(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】RFタグ
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20230719BHJP
H01Q 9/26 20060101ALI20230719BHJP
H01Q 9/42 20060101ALI20230719BHJP
H01Q 7/00 20060101ALI20230719BHJP
H01Q 19/02 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
G06K19/077 296
G06K19/077 280
G06K19/077 144
H01Q9/26
H01Q9/42
H01Q7/00
H01Q19/02
(21)【出願番号】P 2019102143
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤松 慎也
(72)【発明者】
【氏名】小金井 啓介
(72)【発明者】
【氏名】黒田 純司
【審査官】松平 英
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-123196(JP,A)
【文献】特開2012-48478(JP,A)
【文献】国際公開第2016/170752(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0108221(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0108222(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0134291(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/00-7/14
17/00-19/18
H01Q 5/00-11/20
15/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップと、該ICチップと電気的に結合するループ回路とを少なくとも備えたインレイと、
前記インレイのICチップ及びループ回路に重なるように配置される第1補助アンテナと、
前記インレイに対し、少なくとも前記ICチップに重ならないように配置される第2補助アンテナと、
前記インレイと前記第2補助アンテナに重なるように配置される誘電体層と、
を備え、
前記第1補助アンテナが、
前記誘電体層の前記インレイの配置面とは反対側の面に、前記インレイ及び/又は前記第2補助アンテナの少なくとも一部と重ならないように配置され、
前記インレイと前記第1補助アンテナと前記第2補助アンテナとが電磁的に結合される
ことを特徴とするRFタグ。
【請求項2】
前記インレイの前記誘電体層の配置面とは反対側の面には第2の誘電体層が配置され、
前記第2の誘電体層は、前記誘電体層とともに、前記インレイ及び前記第2補助アンテナの全体を覆うケース状に形成される
ことを特徴とする請求項1記載のRFタグ。
【請求項3】
前記インレイが、
前記ICチップと、前記ループ回路を含むアンテナ部と、該ICチップ及びアンテナ部を搭載する基材とを備え、
前記アンテナ部が、
前記ループ回路のみ、前記ループ回路及び該ループ回路に接続されたモノポールアンテナ、前記ループ回路及び該ループ回路に接続されたダイポールアンテナ、のいずれかで構成される
ことを特徴とする請求項1又は2記載のRFタグ。
【請求項4】
前記第2の誘電体層の前記第1補助アンテナの配置面と反対側の面に配置される背面金属体を備える
ことを特徴とする請求項2記載のRFタグ。
【請求項5】
前記第1補助アンテナが、
前記インレイの保護部材として機能する、所定の金属板で構成される
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載のRFタグ。
【請求項6】
前記第1補助アンテナの長辺の長さが、前記インレイの通信周波数の半波長である
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項記載のRFタグ。
【請求項7】
前記第1補助アンテナ及び前記第2補助アンテナには、切り欠き部が形成されていない
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項記載のRFタグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば金属製の物品など、任意の物品や対象物に取り付けられて使用されるRFタグに関し、特に、ICチップを備えたインレイを物理的・機械的な外力や衝撃等から保護することができるRFタグに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、任意の物品や対象物に対して、当該物品や対象物に関する所定情報を読み書き可能に記憶したICチップを内蔵した所謂RFタグが広く使用されている。
RFタグは、RFID(Radio Frequency Identification)タグ,ICタグ,非接触タグ等とも呼ばれ、ICチップと無線アンテナを備えた電子回路が樹脂フィルム等の基材によって封止・コーティングされた所謂インレイ(インレット)が、タグ(荷札)状に形成されてなる超小型の通信端末であり、読取・書込装置(リーダ・ライタ)によってタグ内のICチップに所定の情報が無線で読み取りや書き込み,読み書き(リードオンリー,ライトワンス,リード・ライト)が行えるようになっている。
【0003】
そして、このようなRFタグに所定の情報を書き込んで任意の物品,対象物等に取り付けることにより、RFタグに記録された情報がリーダ・ライタによりピックアップされ、タグに記録された情報を当該物品に関する所定情報として認識,出力,表示,更新等させることができる。
このようなRFタグは、ICチップのメモリに数百ビット~数キロビットのデータが記録可能であり、物品等に関する情報としては十分な情報量を記録でき、また、読取・書込装置側とは非接触で通信が行えるため接点の磨耗や傷、汚れ等の心配もなく、さらに、タグ自体は無電源にすることができるため対象物に合わせた加工や小型化・薄型化が可能となる。
【0004】
このようなRFタグを用いることで、タグを取り付ける物品に関する種々の情報、例えば当該物品の名称や識別記号,内容物,成分,管理者,使用者,使用状態,使用状況などの種々の情報が記録可能となり、ラベル表面に印刷表示される文字やバーコード等では不可能であった多種多様な情報を、小型化・薄型化されたタグを物品に装着するだけで正確に読み書きすることが可能となる。
ここで、このようなRFタグでは、汎用のインレイ(インレット)と呼ばれるICチップとアンテナをフィルムコーティングしただけのRFタグが広く用いられている。この種のインレイは、小さく薄く、どのような対象物にも場所を取らずに容易に装着でき、直ちにRFタグとして使用できることから、近年広く普及している。
【0005】
ところが、このような汎用のインレイは、ICチップとアンテナを単にフィルムコーティングしただけのものであるため、そのままの状態では、外部から加わる衝撃等によって故障や誤動作,破損などが生じる原因となる。例えば貨物用のパレットやコンテナなどは、恒常的に物理的,機械的な外力・衝撃が加わる状態にあり、そのような対象物に取り付けられて用いられるRFタグの場合、インレイのままの状態では容易に故障・破損等してしまうおそれがあった。
このため、このような外力が加わり易い環境下で使用されるRFタグについては、汎用インレイを所定のカバーやケース,筐体などに収納することで、インレイを物理的・機械的な衝撃等から保護することが行われている。
【0006】
例えば、特許文献1には、汎用インレイを断面コ字形状の保護金属板の間に挟み込んで保護するようにしたRFIDタグが提案されている。
また、特許文献2には、非導電性材料で封止した汎用インレイを、金属ホルダーの中空状のスロット内に埋設するようにしたRFIDタグが提案されている。
