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特許7314698熱中症危険性評価方法、及び、熱中症危険性評価システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】熱中症危険性評価方法、及び、熱中症危険性評価システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20230719BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20230719BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A61B5/00 102B
A61B5/00 102C
G08B25/04 K
G08B21/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019143685
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2021023534
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1) 刊行物名:日刊工業新聞 2019年6月20日付朝刊,第19面 発行日:2019年6月20日 発行所:株式会社日刊工業新聞社 (2) 物件名 :平成30・31年度幕張メッセ施設整備建築工事 公開日 :2019年7月8日他 (別紙1参照) 公開場所:船橋工事事務所(千葉県船橋市本町4-4-50)他 (別紙1参照) (3) 物件名 :ロボティクス生産本部 技術展示会 公開日 :2019年7月18日~19日 公開場所:株式会社大林組 東日本ロボティクスセンター(埼玉県川越市南台1-10-4) (4) ウェブサイト公開のタイトル:『作業員向け安全管理システム「Envital▲R▼」のバイタルセンサを刷新、スマホレスになりました』 ウェブサイトの掲載日:2019年7月22日 ウェブサイトのアドレス:https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20190722_1.html (5) 物件名 :Webページ『作業員向け安全管理システム「Envital▲R▼」のバイタルセンサを刷新、スマホレスになりました』の電子データの送信 公開日 :2019年6月11日、2019年7月22日(別紙2参照) 公開先 :日本放送協会(東京都千代田区霞ヶ関2-1-3国土交通記者会内)他(別紙2参照)
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤川 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】笠井 泰彰
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山田 昇吾
(72)【発明者】
【氏名】森川 直洋
【審査官】外山 未琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-068397(JP,A)
【文献】特開2013-022217(JP,A)
【文献】特開2013-122665(JP,A)
【文献】特開2018-130531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の活動エリアで複数の活動者が活動する際に熱中症の危険性を評価する熱中症危険性評価方法であって、
前記複数の活動者のうちの前記危険性の評価対象となる対象活動者が装着し、装着している前記対象活動者の活動状態を計測する活動センサーが、計測した前記活動状態を示す活動データと、当該活動センサーに記憶され前記装着している前記対象活動者に付与された活動者識別IDとを含む活動者情報データを送信する活動者情報データ送信ステップと、
各々の前記活動エリアに配置され、配置されている前記活動エリアを識別する活動エリア識別IDが記憶されている活動エリア装置が、配置されている前記活動エリア内に存在する前記活動センサーから送信された前記活動者情報データを受信し、受信した前記活動者情報データと、前記活動エリア識別IDとを含む活動エリア内情報データを送信する活動エリア内情報データ送信ステップと、
各々の前記活動エリアに配置され、配置されている前記活動エリアの環境状態を計測する環境センサーが、計測した前記活動エリアの環境状態を示す環境データと、当該環境センサーに記憶され配置されている前記活動エリアを識別する前記活動エリア識別IDとを含む環境情報データを送信する環境情報データ送信ステップと、
前記活動センサー、前記活動エリア装置、及び、前記環境センサーと共にネットワークに接続された管理端末により実行され、前記活動エリア内情報データと前記環境情報データとを受信し、前記活動エリア識別IDにより対応付けられた前記活動データと前記環境データとに基づいて、前記活動者識別IDにより特定される前記対象活動者毎に熱中症の前記危険性を評価する危険性評価ステップと、
を有することを特徴とする熱中症危険性評価方法。
【請求項2】
複数の活動エリアで複数の活動者が活動する際に熱中症の危険性を評価する熱中症危険性評価方法であって、
前記複数の活動者のうちの前記危険性の評価対象となる対象活動者が装着し、装着している前記対象活動者の活動状態を計測する活動センサーが、計測した前記活動状態を示す活動データと、当該活動センサーに記憶され前記装着している前記対象活動者に付与された活動者識別IDとを含む活動者情報データを送信する活動者情報データ送信ステップと、
各々の前記活動エリアに配置され、配置されている前記活動エリアの環境状態を計測する環境センサーが、計測した前記活動エリアの環境状態を示す環境データを含む環境情報データを送信する環境情報データ送信ステップと、
各々の前記活動エリアに配置され、配置されている前記活動エリアを識別する活動エリア識別IDが記憶されている活動エリア装置が、配置されている前記活動エリア内に存在する前記活動センサーから送信された前記活動者情報データと、配置されている前記活動エリア内に存在する前記環境センサーから送信された前記環境データと、を受信し、受信した前記活動者情報データ及び前記環境情報データと、前記活動エリア識別IDと、を含む活動エリア内情報データを送信する活動エリア内情報データ送信ステップと、
前記活動センサー、及び、前記活動エリア装置と共にネットワークに接続された管理端末により実行され、前記活動エリア内情報データを受信し、前記活動エリア識別IDにより対応付けられた前記活動データと前記環境データとに基づいて、前記活動者識別IDにより特定される前記対象活動者毎に熱中症の前記危険性を評価する危険性評価ステップと、
を有することを特徴とする熱中症危険性評価方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の熱中症危険性評価方法であって、
