4】循環液の設定温度及び測定温度と、これら温度によって制御される循環ポンプ及び冷却ポンプの動作状態との相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~4は、本発明に係る温調装置の一実施形態を示すものである。この温調装置1は、沸点が100℃よりも高い循環液を100℃よりも高い温度に調節して、図示しない外部の負荷に供給することにより、該負荷を例えば100℃よりも高い所定の高温に制御するのに特に適したものである。
【0016】
前記温調装置1は、該装置1の外側を覆う筐体10と、循環液を収容して蓄えるタンク部2と、循環液をタンク部2から外部の負荷(図示略)に対して送り出し、該負荷から受け入れた循環液を再びタンク部2に戻す循環液吐出回路3と、タンク部2から送り出した循環液を熱交換器4で冷却して再びタンク部2に戻す循環液冷却回路5と、前記熱交換器4に対して冷却液を導入し、循環液と熱交換した後の冷却液を該熱交換器4から導出する冷却液供給回路6と、前記循環液吐出回路3及び循環液冷却回路5を流れる循環液の温度や流量等を制御する制御部7とを有している。
【0017】
そして、これらタンク部2、循環液吐出回路3、熱交換器4、循環液冷却回路5、冷却液供給回路6及び制御部7が1つの前記筐体10内に収容されている。そして、後に詳述するが、該筐体10の外周の側面には、前記循環液吐出回路3の循環液吐出口11及び循環液戻り口12と、前記冷却液供給回路6の冷却液供給口13及び冷却液排出口14とが開設されている。それにより、ユーザー側における温度制御の対象装置(負荷)や冷却液のチラー装置等の配管を、これら開口(ポート)11,12,13,14に対して接続することができるようなっている。
【0018】
また、前記筐体10の底部には、漏れた循環液や冷却液を受けるためのドレンパン15が配設されている。このドレンパン15には、前記制御部7に電気的に接続されたフロートタイプの漏水センサ16と、常時外部に開放されてドレンパン15に溜まった液を外部に排出するドレンポート17が設けられている。それより、例えば、装置1内で循環液や冷却液が大量に漏れて漏水センサ16がそれを検知した時に、制御部7によって報知したり装置1の電源をOFFにしたりすることができるようになっている。
【0019】
前記循環液としては、例えば、大気圧下における沸点が200℃前後かそれよりも高いフッ素化液等が好適に用いられる。また、前記冷却液としては、例えば、大気圧下における沸点が100℃の工業用水等が好適に用いられる。本実施形態においては、タンク部2内の160℃の循環液が循環液吐出回路3を通じて外部の負荷に対して送り出され、該負荷を温度制御(冷却)した後の170℃の循環液が該循環液吐出回路3を通じて再びタンク部2に戻されるようになっている。また、タンク部2内の160℃の循環液が循環液冷却回路5に送り出され、熱交換器4で100℃に冷却された後に再びタンク部2に戻されるようになっている。さらに、冷却液に関しては、冷却液供給回路6を通じて、25℃の冷却液が前記熱交換器4に供給され、前記循環液との熱交換により30℃に加熱されて該熱交換器4から排出されるようになっている。
【0020】
このように、この温調装置1においては、循環液吐出回路3と循環液冷却回路5とが、1つのタンク部2に対して並列的に接続されている。すなわち、温度制御対象としての負荷に対して該循環液を送り出し、その負荷との熱交換により加熱された循環液を受け入れて再びタンク部2に戻す循環液吐出回路3と、この循環液吐出回路3から負荷に対して送り出される循環液の温度を設定温度に調節するために、タンク部2内の循環液を前記熱交換器4へと導き、該熱交換器4において前記冷却液供給回路6の冷却液との熱交換により冷却された循環液を再びタンク部2内へと戻す循環液冷却回路5とが、タンク部2を中心として互いに独立して形成されている。
【0021】
より具体的に説明すると、前記タンク部2は、底面と側面と上面とによって区画されて内部に所定深さの循環液が貯められたメインタンク20と、同じく底面と側面と上面とによって区画されて前記メインタンク20よりも大きな容積を有し、該内部にメインタンク20全体が収容されると共に予備の循環液が貯められたサブタンク25とを有している。
【0022】