このように保護板やホルダー内に汎用インレイを収納・封止することで、インレイを周囲の環境から保護し、特に外部から加わる物理的・機械的な外力や衝撃,衝突等によっても、インレイが容易に故障や破損等しないように保護することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-204130号公報
【文献】特開2007-135183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1,2に提案されている技術では、汎用インレイに備えられるアンテナについての考慮がなされていなかった。
汎用のインレイでは、基本的な構成として、ICチップと、ICチップの周囲近傍に配置されるループ回路を含むアンテナ部を備え、アンテナ部が、ICチップ(ループ回路)の左右両方向に伸びる導体からなるダイポールアンテナを構成している。
このようなダイポールアンテナは、アンテナを構成する導体が所定の長さ、例えば1/2波長の長さとなるようにICチップの両側に左右対称となるように形成される。
【0009】
このため、汎用インレイをそのまま使用する場合には、少なくともダイポールアンテナの長さを配置・収納できる空間が必要となる。
特許文献1,2の技術では、上記のようなダイポールアンテナに対する考慮がなされておらず、インレイ全体を金属製の保護板やホルダー内に収納するだけの構造となっていた。
このため、インレイを含む金属製の保護板やホルダーの寸法は、インレイのダイポールアンテナの長さ(例えば1/2波長)を超える大きさが必要となり、RFタグの小型化や設計の自由度等を阻害する要因となっていた。
【0010】
また、特許文献1,2では、汎用インレイに対して更に補助アンテナを備えることについての考慮もなかった。
RFタグとして汎用のインレイを用いる場合に、更に補助アンテナを積層することにより、汎用インレイの無線通信距離をより長くしたり、周波数帯域を広げたりすることができる。
ところが、そのようなインレイ及び補助アンテナを、特許文献1,2に提案されているような金属製の保護板やホルダー内にそのまま収納すると、インレイ及び補助アンテナの全体が金属製のケースによって電気的に遮蔽・遮断されてしまい、補助アンテナを有効に機能させることができなくなるという問題が発生してしまう。
【0011】
本願の出願人及び発明者は、鋭意研究の結果、インレイのアンテナの寸法の制約を受けることなく、インレイを周囲環境から有効に保護しつつ、補助アンテナの機能を活用してインレイの無線通信を良好に行わせることができるRFタグの発明に想到するに至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明は、上記のような従来の技術が有する課題を解決するために提案されたものであり、インレイの保護カバーとして機能する金属製の補助アンテナをインレイに重ねて配置することにより、インレイに備えられるアンテナの寸法や形状等による制約を受けることなく、物理的・機械的な外力や衝撃等からインレイを有効に保護しつつ、補助アンテナによってインレイの通信特性を向上させることができるRFタグに関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明のRFタグは、ICチップと、該ICチップと電気的に結合するループ回路とを少なくとも備えたインレイと、前記インレイのICチップ及びループ回路に重なるように配置される第1補助アンテナと、前記インレイに対し、少なくとも前記ICチップに重ならないように配置される第2補助アンテナと、前記インレイと前記第2補助アンテナに重なるように配置される誘電体層と、を備え、前記第1補助アンテナが、前記誘電体層の前記インレイの配置面とは反対側に、前記インレイ及び/又は前記第2補助アンテナの少なくとも一部と重ならないように配置され、前記インレイと前記第1補助アンテナと前記第2補助アンテナとが電磁的に結合される構成としてある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ICチップとループ回路を備えたインレイの保護カバーとして機能する金属製の補助アンテナをインレイに重ねて配置することにより、インレイに備えられるアンテナの寸法や形状等による制約を受けることなく、物理的・機械的な外力や衝撃等からインレイを有効に保護しつつ、補助アンテナによってインレイの通信特性を向上させることができる。
したがって、本発明によれば、RFタグの小型化や設計の自由度を確保しつつ、外部から物理的な力や衝撃が加わることの多い対象物用のRFタグとして好適に用いることができる。特に、物理的・機械的な外力や衝撃等により破壊された場合に、RFタグとしての機能の回復が困難となるICチップを有効に保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るRFタグを示す外観斜視図であり、(a)はRFタグの完成状態、(b)はRFタグを構成するインレイ,第1/第2補助アンテナ,誘電体層を分解した状態を示している。
【
図2】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係るRFタグの各構成要素の配置関係を模式的に示す平面図である。 (c)は、本発明の一実施形態に係るRFタグの各構成要素の積層関係を模式的に示す側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るRFタグの通信特性を示す、通信距離と周波数の関係を示す折れ線グラフである。
【
図4】(a)~(d)は、それぞれ本発明の一実施形態に係るRFタグの通信特性を示す、第1/第2補助アンテナの寸法を変更させた場合の通信距離と周波数のピーク値の変化を示す折れ線グラフであり、
【
図5】(a)~(d)は、それぞれ本発明の一実施形態に係るRFタグのインレイ,第1/第2補助アンテナの平面配置位置を異ならせた一例を模式的に示す平面図である。
【
図6】(a)~(d)は、それぞれ本発明の一実施形態に係るRFタグの各構成要素の積層配置位置を異ならせた一例を模式的に示す側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るRFタグのインレイのアンテナ部の構成パターンが異なる場合の第2補助アンテナの平面配置例を示す平面図であり、(a)はインレイのアンテナ部がダイポールアンテナを構成する場合、(b)はインレイのアンテナ部がモノポールアンテナを構成する場合、(c)はインレイのアンテナ部がループ回路のみからなる場合である。
【
図8】(a)~(c)は、それぞれ本発明の一実施形態に係るRFタグのインレイ,第1/第2補助アンテナの平面配置位置を異ならせた他の例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るRFタグの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るRFタグ1を示す外観図であり、(a)はRFタグ1の完成状態の斜視図、(b)はRFタグ1を構成するインレイ10,第1/第2補助アンテナ20,30,誘電体層40,誘電体層50(第2の誘電体層)を分解した状態の斜視図を示している。
また、
図2(a)及び(b)は、インレイ10と第1/第2補助アンテナ20,30の配置関係を模式的に示す平面図、
図2(c)は、RFタグ1の各構成要素の積層関係を模式的に示す側面図である。
【0017】
これらの図に示すように、本実施形態に係るRFタグ1は、無線通信を行うRFタグを構成するインレイ10と、第1/第2補助アンテナ20,30と、誘電体層40,50とからなる各構成要素が垂直方向に積層配置される構造のRFタグとなっている。
そして、RFタグ1の積層方向の最上面に配置される第1補助アンテナ20が、タグ内部に配置されるインレイ10を外的環境から保護する保護カバー(トップカバー)として機能するようになっている。
