(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】柱梁接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/21 20060101AFI20230719BHJP
E04B 1/16 20060101ALI20230719BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
E04B1/21 B
E04B1/16 G
E04B1/16 K
E04B1/58 508A
(21)【出願番号】P 2019136777
(22)【出願日】2019-07-25
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】小倉 史崇
(72)【発明者】
【氏名】掛 悟史
(72)【発明者】
【氏名】津司 巧
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222996(JP,A)
【文献】特開2007-092354(JP,A)
【文献】特開2019-082005(JP,A)
【文献】特開2018-012992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/16,1/21
E04B 1/38 - 1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁の端部を構成する梁端部と柱梁仕口部とが一体的に形成されたプレキャストコンクリート造の仕口部材と、
上部又は下部の一方がプレキャストコンクリート造とされ、前記梁の中央部を構成する梁中央部材と、
前記梁中央部材の上部及び下部にそれぞれ配筋された中央梁主筋と、
前記梁中央部材の前記仕口部材との接合端部に設けられ、前記梁中央部材の上部又は下部の一方から梁成方向外側に拡幅する拡幅部と、
前記拡幅部を前記梁中央部材の軸方向に貫通する貫通孔と、
前記仕口部材の前記柱梁仕口部と前記梁端部とに跨って配筋されるとともに、前記梁端部側の端部に定着部が設けられ、前記梁端部が非降伏ヒンジ領域となるよう前記梁端部を補強する補強筋と、
前記仕口部材の上部及び下部にそれぞれ配筋され、前記補強筋と平行に延びる接合鉄筋と、
前記接合鉄筋の一端部にそれぞれ接続され、前記非降伏ヒンジ領域に
埋設される一対の機械式継手と、
前記貫通孔に挿通され、前記中央梁主筋と平行に延びて一端部が前記一対の機械式継手の一方に接続される第1梁主筋と、
前記梁中央部材の上部又は下部の他方に配筋され、前記中央梁主筋と平行に延びて一端部が前記一対の機械式継手の他方に接続される第2梁主筋と、
を有する柱梁接合構造。
【請求項2】
前記梁中央部材の上部又は下部の他方に配筋された前記中央梁主筋は、梁中央側機械式継手によって前記第2梁主筋の他端部に接続されている、請求項1に記載の柱梁接合構造。
【請求項3】
梁の端部を構成する梁端部と柱梁仕口部とが一体的に形成されたプレキャストコンクリート造の仕口部材と、
前記梁の中央部を構成するプレキャストコンクリート造の梁中央部材と、
前記梁中央部材の上部及び下部にそれぞれ配筋された中央梁主筋と、
前記梁中央部材の前記仕口部材との接合端部に設けられ、前記梁中央部材の上部及び下部から梁成方向外側にそれぞれ拡幅する拡幅部と、
前記拡幅部を前記梁中央部材の軸方向に貫通する貫通孔と、
前記仕口部材の前記柱梁仕口部と前記梁端部とに跨って配筋されるとともに、前記梁端部側の端部に定着部が設けられ、前記梁端部が非降伏ヒンジ領域となるよう前記梁端部を補強する補強筋と、
前記仕口部材の上部及び下部にそれぞれ配筋され、前記補強筋と平行に延びる接合鉄筋と、
前記接合鉄筋の一端部にそれぞれ接続され、前記非降伏ヒンジ領域に
埋設される一対の機械式継手と、
前記貫通孔にそれぞれ挿通され、前記中央梁主筋と平行に延びて一端部が前記一対の機械式継手にそれぞれ接続される第1梁主筋と、
を有する柱梁接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱梁接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート造の梁とコンクリート造の仕口部との接合構造において、近年、予め工場等で作製したプレキャストコンクリート造の梁と仕口部とを現場にて接合することで、現場でのコンクリート打設作業を削減することが試みられている。
【0003】
例えば特許文献1及び特許文献2には、プレキャストコンクリート造の柱梁仕口部に貫通孔を形成し、プレキャストコンクリート造の梁に挿通された梁主筋又は接合鉄筋を柱梁仕口部の貫通孔に挿通することで、梁と柱梁仕口部とを接合する接合構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-12992号公報
【文献】特許第5236152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に開示されている接合構造では、梁を柱梁仕口部との接合位置に配置した後で、梁及び柱梁仕口部に梁主筋又は接合鉄筋を挿通させるため、梁を上から落とし込んで接合位置に配置することが可能となる。しかし、梁の端部から柱梁仕口部の貫通孔内にわたって梁主筋又は接合鉄筋を挿通させる必要があるため、梁主筋又は接合鉄筋の長さが長くなり、梁主筋又は接合鉄筋の挿通作業に手間がかかっていた。
【0006】