前記メインタンク20の内部には、所定深さまで貯められた循環液の水面よりも低い高さの第1仕切り壁21aが、タンク20の底面から立設され、また、タンク20における底面からの側面の高さよりも低い高さの第2仕切り壁21bが、タンク20の上面から垂下されている。それにより、メインタンク20の内部は、その一方の側面と第1仕切り壁21aとで仕切られた第1室20a、第1仕切り壁21aと第2仕切り壁21bとで仕切られた第2室20b、及び、第2仕切り壁21bと他方の側壁とで仕切られた第3室20cの3つの室に区画されている。
【0023】
このとき、前記メインタンク20内において、前記第1室20aと第2室20bは、前記第1仕切り壁21aの上端と該タンク20の上面との間に形成された空隙によって互いに連通され、前記第2室20bと第3室20cとは、前記第2仕切り壁21bの下端と該タンク20の底面との間に形成された空隙によって互いに連通されている。なお、メインタンク20の側面の上端部の一部はサブタンク25に対して開口していて、メインタンク20の最大容量を超過した循環液をサブタンク25内に排出することができるようになっている。また、前記第1仕切り壁21aの下端部には、図示しない連通口が開設されていて、それにより、後述するように、メインタンク20の底面に接続された冷却用循環復路51を通じてドレンコック53aから、メインタンク20内の循環液を外部に排出することができるようになっている。
【0024】
前記メインタンク20の第1室20aにおいて、前記第1仕切り壁21aの上端近傍からタンク20の底面近傍までの範囲には、前記制御部7によって制御されて循環液を加熱するヒータ22aが設けられている。また、同室20aにおいて、前記第1仕切り壁21aの上端部からタンク20に最大容量の循環液を収容したときの該循環液の液面(すなわち、循環液の最高液面)までの範囲には、制御部7に電気的に接続されたサーモスタット22bが設けられている。それにより、例えば、循環液の温度が所定の温度を超えた時に、ヒータ22aをOFFにすること等ができるようになっている。さらに、同室20aにおいて、前記循環液の最高液面とタンク20の上面との間には、同じく制御部7に電気的に接続された温度ヒューズ22cが設けられている。それにより、例えば、タンク20内の空気の温度(気温)が所定の温度より高くなった時に、循環液が過熱状態になっていると判断して温調装置1の電源をOFFにすること等ができるようになっている。
【0025】
前記メインタンク20の第2室20bには、その底部の循環液を前記循環液冷却回路5に対して送り出す浸漬型の冷却ポンプ23aが設けられている。さらに、同タンク20の第3室20cには、その底部の循環液を前記循環液吐出回路3に対して送り出す浸漬型の循環ポンプ24aが設けられている。そして、これらポンプも制御部7によって制御されるようになっている。なお、本実施形態においては、これら冷却ポンプ23a及び循環ポンプ24aとして、インバータ制御方式のポンプを用いている。また、該第3室の深さ方向中央よりも上部には、上下2つのレベルスイッチ24b,24cが設けられていて、これらスイッチも制御部7に電気的に接続されている。そして、これらスイッチ24b,24cでメインタンク20内の循環液の液位(液面)を検出することにより、後述の内部ポンプ26等の稼働状態を制御するようになっている。
【0026】
サブタンク25の内部には、その底部の循環液を前記メインタンク20内に汲み上げる浸漬型の前記内部ポンプ26と、該タンク25の深さ方向中央よりも上部に1つ、下部に上下2つの計3つのレベルスイッチ27a,27b,27cとが設けられている。そして、これらスイッチも制御部7に電気的に接続されている。また、該サブタンク25の外周には、該タンク25内の循環液量を筐体10の外部から目視にて確認可能とするレベルゲージ28と、該サブタンク25に循環液を筐体10の外部から補充するための循環液注入口25aとが設けられている。さらに、該サブタンク25にはドレン管29が接続されていて、その先端部が筐体10の外部に導出されている。このドレン管29の先端部にはドレンコック29aが設けられており、該ドレンコック29aを開操作することで該サブタンク25内の循環液を外部に排出することができるようになっている。そして、前記3つのレベルスイッチ27a,27b,27cでサブタンク25内の循環液の液位(液面)を検出することにより、前記ドレンコック29aを開いて液位を低くするよう促したり、前記循環液注入口25aから循環液をサブタンク25に補充するよう促したり等するようになっている。
【0027】
