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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】運搬装置
(51)【国際特許分類】
   B62B 1/14 20060101AFI20230719BHJP
   B62B 5/00 20060101ALI20230719BHJP
   B65G 7/04 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
B62B1/14
B62B5/00 Z
B65G7/04 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019099060
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2020192868
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】清水 道行
(72)【発明者】
【氏名】橋崎 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 直輝
(72)【発明者】
【氏名】金子 峰
(72)【発明者】
【氏名】荒井 泰司
(72)【発明者】
【氏名】江頭 正人
(72)【発明者】
【氏名】谷村 充男
(72)【発明者】
【氏名】川幡 祥太
(72)【発明者】
【氏名】久保 公之
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-188373(JP,A)
【文献】特開平04-365707(JP,A)
【文献】特開2000-351375(JP,A)
【文献】特開2007-106334(JP,A)
【文献】特開2005-104671(JP,A)
【文献】特開平09-110118(JP,A)
【文献】特開2002-127910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/14
B62B 5/00
B65G 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の下面に取付けられた平面視で矩形枠状の架台の側面に横方向からボルトで着脱可能に取付けられるフレーム部材と、
前記フレーム部材における前記ボルトよりも下側の下面に取付けられた複数のキャスターと、
前記フレーム部材の上面に突設された手掛かり棒と、
前記手掛かり棒に挿入され前記手掛かり棒の下部の外周面に固定された基部と、前記基部から張出し略水平方向に延びるアーム部と、前記アーム部の先端に設けられ床面から離れた脚部と、を有するアウトリガーと、
を有する運搬装置。
【請求項2】
前記フレーム部材の長手方向の長さは、前記架台の前記側面の幅より長くされており、前記キャスターは前記フレーム部材の長手方向両端部に取付けられている、請求項1に記載の運搬装置。
【請求項3】
前記フレーム部材は、溝形鋼で構成され、
前記溝形鋼の上フランジ及び下フランジには、キャスター取付孔が形成され、
前記キャスター取付孔には、下端部に前記キャスターが接合された軸部材が挿入され、
前記軸部材に螺合された一対のナットによって前記上フランジ及び前記下フランジを挟込み前記軸部材が固定され、
前記下フランジの下面に前記キャスターが取り付けられている、
請求項1又は請求項2に記載の運搬装置。
【請求項4】
前記フレーム部材には、前記ボルトが挿入される架台取付孔が、前記機器に応じて使用する前記ボルトの本数又は挿入位置を調整可能なように、長手方向に間隔をあけて複数形成されている、
請求項1~請求項3のいずれか1項の運搬装置。
【請求項5】
前記フレーム部材には、前記キャスターが取り付けられるキャスター取付孔が、前記機器に応じて使用する前記キャスターの数又は取付位置を調整可能なように、長手方向に間隔をあけて複数形成されている、
請求項1~請求項4のいずれか1項の運搬装置。
【請求項6】
機器の下面に取付けられた平面視で矩形枠状の架台の側面に、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の運搬装置を取り付ける取付方法であって、
前記架台が下面に取付けられた前記機器を床に設置された仮受け材の上に載置する工程と、
前記架台の側面に前記運搬装置のフレーム部材を取付ける工程と、
ジャッキによって前記架台を持上げて前記仮受け材を引抜き、前記ジャッキを下げて前記フレーム部材の下面に取付けられた複数のキャスターを前記床に当接させる工程と、
を備えた運搬装置の取付方法。
【請求項7】