各々の前記活動エリアには、前記活動センサーから当該活動エリアよりも狭い所定の範囲に発信される前記活動者情報データを受信可能な複数の前記活動エリア装置が配置されていることを特徴とする熱中症危険性評価方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の熱中症危険性評価方法であって、
前記活動エリア装置は、ビーコン信号で受信することを特徴とする熱中症危険性評価方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の熱中症危険性評価方法であって、
前記ネットワークは、クラウドシステムであることを特徴とする熱中症危険性評価方法。
【請求項6】
複数の活動エリアで複数の活動者が活動する際に熱中症の危険性を評価する熱中症危険性評価システムであって、
前記複数の活動者のうちの前記危険性の評価対象となる対象活動者が装着し、装着している前記対象活動者に付与された活動者識別IDが記憶されており、前記対象活動者の活動状態を計測し、計測した前記活動状態を示す活動データと、前記活動者識別IDとを含む活動者情報データを送信する活動センサーと、
各々の前記活動エリアに配置され、配置されている前記活動エリアを識別する活動エリア識別IDが記憶されており、配置されている前記活動エリア内に存在する前記活動センサーから送信された前記活動者情報データを受信し、受信した前記活動者情報データと、前記活動エリア識別IDとを含む活動エリア内情報データを送信する活動エリア装置と、
各々の前記活動エリアに配置され、配置されている前記活動エリアを識別する前記活動エリア識別IDが記憶されており、配置されている前記活動エリアの環境状態を計測し、計測した前記活動エリアの環境状態を示す環境データと、前記活動エリア識別IDとを含む環境情報データを送信する環境センサーと、
前記活動エリア装置及び前記環境センサーとともにネットワークに接続され、前記活動エリア内情報データと前記環境情報データとを受信し、前記活動エリア識別IDにより対応付けられた前記活動データと前記環境データとに基づいて、前記活動者識別IDにより特定される前記対象活動者毎に熱中症の前記危険性を評価する管理端末と、
を有することを特徴とする熱中症危険性評価システム。
【請求項7】
複数の活動エリアで複数の活動者が活動する際に熱中症の危険性を評価する熱中症危険性評価システムであって、
前記複数の活動者のうちの前記危険性の評価対象となる対象活動者が装着し、装着している前記対象活動者に付与された活動者識別IDが記憶されており、前記対象活動者の活動状態を計測し、計測した前記活動状態を示す活動データと、前記活動者識別IDとを含む活動者情報データを送信する活動センサーと、
各々の前記活動エリアに配置され、配置されている前記活動エリアの環境状態を計測し、計測した前記活動エリアの環境状態を示す環境データを送信する環境センサーと、
各々の前記活動エリアに配置され、配置されている前記活動エリアを識別する活動エリア識別IDが記憶されており、配置されている前記活動エリア内に存在する前記活動センサーから送信された前記活動者情報データと、配置されている前記活動エリア内の前記環境センサーから送信された前記環境データと、を受信し、受信した前記活動者情報データ及び前記環境データと前記活動エリア識別IDとを含む活動エリア内情報データを送信する活動エリア装置と、
前記活動エリア装置とともにネットワークに接続され、前記活動エリア内情報データを受信し、受信した前記活動エリア内情報データの前記活動データと前記環境データとに基づいて、前記活動者識別IDにより特定される前記対象活動者毎に熱中症の前記危険性を評価する管理端末と、
を有することを特徴とする熱中症危険性評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の活動エリアで複数の活動者が活動する際に熱中症の危険性を評価する熱中症危険性評価方法、及び、熱中症危険性評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱中症発症危険度を判断する方法及びシステムとしては、生体の活動量を計測した活動量と周囲の温度等の環境情報とに基づいて、生体が熱中症になるリスクを判断する熱中症予防システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この熱中症予防システムでは、生体に装着される筐体内に、生体の活動量を計測する活動量測定部と、生体の周囲の温度を含む環境情報を取得する環境情報取得部とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-210233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の熱中症予防システムでは、環境情報取得部が生体に装着される筐体内に設けられているので、活動者である生体の姿勢や、活動者と太陽及び地面などとの相対位置により正確な環境情報が取得できない虞がある。例えば、活動者は炎天下で活動しているにも拘わらず、環境情報取得部が活動者の陰に位置している場合には、活動者の周囲の正確な環境情報が得られない。このため、熱中症になるリスクの判断が、誤った環境情報と活動量とに基づいてなされるため、正確な判断結果が得られないという課題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、より正確に熱中症の危険性を評価することが可能な熱中症危険性評価方法及び熱中症危険性評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の熱中症危険性評価方法は、
複数の活動エリアで複数の活動者が活動する際に熱中症の危険性を評価する熱中症危険性評価方法であって、
前記複数の活動者のうちの前記危険性の評価対象となる対象活動者が装着し、装着している前記対象活動者の活動状態を計測する活動センサーが、計測した前記活動状態を示す活動データと、当該活動センサーに記憶され前記装着している前記対象活動者に付与された活動者識別IDとを含む活動者情報データを送信する活動者情報データ送信ステップと、
各々の前記活動エリアに配置され、配置されている前記活動エリアを識別する活動エリア識別IDが記憶されている活動エリア装置が、配置されている前記活動エリア内に存在する前記活動センサーから送信された前記活動者情報データを受信し、受信した前記活動者情報データと、前記活動エリア識別IDとを含む活動エリア内情報データを送信する活動エリア内情報データ送信ステップと、
各々の前記活動エリアに配置され、配置されている前記活動エリアの環境状態を計測する環境センサーが、計測した前記活動エリアの環境状態を示す環境データと、当該環境センサーに記憶され配置されている前記活動エリアを識別する前記活動エリア識別IDとを含む環境情報データを送信する環境情報データ送信ステップと、
前記活動センサー、前記活動エリア装置、及び、前記環境センサーと共にネットワークに接続された管理端末により実行され、前記活動エリア内情報データと前記環境情報データとを受信し、前記活動エリア識別IDにより対応付けられた前記活動データと前記環境データとに基づいて、前記活動者識別IDにより特定される前記対象活動者毎に熱中症の前記危険性を評価する危険性評価ステップと、
を有することを特徴とする熱中症危険性評価方法である。