前記循環液吐出回路3は、前記タンク部2におけるメインタンク20の第3室20cと、筐体10の外部に開設されて循環液を負荷に対して送り出す循環液吐出口11との間を結ぶ吐出流路30、及び、筐体10の外部に開設されて前記負荷から戻された循環液を受け入れる循環液戻り口12と、前記タンク部2のメインタンク20との間を結ぶ戻り流路31を有している。そして、前記メインタンク20の第3室20cに設けられた前記循環ポンプ24aによって、メインタンク20内の循環液が前記吐出流路30及び循環液吐出口11を通じて負荷へと送り出され、負荷の温度を制御した循環液が前記循環液戻り口12及び戻り流路31を通じて再びメインタンク20に戻されるようになっている。
【0028】
このとき、図1に示すように、前記戻り流路31が、メインタンク20内で最も上流側に位置してヒータ22aが配設された第1室20aに接続されていると好ましい。そうすることにより、戻り流路31からメインタンク20に戻された循環液の温度がたとえ変化したとしても、該第1室20aに戻された循環液が、ヒータ22aや循環液冷却回路5で温度調節された上で前記吐出流路30へと送り出されるため、より正確な温度に調整された循環液を負荷へと供給することができる。
【0029】
前記吐出流路30には、第1圧力センサ32及び第1温度センサ(吐出側温度センサ)33が設けられ、前記戻り流路31には、第2圧力センサ34及び第2温度センサ35が設けられている。また、これら吐出流路30と戻り流路31との間はバイパス流路37によって常時接続されている。それにより、温調装置1に接続した負荷側において循環液の流れが止められたとしても、このバイパス流路37を通じて循環液をメインタンク20に戻して、その循環状態を維持することができる。さらに、前記圧力センサ32,34及び温度センサ33,35は、何れも制御部7に電気的に接続されている。それにより、例えば、これらセンサからの測定値に基づいて、前記ヒータや冷却ポンプや循環ポンプを適切に制御することができる。
【0030】
前記循環液冷却回路5は、前記タンク部2におけるメインタンク20の第2室20bと、前記熱交換器4の循環液流入口42a(図2)との間を結ぶ冷却用循環往路50、及び、該熱交換器4の循環液流出口43a(図2)と、タンク部2のメインタンク20との間を結ぶ冷却用循環復路51を有している。そして、前記メインタンク20の第2室20bに設けられた前記冷却ポンプ23aによって、メインタンク20内の循環液が前記冷却用循環往路50を通じて熱交換器4へと流入し、該熱交換器4で冷却されて該熱交換器4から流出した循環液が、前記冷却用循環復路51を通じて再びメインタンク20に戻されるようになっている。
【0031】
このとき、図1に示すように、前記冷却用循環復路51も、前記戻り流路31と同様に、メインタンク20内で最も上流側に位置してヒータ22aが配設された第1室20aに接続されていると好ましい。そうすることにより、冷却用循環復路51からメインタンク20に戻された循環液が、前記戻り流路31から戻された循環液と共に温度調節された上で、最も下流側に位置する第1室から前記吐出流路30へと送り出されるため、より正確な温度に調整された循環液を負荷へと供給することができる。
【0032】
前記冷却用循環往路50には、循環液冷却回路5用のドレン管52が接続されていて、その先端部が筐体10の外部に導出されている。このドレン管52の先端部にはドレンコック52aが設けられており、該ドレンコック52aを開操作することで該循環液冷却回路5内の循環液を外部に排出することができるようになっている。一方、冷却用循環復路51には、メインタンク20用のドレン管53が接続されていて、その先端部が筐体10の外部に導出されている。このドレン管53先端部にもドレンコック53aが設けられており、該ドレンコック53aを開操作することで該メインタンク20内の循環液を外部に排出することができるようになっている。また、該冷却用循環復路51には第3温度センサ54が設けられており、この温度センサ54も前記制御部7に電気的に接続されている。それにより、例えば、第3温度センサ54による循環液の温度に応じて、制御部7で冷却ポンプ23aの回転数を制御することができるようになっている。
【0033】