この問題を解決する方法としては、例えば梁と柱梁仕口部との接合端部に機械式継手を設け、梁に配筋される鉄筋と柱梁仕口部に配筋される鉄筋とを機械式継手によって接続する方法が考え得る。しかし、梁と柱梁仕口部との接合端部は、一般的に降伏ヒンジ領域とされているため、接合端部に機械式継手を設けることは難しかった。
【0007】
本発明は上記事実に鑑み、梁と柱梁仕口部との接合部に機械式継手を設けることができ、梁と柱梁仕口部とを接合する際の施工性を高めることができる柱梁接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様に係る柱梁接合構造は、梁の端部を構成する梁端部と柱梁仕口部とが一体的に形成されたプレキャストコンクリート造の仕口部材と、上部又は下部の一方がプレキャストコンクリート造とされ、前記梁の中央部を構成する梁中央部材と、前記梁中央部材の上部及び下部にそれぞれ配筋された中央梁主筋と、前記梁中央部材の前記仕口部材との接合端部に設けられ、前記梁中央部材の上部又は下部の一方から梁成方向外側に拡幅する拡幅部と、前記拡幅部を前記梁中央部材の軸方向に貫通する貫通孔と、前記仕口部材の前記柱梁仕口部と前記梁端部とに跨って配筋されるとともに、前記梁端部側の端部に定着部が設けられ、前記梁端部が非降伏ヒンジ領域となるよう前記梁端部を補強する補強筋と、前記仕口部材の上部及び下部にそれぞれ配筋され、前記補強筋と平行に延びる接合鉄筋と、前記接合鉄筋の一端部にそれぞれ接続され、前記非降伏ヒンジ領域に位置する一対の機械式継手と、前記貫通孔に挿通され、前記中央梁主筋と平行に延びて一端部が前記一対の機械式継手の一方に接続される第1梁主筋と、前記梁中央部材の上部又は下部の他方に配筋され、前記中央梁主筋と平行に延びて一端部が前記一対の機械式継手の他方に接続される第2梁主筋と、を有する。
【0009】
上記構成によれば、仕口部材において、梁の端部を構成する梁端部と柱梁仕口部とが一体的に形成されており、梁端部側の端部に定着部が設けられた補強筋が柱梁仕口部と梁端部とに跨って配筋されている。このように、補強筋によって梁端部を補強することで、梁端部を非降伏ヒンジ領域とすることができ、接合鉄筋が接続された機械式継手を梁と柱梁仕口部との接合部である梁端部に設けることが可能となる。
【0010】
ここで、プレキャストコンクリート造とされた梁中央部材の上部又は下部の一方では、梁中央部材を仕口部材との接合位置に配置した後、貫通孔に第1梁主筋を挿通して機械式継手に接続することで、仕口部材の接合鉄筋と梁中央部材の第1梁主筋とを接合することができる。
【0011】
また、梁中央部材の上部又は下部の他方では、第2梁主筋を梁中央部材の軸方向内側に収容した状態で、梁中央部材を仕口部材との接合位置に配置した後、第2梁主筋を梁中央部材の軸方向外側にスライド移動させて機械式継手に接続することで、仕口部材の接合鉄筋と梁中央部材の第2梁主筋とを接合することができる。
【0012】
すなわち、梁の中央部を構成する梁中央部材を上から落とし込んで接合位置に配置することが可能となる。また、梁端部が現場打ちコンクリートで構成されている場合と比較して、現場でのコンクリート打設作業を減らすことができる。このため、梁と柱梁仕口部とを接合する際の施工性を高めることができる。
【0013】
なお、梁中央部材の上部又は下部の一方がプレキャストコンクリート造とされているため、梁中央部材全体がプレキャストコンクリート造とされている構成と比較して、重量が軽くなり、現場への運び込みや揚重が容易となる。
【0014】
第2態様に係る柱梁接合構造は、第1態様に係る柱梁接合構造であって、前記梁中央部材の上部又は下部の他方に配筋された前記中央梁主筋は、梁中央側機械式継手によって前記第2梁主筋の他端部に接続されている。
【0015】
上記構成によれば、梁中央側機械式継手によって中央梁主筋が第2梁主筋に接続されている。このため、例えば中央梁主筋と第2梁主筋とがあき重ね継手によって接続されている構成等、中央梁主筋と第2梁主筋とが直接接続されていない構成と比較して、中央梁主筋の長さを短くすることができ、鉄筋量を減らすことができる。
【0016】
第3態様に係る柱梁接合構造は、梁の端部を構成する梁端部と柱梁仕口部とが一体的に形成されたプレキャストコンクリート造の仕口部材と、前記梁の中央部を構成するプレキャストコンクリート造の梁中央部材と、前記梁中央部材の上部及び下部にそれぞれ配筋された中央梁主筋と、前記梁中央部材の前記仕口部材との接合端部に設けられ、前記梁中央部材の上部及び下部から梁成方向外側にそれぞれ拡幅する拡幅部と、前記拡幅部を前記梁中央部材の軸方向に貫通する貫通孔と、前記仕口部材の前記柱梁仕口部と前記梁端部とに跨って配筋されるとともに、前記梁端部側の端部に定着部が設けられ、前記梁端部が非降伏ヒンジ領域となるよう前記梁端部を補強する補強筋と、前記仕口部材の上部及び下部にそれぞれ配筋され、前記補強筋と平行に延びる接合鉄筋と、前記接合鉄筋の一端部にそれぞれ接続され、前記非降伏ヒンジ領域に位置する一対の機械式継手と、前記貫通孔にそれぞれ挿通され、前記中央梁主筋と平行に延びて一端部が前記一対の機械式継手にそれぞれ接続される第1梁主筋と、を有する。
【0017】
上記構成によれば、仕口部材において、梁の端部を構成する梁端部と柱梁仕口部とが一体的に形成されており、梁端部側の端部に定着部が設けられた補強筋が柱梁仕口部と梁端部とに跨って配筋されている。このように、補強筋によって梁端部を補強することで、梁端部を非降伏ヒンジ領域とすることができ、接合鉄筋が接続された一対の機械式継手を梁と柱梁仕口部との接合部である梁端部に設けることが可能となる。
【0018】