【0007】
このような熱中症危険性評価方法によれば、対象活動者の活動状態は対象活動者が装着している活動センサーにより計測されるので、より正確な活動状態を把握することが可能であり、各々の活動エリアの環境状態は各々の活動エリアに配置されている環境センサーにより計測されるので、より正確な環境状態を把握することが可能である。
【0008】
また、活動センサーにより計測された活動状態を示す活動データは、活動者識別IDとともに、対象活動者が活動している活動エリアに存在する活動エリア装置にて受信され、活動エリア装置が配置されている活動エリアの活動エリア識別IDとともに送信される。このため、対象活動者が異なる活動エリアに移動した場合には、移動した後の活動エリアに配置されている活動エリア装置から、当該対象活動者の活動データ及び活動者識別IDが、移動後の活動エリアを示す活動エリア識別IDとともに送信される。このため、対象活動者が異なる活動エリアに移動したとしても、対象活動者が活動している活動エリアを正確に検知することが可能である。
【0009】
そして、対象活動者毎の熱中症の危険性は、活動エリア識別IDにより対応付けられた活動データと環境データとに基づいて、活動者識別IDにより特定される対象活動者毎に評価される。このため、対象活動者が活動している活動エリアをより確実に特定し、より正確な活動データ及び環境データにより、対象活動者毎の熱中症の危険性をより正確に評価することが可能である。
【0010】
また、複数の活動エリアで複数の活動者が活動する際に熱中症の危険性を評価する熱中症危険性評価方法であって、
前記複数の活動者のうちの前記危険性の評価対象となる対象活動者が装着し、装着している前記対象活動者の活動状態を計測する活動センサーが、計測した前記活動状態を示す活動データと、当該活動センサーに記憶され前記装着している前記対象活動者に付与された活動者識別IDとを含む活動者情報データを送信する活動者情報データ送信ステップと、
各々の前記活動エリアに配置され、配置されている前記活動エリアの環境状態を計測する環境センサーが、計測した前記活動エリアの環境状態を示す環境データを含む環境情報データを送信する環境情報データ送信ステップと、
各々の前記活動エリアに配置され、配置されている前記活動エリアを識別する活動エリア識別IDが記憶されている活動エリア装置が、配置されている前記活動エリア内に存在する前記活動センサーから送信された前記活動者情報データと、配置されている前記活動エリア内に存在する前記環境センサーから送信された前記環境データと、を受信し、受信した前記活動者情報データ及び前記環境情報データと、前記活動エリア識別IDと、を含む活動エリア内情報データを送信する活動エリア内情報データ送信ステップと、
前記活動センサー、及び、前記活動エリア装置と共にネットワークに接続された管理端末により実行され、前記活動エリア内情報データを受信し、前記活動エリア識別IDにより対応付けられた前記活動データと前記環境データとに基づいて、前記活動者識別IDにより特定される前記対象活動者毎に熱中症の前記危険性を評価する危険性評価ステップと、
を有することを特徴とする熱中症危険性評価方法である。
【0011】
このような熱中症危険性評価方法によれば、対象活動者の活動状態は対象活動者が装着している活動センサーにより計測されるので、より正確な活動状態を把握することが可能であり、各々の活動エリアの環境状態は各々の活動エリアに配置されている環境センサーにより計測されるので、より正確な環境状態を把握することが可能である。
【0012】
また、活動センサーにより計測された活動状態を示す活動データは、活動者識別IDとともに、対象活動者が活動している活動エリアに存在する活動エリア装置にて受信され、活動エリア装置が配置されている活動エリアの活動エリア識別IDとともに送信される。このため、対象活動者が異なる活動エリアに移動した場合には、移動した後の活動エリアに配置されている活動エリア装置から、当該対象活動者の活動データ及び活動者識別IDが、移動後の活動エリアを示す活動エリア識別IDとともに送信される。このため、対象活動者が異なる活動エリアに移動したとしても、対象活動者が活動している活動エリアを正確に検知することが可能である。
【0013】
また、活動エリア装置からは環境センサーにより計測された活動エリアの環境状態を示す環境データも活動エリア識別IDとともに送信されるので、対象活動者が活動している活動エリアの環境データ及び対象活動者の活動データとに基づいて対象活動者毎の熱中症の危険性が対象活動者毎に評価される。このため、対象活動者が活動している活動エリアをより確実に特定し、より正確な活動データ及び環境データにより、対象活動者毎の熱中症の危険性をより正確に評価することが可能である。
【0014】
かかる熱中症危険性評価方法であって、
各々の前記活動エリアには、前記活動センサーから当該活動エリアよりも狭い所定の範囲に発信される前記活動者情報データを受信可能な複数の前記活動エリア装置が配置されていることを特徴とする。
【0015】
このような熱中症危険性評価方法によれば、各活動エリアに配置されている活動エリア装置は、活動エリアよりも狭い所定の範囲に活動センサーから発信される活動者情報データを受信可能なので、活動センサーの出力を小さく抑えることができる。このため、活動センサーの消費電力を小さく抑えることができると共に活動センサーを小型化することが可能である。このため、活動センサーが対象活動者の活動を妨げないので、対象活動者が活動し易い状態で活動することが可能である。また、対象活動者の活動エリア内における位置をより狭い範囲で特定することが可能である。
【0016】
かかる熱中症危険性評価方法であって、
前記活動エリア装置は、ビーコン信号で受信することを特徴とする。
【0017】
このような熱中症危険性評価方法によれば、ビーコン信号により対象活動者が活動している活動エリアを検知することができるので、活動センサーの消費電力を小さく抑えることができると共に活動センサーを小型化することが容易である。
【0018】
また、環境センサーから発信される環境データもビーコン信号に含めて送信し、活動エリア装置により受信する場合には、環境センサーの消費電力をも小さく抑えることができると共に環境センサーも小型化することが容易である。
【0019】
かかる熱中症危険性評価方法であって、
前記ネットワークは、クラウドシステムであることを特徴とする。
【0020】
このような熱中症危険性評価方法によれば、ネットワークがクラウドシステムなので、モバイル端末により評価すること、また、対象活動者の状態を認識することが可能である。このため、自由度が高く、より広い活動エリアにて活動する対象活動者の熱中症危険性をより低コストで評価することが可能である。
【0021】
また、複数の活動エリアで複数の活動者が活動する際に熱中症の危険性を評価する熱中症危険性評価システムであって、
前記複数の活動者のうちの前記危険性の評価対象となる対象活動者が装着し、装着している前記対象活動者に付与された活動者識別IDが記憶されており、前記対象活動者の活動状態を計測し、計測した前記活動状態を示す活動データと、前記活動者識別IDとを含む活動者情報データを送信する活動センサーと、