前記冷却液供給回路6は、筐体10の外部に開設されて冷却液を受け入れる冷却液供給口13と、前記熱交換器4の冷却液流入口48(図2)との間を結ぶ冷却液供給路60、及び、該熱交換器4の冷却液流出口49(図2)と、筐体10の外部に開設されて冷却液を排出する冷却液排出口14との間を結ぶ冷却液排出路61を有している。それにより、前記冷却液供給口13から供給された冷却液が、冷却液供給路60を通じて熱交換器4内に導入され、該熱交換器4で循環液を冷却して該熱交換器4から導出された冷却液が、前記冷却液排出路61を通じて前記冷却液排出口14から外部に排出されるようになっている。
【0034】
前記冷却液供給路60には、第4温度センサ62及び流量計63が設けられており、これら温度センサ62及び流量計63も前記制御部7に電気的に接続されている。それにより、例えば、熱交換器4に供給される冷却液の温度や流量の異常を検知して、アラーム等により報知することができるようになっている。
また、本実施形態においては、該冷却液供給路60に、冷却液の圧力を調整するための圧力調整部64が接続されている。そのため、冷却液が、熱交換器4で高温の循環液と熱交換を行った結果、たとえ沸騰等により膨張したとしても、この圧力調整部64で冷却液の圧力を調整することにより、流路に破損等の不具合が生じるのを防止することができる。なお、圧力調整部64は、冷却液排出路61側に設けられていても良い。
さらに、前記冷却液排出路61にも、制御部7に電気的に接続された第5温度センサ69が設けられていて、該制御部7で熱交換器4から排出された冷却液の温度を制御部7に表示したり等することができるようになっている。
【0035】
この圧力調整部64は、具体的には、圧力調整用のアキュムレータ本体65、該アキュムレータ本体65と冷却液供給路60との間に設けられた開閉弁66(二方弁)、並びに、これらアキュムレータ本体65と開閉弁66との間に設けられた圧力ゲージ67及び圧力開放弁(二方弁)68を有している。前記開閉弁66は、少なくとも温調装置1の稼働中には常時開いた状態とされ、圧力ゲージ67により冷却液の圧力を監視することができるようになっている。また、前記圧力開放弁68は、温調装置1の稼働中には常時閉じた状態とされる。そして、温調装置1のメンテナンス時などに、前記開閉弁66を閉じた上で前記圧力開放弁68を開くことにより、アキュムレータ本体65内の圧力を大気に開放することができるようになっている。なお、前記開閉弁66及び圧力開放弁68は、本実施形態のように手動で開閉するものであっても良いし、制御部7に電気的に接続して該制御部7で開閉制御するものであっても良い。
【0036】
前記熱交換器4は、図2に示すように、全体がステンレス等の金属材料から形成されて長手方向の軸Lに沿うように延びたもので、前記循環液冷却回路5の循環液が流れる第1熱交換流路40と、該第1熱交換流路40の循環液を冷却するための冷却液が流れる第2熱交換流路45とを含んでいる。
前記第1熱交換流路40は、1本の金属管を曲げ加工することにより形成されたもので、軸L周りに螺旋状を成して該軸L方向に延びた螺旋状流路部41と、該螺旋状流路部41の軸L方向の一端に連接されて、軸Lに沿って直線状に延びた流入側流路部42と、それとは反対側の他端に連接されて、軸Lに沿って直線状に延びた流出側流路部43とによって、継ぎ目なく一体に形成されている。
【0037】
そして、前記第1熱交換流路40において、前記流入側流路部42及び流出側流路部43における螺旋状流路部41と接続されたのとは逆側の各端(すなわち、軸L方向における該第1熱交換流路40の両端)には、循環液を熱交換器4に流入させる循環液流入口42a、及び、熱交換による冷却後の循環液を該熱交換器4から流出させる循環液流出口43aが開設されている。
【0038】
一方、前記第2熱交換流路45は中空の金属製シェル44内に形成された流路空間から成っており、該第2熱交換流路45内に、前記第1熱交換流路40の螺旋状流路部41が収容されている。前記シェル44は、軸L方向に延びた中空で円筒状の筒状側壁44aと、該筒状側壁44aの軸L方向の一端を閉塞する中空でドーム状の第1端部壁44bと、同じく他端を閉塞する中空でドーム状の第2端部壁44cとから一体に形成されている。すなわち、第1熱交換流路40の軸はシェル44の筒状側壁44aの軸とも一致している。
【0039】