また、インレイ10に重ねて配置される第2補助アンテナ30が、第1補助アンテナ20とともに、インレイ10のアンテナとして機能することで、インレイ10が第1/第2補助アンテナ20,30に覆われていても、通信機能が損なわれることなく良好な無線通信特性が得られるようになっている。
【0018】
特に本実施形態では、インレイ10が載置・固定される基材となる誘電体層40,50の一面(上面)に積層配置される、RFタグ1のトップカバー(保護カバー)となる第1補助アンテナ20が金属部材(金属板)によって形成されることにより、RFタグ1に外部から加わる衝撃や圧力などの物理的な力に対する耐久性や耐衝撃性,耐圧性等を向上させ、外力や衝撃によって内部に配置されたインレイ10の故障・破損等を有効に防止できるものである。
さらに、そのようなRFタグ1の保護カバーとして機能する第1補助アンテナ20を、インレイ10及び/又は第2補助アンテナ30の少なくとも一部と重ならないように配置し、かつ、第2補助アンテナ30を、インレイ10に対して少なくともICチップ11に重ならないように配置することで、第1/第2補助アンテナ20,30をインレイ10のアンテナとして機能させて、RFタグ1の通信特性を良好な状態に維持・向上させることができるものである。
【0019】
具体的には、本実施形態に係るRFタグ1は、
図1及び
図2に示すように、ICチップ11とアンテナ部12を備えたインレイ10と、インレイ10に対して絶縁状態で同一平面上に配置される面状の第1/第2補助アンテナ20,30と、インレイ10及び第1/第2補助アンテナ20,30が配置・搭載される基材層となるとともに、搭載されたインレイ10に対する誘電率調整層として機能する誘電体層40,50とを備えた構成となっている。
第1/第2補助アンテナ20,30は、それぞれ、インレイ10の通信周波数に対応して所定の形状・大きさに形成されるようになっており、それら第1/第2補助アンテナ20,30が、インレイ10に対して所定位置となるように配置され(
図2(a)~(c)参照)、誘電体層40,50上に搭載されるようになっている。
以下、各部を詳細に説明する。
【0020】
[インレイ]
インレイ10は、図示しないリーダ・ライタ(読取・書込装置)との間で無線による所定の情報の読み取りや書き込み,読み書きが行われるRFタグを構成しており、例えばリードオンリー型,ライトワンス型,リード・ライト型等の種類がある。
具体的には、インレイ10は、ICチップ11と、ICチップ11に電気的に導通・接続されたアンテナ部12とを有し、これらICチップ11及びアンテナ部12が、基材となる例えばPET樹脂等で形成された1枚の封止フィルム13上に搭載,形成された後、もう1枚の封止フィルム13が重ね合わされて、2枚の封止フィルム13によって挟持された状態で封止・保護されている。
図1に示す例では、ICチップ11とICチップ11のタグ長手方向左右の両側に伸びるダイポールアンテナからなるアンテナ部12が、長方形状の封止フィルム13で挟持・封止された矩形状のインレイ10となっている。
【0021】
ICチップ11は、メモリ等の半導体チップからなり、例えば数百ビット~数キロビットのデータが記録可能となっている。
ICチップ11の左右両側には、導体パターンからなるアンテナ部12が接続されており、このアンテナ部12の一部が、ICチップ11の周囲を囲むようにループ状の回路導体からなるループ回路(ループ部)11aとして形成されている。このループ回路11aを経由して、ICチップ11の左右両側にダイポールアンテナを構成するアンテナ部12が接続されるようになっている。
【0022】
そして、このアンテナ部12及び後述する第1/第2補助アンテナ20,30を介して、ICチップ11と図示しないリーダ・ライタとの間で無線通信による読み書き(データ呼び出し・登録・削除・更新など)が行われ、ICチップ11に記録されたデータが認識されるようになっている。
ICチップ11に記録されるデータとしては、例えば、商品の識別コード、名称、重量、内容量、製造・販売者名、製造場所、製造年月日、使用期限等、任意のデータが記録可能であり、また、書換も可能である。
【0023】
ループ回路11aを含むアンテナ部12は、基材となる1枚の封止フィルム13の表面に、例えば導電性インクや導電性を有するアルミ蒸着膜等の金属薄膜をエッチング加工等により所定の形状・大きさ(長さ,面積)に成形することで形成される。
ここで、アンテナ部12は、ICチップ11の左右両側に伸びるダイポールアンテナ部分の長さが、インレイ10の電波周波数の波長の整数分の1、例えば電波周波数の波長の略1/2や略1/4の長さとなるように形成される。
図1,
図2に示すインレイ10では、アンテナ部12は、ICチップ11の左右両側に伸びる長手方向がほぼ直角に2回曲折されることで、アンテナ部12の長手方向の両端が、互いにループ回路11aに向かって伸びる鉤型形状に形成され、所定のアンテナ長となるように形成される。
【0024】
また、本実施形態に係るアンテナ部12は、金属薄膜の中央部分が、ICチップ11の近傍から長手方向の両端部分まで、長手方向に沿って金属薄膜が存在しない中空・打ち抜き状に形成されており、アンテナ部12の導電性部分が環状・ループ状となるように形成されている。
なお、インレイ10に備えられるアンテナ部12は、ICチップ11の左右両側に伸びるダイポールアンテナに限らず、後述するように(
図7,
図8参照)、ICチップ11の左右いずれか一方側のみに伸びるモノポールアンテナとして構成することもできる。
また、ダイポールアンテナやモノポールアンテナを備えないループ回路11aのみからなるアンテナとして構成することもできる(
図7,
図8参照)。
【0025】
封止フィルム13は、例えばポリエチレン,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリプロピレン,ポリイミド,ポリ塩化ビニル(PVC),アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合合成樹脂(ABS)等の可撓性を有するフィルム材からなり、封止するICチップ11・アンテナ部12が外部から視認可能な透明のPET樹脂等で構成されることが好ましい。
また、封止フィルム13の片面側のフィルム表面には、基材や物品への貼り付けができるように粘着層・接着層を備えることができる。
なお、封止フィルム13は、2枚の封止フィルム13によって、ICチップ11及びアンテナ部12を挟持した状態で封止してもよく、また、1枚の封止フィルム13を折り曲げて、ICチップ11及びループ回路11aを含むアンテナ部12を挟持して封止することもできる。
【0026】
インレイ10で使用される通信周波数帯としては、本実施形態のRFタグ1では、所謂UHF帯に属する920MHz帯(915-930MHz:15MHz幅)を対象としている。
一般にRFタグで使用される周波数帯としては、例えば、135kHz以下の帯域、13.56MHz帯、UHF帯に属する860M~960MHz帯、2.45GHz帯等の数種類の周波数帯がある。そして、使用される周波数帯によって無線通信が可能な通信距離が異なるとともに、周波数帯によって最適なアンテナ長などや配線パターンが異なってくる。
【0027】
また、我が国では、電波法の改正により、RFタグについては、これまで使用されていた950MHz帯(950-958MHz:8MHz幅)から920MHz帯(915-930MHz:15MHz幅)へ移行されることになり、利用可能な周波数帯が拡大されるようになった。
そこで、本実施形態では、インレイ10が小型化でき、また、後述する第1/第2補助アンテナ20,30を所定のサイズに形成する関係上、波長が短くアンテナが小型化できるUHF帯を対象とするようにしてあり、具体的には920MHz帯を対象として、この920MHz帯において良好な通信特性が得られるようにしている。
但し、インレイ10や第1/第2補助アンテナ20,30の大きさの制約がなければ、本発明に係る技術思想自体は、920MHz帯、UHF帯以外の周波数帯域についても適用できることは勿論である。
【0028】