各々の前記活動エリアに配置され、配置されている前記活動エリアを識別する活動エリア識別IDが記憶されており、配置されている前記活動エリア内に存在する前記活動センサーから送信された前記活動者情報データを受信し、受信した前記活動者情報データと、前記活動エリア識別IDとを含む活動エリア内情報データを送信する活動エリア装置と、
各々の前記活動エリアに配置され、配置されている前記活動エリアを識別する前記活動エリア識別IDが記憶されており、配置されている前記活動エリアの環境状態を計測し、計測した前記活動エリアの環境状態を示す環境データと、前記活動エリア識別IDとを含む環境情報データを送信する環境センサーと、
前記活動エリア装置及び前記環境センサーとともにネットワークに接続され、前記活動エリア内情報データと前記環境情報データとを受信し、前記活動エリア識別IDにより対応付けられた前記活動データと前記環境データとに基づいて、前記活動者識別IDにより特定される前記対象活動者毎に熱中症の前記危険性を評価する管理端末と、
を有することを特徴とする熱中症危険性評価システムである。
【0022】
このような熱中症危険性評価システムによれば、活動センサーからの活動者情報データを受信した活動エリア装置により対象活動者が活動している活動エリアをより正確に検知し、活動エリア装置から送信され、対象活動者が装着している活動センサーにより計測されたより正確な活動データと、各活動エリアに配置された環境センサーにより計測されたより正確な環境データとに基づいて対象活動者毎の熱中症の危険性をより正確に評価することが可能である。
【0023】
また、複数の活動エリアで複数の活動者が活動する際に熱中症の危険性を評価する熱中症危険性評価システムであって、
前記複数の活動者のうちの前記危険性の評価対象となる対象活動者が装着し、装着している前記対象活動者に付与された活動者識別IDが記憶されており、前記対象活動者の活動状態を計測し、計測した前記活動状態を示す活動データと、前記活動者識別IDとを含む活動者情報データを送信する活動センサーと、
各々の前記活動エリアに配置され、配置されている前記活動エリアの環境状態を計測し、計測した前記活動エリアの環境状態を示す環境データを送信する環境センサーと、
各々の前記活動エリアに配置され、配置されている前記活動エリアを識別する活動エリア識別IDが記憶されており、配置されている前記活動エリア内に存在する前記活動センサーから送信された前記活動者情報データと、配置されている前記活動エリア内の前記環境センサーから送信された前記環境データと、を受信し、受信した前記活動者情報データ及び前記環境データと前記活動エリア識別IDとを含む活動エリア内情報データを送信する活動エリア装置と、
前記活動エリア装置とともにネットワークに接続され、前記活動エリア内情報データを受信し、受信した前記活動エリア内情報データの前記活動データと前記環境データとに基づいて、前記活動者識別IDにより特定される前記対象活動者毎に熱中症の前記危険性を評価する管理端末と、
を有することを特徴とする熱中症危険性評価システムである。
【0024】
このような熱中症危険性評価システムによれば、活動センサーからの活動者情報データを受信した活動エリア装置により対象活動者が活動している活動エリアをより正確に検知し、活動エリア装置から送信され、対象活動者が装着している活動センサーにより計測されたより正確な活動データ、及び、各活動エリアに配置された環境センサーにより計測されたより正確な環境データに基づいて対象活動者毎の熱中症の危険性をより正確に評価することが可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、より正確に熱中症の危険性を評価することが可能な熱中症危険性評価方法及び熱中症危険性評価システムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態の熱中症危険性評価方法を実行する熱中症危険性評価システムが実施される作業現場を上方から見た概略図である。
図2】熱中症危険性評価システムの構成の一例を示す図である。
図3】作業者IDテーブルの一例である。
図4】WBGT基準値テーブルの一例である。
図5】心拍数基準値テーブルの一例である。
図6】本実施形態の熱中症危険性評価方法を示すフロー図である。
図7】熱中症危険性評価システムの構成の変形例を示す図である。
図8】熱中症危険性評価方法の変形例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
===本実施形態===
本実施形態の熱中症危険性評価方法は、熱中症危険性評価システムを用いて実行される。
【0028】
<<<熱中症危険性評価システム>>>
図1に示すように、熱中症危険性評価システム1は、互いの環境状態が異なる複数の作業エリアA(A1,A2,A3)で複数の作業者Mが作業する際に、評価対象となる対象作業者Mt(Mt1,Mt2…)毎に行うものである。ここで、作業エリアA(A1,A2,A3)が活動エリアに相当し、作業が活動に相当し、作業者M(M1,M2…)が活動者に相当し、対象作業者Mt(Mt1,Mt2…)が対象活動者に相当する。図1においては、●にて作業者M及び対象作業者Mtを示している。
【0029】
この例では、互いの環境状態が異なる複数の作業エリアAとして、図1に示すように、屋外であって直射日光を受ける日向エリアA1と、屋外であって日除けを有する日除けエリアA2と、建設工事現場で建設中の建物内の建物内エリアA3と、の三つの作業エリアAを例示している。但し、何等これに限らない。例えば、建物内の地上階において互いに異なる階同士または建物内の地上階と地下階とを、互いの環境状態が異なる複数の作業エリアとしても良いし、又は、建物の同じ階においても互いの平面位置が異なる領域同士を、互いの環境状態が異なる複数の作業エリアとしても良く、また、屋外のエリアにおいては、風通しの善し悪しなどの違いに基づいて領域を分け、各領域を互いの環境状態が異なる複数の作業エリアとしても良い。
【0030】
また、熱中症の危険性の評価対象となる上記対象作業者Mtついては、全ての作業者Mを当該対象作業者Mtとしても良いし、或いは、後述するように全ての作業者Mの中から所定の条件を満たす一部の作業者Mを選択して上記対象作業者Mtとしても良い。
【0031】
熱中症危険性評価システム1は、図1に示すように、作業エリアA1,A2,A3毎にそれぞれ配置される環境センサー3(31,32,33)と、対象作業者Mt(Mt1,Mt2…)毎にそれぞれ装着される活動センサー4(41,42,43,44)と、作業エリアA(A1,A2,A3)に適宜配置される中継器5(51~56)と、熱中症危険性の評価を実行するクラウドシステム10と、を有する。ここで、中継器5(51~56)が活動エリア装置に相当する。
【0032】
各環境センサー3は、それぞれ、自身が配された各作業エリアA1,A2,A3の環境状態を計測して環境状態データを常時又は適宜周期で送信する。この例では、環境状態として温熱指標を計測して、当該温熱指標(以下、WBGTとも言う)を含むWBGTデータ(温熱指標データに相当)を出力する。ここで、WBGTは、「湿球黒球温度」、「暑さ指数」、及び「熱中症指数」とも言われるものであり、同WBGTは、湿球温度、黒球温度、及び乾球温度を用いて、屋内の場合には下式1で計算され、屋外の場合には下式2で計算される。
