(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】軟磁性合金粉末及びそれを用いた電子部品
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20230719BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20230719BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20230719BHJP
B22F 3/02 20060101ALI20230719BHJP
H01F 1/147 20060101ALI20230719BHJP
C21D 9/00 20060101ALN20230719BHJP
【FI】
C22C38/00 303T
B22F1/00 Y
B22F3/00 B
B22F3/02 S
H01F1/147 191
C21D9/00 S
(21)【出願番号】P 2019135037
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木野 泰志
(72)【発明者】
【氏名】林 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】小林 久也
【審査官】河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-220244(JP,A)
【文献】特開2009-019264(JP,A)
【文献】特開2006-114695(JP,A)
【文献】特開2003-129104(JP,A)
【文献】特開2018-182040(JP,A)
【文献】特開昭62-124202(JP,A)
【文献】特開2014-204051(JP,A)
【文献】特開2002-134308(JP,A)
【文献】特開2008-240041(JP,A)
【文献】特開2020-015936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
B22F 1/00-1/18
H01F 1/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si:1.2~8重量%、
Cr:0~9重量%、及び
Al:0.75~1.25重量%
Ca:0.001~0.02重量%
を含み、残部がFe及び不可避的不純物である、軟磁性合金粉末であって、
25℃から150℃において、負のコアロス温度特性を有する、軟磁性合金粉末。
【請求項2】
Si:1.5~7.5重量%、
Cr:0~8.5重量%、及び
Al:0.8~1.2重量%
Ca:0.001~0.02重量%
を含む、請求項1に記載の軟磁性合金粉末。
【請求項3】
粒径(D50)が0.5~50μmである、請求項1又は2に記載の軟磁性合金粉末。
【請求項4】
Ca:0.002~0.01重量%を含む、請求項
1から3のいずれか一項に記載の軟磁性合金粉末。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の軟磁性合金粉末を含む、電子部品。
【請求項6】
圧粉磁心、電磁波吸収シールド又は電磁波吸収体である、請求項
5に記載の電子部品。
【請求項7】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の軟磁性合金粉末を加圧成形することを含む、電
子部品の製造方法。
【請求項8】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の軟磁性合金粉末を射出成形することを含む、電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟磁性合金粉末及びそれを用いた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源回路で使用されるパワーインダクタとしては、小型化・低背化の要求から大電流・高周波数で使用できる軟磁性材料が望まれている。従来、インダクタの主材料として酸化物であるフェライト系材料が使用されてきたが、飽和磁化が低いため小型化には不利である。そこで、近年は飽和磁化が高く小型・低背化に有利な合金系材料を使用したメタルインダクタが急増している。メタルインダクタには、鉄を主材料とした軟磁性合金粉末が用いられ、軟磁性合金粉末と樹脂とを混合し、圧縮成形した圧粉磁心などが知られている。
【0003】
エネルギー問題への関心が高まる中、自動車の電動化やエレクトロニクスの省電力化が推進されており、より小型化が可能であり、エネルギー損失が少ない圧粉磁心が求められている。具体的に一例を挙げれば、自動車における、高い環境性能や運転性能を実現するための制御の高度化に対応するため、モーターやソレノイドなどのアクチュエータにECU(Electronic Control Unit)を実装する「機電一体化」に伴い、より高温環境であるエンジンルーム等にECUを設置したいという要望が高まってきており、より高温環境で使用可能なECU向けの圧粉磁心が求められている。
【0004】