ここで、プレキャストコンクリート造の梁中央部材は、梁中央部材を仕口部材との接合位置に配置した後、貫通孔に第1梁主筋を挿通して機械式継手に接続することで、仕口部材の接合鉄筋と梁中央部材の第1梁主筋とを接合することができる。すなわち、梁の中央部を構成する梁中央部材を上から落とし込んで接合位置に配置することが可能となり、梁と柱梁仕口部とを接合する際の施工性を高めることができる。
【0019】
なお、梁中央部材は全体がプレキャストコンクリート造とされているため、梁中央部材の上部又は下部の一方がプレキャストコンクリート造とされている構成と比較して、コンクリートを現場打ちする必要がなく、施工性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る柱梁接合構造によれば、梁と柱梁仕口部との接合部に機械式継手を設けることができ、梁と柱梁仕口部とを接合する際の施工性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る柱梁接合構造を示す立断面図である。
【
図2】(A)~(C)は第1実施形態に係る柱梁接合構造の施工手順を示す立断面図である。
【
図3】第2実施形態に係る柱梁接合構造を示す立断面図である。
【
図4】(A)~(C)は第2実施形態に係る柱梁接合構造の施工手順を示す立断面図である。
【
図5】第3実施形態に係る柱梁接合構造を示す立断面図である。
【
図6】第4実施形態に係る柱梁接合構造を示す立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1~第4実施形態に係る柱梁接合構造について、
図1~
図6を用いて順に説明する。なお、図中において、矢印Xは水平方向を指し、矢印Yは鉛直方向を指す。
【0023】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係る柱梁接合構造について、
図1、
図2を用いて説明する。
【0024】
(全体構成)
図1に示すように、本実施形態の柱梁接合構造10は、鉛直方向に延びる柱12と水平方向に延びる梁14との接合部に設けられた仕口部材16を有している。
【0025】
(仕口部材の構成)
仕口部材16は、柱12が接合される柱梁仕口部18と、柱梁仕口部18の両側面にそれぞれ接合され、梁14の端部を構成する一対の梁端部20と、によって構成されている。本実施形態では、仕口部材16は、柱梁仕口部18と一対の梁端部20とが一体的に形成されたプレキャストコンクリート造とされている。
【0026】
また、仕口部材16には、柱梁仕口部18と梁端部20とに跨って配筋された複数の補強筋22が設けられている。仕口部材16において、複数の補強筋22はそれぞれ水平方向に延びているとともに、鉛直方向に間隔をあけて上下二段に並設されている。
【0027】
また、補強筋22の梁端部20側の端部には、定着部の一例としての機械式定着板24が設けられている。機械式定着板24は、摩擦圧接や螺合等によって補強筋22の端部に接合されており、機械式定着板24によって補強筋22が梁端部20に定着されている。なお、補強筋22の端部は梁端部20の端面20Aに位置しており、機械式定着板24の先端は梁端部20の端面20Aから突出している。
【0028】
仕口部材16の梁端部20は、端部に機械式定着板24が設けられた補強筋22によって補強されることにより、非降伏ヒンジ領域Rとされている。換言すれば、梁端部20に非降伏ヒンジ領域Rが設けられている。なお、本発明において「非降伏ヒンジ領域」とは、高剛性化されることで、梁の他の領域に比べて所定の曲げに対して塑性変形(及び弾性変形)が生じ難くされた領域を指す。
【0029】
また、仕口部材16には、複数の接合鉄筋26が配筋されている。複数の接合鉄筋26は、補強筋22と平行に、すなわち水平方向に延びるとともに、補強筋22を間に挟んで仕口部材16の上部及び下部に互いに鉛直方向に間隔をあけて並設されている。
【0030】
また、非降伏ヒンジ領域Rにおける梁端部20の端面20Aには、一対の機械式継手28(上部機械式継手28A及び下部機械式継手28B)が埋設されている。一対の機械式継手28は、梁端部20の上部及び下部にそれぞれ設けられており、接合鉄筋26の一端部(梁端部20側の端部)にそれぞれ接続されている。なお、梁端部20において、複数の接合鉄筋26又は上下の機械式継手28の周囲には、互いに水平方向に所定の間隔をあけて配筋された複数のせん断補強筋30が巻掛けられている。
【0031】
仕口部材16の柱梁仕口部18には、複数のシース管32が埋設されている。複数のシース管32は、鉛直方向にそれぞれ延びており、柱梁仕口部18の上面及び下面にそれぞれ開口している。また、柱梁仕口部18において、複数のシース管32の周囲には、互いに鉛直方向に所定の間隔をあけて配筋された複数のせん断補強筋34が巻掛けられている。
【0032】
(柱の構成)
柱12は、仕口部材16の柱梁仕口部18の上面に接合された上部柱12Aと、柱梁仕口部18の下面に接合された下部柱12Bと、によって構成されている。上部柱12A及び下部柱12Bは、それぞれ鉛直方向に延びており、外形(幅)が柱梁仕口部18の上面及び下面の外形(幅)と略同じ大きさとされている。本実施形態では、上部柱12A及び下部柱12Bは、例えばプレキャストコンクリート造の四角柱とされている。
【0033】
また、上部柱12A及び下部柱12Bには、鉛直方向に配筋された複数の柱主筋36A、36Bがそれぞれ設けられている。上部柱12Aの下面には、複数の機械式継手38が埋設されており、上部柱12Aの柱主筋36Aの下端部が機械式継手38にそれぞれ接続されている。