【0033】
WBGT=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度 … 式1
WBGT=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度 … 式2
そのため、各環境センサー3は、例えば、湿球温度を測定する湿球温度計と、黒球温度を測定する黒球温度計と、乾球温度を測定する乾球温度計と、を有している。但し、何等これに限らない。すなわち、WBGTを算出可能であれば、上記以外の構成のセンサーを環境センサー3として用いても良い。
【0034】
また、この例では、図1の上記三つの作業エリアA1,A2,A3のうちで屋外の日向エリアA1及び日除けエリアA2に配された各環境センサー31,32については、屋外であることから、上記の式2でWBGTを計算する一方、建物内の建物内エリアA3に配された環境センサー33については、屋内であることから、上記の式1でWBGTを計算する。
【0035】
三つの作業エリアA(A1,A2,A3)に配された各環境センサー3は、それぞれ、図2に示すようにクラウドシステム10に接続可能な通信部と、記憶部とを有している。各環境センサー3には、各々の環境センサー3が配置されている作業エリアA1,A2,A3を識別するための作業エリア識別IDが記憶部に記憶されている。
【0036】
各環境センサー3は、クラウドシステム10にWBGTデータを送信する。このとき、WBGTデータとともに、記憶部に記憶されている作業エリア識別IDも送信する。ここでは、環境センサー3が発信するWBGTデータと作業エリア識別IDとが、環境情報データに相当する。
【0037】
環境センサー3からWBGTデータと作業エリア識別IDとが送信されることにより、クラウドシステム10は、受信したWBGTデータに付帯された作業エリア識別IDにより、受信したWBGTデータが、どの作業エリアの環境状態を示すものであるかを速やかに特定することができる。尚、各環境センサー3の建設工事現場への設置については、例えば、当該建設工事の着工前等のような熱中症の危険性の評価を開始するまでの適宜な時になされる。
【0038】
この例では、各環境センサー3の記憶部に作業エリア識別IDが記憶されている場合を
例示しているが何等これに限らない。例えば、各環境センサー3にそれぞれ、環境センサー3を識別するための環境センサー識別IDが重複無く個別設定されており、クラウドシステ10の記憶部に各環境センサー3の環境センサー識別IDと、当該環境センサー3が配置されている作業エリアAとを対応付ける環境センサーIDテーブルが記憶されている場合には、各環境センサー3からWBGTデータとともに記憶されている自身の環境センサー識別IDが送信され、クラウドシステ10により受信した環境センサー識別IDと環境センサーIDテーブルとに基づいて受信したWBGTデータが、どの作業エリアの環境状態を示すものであるかを特定する形態であっても構わない。
【0039】
各活動センサー4は、装着している各対象作業者Mtの心拍数(活動状態に相当)を計測可能である。各活動センサー4は、それぞれ装着された各対象作業者Mtの心拍数を計測して、当該心拍数データ(活動データに相当)を常時又は適宜周期で送信する。この例では、ブレスレットタイプの活動センサー4が使用されており、活動センサー4は、各対象作業者Mtの身体に直接接触するように手首に装着して使用される。
【0040】
各活動センサー4は、それぞれ、図2に示すように中継器5と通信可能な通信部と、スピーカー等の報知部と、記憶部と、を有している。各活動センサー4の記憶部には、それぞれ、各々の活動センサー4を装着している対象作業者Mtを識別するための作業者識別IDが記憶されている。
【0041】
活動センサー4から送信される心拍数データは、中継器5により受信され、中継器5を介してクラウドシステム10へ送信される。活動センサー4の通信部は、低消費電力のビーコン信号(Bluetooth Low Energy)を連続的に発信し、心拍数データと作業者識別IDとをビーコン信号に含めて送信する。ここでは、心拍数データと作業者識別IDとが活動者情報データに相当する。ビーコン信号については、後に詳述する。
【0042】
各活動センサー4は、心拍数データとともに作業者識別IDも送信するので、クラウドシステム10は、受信した心拍数データに付帯された作業者識別IDと、クラウドシステム10に記憶されている作業者IDテーブルとに基づいて、受信した心拍数データが、どの対象作業者Mtの活動状態を示すものであるかを速やかに特定することができる。
【0043】
中継器5(51~56)は、日向エリアA1、日除けエリアA2及び建物内エリアA3に、各々2つずつ互いに間隔を隔てて配置されている。
【0044】
各中継器5は、ビーコン信号を受信可能な第1通信部と、クラウドシステム10に接続可能な第2通信部と、記憶部と、を有している。記憶部には、中継器5が配置されている作業エリアAを識別可能な作業エリア識別IDが記憶されている。
【0045】
各中継器5は、受信した心拍数データ及び作業者識別IDとともに、記憶部に記憶されている作業エリア識別IDをクラウドシステム10に、常時又は適宜周期で送信する。
【0046】
活動センサー4は、到達距離が異なる複数種類のビーコン信号に、心拍数データ及び作業者識別IDの情報を含ませて連続的に発信している。例えば、到達距離が短距離のビーコン信号(以下、短距離ビーコン信号という)、到達距離が中距離のビーコン信号(以下、中距離ビーコン信号という)、到達距離が長距離のビーコン信号(以下、長距離ビーコン信号という)の3種類の到達距離が互いに異なるビーコン信号を発信している。図1においては、到達距離が異なる複数種類のビーコン信号の各到達範囲(作業エリアAよりも狭い所定の範囲)を三点鎖線にて示している。
【0047】
各中継器5(51~56)は、各作業エリアA1,A2,A3のいずれの位置から発信された少なくとも長距離ビーコン信号が、各々の中継器5が配置されている作業エリアAに配置されているいずれかの中継器5にて受信できる位置に配置されている。すなわち、中継器5は、各作業エリアA内において、どの位置から発信されたビーコン信号も、少なくともいずれか1つの中継器5が受信可能に配置されている。
【0048】
このため、各活動センサー4から発信されたビーコン信号は、当該ビーコン信号の到達範囲内に存在する各中継器5にて受信される。例えば、図1においては、対象作業者Mt1が装着している活動センサー41から発信されたビーコン信号のうち長距離ビーコン信号が、日向エリアA1に配置された2つの中継器51,52のうちの一方の中継器52のみにて受信される。このため、受信した中継器52からは、この活動センサー41を装着している対象作業者Mt1の心拍数データ、及び、対象作業者Mt1の作業者識別IDでなる活動者情報データに日向エリアA1の作業エリア識別IDが付帯されて発信される。ここでは、活動者情報データと作業エリア識別IDとが活動エリア内情報データに相当する。
【0049】