既存の軟磁性合金粉末を用いた圧粉磁芯は、温度の上昇とともにコア損失が増大すること、使用時におけるコア損失による発熱によりコア自体の温度が上昇することが知られている。この温度上昇によりコア損失が増大して発熱が大きくなり、これを繰り返すことによって熱暴走を引き起こす場合がある。このため、高温域でのコアロスの温度特性を改善することが検討されている。例えば、特許文献1には、特定の組成を有するFe-Si-Al系合金粉末を加圧成形した得られた成形体に熱処理を行うこと、引用文献2には、特定の組成を有するFe-Si-Al系合金粉末の表面に絶縁被膜を形成した軟磁性合金粉末が記載されている。しかしながら、Fe-Si-Al系合金粉末は硬く、塑性変形性に乏しいため高密度成形が困難であり、圧粉磁心の小型化に有利な高い飽和磁束密度を得ることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開公報2011/016207号
【文献】特開2012-9825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電子部品の高温環境での使用を可能とする軟磁性合金粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々の研究を行った結果、負のコアロス温度特性を有する鉄基軟磁性合金の組成を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、Si:1.2~8重量%、Cr:0~9重量%、及びAl:0.75~1.25重量%を含み、残部がFe及び不可避的不純物である、軟磁性合金粉末であって、25℃から150℃において、負のコアロス温度特性を有する、軟磁性合金粉末である。
【0009】
本発明の一態様によれば、Si:1.5~7.5重量%、Cr:0~8.5重量%、及びAl:0.8~1.2重量%を含む、上記の軟磁性合金粉末が提供される。
【0010】
本発明の一態様によれば、粒径(D50)が0.5~50μmである、上記の軟磁性合金粉末が提供される。
【0011】
本発明の一態様によれば、更に、Ca:0.001~0.02重量%を含む、上記の軟磁性合金粉末が提供される。
【0012】
本発明の一態様によれば、Ca:0.002~0.01重量%を含む、上記の軟磁性合金粉末が提供される。
【0013】
本発明の一態様によれば、上記の軟磁性合金粉末を含む電子部品が提供される。
【0014】
本発明の一態様によれば、圧粉磁心、電磁波吸収シールド又は電磁波吸収体である上記の電子部品が提供される。
【0015】
本発明の一態様によれば、上記の軟磁性合金粉末を加圧成形することを含む、電子部品の製造方法が提供される。
【0016】
本発明の一態様によれば、上記の軟磁性合金粉末を射出成形することを含む、電子部品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、電子部品の高温環境での使用を可能とする軟磁性合金粉末を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。なお、以下の説明において、「A~B」は、「A以上かつB以下」を意味する。
【0019】
本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、Siを1.2~8重量%、好ましくは1.5~7.5重量%、Crを0~9重量%、好ましくは0~8.5重量%、及びAlを0.75~1.25重量%、好ましくは0.8~1.2重量%含み、残部がFe及び不可避的不純物である。上記の量のSi、Cr及びAlを含む組成を有することにより、軟磁性合金粉末が、25℃から150℃において、負のコアロス温度特性を有する。この特性を有することにより、本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、高温の環境下での使用において用いられる電子部品の材料として好適に用いられる。
【0020】
[その他の元素]
本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、不可避的不純物として、N、S、O等の元素を目的とする特性に影響を与えない程度で含み得る。
【0021】
[負のコアロス温度特性]
負のコアロス温度特性とは、軟磁性合金粉末のコアロスが温度に対して負の係数を有する、すなわち、軟磁性合金粉末のコアロスが温度の上昇とともに低下する特性を意味する。負のコアロス温度特性を有する本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、温度の上昇とともにコア損失が低下するため、使用時におけるコア損失による発熱によるコア自体の温度の上昇が抑えられ、従来困難であった高温環境下で使用される電子部品の材料として好適な特性を有している。本実施形態に係る軟磁性合金粉末が、負のコアロス温度特性を有するのは、組成によって決定される磁歪定数が正の値を有することによるものと考えられる。
【0022】
本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、粒径(D50)が0.5~50μmであることが好ましい。「粒径」とは、メディアン径:D50を意味し、従来公知の方法、例えば、レーザー回折・散乱法により測定されるものである。上述の軟磁性合金粉末の飽和磁束密度(Bs)、透磁率及び負のコアロス温度特性に関する効果は、幅広い粒径を有する軟磁性合金粉末において得られるが、粒径(D50)が0.5~50μm、好ましくは、0.5~40μm、より好ましくは、0.5~25μm、さらにより好ましくは、1.0~20μmであることにより、特に、高い効果が得られる。