機器の下面に取付けられた平面視で矩形枠状の架台の側面に取り付けられた請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の運搬装置を取り外して機器を設置する設置方法であって、
設置架台を床に設置する工程と、
前記架台が下面に取付けられた前記機器を前記設置架台の上に移動させる工程と、
ジャッキによって前記架台を持上げ、前記運搬装置のフレーム部材を前記架台から取り外す工程と、
前記ジャッキを下げて前記設置架台の上に前記機器を設置する工程と、
を備えた機器の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機等の大型かつ重量のある被運搬物を例えば建物の床上において運搬(いわゆる横引き運搬)する場合、一般的に、キャスター付きの台車に被運搬物を載せる、もしくは被運搬物にキャスターを直接取付ける等、キャスターを用いて被運搬物を運搬している。
【0003】
しかし、台車に被運搬物を載せる方法では、被運搬物が台車から落下することを防ぐため、台車と被運搬物とを結束具により結束する必要があり、運搬、設置作業に時間及び手間がかかっていた。また、被運搬物にキャスターを直接取付ける方法では、被運搬物に対してキャスターを個別に取付け、取外しする必要があるため、運搬、設置作業に時間及び手間がかかっていた。
【0004】
この問題を解決するため、例えば特許文献1には、支持部材に予め複数のキャスターを取付け、この支持部材を被運搬物に固定することにより被運搬物の下面にキャスターを取付ける運搬台車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-177150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示す運搬台車では、キャスターが取付けられた支持部材上に被運搬物を載置し、支持部材の上面に形成された固定穴と被運搬物の下面に形成された固定穴とにボルトを挿入することによって被運搬物と支持部材とが固定されている。
【0007】
すなわち、特許文献1に示す運搬台車では、支持部材と被運搬物の固定穴の位置合わせ、及びボルトの取付け、取外しを被運搬物の下部に潜り込んで行う必要があり、支持部材と被運搬物の位置合わせに時間及び手間がかかっていた。
【0008】
本発明は上記事実に鑑み、複数のキャスターを被運搬物に容易に取付けることができる運搬装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一態様に記載の運搬装置は、被運搬物の側面に着脱可能に取付けられるフレーム部材と、前記フレーム部材の下面に取付けられた複数のキャスターと、を有する。
【0010】
上記構成によれば、複数のキャスターが取付けられたフレーム部材を被運搬物に着脱することで、被運搬物に複数のキャスターをまとめて取付ける、又は取外すことができる。これにより、フレーム部材を用いずに複数のキャスターを被運搬物に直接着脱する構成と比較して、複数のキャスターを被運搬物に容易に取付ける、又は取外すことができる。
【0011】
また、フレーム部材は被運搬物の側面に取付けられるため、フレーム部材が被運搬物の下面に取付けられる構成と比較して、フレーム部材と被運搬物の位置合わせが容易となり、フレーム部材を被運搬物により容易に取付けることができる。
【0012】
第二態様に記載の運搬装置は、請求項1に記載の運搬装置であって、前記フレーム部材の長手方向の長さは、前記被運搬物の前記側面の幅より長くされており、前記キャスターは前記フレーム部材の長手方向両端部に取付けられている。
【0013】
上記構成によれば、被運搬物の側面の幅より長くされたフレーム部材の長手方向両端部にキャスターが取付けられているため、キャスターを被運搬物の外側に位置させることができる。これにより、キャスターの間隔を広くとることができ、被運搬物の転倒を抑制することができる。
【0014】
また、キャスターが被運搬物の外側に位置しているため、建物の床上に設けられた設置架台等の上に被運搬物を移動する際に、キャスターと設置架台とが干渉することを抑制することができる。
【0015】
第三態様に記載の運搬装置は、請求項1又は2に記載の運搬装置であって、前記フレーム部材には、前記フレーム部材の上面に突設された棒材と、前記棒材から張出すアウトリガーと、が設けられている。
【0016】
上記構成によれば、フレーム部材に棒材を突設することで、被運搬物に直接触れることなく、棒材を押し引きして被運搬物を運搬することができる。また、棒材から張り出すアウトリガーにより、被運搬物の転倒を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る運搬装置によれば、複数のキャスターを被運搬物に容易に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)は実施形態の一例に係る運搬装置を示す正面図であり、(B)はその側面図である。