【0034】
一方、下部柱12Bの柱主筋36Bは、下部柱12Bの上面から突出しており、柱梁仕口部18のシース管32に挿通されて上部柱12Aの機械式継手38に接続されている。すなわち、上部柱12Aに埋設された機械式継手38によって上部柱12Aの柱主筋36Aと下部柱12Bの柱主筋36Bとが互いに接続されている。なお、上部柱12A及び下部柱12Bにおいて、複数の柱主筋36A、36Bの周囲には、互いに鉛直方向に所定の間隔をあけて配筋された複数のせん断補強筋40が巻掛けられている。
【0035】
(梁の構成)
仕口部材16の梁端部20の端面20Aには、梁14の中央部を構成する梁中央部材42の一端面42Aが接合されている。なお、図示を省略するが、梁中央部材42の他端面は、仕口部材16の隣に配置された他の仕口部材の梁端部の端面に接合されている。この一対の梁端部20と梁中央部材42とにより、水平方向に延びて柱梁仕口部18間に架設された梁14が構成されている。
【0036】
梁中央部材42は、梁中央部材42の下部を構成するプレキャストコンクリート部44と、梁中央部材42の上部を構成する現場打ちコンクリート部46と、を有するハーフプレキャスト構造とされている。なお、本実施形態では、梁中央部材42全体のうち、下面から約4分の3がプレキャストコンクリート部44とされ、上面から約4分の1が現場打ちコンクリート部46とされている。
【0037】
また、梁中央部材42には、複数の中央梁主筋48A、48Bが配筋されている。梁中央部材42において、複数の中央梁主筋48A、48Bはそれぞれ水平方向に延びているとともに、鉛直方向に間隔をあけて上下二段に並設されている。なお、上側の中央梁主筋48A及び下側の中央梁主筋48Bは、ともに梁中央部材42のプレキャストコンクリート部44に埋設されている。
【0038】
また、本実施形態では、下側の中央梁主筋48Bの端部に定着部の一例としての機械式定着板50が設けられている。機械式定着板50は、摩擦圧接や螺合等によって下側の中央梁主筋48Bの端部に接合されており、機械式定着板50によって下側の中央梁主筋48Bがプレキャストコンクリート部44に定着されている。一方、上側の中央梁主筋48Aの端部には、定着部は設けられていない。
【0039】
また、梁中央部材42の仕口部材16との接合端部、すなわち軸方向端部には、梁中央部材42の梁成方向外側(下方)に拡幅する拡幅部52が形成されている。拡幅部52は、梁中央部材42のプレキャストコンクリート部44の下面に形成されており、梁中央部材42の接合端部の梁成が、梁中央部材42の軸方向中央部の梁成より大きくされている。なお、拡幅部52は、プレキャストコンクリートによってプレキャストコンクリート部44と一体的に形成されている。
【0040】
また、拡幅部52には、貫通孔54が形成されている。貫通孔54は、例えば拡幅部52に埋設されたシース管等によって構成されており、梁中央部材42の軸方向、すなわち水平方向に延び、拡幅部52を貫通して拡幅部52の両端面にそれぞれ開口している。
【0041】
また、この貫通孔54には、第1梁主筋56が挿通されている。第1梁主筋56は、中央梁主筋48A、48Bと平行に、すなわち水平方向に延びており、仕口部材16の梁端部20の下部に埋設された下部機械式継手28Bに一端部が接続されている。
【0042】
一方、第1梁主筋56の他端部は貫通孔54内に位置しており、第1梁主筋56の他端部には、定着部としての機械式定着板58が設けられている。機械式定着板58は、摩擦圧接や螺合等によって第1梁主筋56の他端部に接合されており、機械式定着板58によって第1梁主筋56が貫通孔54内に充填される図示しないグラウト等の充填材に定着されている。
【0043】
なお、下側の中央梁主筋48Bと第1梁主筋56とは、上下方向に所定の間隔をあけて配置されているとともに、平面視にて梁中央部材42の軸方向(水平方向)に所定の長さで重なり合っている。これにより、梁中央部材42において、下側の中央梁主筋48Bと第1梁主筋56とが、あき重ね継手によって接続されている。
【0044】
また、梁中央部材42の現場打ちコンクリート部46には、第2梁主筋60が配筋されている。第2梁主筋60は、中央梁主筋48A、48Bと平行に、すなわち水平方向に延びており、仕口部材16の梁端部20の上部に埋設された上部機械式継手28Aに一端部が接続されている。一方、第2梁主筋60の他端部には定着部は設けられておらず、第2梁主筋60の他端部は、梁中央部材42の軸方向中央部まで延びている。
【0045】
なお、上側の中央梁主筋48Aと第2梁主筋60とは、上下方向に所定の間隔をあけて配置されているとともに、平面視にて梁中央部材42の軸方向(水平方向)に所定の長さで重なり合っている。これにより、梁中央部材42において、上側の中央梁主筋48Aと第2梁主筋60とが、あき重ね継手によって接続されている。
【0046】
また、第1梁主筋56と第2梁主筋60の周囲、又は下側の中央梁主筋48Bと第2梁主筋60の周囲には、互いに水平方向に所定の間隔をあけて配筋された複数のせん断補強筋62が巻掛けられている。
【0047】
せん断補強筋62の下部、すなわち第1梁主筋56又は下側の中央梁主筋48Bに巻掛けられている部分は、プレキャストコンクリート部44に埋設されている。一方、せん断補強筋62の上部、すなわち第2梁主筋60に巻掛けられている部分は、プレキャストコンクリート部44の上面から露出して現場打ちコンクリート部46に埋設されている。
【0048】
(施工手順)