[第1補助アンテナ]
第1補助アンテナ20は、RFタグ1の一面側の最上面に積層配置される面状部材であり、所定の金属材料(金属板)で形成されるようになっている。
このような金属製の第1補助アンテナ20を備えることによって、RFタグ1の一面(上面)側が金属板によって保護されることになり、RFタグとしての耐久性や耐衝撃性・耐候性・耐熱性・防水性等が高められるようになる。
また、金属製の第1補助アンテナ20は、RFタグ1の内部に配置されるインレイ10のアンテナとして機能させることができ、RFタグ1の通信特性を良好な状態に維持・向上させることができるようになる。
【0029】
具体的には、第1補助アンテナ20は、
図1に示すように、金属材料からなる板状部材からなり、板状部材には、切り欠き部や開口部などが形成されない、四辺矩形状の金属プレートによって構成されている。
このように切り欠き部や開口部などが形成されない矩形状の第1補助アンテナ20をICチップ及びループ回路に重なるように配置することにより、切り欠き部や開口部を通じての物理的・機械的な外力や衝撃等を防ぐことができ、このような外力や衝撃等によって破壊された場合にRFタグとしての機能の回復が困難となるICチップ等を有効に保護することが可能となる。
【0030】
また、第1補助アンテナ20は、
図2(a)~(c)に示すように、長手方向の寸法が、インレイ10及び第2補助アンテナ30の基材となる誘電体層40,50よりも短くなるように形成されている。
これによって、第1補助アンテナ20は、誘電体層40,50に積層されたインレイ10及び第2補助アンテナ30の少なくとも一部と重ならないように、誘電体層40,50上に積層配置することができる。
その結果、RFタグ1の最上層に金属製の第1補助アンテナ20を配置しても、インレイ10及び第2補助アンテナ30の少なくとも一部を、第1補助アンテナ20によって覆われないように、すなわち、金属製の第1補助アンテナ20が上方に存在しないように露出させることができ(
図2(a)参照)、インレイ10のアンテナ部12や第2補助アンテナ30を、RFタグ1のアンテナとして有効に機能させることができるようになる。
【0031】
なお、
図2(a)では、理解を容易にするために、第1補助アンテナ20の外縁から露出する第2補助アンテナ30が直接視認できるように表してあるが、実際のRFタグ1では、インレイ10・第2補助アンテナ30の上面には誘電体層40が積層されるため(
図2(b)参照)、外部から直接視認することはできない。
したがって、本明細書において「露出」するとは、インレイ10・第2補助アンテナ30が、第1補助アンテナ20の端部・外縁から露出することを意味するものであり、RFタグ1の表面に露出することを意味するものではない。
【0032】
そして、第1補助アンテナ20がRFタグ1の表面(最上面)に配置・固定されることにより、第1補助アンテナ20と、RFタグ1の内部に配置されるインレイ10及び第2補助アンテナ30とが、所定位置に積層配置されるようになる。
このような積層配置構成により、第1補助アンテナ20とインレイ10のICチップ11とは、
図2(c)に示すように、誘電体層40や第2補助アンテナ30を介して対向配置されるようになり、所謂コンデンサカップリングによって電磁的に接続・結合されるようになり、第1補助アンテナ20がインレイ10のアンテナ(補助アンテナ)として機能するようになる。
【0033】
具体的には、第1補助アンテナ20は、インレイ10に備えられるアンテナ部12とともに、あるいはアンテナ部12に代えて、インレイ10の通信特性を向上・調整するためのアンテナとして機能するものであり、インレイ10の片面側(上面側)に積層配置される面状の導電性部材によって構成され、インレイ10とは、インレイ10を樹脂封止する封止フィルム13及び誘電体層40によって絶縁状態となって配置される。
すなわち、金属等の導電性部材からなる第1補助アンテナ20は、インレイ10が封止フィルム13によって全体が樹脂封止され、また、インレイ10と第1補助アンテナ20との間には誘電体層40が積層されていることから、物理的にはインレイ10と絶縁状態となっている。
【0034】
そして、そのような第1補助アンテナ20がインレイ10の片面側に積層・配置されることで、第1補助アンテナ20とインレイ10のICチップ11は、封止フィルム13・誘電体層40を介して対向配置されるようになり、所謂コンデンサカップリングによって電磁的接続がなされるようになる。
これによって、インレイ10には第1補助アンテナ20が縦方向(高さ方向)に積層されることで、インレイ10のループ回路11aを含むアンテナ部12とともに、あるいはアンテナ部12に代えて、第1補助アンテナ20により二次元アンテナが構成され、第1補助アンテナ20が通信電波のブースターとして機能することになり、インレイ10の通信特性の調整・向上が図られることになる。
【0035】
ここで、第1補助アンテナ20は、
図2(a)に示すように、長手方向の長さが、インレイ10の電波周波数の波長の略1/2の長さ(半波長)となるように形成されることが好ましい。
そして、RFタグ1の全体の大きさ(長さ)は、第1補助アンテナ20の長さによってほぼ規定されることになる。
【0036】
したがって、第1補助アンテナ20の長さを1/2波長とすれば、良好な通信特性を確保しつつ、RFタグ1の全体の大きさ(長さ)もほぼ1/2波長(半波長)かそれよりやや大きい(長い)サイズに収めることができる。
また、RFタグ1の全長の小型化を図る場合には、例えば第1補助アンテナ20の大きさとして、隣接する短辺・長辺の2辺の合計の長さが、インレイ10の電波周波数の波長の例えば略1/2の長さとなるように形成することもできる。
【0037】
このような構成により、第1補助アンテナ20は、インレイ10の電波周波数の波長の略1/2の長さのアンテナとして、良好な通信特性が得られるようになる。
具体的には、例えば対象とするインレイ10の通信周波数920MHzの場合には、λ≒326.0mm,λ/2≒163.0mmとなる。したがって、第1補助アンテナ20は、長辺の長さ、あるいは長辺と短辺を合わせた2辺合計の長さが、163.0mm前後となるように形成されることになる。
【0038】
なお、前述のようにインレイ10は、ICチップ11と、ICチップ11に電気的に導通・接続されたアンテナ部12とを有し、これらICチップ11及びアンテナ部12が、基材となる例えばPET樹脂等で形成された1枚の封止フィルム13上に搭載,形成された後、もう1枚の封止フィルム13が重ね合わされて、2枚の封止フィルム13によって挟持された状態で封止・保護されるように構成されている。
また、インレイ10と第1補助アンテナ20の間には誘電体層40、取付面側には誘電体50が介在する。
このため、本実施形態に係るインレイ10においては、導体である第1補助アンテナ20とインレイ10のアンテナ部12にPET層や誘電体層が介在する構造によって波長短縮効果が生じ、見かけの波長が短縮されることがある。これらの比誘電率はおよそ「2~4」である。波長短縮率は、√(比誘電率)であるから、およそ√(2~4)程度となる。
このため、上述した第1補助アンテナ20の長辺の長さ、あるいは長辺及び短辺の2辺の長さもおよその値であり、その長さが例えば略λ/2の値となっていれば十分であり、RFタグ1の誘電体層40,50の材質や誘電率,タグの使用環境,使用態様等による通信特性の変化に応じて長さが前後することはある。
【0039】
以上のように、RFタグ1の表面を覆う第1補助アンテナ20を金属製とすることにより、RFタグ1に加わる機械的・物理的な外力・衝撃等に対しても、金属製の第1補助アンテナ20が有する強度・耐久性・耐衝撃性によって筐体内部を保護することができ、RFタグ1内に収納されるインレイ10が破損したり故障したりすることを有効に防止することができる。
そして、金属製の第1補助アンテナ20を備えることで、第1補助アンテナ20をRFタグ1のインレイ10のアンテナとして機能させることが可能となり、インレイ10がダイポールアンテナを備えなくてもRFタグ1の無線通信が行えるようになる。