前記シェル44の第1端部壁44b及び第2端部壁44cには、前記第1熱交換流路40の流入側流路部42及び流出側流路部43を、第2熱交換流路45からシェル44外に導出した状態で、該シェル44に対して固定するための第1取付用開口部46及び第2取付用開口部47が開設されている。このとき、上述したように、流入側流路部42及び流出側流路部43は、金属管によって継ぎ目なく一体に形成されている。また、該シェル44には、冷却液を前記第2熱交換流路45内へと導入するための冷却液流入口48と、前記第1熱交換流路40内の循環液と熱交換した後の冷却液を該第2熱交換流路45から導出するための冷却液流出口49とが開設されている。そして、前記冷却液供給路60及び冷却液排出路61が、これら冷却液流入口48及び冷却液流出口49を通じて第2熱交換流路45に連通されている。
【0040】
本実施形態では、前記冷却液流入口48は、シェル44における前記第1熱交換流路40の流出側流路部43が配された軸L方向一端部(具体的には、筒状側壁44aにおける第2端部壁44c側の端部)に、軸Lと直交する方向に開設されている。一方、前記冷却液流出口49は、シェル44における前記第1熱交換流路40の流入側流路部42が配された軸L方向他端部(具体的には、第1端部壁44bの中央部)に、軸L方向に開設されている。
【0041】
そして、前記流入側流路部42の循環液流入口42aに、前記冷却用循環往路50を形成する金属管の端部が溶接等の接続手段によって接続され、前記流出側流路部43の循環液流出口に、前記冷却用循環復路51を形成する金属管の端部が溶接等の接続手段によって接続されている。一方、前記冷却液流入口48及び冷却液流出口49には、前記冷却液供給路60及び冷却液排出路61を形成する配管の端部が、継手や螺合等の接続手段によって接続されている。
【0042】
ところで、前記第1及び第2取付用開口部46,47の内径は、前記第1熱交換流路40の流入側流路部42及び流出側流路部43の外径よりも大きく形成されている。また、これら流入側流路部42及び流出側流路部43の外周には、ステンレス等の金属材料から成る中空の筒状部材70,70が液密に外嵌合されて固定されている。そして、その筒状部材70,70を第1及び第2取付用開口部46,47内に挿入した状態で、該筒状部材70,70の外周がシェル44に対して溶接W,Wされている。すなわち、前記各流路部42,43は、前記筒状部材70,70を介在させた状態でシェル44に対して固定されている。
【0043】
このように、熱交換器4として、中空のシェル44内に形成された第2熱交換流路(流路空間)45に、第1熱交換流路40の螺旋状流路部41を収容したものを使用しているため、熱交換器4の構造を簡易化して溶接部分を最小限に留めることができる。しかも、高温の循環液が流れる第1熱交換流路を形成する金属管を、低温の冷却液が流れる第2熱交換流路を形成するシェル44に対して直接的に溶接で固定していない。そのため、高温の循環液を冷却する場合であっても、循環液と冷却液との温度差によって熱交換器4の溶接部分にクラック等の不具合が生じるのを、可及的に抑制することができ、その結果、高温の循環液の使用に対する温調装置1の耐久性を向上させることができる。
【0044】
次に、図3に基づいて、前記筒状部材70についてより具体的に説明する。該筒状部材70は、中空で両端が開口した金属製の筒状ボディ71と、前記流入側流路部42及び流出側流路部43を形成する金属管の外周とボディ71の内周面との間を液密にシールすると共に、ボディ71をこれら流路部42,43に対して固定する金属製のシール部材72とを有している。そして、前記各流路部42,43に固定されたボディ71の一部が、前記シェル44の外部から第1及び第2取付用開口部46,47を通じてシェル44内に挿入された状態で、該ボディの外周が、該開口部46,47において、シェル44に対して環状かつ連続的に溶接W,Wされている。
【0045】
前記ボディ71は、前記溶Wでシェル44に対して固定された固定用筒状部73と、内周に前記シール部材72が配設されたシール用筒状部74とを互いに結合することによって形成されている。前記固定用筒状部73は、シェル44の外部に配された端部に雄ネジ部75を一体に有している。そして、該雄ネジ部75の先端部の内周には、該雄ネジ部75の先端に向けて内径をリニアに拡大させる傾斜面76が形成されている。一方、前記シール用筒状部74は、前記固定用筒状部73側の端部の内周に雌ネジ部77を有している。そして、該シール用筒状部74の内周における雌ネジ部77よりも奥側には、該雌ネジ部77側に向けて内径をステップ状に拡大させる段部78が形成されている。
【0046】