次に、本実施形態の柱梁接合構造の施工手順の一例について説明する。なお、下記の手順は一例であり、手順が異なっていたり、他の手順が含まれたりしても構わない。
【0049】
まず、プレキャストコンクリート造の上部柱12A、下部柱12B、仕口部材16、及び梁中央部材42の下部を構成するプレキャストコンクリート部44を工場等で予め製作しておく。
【0050】
次に、
図2(A)に示すように、現場にて、下部柱12Bの上部に仕口部材16の柱梁仕口部18を載置し、柱梁仕口部18のシース管32に下部柱12Bの上面から突出する柱主筋36Bを挿通させる。そして、下部柱12Bの上面と柱梁仕口部18の下面との間にグラウト等の充填材64を充填することで、下部柱12Bと仕口部材16とを接合する。
【0051】
また、プレキャストコンクリート部44の設置前に、プレキャストコンクリート部44の上部におけるせん断補強筋62の内側に、第2梁主筋60を配置する。このとき、第2梁主筋60は、梁中央部材42の軸方向にスライド移動可能に配置されるとともに、梁中央部材42の軸方向内側に収容された状態、すなわち一端部が梁中央部材42の一端面42Aより軸方向内側に位置する状態とされている。
【0052】
その後、梁中央部材42のプレキャストコンクリート部44を上から落とし込み(矢印D)、仕口部材16との接合位置、すなわち梁端部20の端面20Aと梁中央部材42の一端面42Aとが対向する位置に配置する。
【0053】
次に、
図2(B)に示すように、プレキャストコンクリート部44の上部において、梁中央部材42の軸方向内側に収容されている第2梁主筋60を軸方向外側にスライド移動させ(矢印E)、第2梁主筋60の一端部を上部機械式継手28Aに接続する。そして、上部機械式継手28A内に図示しないグラウト等の充填材を充填して固化させることで、上部機械式継手28Aによって接合鉄筋26と第2梁主筋60とを接続する。
【0054】
また、プレキャストコンクリート部44の拡幅部52に形成された貫通孔54に、他端部に機械式定着板58が設けられた第1梁主筋56を挿入し(矢印F)、第1梁主筋56の一端部を下部機械式継手28Bに接続する。そして、貫通孔54内及び下部機械式継手28B内に図示しないグラウト等の充填材を充填して固化させることで、下部機械式継手28Bによって接合鉄筋26と第1梁主筋56とを接続する。
【0055】
次に、
図2(C)に示すように、仕口部材16の柱梁仕口部18の上部に上部柱12Aを載置し、柱梁仕口部18の上面から突出する下部柱12Bの柱主筋36Bを上部柱12Aの下面に埋設された機械式継手38に接続する。そして、機械式継手38内、及び上部柱12Aの下面と柱梁仕口部18の上面との間に、グラウト等の充填材66を充填することで、上部柱12Aと柱梁仕口部18とを接合する。
【0056】
次に、プレキャストコンクリート部44の上部に図示しない型枠を設置し、この型枠内にコンクリートを打設して現場打ちコンクリート部46を構築することで、梁中央部材42を構築する。また、梁端部20の端面20Aと梁中央部材42の接合端部の一端面42Aとの間にグラウト等の充填材68を充填することで、仕口部材16と梁中央部材42とを接合する。
【0057】
なお、梁端部20の端面20A及び梁中央部材42の一端面42Aには、溝状のコッター70A、70Bがそれぞれ形成されている。このコッター70A、70B間に充填材68が充填されることで、梁中央部材42に作用する上下方向のせん断力が充填材68を介して梁端部20に伝達可能とされている。
【0058】
その後、梁14(梁端部20及び梁中央部材42)の外側に図示しない型枠を設置し、この型枠内にコンクリートを打設することで、上面が梁14の上面と同一面とされた図示しないコンクリートスラブを構築する。なお、梁中央部材42の現場打ちコンクリート部46を構成するコンクリートとコンクリートスラブを構成するコンクリートとが同材料である場合には、現場打ちコンクリート部46を打設する際にコンクリートスラブを同時に打設する構成としてもよい。
【0059】
(作用、効果)
本実施形態によれば、仕口部材16において、一体的に形成された梁端部20と柱梁仕口部18とに跨って補強筋22が配筋されており、機械式定着板24によって補強筋22の端部が梁端部20に定着されている。このように、補強筋22によって梁端部20を補強することで、梁端部20を非降伏ヒンジ領域Rとすることができ、接合鉄筋26が接続された機械式継手28を梁14と柱梁仕口部18との接合部である梁端部20に設けることが可能となる。
【0060】
ここで、梁中央部材42の下部では、プレキャストコンクリート部44を仕口部材16との接合位置に配置した後、拡幅部52の貫通孔54に第1梁主筋56を挿通して下部機械式継手28Bに接続することで、仕口部材16の接合鉄筋26と梁中央部材42の第1梁主筋56とを接合することができる。
【0061】
また、梁中央部材42の上部では、プレキャストコンクリート部44を仕口部材16との接合位置に配置した後、第2梁主筋60を梁中央部材42の軸方向外側にスライド移動させて上部機械式継手28Aに接続することで、仕口部材16の接合鉄筋26と梁中央部材42の第2梁主筋60とを接合することができる。
【0062】
すなわち、本実施形態によれば、梁14の中央部を構成する梁中央部材42を上から落とし込んで接合位置に配置することが可能となる。また、梁端部20が現場打ちコンクリートで構成されている場合と比較して、現場でのコンクリート打設作業を減らすことができる。このため、梁14と柱梁仕口部18とを接合する際の施工性を高めることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、梁中央部材42が、プレキャストコンクリート部44と現場打ちコンクリート部46とで構成されたハーフプレキャスト構造とされている。このため、梁中央部材42全体がプレキャストコンクリート造とされている構成と比較して、梁中央部材42の重量が軽くなり、現場への運び込みや揚重が容易となる。