【0040】
ここで、第1補助アンテナ20を構成する金属材料としては、例えば鋼鉄や銅,ステンレス,アルミ合金,亜鉛合金等を用いることができる。
なお、RFタグ1を金属製とするのは、RFタグ1の表面に加わる機械的・物理的な外力に対する耐久性・耐衝撃性等を得るとともに、RFタグ1の表面に配置される金属部材によってインレイ10の補助アンテナを構成するためである。
したがって、そのような目的を達成するためには、RFタグ1の表面側(上面側)に配置される第1補助アンテナ20が金属製であれば、RFタグ1の裏面側(底面側)は金属製であっても非金属製(例えば合成樹脂製)であっても良く(後述する
図6参照)、例えば、RFタグ1の裏面側の誘電体層50の表面にも金属製のプレート部材等を配置することも可能である。
【0041】
[第2補助アンテナ]
第2補助アンテナ30は、上述したインレイ10の通信特性を向上・調整するためのエクストラアンテナとして機能するものであり、
図1及び
図2に示すように、誘電体層40,50上に搭載されて、インレイ10と同一平面上に配置される面状の導電性部材からなり、封止フィルム13によって樹脂封止されたインレイ10とは絶縁状態となっている。すなわち、インレイ10は、封止フィルム13によって全体が樹脂封止されており、導電性部材からなる第2補助アンテナ30とは物理的には絶縁状態となっている。
このような第2補助アンテナ30がインレイ10の近傍に配置されることで、第2補助アンテナ30とインレイ10のICチップ11は、封止フィルム13を介して対向配置されるようになり、所謂コンデンサカップリングによって電磁的接続がなされるようになる。
【0042】
そして、第2補助アンテナ30は、
図2(b),(c)に示すように、インレイ10に対して、少なくともインレイ10のICチップ11に重ならないように配置され、かつ、そのようなインレイ10及び/又は第2補助アンテナ30の少なくとも一部が、第1補助アンテナ20と重ならないように配置される。
同図に示す例では、第2補助アンテナ30は、インレイ10の長手方向に沿って、インレイ10の右側のアンテナ部12のみに重ねて配置され、ICチップ及び左側のアンテナ部12には重ならないように配置される(
図2(b)参照)。
さらに、そのようなインレイ10及び第2補助アンテナ30に対して、第1補助アンテナ20が長手方向に沿って、インレイ10の全体と、第2補助アンテナ30の左側部分に重なるように配置され、その結果、第2補助アンテナ30の右側端部には、第1補助アンテナ20が重ならず、第2補助アンテナ30の一部が、例えば10~20mm程度露出されるようになる(
図2(a)参照)。
なお、
図2(a)では、理解を容易にするために、第1補助アンテナ20の外縁から露出する第2補助アンテナ30が直接視認できるように表してあるが、実際のRFタグ1では、第2補助アンテナ30の上面には誘電体層40が積層されるため、外部から直接視認することはできない。
【0043】
このように、インレイ10には第2補助アンテナ30が同一平面上で対向して配置され、かつ、インレイ10のICチップ11には重ならないように配置され、さらに、第2補助アンテナ30(又はインレイ10)の一部が、第1補助アンテナ20に重ならず露出されるように配置されることで、第2補助アンテナ30を第1補助アンテナ20とともに、インレイ10のアンテナとして有効に機能されることができるようになる。
すなわち、インレイ10のアンテナ部12及び第1/第2補助アンテナ20,30により二次元アンテナが構成され、第2補助アンテナ30が、第1補助アンテナ20とともに通信電波のブースターとして機能することになり、インレイ10の通信特性の調整・向上が図られることになる。
【0044】
ここで、第2補助アンテナ30は、例えばPET樹脂等の基材となるフィルムの表面に形成された導電性インクや導電性を有するアルミ蒸着膜等の金属薄膜を、エッチング加工や打ち抜き加工等により所定の形状・大きさ(長さ,面積)に成形することで形成することができる。
本実施形態では、第2補助アンテナ30は、
図2(a)~(c)に示すように、長辺及び短辺が、インレイ10の長辺及び短辺とほぼ同じ長さの矩形・面状に形成されるようになっている。
また、第2補助アンテナ30は、基材となる誘電体層40,50からはみ出すことがないように、長辺及び短辺とも、誘電体層40,50の長辺及び短辺よりも短くなるように形成され、
図2(a)及び(b)に示すように、第2補助アンテナ30がインレイ10のICチップ11に重ならないように配置された状態で、誘電体層40,50の表面に収まるようになっている。
【0045】
第2補助アンテナ30がインレイ10のループ回路11a、特にICチップ11に重なって配置されると、第2補助アンテナ30を形成する導電性部材によりICチップ11の通信特性が損なわれることがある。
すなわち、インレイ10のICチップ11近傍にはループ回路11aが形成されており、このループ回路11aは、インピーダンスの整合を図る目的があり、かつ、磁界成分での通信を行うために設けられており、この磁界成分が第2補助アンテナ30の導体により阻害されないようにする必要がある。
一方で、第2補助アンテナ30とインレイ10とが離れすぎてしまうと、封止フィルム13を介した所謂コンデンサカップリングによる電気的接続が不十分となり、良好な通信特性が得られないことになる。
【0046】
そこで、本実施形態では、第2補助アンテナ30は、少なくともインレイ10のICチップ11に重ならないように配置されるようになっている。
また、第2補助アンテナ30は、インレイ10の全体を被覆する封止フィルム13を介してインレイ10のICチップ11を除く部分、すなわち、ループ回路11aを含むアンテナ部12の一部に重なっており、第2補助アンテナ30とインレイ10のICチップ11は、封止フィルム13を介して対向配置され、コンデンサカップリングによって電磁的接続される。
このような配置構成によって、第2補助アンテナ30は、インレイ10の通信機能を阻害することなく、インレイ10のアンテナ部12とともにアンテナ面積を広く確保することができ、それによってアンテナ利得を最大限に増大させることができるようになる。
【0047】
なお、インレイ10に対してデータの読み書きが行われる際に第2補助アンテナ30に流れる電流は、面状の第2補助アンテナ30の周縁部分にしか流れない(表皮効果)。
そこで、第2補助アンテナ30は、上述した大きさ・形状を有していれば、面状部分を例えばメッシュ(網目)状,格子状等に形成することができる。
このように第2補助アンテナ30をメッシュ状等に形成することで、表皮効果によりアンテナとしての機能は損なわれず、かつ、第2補助アンテナ30の全体の導体部分の面積を少なくすることができ、第2補助アンテナ30を形成する導電性インク等の導体材料を節減でき、RFタグ1の更なる低コスト化を図ることができるようになる。
【0048】
[誘電体層]
誘電体層40,50は、上述したインレイ10及び第2補助アンテナ30が搭載される基材層となるとともに、搭載されたインレイ10に対する誘電率調整層として機能する部材である。本実施形態では、同形・同大の2枚の誘電体層40,50が備えられている。
具体的には、誘電体層40,50は、インレイ10及び第2補助アンテナ30がはみ出さずに同一平面上に配置・搭載できるように、上述したインレイ10及びインレイ10に対して少なくともICチップ11に重ならないように配置された第2補助アンテナ30の外形よりも一回り大きな、同形・同大の板状・面状等に形成されている(
図2参照)。この誘電体層40,50によって、RFタグ1の外形の大きさが規定されることになる(
図1及び
図2参照)。
【0049】
このような2枚の誘電体層40,50は、まず、RFタグ1の下層側(底面側)の誘電体層50の一面側(
図1の上面側)には、インレイ10と第2補助アンテナ30が同一平面上に積層配置される。このとき、第2補助アンテナ30は、インレイ10の少なくともICチップ11に重ならないように配置される。
