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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20230719BHJP
   H01B 7/42 20060101ALI20230719BHJP
   H01B 7/40 20060101ALI20230719BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
H01B7/08
H01B7/42 D
H01B7/40 307A
H05K1/02 Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019141911
(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公開番号】P2021026834
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 大地
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-3925(JP,A)
【文献】特開2018-137208(JP,A)
【文献】特開2018-107250(JP,A)
【文献】実開昭62-198617(JP,U)
【文献】特開平6-103826(JP,A)
【文献】特開昭61-288312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/08
H01B 7/42
H01B 7/40
H05K 1/02
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
伝送線本体と、前記伝送線本体の周囲に設けられた被覆とを有する線状伝送部材と、
備え、
前記線状伝送部材は、前記ベース部材に固定された固定領域と、前記ベース部材から離れている遊離領域とを含み、
前記遊離領域における前記被覆の外周に、前記被覆よりも熱伝導性が良好な熱伝導層が形成されており、
前記線状伝送部材と前記ベース部材とが、前記熱伝導層とは別の接着剤を介して固定されている、配線部材。
【請求項2】
請求項1に記載の配線部材であって、
前記熱伝導層は、前記遊離領域から前記ベース部材に達する領域に形成されている、配線部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配線部材であって、
前記熱伝導層は、前記固定領域における前記被覆の外周の少なくとも一部を避けて形成されている、配線部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記熱伝導層は、熱伝導フィラーを含む樹脂層、又は、金属層である、配線部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記ベース部材は、金属層を含む、配線部材。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記接着剤は、前記被覆よりも熱伝導性が良好な熱伝導性材料である、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シート状部材30と電線と保持部とを備えるワイヤーハーネスを開示している。保持部は、少なくとも一部が電線とシート状部材30との間に介在し、シート状部材30に超音波溶着又はレーザ溶着された状態で、電線をシート状部材30に対して固定する部分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-003925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、電線がシート状部材30に対して固定されていない部分を有する場合がある。この部分の放熱性を向上させることが望まれている。
【0005】
そこで、本開示は、ベース部材と、ベース部材に固定された線状伝送部材とを含む配線部材において、線状伝送部材のうちベース部材に固定されていない部分の放熱性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材は、ベース部材と、伝送線本体と、前記伝送線本体の周囲に設けられた被覆とを有する線状伝送部材と、備え、前記線状伝送部材は、前記ベース部材に固定された固定領域と、前記ベース部材から離れている遊離領域とを含み、前記遊離領域における前記被覆の外周に、前記被覆よりも熱伝導性が良好な熱伝導層が形成されている、配線部材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ベース部材と、ベース部材に固定された線状伝送部材とを含む配線部材において、線状伝送部材のうちベース部材に固定されていない部分の放熱性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態に係る配線部材を示す斜視図である。