【0064】
さらに、梁中央部材42の上部が現場打ちコンクリート部46とされている。このため、現場打ちコンクリート部46を構成するコンクリートと、図示しないコンクリートスラブを構成するコンクリートとが同材料である場合には、現場打ちコンクリート部46とコンクリートスラブとを同時に打設することができる。また、拡幅部52が梁中央部材42の下面のみに形成されているため、梁中央部材42の上面が平坦となり、コンクリートスラブを構築する際のレベル調整が容易となる。
【0065】
また、本実施形態では、上部柱12A、下部柱12B、及び柱梁仕口部18もプレキャストコンクリート造とされている。このため、現場で上部柱12A、下部柱12B、及び柱梁仕口部18をそれぞれ構築する場合と比較して、現場でのコンクリート打設作業を減らすことができる。
【0066】
また、本実施形態では、第1梁主筋56の他端部、及び下側の中央梁主筋48Bの端部に機械式定着板50、58がそれぞれ設けられている。そして、この機械式定着板50、58によって、第1梁主筋56及び下側の中央梁主筋48Bが梁中央部材42のプレキャストコンクリート部44にそれぞれ定着されている。
【0067】
このため、第1梁主筋56及び下側の中央梁主筋48Bの長さ(定着長)を短くすることができ、鉄筋量を減らすことができる。また、第1梁主筋56の長さが短くなることにより、拡幅部52の梁中央部材42における軸方向の長さを短くすることができ、コンクリート量を減らすことができる。
【0068】
また、梁端部20の端面20A及び梁中央部材42の一端面42Aに、コッター70A、70Bがそれぞれ形成されている。このため、梁端部20の端面20A及び梁中央部材42の一端面42Aにコッターが形成されていない構成と比較して、梁中央部材42と梁端部20との間のせん断力の伝達効率を高めることができる。
【0069】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る柱梁接合構造について、
図3、
図4を用いて説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、差異点を中心に説明する。
【0070】
(構成)
第1実施形態の柱梁接合構造10では、梁中央部材42の上側の中央梁主筋48Aと第2梁主筋60とが、あき重ね継手によって接続されていた。これに対し、本実施形態の柱梁接合構造80では、
図3に示すように、梁中央部材82の上側の中央梁主筋84と第2梁主筋86とが、梁中央側機械式継手88によって接続されている。
【0071】
本実施形態の梁中央部材82は、第1実施形態の梁中央部材42と同様に、下部を構成するプレキャストコンクリート部44と、上部を構成する現場打ちコンクリート部46と、を有している。また、梁中央部材82は、一端面が仕口部材16の梁端部20の端面20Aに接合され、他端面が仕口部材16の隣に配置された他の仕口部材90の梁端部20の端面20Aに接合されている。なお、他の仕口部材90は、仕口部材16と同様の構成とされている。
【0072】
梁中央部材82の現場打ちコンクリート部46における軸方向両端部には、第2梁主筋86がそれぞれ配筋されている。また、第2梁主筋86の一端部は、仕口部材16及び他の仕口部材90の梁端部20の上部に埋設された上部機械式継手28Aにそれぞれ接続されている。
【0073】
さらに、本実施形態では、梁中央部材82の現場打ちコンクリート部46に上側の中央梁主筋84が配筋されている。なお、下側の中央梁主筋48Bは、第1実施形態と同様に、プレキャストコンクリート部44に埋設されている。
【0074】
上側の中央梁主筋84は、梁中央部材82の軸方向中央部に配筋されており、第2梁主筋86と平行に、すなわち水平方向に延びている。また、上側の中央梁主筋84の両端部は、梁中央側機械式継手88によって一対の第2梁主筋86の他端部にそれぞれ接続されている。
【0075】
(施工手順)
次に、本実施形態の柱梁接合構造の施工手順の一例について説明する。なお、下記の手順は一例であり、手順が異なっていたり、他の手順が含まれたりしても構わない。
【0076】
まず、第1実施形態と同様に、プレキャストコンクリート造の上部柱12A、下部柱12B、仕口部材16、他の仕口部材90、及び梁中央部材82のプレキャストコンクリート部44を予め工場等で製作しておく。そして、
図4(A)に示すように、現場にて、下部柱12Bと仕口部材16、及び下部柱12Bと他の仕口部材90をそれぞれ接合する。
【0077】
また、プレキャストコンクリート部44の設置前に、プレキャストコンクリート部44の上部におけるせん断補強筋62の内側に、一対の第2梁主筋86をそれぞれ配置する。このとき、一対の第2梁主筋86は、第1実施形態と同様に、梁中央部材82の両端部において梁中央部材82の軸方向内側に収容された状態とされている。
【0078】
さらに、プレキャストコンクリート部44の上部におけるせん断補強筋62の内側に、両端部に梁中央側機械式継手88が設置された上側の中央梁主筋84を、第2梁主筋86とともに配置する。このとき、梁中央側機械式継手88は、上側の中央梁主筋84の軸方向にスライド移動可能に配置されるとともに、上側の中央梁主筋84の軸方向内側に収容された状態とされている。