そして、インレイ10・第2補助アンテナ30が搭載された誘電体層40の一面(上面)には、RFタグ1の上層側(上面側)の第1補助アンテナ20が重ねられ、カバー部材としてインレイ10・第2補助アンテナ30の上面を覆うように積層配置・固定される。
【0050】
これによって、インレイ10及び第2補助アンテナ30は、2枚の誘電体層40,50によって挟持された状態で封止され、外部から保護されるようになる。
このように、本実施形態では、2枚の誘電体層40,50が、積層されたインレイ10及び第2補助アンテナ30の全体を覆うケース(筐体)状に形成されるようになり、ケース状の誘電体層40,50によって、インレイ10及び第2補助アンテナ30が保護されることにより、RFタグ1としての耐候性や耐熱性・防水性が高められるようになる。
【0051】
このようなケース(筐体)として構成される誘電体層40,50は、例えば図示しない嵌合構造によって、あるいは、超音波溶着や接着剤等によって分離不能に固定・固着される。
また、誘電体層40,50の間に配設されるインレイ10及び第2補助アンテナ30も、誘電体層40の表面に配設される第1補助アンテナ20についても、嵌合構造や接着剤等によって、誘電体層40,50から脱落不能に固定・固着される。
また、誘電体層40,50のうち、RFタグ1の底面側となる誘電体層50には、特に図示しないが、例えば両面テープ(粘着テープ)等からなる粘着材や、板状のマグネットなどが備えられ、粘着材の粘着力やマグネットの磁力によって、取付対象となる金属物品の表面に貼着・取付されるようにすることができる。
これによって、RFタグ1は、誘電体層50が取付対象の表面に貼付・固定されて、容易に脱落・剥離等されないように金属物品の表面に配置・固着される。
【0052】
ここで、以上のような本実施形態に係る誘電体層40,50としては、例えば、ポリカーボネート樹脂,アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(AES)樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリスチレン樹脂,アクリル樹脂,ポリエステル樹脂,ポリフェレニンサルファイド樹脂,アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂,ポリ塩化ビニル樹脂,ポリウレタン樹脂,フッ素樹脂,シリコーン樹脂などの熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等の樹脂材料、あるいは発泡ポリエチレン,アクリルフォーム、発泡ポリプロピレン等の架橋ポリオレフィン発泡体によって形成することができる。
また、各誘電体層40,50は、それぞれ上記のような樹脂材料あるいは架橋ポリオレフィン発泡体により形成した単一の帯状部材によって構成することもでき、また、複数(例えば二層)の帯状部材を重ね合わせて一つの誘電体層40又は誘電体層50を構成することもできる。
【0053】
また、以上のような誘電体層40,50は、第2補助アンテナ30とともに積層配置されるインレイ10の通信特性を調整する所定の比誘電率を有するように形成されることで、誘電体層40,50を基材として搭載・積層されたインレイ10に対する誘電率調整層として機能させることができる。
例えば、誘電体層40,50は、所定の部材によって、所定の厚みで形成されることにより、インレイ10の通信特定に対して好適な比誘電率を有する誘電率調整層として形成することができる。
【0054】
このように、誘電体層40,50が所定の比誘電率・厚みを有することにより、RFタグ1の取付対象となる金属からの影響を誘電体層40,50によって回避・吸収することができ、RFタグ1の通信特性として、後述するような良好な通信距離を得ることができるようになる(
図3参照)。
したがって、使用するインレイ10の種類や通信特性,RFタグ1を使用する物品・使用環境・使用周波数帯域などの諸条件を考慮して、誘電体層40,50として適切な材質と厚みを選定し、誘電体層40のみを選択・交換することで、RFタグ1を異なる物品に使用したり、異なる通信周波数に対応させることが可能となる。
【0055】
[通信特性]
次に、以上のような構成からなる本実施形態に係るRFタグ1の通信特性について、
図3及び
図4を参照しつつ説明する。
図3~
図4は、本発明の一実施形態に係るRFタグ1の通信特性を示す、通信距離と周波数の関係を示す折れ線グラフである。
なお、RFタグ1の通信特性の評価は、公知の評価方法・評価システムを用いることができ、以下に示す本実施形態の評価は、評価システムとして、Voyantic社のTagformanceシステムを用いて実施した。
また、評価は、通信距離を直接測定するのではなく、一定距離においたときに、電波強度から換算した値によって行った。
また、測定は、RFタグ1を、ステンレス板(150*100*t2mm)に貼付して評価を行った。
【0056】
図3に示すグラフは、本実施形態に係るRFタグ1と、本願の出願人に係る先行出願(特願2018-138196号)で提案している、モノポールアンテナを有するインレイを内部に収納した筐体の表面に、切り欠き部を形成した補助アンテナを備え、筐体内においてインレイのICチップ及びループ回路が切り欠き部の直下に配置されるようにしたRFタグ(比較例1)とを対比させた場合である。
同図中、実線は、比較例1に係るRFタグ、破線は、比較例1のインレイを切り欠き部の直下から補助アンテナの直下に移動させた場合(比較例2)、一点鎖線は、本実施形態に係るRFタグ1の場合である。
【0057】
これらのグラフに示すように、まず、比較例1のRFタグは、高周波数帯において、特に860~940MHz帯において、長い通信距離が得られていることが分かる。
一方、比較例2のRFタグの場合には、無線通信が可能な帯域が極端に狭くなり、通信距離も非常に短く(3m以下)なってしまい、実用に堪えないものになっていることが分かる。これは、筐体表面に配置した補助アンテナによってインレイの通信機能が阻害されるためである。
【0058】
これらに対して、本実施形態に係るRFタグ1では、通信可能な周波数帯域は比較例1よりも若干狭くなっているが、比較例1と同様の長い通信距離が得られていることが分かる。
特に、920~940MHz帯においては、10m以上の通信距離が得られており、920MHz帯において、通信距離のピーク(約13m)が得られている。
【0059】
図4(a)~(d)に示すグラフは、いずれも本実施形態において、補助アンテナの寸法等を変化させた場合の通信特性を示している。
図4(a)に示すグラフは、第1補助アンテナ20の全長(長手方向)を変更させた場合であり、第1補助アンテナ20の全長を短くするほど、通信距離のピークが高周波数帯にシフトすることが分かる。
図4(b)に示すグラフは、第1補助アンテナ20の全幅(短手方向)を変更させた場合であり、第1補助アンテナ20の全幅を長くするほど、通信距離のピークが低周波数帯にシフトすることが分かる。
【0060】
図4(c)に示すグラフは、第2補助アンテナ30の全幅(短手方向)を変更させて、第2補助アンテナ30が第1補助アンテナ20から露出する面積を変更させた場合であり、第2補助アンテナ30の露出面積が大きくなると、特に低周波帯域における通信距離が長くなることが分かる。
図4(d)に示すグラフは、同じ第2補助アンテナ30の配置位置を移動させて、第2補助アンテナ30が第1補助アンテナ20から露出する面積を変更させた場合であり、第2補助アンテナ30の露出面積が大きくなると、通信距離が長くなることが分かる。
また、第2補助アンテナ30の全体が第1補助アンテナ20に隠れて露出面積がゼロの場合には、
図3の比較例2の場合と同様に、通信可能の周波数帯域も通信距離も極端に低くなってしまい、実用に堪えないものとなってしまうことが分かる。
【0061】
以上の
図3及び
図4の結果から、第1補助アンテナ20の寸法(全長・全幅)を変更することで、通信可能な周波数帯域を移動・調整することができ、また、第2補助アンテナ30が第1補助アンテナ20から露出する面積を変更することで、通信距離を調整・変更することができることが分かる。