【0023】
本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、更に、Caが添加されていることが好ましく、Caを0.001~0.02重量%、好ましくは、0.002~0.01重量%含む。Caを微量に含むことにより、軟磁性合金粉末の透磁率が向上、又はコアロスが低下する。上記範囲のCaが存在することにより、鉄基軟磁性合金粉末が低比表面積化し、粉末中の酸素量を低減させる。これは、酸素との親和性が高いCaにより、合金粉末作製のための溶湯の表面張力が変化することや溶湯の酸素量が変化することによる結果であると考えられる。なお、Caと同様に酸素との親和性が高い元素であれば、Caの場合と同様の効果を奏し得る。
【0024】
[軟磁性合金粉末の製造方法]
本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、金属粉末の製造方法として以下に例示する従来公知の方法により製造することができるが、本実施形態の組成を有すれば上述の磁気特性を有するため、製造方法は特に限定されない。
・アトマイズ法:水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、遠心力アトマイズ法、等
・機械的プロセス法:粉砕法、メカニカルアロイング法、等
・メルトスピニング法
・回転電解法(REP法):プラズマREP法、等
・化学的プロセス法:酸化物還元法、塩化物還元法、湿式冶金技術、カーボニル反応法、等
【0025】
上に例示した製造方法の中で、特にアトマイズ法は小径且つ球形の軟磁性合金粉末を大気圧下で量産できる。中でも、水アトマイズ法を採用すると、安価に製造することができる。
水アトマイズ法を用いて軟磁性合金粉末を製造する場合、所望の組成に調整した材料を溶解した溶湯に対して、所望の冷却条件や粒径となるようにパラメータを設定した高圧の水を吹き付けることで、溶湯を飛散及び凝固させて粉末が得られる。その後、得られた粉末を乾燥、分級し、必要に応じて、表面処理を行い、目的とする軟磁性合金粉末を得ることができる。
Caを添加する場合、金属の形態であるCaを溶湯に添加することにより行い、添加する順番は問わないが、Caは酸化物になり易いため、目的とする合金組成に対し、ある程度過剰量のCaを添加することを要する。
【0026】
本実施形態に係る電子部品は、上述の軟磁性合金粉末を含む。本実施形態に係る電子部品は、モーター、リアクトル、トランスなど、一般に用いられている電子部品のみならず、電磁弁、ソレノイド、センサーなどとして自動車等の輸送機器等、広く様々な産業分野おいて用いられる電子部品である。更には、本実施形態に係る電子部品は、特定の周波数の電磁波を吸収する目的で用いられる電磁波吸収シールドや電磁波吸収体である。
本実施形態に係る電子部品は、圧粉磁心、電磁波吸収シールド又は電磁波吸収体である。
【0027】
本実施形態に係る圧粉磁心、電磁波吸収シールド又は電磁波吸収体は、上述の軟磁性合金粉末を含む。好ましくは、本実施形態に係る圧粉磁心は、絶縁性や成形加工性を付与する樹脂等と混合され、造粒された形態の軟磁性合金粉末を含む。好ましくは、本実施形態に係る電磁波吸収シールドは、軟磁性合金粉末、樹脂及びインク等を混合して調製したペーストが少なくとも一部に塗布されている。好ましくは、本実施形態に係る電磁波吸収体は、軟磁性合金粉末、樹脂及びゴム等を混合して、所望の厚さに成型加工されたシートが少なくとも一部に貼り付けられている。
【0028】
本実施形態に係る圧粉磁心は、例えば、
軟磁性合金粉末の表面に被膜を形成し、造粒紛を得る工程、
造粒紛を加圧成形し成形体を得る工程、
成形体を熱処理する工程、
を含む方法により製造される。
造粒紛を得る工程において、目的とする絶縁性、耐食性等を付与するため、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂など、従来公知の樹脂などにより被膜が形成される。
熱処理する工程における温度は、550℃から950℃、好ましくは、600℃~900℃である。また、加熱時間は、30分~2時間程度とすることが好ましい。熱処理前の成形体を構成する軟磁性合金粉末には加圧成形により、透磁率の低下、コアロスの要因の一つであるヒステリシス損失の増大の原因となる歪が導入されており、前記の条件で成形体を熱処理することにより、歪を十分に除去することができる。熱処理は、窒素雰囲気などの不活性ガス雰囲気、または減圧雰囲気で行うことが好ましい。
【0029】
本実施形態に係る電子部品の製造方法は、上述の軟磁性合金粉末を射出成形することを含む。射出成形により高精度で複雑な形状に成形加工することできる。成形加工後に、必要に応じて、脱脂、熱処理などを行い、所望の形状、特性を有する電子部品が得られる。
【実施例】
【0030】
以下に本発明の実施例を示す。本発明の内容はこれらの実施例により限定して解釈されるものではない。
【0031】
[軟磁性合金粉末の製造]
表1、2に示される各組成に調整した材料を、高周波誘導炉にて溶解し、水アトマイズ法を用いて軟磁性合金粉末を得た。水アトマイズ法の条件は以下の通りである。
<水アトマイズ条件>
・水圧:100MPa
・水量:100L/分