【0079】
なお、一対の第2梁主筋86が梁中央部材82の軸方向内側に収容された状態では、上側の中央梁主筋84と第2梁主筋86とは、梁中央部材82の軸方向(水平方向)に重なり合っている。このため、上側の中央梁主筋84は、第2梁主筋86と干渉しないように、第2梁主筋86に対して梁中央部材82の梁成方向内側(
図4(A)における下側)にずれた位置に配置される。
【0080】
その後、梁中央部材82のプレキャストコンクリート部44を上から落とし込み、プレキャストコンクリート部44を仕口部材16と他の仕口部材90との間に配置する。そして、プレキャストコンクリート部44の軸方向両端部に形成された拡幅部52の貫通孔54に一対の第1梁主筋56をそれぞれ挿入し、第1梁主筋56の一端部を下部機械式継手28Bにそれぞれ接続する。
【0081】
また、プレキャストコンクリート部44の上部において、梁中央部材82の軸方向内側に収容されている一対の第2梁主筋86を軸方向外側にスライド移動させ(矢印G)、第2梁主筋86の一端部を上部機械式継手28Aにそれぞれ接続する。次に、
図4(B)に示すように、上側の中央梁主筋84を梁中央部材82の梁成方向外側に移動させ(矢印H)、第2梁主筋86と同一軸線上に配置する。
【0082】
その後、
図4(C)に示すように、上側の中央梁主筋84の軸方向内側に収容されている梁中央側機械式継手88を軸方向外側にそれぞれスライド移動させ(矢印I)、第2梁主筋86の他端部を一対の梁中央側機械式継手88にそれぞれ接続する。そして、梁中央側機械式継手88内に図示しないグラウト等の充填材を充填して固化させることで、梁中央側機械式継手88によって第2梁主筋86と上側の中央梁主筋84とを接続する。
【0083】
その後は、
図1に示すように、第1実施形態と同様に、プレキャストコンクリート部44の上部に現場打ちコンクリート部46を構築して梁中央部材82を構築するとともに、梁中央部材82を仕口部材16及び他の仕口部材90に接合する。また、上部柱12Aと柱梁仕口部18とを接合し、図示しないコンクリートスラブを構築する。
【0084】
(作用、効果)
本実施形態の柱梁接合構造80によれば、第1実施形態の柱梁接合構造10と同様の作用、効果を得ることができる。
【0085】
さらに、本実施形態によれば、上側の中央梁主筋84と第2梁主筋86とが梁中央側機械式継手88によって接続されている。このため、第1実施形態のような上側の中央梁主筋48Aと第2梁主筋60とがあき重ね継手によって接続されている構成等、中央梁主筋と第2梁主筋とが直接接続されていない構成と比較して、上側の中央梁主筋84の長さを短くすることができ、鉄筋量を減らすことができる。
【0086】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る柱梁接合構造について、
図5を用いて説明する。なお、第1、第2実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、差異点を中心に説明する。
【0087】
(構成)
第1実施形態の柱梁接合構造10では、下側の中央梁主筋48Bの端部及び第1梁主筋56の他端部に機械式定着板50、58が設けられ、上側の中央梁主筋48Aの端部及び第2梁主筋60の他端部には定着部は設けられていなかった。これに対し、本実施形態の柱梁接合構造100では、
図5に示すように、上側の中央梁主筋102の端部及び第2梁主筋104の他端部にも、定着部としての機械式定着板106、108がそれぞれ設けられている。
【0088】
機械式定着板106、108は、摩擦圧接や螺合等によって上側の中央梁主筋102の端部及び第2梁主筋104の他端部にそれぞれ接合されている。そして、この機械式定着板106によって上側の中央梁主筋102が梁中央部材42のプレキャストコンクリート部44に定着され、機械式定着板108によって第2梁主筋104が梁中央部材42の現場打ちコンクリート部46に定着されている。
【0089】
(作用、効果)
本実施形態の柱梁接合構造100によれば、第1実施形態の柱梁接合構造10と同様の作用、効果を得ることができる。
【0090】
さらに、本実施形態によれば、上側の中央梁主筋102の端部及び第2梁主筋104の他端部に機械式定着板106、108がそれぞれ設けられている。このため、上側の中央梁主筋102及び第2梁主筋104の長さ(定着長)を短くすることができ、鉄筋量を減らすことができる。
【0091】
具体的には、例えば第1実施形態では、
図1に示すように、第2梁主筋60が梁中央部材42の軸方向中央部まで延びていたのに対し、本実施形態では、
図5に示すように、第2梁主筋104の長さを第1梁主筋56と同程度の長さとすることができる。
【0092】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る柱梁接合構造について、
図6を用いて説明する。なお、第1~第3実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、差異点を中心に説明する。
【0093】
(構成)
第1~第3実施形態の柱梁接合構造10、80、100では、梁中央部材42、82の下部がプレキャストコンクリート部44とされ、上部が現場打ちコンクリート部46とされていた。これに対し、本実施形態の柱梁接合構造110では、
図6に示すように、梁中央部材112は、上部及び下部の双方がプレキャストコンクリート部とされたフルプレキャスト構造とされている。
【0094】