したがって、周波数帯域・通信距離の設定・調整を行う場合には、第1/第2補助アンテナ20,30の全長・全幅により大まかな調整を行い、その後、第2補助アンテナ30の配置位置を変更・調整することにより微調整が行えるようになる。
【0062】
[平面配置パターン]
次に、実施形態のRFタグ1における、インレイ10と第1/第2補助アンテナ20,30の平面配置パターンについて、
図5を参照しつつ説明する。
図5(a)~(d)は、それぞれ本実施形態に係るRFタグ1のインレイ10と第1/第2補助アンテナ20,30の平面配置位置を異ならせた一例を模式的に示す平面図である。
同図に示す例では、RFタグ1は、第1補助アンテナ20の長手方向及び短手方向の寸法が、インレイ10及び第2補助アンテナ30の基材となる誘電体層40,50よりも小さくなるように形成される。
【0063】
具体的には、例えば対象とするインレイ10の通信周波数920MHzの1/2波長に対応して、第1補助アンテナ20の長手方向が約110mm、短手方向が約20mmに形成され、基材となる誘電体層40,50は、それよりも一回り大きい大きさ、例えば長手方向が約130mm、短手方向が約30mmに形成される。
また、インレイ10及び第2補助アンテナ30も、誘電体層40,50上にはみ出すことなく配置でき、第1補助アンテナ20がインレイ10のICチップ及びループ回路11aに重ねて配置できるように、長手方向及び短手方向の寸法が、誘電体層40,50や第1補助アンテナ20よりも小さくなるように設定される(
図2参照)。
【0064】
これによって、第1補助アンテナ20は、誘電体層40,50に積層されたインレイ10及び第2補助アンテナ30の少なくとも一部と重ならないように、誘電体層40,50上に積層配置することができる。
以下、
図5を参照して、第1補助アンテナ20とインレイ10・第2補助アンテナ30の平面配置パターンの具体例を示す。
なお、
図5では、理解を容易にするために、第1補助アンテナ20の外縁から露出するインレイ10・第2補助アンテナ30が直接視認できるように表してあるが、実際のRFタグ1では、インレイ10・第2補助アンテナ30の上面には誘電体層40が積層されるため、外部から直接視認することはできない。
【0065】
図5(a)に示す例では、第1補助アンテナ20の長手方向の両端から、インレイ10・第2補助アンテナ30の一部がそれぞれ露出する場合であり、第1補助アンテナ20の左端側からインレイ10の左端側のアンテナ部12の端部が、第1補助アンテナ20の右端側から第2補助アンテナ30の右端が露出している。このインレイ10・第2補助アンテナ30の露出長は、例えば10~20mm程度に設定することができる。
図5(b)に示す例では、第1補助アンテナ20の長手方向の一端から、第2補助アンテナ30の一部のみが露出する場合であり、第1補助アンテナ20の右端側から第2補助アンテナ30の右端が露出している。この第2補助アンテナ30の露出長も、例えば10~20mm程度に設定することができる。
【0066】
図5(c)に示す例では、第1補助アンテナ20の長手方向の他端から、インレイ10の一部のみが露出する場合であり、第1補助アンテナ20の左端側からインレイ10のアンテナ部12の左端が露出している。このインレイ10の露出長も、例えば10~20mm程度に設定することができる。
図5(d)に示す例では、第1補助アンテナ20の短手方向の一端から、第2補助アンテナ30の一部のみが露出する場合であり、第1補助アンテナ20の下端側から第2補助アンテナ30の下端が長手方向全体にわたって一定の幅で露出している。この第2補助アンテナ30の露出幅は、例えば5~10mm程度に設定することができる。
なお、上記のような第1補助アンテナ20とインレイ10・第2補助アンテナ30の配置・露出パターンは、あくまでも一例であり、
図5に示すパターン以外にも、第1補助アンテナ20が、インレイ10及び/又は第2補助アンテナ30の少なくとも一部と重ならないように配置される限り、他の配置・露出パターンを採用することも勿論可能である。
【0067】
[積層配置パターン]
次に、本実施形態に係るRFタグ1の積層配置パターンについて、
図6を参照しつつ説明する。
図6(a)~(d)は、それぞれ本実施形態に係るRFタグ1の各構成要素の積層配置パターンを模式的に示す側面図である。
同図に示すように、本実施形態に係るRFタグ1は、[インレイ10・第1/第2補助アンテナ20,30・誘電体層40,50]の5つの要素からなり、これらが取付対象物(背面金属体100・背面非金属体200)に取付・固定等されるようになっている。
【0068】
これらRFタグ1を構成する5つの要素は、
図6(a)及び(b)に示すように、[背面金属体100→誘電体層50→インレイ10→第2補助アンテナ30→誘電体層40→第1補助アンテナ20]の順に積層されてもよく、また、インレイ10と第2補助アンテナ30を入れ替えて、[背面金属体100→誘電体層50→第2補助アンテナ30→インレイ10→誘電体層40→第1補助アンテナ20]の順に積層されてもよい。
また、
図6(c)に示すように、誘電体層40,50は、インモールド成形などによって、インレイ10・第2補助アンテナ30を内部に一体的に収納・封止する構成とすることもできる。
さらに、
図6(d)に示すように、RFタグ1の取付対象物としては、金属製の物品・物体だけでなく、例えば合成樹脂製のような非金属の物品・物体(背面非金属体200)であっても、安定的に無線通信を行うことができる。
【0069】
[インレイのアンテナ部]
次に、本実施形態に係るRFタグ1のインレイ10のアンテナ部12の構成パターンについて、
図7を参照しつつ説明する。
図7は、本実施形態に係るインレイ10のアンテナ部12の構成パターンが異なる場合の第2補助アンテナの平面配置例を示す平面図であり、(a)はアンテナ部12がダイポールアンテナを構成する場合、(b)はアンテナ部12がモノポールアンテナを構成する場合、(c)はアンテナ部12がループ回路11aのみからなる場合である。
同図に示すように、インレイ10に備えられるアンテナ部12は、ICチップ11の左右両側に伸びるダイポールアンテナとして構成される場合(
図7(a)参照)の他、ICチップ11の左右いずれか一方側のみに伸びるモノポールアンテナとして構成することができ(
図7(b)参照)、また、ダイポールアンテナやモノポールアンテナを備えないループ回路11aのみからなるアンテナとして構成することができる(
図7(c)参照)。
【0070】
汎用のインレイは、ICチップ11の両側(左右)に直線状に伸びる導体からなるダイポールアンテナが備えられることが一般的であるが、ダイポールアンテナは、アンテナを構成する導体が、例えば1/2波長の長さとなるようにICチップの両側に左右対称となるように備えられため、汎用インレイをそのまま使用する場合には、少なくともダイポールアンテナの長さを配置・収納可能な空間が必要となるため、インレイを含む基材や保護カバーなどの寸法が、ダイポールアンテナの長さ(例えば1/2波長)を超える大きさが必要となり、RFタグの小型化や設計の自由度等が制約される場合もあり得る。
また、インレイに対して、インレイが備えるアンテナ以外に、別途補助アンテナを備えるようにした場合、補助アンテナがインレイのアンテナとして機能することによって、インレイ側にダイポールアンテナがなくても無線通信が行えるようになる。
【0071】
そこで、本実施形態では、インレイ10が、ICチップ11(ループ回路11a)の両側に伸びるダイポールアンテナを備える構成とする他、モノポールアンテナを備える構成や、ダイポールアンテナ・モノポールアンテナを備えないループ回路11aのみを備える構成とすることにより、インレイ10のアンテナの寸法・形態の制約を受けることなく、また、補助アンテナの機能を有効に活用してインレイの無線通信を良好に行わせることができるようにすることができる。