図2図2は配線部材を示す側面図である。
図3図3図2のIII-III線断面図である。
図4】変形例に係る配線部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の配線部材は、次の通りである。
【0011】
(1)ベース部材と、伝送線本体と、前記伝送線本体の周囲に設けられた被覆とを有する線状伝送部材と、備え、前記線状伝送部材は、前記ベース部材に固定された固定領域と、前記ベース部材から離れている遊離領域とを含み、前記遊離領域における前記被覆の外周に、前記被覆よりも熱伝導性が良好な熱伝導層が形成されている、配線部材である。線状伝送部材のうち遊離領域で生じた熱は、熱伝導層を伝って広がる。このため、ベース部材と、ベース部材に固定された線状伝送部材とを含む配線部材において、線状伝送部材のうちベース部材に固定されていない部分の放熱性が向上する。
【0012】
(2)前記熱伝導層は、前記遊離領域から前記ベース部材に達する領域に形成されていてもよい。この場合、遊離領域で生じた熱は、熱伝導層を伝って、ベース部材に伝わる。
【0013】
(3)前記熱伝導層は、前記固定領域における前記被覆の外周の少なくとも一部を避けて形成されていてもよい。この場合、熱伝導層は被覆の周囲全体に形成されなくてもよいため、コスト削減が可能となる。
【0014】
(4)前記熱伝導層は、熱伝導フィラーを含む樹脂層、又は、金属層であってもよい。この場合、熱が熱伝導フィラーを含む樹脂層、又は、金属層を伝わる。
【0015】
(5)前記ベース部材は、金属層を含んでもよい。この場合、線状伝送部材のうち固定領域で生じた熱は、ベース部材の金属層に効率的に広がる。
【0016】
(6)前記線状伝送部材は、前記固定領域において、前記被覆よりも熱伝導性が良好な熱伝導性材料によって前記ベース部材に固定されていてもよい。この場合、線状伝送部材のうち固定領域で生じた熱は、熱伝導性材料を伝ってベース部材に広がる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
[実施形態]
以下、実施形態に係る配線部材について説明する。図1は配線部材10を示す斜視図である。図2は配線部材10を示す側面図である。図3図2のIII-III線断面図である。
【0019】
配線部材10は、ベース部材30と、線状伝送部材20とを備える。配線部材10は、例えば車両に搭載される。配線部材10は、車両における電気部品などをつなぐ配線として用いられる。
【0020】
線状伝送部材20は、伝送線本体22と、被覆24とを備える。伝送線本体22は、電気を伝送する線状体である。被覆24は、伝送線本体22の周囲に設けられる。被覆24の最外層は樹脂層である。
【0021】
例えば、線状伝送部材20は、電線であってもよい。電線は、伝送線本体22としての芯線と、被覆24としての絶縁層とを含む。芯線は、金属等の導電部材によって形成された線状導体である。絶縁層は、芯線の周囲を覆う絶縁部分である。例えば、線状伝送部材20は、電線の他、シールド線、ツイスト線、エナメル線等であってもよい。
【0022】
ベース部材30は、上記線状伝送部材20が固定される主面を有する部材である。ベース部材30は、例えば、曲げ可能なシート状の部材である。ベース部材30は、一定形状を保つことができる程度の剛性を有する板状の部材であってもよい。ベース部材30は、平面的な形状であってもよいし、厚み方向に曲った部分を有する形状であってもよい。ここでは、ベース部材30は、シート状部材30であるものとして説明する。
【0023】
線状伝送部材20は、その延在方向において互いに異なる領域に、固定領域26と、遊離領域28とを備える。固定領域26は、シート状部材30に固定された領域である。遊離領域28は、シート状部材30から離れた領域である。換言すれば、線状伝送部材20の長手方向において異なる領域に、固定領域26と遊離領域28とが設定されている。
【0024】
ここでは、シート状部材30は細長い方形状に形成されている。線状伝送部材20の延在方向中間部がシート状部材30に固定されている。ここでは、複数(ここでは2本)の線状伝送部材20の延在方向中間部が、間隔をあけた平行姿勢でシート状部材30の一方主面に固定されている。このように、線状伝送部材20のうちシート状部材30の一方主面に固定された領域が固定領域である。
【0025】
また、線状伝送部材20の少なくとも一方の端部は、シート状部材30の端部から外方に延出している。線状伝送部材20のうち当該シート状部材30の端部から外方に延出した部分が遊離領域28である。線状伝送部材20の端部にはコネクタ50が接続されている。線状伝送部材20の端部は、シート状部材30から離れてコネクタ50の接続先となる機器に向けて案内される。コネクタ50が当該機器側のコネクタに接続される。例えば、遊離領域28は、シート状部材30から離れた線状伝送部材20の端部のコネクタ50を、他の機器に接続するために設けられる。