さらに、前記環状のシール部材72は、その横断面において、前記固定用筒状部73側を向く先端縁が鋭角を成す楔状に形成されている。そして、該シール部材72は、環状の先端縁の向きをその中心軸L1側に傾斜させた状態で、前記シール用筒状部74の段部78に装着されている。そのため、該シール用筒状部74の雌ネジ部77を前記固定用筒状部73の雄ネジ部75に対して螺合することで両筒状部73,74を互いに締結した際に、該シール用筒状部74の段部78により前記シール部材72がその先端縁方向に押圧される。すると、該シール部材72の先端縁が、各流路部42,43の外周に圧接されて食い込んだ状態となる。その結果、各流路部42,43と筒状部材70のボディ71との間が液密にシールされると同時に、ボディ71が各流路部42,43に対して固定されるようになっている。
【0047】
本実施形態においては、図3に示すように、前記シール部材72として2つの環状の第1及び第2楔状シール片72a,72bを有しており、これら楔状シール片72a,72bが前記シール用筒状部74の2段の段部78の各段に装着されている。
このとき、第1シール片72aの先端縁を含む先端部は、前記雄ネジ部75の傾斜面76と、前記流入側流路部42及び流出側流路部43の各外周との間に潜り込んでいる。それにより、第1シール片72aの先端部が前記傾斜面76に圧接されると同時に、該シール片72aの先端縁が各流路部42,43の外周に圧接されて食い込んだ状態となっている。
【0048】
一方、第2シール片72bは、前記第1シール片72aにおける前記先端縁とは反対側の後端部に配されている。そして、該第2シール片72bの先端縁を含む先端部が、第1シール片72aの後端部と各流路部42,43の外周との間に潜り込んでいる。それにより、前記第1シール片72aの後端部が押し広げられると同時に、該第2シール片72bの先端縁が各流路部42,43の外周に圧接されている。なお、前記筒状部材70としては、例えば、前記楔状シール片72a,72bとしての2つの環状フェルールを備えた食い込み継手にて代用することも可能である。
【0049】
前記制御部7は、図1に示すように、吐出流路30を通じて負荷に対して送り出す循環液の温度を適宜設定するための温度設定部7aを有している。そこで、以下において、この循環液の設定温度に応じた、制御部7による冷却ポンプ23a及び循環ポンプ24aの制御方法について、図4のグラフを用いて説明する。なお、本実施形態では、制御部7において、負荷に対する循環液の送出温度に所定の閾値温度(75℃)が設定されている。循環液の送出温度がこの閾値温度よりも高い場合には温調装置1が稼働状態であり、該閾値温度以下である場合には温調装置1がアイドリング状態(休止状態)であることを意味している。
【0050】
まず、第1ステップとして、循環液の設定温度が前記閾値温度(75℃)よりも低い温度(40℃)に設定され、かつ、吐出流路30の第1温度センサ33によって測定された循環液の送出温度(以下「測定温度」という。)もこの設定温度まで降下している状態、すなわち温調装置1のアイドリング状態においては、インバータ制御方式の冷却ポンプ及び循環ポンプが、制御部7により所定の低回転数(低周波数)に維持される。
【0051】
そこで、第2ステップとして、循環液の設定温度を前記閾値温度よりも高い温度に設定すると、循環ポンプ24aについては、それと同時に所定の高回転数(高周波数)に切り換えられ、その高回転数が維持される。
一方、冷却ポンプ23aについては、それと同時に一旦回転数をさらに低下させた後、温度センサ33による循環液の測定温度が設定温度に到達する前の所定のタイミングで、該回転数を徐々に上昇させていく。その後、循環液の測定温度が設定温度まで到達した時点で回転数の上昇を止め、測定温度と設定温度とが一致した状態においては、その回転数(第1ステップ時よりも低回転数)が維持される。
【0052】
続いて、第3ステップとして、循環液の設定温度をさらに高温に設定すると、循環ポンプ24aについては、前記第2ステップに引き続いて前記所定の高回転数に維持される。
一方、冷却ポンプ23aについては、それと同時に一旦回転数を前記第2ステップと同回転数まで低下させた後、循環液の測定温度が設定温度に到達する前の所定のタイミングで、該回転数を再び徐々に上昇させていく。このとき、回転数変化の傾きは、前記第2ステップの時よりも小さくなっている。その後、第2ステップと同様にして、循環液の測定温度が設定温度まで到達した時点で回転数の上昇を止め、測定温度と設定温度とが一致した状態においては、その回転数(第1ステップ時及び第2ステップ時よりも低回転数)が維持される。
【0053】