このため、中継器52からの信号を受信したクラウドシステム10により、対象作業者Mt1が日向エリアA1にて作業していることが特定される。
【0050】
また、図1においては、対象作業者Mt3が装着している活動センサー43から発信されたビーコン信号のうち長距離ビーコン信号が、日向エリアA1に配置された一方の中継器52及び日除けエリアA2に配置された一方の中継器53と、中距離ビーコン信号が、日除けエリアA2に配置された他方の中継器54にて受信される。このため、受信した各中継器52,53,54からはそれぞれ、この活動センサー43を装着している対象作業者Mt3の心拍数データと対象作業者Mt3の作業者識別IDとに日向エリアA1の作業エリア識別IDまたは日除けエリアA2の作業エリア識別IDが付帯されて活動者情報データを含むビーコン信号が発信される。
【0051】
各中継器52,53,54からの信号を受信したクラウドシステム10は、受信したビーコン信号に基づいて、受信した信号のうちの最も到達距離が短いビーコン信号が含まれている信号を発信した中継器54を特定し、特定した中継器54が配置されている日除けエリアA2を対象作業者Mt3が作業している作業エリアAとして特定する。
【0052】
図2に示すように、クラウドシステム10には、環境センサー3及び中継器5が接続されており、外部、たとえば、工事管理事務所2の管理者用コンピュータ11、或いは、タブレットなどからもアクセス可能である。本実施形態においては、クラウドシステム10がネットワーク及び管理端末に相当するが、各環境センサー3及び各中継器5が接続されているのはクラウドシステムに限らず、通信可能なネットワークであり、当該ネットワークに熱中症危険性の評価を実行する管理端末が接続されている形態であっても構わない。
【0053】
クラウドシステム10には、熱中症の危険性の評価処理を実行するためのプログラムが予め格納されており、また、当該評価処理に使用される後述のWBGT基準値、及び、心拍数の基準値を示すテーブルも予め記録されている。また、クラウドシステム10には、各対象作業者Mtの氏名、年齢と各々の対象作業者Mtに付与されている作業者識別IDとを対応付けた、図3のような作業者IDテーブルが記憶されている。そして、クラウドシステム10が、上記プログラムを実行することにより上記の評価処理が実行される。なお、この評価処理については後述する。
【0054】
WBGT基準値は、各環境センサー3から送信されたWBGTデータに基づいて熱中症の危険性を作業エリアA1,A2,A3毎に評価するための基準値である。すなわち、記憶部は、図4に示すようなWBGT基準値が記録されたWBGT基準値テーブルを有する。そして、WBGT基準値テーブルには、三つの作業エリアA1,A2,A3毎にそれぞれ固有のWBGT基準値が、各作業エリア識別IDと対応付けて記憶されている。
【0055】
よって、クラウドシステム10は、各環境センサー3から送信されるWBGTデータが付帯する作業エリア識別IDをキーとしてWBGT基準値テーブルを参照し、当該作業エリア識別IDに対応するWBGT基準値を取得する。そして、取得したWBGT基準値と、各環境センサー3から送信されたWBGTデータとに基づいて、作業エリアA1,A2,A3毎に熱中症の危険性の有無を判定することができる。
【0056】
なお、各作業エリアA1,A2,A3のWBGT基準値については、各作業エリアA1,A2,A3での作業条件を考慮しつつ、当該評価システムが稼働する前の適宜な時に設定され、また、同WBGT基準値は、建設工事の進捗に伴って順次更新される。
【0057】
また、上記の考慮すべき作業条件としては、例えば「作業強度」、「着衣」、「気流」及び「熱への順化」を挙げることができる。ここで「作業強度」とは、代謝率レベルの大きさのことであり、軽い手作業やデスクワークでは小さくなる一方、激しい力仕事などでは大きくなる。また、「着衣」については、作業を行う時に着用する服の種類(例えば、作業服、SMSポリプロピレン製つなぎ服など)が考慮され、「気流」については、気流の有無が考慮され、「熱への順化」については、熱への順化の有無が考慮される。
【0058】
心拍数の基準値は、各活動センサー4から送信された心拍数データに基づいて熱中症の危険性を作業エリアA1,A2,A3毎に評価するための基準値である。すなわち、記憶部は、図5に示すような心拍数基準値が記録された心拍数基準値テーブルを有する。そして、心拍数基準値テーブルには、作業者の年齢に対応付けられた心拍数基準値が、各作業エリア識別IDと対応付けて記憶されている。
【0059】
よって、クラウドシステム10は、各活動センサー4から中継器5を介して送信される心拍数データが付帯する作業者識別IDをキーとして心拍数基準値テーブルを参照し、当該作業者識別IDに対応付けられた対象作業者Mtの年齢に対応する心拍数基準値を取得する。そして、取得した心拍数基準値と、各活動センサー4から送信された心拍数データとに基づいて、作業エリアA1,A2,A3にて作業する対象作業者Mtに対する熱中症の危険性の有無を判定することができる。
【0060】
<<<熱中症危険性評価方法>>>
次に、上記熱中症危険性評価システムを用いた熱中症危険性評価方法について説明する。
【0061】
先ず、複数の作業エリア(本実施形態では3つ作業エリア)A1,A2,A3を有する作業現場にて、作業する各作業者は、作業日の作業開始前に、工事管理事務所2のところへ出頭する。そして、管理者は、出頭した作業者M1,M2…が前述の対象作業者Mt1,Mt2…、つまり、熱中症の危険性の評価対象の対象作業者Mt1,Mt2…であるか否かを判定する。例えば、作業者M1,M2…の年齢が予め定められた熱中症になり易い年齢範囲に入っている場合、防塵服のような気密性の高い作業着を着用する職種の場合、該当作業の経験年数が少ない場合、朝礼時に計測した血圧値が所定値よりも高い場合などには、対象作業者Mt1,Mt2…であると判定する。
【0062】
そして、対象作業者Mt1,Mt2…であると判定した場合に、管理者は、クラウドシステム10にアクセスしクラウド上で、当該対象作業者Mt1,Mt2…と、当該作業者に付与した作業者識別IDとを対応付けて入力する。例えば、対象作業者Mt1が○△一郎である場合には、作業者識別IDに「M00001」を付与し、作業者名「○△一郎」と、○△一郎の作業者識別ID「M00001」とを対応付けて入力する。各対象作業者Mt1,Mt2…のデータを入力することにより、クラウドシステム10には、作業者IDテーブルが記憶される。ここで、作業者の情報は、必ずしも作業日の作業開始前に入力する必要はなく、作業日前までに一括で登録しておいてもよい。
【0063】
上記の各対象作業者Mt1,Mt2…のデータを入力する処理と同時並行或いはその後に、管理者は、各対象作業者Mt1,Mt2…に対してそれぞれ活動センサー4を一つずつ準備し、各対象作業者Mt1,Mt2…に渡す。なお、各活動センサー4は、例えば対象作業者Mt1,Mt2…毎に専用のものであり、活動センサー4の記憶部には、予め対応する対象作業者Mt1,Mt2…の作業者識別IDが記録されている。例えば、○△一郎の例で言えば、その作業者識別IDが「M00001」であることから、○△一郎用に準備された活動センサー41の記憶部には、作業者識別IDとして「M00001」が記録されている。