なお、モノポールアンテナやループ回路11aのみで構成されるアンテナ部12を備えるインレイ10は、例えば、ダイポールアンテナを備えた汎用のインレイを用いて、ダイポールアンテナ部分の一部又は全部を切断して除去することにより構成することができる。また、所定の長さ・形状のモノポールアンテナを備えたインレイ10や、ICチップ11及びループ回路11aのみを備えたインレイ10を、専用のインレイとして製造することによっても構成することができる。
【0072】
[ダイポールアンテナ]
図7(a)は、インレイ10のアンテナ部12がダイポールアンテナとして構成される場合である。
この場合には、第2補助アンテナ30は、少なくともICチップ11に重ならないように配置されればよく、ICチップ11の左右両側に伸びるアンテナ部12のいずれか一方のみに第2補助アンテナ30を重ねて配置させることもでき、また、左右双方のアンテナ部12にそれぞれ第2補助アンテナ30を重ねて配置させることもできる。
【0073】
[モノポールアンテナ]
図7(b)は、インレイ10のアンテナ部12がモノポールアンテナとして構成される場合である。
この場合にも、第2補助アンテナ30は、少なくともICチップ11に重ならないように配置されればよく、ICチップ11の左右片側に伸びるアンテナ部12のみに第2補助アンテナ30を重ねて配置させることができ、また、アンテナ部12が形成されていないループ回路11aの縁に第2補助アンテナ30を重ねて配置させることもでき、さらに、アンテナ部12側とループ回路11a側の双方に、それぞれ第2補助アンテナ30を重ねて配置させることもできる。
このように、アンテナ部12のモノポールアンテナやループ回路11aの少なくとも一部に第2補助アンテナ30が重ねて配置されることで、インレイ10の通信特性を調整・向上させることができるとともに、インレイ10(RFタグ1)の平面視長手方向の長さを、ダイポールアンテナを備えるインレイ10の場合と比較して小型化(短尺化)することができる。
【0074】
[ループ回路のみ]
図7(c)は、インレイ10のアンテナ部12がダイポールアンテナもモノポールアンテナも備えず、ループ回路11aのみを備えて構成される場合である。
この場合にも、第2補助アンテナ30は、少なくともICチップ11に重ならないように配置されればよく、ICチップ11の左右両側のループ回路11aの一方の縁部又は双方の縁部に、第2補助アンテナ30を重ねて配置させることができる。
この場合にも、ループ回路11aに第2補助アンテナ30が重ねて配置されることにより、第2補助アンテナ30がインレイ10のアンテナ部12として機能することにより、インレイ10(RFタグ1)の通信特性を調整・向上させることができる。
【0075】
[その他の形態]
以上、
図2,
図5~
図8を参照して、RFタグ1の各構成要素の配置パターンの実施形態を説明したが、さらに、
図8に示すようなインレイ10と第2補助アンテナ30の配置パターンを採用することもできる。
図8(a)に示す例は、インレイ10のアンテナ部12がモノポールアンテナとして構成される場合に、ループ回路11aのICチップ11に対向する下端縁に沿って、小形の面状の第2補助アンテナ30を重ねて配置させた場合である。
図8(b)に示す例は、インレイ10のアンテナ部12がループ回路11aのみで構成される場合に、ループ回路11aのICチップ11に対向する下端縁に沿って、小形の線状の第2補助アンテナ30を重ねて配置させた場合である。
【0076】
図8(c)に示す例は、
図8(b)に示す線状の第2補助アンテナ30を、インレイ10の片側に面状に連設・延設して、インレイ10の片側に伸びるモノポールアンテナとして形成・配置させた場合である。
以上のように、インレイ10に重ねて配置される第2補助アンテナ30の形態も、インレイ10やアンテナ部12の構成・形態などに応じて、所定の構成・形態にすることができ、インレイ10の通信特性について柔軟かつきめ細かい調整・対応を行うことができる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態のRFタグ1によれば、RFタグ1の最上面に配置される第1補助アンテナ20を、タグ内部に配置されるインレイ10を外的環境から保護する保護カバー(トップカバー)として機能させることができる。
また、RFタグ1の内部においてインレイ10に重ねて配置される第2補助アンテナ30を、第1補助アンテナ20とともに、インレイ10のアンテナとして機能させることができる。これによって、インレイ10が第1/第2補助アンテナ20,30に覆われていても、通信機能が損なわれることなく良好な無線通信特性が得られるようになっている。
【0078】
特に、RFタグ1のトップカバー(保護カバー)となる第1補助アンテナ20を金属部材(金属板)によって構成することにより、RFタグ1に外部から加わる衝撃や圧力などの物理的な力に対する耐久性や耐衝撃性,耐圧性等を向上させ、外力や衝撃によって内部に配置されたインレイ10の故障・破損等を有効に防止できるようになる。
また、そのようなRFタグ1の保護カバーとして機能する第1補助アンテナ20は、インレイ10及び/又は第2補助アンテナ30の少なくとも一部と重ならないように配置され、さらに、第2補助アンテナ30が、インレイ10に対して少なくともICチップ11に重ならないように配置されることにより、第1/第2補助アンテナ20,30をインレイ10のアンテナとして機能させて、RFタグ1の通信特性を良好な状態に維持・向上させることが可能となる。
【0079】
したがって、第1/第2補助アンテナ20,30によってインレイ10の一部又は全部が覆われることによっても、インレイ10の電気的特性が影響を受けることがなく、かつ、インレイ10のアンテナ部12と第1/第2補助アンテナ20,30のアンテナ機能を可能な限り有効に利用して、アンテナ利得を最大限に増大させることができる。
このように、本実施形態に係るRFタグ1では、RFタグ1自体が備えるアンテナ部12やループ回路11aを有効かつ最大限に機能させつつ、第1/第2補助アンテナ20,30を任意に構成・配置等することができ、RFタグ1の設計の自由度を向上させることができ、使用するインレイ10に最適な第1/第2補助アンテナ20,30を調整・変更等することができ、良好な通信特性が得られる金属対応のRFタグを実現することができるようになる。
【0080】
以上、本発明のRFタグについて、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係るRFタグは、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0081】
例えば、上述した実施形態では、本発明に係るRFタグを取り付けて使用する物品・対象物として、例えばアルミ製の金属容器や金属製の筐体などを想定しているが、本発明のRFタグを使用できる物品,対象物としては、アルミ製の金属容器や金属製の筐体に限定されるものではない。
すなわち、RFタグが使用され、リーダ・ライタを介して所定の情報・データが読み書きされる物品,対象物であれば、どのような物品・対象物であっても本発明に係るRFタグを適用することができる。例えばアルミ製の金属容器や金属製の筐体以外では、金属製のヒータや電気製品,食器,調理器具,家具,什器,コンテナ,自動車など、金属製の任意の物品・対象物に好適に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、例えば貨物用のパレットやコンテナなど、任意の物品や対象物に取り付けられて使用される、耐久性や耐衝撃性等を高めるためにインレイを保護するための構造を備えるRFタグとして好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 RFタグ
10 インレイ
11 ICチップ
11a ループ回路
12 アンテナ部
13 封止フィルム
20 第1補助アンテナ(保護カバー)
30 第2補助アンテナ
40 誘電体層
50 誘電体層
100 背面金属体(取付対象物)
200 背面非金属体(取付対象物)