次に、第4ステップとして、循環液の設定温度を第2ステップの設定温度まで低下させると、循環ポンプ24aについては、前記第3ステップに引き続いて前記所定の高回転数に維持される。
一方、冷却ポンプ23aについては、それと同時に一旦回転数を前記第1ステップのアイドリング回転数よりも高回転数まで上昇させた後、循環液の測定温度が設定温度に到達する前の所定のタイミングで、該回転数を徐々に降下させていく。その後、循環液の測定温度が設定温度に到達した時点で回転数の降下を止め、測定温度と設定温度とが一致した状態においては、その回転数(第2ステップ時と同回転数)が維持される。
【0054】
続いて、第5ステップとして、循環液の設定温度をさらに第1ステップの設定温度(40℃)まで低下させると、循環ポンプ24aについては、それと同時に第1ステップ時と同じ所定の低回転数に切り換えられ、その低回転数が維持される。
一方、冷却ポンプ23aについては、それと同時に一旦回転数を前記第4ステップと同回転数まで上昇させた後、循環液の測定温度が設定温度に到達する前の所定のタイミングで、該回転数を再び徐々に降下させていく。このとき、回転数変化の傾きは、前記第4ステップの時よりも小さくなっている。その後、循環液の測定温度が設定温度に到達した時点で回転数の降下を止め、測定温度と設定温度とが一致した状態においては、その回転数(第1ステップ時と同回転数)が維持される。
【0055】
すなわち、本実施形態においては、前記温度設定部7aで設定された循環液の温度が、所定の閾値温度よりも低い時には、前記循環ポンプ24aの回転数を低回転数に維持し、前記所定の閾値温度よりも高い時には、前記循環ポンプ24aの回転数を高回転数に維持するようになっている。
また、前記温度設定部7aにより設定温度を上げた時には、前記冷却ポンプ23aの回転数を一旦低下させた後に徐々に上昇させ、設定温度を下げた時には、前記冷却ポンプ23aの回転数を一旦上昇させた後に徐々に降下させ、前記吐出流路30の第1温度センサ33により測定された循環液の温度(すなわち、循環液の測定温度)が、前記設定温度と一致した状態においては、その時の回転数を維持するようになっている。
【0056】
さらに、前記設定温度を上げる場合には、その設定温度が高いほど、前記冷却ポンプ23aの回転数を一旦低下させた後に徐々に上昇させる時の該回転数変化の傾きをより小さくし、前記設定温度を下げる場合には、その設定温度が低いほど、前記冷却ポンプ23aの回転数を一旦上昇させた後に徐々に降下させる時の該回転数変化の傾きをより小さくするようになっている。
【0057】
このように、本実施形態においては、循環ポンプ24aがメインタンク20内で循環液に浸漬されていて、循環液の設定温度が所定の閾値温度よりも高い時には、前記循環ポンプ24aの回転数を高回転数に維持するようになっているため、循環液の温度を、ヒータ22aに加えて循環ポンプ24aの発熱をも利用して効率良く設定温度まで上昇させ、その温度に保持することができる。
また、循環液の設定温度を前記閾値温度よりも高い温度から低い温度に設定した時に、循環ポンプ24aの回転数を低回転数に降下させて維持すると同時に、冷却ポンプ23aの回転数が上昇するため、循環ポンプ24aからの発熱が抑制されると同時に、熱交換器4による循環液の冷却が促進され、それにより、循環液の温度を効率良く設定温度まで下降させることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 温調装置
2 タンク部
4 熱交換器
7 制御部
7a 温度設定部
11 循環液吐出口
12 循環液戻り口
13 冷却液供給口
14 冷却液排出口
22a ヒータ
23a 冷却ポンプ
24a 循環ポンプ
30 吐出流路
31 戻り流路
33 第1温度センサ(吐出側温度センサ)
40 第1熱交換流路
41 螺旋状流路部
42 流入側流路部
42a 循環液流入口
43 流出側流路部
43a 循環液流出口
44 シェル
45 第2熱交換流路(流路空間)
46 第1取付用開口部
47 第2取付用開口部
50 冷却用循環往路
51 冷却用循環復路
60 冷却液供給路
61 冷却液排出路
64 圧力調整部
70 筒状部材
71 筒状ボディ
72 シール部材
72a 第1楔状シール片
72b 第2楔状シール片
73 固定用筒状部
74 シール用筒状部
75 雄ネジ部
76 傾斜面
77 雌ネジ部
78 段部
L 軸
W 溶接(溶接部)
図1
図2
図3
図4