【0064】
準備された活動センサー4は、各対象作業者Mtが各々手首に装着し、作業現場にて各々作業を開始する。対象作業者Mtの作業中は、図6に示すように、装着された活動センサー4は、計測した対象作業者Mt1,Mt2…の心拍数を示す心拍数データに作業者識別IDを付帯した活動者情報データを、到達距離が異なる3種類のビーコン信号に含めて送信する(活動者情報データ送信ステップS1)。
【0065】
活動センサー4から送信された活動者情報データは、ビーコン信号の到達距離の範囲内に配置されている中継器5にて受信される。このため、対象作業者Mtが作業している位置により受信する中継器5が相違する。また、ビーコン信号の到達距離の範囲内に位置している全ての中継器5にて、活動センサー4から送信された活動者情報データが受信される。受信された各中継器5からは、受信した活動者情報データに当該中継器5の記憶部に記憶されている作業エリア識別IDを付帯した活動エリア内情報データがクラウドシステム10に送信される(活動エリア内情報データ送信ステップS2)。
【0066】
一方、作業エリアA1,A2,A3の各環境センサー3は、各作業エリアのWBGTデータに、各環境センサー3の記憶部に記憶されている作業エリア識別IDを付帯した環境情報データをクラウドシステム10に送信する(環境情報データ送信ステップS3)。
【0067】
対象作業者Mtの作業中には、以下のようにして、熱中症の危険性の評価が対象作業者Mt毎に行われる。
【0068】
クラウドシステム10は、作業エリアA1,A2,A3の各環境センサー31,32,33からそれぞれWBGTデータを受信し、各中継器5(51~56)から対象作業者Mt1,Mt2…毎に装着された各活動センサー4(41~44)から送信された心拍数データを受信する。このとき、各WBGTデータには、作業エリア識別IDが付帯されており、心拍数データには、作業者識別ID及び作業エリア識別IDが付帯されている。
【0069】
このとき、前述したように、同一作業者識別IDが付帯された心拍数データが複数受信される場合がある。このため、クラウドシステム10は、同一作業者識別IDが付帯された心拍数データが含まれるビーコン信号の到達距離を示す情報から、到達距離がより短いビーコン信号を含むデータを検出する。すなわち、対象作業者Mtは、到達距離がより短いビーコン信号を受信した中継器5に近い位置にて作業をしていると特定する。このため、クラウドシステム10は、到達距離がより短いビーコン信号を受信した中継器5から送信された心拍数データ及び作業エリア識別IDから対象作業者Mtの心拍数及び作業エリアを特定する。
【0070】
クラウドシステム10は、各対象作業者Mtの特定された心拍数データ及び作業者識別IDと、記憶されている心拍数基準値テーブルとに基づいて、当該対象作業者Mt毎の熱中症危険性を評価する(危険性評価ステップS4)。
【0071】
また、このとき、各対象作業者Mtが作業していると特定された作業エリアAの中継器5から送信された作業エリア識別IDと、当該作業エリア識別IDと同じ作業エリア識別IDが付帯されているWBGTデータと、クラウドシステム10に記憶されているWBGT基準値テーブルと、に基づいて当該対象作業者が作業している作業エリアAにおける熱中症危険性を評価する(危険性評価ステップS4)。
【0072】
心拍数データによる熱中症危険性評価の結果、及び、WBGTデータによる熱中症危険性評価の結果が、いずれも「熱中症の危険性無し」と評価された場合には、作業及び評価が継続される。一方「熱中症の危険性有り」と評価された場合には、クラウドシステム10は、その旨を示す警報データを、例えば、作業者識別ID「M00001」の対象作業者Mt1の活動センサー41へ送信する。すると、対象作業者Mt1の活動センサー41の報知部が、その旨の警告を、対象作業者Mt1「○△一郎」に対して行う。このとき、心拍数データによる熱中症危険性評価の結果、及び、WBGTデータによる熱中症危険性評価の結果が、いずれも「熱中症の危険性有り」と評価された場合に、その旨を示す警報データを対象作業者Mt1の活動センサー41へ送信することとしてもよい。
【0073】
本実施形態の熱中症危険性評価方法によれば、対象作業者Mtの作業状態は対象作業者Mtが装着している活動センサー4により計測されるので、より正確な作業状態を把握することが可能であり、各々の作業エリアA1,A2,A3の環境状態は各々の作業エリアA1,A2,A3に各々配置されている環境センサー3により計測されるので、より正確な環境状態を把握することが可能である。
【0074】
また、活動センサー4により計測された作業状態を示す活動データは、作業者識別IDとともに、対象作業者Mtが作業している作業エリアA1,A2,A3に存在する中継器5にて受信され、中継器5が配置されている作業エリアA1,A2,A3の作業エリア識別IDとともに送信されるので、対象作業者Mtが作業している作業エリアA1,A2,A3を正確に検知することが可能である。このため、対象作業者Mtが異なる作業エリアA1,A2,A3に移動した場合には、移動した後の作業エリアA1,A2,A3に配置されている中継器5から、当該対象作業者Mtの作業データ及び作業者識別IDが、移動後の作業エリアA1,A2,A3を示す作業エリア識別IDとともに送信される。このため、対象作業者Mtが異なる作業エリアA1,A2,A3に移動したとしても、対象作業者Mtが作業している作業エリアA1,A2,A3を正確に検知することが可能である。
【0075】
そして、対象作業者Mt毎の熱中症の危険性は、環境センサー3により計測された作業エリアA1,A2,A3の環境状態を示すWBGTデータとともに送信された作業エリア識別IDと、活動センサー4により計測された心拍数データ及び作業者識別IDとともに送信された作業エリア識別IDとにより対応付けられたWBGTデータと心拍数データとに基づいて評価される。このため、対象作業者Mtが作業している作業エリアA1,A2,A3をより確実に特定し、より正確なWBTGデータ及び心拍数データにより、対象作業者Mt毎の熱中症の危険性をより正確に評価することが可能である。
【0076】
また、活動センサー4から送信されるデータを受信する中継器5は、作業エリアA1,A2,A3内の所定領域毎に複数設けられているので、活動センサー4の出力を小さく抑えることができる。このため、活動センサー4の消費電力を小さく抑えることができると共に活動センサー4を小型化することが可能である。
【0077】
また、ビーコン信号により対象作業者Mtの作業エリアA1,A2,A3を検知するので、活動センサー4の消費電力を小さく抑えることができると共に活動センサー4を小型化することが容易である。このように、活動センサー4を小型化することにより対象作業者Mtの作業の妨げとなり難いので、対象作業者Mtの良好な作業性を確保することが可能である。また、対象作業者Mtの作業エリアA1,A2,A3内における位置をより狭い範囲で特定することも可能である。
【0078】