具体的には、本実施形態の梁中央部材112は、上部が下部と同様の構成とされており、軸線Pに対して対称形状(線対称形状)とされている。すなわち、梁中央部材112の接合端部(軸方向端部)において、上面及び下面の双方に拡幅部114が形成されている。
【0095】
拡幅部114は、第1~第3実施形態の拡幅部52と同様の構成とされており、拡幅部114を梁中央部材112の軸方向に貫通する貫通孔54がそれぞれ形成されている。また、貫通孔54には、水平方向に延びる第1梁主筋56がそれぞれ挿入されており、第1梁主筋56の一端部は、梁端部20の機械式継手28にそれぞれ接続されている。
【0096】
(施工手順)
本実施形態の柱梁接合構造110を施工する場合、まず、梁中央部材112を上から落とし込んで仕口部材16との接合位置に配置する。
【0097】
次に、上側の拡幅部114に形成された貫通孔54に第1梁主筋56を挿入し、第1梁主筋56の一端部を上部機械式継手28Aに接続する。そして、貫通孔54内及び上部機械式継手28A内に図示しないグラウト等の充填材を充填して固化させることで、上部機械式継手28Aによって上側の接合鉄筋26と上側の第1梁主筋56とを接続する。
【0098】
同様に、下側の拡幅部114に形成された貫通孔54に第1梁主筋56を挿入し、第1梁主筋56の一端部を下部機械式継手28Bに接続する。そして、貫通孔54内及び下部機械式継手28B内に図示しないグラウト等の充填材を充填して固化させることで、下部機械式継手28Bによって下側の接合鉄筋26と下側の第1梁主筋56とを接続する。
【0099】
その後は、第1実施形態と同様に、梁端部20の端面20Aと梁中央部材112の一端面112Aとの間にグラウト等の充填材68を充填することで、仕口部材16と梁中央部材112とを接合する。また、上部柱12Aと柱梁仕口部18とを接合し、図示しないコンクリートスラブを構築する。
【0100】
(作用、効果)
本実施形態によれば、梁中央部材112の上部及び下部の双方において、拡幅部114の貫通孔54に第1梁主筋56を挿通して機械式継手28に接続することで、仕口部材16の接合鉄筋26と梁中央部材112の第1梁主筋56とを接合することができる。
【0101】
すなわち、梁14の中央部を構成する梁中央部材112を、上から落とし込んで仕口部材16との接合位置に配置することが可能となる。このため、梁14と柱梁仕口部18とを接合する際の施工性を高めることができる。
【0102】
さらに、本実施形態によれば、梁中央部材112が、全体がプレキャストコンクリート造とされたフルプレキャスト構造とされている。このため、第1~第3実施形態のような梁中央部材42、82がハーフプレキャスト構造とされている構成と比較して、コンクリートを現場打ちする必要がなく、施工性をより高めることができる。
【0103】
<その他の実施形態>
以上、本発明について第1~第4実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能である。また、第1~第4実施形態の構成は、適宜組み合わせることが可能である。
【0104】
例えば、第1~第3実施形態では、梁中央部材42、82の下部がプレキャストコンクリート部44とされ、上部が現場打ちコンクリート部46とされていた。しかし、梁中央部材の上部がプレキャストコンクリート部とされ、下部が現場打ちコンクリート部とされていてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、補強筋22の端部に定着部としての機械式定着板24が接合されていたが、定着部は、少なくとも補強筋22を梁端部20に定着させることができる構成とされていればよい。このため、例えば上下の補強筋の端部を繋げて横U字状としたり、補強筋の端部をフック状に折曲げたりすることで、定着部を構成してもよい。同様に、第1梁主筋56の他端部や下側の中央梁主筋48Bの端部等に設ける定着部も、機械式定着板50、58には限らない。
【0106】
なお、上記実施形態では、補強筋22の端部に設けられる定着部として機械式定着板24を用いているため、補強筋22の端部がフック状等とされている場合と比較して、梁端部20の端面20Aから突出する定着部の突出長さを短くすることができる。
【0107】
さらに、上記実施形態では、仕口部材16の上面、下面、及び両側面に柱12及び梁14がそれぞれ接合されることにより、柱梁接合構造10、80、100、110が立面視で十字形とされていた。しかし、仕口部材16に下部柱12Bと2本の梁14が接合されている構成(立面視でT字形)や、仕口部材16に下部柱12Bと1本の梁14が接合されている構成(立面視でL字形)、仕口部材16に下部柱12Bと上部柱12A、及び1本の梁14が接合されている構成(立面視でト字形)等とされていてもよい。
【0108】
また、上記実施形態において、梁14の側面を水平方向に貫通する図示しない貫通孔を仕口部材16の梁端部20に形成する構成としてもよい。一般的に、梁端部は降伏ヒンジ領域であるため貫通孔を形成することが難しいが、本実施形態では梁端部20が非降伏ヒンジ領域Rとなるため、例えば設備配管挿通用の貫通孔を梁端部20に形成することが可能となる。
【符号の説明】
【0109】
10、80、100、110 柱梁接合構造
14 梁
16 仕口部材
18 柱梁仕口部
20 梁端部
22 補強筋
24 機械式定着板(定着部の一例)
26 接合鉄筋
28 機械式継手
42、82、112 梁中央部材
48A、48B、84、102 中央梁主筋
52、114 拡幅部
54 貫通孔
56 第1梁主筋
60、86、104 第2梁主筋
88 梁中央側機械式継手