図2】実施形態の一例に係る運搬装置を被運搬物に取付けた状態を示す側面図である。
図3】実施形態の一例に係る運搬装置を被運搬物に取付けた状態を示す平面図である。
図4】(A)~(C)は、実施形態の一例に係る運搬装置を被運搬物に取付ける手順を示す工程図である。
図5】(A)~(C)は、実施形態の一例に係る運搬装置が取付けられた被運搬物を設置架台に設置する手順を示す工程図である。
図6】(A)、(B)は、変形例に係る運搬装置が取付けられた被運搬物を設置架台に設置する手順を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の一例及び変形例に係る運搬装置について、図1図6を用いて説明する。なお、図中において矢印Xは鉛直方向、矢印Yはフレーム部材の長手方向又は被運搬物の長辺方向、矢印Zは被運搬物の短辺方向を指す。
【0020】
(被運搬物の構成)
図2図3に示すように、本実施形態の運搬装置10が着脱可能に取付けられる被運搬物12は、例えば空調機等の大型かつ重量のある機器14と、機器14の下面に取付けられた架台16と、によって構成されている。
【0021】
図3に示すように、機器14は、平面視で例えば長方形断面とされている。一方、架台16は、例えば機器14の下面の外周部に沿って平面視で矩形枠状に組まれた複数の溝形鋼によって構成されている。
【0022】
また、図4(A)に示すように、被運搬物12の架台16の側面には、複数のフレーム取付孔18が形成されている。本実施形態では、矩形枠状の架台16の長辺側の両側面に、所定の間隔をあけて3つのフレーム取付孔18がそれぞれ形成されている。
【0023】
(運搬装置の構成)
一方、図1(A)、図1(B)に示すように、本実施形態の運搬装置10は、フレーム部材20を有している。フレーム部材20は、例えば溝形鋼からなり、長手方向の長さが被運搬物12(架台16)の長辺側の側面の幅より長くされている。
【0024】
また、フレーム部材20のウェブ20Aには、フレーム部材20の長手方向に所定の間隔をあけて複数の架台取付孔22が形成されている。架台取付孔22の数は、架台16に形成されたフレーム取付孔18(図4(A)参照)の数より多くされており、本実施形態では、フレーム部材20に例えば6つの架台取付孔22が形成されている。
【0025】
図3に示すように、フレーム部材20に形成された架台取付孔22、及び被運搬物12の架台16に形成されたフレーム取付孔18には、ボルト24が挿入されてナット26で固定される。これにより、被運搬物12の架台16の長辺側の両側面に、一対のフレーム部材20がそれぞれ着脱可能に取付けられる。
【0026】
本実施形態では、フレーム部材20に形成された複数(6つ)の架台取付孔22のうち、一部(3つ)の架台取付孔22にボルト24が挿入固定される。すなわち、3つのボルト24及びナット26によってフレーム部材20と架台16とが固定されている。
【0027】
なお、フレーム部材20と架台16とを固定するボルト24及びナット26の数や取付け位置、サイズ等は、被運搬物12の重さや大きさ、重心位置等に応じて適宜定められる。また、フレーム部材20は、長手方向両端部が被運搬物12(架台16)の長辺側の側面の幅方向外側に位置するように、すなわち、長手方向両端部が被運搬物12(架台16)の長辺方向外側に張出すように、架台16の側面に固定される。
【0028】
また、フレーム部材20の上フランジ20B及び下フランジ20Cには、複数(本実施形態では9つ)のキャスター取付孔28が形成されている。キャスター取付孔28は、少なくともフレーム部材20の長手方向両端部に形成されており、フレーム部材20の長手方向に所定の間隔をあけて形成されている。
【0029】
図1(A)、図1(B)に示すように、キャスター取付孔28には、下端部にキャスター30が接合された軸部材32が挿入されている。軸部材32は、外周面に雄ねじが形成されており、軸部材32に螺合された一対のナット34によってフレーム部材20の上フランジ20B及び下フランジ20Cを挟込むことで、軸部材32がフレーム部材20に固定されている。
【0030】
一方、キャスター30は、軸部材32に自転可能かつ軸部材32の軸周りに回転可能に接合されており、軸部材32を介してフレーム部材20の下面に取付けられている。なお、本実施形態では、図1(A)に示すように、フレーム部材20に形成された複数(9つ)のキャスター取付孔28のうち、一部(5つ)のキャスター取付孔28にキャスター30が取付けられている。
【0031】
特に、本実施形態では、キャスター30は、少なくともフレーム部材20の長手方向両端部、すなわちフレーム部材20の被運搬物12から張出した部分に形成されたキャスター取付孔28にそれぞれ取付けられている。また、その他のキャスター30の数や取付け位置等は、被運搬物12の重さや大きさ、重心位置等に応じて適宜定められる。