【0026】
線状伝送部材20の遊離領域28は、シート状部材30から出た領域である必要は無い。例えば、線状伝送部材20の端部側の領域がシート状部材30の端部の内側領域においても、シート状部材30に固定されず、シート状部材30の主面から離れて他の箇所に向けて案内されるように配設される場合があり得る。このような場合においても、線状伝送部材20の当該端部側の領域は遊離領域である。図1においても、シート状部材30の端部の縁から僅かに手前で線状伝送部材20がシート状部材30から離れている様子が例示されている。
【0027】
シート状部材30に対する線状伝送部材20の固定構成は、特に限定されない。シート状部材30と線状伝送部材20との固定は、接触部位固定であってもよいし、非接触部位固定であってもよいし、両者が併用されていてもよい。ここで接触部位固定とは、線状伝送部材20とシート状部材30とが接触する部分がくっついて固定されているものである。また、非接触部位固定とは、接触部位固定でない固定態様である。非接触部位固定は、例えば、縫糸、別のシート状部材30、粘着テープなどが、線状伝送部材20をシート状部材30に向けて押え込むものであってもよい。非接触部位固定は、例えば、縫糸、別のシート状部材30、粘着テープなどが、線状伝送部材20とシート状部材30とを囲む状態などとなって、線状伝送部材20とシート状部材30とを挟み込んだりして、線状伝送部材20とシート状部材30とが固定された状態に維持するものであってもよい。以下では、線状伝送部材20とシート状部材30とが、接触部位固定の状態にあるものとして説明する。
【0028】
係る接触部位固定の態様として、接触部位間接固定であってもよいし、接触部位直接固定であってもよいし、異なる領域で両者が併用されていてもよい。ここで接触部位間接固定とは、線状伝送部材20とシート状部材30とが、その間に設けられた接着剤、粘着剤、両面粘着テープなどの介在部材を介して間接的にくっついて固定されているものである。また接触部位直接固定とは、線状伝送部材20とシート状部材30とが別に設けられた接着剤等を介さずに直接くっついて固定されているものである。
【0029】
接触部位直接固定では、例えば線状伝送部材20とシート状部材30とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶かされることによってくっついて固定されることが考えられる。係る接触部位直接固定の状態が形成されるに当たり、樹脂は、例えば、超音波溶着、加熱加圧溶着、熱風溶着、高周波溶着等によって、熱によって溶かされることが考えられる。また、例えば、樹脂は、溶剤によって溶かされることも考えられる。
【0030】
ここでは、線状伝送部材20とシート状部材30とが、その間に設けられた接着剤40を介して固定されているものとして説明する。また、接着剤40は、シート状部材30上において固定領域26に沿って全体に形成されている。すなわち、固定領域26の延在方向全体において、線状伝送部材20がシート状部材30に対して固定されている。もっとも、固定領域26の延在方向において部分的に線状伝送部材20がシート状部材30に固定されてもよい。例えば、固定領域26の延在方向において間欠的に線状伝送部材20がシート状部材30に固定されてもよい。接着剤40は、シート状部材30の主面全体に広がっていてもよい。
【0031】
線状伝送部材20は、シート状部材30上において車両における経路に沿った状態に配線されていてもよい。例えば、複数の線状伝送部材20は、シート状部材30上において曲がって配設されていてもよい。また例えば、複数の線状伝送部材20は、接続先となる各電気部品の位置に応じて分岐していてもよい。この場合、シート状部材30上に分岐部分が固定されていてもよい。またシート状部材30上において複数の線状伝送部材20が複数層積層されていてもよい。またシート状部材30上において複数の線状伝送部材20が交差していてもよい。いずれにせよ、線状伝送部材20がシート状部材30上に固定されるため、配線部材10は、偏平な配線部材となる。
【0032】
線状伝送部材20のうち遊離領域28における被覆24の外周に、熱伝導層25が形成されている。熱伝導層25は、被覆24よりも熱伝導性が良好な層である。熱伝導性は、例えば、熱伝導率でもって評価されてもよい。被覆24の周方向において、熱伝導層25は、遊離領域28における被覆24の周囲全体に形成されてもよいし、当該周囲の一部に形成されてもよい。ここでは、熱伝導層25は、遊離領域28における被覆24の周囲全体に形成されている。遊離領域28の延在方向において、熱伝導層25は、遊離領域28における被覆24の全体に形成されてもよいし、一部に形成されてもよい。例えば、線状伝送部材20の端部がコネクタ50内に導入される場合等、線状伝送部材20の端部については、熱伝導層25は省略されてもよい。