また、危険性評価ステップS4は、中継器51及び環境センサー31が接続されているクラウドシステム10にて実行されるので、モバイル端末等により評価すること、また、対象作業者Mtの状態を認識することが可能である。このため、自由度が高く、より広い作業エリアにて作業する対象作業者の熱中症危険性をより低コストで評価することが可能である。
【0079】
上記実施形態においては、環境センサー3がクラウドシステムに接続されてWBGTデータをクラウドシステム10に送信する例について説明したが、これに限るものではない。例えば、図7に示すように、環境センサー3が活動センサー41と同様に中継器5を介してクラウドシステム10と接続される形態であっても構わない。
【0080】
この場合には、図8に示すように、活動センサー4からは、活動者情報データが送信され(活動者情報データ送信ステップS11)、環境センサー3からは環境データが送信され(環境情報データ送信ステップS12)、送信された環境データは中継器5に受信され、受信された環境データ及び活動者情報データと、中継器5の作業エリア識別IDが付帯されて中継器5から送信され(活動エリア内情報データ送信ステップS13)、クラウドシステム10により対象作業者Mt毎の熱中症危険性が評価される(危険性評価ステップS14)。
【0081】
また、このとき、各対象作業者Mtが作業していると特定された作業エリアAの中継器5から送信された作業エリア識別IDと、当該作業エリア識別IDと同じ作業エリア識別IDが付帯されているWBGTデータと、クラウドシステム10に記憶されているWBGT基準値テーブルと、に基づいて当該対象作業者が作業している作業エリアAにおける熱中症危険性を評価する(危険性評価ステップS4)。ここでは、環境データ、活動者情報データ、作業エリア識別IDが活動エリア内情報データに相当する。
【0082】
環境センサー3から発信した環境データを中継器5にて受信することにより、環境センサー3の出力も小さく抑えることができる。このため、環境センサー3の消費電力も小さく抑えることができると共に環境センサー3も小型化することが可能である。このとき、活動者情報データ及び環境データをビーコン信号に含めて活動センサー4及び環境センサー3から送信することにより、より簡単に環境センサー3の消費電力を小さく抑えることができると共に環境センサー3を小型化することが可能である。
【0083】
また、本実施形態の熱中症危険性評価システム1によれば、活動センサー4からの活動者情報データを受信した中継器5により対象作業者Mtの作業エリアA1,A2,A3をより正確に検知し、中継器5から送信される、対象作業者Mtが装着している活動センサー4により計測されたより正確な活動データと、各作業エリアA1,A2,A3に配置された環境センサー3により計測されたより正確な環境データと、に基づいて対象作業者Mt毎の熱中症の危険性をより正確に評価することが可能である。
【0084】
また、活動センサー4からの活動者情報データを受信した中継器5により対象作業者Mtの作業エリアA1,A2,A3をより正確に検知し、中継器5から送信される、対象作業者Mtが装着している活動センサー4により計測されたより正確な活動データ、及び、各作業エリアA1,A2,A3に配置された環境センサー3により計測されたより正確な環境データに基づいて対象作業者Mt毎の熱中症の危険性をより正確に評価することも可能である。
【0085】
上記実施形態においては、心拍数データによる熱中症危険性評価の結果、及び、WBGTデータによる熱中症危険性評価の結果にて「熱中症の危険性有り」と評価された場合には、対象作業者Mtの活動センサー4にその旨の警告情報を送信する例について説明したが、これに限るものではない。例えば、対象作業者Mtの活動センサー4に加えて、当該対象作業者Mtが作業している作業現場の現場管理者が携帯するモバイル端末6に警告情報を送信しても構わない。
【0086】
また、図1のような建設工事現場では、建設工事の進捗に伴って、作業エリアA1,A2,A3の状態が変化する。すなわち、作業エリアA1,A2,A3と環境が相違する作業エリアが増える、或いは、作業エリアA1,A2,A3が広がるまたは狭まる場合がある。この場合には、変化する各作業エリアに対応させて適宜、環境センサー及び中継器を配置することにより、対象作業者Mt毎の熱中症の危険性をより正確に評価することが可能である。
【0087】
上記実施形態においては、熱中症危険性の評価に用いる心拍数基準値が、心拍数基準値テーブルとしてクラウドシステムに記憶されている例について説明したが、これに限るものではない。例えば、入力された対象作業者の情報等に基づいて、クラウドシステムに記憶されている所定の計算式により心拍数基準値が算出される形態であっても構わない。
【0088】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0089】
上述の実施形態では、「活動」の一例として「作業」を例示し、これに伴い、活動者の一例として作業者を、また、対象活動者の一例として対象作業者を、更に、活動エリアの一例として作業エリアを例示したが、何等これに限らない。すなわち、活動の概念は、作業を含み、つまり、作業の概念よりも広いものであり、例えば、動作の意味である。
【0090】
上述の実施形態では、「活動状態」の一例として心拍数を例示し、これに伴い、活動データの一例として心拍数データを活動センサー4が出力するようにしていたが、何等これに限らない。例えば、活動センサー4が、速度センサーや、歩数計等を有していても良く、つまり、活動データが、活動者の速度を示すデータや、活動者の加速度を示すデータ、歩数を示すデータ等であっても良い。更には、「活動状態」が、体温、血圧値、血流量、及び発汗量等の生理状態であっても良く、その場合には、これらのうちの少なくとも1つを計測した計測データが、活動データとなり、また、当該計測データを出力可能なセンサーが、活動センサーとして使用される。
【0091】
上述の実施形態では、複数の作業エリアA1,A2,A3を有する場所の一例として建設工事現場を例示したが、何等これに限らない。例えば、当該場所が工場や老人ホーム等でも良いし、これら以外の場所でも良い。
【0092】
上述の実施形態では、環境状態データの一例としてWBGTデータを例示したが、何等これに限らない。例えば、作業エリアA1,A2,A3で計測される気温のデータのみを環境状態データとして用いても良いし、同作業エリアA1,A2,A3で計測される湿度のデータのみを環境状態データとして用いても良いし、或いは、作業エリアA1,A2,A3の環境状態を示す別の指標のデータを環境状態データとして用いても良い。
【符号の説明】
【0093】
1 熱中症危険性評価システム、2 工事管理事務所、
3(31~33) 環境センサー、
4(41~44) 活動センサー、
5(51~56) 中継器(活動エリア装置)、
6 モバイル端末、10 クラウドシステム(ネットワーク、管理端末)、
11 管理者用コンピュータ、
A1 日向エリア(作業エリア、活動エリア)
A2 日除けエリア(作業エリア、活動エリア)
A3 建物内エリア(作業エリア、活動エリア)
M 作業者(活動者)
Mt(Mt1~Mt4) 対象作業者(対象活動者)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8