【0032】
さらに、フレーム部材20の長手方向両端部における上フランジ20Bの上面には、固定ベース36がそれぞれ設けられている。固定ベース36は、例えば金属製とされており、溶接等によってフレーム部材20の上フランジ20Bの上面に接合されたベース部36Aと、ベース部36Aから立上がる円筒形状の筒部36Bと、を有している。
【0033】
図2に示すように、フレーム部材20の上フランジ20Bの上面に設けられた固定ベース36には、棒材としての円筒状の手掛かり棒38が取付けられる。手掛かり棒38の外径は、固定ベース36の筒部36Bの内径より一回り小さく、手掛かり棒38の下端部が筒部36Bに差込まれることにより、手掛かり棒38がフレーム部材20の長手方向両端部に固定される。
【0034】
また、手掛かり棒38には、基部40Aと、基部40Aから略水平方向に延びるアーム部40Bと、アーム部40Bの先端に設けられた脚部40Cと、を有するアウトリガー40が取付けられる。アウトリガー40は、図示しないボルト等によって基部40Aが手掛かり棒38の外周面に固定される。
【0035】
なお、アウトリガー40は、複数の鋼材を組合わせて構成されており、例えば移動式足場等の転倒を防ぐために用いられる建築仮設資材の既製品を適用することができる。本実施形態では、手掛かり棒38にアウトリガー40を取付けた状態において、アウトリガー40は手掛かり棒38から水平方向に張出すとともに、脚部40Cの下端部がフレーム部材20に取付けられたキャスター30より鉛直方向上側に位置する。
【0036】
(運搬装置の取付方法)
本実施形態の運搬装置10を被運搬物12に取付ける場合には、まず、トラックで運び込まれた被運搬物12を、図示しないフォークリフト等によって荷受けし、図4(A)に示すように、建物の床42上に設置された仮受け材44の上に載置する。
【0037】
一方、フレーム部材20の下面に複数のキャスター30を予め取付けておくとともに、フレーム部材20の上フランジ20Bの上面に固定ベース36を予め接合しておく。そして、仮受け材44によって被運搬物12を建物の床42から浮かせた状態で、図3に示すボルト24及びナット26によって被運搬物12の架台16の側面にフレーム部材20を取付ける。
【0038】
次に、図4(B)に示すように、固定ベース36に手掛かり棒38をそれぞれ差込むことで、フレーム部材20に手掛かり棒38を取付ける。これにより、被運搬物12の四方に、被運搬物12に対して間隔をあけて手掛かり棒38を突設する。そして、図4(C)に示すように、手掛かり棒38にアウトリガー40をそれぞれ取付けることにより、被運搬物12の短辺方向外側にアウトリガー40をそれぞれ張出させる。
【0039】
その後、図示しないジャッキによって被運搬物12を持上げて被運搬物12の下面から仮受け材44を引抜き、ジャッキを下げてキャスター30を建物の床42に当接させる。これにより、運搬装置10によって支持された被運搬物12を、建物の床42上において運搬(いわゆる横引き運搬)することが可能となる。
【0040】
なお、上記の手順は一例であり、手順が異なっていたり、他の手順が含まれたりしても構わない。例えば、上記の手順では、フレーム部材20を被運搬物12の側面に取付けた後で、フレーム部材20に手掛かり棒38及びアウトリガー40を取付けていた。しかし、フレーム部材20に手掛かり棒38及びアウトリガー40を取付けた後で、フレーム部材20を被運搬物12の側面に取付ける構成としてもよい。
【0041】
(被運搬物の設置方法)
続いて、本実施形態の運搬装置10を用いて、被運搬物12を建物の設置箇所に設置する場合について説明する。
【0042】
図5(A)に示すように、建物の床42上における被運搬物12の設置箇所には、被運搬物12を設置するための設置架台46が設けられている。本実施形態では、設置架台46は、互いに間隔をあけて並列に延びる一対の角形の鋼材46Aによって構成されている。
【0043】
なお、鋼材46A同士の間隔は、被運搬物12の長辺側の側面の幅と略等しくされており、設置架台46上に被運搬物12を載置した際に、被運搬物12の架台16における短辺側の下面が一対の鋼材46Aの上面にそれぞれ当接する。
【0044】
被運搬物12は、長辺側の両側面に運搬装置10が取付けられた状態で、設置箇所まで運搬される。具体的には、複数人で手掛かり棒38を押し引きし、フレーム部材20の下面に取付けられたキャスター30を床42上で転動させながら被運搬物12を設置箇所の脇まで水平移動させる。
【0045】