【0033】
熱伝導層25は、例えば、熱伝導フィラーFを含む樹脂層であってもよい。熱伝導層25は、エポキシ樹脂、シリコーン、変性シリコーン、アクリル系樹脂、シアノアクリレート系樹脂などを主成分としていてもよい。熱伝導フィラーFは、被覆24よりも熱伝導性が高い部材である。熱伝導フィラーFは、無機フィラーを含んでいてもよいし、金属フィラーを含んでいてもよい。無機フィラーの材料としては、シリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、ムライト、グラファイト、カーボンナノチューブなどであってもよい。金属フィラーの材料としては、銅、アルミニウム、銀、鉄などであってもよい。
【0034】
熱伝導層25は、例えば、流動状態の熱伝導性接着剤が被覆24の周囲に塗布等された後、硬化することで形成されることができる。
【0035】
図4に示すように、熱伝導層25に対応する熱伝導層25Bは、クロム、ニッケル、銅、金等の金属層であってもよい。この場合、熱伝導層25Bは、被覆24の周囲にメッキ処理を施すことで形成されてもよい。
【0036】
熱伝導層25は、遊離領域28からベース部材30に達する領域に形成されていてもよい。より具体的には、熱伝導層25は、遊離領域28からベース部材30上における固定領域26に達する領域に形成されていてもよい。この場合、熱伝導層25は、固定領域26において少なくとも一部でベース部材30に固定される。ここでは、熱伝導層25は、固定領域26において接着剤40を介してベース部材30に固定される。熱伝導層25が遊離領域28からベース部材30に達する必要は無い。
【0037】
熱伝導層25は、固定領域26における被覆24の外周の少なくとも一部を避けて形成されていてもよい。ここでは、熱伝導層25は、遊離領域28から固定領域26における遊離領域28側の端部に至る領域に形成されている。固定領域26における延在方向中間部及び遊離領域28とは反対側の端部には、熱伝導層25は形成されていなくてもよい。
【0038】
この配線部材10によると、線状伝送部材20のうち遊離領域28で生じた熱は、熱伝導層25を伝って当該熱伝導層25の表面全体に広がる。例えば、遊離領域28の延在方向において部分的に発熱した場合でも、当該熱は熱伝導層25の表面全体に広がって効率的に発散される。このため、シート状部材30と、線状伝送部材20とを含む配線部材10において、線状伝送部材20のうちシート状部材30に固定されていない部分の放熱性が向上し、遊離領域28における蓄熱が抑制される。
【0039】
また、線状伝送部材20のうち固定領域26で生じた熱は、ベース部材30に伝わることが期待される。これにより、固定領域26での蓄熱が抑制される。
【0040】
上記熱伝導層25が、遊離領域28からシート状部材30に達する領域に形成されていてもよい。この場合、遊離領域28で生じた熱が熱伝導層25を介してベース部材30に伝わる。このため、遊離領域28における蓄熱がより抑制される。
【0041】
上記熱伝導層25は、固定領域26における被覆24の外周の少なくとも一部を避けて形成されていてもよい。この場合、熱伝導層25を形成する領域が少なくなり、材料コスト、加工コストの削減が可能となる。また、この構成は、配線部材10の軽量化にも貢献する。
【0042】
熱伝導層25、25Bは、熱伝導フィラーFを含む樹脂層、又は、金属層であってもよい。これにより、遊離領域28で生じた熱が、熱伝導フィラーFを含む樹脂層、又は、金属層である熱伝導層25を伝わり易い。
【0043】
固定領域26における熱はシート状部材30に伝わり得る。また、遊離領域28における熱は熱伝導層25を介してシート状部材30に伝わり得る。これらの場合において、シート状部材30に伝わった熱が当該シート状部材30の全体に伝わるとよい。そこで、シート状部材30は、金属層を含むとよい。シート状部材30における線状伝送部材20が固定される側に、金属層32が設けられるとよい。シート状部材30は、金属層32のみを含む単層構造を有していてもよい。また、シート状部材30は、金属層32に別の層が積層された複層構造を有していてもよい。金属層32に積層される層は、金属層32とは別種の金属を材料とした金属層であってもよいし、樹脂層であってもよい。図1から図4においては、シート状部材30の全体が金属層である場合が示されている。
【0044】