・水温:20℃
・オリフィス径:φ4mm
・溶湯温度:1800℃
【0032】
得られた軟磁性合金粉末を振動真空乾燥機(VU-60:中央化工機製)により乾燥させた。乾燥条件は以下の通りである。
<乾燥条件>
・温度 100℃
・圧力 10kPa以下
・時間 60分
乾燥後の軟磁性合金粉末の組成についての定量分析をICP発光分析装置〔SPS3500DD:日立ハイテクサイエンス製〕にて行った。
【0033】
乾燥後の軟磁性合金粉末を気流分級装置(ターボクラシファイア:日清エンジニアリング製)により分級し、目的とする軟磁性合金粉末を得た。得られた軟磁性合金粉末の粒径(D50)は、湿式粒度分析装置〔MT3300EX II:マイクロトラック・ベル製〕を用いて測定した。
【0034】
[試料の作製]
上述のように製造した各軟磁性合金粉末をエポキシ樹脂と混合して造粒紛を製造した。軟磁性合金粉末とエポキシ樹脂との配合量は、重量比で、軟磁性合金粉末:エポキシ樹脂=97:3であった。
各造粒紛をリング状に圧粉成形(成形圧力:500MPa)して圧粉磁心(外径:15mm、内径:9mm、厚さ:3mm)を作製した。
各圧粉磁心に対し、以下のように評価を行った。
圧粉磁心に線径:0.3mmの銅線をバイファイラ巻きしたトロイダルコアを作製し評価試料とした。BHアナライザ〔SY8258:岩通計測製〕を用いて、測定周波数:1MHz、最大磁束密度:25mTの条件で25℃から150℃の温度範囲にてコアロスを測定した。続いて、測定周波数:1MHz、最大磁束密度:10mTの条件で150℃の温度にて透磁率を測定した。
【0035】
[評価結果]
評価結果を表1、2に示す。
表1、2中の「温度特性」における〇、△、×の記号は、温度上昇に伴いコアロスが上昇した場合が×、25℃から120℃の温度領域で負のコアロス温度特性を有するが120℃を超えた温度領域でコアロスが上昇した場合が△、120℃から150℃の温度領域で負のコアロス温度特性を有する場合及びコアロスが上昇しなかった場合が○であることを意味する。
表1、2中の「磁気特性」における◎、〇、△、×の記号は、150℃における透磁率及びコアロスを、同一のD50を有し、且つAl及びCaを除いて同一の組成を有する比較例と比較した結果である。(例えば、実施例1-(1)から1-(11)は比較例1、実施例2-(1)から2-(11)は比較例2との比較であり、実施例5から12は、それぞれ比較例5から12との比較である。)評価基準は以下の通りである。
×・・・透磁率及びコアロスのいずれも向上しなかった場合
△・・・透磁率又はコアロスのいずれか一方のみが向上した場合
○・・・透磁率又はコアロスのいずれもが向上した場合
◎・・・透磁率又はコアロスのいずれもが共に20%以上向上した場合
ここで、透磁率の向上とは、透磁率の測定値が上昇したことを意味し、コアロスの向上とは、コアロスが低下したことを意味する。
【0036】
【0037】
表1、2に示されるように、実施例に係る軟磁性合金粉末を用いた圧粉磁心は、驚くべきことに、25℃から120℃の温度領域のみならず、120℃から150℃の非常に高い温度領域においても、負のコアロス温度特性を有する。また、実施例に係る軟磁性合金粉末を用いた圧粉磁心は、比較例に係る軟磁性合金粉末(既存のFe-Si系合金粉末、Fe-Si-Cr系合金)を用いた圧粉磁心に比べ、驚くべきことに、150℃という非常に高い温度において、透磁率及びコアロスの少なくともいずれかが向上している。すなわち、本発明の軟磁性合金粉末は、高温環境下で使用可能な電子部品、特に圧粉磁心の材料等として優れた特性を有する。
更に、Caが添加されている軟磁性合金粉末を用いた圧粉磁心は、驚くべきことに、Caが添加されていない軟磁性合金粉末を用いた圧粉磁心に比べ、透磁率及びコアロスがより向上している。
表1、2に示されるように、本発明は、粉末の粒径(D50)に依存せず、上述した効果を奏していることが分かる。
以上のように、本発明の軟磁性合金粉末は、電子部品の高温環境での使用を可能とする優れた特性を有するものである。
【0038】
(変形例)
上記実施例では、一実施形態の軟磁性合金粉末を用いた電子部品として、加圧成形により製造した圧粉磁心を例に説明したが、一実施形態はこの例示に限定されない。例えば、射出成形によって製造される電子部品である。負のコアロス温度特性を有する本発明の軟磁性合金粉末が用いられている電子部品が、高温環境下で好適に使用可能であることは、上記実施例の結果からも明らかである。
【0039】
一実施形態の電子部品の他の例示として、電磁波吸収シールドや電磁波吸収体が挙げられる。電磁波吸収シールドは、特定の周波数の電磁波をカットする目的で用いられるもので、例えば携帯電話等のモバイル機器のケース等に設置される。電磁波吸収シールドは、磁性粉末、樹脂及びインク等を目的とする特性が得られるように調製、混合させてペーストにし、このペーストを適応箇所に塗布することで得られる。なお、ペーストを作製する際には、磁性粉末の分散を促すために真空脱泡を行ってもよい。
【0040】
電磁波吸収体は、特定の周波数の電磁波をカットする目的で用いられるもので、例えばETC(電子料金収受システム)のゲートやEMC試験等で用いる電波暗室で使われている。電磁波吸収体は、磁性粉末、樹脂及びゴムを目的とする特性が得られるように調製、混合させてシート状に成形し、このシートを適応箇所に貼り付けることで得られる。