その後、図5(B)に示すように、設置架台46を構成する一対の鋼材46Aに沿って、被運搬物12を短辺方向に移動させる。このとき、運搬装置10のフレーム部材20の長手方向両端部は、被運搬物12の長辺方向外側に張出している。
【0046】
このため、フレーム部材20の長手方向両端部に取付けられたキャスター30は、被運搬物12の短辺側の下面に沿って延びる一対の鋼材46Aの外側に位置する。これにより、被運搬物12を設置架台46上に移動させる際に、キャスター30と鋼材46Aとが干渉することを抑制することができる。
【0047】
設置架台46上に被運搬物12を移動させた後、図示しないジャッキによって被運搬物12を持上げ、運搬装置10のフレーム部材20を被運搬物12から取外す。そして、ジャッキを下げることにより、図5(C)に示すように、設置架台46上に被運搬物12を設置する。
【0048】
(作用効果)
本実施形態の運搬装置10によれば、複数のキャスター30が取付けられたフレーム部材20を被運搬物12に着脱することで、被運搬物12に複数のキャスター30をまとめて取付ける、又は取外すことができる。これにより、フレーム部材20を用いずに複数のキャスター30を被運搬物12に直接着脱する構成と比較して、複数のキャスター30を被運搬物12に容易に取付ける、又は取外すことができる。
【0049】
また、フレーム部材20は被運搬物12の側面に取付けられるため、フレーム部材20の架台取付孔22と架台16のフレーム取付孔18とを目視にて容易に位置合わせすることができる。このため、フレーム部材20が被運搬物12の下面に取付けられる構成と比較して、フレーム部材20を被運搬物12により容易に取付けることができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、フレーム部材20の長手方向の長さは、フレーム部材20が取付けられる被運搬物12の長辺側の側面の幅より長くされており、フレーム部材20の長手方向両端部が被運搬物12の長辺方向外側に張出している。また、被運搬物12の長辺方向外側に張出したフレーム部材20の長手方向両端部に、キャスター30が取付けられている。
【0051】
このため、フレーム部材20の長手方向の長さが、被運搬物12の長辺側の側面の幅より短い場合、もしくは、被運搬物12の長辺側の側面の幅と同じである場合と比較して、キャスター30の間隔を広くとることができる。これにより、被運搬物12を転倒させる方向に作用するモーメントを、フレーム部材20の長手方向両端部に取付けられたキャスター30によって緩和することができ、被運搬物12の長辺方向への転倒を抑制することができる。
【0052】
また、キャスター30が被運搬物12の長辺側の側面の幅方向外側に位置しているため、建物の床42上に設けられた設置架台46の上に被運搬物12を移動する際に、キャスター30と設置架台46とが干渉することを抑制することができる。
【0053】
さらに、本実施形態によれば、フレーム部材20には、フレーム部材20の上面に突設された手掛かり棒38が設けられている。このため、被運搬物12に直接触れることなく手掛かり棒38を押し引きして被運搬物12を運搬することができ、被運搬物12を直接押して水平移動させる方法と比較して、被運搬物12を転倒させる方向にモーメントが作用することを抑制することができる。
【0054】
また、手掛かり棒38には、被運搬物12の短辺方向外側に張出すアウトリガー40がそれぞれ設けられている。このため、アウトリガー40によって被運搬物12の短辺方向への転倒を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、被運搬物12の架台16に形成されたフレーム取付孔18の数より多い数の架台取付孔22が、フレーム部材20に形成されている。このように、フレーム部材20に所定の間隔をあけて複数の架台取付孔22を予め形成しておくことで、被運搬物12の重さや大きさ、重心位置等に応じて架台取付孔22に挿入固定されるボルト24の数や位置等を調整することができる。また、様々な形状や大きさの被運搬物12にフレーム部材20を適用させることができ、フレーム部材20を共通化させることができる。
【0056】
同様に、本実施形態では、キャスター30の数より多い数のキャスター取付孔28が、フレーム部材20に形成されている。このように、フレーム部材20に所定の間隔をあけて複数のキャスター取付孔28を予め形成しておくことで、被運搬物12の重さや大きさ、重心位置等に応じてキャスター30の数や取付け位置等を調整することができる。すなわち、本実施形態の運搬装置10は、多種多様な被運搬物12に適用することが可能となる。
【0057】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能である。
【0058】