シート状部材30上において、線状伝送部材20のうち被覆24の樹脂が露出した部分を、金属層32が露出した部分に固定する構成としては、各種構成を採用することができる。例えば、接着剤40は、シランカップリング剤を含む接着剤のように、分子構造中に樹脂側官能基及び金属側官能基を含む化合物を含有し、前記樹脂側官能基が前記被覆24を構成する樹脂と化学結合し、前記金属側官能基が前記金属層32を構成する金属と化学結合するものであってもよい。例えば、金属側官能基は、アルコキシ基であり、前記化合物は、分子構造中に前記アルコキシ基と前記樹脂側官能基とをつなぐケイ素をさらに含むものであってもよい。金属側官能基は、キレート基であってもよい。被覆24を構成する樹脂がポリ塩化ビニルである場合、樹脂側官能基は、アミノ基、チオール基、及びエポキシ基からなる群より選択された1種または2種以上の官能基であってもよい。被覆24を構成する樹脂がポリオレフィンである場合、樹脂側官能基は、アミノ基、チオール基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、及びエポキシ基からなる群より選択された1種または2種以上の官能基であってもよい。化合物は、分子鎖に前記樹脂側官能基及び前記無機物側官能基がそれぞれ複数結合したポリマーであってもよい。
【0045】
また、金属層32の表面が凹凸構造又は孔を有する構成であれば、接着剤40として、被覆24の樹脂の接着に適した接着剤が用いられてもよい。この場合、接着剤40は、金属層32の表面にアンカー効果によって接着することが期待される。
【0046】
シート状部材30上において、線状伝送部材20のうち熱伝導層25の金属が露出した部分を、金属層32が露出した部分に固定する構成としては、各種構成を採用することができる。例えば、エボキシ系接着剤のように、金属同士を接着するのに適した接着剤が用いられてもよい。また、熱伝導層25と金属層32とは半田付、ろう接、溶接等によって固定されてもよい。
【0047】
その他、線状伝送部材20は、シート状部材30に対して縫糸で縫付けられてもよい。線状伝送部材20は、シート状部材30と共に樹脂等で覆われて当該シート状部材30に固定されてもよい。シート状部材30と他の部材との間で線状伝送部材20を挟んで、線状伝送部材20をシート状部材30に固定してもよい。
【0048】
このように、ベース部材30が金属層32を含むと、線状伝送部材20のうち固定領域26で生じた熱が金属層32に伝わって金属層32の全体に広がり易い。このため、固定領域26における蓄熱がより抑制される。また、金属層32の全体に広がった熱が周囲に発散され易い。
【0049】
また、熱伝導層25がシート状部材30に固定されている構成を前提とすると、遊離領域28で生じた熱が熱伝導層25を介して金属層32に伝わり、金属層32の全体に広がり易い。このため、遊離領域28における蓄熱がより抑制される。また、金属層32の全体に広がった熱が周囲に発散され易い。
【0050】
線状伝送部材20が接着剤40を介してシート状部材30に固定される場合、接着剤40は、被覆24よりも熱伝導性が良好な熱伝導性材料によって形成されていてもよい。例えば、上記した接着剤40が、熱伝導層25に含まれる熱伝導フィラーFとして例示されたものを含んでもよい。これにより、線状伝送部材20で生じた熱がよりシート状部材30に伝わり易くなる。
【0051】
線状伝送部材20のうち熱伝導層25が形成された部分をシート状部材30に固定する接着剤40の熱伝導性は、接着剤40における他の部分よりも熱伝導性が良好であってもよい。例えば、線状伝送部材20のうち熱伝導層25が形成された部分をシート状部材30に固定する接着剤40については、他の部分よりも熱伝導フィラーを多く含んでいてもよいし、熱伝導性が良好な熱伝導フィラーを含んでいてもよい。
【0052】
固定領域26で生じた熱については、当該固定領域26のほぼ全体で接着剤40を介してシート状部材30に伝わる。これに対し、遊離領域28で生じた熱は、熱伝導層25を介してシート状部材30に伝わるため、接着剤40のうち熱伝導層25をシート状部材30に固定する部分については、より多くの熱が集中する可能性がある。そこで、接着剤40のうち熱伝導層25をシート状部材30に固定する部分の熱伝導性を良好にすることによって、遊離領域28の熱が効率的にシート状部材30に伝わり、遊離領域28における蓄熱をより有効に抑制できる。また、接着剤40のうち他の部分については、接着剤40のうち熱伝導層25をシート状部材30に固定する部分ほど熱伝導性を良好にしなくてもよいため、低コスト化が可能となる。
【0053】
接着剤40のうち熱伝導層25が形成された部分をシート状部材30に固定する部分のみが、熱伝導性フィラーを含むこと等によって、被覆24よりも熱伝導性が良好なものとされてもよい。
【0054】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0055】
10 配線部材
20 線状伝送部材
22 伝送線本体
24 被覆
25 熱伝導層
25B 熱伝導層
26 固定領域
28 遊離領域
30 ベース部材(シート状部材)
32 金属層
40 接着剤
50 コネクタ
F 熱伝導フィラー
図1
図2
図3
図4