例えば上記実施形態の運搬装置10では、一対のフレーム部材20が被運搬物12の長辺側の両側面に取付けられていた。しかし、図6(A)、図6(B)に変形例として示す運搬装置50のように、被運搬物52の短辺側の両側面に一対のフレーム部材60を取付ける構成としてもよい。
【0059】
本変形例の構成によれば、被運搬物52の短辺側の側面にフレーム部材60が取付けられているため、フレーム部材60の下面に取付けられた複数のキャスター70は、被運搬物52の長辺側の側面の幅方向外側にそれぞれ位置する。このため、建物の床42上に設けられた設置架台46の上に被運搬物52を移動する際に、キャスター70と設置架台46とが干渉することを抑制することができる。
【0060】
また、本変形例の構成によれば、例えば設置架台46上に他の機器72がすでに設置されている場合であっても、フレーム部材60が被運搬物52と他の機器72との間に位置しない。このため、図6(B)に示すように、運搬装置50を用いて被運搬物52を他の機器72に接する位置まで移動させることが可能となる。
【0061】
なお、上記実施形態において、フレーム部材20の被運搬物12の側面への取付け位置を、被運搬物12の運搬中に適宜変更する構成としてもよい。例えば、通路幅が狭い箇所では被運搬物12の長辺側の側面にフレーム部材20を取付け、設置架台46上では被運搬物12の短辺側の側面にフレーム部材20を取付けることで、フレーム部材20が通路の壁や設置架台46に干渉することを抑制することができる。
【0062】
また、上記実施形態では、フレーム部材20が取付けられる被運搬物12の側面の幅よりフレーム部材20の長さが長くされ、フレーム部材20の長手方向両端部が被運搬物12から張出す構成とされていた。しかし、例えば被運搬物12の重心位置が低い場合等、被運搬物12が転倒する虞が低い場合には、フレーム部材20が取付けられる被運搬物12の側面の幅よりもフレーム部材20の長さを短くしても構わない。
【0063】
また、手掛かり棒38及びアウトリガー40はフレーム部材20に必ずしも取付けられている必要はなく、例えば通路幅が狭い箇所では、アウトリガー40をフレーム部材20から一時的に取外して被運搬物12を移動させてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、被運搬物12の架台16とフレーム部材20とが、ボルト24及びナット26によって固定されていた。しかし、フレーム部材20は被運搬物12に少なくとも着脱可能に取付けられていればよく、例えば被運搬物12の架台16の側面にフレーム部材20を嵌合させたり、磁石によって接合したりする構成としてもよい。
【0065】
さらに、被運搬物12が架台16を備えていない場合、すなわち機器14の下面に架台16が取付けられていない場合には、機器14の下端部の側面にフレーム部材20を直接取付ける構成としてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、被運搬物12から仮受け材44を引抜く際、及び被運搬物12を設置架台46に設置する際に、図示しないジャッキによって被運搬物12を上下に移動させていた。しかし、キャスター30を利用して被運搬物12を上下に移動させる構成としてもよい。具体的には、例えば軸部材32へのナット34の螺合量(螺合高さ)を調整することで、キャスター30に対してフレーム部材20を上下に移動させることができ、これにより、建物の床42に対して被運搬物12を上下に移動させることができる。
【0067】
また、上記実施形態では、固定ベース36がフレーム部材20の上フランジ20Bの上面に設けられていたが、上フランジ20Bの上面に加えて、もしくは上フランジ20Bの上面に代えてフレーム部材20のウェブ20Aに固定ベース36を設けてもよい。フレーム部材20のウェブ20Aに固定ベース36を設けることで、被運搬物12に対して水平方向に張出すように手掛かり棒38を取付けることが可能となる。
【0068】
また、上記実施形態では、固定ベース36の筒部36Bに手掛かり棒38を差込む構成とされていたが、円柱形状の固定ベースをパイプ状の手掛かり棒に差込む構成としてもよい。また、固定ベース36と手掛かり棒38とを、図示しない結合部材で結合する構成としてもよい。
【0069】
さらに、フレーム部材20の長手方向両端部に固定ベース36がそれぞれ設けられていた。しかし、フレーム部材20の長手方向に所定の間隔をあけて複数の固定ベース36を設け、複数の固定ベース36に必要に応じて選択的に手掛かり棒38を取付ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10、50 運搬装置
12、52 被運搬物
20、60 フレーム部材
30、70 キャスター
32 軸部材
38 手掛かり棒(棒材の一例)
40 アウトリガー
図1
図2
図3
図4
図5
図6